今日の秀句/11月1日~10日


11月10日(1句)

★新調のガステーブルや冬構え/桑本栄太郎
温かいものが恋しく有り難い冬。その冬に備えて、ガステーブルを新調した。ガスの炎もきれいに勢いよくあがり、うれしい。なんでも新しいものというのは、いいものだ。楽しい冬が迎えられそうだ。(高橋正子)

11月9日(2句)

★白樺へ降りくる霧の音したり/小口泰與
白樺へ降る霧に音がする。鋭敏な耳が捉えた音なのだが、逆を言えば、それほどに霧の降る音が激しいこととも言える。白樺と霧の取り合わせが写真のようで、美しい。(高橋正子)

★木瓜の実の少し歪みて道草庵/廣田洋一
道草庵は新宿の漱石公園にある。そこの木瓜の実。少しいびつな木瓜の実に、文人趣味の風雅な色と形がある。(高橋正子)

11月8日(1句)

★飛行機雲秋天をゆく本願寺/多田有花
本願寺の広大な境内があって、その上の広い秋天。飛行機雲も大きくのびやかに描かれる。飛行機と寺。異質なようで、有りうる景色。(高橋正子)

11月7日(1句)

★山からの強き冷気や梅擬/小口泰與
山から冷気が下りてくる。山国に冬が間近。梅擬の実がつやつやと冷気に磨かれるように光っている。山からの冷気と梅擬の取り合わせ。その両方の引き合う力に冬の厳しさが予感される。(高橋正子)

11月6日(2句)

★街角の桜紅葉の進まざる/廣田洋一
街角の日々通るところの桜紅葉。日ごと紅葉がすすむのを楽しみにするが、なかなか進まない。山間部のように昼夜の気温差もさほどなく、街中の暮らしも平穏さと相俟っている気もする。これも確かな事実。(高橋正子)

<京都御所>
★快晴の御池庭より紅葉初む/多田有花
京都御所が一般公開され、大勢の観光客をたのしませている。折も秋晴れの良い季節。平安時代を忍ばせる御所のなかの御御池庭から紅葉し始めたのも風雅。(高橋正子)

11月5日(1句)

★鳥の声遠ざかりゆく神渡/廣田洋一
「神渡」は陰暦10月ごろの西風。神々を出雲へと背を押す風で、船用語と言われる。神渡が吹いて、鳥たちを神々とともに遠くへ連れ去ったのであろう。鳥の声が遠ざかってゆく。見えない神々の姿を、鳥たちの声のまにまに重ねて想像するのも、面白いかもしれない。(高橋正子)

11月4日(1句)

★新松子村へ隧道開通す/小口泰與
村へ隧道が通り、村の人たちは生活が便利になり、明るい気持ちになっている。新松子の緑が新鮮で、「隧道の開通を寿いでいるかのように、印象に残る。(高橋正子)

11月3日

※該当句無し

11月2日(1句)

★森ゆけば木の実落つ音またひとつ/多田有花
秋の森は、しんとして、耳敏くなる。歩めば、木の実が落ちる音に会う。やがて、またひとつ。木の実の落ちる音と、森の静寂。秋の深まりに人も心深む気がする。(高橋正子)

11月1日(1句)

★朝寒やメモリー深くトースター/桑本栄太郎
朝の寒さを覚えるようになった。朝食のトーストを温かくして、こんがりとよく焼いて食べたい。焼き加減のメモリーを時間を長くした。温かいものがうれしい朝の寒さだ。気負わず詠んだのが、軽い朝食とぴったりとしている。(高橋正子)

11月1日~10日


11月10日(3名)

小口泰與
遠山は翠微や庭の散紅葉★★★
薪小屋は満杯なりし神の留守★★★★
一生を駄菓子と歩む石蕗の花★★★

廣田洋一
紅葉散る川の流れに変わりなし★★★
川もをば錦に染めし散紅葉★★★
子ら帰り砂場の山に紅葉散る★★★★

桑本栄太郎
新調のガステーブルや冬構え★★★★
温かいものが恋しく有り難い冬。その冬に備えて、ガステーブルを新調した。ガスの炎もきれいに勢いよくあがり、うれしい。なんでも新しいものというのは、いいものだ。楽しい冬が迎えられそうだ。(高橋正子)

初冬の日差し眩しき車窓かな★★★
パレードの皇居前なり冬日燦★★★

11月9日(4名)

小口泰與
草紅葉岸辺にボート積まれける★★★
白樺へ降りくる霧の音したり★★★★
白樺へ降る霧に音がする。鋭敏な耳が捉えた音なのだが、逆を言えば、それほどに霧の降る音が激しいこととも言える。白樺と霧の取り合わせが写真のようで、美しい。(高橋正子)

沼風に枯木となりし白樺よ★★★

桑本栄太郎
スキップのボニーテールや冬ぬくし★★★
巣に掛かる落葉掃いぬ女郎蜘蛛★★★
新しきガステーブルや冬構え★★★★

廣田洋一
青空に白雲浮かび実南天★★★
冬の蝶急ぎ飛び去る梢かな★★★

木瓜の実の少し歪みて道草庵★★★★
道草庵は新宿の漱石公園にある。そこの木瓜の実。少しいびつな木瓜の実に、文人趣味の風雅な色と形がある。(高橋正子)

多田有花
<西本願寺三句>
本願寺陽ははや斜めに末の秋★★★
菊香る西本願寺境内に★★★★
丹精の末の大菊並びおり★★★

11月8日(4名)

小口泰與
雨の中杉の大樹に蔦紅葉★★★★
暁の山紫紺に染まり梅擬★★★
秋ばらが見事ですねと声かかる★★★

廣田洋一
冬来るきつぱりととは言ひ難し★★★
立冬の空青々と柚子光る★★★★
立冬や宅配便の酒届く★★★

桑本栄太郎
何気なく両手擦りぬ今朝の冬★★★
もくれんの冬芽控える葉陰かな★★★
足もとの冷えの早くも京の夜★★★★

多田有花
トラットリアへ細き階段秋うらら★★★
パスタランチ芋のスープのまろやかに★★★
飛行機雲秋天をゆく本願寺★★★★
本願寺の広大な境内があって、その上の広い秋天。飛行機雲も大きくのびやかに描かれる。飛行機と寺。異質なようで、有りうる景色。(高橋正子)

