■9月月例ネット句会入賞発表■

■9月月例ネット句会入賞発表■
2026年9月14日
【金賞】
25.水の秋瀬せらぎ軽く堰を越え/上島祥子
季語「水の秋」が句の世界を立ち上げている。「瀬せらぎ」の表記の工夫もよい。そして瀬せらぎが「軽く」堰をこえる。これが、句を軽くし、流れる水の速さを読者に感じ取らせてくれる。「水の秋」が、秋を象徴する一景色として確かに、しかも軽やかに詠まれている。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
14.娘の隣家灯りて虫の鳴き始む/藤田洋子
「娘の隣家」という目の付けどころがユニークで、眼差しが優しい。娘さんの家はまだ誰も帰宅していない時間、その隣の家には灯りが灯っている。そして虫が鳴き始めた。夕暮れの繊細な時の移ろいが詠まれ、句詠の年季さえ思わせてくれる。(髙橋正子)

16.積乱雲眺む閑かな午睡の居間/吉田 晃
明快でありながら、閑な句。昼寝をする居間の窓に積乱雲が湧きあがっている。「午睡」と言う生活語によって「閑さ」にさえ、生活感があるのがいい。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
06.虫の声展望台に星ひとつ/土橋みよ
展望台のまわりに虫の声が聞こえ、星がひとつ出ている。暮れ始めたばかりの時間が、「虫の声」と「ひとつの星」で見事に表されている。(髙橋正子)

07.とんぼ舞う万博跡地の空広し/高橋秀之
「万博跡地」も歴史の流れに入ろうとしている。広い跡地の空を舞うとんぼと、華やかなだった万博が対比して想起され、時の交差がこの句に留められている。(髙橋正子)

23.退院す稔りの秋の只中へ/柳原美知子
退院おめでとうございます。
退院して驚いたのは、自分が身を置くところが、稔の秋の真っ最中だったこと。入院している間に田や畑は、すっかり稔りの季節を迎えていた。今、生活に戻る確かな実感が「稔の秋の只中へ」で力強く詠まれている。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
25.水の秋瀬せらぎ軽く堰を越え/上島祥子
稲の生育に必要なくなり、取り入れ口を閉められた水は側溝に戻っていく。取り入れ口の横には板で設えた小さな堰があって、役目を果たした水は堰を越えて流れ下る。役目を終えた秋の水は軽く、そして秋の日に光りながら下ってゆくのである。(吉田 晃)
秋の水は、曇りなく清らかです。その美しさを讃える季語「水の秋」に始まって、小川とその水音も届く「瀬せらぎ」が続き、それが「軽く」堰を越えていきます。秋の水の清らかな動きが、光や音をともなって感じられます。(川名ますみ)

29.新秋の風たしかなり熱のあと/川名ますみ
発熱から完治したあとの身体に感じられる風に新秋の訪れを実感されたうれしさが伝わってきます。「新秋」という季語が清新です。(柳原美知子)

06.虫の声展望台に星ひとつ/土橋みよ
07.とんぼ舞う万博跡地の空広し/高橋秀之
14.娘の隣家灯りて虫の鳴き始む/藤田洋子
16.積乱雲眺む閑かな午睡の居間/吉田 晃
23.退院す稔りの秋の只中へ/柳原美知子

【入選/13句】
01.夜通しの雨静まりて萩の花/友田 修
今年の夏は激しい雨に見舞われたところが多かったです。その雨がようやくあがった後、萩の花が咲いているのをご覧になったのでしょう。(多田有花)

02.風吹けばとぎれとぎれの虫の声/友田 修
虫が大きな声で鳴いているのではなく、風に揺られて途切れ途切れに聞こえる様子が静かな夜の秋の深まりを感じさせてくれます。(高橋秀之)

05.指の間を白波ぬける処暑の浜/土橋みよ
爽やかで涼しげです。処暑の頃の感覚が伝わってきます。厳しい残暑が少しずつ和らいでいく期待感とともに。(多田有花)
真夏の喧騒の去る“処暑”の浜。指間をすり抜ける白波の感触に、季節の静かな趣きを感じ取れます。(藤田洋子)

