5月28日(3名)
小口泰與
山風や夏の大河の収まらず★★★
薪割りて全身汗にまみれけり
この句の「汗」は、薪割りと言う労働の結果の生理現象としての「汗にまみれ」なので、季語として、季節を呼び込む働きはありません。したがって無季の俳句となります。むしろ「薪割り」が「冬支度」の季語に関連して季感があると言えます。(髙橋正子)
しなやかに反転せしや軒つばめ★★★
多田 有花
つるばらを見上げてそぞろ歩きかな★★★
今年また子の鎮魂の薔薇咲けり★★★
酒に酔う日は遠くなり酔仙翁★★★
廣田洋一
園丁の拾い集めし薔薇の花★★★
海沿いの真昼を飾るジギタリス★★★
白と黄の夏蝶舞える土手の道★★★
5月27日(2名)
多田 有花
渡り来て夜も鳴くなり時鳥★★★★
十薬や市営住宅片隅に★★★
一本のあやめのすっと立つ姿★★★
小口泰與
翡翠の鳴くを堪えて水中へ★★★
しののめや長き釣り竿鮎釣師★★★★
山雀のわが手にひょいと止まりけり★★★
5月26日(3名)
廣田洋一
七変化長き旅路の途につけり★★★
底石の白く光りて夏の川★★★★
冷やし中華青き野菜をひとつまみ★★★
小口泰與
風鈴の一斉に鳴る窓辺かな★★★★
野鳩より目白に目線行きにけり★★★
二人して野鳥撮影夏の朝★★★
多田有花
川風を受け薄紅の薔薇揺れる★★★
ばら後ろに笑顔で記念撮影す★★★
紅薔薇のうえに立ちたり風見鶏★★★★
5月25日(3名)
廣田洋一
甘酒に生姜刻みてすすりけり★★★
夏の雨止みて激しき日の光★★★
桜の実川へ下れる道汚す(原句)
「汚す」は、ご自分の説明的な判断なので、景を写生することをお勧めします。(髙橋正子)
桜の実川へ下れる道染める(正子添削)
小口泰與
心太村の六辻の山の店★★★
山風や夏したたかな湖畔にて★★★
風鈴の音色確かや湖の風邪(原句)
「風鈴の音色確かや湖の風」のミスタイプでしょうか。
「確か」の正体を聞き分けるとよいですね。(髙橋正子)
風鈴の音色ちりちり湖の風(正子添削例)
多田有花
<門司港レトロ>
薫風や昔貿易いま観光★★★
<門司港駅二句>
人はみな駅舎を見上げ入る薄暑★★★
近郊電車観光列車新緑に並ぶ★★★★
5月24日(3名)
小口泰與
日盛や赤城小沼の静けかり(原句)
日盛や赤城小沼の静けさよ(正子添削)
助動詞 「かり」 は上代東国方言で「けり」に相当し、活用語の連用形にしか付きません。
形容詞「静けし」の連用形は 静けく。したがって付けるなら「静けくかり」になりますが、形容詞に「かり」が付いた実例はありません。よって「静けかり」は文語として成立しません。(髙橋正子)
多田有花
<門司港レトロ三句>
初夏の潮流れし関門海峡を(原句)
初夏の潮流れき関門海峡を(正子添削)
「し」は助動詞「き」の連体形。末尾が「を」で終わると、「関門海峡を、それからどうした」という言いさしになります。「流れき」と終止形にすることで、ここで一句が完結し、切れが生まれます。(髙橋正子)
赤レンガの高き天井夏めきぬ★★★★
赤レンガ並びて静か門司五月★★★
廣田洋一
にょきにょきと筍の出る道の端(原句)
すくすくと筍の出る道の端(正子添削)
「にょきにょき」は擬態語としてやや幼く、句の格調を下げることがあります。「すくすく」は成長の素直さが出て、道の端の明るい季節感と合います。(髙橋正子)
ご仏前五月人形飾りけり(原句)
仏前に五月人形飾られし(正子添削)
原句は「仏前」と「五月人形」の関係がやや硬いです。添削句は受け身「飾られし」によって、静かな厳粛さと、季節の行事の気配が柔らかく立ちます。(髙橋正子)
コーヒーに引き寄せられし小蝿かな(原句)
コーヒーの香に魅かれ小蝿かな(正子添削)