11月7日(4名)

小口泰與
山からの強き冷気や梅擬★★★★
山から冷気が下りてくる。山国に冬が間近。梅擬の実がつやつやと冷気に磨かれるように光っている。山からの冷気と梅擬の取り合わせ。その両方の引き合う力に冬の厳しさが予感される。(高橋正子)

山風に耐ふる石仏竹の春★★★
すすめられ生姜の湯をば飲みにけり★★★

廣田洋一
南国の旅から帰り秋惜しむ★★★
思ひ出の写真を見つつ秋惜しむ★★★
並木の枝切り払われて秋深し★★★★

桑本栄太郎
土手道の夕日透き居り草紅葉(原句)
土手道に夕日透き居り草黄葉★★★★(正子添削)

暮れなずむ今日の一日や秋惜しむ★★★
こもれ灯となりて厨に花八手★★★★

多田有花
<二条城三句>
金屏風立て秋深き二条城★★★
秋水を満たせる二条城の堀★★★★
澄む秋の門とお庭を巡りけり★★★

11月6日(4名)

小口泰與
磴道を風に煽らる銀杏の実★★★★
雨音のそれぞれの音柿紅葉★★★
霧襖認知機能の検査かな★★★

廣田洋一
山の端に薄化粧せる初紅葉★★★
街角の桜紅葉の進まざる★★★★
街角の日々通るところの桜紅葉。日ごと紅葉がすすむのを楽しみにするが、なかなか進まない。山間部のように昼夜の気温差もさほどなく、街中の暮らしも平穏さと相俟っている気もする。これも確かな事実。(高橋正子)

紅葉狩り旅の誘ひの重なれり★★★

多田有花
<京都御所三句>
快晴の御池庭より紅葉初む★★★★
京都御所が一般公開され、大勢の観光客をたのしませている。折も秋晴れの良い季節。平安時代を忍ばせる御所のなかの御御池庭から紅葉し始めたのも風雅。(高橋正子)

秋晴の御常御殿と御内庭★★★
瓦みな菊の御紋や秋うらら★★★

桑本栄太郎
錦木の葉裏透き居る照葉かな★★★★
たそがれの釣瓶落としや買物に★★★
光陰の斯くも短き秋入日★★★

11月5日(4名)

小口泰與
おちこちへ木の実時雨や鳥の声★★★★
渦巻きし利根の瀞場やななかまど★★★
どんぐりのぷちぷち踏まれ痛かろう★★★

廣田洋一
鳥の声遠ざかりゆく神渡★★★★
「神渡」は陰暦10月ごろの西風。神々を出雲へお連れする風で、船用語と言われる。神渡が吹いて、鳥たちを神々とともに遠くへ連れ去ったのであろう。鳥の声が遠ざかってゆく。見えない神々の姿を鳥たちの声のまにまに重ねて想像するのも、面白いかもしれない。(高橋正子)

天文台白く光れる神渡★★★
荒畑の草のひれ伏し神渡★★★

多田有花
<京都御所三句>
澄む秋の御苑の門をくぐりけり★★★
天高く朱塗りの門と紫宸殿★★★
清秋や青鷺来る御池庭★★★

桑本栄太郎
ベランダの日を占め干すや秋日向★★★
道草の小径に在りぬ木の実かな★★★
天空の青に沈めり昼の月★★★★

11月4日(3名)

小口泰與
残照の岸辺烏と柿紅葉★★★
浅間嶺へ日の退くや夕化粧★★★

新松子村へ隧道開通す★★★★
村へ隧道が通り、村の人たちは生活が便利になり、明るい気持ちになっている。新松子の緑が新鮮で、「隧道の開通を寿いでいるかのように、印象に残る。(高橋正子)

多田有花
<京都アクアリーナ>
花いっぱいリンクに現る冬隣★★★
<ホテルインターゲート京都>
湯あがりにぶぶ漬け食べる京の秋★★★
筒抜けの秋空戴く京都御所★★★★

桑本栄太郎
秋うららスキップ走りの少女かな★★★
木枯の一番来たる冬隣★★★
ひつそりと雲と見まごう昼の月★★★

11月3日(3名)

小口泰與
夕紅葉天を支える奇岩かな★★★
小犬はや厚き装い冬隣★★★
白玉の落ちる刹那や雨後の菊★★★

多田有花
<京都文化博物館・ミュシャ展>
秋深き京都やミュシャのリトグラフ★★★
<旧日本銀行京都支店>
秋夕日煉瓦造を照らしおり★★★
<京都アクアリーナ>
人波についていくなり秋の暮★★★

桑本栄太郎
姫と云うゑのころ草や金の穂に★★★
匂いよき京の香りや藤袴★★★
英語試験の延期と聞くや文化の日★★★

11月2日(3名)

小口泰與
トーストの匂いや里の柿の路地★★★★
秋風やゲートボールに一人来ず★★★
見晴るかすコキア紅葉の丘の道★★★

桑本栄太郎
仰ぎ見る空の青さや銀杏黄葉★★★★
溝川の水の流れや天高し★★★
穭田のひつじ穂垂るる稔りかな★★★

多田有花
身に入みて首里城焼失を聞けり★★★
秋深しレンジでアーモンドバター餅★★★

森ゆけば木の実落つ音またひとつ★★★★
秋の森は、しんとして、耳敏くなる。歩めば、木の実が落ちる音に会う。やがて、またひとつ。木の実の落ちる音と、森の静寂。秋の深まりに人も心深む気がする。(高橋正子)

