■10月月例ネット句会入賞発表■
2025年10月13日
【金賞】
29.陽が沈む稲架の垂れ穂を赤く染め/吉田 晃
稲架に掛けられた稲穂に、沈む夕陽が差し、その穂を赤く染めている。「赤く染め」は、夕陽の赤さであり、稔りの豊かさや、あかるさ、うれしさなどを含んだ祝祭的な赤さなのだ。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
23.鹿の声長く響いて更けゆく夜/多田有花
「鹿の声」は、古来、日本の詩歌に多く読まれて、古典的なひびきを帯びている。声が「長く響いて」は、秋の夜のさびしさや「あはれ」の感情を呼び起こす。その声にますます秋の夜は更けてゆくのである。(髙橋正子)
14.瑠璃の光空にゆらして野ぶどう垂る/柳原美知子
野ぶどうが、瑠璃色の光をはなちて、空に垂れている。野ぶどうの色の美しさが、深まる秋を色彩的に彩っている。ぶどうの実だけでなく、黄葉している葉やあたりの様子が想像できる絵画的なよさのある句。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
08.リビングにすだちの香り夕餉待つ/高橋秀之
リビングで、夕飯ができるのを待っている。空腹のたのしい時間である。そこへ食欲をそそる、すだちの香りがしてくる。今夜の献立が想像できて、暮らしの幸福感があるのがいい。(髙橋正子)
21.新刊書積み上げ揃う帯さやか/藤田洋子
この句は、書店の光景とも読めるが、この新刊書はこの度洋子さんが出版されたたアンソロジーのことであろう。積み上げられた、新刊の図書の帯が揃って、美しさとなっている。さやかな美しさである。出版おめでとうございます。
「新刊書」を「新句集」とすれば、もっと自分の事として、読む人に訴えられたのはないかと思う。(髙橋正子)
34.秋晴れの高みを目指し一番機/上島祥子
今日の一番機が、秋晴れの空の高みを目指している。「高みを目指す」、「一番機」に作者の姿勢の正しさ、意志の高さが、すっきりと伝わってくる。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
08.リビングにすだちの香り夕餉待つ/高橋秀之
日毎に秋も深まり、そろそろ鍋料理の時季ですね?夕餉を待つリビングに、すだちの香りがして来ます。(桑本栄太郎)
11.秋彼岸小豆の煮ゆる音閑か/土橋みよ
ことことと小豆を煮るゆっくりとした時の流れ。その閑けさに、秋彼岸ならではの季節感、故人を偲ぶ心情がしみじみと感じられます。(藤田洋子)
23.鹿の声長く響いて更けゆく夜/多田 有花
音が響いているにもかかわらず静けさを覚える、美しい句と思います。この季節、牡鹿の声は哀れを催すと云われます。遠くからそれが響く中、夜が深まってゆく。晩秋の寂しさと澄んだ空気を感じます。(川名ますみ)
29.陽が沈む稲架の垂れ穂を赤く染め/吉田 晃
秋の落日の牧歌的な景に、静けさと充実感、明日への祈りを感じます。じっと見ていたい光景です。(柳原美知子)
夕日の光が秋の収穫を祝しているような美しい情景が浮かびました。(西村友宏)
34.秋晴れの高みを目指し一番機/上島祥子
早朝なのでしょうか。1番機という響きがいいです。晴れ渡る秋空に向かって飛び立つ1番機。すごく素敵な旅を予感させてくれます。(高橋秀之)
21.新刊書積み上げ揃う帯さやか/藤田洋子
14.瑠璃の光空にゆらして野ぶどう垂る/柳原美知子
【入選/14句】
01.釣上げし木の葉山女の錆の色/小口泰與
渓流の女王と呼ばれるヤマメ。警戒心が強く難易度が高いそうですね。俊敏な動きに素早くあわせて釣り上げた瞬間の醍醐味が感じられます。(多田有花)
13.供花挿せば竹春の風吹きわたる/柳原美知子
竹林に吹き渡る風の音の中、静かに花を備えてお参りする姿が対称的で、秋の物寂しさを感じます。(上島祥子)
19.掛け声の空へ竿立つ秋祭り/藤田洋子
秋祭りの時期です。ようやく暑さも落ち着き田は刈り取りが終わりました。快晴の祭りの日、神社の幟が立ち、威勢のいい掛け声も響きます。
豊年の喜びが感じられます。(多田有花)
22.強風の一夜の過ぎて秋晴れに/多田有花