08.単線の線路脇より虫の声
単線のわきを夜に散歩している自分、虫の声が話し相手になっている。その虫は仲間と話しているのだろうけれど、無機物のレールはただそこにあるだけ。(友田 修)

10.新しい駅に降り立つ九月かな/多田有花
真新しい駅に降り立つ新鮮な感動。「九月」の澄んだ空気や爽やかな秋の訪れが感じられ、新しい季節の始まりへの期待感も高まります。(藤田洋子)

13.川縁を離るるほどに松虫の音/藤田洋子
夜の川べりを歩いて行かれた。そして川の流れから遠ざかると水音に変わって松虫の声の音が大きくなっていきます。(多田有花)

15.秋の薔薇夕べの雨を葉に残す/藤田洋子
秋の薔薇は、やや小ぶりで、色にも姿にも深みがあります。雨上がりの朝、その葉に「夕べの雨」を見ました。夏の勢いをそいだ薔薇に、物寂しい雨雫のなごり、大変優雅な句に心惹かれました。(川名ますみ)

17.真っ白な雲がちぎれて秋の峰/吉田 晃
真っ白な雲がちぎれてという表現がダイナミックな空模様に感じました。そのダイナミックさが秋の峰を一層引き立てます。(高橋秀之)

21.泣き顔や葡萄つかみて頬張りぬ/西村友宏
機嫌を損ねた幼子の情景でしょうか。泣きつつも自ら葡萄をつかみ、頬張る、その動作が明るく力強いです。季節の葡萄の甘さやみずみずしさも伝わります。(藤田洋子)

22.病室に伊予弁飛び交う雨の盆/柳原美知子
祖先を迎える特別な時期の雨の日、病気と対極にあるような明るく賑やかな伊予弁での語り合いが聞こえるようです。とても深い余韻を感じさせてくれました。(土橋みよ)

27.回送のバスドア固く秋出水/上島祥子
回送であるため乗客のいない運行バス。固く閉ざされたバスドアにバスの孤立感、そして刻々増水していく秋出水の荒々しさ、緊迫感が伝わります。(藤田洋子)

28.土の上の蝉避けすすむ車椅子/川名ますみ
車椅子に乗ってる人、押してる人 と同時に落ち蝉に気付いたのでしょうか。うまく方向を整えて車椅子を進め、蝉が土に帰る、蝉の最後を静かに見送る優しさを感じます。(上島祥子)

30.薄紅の見る間に藍へ秋夕焼/ 川名ますみ
見事な夕焼け空が広がりました。真夏の壮大で長時間のものと異なり、薄紅色が藍色へと変わっていく時間は短くなっています。(多田有花)

■選者詠/髙橋正子
33.戸を閉めるときにひと際虫の声
戸をひろくあけている時には、風になびく草木の葉擦れの音やさまざまな音に混じって虫の声もはるかに聞こえてくるけれど、夕暮れの戸を閉めるときには、懸命に鳴く近くの虫の声が一筋に耳に響き、胸に迫ってくるようです。秋の深まりを感じるとともに、小さな虫の声とその命へのいとしさが湧きます。秋の夕暮れの寂しさや灯りゆく家々の夕景なども目に浮かぶ凝縮された秋の一句に
感動を覚えます。(柳原美知子)

31.水引草の赤いろ白いろ日に光り
32.応援歌数珠玉光るところまで

互選高点句(5点)
05.指の間を白波ぬける処暑の浜/土橋みよ

集計:髙橋正子
※コメントのない句に、コメントをよろしくお願いいたします。


コメント

  1. 多田有花
    2026年9月14日 16:04

    01.夜通しの雨静まりて萩の花/友田 修
    今年の夏は激しい雨に見舞われたところが多かったです。
    その雨がようやくあがった後、萩の花が咲いているのを
    ご覧になったのでしょう。

    13.川縁を離るるほどに松虫の音/藤田洋子
    夜の川べりを歩いて行かれた。
    そして川の流れから遠ざかると水音に変わって
    松虫の声の音が大きくなっていきます。