11月1日(3名)

小口泰與
湖へ夕日染み入る照葉かな★★★
しめやかな雨に鶏頭燃ゆるかな★★★★
溶岩原の桑の楉や赤とんぼ★★★

廣田洋一
秋の海釣り糸垂らす浅瀬かな★★★★
椋鳥や餌を載せたる手に群れし★★★
ハロウィンや二匹踊れるゴジラかな★★★

桑本栄太郎
朝寒やメモリー深くトースター★★★★
朝の寒さを覚えるようになった。朝食のトーストを温かくして、こんがりとよく焼いて食べたい。焼き加減のメモリーを時間を長くした。温かいものがうれしい朝の寒さだ。気負わず詠んだのが、軽い朝食とぴったりとしている。(高橋正子)

”身の丈”と言うは辞任へ秋寒し★★★
何はともあれ駆けつけのぬくめ酒★★★

自由な投句箱/10月21日~31日


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今日の秀句/10月21日~31日


10月31日(1句)

★青空やまさに照葉の照葉峡/小口泰與
照葉峡は、群馬県の紅葉の名所と聞く。みなかみにあり、10月には色づき始めるという。水原秋櫻子も訪ね、渓流の大小の滝に名前を付けたと言われる。その名の通り、照葉が青空に映える美しさは例えようがない。(高橋正子)

10月30日(2句)

★銀杏落葉踏みて行きたる一号館/廣田洋一
銀杏落葉が降り敷いている。一号館とあるから、二号館、三号館もあるような構内であろう。広い敷地に散り敷いた銀杏落葉の量を必然思ってしまう。一号館に特別意味を持たせてはいないだろうが、リアルであって、建物の配置が想像できる。(高橋正子)

★松手入れの音のみ聞こゆ門構え/多田有花
門構えの広い御屋敷の、どかかから聞こえてくる松手入れの音。手入れをする植木屋の姿は奥深くて見えないが、音だけ聞こえてくる。リズミカルな音が快い。(高橋正子)

10月29日(2句)

★自転車の下校の列や秋しぐれ/桑本栄太郎
自転車で下校の生徒たち。つぎつぎに銀輪がつながって走ってゆく。晴れなら輝く銀輪も、今日は秋しぐれに降られて、冷たそうに回るだけ。秋しぐれにぬれつつ帰る下校生を思いやった句。(高橋正子)

★青空やすっと薄の雲に届く/多田有花
山頂の薄であろう。青空にすっと薄がのびて、雲に届くかに。「すっと」がよく効いて、気持ちのよい句となった。(高橋正子)

10月28日(1句)

★飼われおる猪盛んに水浴びを/多田有花
猪が飼われていることを初めて知ったが、猪鍋料理もあるから、飼われても不思議はない。天気がよかったのだろうか、飼われている猪が水浴びを喜んでいる。飼われていながら喜んで水浴びをしている様子だ。こう見ると猪がずいぶんかわいらく見える。(高橋正子)

10月27日(1句)

★鳥どちのしきりに鳴けり実南天/廣田洋一
赤く熟れた実南天は、秋の深まりを強く感じさせてくれる。実南天だけでなく、いろんな実物が熟れて、鳥たちも喜び、しきりに鳴いて、生き生きとしている。(高橋正子)

10月26日(2句)

★午後の陽のやわらか残るコスモスへ多田有花
晩秋となっても咲き続けるコスモス。咲き方も次第にさびしくなってはいるが、午後の陽がさすと、いっそうやわらかな花になる。見ているものの気持ちも、もちろん、優しい。(高橋正子)

★陽を浴びて香り濃くなる金木犀/廣田洋一
金木犀はよく香るときとそうでないときがあるようだ。陽を浴びたときは、特によく香るのだろう。陽を浴び、金色の花となった金木犀が精いっぱいに香っている。(高橋正子)

10月25日(1句)

★地震起こり忽ととまりし虫の声/小口泰與
地震が起こると、それまで鳴いていた虫がぴたりと鳴き止んだ。天変地異をいち早く感じとるのは動物たちであろう。その敏感さには驚くばかりである。(高橋正子)

10月24日(2句)

★歯磨きの水の硬さに冬近し/廣田洋一
「水の硬さ」に実感がある。毎日の生活の中で、一日として同じ日はない。今朝は歯磨きをする水に硬さを感じた。それが、冬の近さを感じさせたのだ。(高橋正子)

★霜降の海が遠くで光りおり/多田有花
霜降の日、海の遠いところが光っていた。ただ、それだけのようだけれど、近くの海でなく、遠くの海が光ること、これ自体が節季の変化を表すことだと言えるでしょう。(高橋正子)

10月23日(1句)

★敗荷に真昼の光明るかり/多田有花
夏の間、葉が重なり合って茂っていた蓮池。敗荷となって、秋の日が存分に射し込むようになった。敗荷田に差す光が枯れていく蓮の有様に対して、あまりのも明るいことに驚いた。(高橋正子)

10月22日(2句)

★張り紙は新蕎麦とあり峠口/小口泰與
峠口の店に新蕎麦と張り紙がしてある。近隣で採れた新蕎麦であろうと思われて、ここで食べて行かねばならないだろうという気にさせてくれる。蕎麦好きには、たまらない張り紙である。(高橋正子)

★夕暮れの灯かりとなりぬ柿の村/桑本栄太郎
夕暮になると色づいた柿の実が灯りのように浮かび出る。日が落ちてしまえば、その柿の実も暗くなってしまうのだが、そのわずかの時間が愛おしく思える。(高橋正子)

10月21日(1句)

★大山の白樺夜露や直哉の忌/桑本栄太郎
志賀直哉は、大正時代の白樺派を代表する作家の一人。大山の白樺に置く夜露を見て直哉を忍んだ。
大山(だいせん)は栄太郎さんの故郷鳥取の山。(高橋正子)

10月21日~31日


10月31日(4名)

