3月21日(水)

★流れ寄りまた離れゆき春の鴨   正子
北へ帰らない鴨というのは、食料が豊富など、その土地が住み易いということなのでしょうか。厳しい渡りもしなくて済みます。それはともかく、この句の鴨はのんびりと流れに身を任せ、ゆったりと寛いでいる様子です。その光景を通じて、春のうららかさが伝わってきます。(小西 宏)

○今日の俳句
青き残雪マトリョーシカの露天市/小西 宏
マトリョーシカは、ロシアの入れ子人形。「青き残雪」は、露天市の残雪の色でもあろうが、同時にロシア女性の瞳や湖を思い起こさせてくれる。毛皮にくるまってマトリョーシカの露天市を見て歩くのが、ロシアらしい。(高橋正子)

○菜の花
★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★一輌の電車浮き来る菜花中/松本旭

菜の花(なのはな、英語:Tenderstem broccoli)は、アブラナまたはセイヨウアブラナの別名でもあり、アブラナ科アブラナ属の花を指す。食用、観賞用、修景用に用いられる。春、一面に広がる菜の花畑は壮観で、代表的な春の風物詩でもある。現代の日本では、菜種油採取用のアブラナ畑はあまり見られなくなった。その他のアブラナ属の野菜も黄色い「菜の花」を咲かせるため、その種子採取用の畑が菜の花畑として親しまれている。このため、栽培されている作物はまちまちで、千葉県では早春のアブラナのほかに野菜類(カブやハクサイ)が、青森県横浜町では油用のセイヨウアブラナ、信州の菜の花畑はノザワナがそれぞれ5月に開花する。

3月のこの季節、菜の花は季節の食材として店頭にも多く並ぶようになった。3月18日に家族で椿山荘で食事をしたとき、菜の花のからし酢味噌かけがあった。天もりは、芽紫蘇。若い者たちも「菜の花のからし酢味噌かけ」が一番おいしかったと答えた。味のリズムと触感と彩りと季節感があったのだろう。

★まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

★菜の花へ風の切先鋭かり/高橋正子
★菜の花も河津桜も朝の岸/高橋正子
★菜の花の買われて残る箱くらし/高橋正子

◇生活する花たち「山茱萸(さんしゅゆ)・満作・梅」(横浜日吉本町)

3月20日(火)/春分の日

★春分の日といい空に飛行機音  正子
春分の日。きっと雲ひとつない青空が広がっているのでしょう。見えない飛行機の飛ぶ音が、その広い青空を感じさせてくれます。(高橋秀之)

○今日の俳句
大空はどこまでも青く辛夷咲く/高橋秀之
真っ青な大空に、花びらをひらひらと崩して辛夷が咲いている。大空の青に対して、自然の姿をよくとどめる辛夷の花が印象的な句である。(高橋正子)

○春分
★春分の日をやはらかくひとりかな/山田みづえ
★春分の日切株が野に光る/安養白翠
★春分の田の涯にある雪の寺/皆川盤水

 春分(しゅんぶん)は、二十四節気の第4。二月中(旧暦2月内)。現在広まっている定気法では、太陽が春分点を通過した瞬間、すなわち太陽黄経が0度となったときで、3月21日ごろだが、今年は3月20日。暦ではそれが起こる日だが、天文学ではその瞬間とする。
 春分の日(しゅんぶんのひ)は、春分が起こる日である。しばしば、「昼と夜の長さが同じになる。」といわれるが、実際は昼の方が長い。春分の日は、日本の国民の祝日の一つである。祝日法第2条では「自然をたたえ、生物をいつくしむ」ことを趣旨としている。仏教各派ではこの日「春季彼岸会」が行われ、宗派問わず墓参りをする人も多い。

★春分の日といい空に飛行機音 正子

○山茱萸(さんしゅゆ)
★山茱萸の花こぞりて黄を凝らす/塩川雄三

 サンシュユ(山茱萸、学名:Cornus officinalis Sieb. et Zucc.)は、ミズキ目ミズキ科の落葉小高木。樹皮は薄茶色で、葉は互生し長さ4-10 cmほどの楕円形で両面に毛がある。3月から5月にかけ、若葉に先立って花弁が4枚ある鮮黄色の小花を木一面に集めてつける。花弁は4個で反り返り、雄しべは4個。夏には葉がイラガやカナブンの食害を受ける。晩秋に付ける紅色楕円形の実は渋くて生食には向かない。
 中国及び朝鮮半島の原産地に分布する。江戸時代享保年間に朝鮮経由で漢種の種子が日本に持ち込まれ、薬用植物として栽培されるようになった。日本では観賞用として庭木などにも利用されている。日当たりの良い肥沃地などに生育する。

