9月11日~20日


9月20日(4名)

●多田有花
曇天に始まる秋の彼岸かな★★★★
小枝焚くストーブの火や秋彼岸★★★
水流す音の聞こえし秋彼岸★★★

●小口泰與
暮れなずむ秋の妙義山(みょうぎ)は香車かな★★★
雨粒に映る花野や小宇宙★★★★
秋高し何かと言いて食べる妻★★★

●桑本栄太郎
<新幹線上京の車窓>
広大な近江平野の稲田晴れ(原句)
ひろびろと近江平野の稲田晴れ★★★★(正子添削)
「広大な」は、説明になっています。その広さに心を重ねてください。
広々とした近江平野、晴れ渡る空の下の稲田の眺めは、これぞ日本と思う素晴らしさがある。読み手の心も広々と、明るく開放される。(高橋正子)

秋の江や越すに程良き大井川★★★
天竜の鉄橋長き秋の空★★★

●廣田洋一
立ち並ぶ稲架の匂ひや津軽富士★★★★
津軽平野の眺め。立ち並ぶ稲架からは、陽に乾いてゆく稲の匂いがしてくる。あたたかい稲の匂いである。(高橋正子)

過ぎし日々思ひ起こせる稲架かな★★★
奴凧並びて上がり鳥威す★★★

9月19日(5名)

●河野啓一
台風の早やも過ぎ去り北海道★★★★
台風一過この空一転澄み渡り★★★
敬老日デイのカラオケしゃがれ声★★★

●小口泰與
山風をなだむ大樹や秋の蝉★★★★
空蒼し湖へなだるる秋桜★★★
朝顔や赤城仰ぎて脳活写★★★

●多田有花
秋の森わずかに名残の蝉の声★★★
大橋の彼方に立てる秋暑の雲★★★

台風過濁りの残る汽水域★★★★
台風が去っても、濁流の流れ込んだ河口辺り、つまり、海水と淡水の混じる汽水域は、濁りが薄くなったもまだ水は濁っている。微妙な濁り具合に目が行った。(高橋正子)

●廣田洋一
赤とんぼガイドの指に止まりけり★★★★
金色の御幣の香り秋の風★★★
秋供物捧げてお山参詣かな★★★

●満天星
青白き蝶の来てゐる藤袴★★★★
晩節の手習ひ遅々と曼殊沙華★★★
前撮りの乙女艶やか夕化粧★★★

9月18日(3名)

●多田有花
台風の到来を待つ静かな街★★★★
台風がわが街を通る予報が出れば、人は神妙にならざるを得ない。大した被害もなく台風が通り過ぎることを祈るばかり。(そういった街の静けさ。(高橋正子)

秋の宵風雨しだいに強まりぬ★★★
野分去る残してゆきし空の青★★★

●小口泰與
線香を縦に振りけり法師蝉★★★
地球儀の海と陸あり夜長かな★★★★
木犀や公民館の磴なぞへ★★★

●廣田洋一
色づきし稲穂揺るがす風強し★★★
人通り無き道行けり斜陽館★★★
仲秋の紙吹雪舞ふ津軽三味線★★★★

9月17日(3名)
台風18号の被害はございませんでしたか。お見舞い申し上げます。

●多田有花
台風の先触れの雨降りだしぬ★★★
嵐接近稲架をしっかり固定する★★★★
台風に備えてすること。農家なら稲架の固定。収穫の最後の最後まで気を許せない。(高橋正子)

台風が近づく涼しさを連れて★★★

●小口泰與
花木槿暮るるを嘆く湖の波★★★
秋草を客間に活けし妻の所作★★★★
秋草を活ける妻の所作が優しい。秋草が自然と人の所作をそうさせるのか。(高橋正子)

逆光の稲の穂並みの朝かな★★★ 
  
●廣田洋一
北のロケット南の台風空を揺るがせり★★★
台風を逃れて北へ旅立ちぬ★★★★
台風の進路に青き大目玉★★★

9月16日(3名)

●多田有花
廃屋の庭に秋草茂りおり★★★
急カーブして台風の接近中★★★
ぱっくりと裂けし石榴に傾く陽★★★★
この句の良さは、「柘榴に傾く陽」。景色が美しい。(高橋正子)

●小口泰與
虫鳴けり浅間溶岩道真の闇★★★★
この句の良さは、「溶岩(ラバ)」と「虫鳴けり」の取り合わせ。「真の闇」が加わり、虫の鳴き様、作者の眼の凝らし方がそ想像できること。(高橋正子)

噴煙のとどまる佐久や秋桜★★★
なかんずく落鮎掛かる夕まずめ★★★

●廣田洋一
河川工事鮭通る道と整へり★★★★ 
帰り道鮭の切身を買いにけり★★★
川底の石を飛ばして鮭上る★★★

9月15日(4名)

●多田有花
秋の朝液状味噌でみそ汁を★★★
法師蝉鳴き続けたりただ一羽★★★
歌声を流し運動会稽古★★★★
運動会も稽古であれば、観客はいないが、それでも歌声は楽しく流れ、子供たちは、わくわくする。(高橋信之)

●廣田洋一
名を知らぬ花の色付き秋の朝★★★
秋色の日毎増しける百日紅★★★
ポプラの葉翻す風秋の色★★★★

●小口泰與
虫の音や田毎の色の異なりし★★★★
以前四国松山の郊外に住んでいた時を思い出した。団地を出てバス停までは、田圃があって秋には虫が鳴くのを聞いた。(高橋信之)

