多田有花句集『蒼き氷河』紹介と感想

●多田有花句集『蒼き氷河』が、花冠俳句叢書・電子版1 として出版されました。有花さん、おめでとうございます。

花冠会員の皆さまには、有花さんからメールの添付ファイルで句集が届いていることと思います。読み方は、有花さんがメールで説明されていますので、お読みになって、その通りにしてください。
わからない時は、有花さんに直接、または発行所にお尋ねください。
『蒼き氷河』
https://amzn.to/4f3jpNv

有花さんの電子書籍での句集発行は花冠では初めてで、画期的なことです。句集を読まれましたら、有花さん、または発行所に感想をお寄せください。

【感想】
②高橋秀之

多田有花句集『蒼き氷河』ご出版、おめでとうございます。
Amazon KDPの電子書籍、新たな手法ですね。
きれいなお写真と合わせて拝見しております。普段は文字から情景を想像しておりますが、写真がセットになっていることで、同じ句であっても、感じ方が違ってくるから不思議です。

2001年から2005年の5年間。この時代がどんな時代であったかにも思いを寄せつつ、「好きな句」というより「直感的に気に入った句」をいくつかあげさせていただき、感想に代えさせていただきます。(ちなみに、デスクトップに貼り付いてので、いつでも見れる状況にあります)

陽光をひらりかわして初燕
燕の巣は軒下の太陽の光を避けたところにあります。そんな巣に戻ってくる親燕の様子が、ひらりかわして(躱している)と感じられたのでしょう。このころは大阪市内でもまだ見かけていたと記憶していますが、今は全くといっていいほど都市部では見かけなくなりました。

夏富士の空の青さへ日の丸を
この時期は、まだ水煙入会前でしたので、みなさまのお話でしたか存じ上げませんが、素晴らしいリーディングの会であったということは想像に難くありません。その素晴らしい句会がひとつのページになって、素敵な写真と対をなす。いいページだと思います。

秋風に水輝きて流れけり
水の輝きは、水の流れと同じで、同じ輝きはなく、その一コマ一コマが唯一無比の輝きです。流れゆく輝きは、20年のときを過ぎても悠久の輝きとして連綿と続いていることでしょう。

追記
たまたまこの時期は、長男、次男が産まれた時期に当たります。直接は関係ないことではありますが、そういった自分の歴史?も思い出させていただきました。
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①土橋みよ
句集「蒼き氷河」のご出版おめでとうございます。歴史的背景や社会的意味を持つ素晴らしい句が多く含まれており感嘆いたしましたが、私には大きな歴史や理念を背負う句は書けないので、私自身がお手本にしたい句をいくつか選び、感想を書きました。
1.柚子ひとつ置かれて卓の広さかな
小さな柚子一つによって、卓全体の広さが見えてきました。柚子の色や香りや丸みには何も触れていないのに、目に見えるようです。生活の場を詠みながら、清潔で品のあるこのような句を詠んでみたいと思いました。
2.花吹雪櫂のしずくに重なりぬ
最初、「櫂のしずく」から滝廉太郎の「花」を連想しましたが、この俳句はたった17文字で一曲のすべてを表しているように感じました。櫂から落ちる水滴と空から散る花びらの一瞬の重なりが美しいです。花吹雪が単なる美しい景色でなく、身近で起きた出来事になるのが素敵だと感じました。
3.桐の花その高さより風が吹く
桐の花の高さを目には見えない風の出どころと感じられるような感性を私も持ちたいと思いました。高いところに咲く桐の花が揺れ、その動きや葉音によって、風の来る位置が感じられたのですね。
4.薄氷や深山に戻る滝の音
滝の音が実際に山奥へ戻るわけではないと思いますが、薄氷の張る寒さと静けさの中で、滝音が遠ざかり、深山の奥深くへ吸い込まれていくように聞こえたということでしょうか。目の前の冬景色と耳に聞こえる滝の音の響き合いが素晴らしいと思いました。
5.青鷺は水の色して立ちにけり
青鷺が水辺に立ち、その羽色が周囲の水と溶け合ってどんなに美しかったことでしょう。「水の色して」という表現は是非真似したいですが、私には難しいです。青鷺が立った瞬間の静かな緊張感を感じました。
6.雨降れば雨の色して冬紅葉
前作に続いて、「雨の色」と捉えられた冬紅葉が、いろいろ想像させてくれており、色や形の具体的なことを言っていないのにとても美しく感じられました。
7.春雪が鏡の中を降りしきる
春雪を窓外の景色として直接詠みたくなるところですが、鏡に映った雪として捉えたことに驚きました。鏡の中に降る雪は現実の雪でありながら、どこか別の空間の出来事にも見えそうです。