★山茱萸の花見て空の青を見し/高橋正子

◇生活する花たち「椿・馬酔木の花・土佐みずき」(東京関口・椿山荘庭園)

3月19日(月)

★花すもも散るや夜道の片側に   正子
すももの花は梅や桜ほど目立たず、どちらかと言えば、ひっそりと薄いピンクの花びらで控えめに咲く花。その花びらが片側の夜道に散り、うっすらピンクの明かりを成している・・。花すももの大変控笑めながら風情のある光景が素晴らしい。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
まんさくの花は青空絡めけり/桑本栄太郎
まんさくの花は、古色めいた黄色の細い花びらが、からまったように咲く。青空に咲きだせば、青空を絡めて咲いているように見える。(高橋正子)

○椿

[東京関口・椿山荘庭園の椿]

★ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に/高浜虚子

★赤い椿白い椿と落ちにけり/河東碧梧桐
子規が取り上げ、印象明瞭を好む句の一例としたので、碧梧桐の代表句となった。明治29年の作。碧梧桐24歳であった。(高橋信之)

★日当たって山の椿の花であり/高橋正子
山を歩いていますと、少し前からヤブツバキが咲き始めているのを見るようになりました。まだ少し寒さが残るころから咲き出し、このまま春が終わるまで咲いては散り、咲いては散りでいて咲き続けて行きます。そこに日が当たっている、日差しの明るさが思われます。(多田有花)

○家族食事会
昨日、椿山荘の庭園内にあるそば処「無茶庵」で家族食事会。息子夫婦と姪を呼んで食事をした。季節の彩りさくら蕎麦御膳を注文したが、どうかと思った「さくら蕎麦」もまあまあ。蕎麦好きの息子にはもう一枚普通のせいろ蕎麦を注文。北海道産100%そば粉を使用した蕎麦。花冠フェスでもここで皆さんと天せいろの昼食をとった。食事の後は、椿山荘カフェ「フォレスタ」の自家製ケーキとお茶をいただく。自家製ケーキに女子は大喜び。

食事の前に椿山荘の庭園を信之先生、姪と一巡したが、何本かある河津桜も終わりかけ、あの種この種の椿の花が庭園の方々に咲いている。椿山荘の椿は初めて。昨日の雨が上がったばかりの庭園の空は曇り。カメラのフラッシュを禁止にし、明るさを調節して椿を撮る。椿の赤い色をきれいに撮るのは素人には難しい感じがする。やはり庭園の椿で、花の姿や葉の茂り具合がほど良く品がある。椿山荘にはもともと椿が自生していたようだが百種近い椿植栽されている。白い椿の「初嵐」もまだ咲いて、砥部のわが家にあったので、その花姿を懐かしく見た。雨が降ると、花粉で白い花がうっすらと汚れるが、汚れ具合が記憶の通り。

椿山荘は、結婚式場としても有名だが、庭園には、写真を撮る花嫁の姿が見られる。鐘が鳴るので、何時の鐘と思うとそれは結婚式の終わりを告げる鐘なのだそうだ。そんな雰囲気の庭園には、椿のほかに河津桜、馬酔木、さんしゅゆ、紅梅、土佐みづきなどが咲いていた。お彼岸ごろの花たちである。

椿山荘を出て、隣の関口芭蕉庵に寄る。小さな戸を開けて入るや、つくばいに椿が一花浮かせてあった。庭は雨のあと足元が危ないが、瓢箪池の周りには蕗の花がたくさん咲いている。娘と姪に芭蕉堂、芭蕉塚も見せる。そのあと、胸つき坂を上り、細川家の永青文庫と野間記念館の建物だけを見せた野間記念館は目白通り。少し先には佐藤春夫の旧居がある。そこより引き返し、雨のぱらつく中を早稲田正門まで歩き、バスで高田馬場へ。目黒経由で帰宅。行きは江戸川橋で降り、江戸川公園と神田川に添いの桜並木を歩いた。桜が一本とさんしゅゆが咲いていた。音羽町商店会のぼんぼり提灯が並木に取り付けられていた。

http://www.chinzanso.com/

◇生活する花たち「椿①・椿②・馬酔木の花」(東京関口・椿山荘庭園)

3月18日(日)