小口泰與
青空やまさに照葉の照葉峡★★★★
照葉峡は、群馬県の紅葉の名所と聞く。みなかみにあり、10月には色づき始めるという。水原秋櫻子も訪ね、渓流の大小の滝に名前を付けたと言われる。その名の通り、照葉が青空に映える美しさは例えようがない。(高橋正子)

紅葉づるやこの執心の大樹かな★★★
遠山は紺しぼりつつ実むらさき★★★

多田有花
ストレッチ習慣づける冬隣★★★
秋の山降りつつ城を間近にす★★★
じょうびたき自転車置場に来ておりぬ★★★★

廣田洋一
秋日和ハワイの山際くっきりと★★★
秋夕焼三日月細く切り込みぬ★★★
秋の海防潮堤に波たてし★★★★

桑本栄太郎
秋の瀬の七段光る堰の水★★★
川波の早瀬となりぬ秋の昼★★★★
乾び居て支柱に残る種なすび★★★

10月30日(4名)

小口泰與
柚子の香に渓流の風新しき★★★★
金柑やごほんごほんと独りっ子★★★
秋桜子の遊びし湯元渓紅葉★★★

廣田洋一
敷積みし銀杏落葉の柔らかし★★★
銀杏落葉踏みて行きたる一号館★★★★
銀杏落葉が降り敷いている。一号館とあるから、二号館、三号館もあるような構内であろう。広い敷地に散り敷いた銀杏落葉の量を必然思ってしまう。一号館に特別意味を持たせてはいないだろうが、リアルであって、建物の配置が想像できる。(高橋正子)

掬ひたる銀杏落葉を子に浴びせ★★★

多田有花
浅葱斑舞う秋深き頂に★★★
傾ける陽を浴び紫式部の実★★★

松手入れの音のみ聞こゆ門構え★★★★
門構えの広い御屋敷の、どかかから聞こえてくる松手入れの音。手入れをする植木屋の姿は奥深くて見えないが、音だけ聞こえてくる。リズミカルな音が快い。(高橋正子)

桑本栄太郎
藁塚の屋根を被いて仕舞いけり★★★
日を透きて金の穂波やゑのこ草★★★
まるめろの香り良きともいびつとも★★★

10月29日(4名)

小口泰與
山の声嫋嫋たるや出落栗★★★
釣人の浮子へぽちゃりと鬼胡桃★★★
渓流の岩のすき間へ胡桃かな★★★

廣田洋一
雨上がり薄く色づく椿の実★★★
椿の実油溜めつつ色深む★★★
戸を開ける音に弾けし椿の実★★★★

桑本栄太郎
冷まじや洗顔どきのひげ硬し★★★
自転車の列の下校や秋しぐれ(原句)
自転車の下校の列や秋しぐれ★★★★(正子添削)
自転車で下校の生徒たち。つぎつぎに銀輪がつながって走ってゆく。晴れなら輝く銀輪も、今日は秋しぐれに降られて、冷たそうに回るだけ。秋しぐれにぬれつつ帰る下校生を思いやった句。(高橋正子)

夕暮れの雨の灯かりや泡立草★★★

多田有花
古民家の裏には猪垣のありぬ★★★
朝餉にはさつまいも入り味噌汁を★★★
青空やすっと薄の雲に届く★★★★
山頂の薄であろう。青空にすっと薄がのびて、雲に届くかに。「すっと」がよく効いて、気持ちのよい句となった。(高橋正子)

10月28日(4名)

小口泰與
榛名湖のしののりめ明かりけらつつき★★★★
からすみや呼び込む市の婆の声★★★
笑栗や里山の空深深と★★★

廣田洋一
子供らが先頭を行く阿波踊り★★★★
園児らの仮装行列ハロウィンかな★★★
秋祭り米軍楽隊行進す★★★

多田有花
飼われおる猪盛んに水浴びを★★★★
猪が飼われていることを初めて知ったが、猪鍋料理もあるから、飼われても不思議はない。天気がよかったのだろうか、飼われている猪が水浴びを喜んでいる。飼われていながら喜んで水浴びをしている様子だ。こう見ると猪がずいぶんかわいらく見える。(高橋正子)

快晴の朝に響きし鵙高音★★★
高鳴きに鵙の姿を探しおり★★★

桑本栄太郎
鵙晴れや嶺の遙かに放れ雲★★★
北摂の山並み晴るる秋の雲★★★
紅白の送電塔や田に嶺に★★★

10月27日(4名)

小口泰與
住職の読経の声や秋高し★★★
湖風や丘のコスモスしどろなり★★★★
花すすき風に撓いて光ける★★★

廣田洋一
畔道に真っ赤に垂れる実南天★★★
公園の隅を明るく実南天★★★
鳥どちのしきりに鳴けり実南天★★★★
赤く熟れた実南天は、秋の深まりを強く感じさせてくれる。実南天だけでなく、いろんな実物が熟れて、鳥たちも喜び、しきりに鳴いて、生き生きとしている。(高橋正子)

多田有花
古民家に集う晩秋同窓会★★★★
近況を語りあいけり長き夜に★★★
あれこれと話は尽きぬ夜半の秋★★★

桑本栄太郎
荒れ庭の空地明かりや泡立草★★★
青空にすずめ鳴きなり鵙の声★★★
淀川の初鴨浮かぶ岸辺かな★★★★

10月26日(4名)

小口泰與
鬼の子や忠治の墓の欠けており★★★
風呂敷のゆるみ毬栗こぼれ落ち★★★★
新走り睡魔の神の現れし★★★

多田有花
霜降の夜の嵐が窓をうつ★★★
残るコスモスへ午後の陽やわらかく(原句)
午後の陽のやわらか残るコスモスへ(正子添削)
晩秋となっても咲き続けるコスモス。咲き方も次第にさびしくなってはいるが、午後の陽がさすと、いっそうやわらかな花になる。見ているものの気持ちも、もちろん、優しい。(高橋正子)