寄合いはこの頃とんと今年酒★★★
なかなかに信濃横断秋日かな★★★

●川名ますみ
秋蝶の幾度も触るる水たまり★★★
朝顔のやさしいいろを校門に★★★
進めども車窓に続く鰯雲★★★★
「車窓」は自動車の車窓であろう。親しい人達との久しぶりのドライブに車窓の「鰯雲」に強く季節を感じた。(高橋信之)

9月14日(4名)

●多田有花
秋の大雨電車数本運休す★★★
ぽつぽつと刈田現る快晴に★★★★
稲が熟れ、田んぼには刈田が見えるようになった。良い天気が続くと稲刈りも進だろう。実りの秋の良い季節だ。「快晴」が快い。(高橋正子)

虫の音に囲まれ車走らせる★★★

●小口泰與
鈴虫の響もしあえる湖畔かな★★★
池の面の月を掬いし柄杓かな★★★

秋蝶の高みたかみへ二頭かな★★★★
空が高ければ、二つの蝶は競うあうように、どこまでも高く羽ばたく。空の高さ、蝶の生命力が澄んだ詩情で詠まれている。(高橋正子)

●廣田洋一
爽やかや友の病の癒えし朝★★★★
爽やかや理髪終えたる風吹きて★★★
爽やかに走り抜けたり9秒98★★★

●桑本栄太郎
風上へせせり競うや赤とんぼ★★★★
赤どんぼが、風に逆らい競り合って飛んでゆく。頭から風に突っ込み勢いづいて飛ぶ赤とんぼもまた、一面の赤とんぼの姿。(高橋正子)

乙訓は風の丘なり赤とんぼ★★★
鳴き声の風の間に間や秋の蝉★★★

9月13日(4名)

●小口泰與
外に出づや山風秋を連れて来し★★★★
稲の秀や雑草を刈るモーター音★★★
あけぼのの外山は紫紺虫時雨★★★

●多田有花
トンネルを抜けて谷間の霧望む★★★
なつかしき歌が流れる運動会★★★★
誰もが体験したことのある「なつかしき」風景だ。「運動会」は、子ども時代の思い出の中の最大のイベントだ。(高橋信之)

初めての鍼うち九月の坂くだる★★★

●廣田洋一
雲間より赤き日光る秋夕焼★★★
しなやかに雨はね返す芒の穂★★★
芒の穂銀色揺らし月を待つ★★★★

●桑本栄太郎
銀杏葉の色透き来たり天高し★★★★
秋が来た喜びの句だ。中七の「色透き来たり」に作者の喜びを読み取る。(高橋信之)

青空や窓には今も凌霄花★★★
鴨川の土手にカップル秋の色★★★

9月12日(3名)

●小口泰與
鯉捌く男の出刃や秋高し★★★★
「男の出刃」は、私にとって懐かしい思いがある。小学二年になったばかりの時父を亡くしたが、当時中国大陸(旧満州大連市)に住んでいた私たち家族の近くには親戚は居なかった。姉や兄がいたが、小学生の私がいつも母を手伝って煮炊きのガスを使った。私は理数科が得意だったので、理科の実験だと思い、喜んで手伝った。(高橋信之)

尋(と)めて来し邯鄲止むや草の闇★★★
赤あかと日は中天へ濃竜胆★★★

●廣田洋一
付け出しの小芋を剥きて乾杯す★★★★
ふたつみつ顔を出したる芋を抜く★★★
芋の葉の裏返りけり土黒し★★★

●桑本栄太郎
朴の葉の落ちて白きや秋日さす★★★★
鈴懸の毬の実散りぬ野分晴れ★★★
菜園の夕の明かりや花オクラ★★★

9月11日(3名)

●小口泰與
天井の虫や鼻より麻酔さす★★★
撞木打ち空澄む里へ響きけり★★★★
小高い寺の鐘だろう。鐘をつくと、澄んだ空が広がる里に響いた。目まぐるしい世の中からタイムスリップしたような里の風景に心がほどける。(高橋正子)

産土の蜂の子飯や祖母の顔★★★

●廣田洋一
仲秋の読経の声や小祥忌★★★
仲秋の榊奉奠氏子中★★★
仲秋の旅の予定を聞きにけり★★★★

●桑本栄太郎
バス停へ急ぐ坂道萩の風★★★
堰水の光る怒涛や秋の水★★★
うす紅の紅葉し初める水木かな★★★★

自由な投句箱/9月1日~10日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
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今日の秀句/9月1日~10日


9月10日(2句)

★とんぼうの朝風を浴び上昇す/小口泰與
朝風のさわやかな軽さがいい。とんぼの軽さは風の軽さ以上。(高橋正子)

★すすきから暮れて彼方に光る雲/多田有花
すすきが暮れ、彼方には、沈んだ夕日の最後の光を受けて光る雲がある。秋の日没の、その時の風景。(高橋正子)

9月9日(2句)

★爽籟や赤城とにかく裾長き/小口泰與
「とにかく」は、実感をもってのことだ。日々仰ぐ赤城山が、秋風が錚々と吹く中、その姿をくっきりと見せている。悠然とした産土の赤城山だ。(高橋正子)

★秋高し祭準備の始まりぬ/多田有花
空が高く晴れ渡り、街では祭りの準備が始まった。秋晴に、祭りが来るとなれば、大人もうきうきする。(高橋正子)

9月8日(2句)

★撫子の白き花飛び立ちさうな/廣田洋一
撫子の白は少しさびしげ。切れ込みのある花弁が羽のようで、どこか遠くへ飛び立つのではと思う。(高橋正子)