「引き寄せられし」はやや説明的で重い。「香に魅かれ」とすることで、コーヒーの香りの立ち方と、小蝿の軽さが自然に描けます。(髙橋正子)
5月23日(4名)
小口泰與
遠き日の夏合宿の夜汽車かな(原句)
遠き日の夏合宿へと夜汽車かな(正子添削)
原句は「夏合宿」と「夜汽車」が文法上は並列になってしまい、「遠き日の夏合宿の夜汽車」という一まとまりに読めてしまいます。
実際に言いたいのは「夏合宿へ向かう夜汽車」という関係。「へと」を入れることで、目的地が明確になり、句の芯が一本通ります。(髙橋正子)
夏木影かげを求めて老夫婦★★★
夏の日の原始の力溢れけり★★★
「夏の日」のどんなところが「原始の力」なのでしょうか。(髙橋正子)
多田有花
<観光列車36ぷらす3・駅弁>
鶏天に大粒の苺のTAMATE箱★★★
<門司港駅二句>
門司港駅五月の風のぬけてゆく★★★
門司港駅出れば薄暑の光かな★★★
土橋みよ
豆飯や門に近づく靴の音★★★★
レモン植う庭に黄揚羽低く飛ぶ(原句)
レモン植う庭に黄揚羽はやも来て(正子添削)
元の句は、「レモン植う」と「黄揚羽低く飛ぶ」が並べただけになっていますので、これを少し関係づけ、一句に芯を通します。(髙橋正子)
飛行機雲辿れば立ちぬ雲の峰(原句)
飛行機雲の果てに立ちたり雲の峰(正子添削)
「辿れば」が説明になって、イメージがはっきりしないので、ここは、目に映ったことを写生をします。
ここで注意が必要です。
「飛行機雲」は「ひこうきぐも」と6字ですが、「拗音、長音」のある語が上五に置かれる時、5音として許容されています。俳句では、上五に地6音の字余りがあっても許容されています。(髙橋正子)
廣田洋一
足の裏筍探る斜面かな(原句)
足裏に筍探る斜面かな(正子添削)
「足の裏」で切ってしまうと、音として重いです。(髙橋正子)
広き野を吹き抜ける風五月★★★
紫陽花や一枝高く伸びており★★★
5月22日(2名)
多田有花
<観光列車36ぷらす3・駅弁>
大粒の苺がのるやTAMATE箱★★★
<門司港駅二句>
門司港駅出れば薄暑の光かな★★★
関門海峡五月の潮の流れおり(原句)
関門海峡五月の潮の流れかな(正子添削)
「おり」が景色を説明したままでとまっています。五月の潮の明るさが出るとよいと思います。(髙橋正子)
小口泰與
一陣の風に飛ばさる夏帽子★★★
静かなる光を浴びし夏の朝★★★
放水に蟻の溺れし庭真中(原句)
水遣りの水や溺るる蟻ひとつ(正子添削)
「放水」の語が大きすぎて、消防の消火活動のように見えます。(髙橋正子)
21日(3名)
小口泰與
甘そうな杏子に朝日煌煌と★★★
句材のセンスがとても良いです。「甘そうな」は、読者には伝わりにくいのが惜しいです。「煌煌と」が強すぎます。一語が強すぎるのを抑えるとよいです。(髙橋正子)
上枝より落ちたる雫緑雨かな★★★
この句も「上枝より落ちたる」が「緑雨」と言う格調ある季語に対して弱すぎます。逆に言えば、「緑雨」の一語が強すぎます。(髙橋正子)
着飾りて子の静けさや風薫る★★★
「着飾りて」が曖昧です。どのように着飾っているのか伝わりにくいのが惜しいです。着物なの、祭の衣装なのか、など。(髙橋正子)
多田有花
ごま豆腐湯葉豆腐食ぶ夏の宵★★★
別府湾の青さを望む夏の朝★★★
<観光列車36ぷらす3>
漆黒の車体輝き夏はじめ★★★
素材のセンスはも良く、イメージがはっきりして力がありますが、「動詞」が説明に寄っています。「食ぶ」「望む」など。これを省く方向で句をまとめるとよいです。(髙橋正子)
廣田洋一
茉莉花の路地一筋を抜けにけり★★★★
少しだけ街の明かるく更衣★★★
フランスパン抱えて帰る麦の秋★★★
「フランスパン」に対して「麦の秋」の情景が広がり過ぎが惜しい。(髙橋正子)