★囀りの抜け来る空の半円球   正子
何処からとも無く囀りが聞こえて来る季節。ふと立ち止まって鳥を追うがその姿は見えない。しかし青い空は何処までも広がって辺りに何の障害物の無い野山で有れば尚のこと広大な半円球の空から漏れてくるかの様です。「囀りの抜け来る空」は自然界に生かされて生きている「尊いいのち」を感じます。(佃 康水)

○今日の俳句
チェロの夕果てて仰げば春の月/佃 康水
チェロの演奏会が果て、余韻を引いて外に出れば春の月が出ている。「秋の月はさやけさを賞で、春の月は朧なるを賞づ」と言われるが、「澄んであたたかい感じ」の春月もよい。チェロの余韻が広がる。(高橋正子)

○彼岸
★兄妹の相睦みけり彼岸過/石田波郷
★竹の芽も茜さしたる彼岸かな/芥川龍之介

俳句の季語では、「彼岸」と言えば、春の彼岸で、秋の彼岸の季語は「秋彼岸」という。季語「彼岸」は、春分の日をはさんだ3月18日から24日までの七日間だが、今年の彼岸は、3月17日から23日までの七日間。寺では彼岸会を修し、先祖の墓参りをする。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、このころから春暖の気が定まる。「彼岸前」「彼岸過」「中日」も季語として扱われ、いずれも春の季語である。信之先生の彼岸六句を紹介。

   松山持田、臥風先生句碑2句
 わが坐り師の句碑坐り彼岸の土
 彼岸の風吹きゆき句碑の石乾く
 涅槃西風寺苑にいっとき騒ぎて止む
 彼岸の雨去りたり寺苑少し湿らせ
 線香の燃え速し彼岸の風に吹かれ
 遍路杖たてるそれぞれバスの席に

 信之先生は、松山にいたころ、彼岸となると恩師の川本臥風先生の句碑を訪ねることが多かった。
 城山が見えている風の猫柳 臥風
 松山の旧制松山高校のグランドの隅に建っている句碑である。旧制松山高校は、松山市持田にあったが、今は愛媛大学付属小中学校となっている。私が大学に入学した時は、旧制松山高校時代の木造校舎が残され、そこでも講義があった。信之先生はそこの教授であった。

◇生活する花たち「梅・ヒイラギ南天・山茱萸(さんしゅゆ)」(東京関口・江戸川公園)

3月17日(土)/彼岸入り

★つばき落ちる音の一会に朝厨   正子
つばきが落ちるかすかな音、それを朝の厨で耳にされました。朝まだ早い時間の厨の静けさ、そしてその音を「一会」ととらえられた詩心の確かさ、日常のなかにあって深くて明るい豊かな生活が思われます。(多田有花)

○今日の俳句
新刊の図書を抱きて春風に/多田有花
新刊の図書には、本の匂いがして、これから読もうとする気持を高めてくれる。買い求めた新刊書をもって、春風のなかにいることは知的なよろこび。(高橋正子)

◇生活する花たち「梅・三椏の花・菜の花」(伊豆修善寺2011)

3月16日(金)

  伊豆
★わさび田の田毎に春水こぼれ落つ  正子
透明な空気、清冽な水に育つという山葵。田毎にさらさらと流れる春の水がゆたかにわさび田をうるおし、あふれるほどにこぼれ落ちる水の音も聞こえてくるようです。(小川和子)

○今日の俳句
切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

○李(すもも)の花
★珠の瀬の見ゆれば光り李咲く/山口青邨
★雲裏の日のまぶしさよ花すもも/木下夕爾

すももの花は、桃の花より咲くのが遅い。中国原産の落葉小喬木で、高さ3メートル余。白色楕円形の五弁花。枝葉ともに桃に似ているが、花は形が小さく数が非常に多い。仲春から晩春に欠けてる通常葉より先に咲く。すももの花をピンク色と思われる方もいるが、小さい白い五弁花が咲き集まれば、うすみどりにさえ見え、ややさびしげな表情がある。散り際のすももに風が吹くとちいさな花が道や畑に白く散り敷く。
果実のすももは大きく分けて、中国原産の「日本すもも(プラム)」と、ヨーロッパコーカサス原産の「西洋すもも(プルーン)」の2つに分類され、それぞれ色や味が異なる。すももは英語で「プラム」、フランス語で「プルーン」という。甘酸っぱくてジューシーな果実で初夏から夏に収穫される。

