7月11日~7月20日

7月20日(6名)

廣田洋一
サーファーのめげずに挑む土用波★★★
茄子漬の紺鮮やかに朝の卓★★★★
男の子日傘をたたむ投票所★★★

桑本栄太郎
お早うと挨拶交わす木下闇★★★
木洩れ日の舗道行きつつ蝉しぐれ★★★
うつそうと木蔭の道の涼気かな★★★

多田有花
田の上を群れて飛ぶなり夏あかね★★★
葉柳の橋越え酒蔵レストラン★★★

夏深む酒蔵に桔梗咲き初めし(原句)
酒蔵に桔梗咲き初め夏深む(正子添削)

小口泰與
翡翠の鳴き声止めて水中へ★★★
明け六つの日差しは強し茄子の花★★★
上州の風無き日より滝の音★★★

土橋みよ
梅雨明けてブルーベリーのぷっくりと★★★★
「ぷっくりと」がいいです。(髙橋正子)
蝉じっと日陰の胡瓜の揺れる葉に★★★★
踏み入れば蜥蜴飛び出る朝の庭★★★

上島祥子
蝉時雨大樹が続く朝の径★★★★
法会の経エアコン効かす本堂に★★★
朝涼や投票箱の空を見ぬ★★★

7月19日(3名)

多田有花
<西国二十六番・法華山一乗寺三句>
千年の塔億年の山盛夏★★★★
見上げれば光重なる青楓★★★★
霊場の茂りを後に街に向かう★★★

桑本栄太郎
木洩れ日を選び行き居りダンゴ虫★★★
蝉しぐれうねりとなりて伸びゆけり★★★
さぐり行くこの世の闇や道おしえ★★★

上島祥子
夏の露二粍に宿る朝日かな★★★★

白蓮の香慎ましく寺の朝(原句)
どう読ませているのでしょう。少し読みにくさを感じます。(髙橋正子)
白蓮の香の慎ましく寺の朝(正子添削①)
白蓮の香り慎まし寺の朝(正子添削)
「香り慎まし」の部分は、「香りの慎まし」の主格の助詞「の」の省略してあります。

青天に荷葉の緑は濃さを増し★★★★

7月18日(4名)
小口泰與
手も足も透ける泉へ鳥の声★★★★
翡翠の停止飛行や一直線★★★
岩清水掬うもろ手や登山道★★★
桑本栄太郎
川風に浮かび群れ居り夏あかね★★★★
涼風の木陰に入りてひと休み★★★
シャワシャワと鳴けば汗噴く背筋かな★★★
 
多田有花
<西国二十六番・法華山一乗寺三句>
常行堂真夏の光いっぱいに★★★
七月の空と山とに塔があり★★★★
水煙の彼方に湧けり夏の雲★★★
「夏の雲」の様子が分かると★4つです。(髙橋正子)
改作 水煙の彼方に湧き初め夏の雲 
 
廣田洋一
梅雨明けの風よぎりたる法の庭★★★
鷺草や低く構えて法の池★★★
長嶋墓碑黒字となりて梅雨明けぬ★★★

 7月17日(4名)

多田有花
蝉の声なき山寺の静けさよ★★★
 <西国二十六番・法華山一乗寺二句>
境内に泰山木の咲く寺へ★★★
大緑陰見上げ石段へ向かう★★★

三句とも、句材、景色ともに申し分ないです。(髙橋正子)

廣田洋一
松落葉ふわりと踏みし石畳★★★★
涼風に波打つ如く土手の草★★★
夏野菜引売りを待つ人の列★★★

桑本栄太郎)
朝なれど白雨激しくなりにけり★★★

「朝なれど」の「なれど」が気になります。(髙橋正子)
ぼうぜんと雨を眺める返り梅雨★★★
田舎より二つの箱に夏野菜★★★

「二つの箱に夏野菜」はとてもいいです。(髙橋正子)

小口泰與
翡翠の咥えし魚の丸丸と★★★
青葦の揺れて水輪の広がりし★★★
老鶯や山の小沼へ声をはり★★★

7月16日(5名)

小口泰與
灼熱の清清しさや若葉風(原句)
「灼熱」と「若葉風」は温度感が違うの相いれるのは難しいと思います。若葉風が吹いているのに、なぜ灼熱なのでしょうか。(髙橋正子)

青葦に隠れる野鳥沼の風★★★
風薫るカメラが好きで鳥が好き★★★

多田有花
豆蔦を這わせ地蔵の緑陰に★★★
万緑に包まれ地蔵菩薩立つ★★★
青楓聖観音の立ちにけり★★★

桑本栄太郎
<鳥取の田舎より帰京への道>
山の端に峰雲そだつ中国道★★★

眼の前に稜線せまる雲の峰(原句)
切れが問題です。(髙橋正子)
目の前に稜線せまり雲の峰(正子添削)

赤瓦屋根の灼けおり米子道★★★

川名ますみ
ハンカチを項にあてて僧過ぎぬ★★★
陽が差して都市の医大に揚羽蝶★★★
百日紅花の重さを持て余す★★★

上島祥子
着飾って蛍の庭の闇に入る★★★
向日葵の日の出の向きに咲き揃う★★★★

木槿咲く碧の勢い増す朝に(原句)
「碧」が何の「碧」が示されていないので、はっきりさせるのがいいです。(髙橋正子)
木槿咲く碧の勢い増す空に(正子添削)

7月15日(3名)
多田有花
山門へ続く道なり苔青し★★★
青苔とひとつになりぬ石仏★★★

改作「青苔と化す参道の石仏」

表現として「青苔とひとつになり」がぴったりとしていないです。出来れば、表現は正確なのがいいです。「青苔と化す」の言い方もできます。(髙橋正子)

睡蓮や深閑として山の寺★★★
桑本栄太郎
送電線の嶺より里へ雲の峰★★★
青田波市街地過ぎるモノレール★★★
ハイウェイの山山山や夏木立★★★

川名ますみ
夾竹桃咲いて大樹を顕にす★★★
大笹を傾けて置く星祭★★★★
道渡る灰毛の猫や青葉雨★★★
「灰毛」と「青葉」の色彩感覚がいいです。(髙橋正子)

7月14日(2名)
小口泰與
大利根の淵に集いし鮎の群★★★
集魚灯使いて夜釣り雑魚数多★★★
カ-テンを吸い込む窓や夏の夕★★★

多田有花
パソコンも熱暴走の酷暑なり★★★
玄関に転がされている甜瓜★★★★
期日前投票の人喜雨の中★★★

7月13日(2名)