★こぼれ落ちし橡の実ひとつポケットに/桑本栄太郎
木の実がこぼれていれば、つい拾ってみたくなる。手のひらに転がし、しばし弄ぶことも。宝物のようにポケットにいれることも。つやつやした大きな橡の実は、ポケットがふさわしい。私は、イギリス旅行をしたとき、カッスルクームの小道で橡の実を拾い、帰国前夜ホテルのごみ箱に捨てるはめになった思い出がある。(高橋正子)

9月7日(3句)

★秋蝉は山の中こそ残りけり/多田有花
今日久しぶりに近所の丘に散歩に出たが、丘の木立の中は、この句の通り。みんみん蝉と法師蝉が盛んに鳴いていた。(高橋正子)

★二階にも灯りのつきて夜長かな/廣田洋一
「二階にも」が効いた。普段はあまり上がらない二階に灯りをつけて、夜長、本を探しているのかもしれない。夜長の灯りは生活感があってあたたかい。(高橋正子)

★蜻蛉の急に増えけり今朝の畦/小口泰與
今朝の畦は急に涼しくなった。蜻蛉が急に増えて元気に飛び交っている。透明な空気感が気持よい。(高橋正子)

9月6日(4句)

★畦道の数多の蜻蛉顔面に/小口泰與
下五に置かれた「顔面に」がいい。読者も肌に直に感じるのだ。(高橋信之)

★萩咲くや山の上へと向かう道/多田有花
作者の「山の上へと」動きがあって、上五の「萩咲く」が生き生きとしてくる。いい写生句だ。(高橋信之)

★幸せの水溢れさせ梨を剥く/廣田洋一
一句の冒頭に置かれた「幸せの水」がいい。作者の率直な「幸せの思い」がいい。(高橋信之)

★綾子忌の草花摘みて食卓へ/桑本栄太郎
上五の「綾子忌」、中七の「草花摘みて」、下五の「食卓へ」、この句のどこをとっても心優しい句だ。(高橋信之)

9月5日(2句)

★溝川の水の調べや稲穂垂る/桑本栄太郎(原句)
★溝川の水の響きや稲穂垂る/桑本栄太郎(正子添削)
私は、大阪生まれで、旧満州の中国大陸育ちなので、幼少の思い出に「稲穂垂る」風景はないが、母の郷里の四国愛媛に中学3年の春に引き揚げて帰り、「稲穂垂る」風景を知った。私にとっても懐かしい風景である。(高橋信之)

★仲秋の月を仰ぎつ氏神へ/廣田洋一
下五の「氏神へ」がいい。生活感の実感があって、生活に根付いた先祖崇拝の宗教がある。(高橋信之)

9月4日(1句)

★運動会荒筵敷き子等を待つ/廣田洋一
小学校の運動会は町内ぐるみの催しといってもよい。家族総出で応援する。荒莚を敷いて場所をとった昔も懐かしいが、今もそうだろうか。「荒莚」が素朴で力強い。(高橋正子)

9月3日(2句)

★陽に翅を光らせ群の赤とんぼ/多田有花
誰の記憶にもある光景だろうが、陽の光に翅を光らせる赤とんぼは、懐かしい、永遠の時間の中の光景のようだ。(高橋正子)

★人影の無き田に光る鳥威し/廣田洋一
誰もいない田の真昼、鳥威しがきらきら光る。陽に恵まれ、風が渡る田に、稲が熟れていく充静かな充実感がある句だ。(高橋正子)

9月2日(2句)

★好きな句を筆もて書けり涼新た/谷口博望(満天星)
「涼新た」を感じる季節。好きな句は読んだだけでは物足りなさを感じ、その句を筆で認める。その句がぐっと自分に近づく。(高橋正子)

★目の前の甲斐駒ケ岳桃啜る/小口泰與
甲斐駒ケ岳を目の前にして、桃を啜る。桃の季語は秋だが、駒ヶ岳の雄姿を眼前にして、季語としての桃がリアルで生きている。(高橋正子)

9月1日(1句)

★漣の如き雲あり二百十日/多田有花
二百十日に何事もないことはありがたい。空には漣のような白い雲があって、秋空の美しさを見せてくれている。(高橋正子)

9月1日~10日


9月10日(5名)

●谷口博望(満天星)
桃色の凌霄の花恋吐息★★★
月の裏兎の居ない闇世界★★★
天高し被爆樹を舞ふ千羽鶴★★★★

●廣田洋一
八重咲きの木槿の白くそよぎけり★★★
子供らの囃子太鼓や秋祭★★★★
青空に人出少なき秋祭★★★

●小口泰與
とんぼうの朝風を浴び上昇す★★★★
朝風のさわやかな軽さがいい。とんぼの軽さは風の軽さ以上。(高橋正子)

曼珠沙華青空我を吸い込みぬ★★★
菊の香や胃カメラ検査終りける★★★

●多田有花
すすきから暮れて彼方に光る雲★★★★
すすきが暮れ、彼方には、沈んだ夕日の最後の光を受けて光る雲がある。秋の日没の、その時の風景。(高橋正子)

油断してしたたかに刺され秋の蚊に★★★
秋暑の雲移り変わるを正面に★★★

●桑本栄太郎
わが胸の伽藍堂なり秋の風★★★
爽やかや黒き笑窪の伊達公子★★★★
追憶のつづく夜更けやつづれさせ★★★

9月9日(4名)

●廣田洋一
菊の日やワインの仕込み始まれり★★★★
重九の日赤ワインにも菊浮かべ★★★
菊の酒下戸の仏に供へけり★★★

●小口泰與
爽籟や赤城とにかく裾長き★★★★
「とにかく」は、実感をもってのことだ。日々仰ぐ赤城山が、秋風が錚々と吹く中、その姿をくっきりと見せている。悠然とした産土の赤城山だ。(高橋正子)

