2月8日-18日

2月18日(5名)

●河野啓一
春浅き狭庭の草を踏みて立つ★★★★
春近し和泉山脈黒々と★★★
春めいて朝日優しく森の辺に★★★

●小口泰與
菜の花や嫗にお茶を賜りし★★★★
天霧らう榛名山(はるな)や湖の春の波★★★
天離る風の上州遠蛙★★★

●多田有花
梅林にある青空と風の音★★★
春の川きらきら蛇行して海へ★★★
春めきぬ揺れる梢の上の空★★★★

●桑本栄太郎
降りつつも天(そら)の明るき雨水かな★★★★
下萌の色濃くおもう雨の土手★★★
あちこちを向いて木蓮」ときめきぬ★★★

●小西 宏
ブランコの鎖に映る余寒かな★★★
梅枝に薄き緑の蕾立つ★★★

走りつつ凧ふり返る大野原★★★★
「凧揚げ」は新年の季語となっているが、単に「凧」と言えば春の季語。凧揚げは地方の行事でもあったので、地方行事として四月や五月に行うところも多い。そういった行事とは別に、遊びで、広い野原で凧の糸をもって走りつつ揚げると、凧は風に乗って、ぐんぐん糸を伸ばしてゆく。凧の上がり具合をふり返りながら走るのは、やはり小学生の中・高学年ぐらいであろう。凧揚げの少年を活写。(高橋正子)

2月17日(5名)

●小口泰與
利根川を煽ぐ山風蕗の薹★★★
鳶舞いし長き裾野の雪間かな★★★

菜の花や信濃川(しなの)の流れほんわかと★★★★
日本一長い信濃川。流域の雪解水を集めて延々と流れる。その雄大な信濃川も菜の花に彩られれば、ほんわかとやさしい流れに変わる。信濃川の水と菜の花の親和力が素晴らしい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
下萌の京大農場うすみどり★★★
春めいて河川コートのテニスかな★★★
下萌やジャージー走るグランドに★★★

●多田有花
列島の春の灯りの上を飛ぶ★★★★
春めきて歩く人やら走る人★★★
音も無く降りだしやみぬ春の雨★★★

●小川和子
早春のオレンジに照る入日かな★★★
笹鳴の頭上を過ぐる森閑か★★★★
回想
野蒜摘むことも遊びの一つとて★★★

●高橋秀之
潮風も頬に優しく春の朝★★★★
春の海光る日差しが明るくて★★★
春浅し船は行き交い鳥は舞う★★★

2月16日(6名)

●小口泰與
夕ぐれの榛名十峰斑雪かな★★★★
山風に対うばらの芽あえかなり★★★
青空を奪いあいたる揚雲雀★★★

●古田敬二
里言葉優しく夫婦若布干す★★★
佐久島の夫婦自慢の若布干す★★★
若布干す光りを揺らす浜の風★★★★

●河野啓一
春めきて箕面の山も青くなり★★★
春浅し北海道バターをパンに塗り★★★
かいつぶり一直線に泳ぎけり★★★★

●桑本栄太郎
しつとりと路面濡れ居り春の雪★★★★
山裾の白亜のビルや春寒し★★★
春霞かさね彼方へ摂津峡★★★

●小川和子
愛餐の卓に添えらる雪割草★★★★
愛餐とはキリスト教の教会内での食事会の事。兄弟姉妹達が一緒に食事を摂りながら、お互いに交わりのひと時を持つことですね?その卓上花として雪割草が飾られている光景を想えば、主の豊かな恵みにより春の訪れを心から実感している作者です。 (桑本栄太郎)

苗木市に百合の球根選るすがら★★★
二ン月の空の淡さよ枝垂れ梅★★★

●小西 宏
浅春の風に寄り来る池の紋★★★

春浅き笹薮にふと動くもの★★★★
春浅いころ笹薮を通りすがると、動くものがいることに気付く。小鳥であろう。雀か、鶯か。小さな音、小さな影に、カサカサと動くものを認めた。いかにも、早春の笹薮らしい。(高橋正子)

空き部屋に見る空少し春の色★★★

2月15日(4名)