小口泰與
炎昼や川は退き音変わる★★★

宴席や尻からげして舞いにくる
季語はありますか。(髙橋正子)

浅間より退く雲や田水沸く★★★★

多田有花
入浴をしつつ夜立の音を聞く★★★
夏大根おろして納豆と食す★★★
明日開く蕾隣に蓮開く★★★★

7月12日(3名)

廣田洋一
涼風やテニスラリーの音高し★★★
市役所前直売される夏野菜★★★
餌求め鴎寄り来る船遊★★★
具体的な描写が欲しいです。(髙橋正子)

小口泰與
夏沼の日の退くや鳥去りぬ★★★
山巓は早や土肌や夏の暁★★★
大利根の岸のしりえの青田かな★★★

多田有花
釘を打つ作業の続く夏真昼★★★
「作業」ではなく、五感でとらえた方がいいです。(髙橋正子)
釘を打つ音の続けり夏真昼(正子添削)

ここに咲く野菜畑の隅の百合★★★
ハワイアン聴いて寛ぐ夏夕べ★★★
これだと「ああそうですか」で終わります。具体的な様子がいります。(髙橋正子)

7月11日(3名)
小口泰與
河骨を掻き分け小亀泳ぎたり★★★
昇り来る強き夏月上つ枝越ゆ★★★★
翡翠を待つ間床几に身をまかせ★★★

桑本栄太郎
昼前の山の端早やも雲の峰★★★

日盛りや鳴くもの鳴かず静寂に★★★
「鳴くもの鳴かず」は「静寂に」をあらわしているので、「静寂に」のところに工夫がいります。(髙橋正子)

荷造りの忙しきかな夏の午後★★★

多田有花
草刈の音高らかに夏の朝★★★
茄子焼いてめんつゆに浸し食べにけり★★★
並列のし過ぎです。(髙橋正子)

グラジオラスマリア像の足元に★★★★

今日の秀句/7月1日~7月10日

7月10日(1句)

★蜻蛉のカメラレンズをがっちりと/小口泰與
カメラを対象に向けていると、奇しくも蜻蛉がカメラのレンズに飛んできて、がっしりと掴んだ。レンズをつかんだ蜻蛉がクローズアップされて詠まれている。これこそ写真的表現と言えそう。レンズの透明感がいい。(髙橋正子)

7月9日(2句)

★薄紅の花びら広げ朝の蓮/多田有花
蓮の開花は空が白むごろであろう。花びらは光を透かせるように開いている。一様に紅ではなく、先にいくほど色が薄くなっている。「朝の蓮」がきよらかで、その空気感まで伝えている。(髙橋正子)

★青柚子の枝や机にほの香る/土橋みよ
早くも柚子を見るようになった。青柚子であるが、机に枝に付いたままの柚子が置かれ、ほのかに香っている。一枝の青柚子が目にも爽やかさを伝えている。(髙橋正子)

7月8日(1句)

★田舎よりこんな大きなトマト届く/桑本栄太郎
田舎から届いたトマトの大きさに驚いた。見事に熟れが新鮮な赤いトマトであろう。単に驚いたというだけでなく、ふるさとの土地のゆたかさを誇らしく思う気持ちが垣間見える。(髙橋正子)

7月7日(1句)

★夏祭しばらく降りし通り雨/小口泰與
祭の最中の通り雨が涼し気に詠まれている。夏祭りの人たちもしばらくは雨宿り。着ている法被や浴衣の藍が明るく匂いそうだ。(髙橋正子)

7月6日(4句)

★夕焼やろうそく島の灯を灯し/廣田洋一
隠岐の島に「ろうそく島」があるが、夕焼けに染まる「ろうそく島」を詠んだ句。旅の句として幻想てな景色が思い出に残る事だろう。(髙橋正子)

★サルビアや汲み上げられし水を浴び/多田有花
サルビアは夏花壇の代表的な花。燃えるような赤い花が多いが白、紫などもある。ここでは赤いサルビアを思うが、汲み上げられた水を浴び、生き生きといかにも涼しそうだ。(髙橋正子)

★夏涼し辛きカレーとハーブティー/土橋みよ
「涼し」だけでも夏の季語になります。生活の実感があって、楽しい生活がうかがえる。(髙橋正子)

★ジャム瓶に生けて間引きの百日草/上島祥子

間引きの百日草も大切に、ジャムの空き瓶に挿して楽しむ心がけが好もしい。ささやかな、楽しい生活がいい。(髙橋正子)

7月5日(2句)

★枇杷熟れて今朝一片の雲も無し/多田有花
枇杷という色も実も繊細な果実が、「一片の雲もなし」の晴れた空を背景に熟れている。色彩の情感がすばらしく、また同時に一抹の寂しさを感じさせる句。(髙橋正子)

★東天に日は白々と朝曇/上島祥子
朝曇という曇っていながら明るい日本特有の気象現象を描写的に詠んでいる。「日は白々と」が太陽の光を「白さ」で受け止め、句に清澄さを生んでいる。(髙橋正子)

7月4日(2句)

★植田日々育つや空を映しつつ/多田有花
植田が育っていく、それも空を映しながら。植田のたたずまいが明るく未来を見ている印象がする。句のリズムも自然で流れがいい。(髙橋正子)

★茂りたる山あいの旅隠岐の島/廣田洋一
「茂りたる山あい」に、隠岐の島の自然をリアルに伝えてくる力がある。「隠岐の島」の固有名詞の醸す旅情がいい。(髙橋正子)

7月3日(2句)

★物干しの真白な夏蝶青空へ/土橋みよ
情景は物干しに白い蝶が止っていて、青空へ飛び立った、ということ。「真っ白な」に蝶への感動が集約され、青空へ飛び立ったその白い蝶がいつまでも目に残る。もちろん、白と青の対比も美しい。(髙橋正子)

★ブロンズの少年朝の涼に立つ/上島祥子
ブロンズ像の少年でありながら、今そこに立つ凛々しい人としての少年となっている。朝の涼がそうさせたのか、朝涼の空気感まで伝わってくる。(髙橋正子)

7月2日

※該当句無し

7月1日(1句)