独り飲む新酒に夜の帳かな★★★
竜胆や谷川岳の彫り深かし★★★

●桑本栄太郎
錦木の早やも紅射す秋日かな★★★★
青き実のままに団栗散りにけり★★★
きちきちの我誘い居る田道かな★★★

●多田有花
青空をたたえし鉢の秋の水★★★
網くぐり熟れし無花果探しもぐ★★★
秋高し祭準備の始まりぬ★★★★
空が高く晴れ渡り、街では祭りの準備が始まった。秋晴に、祭りが来るとなれば、大人もうきうきする。(高橋正子)

9月8日(4名)

●多田有花
秋の夜にアップルシードルを開ける★★★
急かすなよ桜紅葉を雨が打つ★★★★
秋雨を聞きつ一枚描く午後★★★

●小口泰與
朝顔の風雨の中に閉じしまま★★★★
とんぼうの幽かに羽音聞こゆなり★★★
瀞の渦桐の一葉のとどこおる★★★

●廣田洋一
蛇の目傘似合う撫子そよぎけり★★★
撫子の薄紅染める川原かな★★★

撫子の白き花飛び立ちさうな★★★★
撫子の白は少しさびしげ。切れ込みのある花弁が羽のようで、どこか遠くへ飛び立つのではと思う。(高橋正子)

●桑本栄太郎
こぼれ落つ橡の実ひとつポケットに★★★★
こぼれ落ちし橡の実ひとつポケットに★★★★(正子添削)
「こぼれ落つ」は文語で、上二段活用です。「こぼれ落つ/橡の実ひとつ/ポケットに」のように切れてしまっています。
木の実がこぼれていれば、つい拾ってみたくなる。手のひらに転がし、しばし弄ぶことも。宝物のようにポケットにいれることも。つやつやした大きな橡の実は、ポケットがふさわしい。私は、イギリス旅行をしたとき、カッスルクームの小道で橡の実を拾い、帰国前夜ホテルのごみ箱に捨てるはめになった思い出がある。(高橋正子)

ひとしきり騒ぐ水辺や蘆の風★★★
赤とんぼ群れて風問う高さかな★★★

9月7日(4名)

●多田有花
秋蝉は山の中こそ残りけり★★★★
今日久しぶりに近所の丘に散歩に出たが、丘の木立の中は、この句の通り。みんみん蝉と法師蝉が盛んに鳴いていた。(高橋正子)

ぽつぽつと雨降りだしぬ白露の朝★★★
猪の通りし後をたどりけり★★★

●廣田洋一
長き夜やビデオのドラマ次々と★★★
二階にも灯りのつきて夜長かな★★★★
「二階にも」が効いた。普段はあまり上がらない二階に灯りをつけて、夜長、本を探しているのかもしれない。夜長の灯りは生活感があってあたたかい。(高橋正子)

金星の風の音聴く夜長かな★★★★
澄んだ詩情がいい。(高橋正子)

●小口泰與
畦川の利根に遂げ行く稲穂かな★★★
蜻蛉の急に増えけり今朝の畦★★★★
今朝の畦は急に涼しくなった。蜻蛉が急に増えて元気に飛び交っている。透明な空気感が気持よい。(高橋正子)

稲雀鋭声つづりて逃げにけり★★★

●桑本栄太郎
田の畦の鄙のショーなり案山子立つ★★★
雨上がり夜ともなれば虫の闇★★★
窓よりの夜風に乗りて虫の声★★★★

9月6日(4名)

●小口泰與
畦道の数多の蜻蛉顔面に★★★★
下五に置かれた「顔面に」がいい。読者も肌に直に感じるのだ。(高橋信之)

とんぼうの数多舞いおる畷かな★★★
白飯に産みたて卵天高し★★★

●多田有花
萩咲くや山の上へと向かう道★★★★
作者の「山の上へと」動きがあって、上五の「萩咲く」が生き生きとしてくる。いい写生句だ。(高橋信之)

思い出したように聞こえし九月の蝉★★★
運動会の練習始まる河川敷★★★

●廣田洋一
赤みさす皮を垂らして梨を剥く★★★
幸せの水溢れさせ梨を剥く★★★★
一句の冒頭に置かれた「幸せの水」がいい。作者の率直な「幸せの思い」がいい。(高橋信之)

梨を食ぶ窓打つ雨の雫垂れ★★★

●桑本栄太郎
教会へ訪ない行けば秋の色★★★
夕闇の足へ音頭や鐘叩★★★
綾子忌の草花摘みて食卓へ★★★★
上五の「綾子忌」、中七の「草花摘みて」、下五の「食卓へ」、この句のどこをとっても心優しい句だ。(高橋信之)

9月5日(4名)

●小口泰與
我が影の巨人になりし虫の声★★★★
大樹より一羽離れし花鶏かな★★★
初紅葉顔の真上の榛名富士★★★

●多田有花
山の色変わり初めにし九月かな★★★
秋涼の窓開け走る車かな★★★
灯火親しノンフィクションのページ繰る★★★★

●廣田洋一
仲秋や古式ゆかしき稚児の舞★★★
仲秋の月を仰ぎつ氏神へ★★★★
仲秋に友の集ひて白き月★★★

●桑本栄太郎
溝川の水の調べや稲穂垂る(原句)
溝川の水の響きや稲穂垂る★★★★(正子添削)
私は、大阪生まれで、旧満州の中国大陸育ちなので、幼少の思い出に「稲穂垂る」風景はない。母の郷里の四国愛媛に中学3年の春に引き揚げて帰り、「稲穂垂る」風景を知った。私にとっても懐かしい風景である。(高橋信之)