雨あがり沖から晴れて来る晩秋★★★

廣田洋一
好奇心から焚いてみたるは零余子飯★★★
レシピより酒を多めに零余子飯★★★
陽を浴びて香り濃くなる金木犀★★★★
金木犀はよく香るときとそうでないときがあるようだ。陽を浴びたときは、特によく香るのだろう。陽を浴び、金色の花となった金木犀が精いっぱいに香っている。(高橋正子)
 
桑本栄太郎
カタカタと骨の鳴り居り冬隣★★★
降り出せば又秋しぐれ秋しぐれ★★★
夕暮れて雨の降り居り火恋し★★★★

10月25日(4名)

廣田洋一
晩酌の後に頂く富有柿★★★
手に乗せて重さを測る富有柿★★★
地味なれど深き色艶実紫★★★★

多田有花
<第八回姫路まちなかバル三句>
晩秋やまちなかバルに繰り出しぬ★★★
長き夜や初めてBARに入りにけり★★★★
ほろ酔いで歩く街路のやや寒し★★★

小口泰與
地震起こり忽ととまりし虫の声★★★★
地震が起こると、それまで鳴いていた虫がぴたりと鳴き止んだ。天変地異をいち早く感じとるのは動物たちであろう。その敏感さには驚くばかりである。(高橋正子)

雨後の葉の蟷螂すでに鎌構え★★★
葦の穂や朝雲をはぐ赤城山★★★

桑本栄太郎
黄落の庭に張りつく雨の夕
「黄落」は、「銀杏・櫟の木の葉の黄ばんで落ちるのをいう。」と角川歳時記にあります。「黄落の」の「の」を格助詞と捉えれば、黄落の使い方に疑問が残ります。(高橋正子)

紅こぼる雨の激しき水木の実
「水木」と「花水木」は違う樹木です。水木の実は黒っぽく、花水木の実は紅いですが、詠まれたのは花水木ではないでしょうか。(高橋正子)

橡の実のいつの間にやら採られ居り★★★

10月24日(4名)

小口泰與
忽然と立ち泳ぎせる秋目高★★★
杣宿の蜂の子飯は馳走かな★★★★
秋蝶のはや四国にて舞いにける★★★

廣田洋一
良く言うよこんな気温で冬近しとは★★★
なんとなく川の細りて冬近し★★★
歯磨きの水の硬さに冬近し★★★★
「水の硬さ」に実感がある。毎日の生活の中で、一日として同じ日はない。今朝は歯磨きをする水に硬さを感じた。それが、冬の近さを感じさせたのだ。(高橋正子)

多田有花
柿たわわに野鳥の訪れを待つ★★★
秋深し池の畔の蓄音機★★★
霜降の海が遠くで光りおり★★★★
霜降の日、海の遠いところが光っていた。ただ、それだけのようだけれど、近くの海でなく、遠くの海が光ること、これ自体が節季の変化を表すことだと言えるでしょう。(高橋正子)

桑本栄太郎
夕暮れの雨に色づく庭紅葉★★★
もみづるや雨のひと日の暮れゆきぬ★★★
夕刻の歯科の予約や秋しぐれ★★★

10月23日(4名)

廣田洋一
富士の山即位を祝し初冠雪★★★
南天の実明るく垂れる休耕田★★★
実南天赤く染めたる用水路★★★

多田有花
新米が届きましたよ但馬から★★★
山の池背黒鶺鴒降り立ちぬ★★★

敗荷に真昼の光明るくさす(原句)
落ち着きが悪いので、添削しました。
敗荷を明るくさせて真昼の日★★★★(正子添削①)
敗荷に真昼の光明るかり★★★★(正子添削②)
夏の間、葉が重なり合って茂っていた蓮池。敗荷となって、秋の日が存分に射し込むようになった。敗荷田に差す光が枯れていく蓮の有様に対して、あまりのも明るいことに驚いた。(高橋正子)

小口泰與
共学の高校生や鵙高音★★★★
電線に五線譜の如椋の群★★★
あれほどの椋すっぽり一樹かな★★★

桑本栄太郎
銀杏の臭気歩道に溢れけり★★★
歩みゆく程に暮るるや秋没日★★★
夕鵙や田面に風の吹くばかり★★★★

10月22日(4名)

小口泰與
張り紙は新蕎麦とあり峠口★★★★
峠口の店に新蕎麦と張り紙がしてある。近隣で採れた新蕎麦であろうと思われて、ここで食べて行かねばならないだろうという気にさせてくれる。蕎麦好きには、たまらない張り紙である。(高橋正子)

雛僧の魚鼓を打ちたり秋小鳥★★★
かの時の古墳の埴輪小鳥來る★★★

廣田洋一
一粒の露の写せる地球かな★★★
蜘蛛の巣や露に覆はれ光りけり★★★★
大小の露夫々に光りたる★★★

多田有花
床に入れば密かに聞こえ残る虫★★★★
秋雨のなかを入りけり定食屋★★★
前山の粧い初めし雨あがり★★★

桑本栄太郎
秋冷の皇居言祝ぐ即位の礼★★★
双葉菜の列の稚けき畝の間に★★★

夕暮れの灯かりとなりぬ柿の村★★★★
夕暮になると色づいた柿の実が灯りのように浮かび出る。日が落ちてしまえば、その柿の実も暗くなってしまうのだが、そのわずかの時間が愛おしく思える。(高橋正子)

10月21日(4名)

小口泰與
素晴らしや今年も訪ぬ紅葉山★★★
火の山の空は青磁や渡り鳥★★★★
坂鳥や三国峠の雲の間に★★★

廣田洋一
艶やかな着物を着たる案山子祭★★★
呆然とテレビ見るだけ秋出水★★★
若き頃住みし町にも秋出水★★★★

桑本栄太郎
大山の白樺夜露や直哉の忌★★★★
志賀直哉は、大正時代の白樺派を代表する作家の一人。大山の白樺に置く夜露を見て直哉を忍んだ。
大山(だいせん)は栄太郎さんの故郷鳥取の山。(高橋正子)