●小口泰與
春風や小犬は我と歩を合せ★★★★
ばらの芽と棘を甚振る雨の糸★★★
晩酌はうぐいす餅を頬張りて★★★

●河野啓一
春浅く朝の会釈も雪のこと★★★★
手作りのバレンタインや縁結び★★★
牡丹雪消えず狭庭の模様かな★★★

●多田有花
春きざす快晴の阿蘇正面に★★★★
快晴の空の下で阿蘇と向き合う。その姿に対峙すれば、胸を張るような気分だ。阿蘇の草原らしき所に心なし緑が見える。自然の素晴らしさだ。(高橋正子)

二月の高原阿蘇がしだいに近く★★★
振り向けば九重連山春の雪★★★

●桑本栄太郎
駅前に菜の花飾り菜の花忌★★★★
紅梅の紅のふくらみ蕾みけり★★★
春めくやスマホ自撮りの女子高生★★★

2月14日(6名)

●迫田和代
春雪の朝厚着厚着の食堂や★★★
草萌える道のあちこち食べた跡★★★

白梅の花と香りと青い空★★★★
青空を背景に咲く白梅は、花の姿がくっきりと見え、清潔感があって、香りが気高い。それを表すように、句がシンプルなのがよい。「青空」と「白梅」の二つがあれば十分だ。(高橋正子)

●小口泰與
御朱印の墨痕淋漓風光る(信之添削)★★★★
足裏に芝火を踏みし戯れに★★★
ばらの芽や妙義山(みょうぎ)の奇岩眼間に★★★

●桑本栄太郎
背伸びせし首の青さや春大根★★★

菜園の早やもときめき豆の花★★★★
豆の花が咲くと「春はすでに」という気持ちになるものだ。菜園は冬野菜も終わりに近いが、豆の花が咲くと菜園はうきうきと、ときめいてくる。(高橋正子)

春耕のマルチ手繰れる老夫婦★★★

●多田有花
肥後名物馬刺しを食ぶや春の宵★★★
黒川の湯より仰ぎし春の星★★★
早春の日の出を待ちぬ露天風呂★★★★

●福田ひろし
宇宙まで見ている春の夕焼かな★★★
野を焼けば里には草の灰が降る★★★
冴え返る会議室から白き峰★★★

●小西 宏
山風の送れる花か春の雪★★★
白壁に身を屈め行き蕗の薹★★★
早春の谷透き通る竹の青★★★★

2月13日(3名)

●古田敬二
エンジン始動白波立てて春の旅★★★★
エンジンを始動させ、エンジン音も快調に海へ乗り出してゆく。春寒いころは、このエンジンの音がよく響き、船も白波を立てて軽やかに進んで行く。楽しい春の旅。(高橋正子)

白波の水脈引き島へ春の旅★★★
落椿蕊まだ新しき島の道★★★

●小口泰與
さえずりや浅間山(あさま)夕日を近づけず★★★★
犬ふぐり朝日を乗せし波頭★★★
あな白き浅間山(あさま)や裾野未紅梅★★★

●桑本栄太郎
蝋梅の訪なう人なき門扉かな★★★
下萌や草の香いまだ調わず★★★★
竹幹の楽を奏すや余寒風★★★

2月12日(9名)

●小口泰與
大利根の岩打つ波や揚雲雀★★★★
山風に影も揺れけり黄水仙★★★
早春の露天湯の床渇きおり★★★

●内山富佐子
雪解風瓦の屋根を市松に★★★
日を浴びて雪合戦の砦跡★★★★
雪合戦の踏みしだかれた砦の跡が、きらきらと日を浴びている。存分に戦った雪合戦の跡が明るくて、子どもたちへのあたたかい眼差しが読み取れる。(高橋正子)

ほろ苦き蕗の芽天下一品なり★★★

●上島祥子
現より優しい仕草春の影★★★
餅を焼く転んだ膝をかばいつつ★★★
針仕事終えて座敷に寒気満つ★★★★

●河野啓一
シンフォニー春を奏でるデイの午後★★★
水取りの行事を思い春を待つ★★★
さわらびを探さむ小川の音聞けば★★★★

●多田有花
梅が香の中に一歩を踏み入れる★★★★
夕陽浴び今まどろみの春の山★★★
春の雪抜けてやまなみハイウェイ★★★

●桑本栄太郎
校庭のブラスマーチや建国日★★★
犬ふぐり尖りて強き土手の風★★★
振り込みのルアー伸びゆく春の池★★★★

●小西 宏
ジムに泳ぎ二月の風に火照り帰る★★★
早春の堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青さや辛夷の芽★★★

