■6月月例ネット句会/入賞発表■
2026年6月14日
【金賞】
19.草匂う疏水のひかり蛍来る/柳原美知子
「草匂う」に疎水の景色が一気に立ち上がる。疎水を流れながら光る水。その流れの上をほう、ほうと蛍が光ながら飛んで近づいてくる。青草も水に濡れながら、蛍の光を息づかせている。しずかで、なつかしい、日本の失いたくない景色がここにある。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
01.紫陽花の滴に青空うすく差す/高橋秀之
雨のあがった紫陽花にまだ滴が残っている。その滴を観察すると、青空がうすく見える。「青空うすく差す」は、紫陽花に残る雨滴の透明感と美しさを余すところなく表現している。美しい句だ。(髙橋正子)
14.緑陰に人待つ風の心地良し/多田 有花
「緑蔭」という季語が、季節を表わす以上に働いて、人の心に働きかけ、句全体を心地よい風のすずしさで包んでいる。季語「緑蔭」が「人待つ」心を表現していて、待ち人とのたのしい時間が想像される。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
10.豆植えし庭へ静かに夜半の雨/土橋みよ
「豆植う」は、郭公が鳴いたら豆を植えるなど言われるように、農事の区切りでもある。豆を植えた夜半、しずかに地面を潤して雨が降っている。心もしっとり潤うようで、やすらかな気持ちになるのである。(髙橋正子)
26.蓮の葉の巻きほどけゆく朝陽かな/上島祥子
蓮の巻葉はつやつやと細い。水面から覗いた巻葉は、朝日に当たりながら、ほどけてゆく。巻葉の形も面白いが、しずかにほどける様子は、俳味があって、植物のしずかな動きを見せてくれて、楽しいものだ。(髙橋正子)
16.青葉風手を離れたる吾子一歩/西村友宏
ようやく歩き始めたわが子が、つないでいる手を離れて一歩青葉の風のなかへ歩み出た。歩き始めた子どもの一歩に、手を離した親の緊張感が伝わってくる。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
01.紫陽花の滴に青空うすく差す/高橋秀之
紫陽花の雨雫に映る淡い青空の色と濡れた紫陽花の色が美しく、ひんやりとした質感まで感じられます。透明感と清涼感溢れる滴に心洗われるようです。(柳原美知子)
16.青葉風手を離れたる吾子一歩/西村友宏
わずか一歩が大いなる一歩の赤ちゃんの歩き始め、これを見守る親の、嬉しさと緊張感が伝わってきます。青葉風の良き季節、たくさん歩いてねと願うばかりです。(上島祥子)
懸命に一歩を踏み出そうとする我が子と、それをうれしそうに見ている両親。その成長を後押しするかのように、青葉風が優しく吹きよせている。(吉田晃)
19.草匂う疏水のひかり蛍来る/柳原美知子
初夏の夕暮れ、用水路の周りに水草が青々と茂っている情景が浮かびます。どこから飛んできたのでしょうか。蛍のほんのりとした発光が水面に映り、静かな日本古来から詠われてきた美しい時間が始まります。(土橋みよ)
草匂うが草が生い茂る疎水を、そしてそんな疎水にどこからともなく蛍が光る。何とも言えない夏の風物詩を視覚からも、嗅覚からも感じさせてくれます。(高橋秀之)
05.名残雨きらきらと白い紫陽花に/吉田晃
何かが過ぎ去っていく惜しさを表すようなしっとりした名残雨が、一方で、白い紫陽花の葉や花を輝かせてくれている情景に静かな余韻を感じました。(土橋みよ)
10.豆植えし庭へ静かに夜半の雨/土橋みよ
14.緑陰に人待つ風の心地良し/多田 有花
26.蓮の葉の巻きほどけゆく朝陽かな/上島祥子
【入選/7句】
02.木陰からこぼれる光ゆるく揺れ/高橋秀之