秋雲の背ナに育てり天王山★★★
金色の入日茜やいわし雲★★★

9月4日(4名)

●多田有花
初出荷の梨ゆえ今日は大安売★★★★
雨あがり九月の蝉が遠くで鳴く★★★
秋曇一枚はおり外に出る★★★

●小口泰與
鮞や三度も双子生まれける★★★
流星や書肆をいろどる週刊誌★★★★
色鳥や同胞集う祝立て★★★

●廣田洋一
運動会リレー選手を目指しけり★★★
運動会荒筵敷き子等を待つ★★★★
小学校の運動会は町内ぐるみの催しといってもよい。家族総出で応援する。荒莚を敷いて場所をとった昔も懐かしいが、今もそうだろうか。「荒莚」が素朴で力強い。(高橋正子)

じじばばの混じる綱引き運動会★★★

●桑本栄太郎
<高瀬川~鴨川~祇園>
せせらぎの木洩れ日深く白木槿★★★★
落鮎の背のきらめくや堰の水★★★
路地に日の影の二階や秋すだれ★★★

9月3日(5名)

●谷口博望 (満天星)
いそぐなよつくつくぼうしひとり鳴く★★★★
蓮の実や記憶の螺旋たどる旅★★★
海猫帰る教師の胸に見とれし頃★★★

●多田有花
みそ煮込うどんを食す新涼に★★★
秋空へ高々伸びるクレーンかな★★★
陽に翅を光らせ群の赤とんぼ★★★★
誰の記憶にもある光景だろうが、陽の光に翅を光らせる赤とんぼは、懐かしい、永遠の時間の中の光景のようだ。(高橋正子)

●廣田洋一
人影の無き田に光る鳥威し★★★★
誰もいない田の真昼、鳥威しがきらきら光る。陽に恵まれ、風が渡る田に、稲が熟れていく充静かな充実感がある句だ。(高橋正子)

鳥威し殺す気はなく夕日落つ★★★
次々と新手繰り出す鳥威し★★★

●小口泰與
浮雲を放つ浅間や鳳仙花★★★★
靴先を濡らす朝露ゴルフ場★★★
秋雨の広場を占むる草の丈★★★

●桑本栄太郎
うそ寒や一枚足せり目覚め前★★★
風二日つづき静かに秋の蝉★★★
路地の日の豊かにありぬ秋簾★★★★

9月2日(5名)

●谷口博望(満天星)
涼新た好きな句集を筆で書く(原句)
好きな句を筆もて書けり涼新た★★★★(正子添削)
「涼新た」を感じる季節。好きな句は読んだだけでは物足りなさを感じ、その句を筆で認める。その句がぐっと自分に近づく。(高橋正子)

蓮の実や過去の系譜を考える★★★
 囲碁名人戦
秋の陣捨石作戦功奏す★★★

●多田有花
秋風と思う部屋通りゆく風も★★★
秋涼の風吹く森をひとり歩く★★★
秋澄みて海の彼方の橋見える★★★★

●小口泰與
松虫草溶岩道つづく信濃かな★★★
花木槿雲流れ行く速さかな★★★
目の前の甲斐駒ケ岳桃啜る★★★★
甲斐駒ケ岳を目の前にして、桃を啜る。桃の季語は秋だが、駒ヶ岳の雄姿を眼前にして、季語としての桃がリアルで生きている。(高橋正子)

●廣田洋一
子供山車大人が担ぐ秋祭り★★★
日照時間取り戻したる残暑かな★★★
昼休み残暑募らす俄雨★★★★

●桑本栄太郎
秋蝶の何かを探し辿り居り★★★
うそ寒や今もあれこれ君のこと★★★
ふるさとの新甘泉とや梨届く★★★★

9月1日(4名)

●多田有花
小さき火燃やし八月送りけり★★★
漣の如き雲あり二百十日★★★★
二百十日に何事もないことはありがたい。空には漣のような白い雲があって、秋空の美しさを見せてくれている。(高橋正子)

秋雲の流れる中の山を見る★★★

●小口泰與
村里を攻むる背高泡立草★★★★
腰の痛み時には忘れ酔芙蓉★★★
迷界の鳴禽を聞く沢桔梗★★★

●廣田洋一
電線の補強工事や震災忌★★★★
老人の避難訓練震災忌★★★
震災の予報は無理と震災忌★★★

●桑本栄太郎
葉の裏の白く巻き居り芋嵐★★★
学童の鳩吹く風を戻りけり★★★★
下冷えの嶺に入り日の茜かな★★★

自由な投句箱/8月21日~31日


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今日の秀句/8月21日~31日


8月31日(3句)

★書肆に居りとある夜長を我一人/小口泰與
「我一人」なのだが、充分であり、いい生活だ。(高橋信之)

★露けしや田道の独り吟行に/桑本栄太郎
上五の季題「露けし」がいい。季節をしかと捉えた。(高橋信之)

★澄む秋の山の上には昼の月/多田有花
写生句だが、上五の「澄む秋」がいい。作者の心境を読む。(高橋信之)

8月29日(2句)

★潮風の屋島の酢橘届きけり/小口泰與
酢橘(スダチ)は徳島県を代表する特産物であり、酢橘の花は徳島県の県花。讃岐屋島は、那須与一の扇の的のエピソードで知られる。(高橋信之)

★とりどりの茸愛でつつ森歩く/多田有花
俳句の良さを生かした句。一人歩いていれば、なおいい。読み手を楽しませてくれる。

8月28日(1句)

★新涼の茗荷たっぷり刻みけり/廣田洋一
現代詩とは違う味わいがあって俳句の良さが出た。身近な生活感がいい。(高橋信之)