★夏の蜂飛び交う音の軽き朝/上島祥子
蜂の羽音を「軽い」と捉えた感受性は鋭く、夏の朝の涼やかな空気感や朝日のきらめきを思い起させている。蜂は春から夏へかけて活動するが、夏の蜂は強さもありながら、余裕のように軽く飛んでいる。(髙橋正子)

7月1日~7月10日

7月10日(4名)

多田有花
川蜻蛉ゆっくり翅を閉じ開き★★★
今開くまごうことなき白蓮や★★★
巨大アイスクリーム買う夢を見る★★★

桑本栄太郎
シャワシャワと鳴けば汗噴く朝かな★★★
<生協にて伯耆酪農製品>
故郷のブランドアイス最中買う★★★
<田舎での部活にお想い出>
大薬缶もてかき氷買う部活生★★★

廣田洋一
洋食のコース食べつつ船遊★★★
立ち葵雨にも負けず咲き上り★★★
ミニトマト縁に飾りてサラダかな★★★

小口泰與
蜻蛉のカメラレンズをがっちりと★★★★
河骨や二頭の小亀甲羅干し★★★
合歓咲くや野鳥の声の盛んなり★★★

7月9日(6名)

小口泰與
あけぼのや夏鶯の声盛ん★★★
河骨の沼をおさめし朝かな★★★
翡翠や水面へ向かい一直線★★★

多田有花
ひまわりよ太陽の花の孤高なり★★★
薄紅の花びら広げ朝の蓮★★★★
のうぜん花落ちたる花を下に見て★★★

廣田洋一
川の土手鬼百合の花真盛り(原句)
鬼百合の花真っ盛り川の土手(正子添削)

川べりの風と遊べる揚羽蝶(原句)
川べりの風と遊ぶや揚羽蝶(正子添削)

デッキにて乾杯したる遊船★★★

土橋みよ
虫除けを提げて獅子唐摘む夕べ★★★★

鰭を張り皿からはみ出る飛魚焼(原句)
鰭を張り飛魚皿からはみ出せり(正子添削)
細かく言う場合も大切ですが、なにもかも言う必要はありません。省略できるところは省略してみましょう。(髙橋正子)

小机にほの香る青柚子の枝(原句)
青柚子の枝や机にほの香る(正子添削)
音数を整えるために、「小机」はこの句の場合は「机」でもいいでしょう。(髙橋正子)

桑本栄太郎
初蝉の鳴き出し直ぐに止みにけり★★★
川べりの地道を行くや草いきれ★★★
堀割りに鯉のつどうや鷗外忌★★★

上島祥子
H旗や夏の海風船沖へ★★★
情景は夏らしく、涼しそうでいいです。言いたいことをもう少し整理してまとめるといいでしょう。いわゆる三段切れになっています。(髙橋正子)

西日差すホームに遅延の列車待ち★★★

始発から見下ろす街の夏運河(原句)
始発車から見下ろす街の夏運河(正子添削)

7月8日(4名)

小口泰與
翡翠のまん丸目玉動きけり★★★★
青葦へ鳥の来ている山の沼★★★
釣り糸の楉に絡む夏の夕★★★

廣田洋一
きらきらと人を呼び込む夏の海★★★
ミニトマト縁を飾りてサラダかな★★★
朝湯浴びオーデコロンを振りかけぬ★★★

桑本栄太郎
田舎よりこんな大きなトマト届く★★★★
午後よりの雨の予報の溽暑かな★★★
ゆらゆらと道に迫り出す百日紅★★★★

多田有花
七夕の笹飾られし公園に★★★
風通る部屋で寛ぐ小暑なり★★★
朝の蚊に刺されて気づく蚊の変化★★★

7月7日(5名)

小口泰與
夏祭しばらく降りし通り雨★★★★
みんみんや長きお告げを宣えし★★★
淵に来てしばらく山女回遊す★★★

多田有花
涼しさやチェストツリーは空に向く★★★
サルビアに優しき色もありにけり★★★
百日草ひと日を珠玉として暮らす★★★

廣田洋一
七夕祭地下広場にてコンサート★★★
北国も真夏日となる空模様★★★
香水の土産買いたるシャンゼリゼ★★★

友田修
病窓にあらためて知る夏の朝★★★
木洩れ日の微動だにせぬ夏至の道★★★
夏蝶の行きつ戻りつ木陰かな★★★

桑本栄太郎
<三ヶ月定期健診>
初蝉の声を聞きつつ病院へ★★★
受付のマイナ保険の炎暑かな★★★
病院の中庭の木や蝉の殻★★★

7月6日(6名)

廣田洋一
樹齢二千年杉の木高く茂りたる★★★
神さびし神殿仰ぐ青葉風★★★
夕焼やろうそく島の灯を灯し★★★★

小口泰與
百合の香の風に包まる我が髪膚★★★
雷鳴のしばしば襲う山の径★★★
薫風や巌に弾ける谷の水★★★★

多田有花
サルビアや汲み上げられし水を浴び★★★★
風受けて夏木立なお盛んなり★★★
夕立の近づく気配の風吹けり★★★

桑本栄太郎
せせらぎの木洩れ日涼し高瀬川★★★
見晴るかす遥か北山夏がすみ★★★
河川公園の少年野球朝涼し★★★

土橋みよ
夏涼し辛きカレーとハーブティー★★★★
「涼し」だけでも夏の季語になります。(髙橋正子)

鈴入りのお手玉弾む戻り梅雨に(原句)
「お手玉弾む」で切れます。「む」が切れ字の働きをしていますので、「戻り梅雨に」の「に」はいりません。俳句の技法です。(髙橋正子)
鈴入りのお手玉弾む戻り梅雨(正子添削)

カノン聴きスクワットすれば風涼し★★★

上島祥子
ジャム瓶に生けて間引きの百日草★★★★
月命日甘水供う硝子杯★★★
蝉殻を手にして軽き音の立つ★★★★

7月5日(4名)

小口泰與
風吹きて匂い気が付く百合の花
「匂い気が付く」は、「匂いに気(が)付く」にしないといけません。「に」は省略できません。(髙橋正子)