    30.薄紅の見る間に藍へ秋夕焼/ 川名ますみ
    見事な夕焼け空が広がりました。
    真夏の壮大で長時間のものと異なり、
    薄紅色が藍色へと変わっていく時間は短くなっています。

  2. 藤田洋子
    2026年9月14日 18:52

    10.新しい駅に降り立つ九月かな/多田有花
    真新しい駅に降り立つ新鮮な感動。「九月」の澄んだ空気や爽やかな秋の訪れが感じられ、新しい季節の始まりへの期待感も高まります。

    21.泣き顔や葡萄つかみて頬張りぬ/西村友宏
    機嫌を損ねた幼子の情景でしょうか。泣きつつも自ら葡萄をつかみ、頬張る、その動作が明るく力強いです。季節の葡萄の甘さやみずみずしさも伝わります。

    27.回送のバスドア固く秋出水/上島祥子
    回送であるため乗客のいない運行バス。固く閉ざされたバスドアにバスの孤立感、そして刻々増水していく秋出水の荒々しさ、緊迫感が伝わります。

  3. 川名ますみ
    2026年9月14日 22:16

    互選に参加できず、申し訳ございませんでした。コメントまで。

    25.水の秋瀬せらぎ軽く堰を越え/上島祥子
    秋の水は、曇りなく清らかです。その美しさを讃える季語「水の秋」に始まって、小川とその水音も届く「瀬せらぎ」が続き、それが「軽く」堰を越えていきます。秋の水の清らかな動きが、光や音をともなって感じられます。

    15.秋の薔薇夕べの雨を葉に残す/藤田洋子
    秋の薔薇は、やや小ぶりで、色にも姿にも深みがあります。雨上がりの朝、その葉に「夕べの雨」を見ました。夏の勢いをそいだ薔薇に、物寂しい雨雫のなごり、大変優雅な句に心惹かれました。

  4. 高橋秀之
    2026年9月14日 22:54

    02.風吹けばとぎれとぎれの虫の声/友田 修

    虫が大きな声で鳴いているのではなく、
    風に揺られて途切れ途切れに聞こえる様子が
    静かな夜の秋の深まりを感じさせてくれます。

  5. 多田有花
    2026年9月15日 7:42

    正子先生
    9月月例句会を開催いただきありがとうございました。
    「新しき駅に降り立つ九月かな」を入選に
    お選びいただきありがとうございます。
    藤田洋子さま、コメントをいただきありがとうございました。
    JR山陽本線に新駅の「手柄山平和公園駅」が半年前にオープンしました。

  6. 上島祥子
    2026年9月15日 22:21

    23.退院す稔りの秋の只中へ/柳原美知子
    上句の退院すに、うちに帰って日常を取り戻す喜びが伝わります。入院中に実りの季節を迎えた時の進みに驚きと感動が詰まっているようですね

    07.とんぼ舞う万博跡地の空広し/高橋秀之
    大勢が熱狂した万博の跡地の空を、静かにとんぼが占めている。この先カジノができれば、再び人が大勢やってくるでしょう。過去 現在 未来と人の世の移り変わりの激しさを感じます。

  7. 柳原美知子
    2026年9月16日 11:22

    33.戸を閉めるときにひと際虫の声/髙橋正子
    戸をひろくあけている時には、風になびく草木の葉擦れの音やさまざまな音に混じって虫の声もはるかに聞こえてくるけれど、夕暮れの戸を閉めるときには、懸命に鳴く近くの虫の声が一筋に耳に響き、胸に迫ってくるようです。
    秋の深まりを感じるとともに、小さな虫の声とその命へのいとしさが湧きます。
    秋の夕暮れの寂しさや灯りゆく家々の夕景なども目に浮かぶ凝縮された秋の一句に
    感動を覚えます。

  8. 柳原美知子
    2026年9月16日 11:50

    正子先生、9月月例ネット句会を開催いただき、ありがとうございました。
    「退院す稔りの秋の只中へ」の句に銅賞と正子先生の今後の励ましとなるようなご句評を賜り、大変嬉しく感謝申しあげます。
    「雨の盆」の句も入選句にお加えいただき、ありがとうございました。
    みよ様、祥子様、選と温かいコメントをお寄せいただきありがとうございました。
    有花様、晃様、「稔りの秋の只中へ」に選をいただき、ありがとうございました。
    改めて方言の温かさ、日本の秋の美しさ、豊かさとそれらを味わえる幸せを感じたことでした。

