6月11日~20日

6月20日(7名)

●谷口博望
山越えの道に出くわす鹿の子かな★★★★(正子添削)
宙吊りの曲り胡瓜のあおあおと★★★(正子添削)
柿の木の葉陰から花を鉄線花★★★(正子添削)

●小口泰與
入梅の牧舎の隅の子馬かな★★★
若竹や四番に座る新入生★★★★
球の汗的に弓引く手の振るえ★★★

●桑本栄太郎
風誘い淡きピンクや額の花★★★
夏日さす朴の葉蔭に憩いけり★★★★
夏日が真上から差す日は、歩いていて葉蔭があれば救われる。大きな朴の葉蔭であれば、しばし安心して憩える。(高橋正子)

昨日見しよりも色濃く七変化★★★

●上島祥子
早苗田の香り届くや道の駅★★★★
道の駅に立ち寄ると、早苗田の、覚えある匂いがしてくる。道の駅は、近隣の野菜や、手作りの漬物やジャムなどが売られて立ち寄るのも楽しみなところだ。早苗の育つ季節を楽しむ明るい句だ。(高橋正子)

早苗田のストライプやや波打てり★★★
紫陽花の鞠膨らませ雨を待つ★★★

●川名ますみ
そら豆のポタージュスープ匙の音★★★★
そら豆のスープに挿せる匙の音★★★
梅雨雲の狭間に富士の両の肩★★★

6月19日(5名)

●谷口博望
紫陽花やどこか出掛ける老夫婦★★★
仏花には艶やかすぎる花菖蒲★★★
黒南風や山は次々波を打ち★★★★

●小口泰與
走り根の巌(いわお)掴むや苔の花★★★
五月雨や大吊橋は風の中★★★★
政何処へ向かうや五月闇★★★

●河野啓一
うす暗き木陰に白きしゃがの花★★★
瀬を早み水音も白くしゃが咲ける★★★

朝の雨紫陽花少し光りおり★★★★
生き生きとした雨の紫陽花というよりも、「かそけき光」の紫陽花が詠まれている。紫陽花色が光に滲んだような優しい句だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
光秀忌青葉の闇の老ノ坂★★★
風通る木蔭にありぬ四葩かな★★★★
泰山木の花を眼下に車窓かな★★★

●川名ますみ
夾竹桃咲いては街を驚かす★★★★
花槐雨滴にしだれやや碧し★★★
日を浴びし皮の湯船に夏みかん★★★

6月18日(4名)

●谷口博望
石榴咲き被爆川行く遊覧船★★★★
平和を象徴するような「遊覧船」と被爆を象徴するような「石榴咲き」との対比がいい。無理のない「対比」がいいのだ。(高橋信之)

被爆せし浜木綿の花鐘の鳴る★★★
百合の花ピサの斜塔のごとくなり★★★

●小口泰與
サイドカー並ぶ湖畔のアロハシャツ★★★
背ふたつ茂りの中の露天風呂★★★
短夜や父の遺せし三国志★★★★

●桑本栄太郎
風にゆれ淡きピンクや額の花★★★
梔子の花やはるかへ香り居り★★★★
あれそれと主語なき会話梅雨ごもり★★★

●高橋秀之
梅雨晴れ間琵琶湖の船は幾隻も★★★★
乾杯を待てずにビールの泡を飲む★★★
玄関に白靴三足脱ぎ散らし★★★

6月17日(7名)

●小口泰與
夏つばめ畦の川音身の内に★★★
大欅の揺るぐ影ある植田かな★★★★
腰痛のぶり返しけり閑古鳥★★★

●河野啓一
群がりて林となれる今年竹★★★
マンヂョンの影映したる植田かな★★★
瓜に塩サクサク音を楽しみて★★★★

●谷口博望
蓮の葉をつるみ飛びたる糸蜻蛉★★★
蟇つるみて虚空見つめたり★★★
鐘の音水馬ぱつと飛び上がる★★★★

●広田洋一
蟻の巣の出入り眺めて飽きもせず★★★★
岩風呂を必死に泳ぐ蟻ひとつ★★★
蟻の列蝉の骸にまっしぐら★★★

●小川和子
尖塔の十字架高く梅雨晴るる★★★
説教に充たさる帰路の青葉風★★★★
身に染む説教はなかなか聞けないものだが、説教に充たされた心には、帰路の青葉風が快く身を吹く。(高橋正子)