木漏れ日の揺れというのはいいものです。風が木の葉を揺らしそれが光の揺れとして現れます。穏やかな心地よさ、涼しさを感じます。(多田有花)
※「木陰」は単独では、季語になりません。「夏木陰」のように使います。(髙橋正子)
04.興居島は雨に霞めり青蜜柑/吉田晃
興居島(ごごしま)は、瀬戸内海西部にある忽那諸島で二番目に大きい島。温州ミカンや伊予柑などの栽培で知られています。梅雨のこの時期雨に煙った島の姿が沖合に見えるのでしょう。(多田有花)
06.夏雲の無言の白の高さかな/吉田晃
高く高くふくらんでゆく夏雲は真っ白で、天空から黙って下界の私たちを見おろしているけれど、実は何かを語りかけているようでもあります。「無言の白」に意表をつかれます。(柳原美知子)
07.水瓶の縦横無尽目高かな/小口泰與
わが家もめだかを買っていますが、四角い水槽の中を横から見ています。水瓶を所狭しと縦横無地に泳ぐ様子をきっと上から見ているのでしょう。水槽とは違う目高の活発な動きがそこに感じられます。(高橋秀之)
09.鳴き声の湖面に乗りて夏の鳥/小口泰與
静かな湖面に、さわやかな風に乗って響く夏鳥の声。澄み渡る声の中、湖面に揺れる樹々の緑も美しく、心安らぐ心地よい夏のひと時です。(柳原美知子)
21.夕窓に植田の灯り星光る/柳原美知子
整然と苗が並んだ田に集落の灯りが映っています。視線を空に向ければ星がまたたいています。変わらぬ日本の水田の風景にほっとするものがあります。(多田有花)
25.閉門の木戸越す風や夏柳/上島祥子
閉門の木戸を越すかろやかな夕風が、緑深い夏柳をしずかに揺らしている。夏の夕暮れ時の情趣と涼しさを感じます。(柳原美知子)
■選者詠/髙橋正子
22.雲色というべき紫陽花毬重ね
雲色という、ある意味はっきりしない色こそが紫陽花に似合う。そして、いくつもある雲色の花が毬が重なるように見える。紫陽花の季節感がそこに感じられました。(高橋秀之)
23.紫陽花に青深まりて稿成りぬ
紫陽花の小さな毬が生まれたころから、精魂こめて紡がれてきた大切な作品の草案が、紫陽花の青色の深まりとともに、ようやく完成された喜びが伝わってきます。おめでとうございます。(柳原美知子)
24.汗の子の不意に目覚めて大きな瞳
お孫さんが風邪で発熱されたときの様子と思われます。すやすや眠っていたのが急に目覚め、その瞬間に目があった。その澄んだ瞳の大きさに驚かれたさまが伝わってきます。(多田有花)
互選高点句(5点/同点2句)
16.青葉風手を離れたる吾子一歩/西村友宏
19.草匂う疏水のひかり蛍来る/柳原美知子
集計:髙橋正子
※コメントのない句に、コメントをよろしくお願いいたします。
コメント
02.木陰からこぼれる光ゆるく揺れ/高橋秀之
木漏れ日の揺れというのはいいものです。
風が木の葉を揺らしそれが光の揺れとして現れます。
穏やかな心地よさ、涼しさを感じます。
21.夕窓に植田の灯り星光る/柳原美知子
整然と苗が並んだ田に集落の灯りが映っています。
視線を空に向ければ星がまたたいています。
変わらぬ日本の水田の風景にほっとするものがあります。
24.汗の子の不意に目覚めて大きな瞳/髙橋正子
お孫さんが風邪で発熱されたときの様子と思われます。
すやすや眠っていたのが急に目覚め、その瞬間に目があった。
その澄んだ瞳の大きさに驚かれたさまが伝わってきます。
06.夏雲の無言の白の高さかな/吉田晃
高く高くふくらんでゆく夏雲は真っ白で、天空から黙って下界の私たちを見おろしているけれど、実は何かを語りかけているようでもあります。
「無言の白」に意表をつかれます。
09.鳴き声の湖面に乗りて夏の鳥/小口泰與