●8月27日(2句)

★秋の朝くべし小枝の杉匂う/多田有花
「杉匂う」思い出は私にもあり、懐かしい思い出だが、それが何処であったかは、今は記憶にない。(高橋信之)

★産土の満州いづこ去ぬ燕/満天星
私の生まれは、父の勤め先の大阪だが、二歳の時に旧満州(関東州)の大連に移り住み、中学3年時に父が亡くなっていたので、母の実家がある愛媛に引き揚げた。私の生まれは、大阪だが、記憶にあるのは、私にとっても、「産土の満州」である。(高橋信之)

8月26日(5句)

★飛び交うは翅の傷みし秋の蝉/多田有花
秋になって、翅が傷んだにもかかわらず飛び交う蝉は元気な蝉とも言えるが、それが却って淋しい。(高橋正子)

★秋雨に静まりをりぬ休耕田/廣田洋一
休耕田は言ってみれば荒れた田とも言える。秋雨が降り注いで静まっている。わびしくも静かな田だ。(高橋正子)

★生い茂り幹の高さや葛の花/桑本栄太郎
葛の繁茂は旺盛だ。葛の蔓は幹がある限りよじ登り、そこに花を咲かせる。幹が高ければ、花も高く咲く。(高橋正子)

★手に馴染む古るき歳時記秋灯/小口泰與
静かな秋の夜のたのしみに、俳句を作る。いい季節だ。手元に置いている歳時記もしっくりと手に馴染み、もう、作句が日常生活となっている。俳句への愛着。歳時記への愛着は、代えがたいものだ。(高橋正子)

★秋の雲ミントをちぎるティータイム/川名ますみ
ミントの葉をちぎって、紅茶に浮かべてミントティーにしたりして楽しむ。秋の雲を見ながらの、ささやかなことを加えて、いいお茶の時間だとなった。(高橋正子)

8月25日(なし)

8月24日(1句)

★宇品港の入船出船秋暑し/谷口博望(満天星)
広島の宇品港には瀬戸内海を行き来する連絡船が多く発着する。秋の暑さのなかを、入船出船が行き交い、
人々の往来がある。港の光景に親しんだものには、入船出船が遠い景色のようにも思えるのではないか。(高橋正子)

8月23日(2句)

★こんこんと尾瀬に水湧き新豆腐/小口泰與
尾瀬の水は初秋でも手が切れそうになるほど冷たかったことを、思い出した。そんな水に浸された新豆腐が掬われ、食膳に上った。新豆腐の大豆、水のかすかな甘味がうれしい。(高橋正子)

★草原の空とコスモス晴れ渡る/廣田洋一
草原とコスモスの取り合わせは、やさしい風景だ。「晴れ渡る」空が、気持ちを大きくのびやかにしてくれた。そこがいい。(高橋正子)

8月22日(2句)

★秋蝶と隣り合わせて頂に/多田有花
蝶と隣り合わせる、近く同じ空間いる、という楽しさ。「秋蝶」の季語が山頂の澄んだ空気やしなやかで可憐な小さな命ある姿をよく表現している。(高橋正子)

★帰り来て虫の音すだく庭の隅/廣田洋一
街の喧騒から我が家に帰りついて、すだく虫の音に迎えられた。虫の音に包まれたわが家の安心に心が落ち着く。(高橋正子)

8月21日(2句)

★初秋の海の青さを見る頂/多田有花
「初秋」と「海の青さ」に「頂」が加わり、詩が生まれた。頂の見晴らしの良さ、頂に居る快さに気持ちが新鮮に、みずみずしくなった。(高橋正子)

★朝顔や電子編集はかどりし/小口泰與
さわやかな朝に開く朝顔の花は、見えないもの、電子のようものと交歓している感じだ。涼しい朝は、電子文書の編集がおのずからはかどる。(高橋正子)

8月21日~31日


8月31日(4名)

●多田有花
点々とバッタのとまるテニスコート★★★★
虫の音に囲まれて飲むデカフェかな★★★
遠山の影くっきりと秋の朝★★★

●小口泰與
朝顔のいよよ艶ます雨の中★★★
書肆に居りとある夜長を我一人★★★★
「我一人」なのだが、充分であり、いい生活だ。(高橋信之)

夕暮やとかく群れたる稲雀★★★

●廣田洋一
新涼の風吹き上げる地下ホーム★★★★
秋の雲ひっくり返すバケツかな★★★
磨きたる小刀のごと鰯かな★★★

●桑本栄太郎
朝冷えの風の窓辺に目覚めけり★★★
露けしや田道の独り吟行に★★★★
上五の季題「露けし」がいい。季節をしかと捉えた。(高橋信之)

鳥威し躍る田道や風の丘★★★

8月30日(4名)

●小口泰與
紅葉に衒う写真のなかなかに★★★
大岩へた走る水の野分かな★★★★
醜草の溢れし庭の残暑かな★★★

●廣田洋一
飛び立ちてすぐに降り来る秋の蝶★★★★
秋風や首筋そつと撫でて行く★★★
捨てられしビニール傘よ秋の風★★★

●多田有花
朝方の雨が残暑を拭い去る★★★
澄む秋の山の上には昼の月★★★★
写生句だが、上五の「澄む秋」がいい。作者の心境を読む。(高橋信之)

秋茄子にとろけるチーズのせて食ぶ★★★

●桑本栄太郎
葉の裏の巻いて白きや芋嵐★★★
一様に頬紅描かれ案山子立つ★★★
田水落つ音に熟れゆく稲穂かな★★★★

8月29日(5名)

