●一般・新会員①●

●増田泰造
泰山木の花咲きましたと写真載る★★★★
事実の報告だが、他人の喜びをさらりと共有して句にしたところが良い。(高橋正子)

草笛を夕日に向いて子らは吹く★★★★
「草笛」「夕日」「子ら」といった素材がいい。「夕日に向いて」には、懐かしさがある。(高橋正子)

麦秋の美瑛の丘に夕日落つ★★★
いつしかに児は眠りおり風車★★★
地下を出る人に炎天まとひつく★★★
最上川母も摘みしか紅の花★★★
さくらんぼ山形訛りの電話聞く★★★

●藤井 擴
雷や地震原発長寿命★★★
五月雨や川の始めの丸木橋★★★
マンションの網戸いつも柵の内★★★
これらの3句は、川柳に近い句ですね。俳句では、自然を見る。自然を読む。自然に親しむ。そして、自分の内面に帰る。(高橋信之)

●藤井 擴
道でない渓谷くだれば梅雨に入る★★★
渓谷の道のないところは、青葉が茂り、下草などにも露が置いている。いかにも梅雨に入ったようだ。(高橋正子)

癌検診結果出る日の梅雨寒し★★★
犬だけが元気に鳴きて梅雨に入る★★★

●神山大河
気象士の開花を告げる声清ら★★★★
「声清ら」が、桜の花のイメージをよく伝えている。桜の開花にふさわしい、清らかな声であると感じた感覚がよい。(高橋正子)

[以上90名]どかっと立つや卒業生★★★★
卒業生の名前が一人ずつ呼ばれる。全員で90名。一学級ではなく、一学年であろう。いっせいに90名が起立する「どっか」という重量感。一人一人の重み。その瞬間じんと胸に来るものがある。(高橋正子)

名残り雪沢庵ぴりり沁みるかな★★★
名残り雪のころ、保存食として漬けた沢庵も時期的には終わり。名残雪の寒さも手伝って、辛めの沢庵か、「ぴりり」と沁みるに哀感がある。(高橋正子)

●増田泰造
白妙の雪に晴着や成人式★★★
雪に成人式の晴れやかな晴着が映えて、初々しくとても美しい。(高橋正子)

●大西義久
花弁からこぼれる春や天満宮(原句)
梅の花散ってこぼれし天満宮★★★(正子添削)
天満宮なら花は梅。梅の花弁がこぼれて、今や春。こぼれる梅の花弁に春を感じた。(高橋正子)

山燃ゆる古都の寒明け冬花火(原句)
冬花火山に揚げたり古都寒明け★★★(正子添削)

山茶花の衣めくりし春の風(原句)
山茶花の花びら吹ける春の風★★★(正子添削)

6月3日(月)

●小口泰與
伽羅蕗や子供ら帰省する事稀に★★★★
子供たちもそれぞれ家庭をもって、日常に忙しく、帰省も稀になった。みんなで囲む色どり豊かな食卓から、夫婦二人の食卓に。質素で、味わい深い伽羅蕗がそんなことを思わせる。(高橋正子)

蜜豆や湖畔に集うオープンカー★★★
山道や汗湧き出でて滝の如★★★

●河野啓一
せせらぎを渡り乱舞す蛍の火★★★
六甲の山並み青し梅雨晴れ間★★★
風そよぐ窓辺に置かれアマリリス★★★

●多田有花
紋黄揚羽梅雨の光をまとい飛ぶ★★★
不如帰高らかに鳴き森静か★★★
ビル街に流れる雲や明易し★★★

●桑本栄太郎
曲がり来る影や植田のモノレール★★★★
モノレールが植田の上を走っている。カーブするところは、モノレールの影が映りやすい。颯爽と走るモノレールと、植田とが好対照ながら、まとまった風景となっている。(高橋正子)

梅雨晴れの風に明るき湿りかな★★★
彼の人の逝きて七年枇杷熟るる★★★

6月2日(日)

●小口泰與
洗い鯉日は浅間へと急ぎけり★★★
ひやひやの秩父の在の夏氷★★★
賜わりし天然氷滝しぶき★★★

●祝恵子
植田には田水深ぶか満たされて★★★★
「田水深ぶか」がいい。豊かな水が涼しそうであるし、満ちている安心感がある。(高橋正子)

夏野菜支柱に雨滴ずうらりと★★★
金糸梅通れば増える金の花★★★

●桑本栄太郎
水弾き朝の日差しに瓜の苗★★★
片側の車線工事や夏の昼★★★
梅雨晴の雉鳩遠くに聞こえけり★★★

●多田有花
姫女苑抱かれ電車に手を振る子★★★★
姫女苑の優しさと、抱かれた幼い子のやわらかい可愛さが、童画的に詠まれている。(高橋正子)

青羊歯の盛んなるかな谷を埋め★★★
不如帰きのうも今日も曇り空★★★

●佃 康水
グミの実の小枝や棘の鋭かり★★★
明日田植え庭にエンジン試さるる★★★
田植機の上がり手直す老婆かな★★★

●小西 宏
梅雨晴や朝鳥騒ぐ屋根の光★★★
水遣りの路地に紫陽花色広ぐ★★★★
崖下に山紫陽花の青灯る★★★

●河野啓一
星の色灯し蛍の舞う夕べ★★★
梅雨晴れ間鋏ひびかせ植木屋さん★★★★
野萱草咲くや隣家の百合の花★★★

6月1日(土)

