4月4日(金)

★春水の流るる音をパソコンに  正子
毎日パソコンを開くと、そこに春の軽やかな水の流れや、光や、せせらぎを見たり耳にしたりすることができるようになればいいなあと思う。そんな思いで壁紙に春水の画像と音を取り込んでみたのでしょうか。無機質に見えるパソコンにも春の香りが満ちてきて、楽しくなります。 (小西 宏)

○今日の俳句
菜の花の香の中を行く一筋に/小西 宏
菜の花の香りの柔らかさを、突き切って一筋に行く。突き切って行くことに人は何か爽快なものを感じる。(高橋正子)

○木苺の花

[木苺の花/横浜日吉本町]

 キイチゴは木苺のことで、苺が草になるのに対し、木になるのでこう呼ばれる。仲間が非常に多いので、キイチゴ類と表現するのが正しい。分類上は、バラ科キイチゴ属(Rubus)の植物で、わが国には基本種だけで約40種が自生する。
 キイチゴ属の地上部は、1年で枯れるものから数年生きるものまであるが、大半は2年を寿命とする。つまり、1年目は枝を伸ばして葉を展開し、2年目に開花、結実して枯れる型が多い。花が咲いて茎が枯れるのは、草の特徴であり、茎は木質化してはいるものの、キイチゴ属は基本的には、草本の性質を持っているわけである。「竹は木か草か」の命題は、今でも我々を悩ませているが、キイチゴに関しては、草ということで解決済みということになる。
 「木苺」は初夏の季題である。俳句では果実の成熟する時期に視点を合わせている。ただし、近代に入ってから使われた季語のようで、江戸期の句は見つかっていない。
 木苺は前にも述べたように40種にも及ぶキイチゴ属の総称である。しかし、仙台市周辺で人気のあるのは、モミジイチゴで、他のキイチゴ類には、あまり興味がないようである。葉の形がモミジに似るのでこの名があり、果実は文字通り黄苺で、わずかな酸味と十分な甘味があって、そのみずみずしさはキイチゴ属では最上である。林縁部や林道の沿線に生え、手ごろな高さに実るので、里山の子供たちにとっても重要なおやつになっている。

     山路行くや木苺取って食ひながら         村上 鬼城
     木苺を摘みもて辿る塩の道             石井 桐陰
     木苺のしたたるばかり熟れにけり         布施 大望
     木苺に滝なす瀬あり峡の奥            水原 秋桜子
     書庫までの小径木苺熟れてゐる          山口 青邨

 「木苺の花」は初春の季語。モミジイチゴの花は、純白5弁で野生の清々しさがあり美しい。

     よく見れば木苺の花よかりけり          高浜 虚子
     燈台にはや木苺の花白し             山口 青邨

                        (宮城環境保全研究所のホームページより)

★木苺の花が小声に語り合う/高橋正子
★木苺の花が咲くなり森といい/高橋正子

木苺の実が生るところを知っている。そこに行けば毎年木苺が熟れているはずだが、たくさん実が熟れているのに出会うのは稀だ。そういうときは大変うれしい。ほとんどは、実が落ちたのか、だれか採ったのか、たった一個が残っているようなことが多い。熟れた実を宝石のように大事に持ち帰って、家人に見せる。

◇生活する花たち「草苺の花・著莪(しゃが)・姫林檎の花」(横浜日吉本町)

4月4日

●小口泰與
夕映えを浴びし白梅風の中★★★
さえずりや庭に出たがる室内犬★★★
山風のこよなき匂い四月かな★★★★
春の山は萌え出る木の芽や落葉の匂いが混じって、「春の山の匂い」を特別に感じさせる。山風にのって運ばれる「こよなき匂い」は、四月こその匂い。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<故郷より帰宅の家路>
菜の花の畑の彼方に伯耆富士★★★★
葉の切られ畑に起ちおり春大根★★★
<高速米子道~中国道へ>
蛇行せる遥か眼下や春の川★★★

●多田有花
夜桜を正面に見て球を打つ★★★
雨あがり桜へ霧の立ち昇る★★★
花びらの舞い散る中を山に入る★★★★
花の舞い散る山は、花が終わりかけ、新緑に変わろうとする山で、季節の変わりざまが目に、体に感じ取れる。山には、いち早く季節がめぐって来ているようでもある。(高橋正子)

●小西 宏
午後の日を黄緑にして菜花畑★★★
安房よりは春波を越え三浦見ゆ★★★★
花映す大岡川の夜の明かり★★★

●高橋秀之
新しき白靴の列新入生★★★★
ぎこちなく不揃いの列入学式★★★
入学式終えて写真を母と撮る★★★