合歓の木の葉音さらさら堂涼し★★★

●桑本栄太郎
梔子の花の朽ち初め建仁寺★★★
緑蔭となりし隘路や天王山★★★

竹林の青葉闇ゆく路線バス★★★★
竹の多い京都にお住いの作者。路線バスも竹林を抜ける。竹林の「青葉闇」も、みやびやかな雰囲気だ。
(高橋正子)

●福田ひろし
散々な一日の夜の冷奴★★★
身じろがずただ唸りたし蝦蟇のよに★★★

田植え済み湯で笑い合う百姓ら★★★★
百姓にとって、田植えは最大の農事。無事に田植えが済み、慰労の湯だろう。朗らかな声を湯に響かせて笑い合って、話をしている。笑い声を相伴にあずかると、朗らか気持ちに。共に田植えを済ませた気分にも。(高橋正子)

6月16日(5名)

●小口泰與
萍や浮子のぴこぴこ動きける★★★
渓の雨おりおり強し山女釣★★★★
「おりおり強し」が渓の雨の降り具合をよく表している。渓流釣りは、釣りだけでなく、渓流の風景を楽しむことも大いにあるのだろう。(高橋正子)

初蝉の一時鳴いてそれっきり★★★

●河野啓一
古里の便りや雨の花南天★★★
花南天地に散り敷いて空の星★★★
同窓会案内来るや心太★★★★

●桑本栄太郎
凌霄花の垣根にこぼれ緋の色に★★★★
せせらぎに首をうずめて通し鴨★★★
泰山木の花や高架の下に見る★★★

●福田ひろし
天領の甍はうねる梅雨深し★★★★
少しだけ助走しカラス梅雨空へ★★★
紫陽花やわずかに赤き石仏★★★

●高橋秀之
梅雨晴れ間終着駅で傘忘れ★★★
紫陽花の薄赤き色をじっと見る★★★★
雨が窓をたたく音する夏の夜★★★

6月15日(3名)

●小口泰與
十薬や幼き頃の置時計★★★
子も真似て丸ごと食す香魚かな★★★★
鮎は香魚とも書かれるが、口にすると、ほのかないい匂いに気づく。腸のほろ苦さもいい。子どもが鮎は丸ごと食べるのが流儀と、大人をまねて、ちょっと大人びた気持ちで食したのであろう。(高橋正子)

鷺草や遊学の代の三畳間★★★

●広田洋一 
蜩やここは良い国かなかなかな★★★
蜩や川のせせらぎ混じりけり★★★★
蜩や入日さす木に鳴き初める★★★

●桑本栄太郎
礼拝へ集う標や花ざくろ★★★
せせらぎの闇に憩うや通し鴨★★★
そこだけの茂る古墳や高槻に★★★★

6月14日(4名)

●小口泰與
荒荒し快馬の息や青嵐★★★
どこからも赤城山(あかぎ)の見えて植田かな★★★★
夕餉時居間の風鈴揺れにけり★★★

●広田洋一
船虫や舟近づけば逃げ散りぬ★★★★
船虫は、ものの気配に敏感で、何かが近づこうものならば、一目散に逃げ散る。近づいた舟は釣りのための舟だろうか。何気ない詠み方だが、夏の磯岩の風景が生き生きと思い描ける。(高橋正子)

船虫やいつも岩場で隠れんぼ★★★
船虫の隠れ場所にて釣りをせり★★★

●上島祥子
梅の実や広げる笊に赤一つ★★★
紫陽花の青解き放つ寺の空★★★★
紫陽花が、自分の色を「解き放つ」という感覚が素晴らしい。静かな寺の庭。紫陽花は、空に向かって伸びやに、青という自分の色を解き放っている。寺という場所がそうさせている。(高橋正子)

唐黍の山と積まれて笊の上★★★

●桑本栄太郎
川風の誘いに乗るや合歓の花★★★★
さらさらと音の儚き小判草★★★
雨にぬれ色の変化の四葩かな★★★

6月13日(5名)

●内山富佐子
梅雨兆す竿竹売りの女声★★★★
竿竹売りは、いつの季節でもよさそうだが、梅雨の走りのころの竿竹売りの声は印象に残っている。竿竹売りの声が今の季節にぴったりで、この句では、竿竹売りが女声というのが、今風だ。(高橋正子)