静かな湖面に、さわやかな風に乗って響く夏鳥の声。澄み渡る声の中、湖面に揺れる樹々の緑も美しく、心安らぐ心地よい夏のひと時です。
25.閉門の木戸越す風や夏柳/上島祥子
閉門の木戸を越すかろやかな夕風が、緑深い夏柳をしずかに揺らしている。
夏の夕暮れ時の情趣と涼しさを感じます。
23.紫陽花に青深まりて稿成りぬ/髙橋正子
紫陽花の小さな毬が生まれたころから、精魂こめて紡がれてきた大切な作品の草案が、紫陽花の青色の深まりとともに、ようやく完成された喜びが伝わってきます。おめでとうございます。
07.水瓶の縦横無尽目高かな/小口泰與
わが家もめだかを買っていますが、四角い水槽の中を横から見ています。
水瓶を所狭しと縦横無地に泳ぐ様子をきっと上から見ているのでしょう。
水槽とは違う目高の活発な動きがそこに感じられます。
22.雲色というべき紫陽花毬重ね/髙橋正子
雲色という、ある意味はっきりしない色こそが紫陽花に似合う。
そして、いくつもある雲色の花が毬が重なるように見える。
紫陽花の季節感がそこに感じられました。
正子先生
お風邪を召され、体調が思わしくないにもかかわらず
6月月例ネット句会を開催いただきありがとうございます。
その後、お加減はいかがでしょうか。
「14.緑陰に人待つ風の心地良し」を
銀賞に並びに正子先生特選7句にお選びいただきありがとうございます。
高橋秀之さま、選をいただきありがとうございます。
「15.甘夏をさっくり切っていただきぬ」へ吉田 晃の選をいただき
ありがとうございました。
05.名残雨きらきらと白い紫陽花に/吉田晃
何かが過ぎ去っていく惜しさを表すようなしっとりした名残雨が、一方で、白い紫陽花の葉や花を輝かせてくれている情景に静かな余韻を感じました。
正子先生
ご体調がすぐれない中、句会を開催して頂き有難うございました。また、「豆植えし」の句に貴重なコメントを戴き感謝しております。植えた枝豆の苗は大きくなり、いくつかの実を付けております。成長の様子をまた俳句にしてみたいと思います。
正子先生、ご体調のすぐれない中、6月ネット句会を開催いただき、ありがとうございました。
「草匂う疏水のひかり蛍来る」に思いがけず金賞をいただき、正子先生の丁寧なご句評を賜り、大変うれしく感謝申し上げます。「植田」の句も入選句にお加えいただき、ありがとうございました。
自宅から車で5分ほどの見慣れた疏水ですが、高い石垣となっており、その上の道路は金毘羅街道と言われる金毘羅さんへの通い道で、歴史を感じさせる風情のある場所です。毎年そこには蛍が来て、あまり知られていなくて静かです。
みよ様、秀之様には同句に貴重なコメントと選を、祥子様、晃様には選をいただき、ありがとうございました。
祥子様には「植田」の句に選をいただき、お礼申しあげます。
髙橋正子先生
6月月例句会を開催いただきありがとうございました。
「紫陽花の滴に青空うすく差す」の句を銀賞にお選びいただきありがとうございます。
ふと目にした、紫陽花と雨が上がりの青空とをつなぐ雨の滴でした。
同句に選をいただきました土橋みよさま、柳原美知子さま、ありがとうございました。
また、「木陰からこぼれる光ゆるく揺れ」の句にご指摘をありがとうございます。投句前に改めて確認するようにいたします。
同句に選をいただきました多田有花さま、ありがとうございました。
正子先生、体調不良の中、6月月例句会を開催くださり、有難うございました。
「蓮の葉の巻きほどけゆく朝陽かな」を銅賞に「閉門の木戸越す風や夏柳」を入選にお選びくださり、丁寧な句評を有難うございました。
みよ様 晃様 秀之様 貴重な選を有難うございました。美知子様 コメントをよせてくださり有難うございました。