●小口泰與
朝露や手負いの野鳩二歩三歩★★★
潮風の屋島の酢橘届きけり★★★★
酢橘(スダチ)は徳島県を代表する特産物であり、酢橘の花は徳島県の県花。讃岐屋島は、那須与一の扇の的のエピソードで知られる。(高橋信之)

雨粒の照らう朝や秋薊★★★

●廣田洋一
振舞ひの女将総出の秋祭り★★★
秋草の花に埋もれる空地かな★★★★
秋草を好きに名付けて押花に★★★

●多田有花
とりどりの茸愛でつつ森歩く★★★★
俳句の良さを生かした句。一人歩いていれば、なおいい。読み手を楽しませてくれる。

秋蝉の声も名残の朝となる★★★
秋蝉の声の日ごとに細くなる★★★

●谷口博望(満天星)
葡萄枯れ隣の主人見なくなり★★★
駒繫引つ張りみれば力あり★★★★
涼新た好きな句集をスキャン中★★★

●桑本栄太郎
処暑過ぎと思えど夜の寝苦しき★★★
駅跨ぐ高架道路や秋日影★★★★
人影のぬつと蔭より秋暑し★★★

8月28日(5名)

●谷口博望 (満天星)
草原や雪加の鳴いて雌を呼び★★★★
炎天の海へダイブの鶚かな★★★
葛の花葛根湯の原料とや★★★

●多田有花
住宅の間に光る鳥威★★★
空少し高くなり初め鳶の笛★★★★
開ける窓ひとつ減りたり秋の朝★★★

●小口泰與
いたずらに葉音奏でる秋蚕かな★★★
つややかな箸の木目や秋袷★★★★
秋ばらや隠れし虫を爪はじき★★★

●廣田洋一
新涼の茗荷たっぷり刻みけり★★★★
現代詩とは違う味わいがあって俳句の良さが出た。身近な生活感がいい。(高橋信之)

新涼や遠くに聞こゆ笛太鼓★★★
新涼の風を探して池の端★★★

●桑本栄太郎
<大阪ロイヤルホテルにて鳥取県県人会>
秋雲の橋の数多や中之島★★★
新涼のお国言葉や県人会★★★
ふるさとの地酒酌み居り涼新た★★★★

8月27日(4名)

●多田有花
曇り空残暑ようやく衰える★★★
秋空を悠々と舞うとんびかな★★★
秋の朝くべし小枝の杉匂う★★★★
「杉匂う」思い出は私にもあり、懐かしい思い出だが、それが何処であったかは、今は記憶にない。(高橋信之)

●小口泰與
あの頃の湧き出づ慕情屁尻虫★★★
白芙蓉つぶさに琴を奏でける★★★
熟柿落ち引力確と有りにけり★★★★

●廣田洋一
湘南の夜を揺さぶるねぶたかな★★★★
神主の小さき榊や秋祭り★★★
お囃子はテープで流す在祭り★★★

●満天星
産土の満州いづこ去ぬ燕★★★★
私の生まれは、父の勤め先の大阪だが、二歳の時に旧満州(関東州)の大連に移り住み、中学3年時に父が亡くなっていたので、母の実家がある愛媛に引き揚げた。私の生まれは、大阪だが、記憶にあるのは、私にとっても、「産土の満州」である。(高橋信之)

翡翠の幾度擲つ小さき体★★★
爛爛と鎌首を振る葛の花★★★

8月26日(4名)

●多田有花
飛び交うは翅の傷みし秋の蝉★★★★
秋になって、翅が傷んだにもかかわらず飛び交う蝉は元気な蝉とも言えるが、それが却って淋しい。(高橋正子)

ねぐらへと戻る鴉や秋の夕★★★
早朝の心地よきかな秋暑し★★★

●小口泰與
里山の分校尽くや白木槿★★★★
湖の面の忽と変わりし酸芙蓉★★★
蜩の声相次ぐや里の杜★★★

●廣田洋一
電車にて降り込められし秋の雨★★★
秋雨に静まりをりぬ休耕田★★★★
休耕田は言ってみれば荒れた田とも言える。秋雨が降り注いで静まっている。わびしくも静かな田だ。(高橋正子)

秋雨や窓打つ音のセレナーデ★★★

●桑本栄太郎
木々の葉と小枝散らばり野分凪ぐ★★★
生い茂り幹の高さや葛の花★★★★
葛の繁茂は旺盛だ。葛の蔓は幹がある限りよじ登り、そこに花を咲かせる。幹が高ければ、花も高く咲く。(高橋正子)
秋の蚊の打たれていたりバスの中★★★

8月25日(6名)

●多田有花
秋蝉の声を聞きつつストレッチ★★★★
新涼の部屋に野鳥の訪れあり★★★
心地よき風吹く残暑の三日月★★★

●小口泰與
蜩やふる里駄菓子買いにける★★★
手に馴染む古るき歳時記秋灯★★★★
静かな秋の夜のたのしみに、俳句を作る。いい季節だ。手元に置いている歳時記もしっくりと手に馴染み、もう、作句が日常生活となっている。俳句への愛着。歳時記への愛着は、代えがたいものだ。(高橋正子)

秋ばらの疲れや妻の厨事★★★

●廣田洋一
鬼灯を鳴らして遊ぶ日本人★★★★
鬼灯や遺影を照らす七七忌★★★
音鳴らぬほおずき咥へほろ苦し★★★

●桑本栄太郎
うそ寒や目覚め閉め居る朝の窓(原句)
うそ寒や目覚めに閉めし朝の窓★★★(正子添削)

長薯の姉より来たりねばりつこ(原句)
長薯の姉より届きねばりっこ★★★(正子添削)

新涼の旅の思案の定まりぬ(原句)
新涼の旅の予定の定まりぬ★★★★(正子添削)