●福田ひろし
雲雀野を些事に憂いて行き過ぎし★★★★
空からは雲雀の声がほがらかに降ってくる野だというのに、些細なことに気が病んで、それを心底楽しむことができないで行き過ぎた。世の中些事に、心は常に動いて揺れる。それにしても、雲雀野の明るいことよ。(高橋正子)

初午のセピアの写真父若し★★★
落ちてなお赤く輝く椿かな★★★

2月11日(6名)

●河野啓一
庭に立ち春の浅きを嘆きけり★★★
一輪の椿八十路の誕生日★★★★
春の雨待たるる頃や薄日差す★★★

●小口泰與
太鼓打つ半被のおみな風光る★★★★
湯煙の磴の斑雪の夕べかな★★★
鍋割山(なべわり)の在るべき所霞けり★★★

●多田有花
稜線を走る春雪舞う中を★★★★
風花や日ごとに開く坂の梅★★★
窓ガラスかたかた鳴らし寒戻り★★★

●桑本栄太郎
針供養今日は木綿の豆腐買う★★★
礼拝を終えて隣家の梅見かな★★★★
礼拝を終え、さやかな気持ちで隣家の梅の花を楽しむ。遠出の梅見でなはく、日常生活のなかでの梅見に、梅により親しい気持ちが寄せられている。(高橋正子)

山河早やうすきみどりの建国日★★★

●小西 宏
早春に堅く芽を張る枝々よ★★★★
ひかり跳ぶ空の青きに辛夷の芽★★★
ジムに泳ぎ初春(しょしゅん)の風に火照り帰る★★★

●佃 康水
一輪へ日差して雨後の梅真白★★★ 
飛び交える鳥へ紅白梅ひらく★★★
 
蕗の薹摘み採る土の温さかな★★★★
蕗の薹を摘み採るとき土に触れた手が、思わず土の温かさを感じ取った。日当たりのよいところに出た蕗の薹であろう。この柔らかな日が蕗の薹を育てたと思える。(高橋正子)

2月10日(5名)

●小口泰與
摘草や貨車過ぎ行ける足尾線★★★
あけぼのの畷を駆ける雉子かな★★★★
釣人を襲いし虻の唸りかな★★★

●河野啓一
春雪は止まず列島冴え返る★★★
早春の朝日鉢花いきいきと★★★★
鉢植えの花に朝日が刺すと、花は一度に輝く。早春の朝日となれば、空気は冷たくても、光の明るさは増して人の気持ちまで明るくしてくれる。花々の表情が見えるようだ。(高橋正子)

恐竜の化石も埋まる春の雪★★★

●桑本栄太郎
春障子二度寝の夢の目覚め居り★★★
せせらぎの枝に降り積む春の雪★★★
高槻のうすきみどりの春田かな★★★★

●古田敬二
菜を洗う蛇口の水も温みけり★★★
竹鳴らす風に乗り来て梅香る★★★★
白木蓮蕾踊らす青空に★★★

●高橋秀之
早朝のバスに受験の中学生★★★
受験の子表情普段と変わりなく★★★

おはようの声も大きく今日受験★★★★
子どもの受験には、親は子ども以上に心配かもしれない。受験の日、元気よく「おはよう」の声が聞けたことは、体調もよくて、緊張しすぎていないと、安心だ。よい結果が待っているのは確か。(高橋正子)

2月9日(7名)

●小口泰與
あけぼのの手に掬いたる春の水★★★
春霜や噴煙南(みな)へ流れける★★★
上州の三山笑う朝かな★★★★

●多田有花
山走る春北風の吹く中を★★★★
風よけて座す早春の頂に★★★
枝々の間に浅き春の空★★★

●桑本栄太郎
グランドの部活の声や春きざす★★★
十字架の峰に日差しや春の山★★★
菜園の採りあと白く茎立ちぬ★★★★

●河野啓一
白きもの被りて門辺の紅椿★★★
冴え返る昭和の軍歌を声揃え★★★
春雪は止まず畿内の過ごし良さ★★★★

●福田ひろし
春の雪触れる間もなくやみにけり★★★
湯けむりにふわりと消ゆる春の雪★★★★
ランナーを待ちわびる子の冷たき手★★★

●古田敬二
二月来る庭の光りの濃くなりぬ★★★★
二月は暦の上だは春。気温が低いけれど、日の光は真冬よりも明るく強くなって「春」を真っ先に思わせてくれる。「光の濃さ」が思われる。この句の問題は、「二月来る」と「濃くなりぬ」と一句に切れが2か所にあること。これは解消していただきたい。(高橋正子)