しののめの鮎釣人の竿見事★★★
籐椅子の湖畔の客や鳥の声★★★

桑本栄太郎
東天の鈍き日のさす朝ぐもり★★★
朝涼しだんご虫行くうす闇に★★★
手で追えば蠅虎のひとっ跳び★★★

多田有花
夕刻の月は赤かり待宵草★★★
葉桜の今盛んなる土手真昼★★★
枇杷熟れて今朝一片の雲も無し★★★★

上島祥子
夏蝶の木立の輪郭添う二頭★★★
東天に日は白々と朝曇★★★★
園守と挨拶交わす朝の涼★★★

7月4日(5名)

多田有花
短夜の明けて静かな川の面★★★
植田日々育つや空を映しつつ★★★★
夕風に蚊取線香を点す★★★

桑本栄太郎
凌霄花の火を噴きいたる垣根かな★★★
さび色に朽ちる泰山木の花★★★
そこのみの下枝揺れ居り涼風に★★★★

小口泰與
踏まれても生きる葎の強さかな★★★
翡翠の姿かたちや山の沼★★★
しなやかに反転せりや夏燕★★★

廣田洋一
茂りたる山あいの旅隠岐の島★★★★
茂りたる神木の陰楸邨句碑★★★
その辺りぱつと明るく合歓の花★★★

7月3日(5名)

多田有花
ウォーキングの人と挨拶明早し★★★
青条揚羽大手前通りを横断す★★★
灼熱の陽が彫刻の肌を灼く★★★

桑本栄太郎
梔子の植込みつづく香りかな★★★
石垣に垂れ下がり居り花南瓜★★★
紫陽花の変化のままに褪せにけり★★★

小口泰與
雲よりも風に従う夏の湖★★★
下枝より飛び込む鳥や夏の沼★★★
上枝より飛び立つ鳥や夏の森★★★

土橋みよ
折り紙と見紛う夏蝶石の上★★★
物干しの真白な夏蝶青空へ★★★★
ザックリと西瓜の割れる音の夏★★★★

上島祥子
藤木陰ラジオ体操始まりぬ★★★
大食のカナブン木の葉色となり★★★
ブロンズの少年朝の涼に立つ★★★★

7月2日(3名)

小口泰與
山裾に忽と夏鹿現れし★★★
しがらみを打ち捨て出でし心太★★★
トタン屋根蝉の亡骸落ちてきし★★★

桑本栄太郎
風のなく雨か曇りか油照り★★★
ひと動作ごとに汗噴く家事手伝い★★★
いつまでもイヤイヤしたる扇風機★★★

多田有花
外出を控えて過ごす半夏生★★★
道の辺の花壇に水やり夏の朝★★★
明易し路傍に揺れる夕化粧★★★

7月1日(5名)

小口泰與
青葦の揺らぎて鯉の通過せり★★★
翡翠と亀の競演沼の岩★★★
しかすがに雲の流れや夏の山★★★
多田有花
抜き放つ花冠の剣やグラジオラス★★★
小さくも枇杷のたわわに実りおり★★★
太陽の色のカンナの咲き初めし★★★
廣田洋一
すいと潜り小魚捕りし河鵜かな★★★
海原を赤く染めたる夕焼かな★★★
大飛球捕らんと構え夏の空★★★★
桑本栄太郎
七月や朝の散歩は木蔭ゆく★★★
風のなき溽暑の朝を歩きけり★★★
薬局の朝の混み居り炎暑予報★★★
上島祥子
夏の蜂飛び交う音の軽き朝★★★★
梔の香ほのかに露路の朝★★★
白蝶草朝陽に浮かぶ花真白★★★

自由な投句箱/6月21日~6月30日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月21日~6月30日

6月30日(1句)

★夏蝶の朝陽に向ける翅の紋/上島祥子
力強く蝶が詠まれている。朝陽に向けて翅を大きく開き、紋をはっきりみせている。「朝陽」のある時間が句全体をあかるく、清々しくしているのがいい。(髙橋正子)

6月29日(1句)

★水打てば真っ直ぐ伸びる生姜の茎/土橋みよ
庭さきの家庭菜園に生姜を植えているのだろう。水を打つと
生姜の茎がいきいきと真っ直ぐ伸びるのだ。すがすがしく涼を呼ぶ句。(髙橋正子)

6月28日(1句)

★爽やかや赤城小沼に立ちし事/小口泰與
「爽やか」は秋の季語。少し早いが、標高ほぼ1500mに位置する赤城小沼では、平地とは違い、爽やかさを感じたのだ。ただ沼のほとりに立つだけで、もう爽やかなのだ「赤城小沼」を知っているものには実感できるだろう。(髙橋正子)

6月27日(1句)

★花合歓や一木被ううすき紅/桑本栄太郎
合歓の木全体が咲き誇る花でうすい紅に被われている、合歓の花がしずかに風に揺れているのだろう。柔らかいうす紅が、見るものを優しい気持ちにさせてくれる。(髙橋正子)

6月26日(2句)

★水槽に目高の遊ぶ草を足し/廣田洋一
水槽の目高をかわいがり、水草を足したり、ともに遊んでいるすずやかな心持がいい。(髙橋正子)

   大中寺の森
★杖つかず摑まらず行く紫陽花坂/土橋みよ
大中寺の森の紫陽花坂。紫陽花をたのしみにお参りして、杖もつかず、どこにも掴まらずに坂を歩く気力と自信がうかがえる。その姿勢が坂道のみずみずしい紫陽花を想像させてくれている。(髙橋正子)

6月25日(1句)

★暮れきらぬ街の灯夏至夕べ/上島祥子
夏至は言うまでもなく昼が一番長い日。いつまでも暮れない街にともる灯が美しく詠まれている。夕べのうすあかりに溶けたような灯の印象が詩的である。原句は、下五が「夏至の夕」となって、語勢が終わりにかけてしぼんでいたの、「夏至夕べ」と添削した。(髙橋正子)

6月24日(1句)

夕焼けに包まれ海辺をゆく電車/多田有花
夕焼けが包む大きな景色が、読む者の心に柔らかな印象を残している。夕方の海のきらめきを受けながら走る海辺の電車に郷愁さえも感じる。(髙橋正子)

6月23日(1句)

★群鮎のさと向きを変え上流へ/小口泰與
群れて泳いでいる鮎が、急に向きを変え、川底の石も見える上流へと泳いだという。目に涼やかな情景に心が洗われる。(髙橋正子)

6月22日(1句)

★夏服のペディキュア阪神電車かな/多田有花

「夏服のペディキュア」という夏服がペディキュアをしているような、不思議な表現。神戸辺りから大阪へ行く阪神電車の乗客の特徴を端的に捉えている。涼しさも都会ではこうなる。(髙橋正子)