●川名ますみ
秋の雲ミントをちぎるティータイム★★★★
ミントの葉をちぎって、紅茶に浮かべてミントティーにしたりして楽しむ。秋の雲を見ながらの、ささやかなことを加えて、いいお茶の時間だとなった。(高橋正子)

背の窓に祭が終るアナウンス★★★

●谷口博望(満天星)
まとひつく予期せぬ一語秋の蝶★★★
翡翠や神秘の色と長き嘴★★★
晩鐘や飛翔はじまる蚊食鳥★★★★

8月24日(5名)

●多田有花
洗い髪を八月の夜風にさらす★★★
処暑の午後日差し明るき天気雨★★★★
八月の朝燃え残る蚊取線香★★★

●小口泰與
夕映を映す利根川秋薊★★★
大石の濁流の跡秋の雲★★★
産土の利根の川原や涼新た★★★★

●谷口博望(満天星)
宇品港の入船出船秋暑し★★★★
広島の宇品港には瀬戸内海を行き来する連絡船が多く発着する。秋の暑さのなかを、入船出船が行き交い、
人々の往来がある。港の光景に親しんだものには、入船出船が遠い景色のようにも思えるのではないか。(高橋正子)

法師蝉埴輪少女は鳥を抱き★★★
百日紅阿久利の像の麗しき★★★

●廣田洋一
青空に声張り上げる木槿かな★★★
友を呼ぶ垣に咲きたる花木槿★★★★
捨畑に木槿咲きける夕べかな★★★

●桑本栄太郎
谷間の朝のしじまや威し銃(原句)
谷の朝のしじまを破り威し銃★★★★(正子添削)

冷房を止めて入日の窓辺かな★★★
長き夜や古き句集を読み返す★★★

8月23日(5名)

●多田有花
秋の雷聞きつつ午後のお茶を飲む★★★★
秋雷やんで出かけし隙に荷物来る★★★
壁にさす日差し斜めに処暑の朝★★★

●小口泰與
こんこんと尾瀬の水湧く新豆腐(原句)
こんこんと尾瀬に水湧き新豆腐★★★★(正子添削)
尾瀬の水は初秋でも手が切れそうになるほど冷たかったことを、思い出した。そんな水に浸された新豆腐が掬われ、食膳に上った。新豆腐の大豆、水のかすかな甘味がうれしい。(高橋正子)

朝顔や異人も居りし露天風呂★★★
流星や束の間湖に音すなり★★★

●廣田洋一
草原の空とコスモス晴れ渡る★★★★
草原とコスモスの取り合わせは、やさしい風景だ。「晴れ渡る」空が、気持ちを大きくのびやかにしてくれた。そこがいい。(高橋正子)

秋桜野原の空を染めにけり★★★
コスモスや家の跡地を風渡る★★★★

●桑本栄太郎
見晴るかす今朝の鞍馬や爽やかに★★★★
落鮎の釣られ銀鱗空を飛ぶ★★★
陰影の対比色濃き残暑かな★★★

● (満天星)
なつかしき母に触れたる墓参★★★
かなかなや今の政治の体たらく★★★
首里城の朱をまなうらに花梯梧★★★★

8月22日(5名)

●小口泰與
朝顔や日は中天をつかさどる★★★★
鶏頭や夕映え映ゆる浅間山★★★
駅前や大樹を占むる椋の群★★★

●満天星
島唄の聞えてきたり花梯梧★★★★
花梯梧死者の魂海渡り★★★
似島やフェリー出てゆく秋の潮★★★

●多田有花
秋蝶と隣り合わせて頂に★★★★
蝶と隣り合わせる、近く同じ空間いる、という楽しさ。「秋蝶」の季語が山頂の澄んだ空気やしなやかで可憐な小さな命ある姿をよく表現している。(高橋正子)

初秋の光の中へ干すタオル★★★
夕暮れも夜明けもつくつくぼうし鳴く★★★

●廣田洋一
帰り来て虫の音すだく庭の隅★★★★
街の喧騒から我が家に帰りついて、すだく虫の音に迎えられた。虫の音に包まれたわが家の安心に心が落ち着く。(高橋正子)

雨上がり澄みたる空や虫ライブ★★★
酒酌みて我が庭の虫聞きゐたる★★★

●桑本栄太郎
秋雲や伯耆大山とう嶺の上★★★★
名乗り出でひときわ惜しむ法師蝉★★★
一炊の夢とも思う邯鄲に★★★

8月21日(4名)

●多田有花
初秋の海の青さを見る頂★★★★
「初秋」と「海の青さ」に「頂」が加わり、詩が生まれた。頂の見晴らしの良さ、頂に居る快さに気持ちが新鮮に、みずみずしくなった。(高橋正子)

夕暮れて盆踊の歌流れ来る★★★
秋浅きベランダで本を読みふける★★★

●小口泰與
秋祭背中に寝入る半被の子★★★
朝顔や電子編集はかどりし★★★★
さわやかな朝に開く朝顔の花は、見えないもの、電子のようものと交歓している感じだ。涼しい朝は、電子文書の編集がおのずからはかどる。(高橋正子)

鵙日和利根川(とね)に朝日を鏤むる★★★

●桑本栄太郎
じつとりと風に湿りの残暑かな★★★
発電の羽根のゆるりと稲穂垂る★★★
あきつ飛ぶ谷の風あり妻の里★★★★

●廣田洋一
線路際独りの帰路や秋の暮★★★★
鳥の巣やただそこにあり秋の暮★★★
秋の暮野菜枯れたる散歩道★★★

自由な投句箱/8月11日~20日


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