下枝のまだ咲きいたり萩は実に★★★
すずめ等の塒かしまし秋没日★★★

多田有花
<令和元年大相撲秋巡業姫路場所>
晩秋の汗光る力士の稽古★★★★
稽古する力士間近に秋巡業★★★
床山の手際鮮やか秋巡業★★★

自由な投句箱/10月11日~20日


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今日の秀句/10月11日~20日


10月20日(1句)

★猪の駆け去る後を歩きけり/多田有花
猪は、比較的人家に近い山にも棲息してる。人里近く住んでいるようだ。山に登り、猪が駆け去るのを目撃。そのあとを、普通に変わらず歩いて行った。山をよく知った有花さんの余裕か。(高橋正子)

10月19日(1句)

★美濃和紙のつつみし痕あり栗きんとん古田敬二
美濃和紙にやわらかくくるまれたきんとんに、絞った痕がそのままついている。絞られたままのその通りの筋痕が、きりっと美しい。栗どころ、和紙の産地ならではのお菓子に秋を思う。(高橋正子)

10月18日(1句)

★屋上に出れば秋天限りなく/多田有花
入院されているときの句。病室での治療の合間、屋上に出て見れば、秋天は限りなく広がっている。この爽やかで広々とした空への感嘆もさることながら、それが限りなく続くことを願う気持ちが大きい。(高橋正子)

10月17日(1句)

★飛行機雲幅を広げて秋の雲/廣田洋一
飛行機雲の引かれ始めは、細く真直ぐに伸びているが、次第に幅が広くなって普通の雲のようになる。飛行機雲も秋の雲なのだと気づく。(高橋正子)

10月16日(2句)

★山里や水神様へ秋茄子を/小口泰與
山里の作物を育てた水。水神を祀って水の恵みや治水を祈る。秋も深まり、採れた茄子を供えて祀った。素朴な祈りの姿がいまもある。(高橋正子)

★鋏音空に跳ねたり松手入れ/廣田洋一
松の剪定は、手間のかかること。鋏の音も弾んで、その度ごとに松の葉が落ち、松の姿が整い。空が晴れやかにみえてくる。気持ちの良いものだ。(高橋正子)

10月15日(1句)

★冬瓜の青さ残せしスープかな/廣田洋一
冬瓜は生のうちは、白いが、煮ると淡くみどりがかってくる。透きとおったスープに冬瓜の青みがのこっているのも美しい。日本的な美しさがここにある。(高橋正子

10月14日(1句)

★裏山は桜紅葉があちこちに/多田有花
病室などから、裏山を見ることがある。緑の多い山に、桜紅葉があちこちにある。それはそれで、きれいなのだが、桜紅葉に、また、春の山桜の咲く様子を思っても見ただろう。(高橋正子)

10月13日(2句)

★台風一過祭屋台の繰り出しぬ/多田有花
秋祭りが予定されているのに、台風が来る。台風一過の後の本祭り。みんな喜び勇んでいる。屋台もいろいろとぎやかに繰り出した。無事秋祭りが行えるのは、嬉しく楽しいことだ。(高橋正子)

★青空も山も色濃し野分あと/廣田洋一
野分あとは、ものがいろいろ普段とは違った風情をみせてくれる。こまごまと観察することもある。この句のように、空を見上げ、山を望みおおらかに野分のあとの晴れやかさを思うこともある。(高橋正子)

10月12日(1句)

★水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ
身近のコップにでも水が入っていたのだろうか。鉢のコスモスにさらりと移してあげた。喉が渇いていたかのように、水をもらったコスモスは、いきいきとしてきた。(高橋正子)

10月11日(1句)

★鵙鳴けり長袖シャツに着替えたり/廣田洋一
鵙が鳴くと、急に秋が深まった感じがする。昼間は暑さを思える秋の日も、長袖シャツで心地よく過ごせるようになった。そんな季節が来たことがうれしい。(高橋正子)

10月11日~20日


10月20日(4名)

廣田洋一
縄張りは棚田一枚案山子かな★★★
猫の伏す空地を囲む猫じゃらし★★★
休耕田狗尾草の豊作かな★★★

小口泰與
そぞろ寒元村長の回顧談★★★
名水の里に生まれし新豆腐★★★
秋耕や我が手足なる猫車★★★★

多田有花
退院し散歩するなり秋の山★★★
退院し湯舟に浸かる秋の夜★★★

猪の駆け去る後を歩きけり★★★★
猪は、比較的人家に近い山にも棲息してる。人里近く住んでいるようだ。山に登り、猪が駆け去るのを目撃。そのあとを、普通に変わらず歩いて行った。山をよく知った有花さんの余裕か。(高橋正子)

桑本栄太郎
畝ならびすずろに寒し蔬菜園★★★★
秋冷や駅の際まで刈られ居り★★★
秋雨や塒かしましすずめどち★★★

10月19日(5名)

多田有花
退院の前のシャワーを秋の夜★★★
背高泡立草咲く中退院す★★★★
秋曇まず保健所へ申請に★★★

小口泰與
天高し牧草ロール点点と★★★★
落陽の我が影濃きや刈田道★★★
瞬きの間合すいっと秋入日★★★

廣田洋一
秋の暮軍手二つが干されをり★★★★
楽しみの旅行中止や秋の暮★★★
山際の雲に残照秋の暮★★★

桑本栄太郎
雨降りて更に紅濃き水木の実★★★★
秋雨の更に色付く庭木かな★★★
秋冷や小雨にけぶり嶺暮るる★★★

古田敬二
美濃和紙が柔らかくつつむ栗きんとん★★★★
合唱の休憩時間の栗きんとん★★★

美濃和紙のつつむ痕あり栗きんとん(原句)
美濃和紙のつつみし痕あり栗きんとん★★★★(正子添削)
美濃和紙にやわらかくくるまれたきんとんに、絞った痕がそのままついている。絞られたままのその通りの筋痕が、きりっと美しい。栗どころ、和紙の産地ならではのお菓子に秋を思う。(高橋正子)