6月21日(1句)

★暁に追われて白く夏至の月/上島祥子

「暁に追われて」は、はやくも暁となって、月は色を失い白くなっているつかの間の時間を表現したもの。夏至という昼間が一番長い日は、暁が月を追いやるかに思えるのだ。白い夏至の月の視覚的な清涼感が暁の静謐さを醸し出している。(髙橋正子)

6月21日~6月30日

6月30日(5名)

小口泰與
忽然と翡翠沼を一撃す★★★
しかすがに翡翠沼を離れずに★★★
翡翠や水面へ早も飛び込みし★★★

廣田洋一
旅終えし紫陽花の首切られけり★★★
「首切られ」はイメージが悪くないですか。(髙橋正子)

一段と手毬膨らむ白紫陽花(原句)
一段と毬の膨らむ白紫陽花(正子添削)
「手毬」より単に「毬」のほうが写生に近く、イメージが湧きやすいです。(髙橋正子)

夏鴨の一羽着水街の川★★★

多田有花
のうぜん花虚空へ鳴らすトランペット★★★
磯鵯何かくわえて飛び立ちぬ★★★
アナベルのふわりと大き白さかな★★★

桑本栄太郎
朝焼けの絵具のいろを想いけり★★★
あじさいの青色吐息あめ降らず★★★
石垣を零れ被いぬ松葉牡丹★★★

上島祥子
夏蝶の朝陽に向ける翅の紋★★★★
猫梳る蚤追いきれぬ老眼鏡★★★
明けきらぬ庭に広がるカンナの黄★★★★
第1句、第3句ともにリアルに情景が浮かび、涼やかな時間設定がされているのがいいです。(髙橋正子)

6月29日(5名)

廣田洋一
青柿や青きがままに膨らみぬ★★★★
艶やかに紅く広がる蓮の花★★★
食べごろのバナナ獲りたる庭師かな★★★

多田有花
梅雨明けや空調服の作業員★★★
梅雨明けに窓全開で掃除する★★★
梅雨明けの真昼の水道はや熱し★★★

桑本栄太郎
梔子の朽ちいて更に香りけり★★★
橡の木の古木なればや幹に苔★★★★
緑蔭の梢はるかや青き空★★★

小口泰與
昼食の農婦の顔へ五月蠅かな★★★
天と地を遮る雲や梅雨曇り★★★
我が庭に捩花はやも乱れ咲き★★★

土橋みよ
水打てば真っ直ぐ伸びる生姜の茎★★★★
リンゴ酢に浮かぶウメ寺の青梅★★★
蝉時雨稽古場で吹く防犯笛★★★

6月28日(4名)

多田有花
青柿や隣は空き家となりし家★★★
朝夕の日課の散歩額の花★★★
インパチェンス六月の玄関に★★★

小口泰與
翡翠のさばしる沼へ夕日かな★★★
爽やかや赤城小沼に立ちし事★★★★
翡翠の水面へ翔けるまっしぐら★★★

桑本栄太郎
風抜けるトンネルなりぬ青葉闇★★★
あじさいの青の吐息に日差しけり★★★
芙美子忌の一銭五厘の大事かな★★★

廣田洋一
堰落つる飛沫に虹のかかりけり★★★
赤と青隣り合いたる濃紫陽花★★★
白紫陽花薄き緑に色づきぬ★★★★

6月27日(3名)

多田有花
まだ若き山法師の花見下ろせり★★★

蛍袋のなかに潜めば面白し(原句)
「潜めば」は仮定なので、「面白し」もそれに呼応する必要があります。もし、仮定でなく潜んでみたならというのなら、原句のままでよいです。(髙橋正子)
蛍袋のなかに潜めば面白からん(む)(正子添削)

六月風真昼の部屋を吹き抜ける★★★

小口泰與
翡翠の悟り切れない仕草かな★★★
ゆったりと揺れる青葦沼真中★★★
さなぎだに小沼はさひびし夏霞★★★

桑本栄太郎
梅雨晴のみみずくねりて昇天す★★★
山桃のジューンドロップここかしこ★★★
花合歓や一木被ううすき紅★★★★

6月26日(5名)

多田有花
くちなしの匂える道をそぞろ歩く★★★
花南天ひっそり坂の下の家★★★
はなむぐり額紫陽花に顔うずめ★★★

廣田洋一
夏蝶の二頭連なり飛び去りぬ★★★

高きよりひょいと飛び来て揚羽蝶(原句)
高きよりひょいと吾に来揚羽蝶(正子添削例①)
高きよりひょいと庭に来揚羽蝶(正子添削例②)
俳句で大事なのは、作者の位置ですので、場所などがわかるといいですね。(髙橋正子)

6月26日の揚羽蝶の句を添削して頂き有難うございます。作者の位置を示すことが大事とのご指摘ありがとうございます。添削⓵の「吾に来」を頂戴いたします。有難うございました。(廣田洋一)

水槽に目高の遊ぶ草を足し★★★★

桑本栄太郎
おそろしき夢を見ており梅雨の冷え★★★
梅雨冷えや哀しく見たる父の夢★★★
雲つどいやがて激しき雷火かな★★★

小口泰與
定めなき利根の流れや通し鴨★★★
あけぼのの初夏の赤城の色定か★★★
翡翠やさっと散ったる雑魚数多★★★

土橋みよ
  大中寺の森2句
参道に顔出す紅の山紫陽花(原句)
参道に咲き出る紅の山紫陽花(正子添削)
「顔出す」は擬人用法なのですが、使い古された印象ですので、「写生する目」で普通に「咲き出る」にしました。(髙橋正子)

杖つかず摑まらず行く紫陽花坂★★★★
五月雨に横断歩道の白よける★★★

6月25日(3名)

多田有花
ズッキーニ浅漬けにしていただきぬ★★★

梅雨の花壇に羽毛ケイトウの並ぶ(原句)
梅雨の花壇羽毛ケイトウ立ち並ぶ(正子添削)

「立ち並ぶ」で情景がはっきりしました。背の低い色とりどりの羽毛ケイトウが並んで植えられている花壇の様子が目に浮かびます。(多田有花)