見上げれば木蓮蕾の踊りけり★★★
青空の主役つぼみの白木蓮★★★

●川名ますみ
残雪の凹凸に影松林★★★★
松林の残雪が美しいイメージで詠まれている。急に小動物が出てきそうで、楽しい雰囲気がある。(高橋正子)

春隣女僧侶の声たゆたう★★★
七七日障子に過ぎる猫の影★★★

2月8日(5名)

●小口泰與
今朝赤城山(あかぎ)良く見え畦の犬ふぐり★★★★
異例なき鍋割り山も春の雨★★★
たんぽぽや榛名山(はるな)の上の根無し雲★★★

●小西 宏
立春の空に橙色月上る★★★
春風に行く道犬の主張する★★★
朝からの雨が形に春の雪★★★★

●古田敬二
黒牛の乳房揺らして青き踏み来る★★★★
牛の背の春の光りに黒光り★★★
放牧の牛の足跡薄氷★★★

●桑本栄太郎
春北風を真夜に聞き居る寝床かな★★★
白梅を見上げ青空どこまでも★★★★
さざ波の岸を小打ちや春の池★★★

●佃 康水
膨れくる潮や河口に春の鴨★★★★
「膨れくる潮」が春らしい。河口や港に立っていると、穏やかな日には、潮が膨れるように満ちてくるのがわかる。河口にはまだ帰らない鴨が生き生きと泳いでいる。春への期待が高まるころだ。(高橋正子)
 
木の芽吹く丘やせせらぐ音高し★★★
和服着る人らそぞろに梅見かな★★★

●デイリー句会投句箱/2月1日~7日●

花冠発行所は、現在、活動を休止していますが、<デイリー句会>は、従来通りに活動を続けていますので、ご投句などをお願いいたします。高橋正子(主宰)・高橋信之(管理)◆

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/2月1日~7日

[2月7日]
★街の灯に雪の生まれて広がり降る/小西 宏
夜の雪は、灯りに照らされたところから降ってくるように見える。雪は、「街の灯」に生まれるのだ。そして、灯りがある広がりに小止みなく降る。「街の灯に雪の生まれ」に都会の雪がよく描写されている。(高橋正子)

★花すみれ一番咲きは食卓に/河野啓一
秋に植えたのだろうか。すみれが咲いた。一番最初に咲いたすみれを食卓に飾ると、食卓に一度に春が来た。一番咲きの花、特にすみれは、可愛くてうれしい。(高橋正子)

[2月6日]
★犬ふぐり利根の瀬音の高々と/小口泰與
犬ふぐりが咲き始めると、春が来たと思う。奥山の雪解水を集め、利根川も瀬音高らかに流れている。春の輝きがある句。(高橋正子)

★芽吹き前箕面の森の水の音/河野啓一
芽吹く気配に満ちた森。耳を澄ませば、水の音がする。箕面の森の春の息吹が親しく読み取れる。(高橋正子)

[2月5日]
★手袋をぬいで歌集のページ繰る/上島祥子
外出先に歌集をもって出かけたのだろう。手袋をはめたまま歌集を読み始めたが、ページをめくるときになって、手袋を脱いだ。手袋をはずしたしなやかな指が、歌集をめくるところがクローズアップされ、気品のある場面となった。(高橋正子)

[2月4日]
★寒明けの夕影伸びし水面かな/小口泰與
水面に夕影が長く伸び、寒明けの今日は、日の永さが感じられる。夕べにも残る寒明けのほのかな明るさが春の兆しと受け止められる。(高橋正子)

[2月3日]
★二月の山遠くに海の光りおり/多田有花
二月となれば、風は冷たいものの、日の輝きが強くなる。明るさも増してくる。山に登れば、遠くの海も光っている。引き締まる空気、早春の海の眺めが快い。(高橋正子)

★居酒屋の突き出し今日は年の豆/小西 宏
たまたま寄った居酒屋であろうが、今日は節分ということで、突き出しに「年の豆」が出された。客ともども、節分を祝う気持ちで、鰯が出されるより粋。(高橋正子)

[2月2日]
★落ちるものなくして明るき冬木立/古田敬二
枯葉もすっかり落として枝だけになった冬木立。風の冷たさとは別に、日の光が降り注ぎ、明るい景色を見せている。明るい冬木立に春遠からじと思う。(高橋正子)