10月18日(4名)

廣田洋一
両腕に雀休める案山子かな★★★
一日の勤めを終へて釣瓶落としかな★★★
丹沢の山際晴れて釣瓶落とし★★★★

多田有花
裏山に始まる紅葉ななかまど★★★
紅葉する木々が見下ろす駐車場★★★

屋上に出れば秋天限りなく★★★★
入院されているときの句。病室での治療の合間、屋上に出て見れば、秋天は限りなく広がっている。この爽やかで広々とした空への感嘆もさることながら、それが限りなく続くことを願う気持ちが大きい。(高橋正子)

小口泰與
芋掘りし老いの手助け猫車★★★
秋ともし朱唇にて割る蕎麦の箸★★★
山襞の我に迫るや刈田道★★★★

桑本栄太郎
大風に仕舞いしままに秋すだれ★★★
見上ぐれば夕日にかざし柘榴笑む★★★★
歩みゆく程に暮るるや秋没日★★★

10月17日(4名)

廣田洋一
飛行機雲幅を広げて秋の雲★★★★
飛行機雲の引かれ始めは、細く真直ぐに伸びているが、次第に幅が広くなって普通の雲のようになる。飛行機雲も秋の雲なのだと気づく。(高橋正子)

夕日浴びオーロラの如秋の雲★★★
天下の嶮超えるひつじや秋の雲★★★

小口泰與
我が影の巨大となりし刈田道★★★
コスモスや鳶は山風逆らわず★★★
山風に前後左右の花すすき★★★★

多田有花
秋の陽が床頭台にあたりおり★★★
秋晴れに退院の日が決まりけり★★★
秋天を仰ぎつ屋上でリハビリ★★★

桑本栄太郎
物集女(もずめ)とう街道ありぬ柿の里★★★
池の面に枝の迫り出し木の実降る★★★
何処からか金木犀や厨の燈★★★★

10月16日(5名)

小口泰與
山里や水神様へ秋茄子を★★★★
山里の作物を育てた水。水神を祀って水の恵みや治水を祈る。秋も深まり、採れた茄子を供えて祀った。素朴な祈りの姿がいまもある。(高橋正子)

泥かぶる林檎の山や千曲川★★★
溶岩原の浅間のすそ野走り蕎麦★★★

多田有花
体育の日終わり入院の人続々★★★
さわやかや点滴留置はずれたり★★★★
同病の人が隣へ秋の昼★★★

廣田洋一
親方の掛け声弾み待つ手入れ(原句)
親方の掛け声弾み松手入れ★★★★

庭の景すっきりしたる松手入れ★★★

パチンパチン音の跳ねたる松手入れ(原句)
鋏音空に跳ねたり松手入れ★★★★(正子添削)
松の剪定は、手間のかかること。鋏の音も弾んで、その度ごとに松の葉が落ち、松の姿が整い。空が晴れやかにみえてくる。気持ちの良いものだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
夕日さす尾花の波や山陰道★★★
稲滓火(いなしび)のけむり眼下に峡の里★★★★
インターを下りて旋回泡立草★★★

古田敬二
焼き魚搾る酢橘のみずみずし★★★★
指先を酢橘で濡らし喰う魚★★★
大文字草大瀬の滝の風に咲く★★★

10月15日(4名)

小口泰與
一献や利根上流の鮎うるか★★★
菊膾八十路になりて産土へ★★★
子供らも顔を見せぬや零余子飯★★★★

多田有花
秋晴れや静かに点滴の続く★★★★
秋の昼見舞いの人と談笑す★★★
秋祭終わり病院に戻る★★★

廣田洋一
別嬪のセーラー服や案山子かな★★★
冬瓜の青さ残せしスープかな★★★★
冬瓜は生のうちは、白いが、煮ると淡くみどりがかってくる。透きとおったスープに冬瓜の青みがのこっているのも美しい。日本的な美しさがここにある。(高橋正子)

冬瓜や白き腹見せ切られけり★★★

桑本栄太郎
ハイウェイのはるか眼下に刈田かな★★★
高速のインターを降りて泡立草★★★
松籟やみな傾ぎ居り秋の浜★★★★

10月14日(3名)

多田有花
静かなり秋連休の昼下がり★★★
屋上から秋の姫路城を望む★★★
裏山は桜紅葉があちこちに★★★★
病室などから、裏山を見ることがある。緑の多い山に、桜紅葉があちこちにある。それはそれで、きれいなのだが、桜紅葉に、また、春の山桜の咲く様子を思っても見ただろう。

小口泰與
湖風に晒されたりし新走り★★★
枝豆によく手の伸びて赤提灯★★★
待ち望むメール届きし今年酒★★★

廣田洋一
腰かけて田んぼを見やる案山子かな★★★
役終えて十の字に寝る案山子かな★★★
この顔はムンクの叫びや案山子立つ★★★

10月13日(3名)

小口泰與
秋の川利根本流へずいと入る★★★
端正の赤城のすそ野秋桜★★★
産土にどかっと座り温め酒★★★

多田有花
点滴続く台風の余波の雨続く★★★
同室の人は外泊秋祭★★★
台風一過祭屋台の繰り出しぬ★★★★
秋祭りが予定されているのに、台風が来る。台風一過の後の本祭り。みんな喜び勇んでいる。屋台もいろいろとぎやかに繰り出した。無事秋祭りが行えるのは、嬉しく楽しいことだ。(高橋正子)

廣田洋一
台風後水に浸りし休耕田★★★
青空も山も色濃し野分あと★★★★
野分あとは、ものがいろいろ普段とは違った風情をみせてくれる。こまごまと観察することもある。この句のように、空を見上げ、山を望みおおらかに野分のあとの晴れやかさを思うこともある。(高橋正子)