●小口泰與
おちこちに牧草ロール夏ひばり★★★
子燕や金平糖を育て初め★★★
アカシヤや雲の棚引く赤城山★★★

●桑本栄太郎

六月のこよみめくれる朝餉かな★★★
六月に入った。まだ涼しく、さわやかな、朝ごはんのとき、六月のこよみをめくる。六月は梅雨入りがあり、いよいよ蒸し暑い夏を迎える。行事などをざっと見渡したり。四季のある日本の暮らしのよさであろう。(高橋正子)

カーテンのふくらみ風の窓若葉★★★
裏返る白き葉裏や風薫る★★★

5月31日(金)

●高橋秀之
早朝の窓から部屋へ若葉風★★★
目覚めれば夜明けの光若葉風★★★
ざわざわと木々の重なり夏の風★★★

●小口泰與
雨粒もあめんぼも跳ね水の昼★★★★
雨粒、あめんぼの小さなものの、生き生きした可愛さがいい。「水の昼」の世界が楽しい。(高橋正子)

あめんぼの硬き水跳ね水の空★★★
聞こゆ来る踏切の音や初夏の朝★★★

●河野啓一
-千里万博自然公園-
緑陰に汝も昼飼か子雀よ★★★★
緑陰で餌を啄ばむ子雀を見ていると、実にかわいらしい。汝もお昼御飯か、と親しさがわく。子雀も小さきわが友なのだ。(高橋正子)

万緑の池の辺に座す昼下がり★★★
緑陰に吾も子雀も憩うかな★★★

●藤田裕子
遠蛙鳥声しずめ鳴き出づる★★★
青梅雨の古道に咲けり白き花★★★
雨後の園色澄ましおり花菖蒲★★★

●迫田和代
朝日浴び新樹のみどり又燃える★★★
少年の胸に明るい薔薇の花★★★
夏の海波弾く岩皆セピア★★★

●多田有花
全天を染めし梅雨の大夕焼け★★★★
風吹けばとりどり崩れ薔薇の園★★★
甘夏食ぶ果汁に指を濡らしつつ★★★

●桑本栄太郎
車窓より万緑空へ天王山★★★
稜線の確と定かや梅雨の晴れ★★★
音立てて雨戸閉めけり五月尽★★★

●小西 宏
糠雨や崖に立ち咲く山法師★★★
道の辺に白き花おき五月ゆく★★★
梅雨の夜に爪切って身の新しく★★★

5月30日(木)

●川名ますみ
薫風に眠りし人よ雲のべつ★★★
梅雨入の今年は忌日より早く★★★
さくらんぼ炊いて隣にミントティ★★★

●小口泰與
登校の帽子の列や柿若葉★★★
大利根の中洲に降りし青鷺よ★★★
水際をさわに占めけり黒揚羽★★★

●河野啓一
梅雨入りして老いに優しき木々の色★★★
サツキ赤し益々赤し雨の中★★★
カレー食ぶこの蒸し暑さ吹き飛ばせ★★★

●桑本栄太郎
植え終わりすぐにそよぎぬ瓜の苗★★★★
苗物を植えて、すぐに根付いたようにそよぐのは嬉しいものだ。それが、瓜などの夏野菜となれば、涼しさを呼んでなおさらだ。(高橋正子)

水ふふむ風の匂いや梅雨に入る★★★
うす暗きひと日暮れゆく梅雨入りかな★★★

●小西 宏
熟れたるを犬と分け合う桜の実★★★
草刈の匂い沸き立つ日照り雨★★★
【原句】紫陽花の縁より青の広ぎゆく★★★
【正子添削】紫陽花の縁より青の広がりゆく
【正子添削】紫陽花の縁より青を広げゆく

●高橋秀之
早朝の窓から部屋へ若葉風★★★
目覚めれば夜明けの光若葉風★★★
ざわざわと木々の重なり夏の風★★★

5月29日(水)

●小口泰與
岩魚追う獣道をや登りけり★★★
鰻釣る蛇と見紛ううねりかな★★★
我立つと水面に集う目高かな★★★

●佃 康水
草叢の木苺朝の陽を返す★★★★
草叢の木に小さな実をつける木苺。つぶつぶの実が朝日をはね返すと、宝石のように輝く。小さく、フレッシュなものの可愛いさ。(高橋正子)

種々の樹のみな真っ白き花蜜柑★★★
老鶯や木魂のように啼き返す★★★

●桑本栄太郎
それぞれの丈にときめくルピナスよ★★★
医科大の樟の大樹や風薫る★★★
早苗田の山影よぎる車窓かな★★★

●藤田洋子
紫陽花にきれいな山の風が吹く★★★★
梅雨入りしたばかり。ときに、山には涼しく透明な、さらっとした風が吹く。それが「きれいな風。」紫陽花をさわやかに、軽やかにしている。(高橋正子)