[2月1日]
★銀紙のチョコ割り枯れた野に座る/小西 宏
吟行に出かけた折、枯れた野原に座り、チョコレートを食べることは、たまに経験することの一つだ。「銀紙」「チョコレート」「枯れた野」の色彩のイメージが、瀟洒で、そんものの中に置かれた作者も絵になっている。(高橋正子)

2月1-7日

2月7日(6名)

●迫田和代
梅白く香り白々陽も白い★★★
梅日和香りに惹かれた車椅子★★★★
草燃える流れる水や音もなし★★★

●小西 宏
寒月に厳しき風の坂のぼる★★★
朝よりも寒さの募り雪催い★★★

街の灯に雪の生まれて広がり降る★★★★
夜の雪は、灯りに照らされたところから降ってくるように見える。雪は、「街の灯」に生まれるのだ。そして、灯りがある広がりに小止みなく降る。「街の灯に雪の生まれ」に都会の雪がよく描写されている。(高橋正子)

●小口泰與
しゃぼん玉ぴかっと光消ゆるなり★★★
青ぬたや同胞(はらから)つどう父の忌よ★★★★
扉掻く犬や朝寝のきりも無し★★★

●桑本栄太郎
料峭の枝葉さざめく丘の風★★★
さざ波の耀やき走る春の池★★★
水底の光りゆらぐや蘆の角★★★★

●河野啓一
花すみれ一番咲きは食卓に★★★★
秋に植えたのだろうか。すみれが咲いた。一番最初に咲いたすみれを食卓に飾ると、食卓に一度に春が来た。一番咲きの花は、特にすみれは、可愛くてうれしい。(高橋正子)

伴奏に合わせ歌声早春賦★★★
北国の春や歌声デイの窓★★★

●多田有花
大橋の彼方に春の入日かな★★★★
ため池がそれぞれ映す春の夕暮れ★★★
クレーン立つ春加古川の夕暮れに★★★

2月6日(5名)

●小西 宏
待春の光たゆたう伊豆の海★★★
日に輝く枯れ野を分けて快走す★★★
空大し水仙かおる海の崖★★★★

●小口泰與
犬ふぐり利根の瀬音の高々と★★★★
犬ふぐりが咲き始めると、春が来たと思う。奥山の雪解水を集め、利根川も瀬音高らかに流れている。春の輝きがある句。(高橋正子)

ちろちろと夕日に染まる芝火かな★★★
蕗味噌やたっぷり積めし魚の腹★★★

●河野啓一
陽の光ふと見つけたる蕗のとう★★★
芽吹き前箕面の森の水の音★★★★
芽吹く気配に満ちた森。耳を澄ませば、水の音がする。箕面の森の春の息吹が親しく読み取れる。(高橋正子)

春待ちて飾るパンジー食卓に★★★

●佃 康水
寒あやめ開くや朝の雨しずく★★★
女生徒の傘差しくるる春時雨★★★★
土塊に雀群れ来る春の雨★★★

●桑本栄太郎
白梅や硬きつぼみの丘の風★★★
頑なにつぼみ閉じ居り丘の梅★★★
青空を見上げひと枝梅ひらく★★★★

2月5日(4名)

●小口泰與
根無し雲映す榛名湖春浅し★★★★
永き日や利根奔流の水の嵩★★★
春遅しごうごうと吹く欅風★★★

●桑本栄太郎
<早春の桂川>
早春の中洲に光る湾処かな★★★
桂川の上流(かみ)の嶺々残雪に★★★★
菜の花の川風に揺れ河川畑★★★

●上島祥子
手袋をぬいで歌集のページ繰る★★★★
外出先に歌集をもって出かけたのだろう。手袋をはめたまま歌集を読み始めたが、ページをめくるときになって、手袋を脱いだ。手袋をはずしたしなやかな指が、歌集をめくるところがクローズアップされ、気品のある場面となった。(高橋正子)

針仕事晴れ着広げぬ冬座敷★★★
残酷なニュースで始まる二月かな★★★

●高橋信之
葉牡丹の白一色の華やぎを★★★★
一月快晴空の青さを仰ぎ見る★★★
春近きボールを小さき子らが蹴る★★★

2月4日(4名)

