10月9日(1句)
★池すでに初鴨を迎え静かなり/多田有花
「初鴨」は、秋の季語。この季節はじめて北方から鴨を迎えた喜びと、早くも池に落ち着いた鴨の様子に安心の気持ちが窺える。「静かなり」はまだ工夫の余地がある。(髙橋正子)
10月8日(3句)
★物干しに翅を張りたる蜻蛉かな/土橋みよ
「翅を張り」は物干しに止まる蜻蛉の翅の透けた様子と緊張感をよく見せてくれている。物干しも蜻蛉の止まる場所として、日常のなかにも清潔感があり、場面と切り取りがいい。(髙橋正子)
★赤城より風のはつかに小鳥来る/小口泰與
冬には赤城颪が吹くところ。その赤城山から風が少し吹いてくる。小鳥来る季節でもあるのだ。生活に深く入り込んだ風と、小鳥たちの往来が、生活の一部となっているのがいい。(髙橋正子)
<玉丘史跡公園>
★澄む水に囲まれ玉丘古墳あり/多田有花
玉丘古墳は兵庫県の河西市にある。ふたりの皇子に恋された姫の悲恋物語と、史実とがあるようだ。その古墳を囲んで堀がありその水が澄んでいる。静かに古代が偲ばれる。(髙橋正子)
10月7日(3句)
<鶉野飛行場跡>
★滑走路跡の空澄み渡り広々と/多田有花
鶉野飛行場は特攻機の訓練が行われた場所で、地表にかつての滑走路の直線が地表に残っている。周囲には遮るものが少なく、空が「どこまでも澄むように感じられる。澄み渡る空にもどこか戦争の翳りがあるように思える。(髙橋正子)
★帰り来し庭の小菊の初蕾/土橋みよ
しばらく留守にしていた庭に小菊が初々しく蕾をつけている。
その健気なほどの可愛さに迎えられ、安堵の気持ちが優しく詠まれている。(髙橋正子)
★多摩川に大橋架かり秋高し/川名ますみ
多摩川大橋の大規模な橋梁工事の様子なのであろうか。秋の高い空「秋高し」が、工事のスケールを際立たせている。普段目にしない橋の工事は、目を瞠らせるものがあり、その場に立ち会ったこと自体が、記念的な目撃であったろう。(髙橋正子)
10月6日(1句)
退院
★金木犀匂いてわが門近きかな/土橋みよ(正子添削)
退院おめでとうございます。
退院してわが家に帰る道に、金木犀が匂ってきます。わが家の門に植えられているのでしょう。匂いにすぐわが家が近いことがわかります。生活に戻るよろこびが直に伝わります。(髙橋正子)
10月5日
該当句無し
10月4日(2句)
★真っ青はこの空の色天高し/多田有花
「真っ青」という色がある。それはこの空の色だという。この視点がユニーク。「天が高し」の季語そのもののを詠んでいるが、説明ではなく、
詩となっている。(髙橋正子)
★コスモスや白と赤とのもつれ合い/廣田洋一
コスモスの代表的な色は、ピンクやマジェンダ、白といった色だろう。それを大きく赤と白で捉えている。咲き満ちるコスモスの花が入り乱れ、もつれあっている。コスモスの性質を素直に表現している。(髙橋正子)
と10月3日(1句)
★残菊に挨拶のごと揚羽蝶/廣田洋一
「残菊」と「揚羽蝶」の取り合わせに妙がある。名残りに菊に、こちらも秋蝶となった揚羽蝶が離れては寄り、寄っては離れ、軽く挨拶をしている。残菊と揚羽蝶の世界にそっと自分を置いた自然さがいい。「挨拶のごと」の「ごと」は、一考の余地がある。(髙橋正子)
10月2日
該当句無し
10月1日(1句)
★夜のまだ浅し妻恋う鹿の声/多田有花(正子添削)
鹿は薄暮性の動物と言われ、夕方から早朝に、 とくに秋の繁殖期にはよく鳴く。 鹿の妻恋う声は古来、深夜の静寂・孤独・切迫感と結びつき、 多くは 夜の深まり を背景としている。この句の新しさは、「夜のまだ浅し」という時間層の鹿の声 を捉えたことにある。浅い夜に、「妻恋う」と言いながらも、ただ響く声として受けとめている。 その感覚は現代的とも言えよう。 (髙橋正子)
コメント
正子先生
「夜はまだ浅し妻恋う鹿の声」を
「夜のまだ浅し妻恋う鹿の声」に添削いただいた上
10月1日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
鹿の鳴き声がよく聞えるようになりました。
秋が深まってきたのだなと感じます。
高橋正子先生
10月3日の「残菊に挨拶のごと揚羽蝶」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
高橋正子先生
10月4日の「コスモスや白と赤とのもつれ合い」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
正子先生
「真っ青はこの空の色天高し」を
10月4日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
長雨の後久しぶりに雲一つなく晴れました。
そのときに浮かんできました。
正子先生
金木犀の句を添削頂き有難うございました。また投句を始めたいと思いますので、ご指導よろしくお願い申し上げます。
正子先生、いつもご懇切なご指導を賜りまして、ありがとうございます。
この度は「多摩川」の句に、選とコメントをいただき、嬉しく存じます。通院で多摩川大橋を通った際、すこし川上に、クレーンが幾つかそびえているのを見掛けました。検索すると、新しく「等々力大橋(仮称)」が建設中とのこと。久しぶりの秋晴ゆえに、目にとまったのかもしれません。
正子先生
「滑走路跡の空澄み渡り広々と」を10月7日の
「澄む水に囲まれ玉丘古墳あり」を10月8日の
「池すでに初鴨を迎え静かなり」を10月9日の
それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。
加西市の鶉野飛行場跡と玉丘史跡公園を訪ねてきました。
ここは北条盆地と鶉野台地という平坦な地形が広がっています。
古代から交通の要衝の地で
ヤマト政権とつながりがある首長が権力を持っていました。
玉丘古墳は『播磨国風土記』に登場しています。
戦争末期に海軍特攻部隊が編成され、当時の滑走路跡が残っています。
ここから九州の特攻基地を経由して63名が出撃し、亡くなっています。
正子先生
星の指導と「物干しに」の句と「帰り来し」の句にコメントを戴き感謝申し上げます。庭の植物と昆虫を観察し、以前と変わらず楽しませてくれる自然の様子に幸せを味わっております。有難うございました。