★花すもも散るや夜道の片側に/高橋正子

○第1回花わさび句会
一昨日(14日)に、湯ヶ島の安藤智久さんと婚約者の鮎川亜紀子さんが来宅。第1回花わさび句会(安藤智久世話人)を開いた。
★スイートピー活け婚約の君ら待つ/信之
★春風吹くかもてなしのケーキの匂い/信之
★映写機の音からからと春の宵/智久
★ころころと祝いの席の春苺/智久
★田の光りなずなはこべの花にあり/正子
★花束のように手渡され花わさび/正子

智久さんからは、丹精の大きなわさびや、今がシーズンの花わさびなどをいただいた。花わさびはテーブルに活けている間にもあたたかいせいか、花が開く。蕾のときがおいしいということで、帰られたあとさっそく三杯酢につけた。野趣味があって一品である。花わさびを束ねているテープにレシピが書いてあったのでそれを参考につくる。砂糖はほんの少し控えたがあとはレシピどおり。

◇生活する花たち「河津桜」(伊豆河津2011)

3月15日(木)

★真っすぐな日の差すところ蕗のとう   正子
蕗のとうを見つけた、それも日が差しているその中にいる自分、春が来た喜びが伺えます。(祝恵子)

○今日の俳句
初摘みの土筆を持ちて病室へ/祝恵子
入院していれば、季節のもの、戸外のものがうれしい。初摘みの土筆に春が来たことが共に喜べることであろう。(高橋正子)

○花苺
★満月のゆたかに近し花いちご/飯田龍太
★岬より帰路は岐れて花苺/古舘草人

苺は、アメリカ大陸原産で、日本には江戸時代にオランダから渡来したので、「オランダイチゴ」とも呼ばれている。苺には種類が多く、草苺、蛇苺、五葉苺、蓮の葉苺、苗代苺等の花も、苺の花として詠む。茎は地面を這う。花は、白い5弁花。花が終わると花床部がどんどん肥大してきて「イチゴ」の実になる。

◇生活する花たち「木瓜・沈丁花・紅梅」(横浜日吉本町)

3月14日(水)

★どの家にも影あり残る春の雪   正子
今年は本格的な春が遅く、おそがけに雪が降るようです。横浜もおそがけに降ったのでしょうか。日の当るところはすぐにも消えるのでしょうが、日陰には少し残ります。「どの家にも影あり」の措辞がまだ寒い春をうまく詠まれていると思います。(古田敬二)

○今日の俳句
御岳の遠望さんしゅゆ開く日に/古田敬二
木曽の御岳が遠望され、ここに早春の花のさんしゅゆが開き始めた。御岳はまだ雪を冠っているだろう。雪の白さ、山の青さに、さんしゅゆの黄色が澄んであざやか。早春ここにあり。(高橋正子)

○馬酔木
★馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ/水原秋桜子
★百済観音背高におはし花あしび/鈴鹿野風呂

 アセビ(馬酔木 Pieris japonica subsp. japonica.)は、本州、四国、九州の山地に自生するツツジ科の常緑樹。樹高は1.5mから4mほどの低木で観賞用に植栽もされる。別名あしび、あせぼ。。葉は楕円形で深緑、表面につやがあり、枝先に束生する。早春になると枝先に複総状の花序を垂らし、多くの白くつぼ状の花をつける。果実は扇球状になる。有毒植物であり、葉を煎じて殺虫剤とする。有毒成分はグラヤノトキシンI(旧名アセボトキシン)。
 馬酔木の名は、馬が葉を食べれば苦しむという所からついた名前であるという。 多くの草食ほ乳類は食べるのを避け、食べ残される。そのため、草食動物の多い地域では、この木が目立って多くなることがある。たとえば、奈良公園では、シカが他の木を食べ、この木を食べないため、アセビが相対的に多くなっている。逆に、アセビが不自然なほど多い地域は、草食獣による食害が多いことを疑うこともできる。

  東山・慈照寺
★花あしびしずけきものに山の路/高橋正子

◇生活する花たち「サフラン・菜の花・梅」(横浜日吉本町)

3月13日(火)

★春砂をゆきし足跡は浅し   正子
砂浜を歩みながら残る足跡の浅さに、春の浜辺の柔らかな明るさが漂います。打寄せる波音の静けさも感じられる、心惹かれる穏やかな浜辺の情景です。 (藤田洋子)

○今日の俳句
三月の風に乾きしものたたむ/藤田洋子
春三月の風に心地よく乾いたものに清潔さと、「たたむ」という日本人の慎ましい行為がある。(高橋正子)