●小口泰與
寒明けの夕影伸びし水面かな★★★★
水面に夕影が長く伸び、寒明けの今日は、日の永さが感じられる。夕べにも残る寒明けのほのかな明るさが春の兆しと受け止められる。(高橋正子)

早春や長き裾野の雲迅き★★★
早春や硬き風吹く利根川原★★★

●桑本栄太郎
細枝の雪のしずりや京の路地★★★
礼拝の果て青空に寒紅梅★★★★
ヨルダンの砂漠寒きと想いけり★★★

●祝恵子
枯れ木によりランナーの足音を待つ★★★★
着ぶくれて声援仲間吾れもまた★★★
加湿器の湯気にかすかに揺れるラン★★★

●高橋信之
節分の余りし豆が袋に透く★★★★
東の峰を見る立春の曙よ★★★
戸を出でて今日立春と思う吾よ★★★

2月3日(7名)

●小口泰與
大寒の乾きし庭や群雀★★★★
乾びたる里の大地や水仙花★★★
あな白き浅間山(あさま)や梅の佐久平★★★

●内山富佐子
寒行の太鼓静寂にとけてゆく★★★
霰には三角四角拳固あり★★★★
節分や福は内山春よ来ひ★★★

●多田有花
二月の山遠くに海の光りおり★★★★
二月となれば、風は冷たいものの、日の輝きが強くなる。明るさも増してくる。山に登れば、遠くの海も光っている。引き締まる空気、早春の海の眺めが快い。(高橋正子)

節分や太鼓の音がこだまする★★★
忘れ物思い出したり冬尽きぬ★★★

●桑本栄太郎
雪晴れの天の青さや比叡山★★★★
雪止めば四条大橋濡れ光る★★★
雪しずる京の町家でありにけり★★★

●高橋秀之
節分の我が家の食卓手巻き寿司★★★★
港から吹く風冬木の揺れる枝★★★
冬晴れて西からの波も穏やかに★★★

●小西 宏
背(せな)の子の前が見えないニット帽★★★
枯山に陽がいっぱいの黄金色★★★

居酒屋の突き出し今日は年の豆★★★★
たまたま寄った居酒屋であろうが、今日は節分ということで、突き出しに「年の豆」が出された。客ともども、節分を祝う気持ちで、鰯が出されるより粋。(高橋正子)

●古田敬二
春を待つ梢を渡る風の音★★★
枝先に紅尖る冬芽かな★★★
色々と楽しげな形冬の雲★★★★

2月2日(5名)

●小口泰與
庇よりあだに落ちたる氷柱かな★★★
山茶花や上州風の荒き国★★★
露天湯に脛を預けし日脚伸ぶ★★★★

●桑本栄太郎
救急車の音の近づく雪の朝★★★
部屋干しの竿の支度やしまき風★★★
遠き地のテレビニュースや冬座敷★★★★

●川名ますみ
梅ひとつ今年も同じ枝につき★★★★
梅一輪いつもの枝にはじまりぬ★★★
しだれ梅初めの一輪そっと咲く★★★

●福田ひろし
こたつ舟竿高々と弧を描く★★★
スマホする雪降りしきる朝なれど★★★
冬天や湯は滔々とあふれおり★★★★

●古田敬二
落ちるものなくして明るき冬木立★★★★
枯葉もすっかり落として枝だけになった冬木立。風の冷たさとは別に、日の光が降り注ぎ、明るい景色を見せている。明るい冬木立に春遠からじと思う。(高橋正子)

風の道行けば落ち葉に追い越され★★★
寒風が吹けども竹はまっすぐに★★★

2月1日(5名)

●内山富佐子
高田瞽女の門付け芸を再現するイベントにて二句
雪の町に瞽女の三味の音豊かなり★★★★
三味を弾く瞽女のうなじや六花★★★
玉葱の芽伸びやかに春を待つ★★★

●小口泰與
里山の寒紅梅の鮮らけき★★★★
日を乗せて白鳥嘴を隠しけり★★★
白鳥の映ろう水面夕日影★★★

●小西 宏
炭焼きのけむり香のする雑木山★★★
探梅や一つ見つけて香の仄か★★★

銀紙のチョコ割り枯れた野に座る★★★★
吟行に出かけた折、枯れた野原に座り、チョコレートを食べることは、たまに経験することの一つだ。「銀紙」「チョコレート」「枯れた野」の色彩のイメージが、瀟洒で、そんものの中に置かれた作者も絵になっている。(高橋正子)