薔薇を愛で薔薇を育てる男あり★★★

小口泰與
鯉跳ねて夏の小沼を囃しけり★★★
遠近に夏鶯の声さかん★★★
青葦や蝦蟇の鳴き声遠近に★★★

上島祥子
暮きらぬ街の灯夏至の夕
とても美しくていい句ですが、下五の「夏至の夕(げしのゆう)」の語勢が尻すぼみになって、句の詩的なイメージが弱くなっています。語順を変えるなど工夫なさるといいと思います。(髙橋正子)

夏至の夕街の灯暮れきらず(正子添削例①)
暮れきらぬ街の灯夏至夕べ(正子添削例②)

梅雨寒や膝に納まる猫丸し★★★
百合雄蕊綺麗なうちに摘まれけり★★★

6月24日(3名)

廣田洋一
雨空に明るく垂れる花擬宝珠★★★
半纏木葉裏を見せて空揺らす★★★
釣堀や声上げて子が立ち上がり★★★

桑本栄太郎
こつ然と目覚めて居りぬ夜の雷雨★★★
「こつ然」と「目覚めて居りぬ」は意味の上で整合性を欠きます。「こつ然と目覚めぬ夜の雷雨」となります。(髙橋正子)

取り込めば又も日差しや梅雨晴れ間★★★
沙羅咲くや風のうわさに傷つきぬ★★★

多田有花
青蔦に覆われている煉瓦棟★★★
夕焼けに包まれ海辺をゆく電車★★★★
明け方の眠りを覚ます梅雨の雷★★★

6月23日(5名)

桑本栄太郎
地下鉄の北山出れば炎暑かな★★★
朝よりの雨の頻りに梅雨戻る★★★
こつ然と突風来たる梅雨の雷★★★

多田有花
夏至過ぎて姫路空襲八十年★★★
病院の中庭鉄砲百合の咲く★★★
ベゴニアの多色を愛でて庭を出る★★★

小口泰與
竹の子のさすらい出でし我が庭に★★★
翡翠の沼波に鳴く朝かな★★★
群鮎のさと向きを変え上流へ★★★★

廣田洋一
子の声に目高の散りし池の隅★★★
軽鴨や夫婦仲良く水を飲み★★★
一斉に葉裏見せたる茂り葉かな★★★

土橋みよ
朝が来て青柿三つ砂利の上(原句)
「朝が来て」は、少し冗長な感じがします。(髙橋正子)
青柿の三つころがる朝の砂利(正子添削例)

青柿の落ちる音あり昼下がり★★★
茹で蟹に会話途切れる夏の夕★★★

6月22日(3名)

小口泰與

朝日差し翡翠の羽さざめかす★★★
大利根に差し入る夏の月明かり★★★
雲の峰流石赤城のすそ野かな★★★

田有花
開け放ち風よく通る夏至の部屋★★★
海峡を過ぎれば泰山木の花★★★
夏服のペディキュア阪神電車かな★★★

桑本栄太郎
夏萩の咲くやふるさと想い居り★★★★
梔子の八重の香るや生協まえ★★★
底紅や団地の周囲あるき居り★★★

6月21日(4名)

小口泰與
口あけて燕の子等の親を待つ★★★
隠沼の水中深く翡翠よ★★★
炎天や立ち話もそうそうに★★★

多田有花
青空や高架駅よりプール見ゆ
「青空や」は、「高架駅よりプール見ゆ」とつながりがあるようで、無いですね。切れすぎです。(髙橋正子)

>高架駅のそばに小学校があります。梅雨の晴れ間が広がる中、子どもたちがプールで泳いでいるのが見えました。気持ちよさそうでした。
小学校のプール見えたる高架駅<

淡路島植田の彼方に見えてくる★★★
「見えてくる」の「くる」はなんでしょうか。移動中でしょうか。それがはっきりするといいです。(髙橋正子)

>「くる」はまさしく電車移動で見えてくる様子です。JR神戸線に乗って姫路から神戸方面に向かいますと、明石市の市街地に入っていく直前にしばらく東播磨の田園地帯を走ります。そのとき、右側の車窓からは田畑とその向こうに淡路島の島影が見えてきます。
電車ゆく植田の彼方に淡路島<

海峡に霧たつ梅雨の晴れ間かな★★★
「霧」の様子を述べると、句の格が上がると思います。
例えば、「海峡に白き霧たつ梅雨晴間」など。(髙橋正子)

>JR神戸線の車窓からは明石海峡大橋と淡路島が目の前に見えます。この日は海上に霧が見られました。梅雨時、南から暖かく湿った空気が流れ込み海面で冷やされてこうした霧がたつそうです。

梅雨晴間海峡に白き霧流れ<

桑本栄太郎
しのび寄る夜気の枕に目覚めけり
「夜気」を季語として使っている俳句を教えてくださiい。(髙橋正子)

凌霄花の緋色噴きたる狭庭かな★★★
「狭庭かな」で、言い流しているのが惜しいです。(髙橋正子)
川風に浮かび来たるや合歓の花
「川風」は、川を吹く風、川から吹いてくる風ですが、「浮かび来る」は風に浮いて来るの意味でしょうか。(髙橋正子) 

上島祥子
暁に追われて白く夏至の月★★★★
玄関を掃き清める音夏至の朝★★★
三回忌終えし座敷に百合香る★★★

自由な投句箱/6月11日~6月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月11日~6月20日

6月20日(1句)

★朝歩き汗ひくを待つ陶の椅子/上島祥子
「陶の椅子」のひんやりした感触が汗を引かすのにちょうどよさそうで、作者の細やかな感性を感じる。また、少し詩的な重みがあるので、この句が生きている。(髙橋正子)

6月19日(3句)

★雉鳩の鳴いて目覚むる梅雨晴れ間/桑本栄太郎
梅雨の晴れ間に雉鳩がクウクウ鳴いて、心地良い目覚めが知れる。子こんな目覚めこそ至福の時と言えそう。(髙橋正子)
★夏氷薬缶の中にかたかたと/小口泰與
麦茶の入った薬缶なのか、氷がかたかたと涼しそうな音を立てている。生活の中の涼しそうな音に耳を傾けるのも、生活の豊かさといえるのでは。(髙橋正子)
★若葉雨切りひらきゆく通院路/川名ますみ
若葉雨を「切りひらいてゆく」感覚は、車椅子に乗っている時の感覚ではないかと思う。たっぷりと降る若葉雨に降られながら、通院の路と進む意志の強さを思う。(髙橋正子)

6月18日(句)

