今日の秀句/2月21日~2月20日

2月29日(1句)

★春北風や赤く染まりし西の空/廣田洋一
春北風が塵を吹き飛ばすように強く吹いた日は、西空は澄んだ薔薇色の夕焼けを見せてくれる。北風ながら、春は春のうれしさがある。(髙橋正子)

2月28日(1句)

★田道行き異国語めきぬ揚ひばり/桑本栄太郎
田道をゆくと雲雀が空高く揚がり、声を落としている。しばらく聞いて耳に馴染んでくると、人の言葉のように聞こえる。しかし、その言葉は異国語。何をはなしているんだろうか。(髙橋正子)
2月27日(1句)

★友よりの句集着きたる日永かな/桑本栄太郎
立春から少しずつ伸びた日に、日中は心持のびやかになる。そんな日を日永という。友から届いた句集を、ゆっくりと読むたのしみができた。(髙橋正子)
2月26日(2句)

★頂に春の陽あまりにありにけり/多田有花
低山の山の頂だろう。頂には木々がなく、芒や丈のひくい草が育っているようなところが多い。春の陽も山頂は山頂だけあって、陽がよく当たる。「あまりにありけり」というほど。しばらくは瞑目したいような頂きだ。(髙橋正子)

★桟橋にひろがる紺や光る風/弓削和人
湖や海へ突き出た桟橋に立つと、紺色の水がさざ波立ち、きらきらと風が光る。明るく、生きることの嬉しさが感じられる句だ。(髙橋正子)

2月25日(1句)

★理髪店出づや春の日強かりき/小口泰與
理髪店で髪をさっぱり刈ってもらって外に出ると、春の日は空高く昇って、強い光を投げかけている。理髪店の内と戸外の明るさの違いが際立つ。陽の光の強さを一番に感じる時だ。(髙橋正子)

2月24日(2句)

★グーの手を突き出すかたち木瓜蕾/川名ますみ
木瓜の丸い蕾は、葉に先駆けて、棒のような茎に「グーの手」のように膨らむ。丸みのある花びらの可愛らしさもと「グーの手」のようなたくましさがある。「グーの手」は俳句ではめずらしい。言葉を生かすも殺すも作者の心。(髙橋正子)

★囀や拭き忘れたる窓ぼこり/弓削和人
雪で閉ざされていた家も雪が解け、春が来ると小鳥の明るく和やかな囀が聞こえる。春が来たばかりの窓にうっすらほこりがある。これも春らしい。さりげない詠みぶりが上手い。囀は、小鳥の地鳴きは指さず、繁殖期の鳥の雄の縄張り宣言と雌への呼びかけを兼ねた鳴き声を指している。(髙橋正子)
2月23日(1句)

★奥利根の崖を削りて雪解水/小口泰與
日本の一級河川で、群馬県大水上山を水源に、流域面積日本一を誇る利根川は、下流にいくと堂々と平らかに流れ、千葉県の銚子沖に注ぐ。水上を中心とする奥利根では、利根川は川幅も狭く、水は崖にあたりながらも、澄みつつ流れる。雪解けの季節になると、崖を削り、勢いを増し、雄々しく流れる川は圧巻である。(髙橋正子)
2月22日(1句)

★木々の枝の潤み色なす芽ぐみかな/桑本栄太郎
「潤み色なす」から、葉が萌え出す季節にむかって、木々が準備を整えている様子がわかる。小さな芽ぐみが愛おしい。(髙橋正子)
2月21日(1句)

★今朝の川春翡翠も上流へ/小口泰與
翡翠が上流へ移動する意味がよくわからないが、川の上流といのは、石が多かったり、流れが急であったり、変化に富んでいるように思う。川の中流あたりへでかけたが、翡翠が見つからなくて、上流へ移動したのか、と思う。(髙橋正子)

コメント

  1. 小口泰與
    2024年2月23日 9:24

    御礼
    高橋正子先生
    2月21日の投句「春翡翠」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、正子先生にはうれしい句評をいただき有難う御座います。
    今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  2. 桑本栄太郎
    2024年2月23日 18:25

    御礼
    高橋正子先生
    2月22日の今日の秀句に「木々の枝の潤み色なす芽ぐみかな」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    ここ数日、気温の乱高下もありながら春時雨や春雨も良く降って居ります。木々の枝が日毎に潤むように色付き、芽吹きの時季を覚えます。

  3. 小口泰與
    2024年2月24日 18:05

    Unknown
    御礼
    高橋正子先生
    2月23日の投句「雪解水」の句を今日秀句にお取り上げ頂き、その上正子先生には素晴らしいご鑑賞を賜り有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  4. 桑本栄太郎
    2024年2月28日 17:15

    御礼
    高橋正子先生
    2月27日の今日の秀句に「友よりの句集着きたる日永かな」の」句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
    小生の田舎の同級生も小学校、中学校、高校と同じであり、寺の住職を務めながら俳句を嗜んで居ります。
    今回、花冠創刊40周年の合同句集「泉」を送ったところ、先方からも句集を送って来ました。

  5. 桑本栄太郎
    2024年2月29日 17:11

    御礼
    高橋正子先生
    2月28日の今日の秀句に「田道行き異国語めきぬ揚ひばり」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴頂戴しまして大変有難うございます!!。
    天気が良く、暖かい日に近在の田園を散策すれば、揚ひばりの天高く寄り、降るような鳴き声が聞こえて来ます。
    その囀りは♪「チーチュクルチーチーチュクルピーピーチュクリピーチュクリ」♪と、まるで若い中国娘の話し声のようです。

  6. 多田有花
    2024年3月1日 14:43

    お礼
    正子先生
    「頂に春の陽あまりにありにけり」を
    2月26日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    この2月は雨が多かった印象です。
    しばらく雨が続いてぽっと晴天に恵まれると、驚くほど日差しが明るくなっています。
    そして、突然暖かくなるのでしょう。

  7. 廣田洋一
    2024年3月3日 8:09

    御礼
    高橋正子先生
    いつもお世話になり有難う御座います。
    2月29日の「春北風や赤く染まりし西の空」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  8. 川名ますみ
    2024年3月7日 19:29

    お礼
    正子先生、「グーの手を」の句に、選と貴重な添削ご指導、ご講評を賜りまして、ありがとうございました。
    原句は、行為を記したままで散文的に感じましたが、添削ご指導により、木瓜の蕾の観察に絞られ「グーの手」が活きました。ありがとうございます。勉強いたします。