●多田有花
春隣日差しと雪が交差する★★★
池の辺に人影は無し冬深し★★★
強霜や朝日を浴びて山へ行く★★★

●桑本栄太郎
天辺のはがれ欠片や雪の花★★★
風雪の傘を斜めや図書館へ★★★★
ヨルダンの砂漠哀しき寒暮かな★★★

今日の秀句/1月22日~31日

[1月31日]
★板を踏む音繰り返し寒稽古/上島祥子
厳しい寒さの中で行われる寒稽古。吐く息も白く、剣道場などの床板を素足が踏む音に勢いと力がある。それを繰り返し、精神も技も肉体も鍛えられる。「板を踏む音」と「寒稽古」が結びついたのがよい。(高橋正子)

[1月30日]
★延々と貨車通り過ぐ枯野かな/桑本栄太郎
荒涼とした枯野を延々と通り過ぎる貨車。「延々」は、また「果てしない」とも思われ、作者の心象風景となっている。(高橋正子)

★海見える斜面にほころび寒紅梅/多田有花
海の見える傾斜地は、日当たりがよくて暖かいのだろう。寒中というのに、紅梅がほころんでいる。「海」と「寒紅梅」の取り合わせが晴れやかだ。(高橋正子)

[1月29日]
★冬薔薇や今朝も家族を送り出す/福田ひろし
まだまだ寒さの厳しいとき。冬薔薇があり、家族がいるさりげない幸せ。今朝もそうだが、先に家族を送り出して、それからご自分の出勤か。あるいは在宅。その家のスタイルの日々の暮らしがうかがえる。(高橋正子)

[1月28日]
★寒晴れや始業チャイムの伸びやかに/桑本栄太郎
寒晴れの空の下に、始業のチャイムの音が伸びやかに広がる。風は冷たいものの、寒晴れの明るさに春の兆しが感じられる。(高橋正子)

[1月27日]
★寒雁や単線の貨車過ぎ行ける/小口泰與
早朝餌を獲りに空を飛ぶ雁の下を、単線の線路を貨車がことこと過ぎて行く。荒涼とした風景のなかにも、命の通う雁、貨物を載せて過ぎゆく貨車に少しの温かさがある。(高橋正子)

★蝋梅や明石海峡はるばると/多田有花
明石海峡がはるばると見えるところに咲いている蝋梅。海と蝋梅の取り合わせで、蝋梅の花の透明感と鮮やかさがよく表現された。(高橋正子)

[1月26日]
黒焦げの餅の美味しさどんど焼き/内山富佐子
どんどの火で焼く餅は、黒焦げになった部分もあるが、妙に美味しいと私も思う。気持ちのせいだけではなく、実際火の加減によるものだろう。句意が素直に読み取れる。(高橋正子)

[1月25日]
★北風や明らかなりし榛名山/小口泰與
凍てつくような北風が吹き、塵を吹き飛ばし、榛名山の姿が明らかになった。日々見え方の変わる榛名山の今日の姿だ。(高橋正子)

★冬萌や土手の南面青々と/桑本栄太郎
土手を歩くと、暖かい南面の傾斜には、草が青々と萌え始めている。枯のなかに緑を見るのは春が近づいていると思えて嬉しいものだ。直さが句意にふさわしい。(高橋正子)

[1月24日]
★朝早く歩いて来る人の白い息/迫田和代
早朝に向こうから歩いて来る人がいる。その人が命ある人である証拠のように、「白い息」が見える。白い息が鮮やかだ。(高橋正子)

★校庭の歓声寒林抜けて来る/古田敬二
寒林のこちら側と向こう側とに違う世界が、寒林を歩く作者の心を通してつながっている妙味。(高橋正子)

[1月23日]
★寒晴の雲を讃えつ通院路/川名ますみ
寒晴の青空に浮かぶ雲の美しさは、通院とは言え、久しぶりの外出の身に、「讃える」ほどの美しさだった。そんな雲を見た嬉しさ、心のはずみが伝わってくる。(高橋正子)

[1月22日]
★雪吊りの縄一本も緩まずに/古田敬二
雪催いの日であろうか。雪吊りの縄が一本たりとも緩むことがない。すで見事な職人技だ。見るものの目に凛々しく映る。(高橋正子)

1月22-31日

1月31日(5名)