★降り出しの雨音軽く明易し/上島祥子

「明け易し」と「雨音軽く」が、感覚としてぴったりと合っている。「明け易し」を音に例えれば、夏の「軽い雨音」と言えそう。(髙橋正子)

6月17日(1句)

★青梅の三つ四つ落ちて朝の雨/上島祥子

青梅が三つ四つ落ちているのを見て、夜の間に雨で自然に落ちたことにすぐに思い至るだろう。朝の雨と青梅の三つ四つが、爽やかな印象。(髙橋正子)

6月16日

※該当句無し

6月15日(2句)

★句会あり夏の夜とはことのほか/小口泰與
夏の夜の長さを楽しむひとつに句会に出かけることがある。「夏の夜とはことのほか」と言えるほど、リラックスし、楽しむことができる。(髙橋正子)
★力溜め鮃の皮引く夏本番/土橋みよ
鮃の旬は冬だが、冬に限らず夏も刺身などにすれば、涼し気で美味しい。おそらくこの鮃は刺身にされるのであろう。力を溜めて皮を引く夏本番の気合が、鮃の活き良さを思わせる。(髙橋正子)

★ねむの花花蕊赤く落にけり/廣田洋一

ねむの花はほんわりと咲いている印象だが、中心の蕊は赤い糸のようである。落ちるとその細い蕊の赤さが目に強く残る。そこを見逃さずに捉えたよさ。(髙橋正子)

6月14日(1句)

★植えられし早苗すっくと水面に立つ/多田有花

植えられた早苗が根付いてきたのだろう。水面にすっくと立つその水際に早苗の力が見える。(髙橋正子)

6月13日(1句)

★水打てば葉陰に隠れし胡瓜あり/土橋みよ

庭に水を打っているとき、家庭菜園に胡瓜が大きくなっているのが葉隠れに見えた。うれしいことだ。みずみずしく涼し気な句。(髙橋正子)

6月12日(1句)

★アマリリス正面は青き津久見湾/多田有花

津久見湾は、大分県の豊後水道にあるリアス式の海岸線をもつ湾で、大小の島々が浮かぶ。この句は、大輪のアマリリスの赤と、青い海の色のコントラストが明快で、アマリリスも真正面の海を向いて、その率直さに健やかさがある。(髙橋正子)

6月11日(2句)

★時々は流され休む水澄まし/廣田洋一
水澄ましの動きは見ていて飽きない。水の上に静止しているかと思えば、ときどきは流されていき、またそこで休んだりする。その様子を率直に詠んだところがよい。(髙橋正子)
★庭師来て風の生まるる夏の庭/上島祥子
剪定の季語は、春となっているが、これは、果樹などの剪定を差している。夏には徒長枝が伸びたり、葉が茂ったりして、暑苦しい印象をうけるので、庭師に「刈り込み」を頼む。庭に風がよく通るようになった。風が生まれる涼し気な夏の庭になったのだ。(髙橋正子)

6月11日~6月20日

6月20日(4名)

多田有花
夏至近し日差し輝くばかりなり★★★★
早起きの雀かしまし明易し★★★
安眠を破られ探す蚊取線香★★★
桑本栄太郎
通学の児童と出会う朝涼し★★★★
バスを待つ客の寄り添う片かげり★★★
鳥からす鳴かぬ朝や炎暑来る★★★
小口泰與
谷若葉奇岩の山の鳥の声★★★
鴉の巣ごぼつ翁や若葉風★★★
里山の郡の端の稲田かな★★★
上島祥子
冷たさを保つプリンや道の駅★★★
朝歩き汗ひくを待つ陶の椅子★★★★
試験明け夏手袋の帰宅生★★★

6月19日(4名)

多田有花
歩き来て茄子冷製のあるブランチ★★★
石竹を窓辺に飾る喫茶店★★★
ビスコッティ熱き珈琲に浸す梅雨★★★

桑本栄太郎
梅雨晴のつづき一雨欲しきかな★★★
雉鳩の鳴いて目覚むる梅雨晴れ間★★★★
木洩れ日の涼風来たる朝あるき★★★
小口泰與
翡翠の森深き木木へ帰りけり★★★
夏氷薬缶の中にかたかたと★★★★
堰堤を越える翡翠声残し★★★
川名ますみ
紫陽花のましろや医科の正門に★★★
紫陽花の白きを過ぎて医科に入る★★★
若葉雨切りひらきゆく通院路★★★★

6月18日(5名)

小口泰與
時鳥小沼の水面波立たず★★★
翡翠や堰堤越えて葦原へ★★★
鳴きながら特許特許と時鳥★★★
廣田洋一
時速し遂に来れる猛暑の日★★★
連なれる木の葉の茂り光りおり★★★
釣堀や人影まばら昼餉時★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
雨足や色鮮やかに額の花★★★
紫陽花のかたわらをゆく傘の花★★★
くちなしを真昼の雨が濡らしおり★★★
桑本栄太郎
朝九時のすでに溽暑の散歩かな★★★
紫陽花の塀を乗り越え変化せり★★★
泰山木の花の朽ちたりつぼみ又★★★
上島祥子
降り出しの雨音軽く明易し★★★★
夏川や鯉は煌めく波に乗り★★★★
親を待つ子燕の声耳に良し★★★

6月17日(6名)

小口泰與
きらきらと鱗光らす夏の沼★★★
大木の影を映せり山の沼★★★
翡翠や堰堤越えて葦原へ★★★
土橋みよ
芋虫や葉の裏表また裏へ★★★
葉裏より剥がれ芋虫手の甲へ★★★
栃木来て生粉打ち蕎麦を啜る夏(原句)
「栃木来て」は無理な表現です。字余りでも「栃木に来て」となります。以下の添削のようにしても結構です。(髙橋正子)
栃木に来生粉打ち蕎麦を啜る夏(正子添削)
廣田洋一
ドア開けて蒸し暑き風呼び込めり★★★
十薬や覆いつくせる狭き庭★★★
いつまでも暮れぬ空なり夏至の夕★★★
桑本栄太郎
朝道の早やも伝いぬ片かげり★★★
あおぞらの見えて小雨や梅雨じめり★★★
気合入れ起ち上りたる辱署かな★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
薔薇囲む門は小雨に煙りおり★★★
但馬街道宿場に降るや梅の雨★★★
梅雨の中苔むす石の道標や(原句)
「石の道標」は「いしのみちしるべ」と読ませてはどうでしょうか。(髙橋正子)
上島祥子
青梅の三つ四つ落ちて朝の雨★★★★
風潤むラジオ体操梅雨晴れ間★★★
朝食のハイビスカスティーマイカップ★★★