秋はとかく天候の変わりやすいもの。強風の続いたあとの朝空の安堵感に、ことさら澄んだ秋晴れの美しさが目に浮かび、明るい一日の始まりを感じます。(藤田洋子)
25.松手入れ鋏の音の歯切れ良く/廣田洋一
松手入れの歯切れのよいリズム音に、いかにも秋らしい清々しさを感じます。鋏音とともに松の仄かな香りも漂うようです。(藤田洋子)
28.さざ波に砂のさざめく秋の浜/吉田 晃
穏やかな瀬戸内の晩秋の浜辺の様子が浮かんできます。「さざ」が重なって心地よいリズムを生み出しています。夏の喧騒が去った秋の浜辺をひとり散策されているのでしょうか。(多田有花)
31.ベビーカー押して軽やか秋の空/西村友宏
ベビーカーを押してお子様との外出、広がる秋空の季節の心地よさに、軽やかな明るい心情がうかがえます。(藤田洋子)
35.断崖に溢れる蜻蛉や日本海/上島祥子
日本海の断崖、といえば東尋坊などを連想します。間もなく雪の季節となり、厳しい季節風にさらされる断崖です。そこにいまは赤とんぼの群れが飛んでいます。空間の広がりを感じます。(多田有花)
38.秋夕焼富士を映せしビルの窓/川名ますみ
空気の澄んだ秋の夕暮れに、見事な富士山がビルの窓に映った。それはもう消えてしまっているけれど、その面影が目に焼き付いている。都会の秋の静寂と時の流れを感じました。(土橋みよ)
04.雲の共なくて孤光や月今宵/桑本栄太郎
10.秋空に薄煙立ち里近し/土橋みよ
12.心晴れまた歩く道に鰯雲/土橋みよ
15.お食い初め秋潮の紺窓に流れ/柳原美知子
27.仏壇の母子に供えし栗ご飯/廣田洋一
■選者詠/髙橋正子
18.木の実捨つわが手にありし温もりも
公園を散歩の途中、落ちている木の実が目に留まり、懐かしさを覚えて拾い上げたのだろう。少し青味の残る木の実は、昔の事、特に我が子の幼い頃の出来事を思い出させてくれる。暫く思いに浸っていたが、温もった木の実を踏まれぬように戻した。「手にありし温もりも」捨てたのであるが、掌には木の実の感触と思い出した懐かしさが残されていた。(吉田晃)
16.露草の青点々と立ち上がる/
17.バス降りてすぐ数本の曼殊沙華
互選高点句
●最高点句(6点)
23.鹿の声長く響いて更けゆく夜/多田有花
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。
コメント
19.掛け声の空へ竿立つ秋祭り/藤田洋子
秋祭りの時期です。ようやく暑さも落ち着き田は刈り取りが終わりました。
快晴の祭りの日、神社の幟が立ち、威勢のいい掛け声も響きます。
豊年の喜びが感じられます。
28.さざ波に砂のさざめく秋の浜/吉田 晃
穏やかな瀬戸内の晩秋の浜辺の様子が浮かんできます。
「さざ」が重なって心地よいリズムを生み出しています。
夏の喧騒が去った秋の浜辺をひとり散策されているのでしょうか。
35.断崖に溢れる蜻蛉や日本海/上島祥子
日本海の断崖、といえば東尋坊などを連想します。
間もなく雪の季節となり、厳しい季節風にさらされる断崖です。
そこにいまは赤とんぼの群れが飛んでいます。空間の広がりを感じます。
22.強風の一夜の過ぎて秋晴れに/多田有花
秋はとかく天候の変わりやすいもの。強風の続いたあとの朝空の安堵感に、ことさら澄んだ秋晴れの美しさが目に浮かび、明るい一日の始まりを感じます。
25.松手入れ鋏の音の歯切れ良く/廣田洋一
松手入れの歯切れのよいリズム音に、いかにも秋らしい清々しさを感じます。鋏音とともに松の仄かな香りも漂うようです。
31.ベビーカー押して軽やか秋の空/西村友宏
ベビーカーを押してお子様との外出、広がる秋空の季節の心地よさに、軽やかな明るい心情がうかがえます。
正子先生、句美子様、友宏様、10月月例ネット句会お世話になりありがとうございました。正子先生、「帯さやか」の句を銅賞に選んでいただきご丁寧なコメントをありがとうございます。おかげさまで句集の発刊できましたこと、心よりお礼申し上げます。“新句集”の言葉のご指導、大変ありがとうございます。勉強になりました。
「秋祭り」の句を入選句にありがとうございます。有花様、同句にあたたかなコメントをいただきありがとうございました。