一面に蓮の葉ゆるり日曜日★★★
ヘルパーと買い物するひと合歓の花★★★

●小口泰與
山風に対いし鳶や鉄線花★★★★
おちこちに水輪ぴこぴこ代田かな★★★
あわあわと鉄線の花鳶の笛★★★

●迫田和代
なんとなく梅雨の雨音ぼんやりと★★★
川沿いの道ほうずきの花水の音★★★★
沖からの白波踊る夏の海★★★

●桑本栄太郎
散策の人のあまたや青葉闇★★★★
歩みゆく木々の周りや草いきれ★★★
黒蟻の急ぎ慌てる砂場かな★★★

●多田有花
水滴を帯び花菖蒲開かんと★★★★
もや深き森の奥より不如帰★★★
郭公の声聞きながらブナの森★★★

6月12日(5名)

●河野啓一
空いっぱい植田に流る白い雲★★★
雨つゆを載せて重たき額の花★★★

夏つばめ山影映す田をかすめ★★★★
山影を映してひんやりとした田の面。その田の上を、時には田の水をかすめるように飛び、自在な動きを見せている。夏つばめの颯爽と飛ぶ姿がいい。(高橋正子)

●広田洋一
梅雨空の雲の絶え間に鳥の声★★★★
梅雨空に広がる雲の間にも、少し青空がのぞく。その雲の絶え間から鳥の声が漏れてくる。梅雨空はうっとうしいばかりではない。こんな明るい気持ちにさせてくれる時もある。丁寧な観察がよい。(高橋正子)

梅雨晴間草木の香り立ち込める★★★
梅雨の中人の流れ傘紫陽花★★★

●小口泰與
五月田へ朝の我が影落としける★★★★
忽然と水田へ来しかあめんぼう★★★
蟻の国地球を破壊したるかな★★★

●桑本栄太郎
夏草の被う荒野や丘公園★★★
一木を被いて天へ葛茂る★★★★
朱の色の雨の地面や花ざくろ★★★

●多田有花
晴れし沖望む山頂夏燕★★★★
梅雨空の下濁り川流る★★★
紫陽花の色づくころの曇り空★★★

6月11日(5名)

●小口泰與
到来の茎を揃えしさくらんぼ★★★
田水満ち忽と水輪の水澄し★★★★
満々と水を湛えた田は、見るものをのびやかにさせてくれる。田水が満ちている風景に気をいっていると、水澄ましがゆうゆうと水輪を作って泳いでいるではないか。すっとぼけたように現れた水澄ましは、驚きである。(高橋正子)

ほっかりとばらに日のある朝かな★★★

●福田ひろし
ふるさとの雨より熱き海紅豆★★★
海紅豆は梯梧ともいい、私は最近この花を初めて見ました。沖縄の県花で、いかにも南国の花という感じの真赤な花でした。「ふるさとの雨より熱き」とはこの花の異国めいたイメージを表現されたものでしょうか。意味は分かりにくいのですが、心を魅かれる句でした。(谷口博望)

容赦なく屋根たたく雨五月闇★★★
欄干の冷たさうれし薄暑かな★★★★

●桑本栄太郎
滴りや口開け集う池の鯉★★★
日盛の花見小路や人力車★★★
青梅雨や窓開け祈る教会堂★★★★

●古田敬二
トビウオは海の青さをもて売らる★★★★
トビウオの海の青さに塩を振る★★★
トビウオの海の青きを焼く夕餉★★★

●広田 洋一
石垣の鋭き角や緑の苑★★★
緑園に色鮮やかな桃華楽堂★★★★
桃華楽堂は、音楽がお好きな香淳皇后の還暦を祝って皇居内に建てられた。桃の節句が近い3月6日の誕生であること。華という字は、十が六個あることによるものらしい。その特異な形や装飾は、緑濃いなかでひときわ目を引く。(高橋正子)

松落葉散り込む先は松の廊下跡★★★


コメント

  1. 桑本栄太郎
    2015年6月17日 17:55

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    6月16日の投句「凌霄花の垣根にこぼれ緋の色に」の
    句に、★印4個のご句評を頂戴しまして、大変有難う
    ございます。
    花期の長い凌霄の花が、日毎に太陽と競うように咲き
    始めました。

  2. 谷口博望
    2015年6月18日 10:37

    私の好きな俳句
     ふるさとの雨より熱き海紅豆/福田ひろし

    海紅豆は梯梧ともいい、私は最近この花を初めて見ました。沖縄の県花で、いかにも南国の花という感じの真赤な花でした。
    「ふるさとの雨より熱き」とはこの花の異国めいたイメージを表現されたものでしょうか。意味は分かりにくいのですが、心を魅かれる句でした。