野分後の白く波立つ尾花かな★★★★

10月12日(4名)

小口泰與
山風や刈田を荒らす夕烏★★★
高原の挙措それぞれ秋桜★★★★
夕暮れの雀刈田を囃しけり★★★

多田有花
十三夜の月はどっちに出ているか★★★
接近する嵐の雲間十三夜★★★★
病室の窓より後の月見かな★★★

廣田洋一
このところ欠席の人秋の風★★★
停電に備えし電池台風来★★★
台風に吹き飛ばされし旅程かな★★★

川名ますみ
水一杯さらりと鉢のコスモスに★★★★
身近のコップにでも水が入っていたのだろうか。鉢のコスモスにさらりと移してあげた。喉が渇いていたかのように、水をもらったコスモスは、いきいきとしてきた。(高橋正子)

列車の響き次第に減りて颱風来★★★★
幼名で耳澄まし待つ大颱風★★★

10月11日(3名)

小口泰與
老いてこそ恃むは妻よ秋なすび★★★
恐竜の如きお山も装える★★★
みせばやや飲めぬ酒おば飲みくだす★★★

廣田洋一
思ひがけず今日聞こえけり鵙の声★★★
雨空に突き刺さりたる鵙の声★★★

鵙鳴けり長袖シャツに着替えたり★★★★
鵙が鳴くと、急に秋が深まった感じがする。昼間は暑さを思える秋の日も、長袖シャツで心地よく過ごせるようになった。そんな季節が来たことがうれしい。(高橋正子)

多田有花)
紅葉初む下を救急車が帰る★★★★
病室で味覚の秋を楽しめり★★★
点滴を替えつつ台風の話★★★

自由な投句箱/10月1日~10日


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今日の秀句/10月1日~10日


10月10日(1句)

★診断がつきさわやかに歩みけり/多田有花
病気であることの不安に加え、それが何の病気なのかわからないのも、一層の不安だ。病名がつけば、治療方針が明らかになり、快方へ向かえる。克服できる明るいに見通しができて、精神がさわやかなのだ。(高橋正子)

10月9日(1句)

★バス待ちの刈田晴れなる停留所/桑本栄太郎
バスを待つ停留所。停留所のあたりは、刈田が広がるのか。その空はからりと晴れて、快い。(高橋正子)

10月8日(1句)

★秋晴や洗いざらしの上っ張り/小口泰與
上っ張りは、説明するまでもないが、仕事がしやすいように、また、汚れを防ぐために、衣服の上に着る事務服や白衣の類のこと。洗いざらしのぱりっとした仕事着。袖を通すと快い緊張が生れる。秋晴の一日を得て、仕事に励まれたことだろう。(高橋正子)

10月7日(1句)

★牧草の積まるる秋の空高し/小口泰與
近づく冬に備え、牧草が刈り取られる。ロールにされたり、そのままうず高く積まれている。広い牧場に秋空が接するように広がるが、その空もどこまでも高い。秋たけなわである。(高橋正子)

10月6日(2句)

★山際を縁取り流れ秋の水/多田有花
澄んで清らかな音を立てて流れる秋の水。山際に沿って流れる秋の水の豊かさを思う。(高橋正子)

★晩稲田の今日は刈り初む日差しかな/桑本栄太郎
晩稲田が刈り取られるころは、秋もいよいよ深くなるころ。いつ刈り取るかは農家の判断なのだが、日差しが刈り取の日を示しているようでもある。(高橋正子)

10月5日(1句)

★おおかたは刈田となりて陽の中に/多田有花
おおかたの田は刈り取られて、残るのは晩稲田。ひろびろとした刈田に日が降り注いでいる。刈田は、暖かい日差しがあれば暖かそうに、にわかに曇れば、さむざむと。天気の変化を受けて変わる刈田。今、日が存分に、刈田は安らいでいる。(高橋正子)

10月4日(1句)

★柿の葉の色数え居り素十の忌/桑本栄太郎
素十は、高野素十(すじゅう)。高浜虚子の弟子で、虚子の提唱する「客観写生」を忠実に実行した人。「甘草の芽のとびとびのひとならび」などの句が有名。柿の葉の色を数える。「芽のとびとびの」を思わせる行為だ。(高橋正子)

10月3日(2句)

★曇天に鵙の高音の響く朝/多田有花
曇天の空に、鵙の高音は抜けきらない。曇天の空の下に、声を強める。曇天の朝ながら、すっかり秋だと思う。
(高橋正子)

★雨降れば畦を彩り曼殊沙華/桑本栄太郎
雨が降らなくても畦を彩る曼珠沙華であるが、ここは、「雨降れば」なのだ。雨が降れば、雨に濡れた曼珠沙華の花が光る。色がさらに鮮やかになる。一期一会の雨の曼珠沙華である。(高橋正子)

10月2日(1句)

★ロマンスカー秋夕焼を惜しみけり/廣田洋一
小田急の特急列車をロマンスカーと呼んでいるが、ロマンスカーは小田急の商標登録となって、馴染み深い列車だ。列車好きの子どもならずも、旅心を誘う列車である。さびしさの募る秋の夕焼けを惜しむかのように走る列車に懐かしささえ覚える。(高橋正子)

10月1日(2句)

★落し水棚田の空の深きかな/小口泰與
稲が成熟し始めると水口を切って田の水を抜き田を乾かし、刈り入れに備える。「落とし水」の季語がもつ背景だ。その頃の空はと言えば、青も色を深めて来る。(高橋正子)

★足りぬもの足りぬ侭なり十月に/桑本栄太郎
10月1日から一部食料品などを除いて消費税が10%となった。それに備えて、消費者が買い物に走った。
一方、多少は買ったかもしれないが、足りないものは足りないでよいと、どんとしているものもいる。こういったことを踏まえた句と思った。その心意気は、俳人の心意気でもあろう。(高橋正子)