  9. 藤田洋子
    2026年9月16日 12:10

    正子先生、句美子様、友宏様、9月月例ネット句会、お世話になりありがとうございました。
    正子先生の特選、銀賞に「虫」の句を取り上げていただき大変ありがとうございました。正子先生にはご丁寧なコメントを添えていただき深く感謝いたします。暑さもやっと和らぎ虫の音に心安らぎます。入選句に「松虫」「秋の薔薇」も選句いただきありがとうございました。
    有花様、ますみ様、温かなコメントを寄せていただき、みよ様、祥子様、修様、晃様、秀之様、選句をいただきありがとうございました。

  10. 友田修
    2026年9月17日 5:52

    正子先生、9月月例ネット句会を開催いただき、ありがとうございました。
    入選句に「萩の花」と「虫の声」をお採り下さりありがとうございます。
    藤田様、吉田様、選句をいただき、また、多田様、高橋様、コメントをくださいましてありがとうございます。

  11. 土橋みよ
    2026年9月17日 14:41

    正子先生
    9月月例句会を開催頂き感謝申しております。また、「虫の声」の句に句評を頂くとともに、「指の間を」の句を入選句に選んで頂き有難うございました。「虫の声」の句は、北海道の篠津公園展望台に参りました時に、展望台を囲む大きな原っぱから虫の声が聞こえているのに、一番星が輝き始めた空を見上げるととても静かに感じられたので、そのままを俳句にしてみました。「指の間を」の句には、有花様と洋子様からご親切なコメントを戴き有難うございます。また、祥子様、美知子様、友田様には貴重な選を頂き有難うございます。8月下旬のちょうど処暑の頃、北海道の石狩浜に参りましたら、砂浜にはまだ夏の暑さが残っており、その感触を確かめようと手を伸ばしましたところに、ちょうど白波が寄せてきて指の間を通り抜けて行きました。夏も過ぎていってしまった気がして俳句にしてみました。今後もご指導よろしくお願い申し上げます。

  12. 川名ますみ
    2026年9月18日 16:04

    正子先生、9月月例句会を開催いただき、ありがとうございました。
    互選に参加できず残念でしたが、皆さまの御句とコメントを拝読し、初秋の爽やかな心地を感じました。
    「新秋」の句に、正子先生の特選を頂戴し、ありがとうございます。美知子さまに選とコメントを、有花さま、修さまに選をいただき、お礼申し上げます。状況そのままの拙句ですが、ご共感いただけて嬉しく存じます。
    「土の上の」句には、入選、祥子さまの選とコメント、みよさま、秀之さまの選をいただきまして、感謝いたします。車椅子から落ち蝉に気づいた時、ヘルパーさんも気づかれていたようで、しずかに避けて進んでくれました。
    「薄紅の」の句には、入選と洋子さまの選を、ありがとうございました。雨の多い今年ですが、貴重な秋夕焼を望みました。

  13. 上島祥子
    2026年9月19日 21:56

    正子先生、9月月例ネット句会を開催いただき、ありがとうございました。
    「水の秋瀬せらぎ軽く堰を越え」を金賞にお選びいただき、丁寧な句評をありがとうございました。大垣の湧水を流す小さな水路には 歩道がついていて、水の流れを近くで見ることができます。秋になって水は澄んで、爽やかさを増しています。
    晃様 ますみ様には、選と素晴らしいコメントをありがとうございました。秀之様 美知子様に選を頂き有難うございました。
    「回送のバスドア固く秋出水」を入選句に選んで頂き有難うございました。みよ様 選を頂き有難うございました。洋子様 コメントを頂き有難うございます。
    大雨の日に名古屋市バスは、運休となり多くのバスが回送表示になって走ってゆきますが、それを横目に 歩いて帰宅する人が、大勢いました。
    お礼が遅くなり、大変失礼しました。今後とも宜しくお願いします。