○所得税確定申告
国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」で、確定申告の申告書を作り、念のため、速達で郵送した。ポップアップのブロックを無効にしなければならなかったので、取りかかりに手間取った。昨年まではこのようなことはなかったのだが。
http://www.nta.go.jp/

○ヒヤシンス
★一筋の縄引きありてヒヤシンス/高浜虚子
★敷く雪の中に春置くヒヤシンス/水原秋桜子
★室蘭や雪ふる窓のヒヤシンス/渡辺白泉
★一月の紫の濃きヒヤシンス/高橋信之

 ヒヤシンス(風信子、飛信子、学名:Hyacinthus orientalis)はユリ科(APG植物分類体系ではヒヤシンス科)の球根性多年草。耐寒性秋植え球根として扱われ、鉢植えや水栽培などで観賞され、春先に香りのよい花を咲かせる。
地中海東部沿岸からイラン、トルクメニスタン付近の原産。オスマン帝国で栽培され園芸化された。16世紀前半にはヨーロッパにもたらされ、イタリアで栽培されていた。16世紀末にはイギリスに伝来し、18世紀から19世紀にかけて盛んに育種が行なわれ、数百の品種が作られた。日本には1863年に渡来。しかしイギリス系のヒヤシンスは20世紀初頭に衰退し、現在は品種もほとんど残っていない。これとは別に、現在普通に栽培されるのは地中海北東部原産のダッチヒヤシンスで、18世紀から主にオランダで改良され2,000以上の栽培品種が作出された。これは1本の茎に青、紅、白、淡黄色などの花を多数つける。
 ヒアシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。同性愛者であった彼は、愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた(古代ギリシャでは同性愛は普通に行われ、むしろ美徳とされていた)。しかしその楽しそうな様子を見ていた西風の神ゼピュロス(彼もヒュアキントスを愛していた)は、やきもちを焼いて、意地悪な風を起こした。その風によってアポロンが投げた円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額を直撃してしまった。アポロンは医学の神の力をもって懸命に治療するが、その甲斐なくヒュアキントスは大量の血を流して死んでしまった。ヒアシンスはこの時に流れた大量の血から生まれたとされる。このエピソードから花言葉は「悲しみを超えた愛」となっている。(インターネット百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」より)

 わが家では、年末水栽培のヒヤシンスを買い、早も咲いていたのだが、花の匂いを楽しんだ。水栽培で子どもたちでも楽しめる。寒いときの花の香りは、つうん一筋通った香りだ。水仙、沈丁花、ヒアシンスなど。

★ヒヤシンスの香り水より立つごとし/高橋正子

◇生活する花たち「木瓜・沈丁花・紅梅」(横浜日吉本町)

3月12日(月)

★蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し   正子
山菜の苦味は春の味です。それと同時にその色もまた春を教えてくれるものであるとあらためて思いました。早春のすがすがしさがあふれています。(多田有花)

○今日の俳句
春の雪正午の鐘の音をつつむ/多田有花
もとの句は、主語と目的語の関係において、読みづらいので、添削。春の雪はやわらかいものであるが、それが「物」を包むのではなく、「(鐘の)音」を包むところに、この句のユニークさがある。春の雪の降るなかでは、正午の鐘の音も詩情をもって聞き届けられる。(高橋正子)

○菜の花
★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★家々や菜の花いろの灯をともし/木下夕爾

菜の花(なのはな、英語:Tenderstem broccoli)は、アブラナまたはセイヨウアブラナの別名でもあり、アブラナ科アブラナ属の花を指す。食用、観賞用、修景用に用いられる。春、一面に広がる菜の花畑は壮観で、代表的な春の風物詩でもある。現代の日本では、菜種油採取用のアブラナ畑はあまり見られなくなった。その他のアブラナ属の野菜も黄色い「菜の花」を咲かせるため、その種子採取用の畑が菜の花畑として親しまれている。このため、栽培されている作物はまちまちで、千葉県では早春のアブラナのほかに野菜類(カブやハクサイ)が、青森県横浜町では油用のセイヨウアブラナ、信州の菜の花畑はノザワナがそれぞれ5月に開花する。

★菜の花へ風の切先鋭かり/高橋正子
★菜の花も河津桜も朝の岸/高橋正子
★菜の花の買われて残る箱くらし/高橋正子

◇生活する花たち「山茱萸(さんしゅゆ)・木瓜・三椏の花」(横浜四季の森公園)