6月16日(4名)

小口泰與
夕焼を点じる空や赤城山★★★
白鷺のこのもかまもに居りにける★★★
「この/もかまも/に」の意味は、古風な表現ですが、「この/藻や蒲の間/に」と解釈しましたが、よいですか。(髙橋正子)
翡翠の声のこぼるる山の沼★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
●雨に煙る山間の里七変化★★★
欲を言えば、「山間の里」あるいは「里」を使わないで、その情景を読者に思い起させると、句の格が一段とあがります。(髙橋正子)

>雨に煙る山間の里七変化
「雨に煙る谷に続くや七変化」

●田に姿映して咲けり栗の花★★★(原句)
「田に姿映して〇〇〇栗の花」
の〇〇〇のところに、観察し、感じたことを入れるといいです。例えば「しずか」など。「栗の花」で「咲けり」の状態がわかるので、省略できます。(髙橋正子)
>この日は小雨で少し風がありました。(有花)
「田に姿映して揺れし栗の花 」

●山里の清流紫陽花を包む
「清流が紫陽花を包む」とはどんな感じなのでしょうか。「浸す」の意味でしょうか。(髙橋正子)
>清流のそばに紫陽花の咲く道が続いていました。「清流が包む」というのではなく「清流の音が包む」というのが正確な描写です。(有花)
紫陽花や清流の音に包まるる
廣田洋一
夏至の日や熱きうどんを頂きぬ★★★
沢蟹や田舎の川で取り放題★★★
時速し遂に来れる猛暑の日★★★
桑本栄太郎
梅雨晴と思えざるなり木蔭行く★★★
紫陽花の青の吐息の日差かな★★★
枇杷熟るるあの娘の逝きし日を想う★★★

6月15日(5名)

小口泰與
水滴の筋の曲がりや夏の窓★★★
鞦韆揺れの止まらぬ夏の湖★★★
句会あり夏の夜とはことのほか★★★★
「句会」の楽しみがよく伝わります。(髙橋正子)
土橋みよ
力溜め鮃の皮引く夏本番★★★★
「力溜め」と「夏本番」がいいです。(髙橋正子)
昆布に包まれ夏の鮃のどっしりと★★★★
「どっしりと」がいいです。(髙橋正子)
折れた苗挿して芽吹くや梅雨に入り★★★★
廣田洋一
駅前を赤く飾りし合歓の花★★★
ねむの花花蕊赤く落にけり★★★★
「花蕊赤く」のはっきりした観察がいいです。(髙橋正子)
姫百合や空を向きたる黄色かな★★★
多田有花
<恩師米寿祝三句>
みな集う六月の中華レストラン★★★
テーブルで語るあの頃の夏のこと★★★
明石蛸たっぷり入りし湯麺に★★★
桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈散策より>
鴨川の濁り怒涛や梅雨の川★★★
額の花せせらぎ早き高瀬川★★★
叡山の雲に覆われ梅雨深し★★★

6月14日(4名)

小口泰與
雨の中屋根に一羽の夏雀★★★
梅雨さ中植田をつなぐ小川かな★★★★
風の中夕立かける山の沼★★★
廣田洋一
花弁の赤く色付く山法師★★★
人に向け香り放てる鉄砲百合★★★
翡翠の一閃水を掠めけり★★★
多田有花
エアコンの効かぬ車よ梅雨晴間★★★
植えられし早苗すっくと水面に立つ★★★★
山の端にうすぼんやりと梅雨の月★★★
上島祥子
夏木立朝の大気に深呼吸★★★★
翡翠の翔び去る一瞬水鏡★★★
帰途までにぷくりと腫れし虫刺され★★★

6月13日(5名)

梅雨入の雨音ピアノソナタ聴く★★★
水音を間近く十薬群れ咲きぬ★★★★
紫陽花の色増すころとなりにけり★★★

廣田洋一
黍や赤ひげ伸ばし実のなれり★★★
田んぼにてざりがに捕りし幼き日★★★
水べりをひたすら歩く水鶏かな★★★

小口泰與
鮎釣りの心当てなく竿を出す★★★
翡翠の心許なき狩猟かな★★★
翡翠の水面をじっと見てござる★★★

桑本栄太郎
茅花の穂風の誘いに抗えず★★★
泰山木の香り拡げる花の数★★★★
梅雨晴の木蔭をつたう散歩かな★★★

土橋みよ
院内の名画を巡る夏の午後★★★★
中待合再開喜ぶ夏の声★★★
水打てば葉陰に隠れし胡瓜あり★★★★

6月12日(4名)

多田有花
アマリリス正面は青き津久見湾★★★★
大粒の苺たっぷり載るケーキ★★★
「ソニック」ははつなつの海の色★★★

小口泰與
木隠れて翡翠沼を爛爛と★★★
里沼へ朝日こがしつ夏の鯉★★★
里山の小暗き沼の極暑かな★★★

廣田洋一
鳴きつつも羽繕いする水鶏かな★★★
知らぬ間に残業したる夏至の夕★★★
水槽の蟹を選びて茹で上げし★★★

桑本栄太郎
あじさいの垣根に垂れる雨後の朝★★★
青柿の道に散らばり雨あがる★★★
十薬の背伸びしている日蔭かな★★★

6月11日(5名)

多田有花
菩提寺の石段脇の紫蘭かな★★★
音立てて鮪ステーキ来る夏★★★
庭先にみかんの花が咲いている★★★

小口泰與
翡翠の雌の後追う二羽の雄★★★
岩の上亀の甲羅の乾きけり★★★
田の水のあふれんばかり苗に風★★★
廣田洋一
子ら並び水切り競う夏の川★★★
万緑や雨に打たれて光増す★★★
時々は流され休む水澄まし★★★★
桑本栄太郎
青梅雨や木々の明るく雨あがる★★★
雨止めば雲のあかるく梅雨深し★★★
雨止めば途切れなきなり梅雨の雲★★★
上島祥子
庭師来て風の生まるる夏の庭★★★★
夏萩や水掛け地蔵の碑は白み★★★
翡翠の林の静寂破る狩★★★