どの句も奇抜な言葉を一つも使わず、日常の景色の注意深い観察から、具体的な物によって余情を残すところを是非見習いたいと思いました。


コメント

  1. 髙橋正子
    2026年7月20日 23:44

    (「エッセイと論文」の「多田有花句集 序」 より転記

    上島祥子

    有花様
    「蒼き氷河」の出版おめでとうございます。
    電子書籍ならではの、カラー画像付きの句集というのが斬新ですね。
    まだ読み始めたばかりですので、具体的な感想はまた後日ということで、失礼致します。

  2. 髙橋正子
    2026年7月29日 12:04

    土橋みよ(メールより転記)
    句集「蒼き氷河」のご出版おめでとうございます。歴史的背景や社会的意味を持つ素晴らしい句が多く含まれており感嘆いたしましたが、私には大きな歴史や理念を背負う句は書けないので、私自身がお手本にしたい句をいくつか選び、感想を書きました。

    1.柚子ひとつ置かれて卓の広さかな
    小さな柚子一つによって、卓全体の広さが見えてきました。柚子の色や香りや丸みには何も触れていないのに、目に見えるようです。生活の場を詠みながら、清潔で品のあるこのような句を詠んでみたいと思いました。

    2.花吹雪櫂のしずくに重なりぬ
    最初、「櫂のしずく」から滝廉太郎の「花」を連想しましたが、この俳句はたった17文字で一曲のすべてを表しているように感じました。櫂から落ちる水滴と空から散る花びらの一瞬の重なりが美しいです。花吹雪が単なる美しい景色でなく、身近で起きた出来事になるのが素敵だと感じました。

    3.桐の花その高さより風が吹く
    桐の花の高さを目には見えない風の出どころと感じられるような感性を私も持ちたいと思いました。高いところに咲く桐の花が揺れ、その動きや葉音によって、風の来る位置が感じられたのですね。

    4.薄氷や深山に戻る滝の音
    滝の音が実際に山奥へ戻るわけではないと思いますが、薄氷の張る寒さと静けさの中で、滝音が遠ざかり、深山の奥深くへ吸い込まれていくように聞こえたということでしょうか。目の前の冬景色と耳に聞こえる滝の音の響き合いが素晴らしいと思いました。

    5.青鷺は水の色して立ちにけり
    青鷺が水辺に立ち、その羽色が周囲の水と溶け合ってどんなに美しかったことでしょう。「水の色して」という表現は是非真似したいですが、私には難しいです。青鷺が立った瞬間の静かな緊張感を感じました。

    6.雨降れば雨の色して冬紅葉
    前作に続いて、「雨の色」と捉えられた冬紅葉が、いろいろ想像させてくれており、色や形の具体的なことを言っていないのにとても美しく感じられました。

    7.春雪が鏡の中を降りしきる
    春雪を窓外の景色として直接詠みたくなるところですが、鏡に映った雪として捉えたことに驚きました。鏡の中に降る雪は現実の雪でありながら、どこか別の空間の出来事にも見えそうです。

    どの句も奇抜な言葉を一つも使わず、日常の景色の注意深い観察から、具体的な物によって余情を残すところを是非見習いたいと思いました。