見始めの紫陽花一つ大きなる★★★
紫陽花の毬それぞれに朝の色★★★

●小西 宏
草原を母さんと行く藁帽子★★★★
広く、青い草原を麦わら帽子を冠った母と子が行く。草原と母と子のみ。ことさらに何もない世界がいい。(高橋正子)

挨拶は軽鳧の子のこと草の池★★★
五月野を網持ち走るふくらはぎ★★★

●河野啓一
力矯めつぼみ抽き出すアマリリス★★★
アマリリス赤色秘めて伸び出る★★★
碁に負けて口惜しくもありアマリリス★★★

●川名ますみ
聖橋(ひじりばし)
緑蔭の先は明るき聖橋★★★★
聖橋は、お茶の水駅近くの神田川に架かるアーチ型の橋。湯島聖堂とニコライ堂をつなぐ橋という意味で、聖橋と命名されたという。湯島聖堂方面から見た光景が。橋の明るさが緑陰と対比されて、より明るい思いが感じられる。(高橋正子)

御茶ノ水橋の先蔦茂る橋★★★
御茶ノ水橋の向こうに青蔦の橋★★★

8月28日(火)

●小口泰與
つり橋を渡りて宿や夕河鹿★★★
山風の猛々しきやけしの花★★★
どんどんと蜘蛛の子散らす目高かな★★★

●佃 康水
草刈られ畔の川筋光りけり★★★★
川を覆っていた草がきれいに刈られると、川は水を光らせて流れる。さっぱりとした川の流れがすがすがしい。(高橋正子)

長廊下足裏の湿り梅雨の入り★★★
デパートの梅雨入りグッズやカラフルに★★★

●小西 宏
酢漿の花くび傾げ雨近し★★★
梅雨前の塩辛蜻蛉岩の上★★★
梅雨近し小暗き森の鳥の声★★★

●多田有花
五月の雨並びし子らの傘の色★★★
雲低く山にかかりて走り梅雨★★★
万緑となりぬ風雨に洗われて★★★

●桑本栄太郎
青空の高き葉陰やいかる鳴く★★★
草茂る川の中州や水見えず★★★
緑蔭のつづく車内の阪急線★★★

●河野啓一
万緑に埋もれ活き活き森を行く★★★
苦瓜を植えつけて待つ青簾★★★
走り梅雨なるや夜来の雨の音★★★

●小川和子
風澄めば矢車草の花淡き★★★★
矢車草の色は、風に澄まされたような色をしている。逆に言えば、風が澄むと矢車草の花も淡く清楚に。(高橋正子)

森に聞く声のみ低く青葉木菟★★★
青嵐吹けば吾を呼ぶ母しのぶ★★★

●古田敬二
一列に丸く風受けネギ坊主★★★★
ネギ坊主が一列に整列して、さながら坊主頭の子どものよう。その頭をさらっと風がなでると、行儀のよいかわいい風景となる。(高橋正子)

うつむくはホタルブクロの内気かな★★★
まず一色見せて濡れてる額紫陽花★★★

●川名ますみ
薫風に眠りし人よ雲のべつ★★★
梅雨入の今年は忌日より早く★★★
さくらんぼ炊いて隣にミントティ★★★>

5月27日(月)

●小口泰與
利根川の簗のとどろき高根晴★★★
鮎竿のたわむや朝の涼しさよ★★★
山女の斑反転せしや毛鉤追う★★★

●河野啓一
海亀を大きく描く妻の画布★★★
ウミガメのピンポン玉は砂の陰★★★
阿波路きて買いこみしかな夏蜜柑★★★

●佃 康水
 周防大島みかん農園
咲き満ちて羽音昂るみかん畑★★★
海光のあまねし島の花蜜柑★★★
花蜜柑周防の空へ濃く匂う★★★ 

●小川和子
往来に真赤に熟れしトマト買う★★★
短パンの生徒等いそしむマスゲーム★★★
生徒等の四肢薫風に躍動す★★★

●桑本栄太郎
緑陰の樹下で待ち居り路線バス★★★
真夏日の蔭を問いつつ教会へ★★★
工場の枇杷の色づく廃墟かな★★★

●藤田洋子
南天の花穂出揃う茎の先★★★
花南天一つずつ揺れ細やかに★★★
南天の花の風通りよき白さ★★★

●多田有花
並び咲く八重芍薬に風清し★★★
少年の瞳に五月の薔薇ありぬ★★★★
南北の窓を貫き麦嵐★★★

●黒谷光子
万緑の狭間の湖に小舟かな★★★
頂上へリフトに見下ろ射干の群れ★★★
譲り合う山路に蕾の小紫陽花★★★

●高橋秀之
ぐっと伸ぶ若葉の先は薄緑★★★
新緑の重なる先に飛行雲★★★★
新緑のつややかな緑と、空に真っ白に描かれた飛行機雲の色彩的な対比がみずみずしい。(高橋正子)
薄曇その向こうには夏の富士★★★

●小西 宏
紅薔薇を支えて棘の陽に赤し★★★
日曜の家族テントを青芝に★★★★
頬紅の梅の実籠に溢れいる★★★