●小西 宏
北風に揺れる小さな水溜り★★★
空の鳥仰いで一人炬燵にいる★★★
冬薔薇の棘照り映える隣り垣★★★★

●小口泰與
岸洗う波のささらや春隣★★★
鮮やかな雪の浅間山(あさま)の朝かな★★★★
朝夕の浅間山(あさま)よろしき冠雪★★★

●桑本栄太郎
高層の谷に乱舞や雪しまき★★★
明暗の障子明かりのひと日かな★★★★
みずいろの一月果つや空の色★★★

●河野啓一
春隣ブロッコリーの青い森★★★
二羽三羽ふくら雀の庭先に★★★
入念に寒肥は柿の根元へと★★★★

●上島祥子
千両の食べ尽くされて禽されり★★★
板を踏む音繰り返し寒稽古★★★★
厳しい寒さの中で行われる寒稽古。吐く息も白く、剣道場などの床板を素足が踏む音に勢いと力がある。それを繰り返し、精神も技も肉体も鍛えられる。「板を踏む音」と「寒稽古」が結びついたのがよい。(高橋正子)

師の声の一際高く寒稽古★★★

1月30日(4名)

●小口泰與
朝月夜目路に入りたる雪赤城山(あかぎ)★★★
朝戸出の我を襲いし北颪★★★★
手をかざす火鉢の女将紺のれん★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車通り過ぐ枯野かな★★★★
荒涼とした枯野を延々と通り過ぎる貨車。「延々」は、また「果てしない」とも思われ、作者の心象風景となっている。(高橋正子)

あおぞらの宙のたよりや風花す★★★
雨上がり風の荒ぶる寒暮かな★★★

●多田有花
海見える斜面にほころび寒紅梅★★★★
海の見える傾斜地は、日当たりがよくて暖かいのだろう。寒中というのに、紅梅がほころんでいる。「海」と「寒紅梅」の取り合わせが晴れやかだ。(高橋正子)

春近き島の浮かびし播磨灘★★★
パリパリとうまきは大根一夜漬け★★★

●高橋信之
梅林を一望ふところ深き谷★★★★
良きこと多し一月の日曜の梅★★★
公園の手洗い梅の満開に★★★

1月29日(4名)

●小口泰與
裾野までふぶく赤城や寒鴉★★★★
茜さす雪の浅間山(あさま)の明けにける★★★
覚めたるや土曜の宿の虎落笛★★★

●福田ひろし
冬枯れの野に一軒の農家あり★★★
路地裏に野性味満つる猫の恋★★★

冬薔薇や今朝も家族を送り出す★★★★
まだまだ寒さの厳しいとき。冬薔薇があり、家族がいるさりげない幸せ。今朝もそうだが、先に家族を送り出して、それからご自分の出勤か。あるいは在宅。その家のスタイルの日々の暮らしがうかがえる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
息白く登校児童の列つづく★★★★
あおぞらを見上げ空見や風花す★★★
高階の真夜のおらびや虎落笛★★★

●高橋信之
万作咲く公園の森の奥に来る★★★★
公園の森の奥では、ひそかに春を告げる万作が咲いている。「森の奥」がいい。(高橋正子)

梅の白咲かせる森の今日がある★★★
ミモザ咲けば確かな春がすぐそこに★★★

1月28日(5名)

●小口泰與
早梅や日の昇りたる風の中★★★★
茜さす白き浅間山(あさま)や寒紅梅★★★
ひらひらと光奏でる冬の利根川(とね)★★★

●河野啓一
ぬり絵塗る人の笑顔や春近し★★★★
枯木立聳えて高く青い空★★★
胡蝶蘭友を思うや昼下がり★★★

●桑本栄太郎
寒晴れや始業チャイムの伸びやかに★★★★
寒晴れの空の下に、始業のチャイムの音が伸びやかに広がる。風は冷たいものの、寒晴れの明るさに春の兆しが感じられる。(高橋正子)

釣り人の湾処(わんど)に黙の枯野かな★★★
松籟の冴ゆるばかりや建仁寺★★★

●小西 宏
風荒び寒き日なりき鴉除け★★★
鼻風邪に部屋で籠球(ろうきゅう)練習す★★★
骨怠く金柑の皮噛んで寝る★★★★

●古田敬二
寒鴉薄暮の森にシルエット★★★
幹揺らし鳥零し去る実万両★★★★
葉ボタンに夜来の雨や渦光る★★★

1月27日(5名)

●河野啓一
寒晴れて朝の地平の茜色★★★★
古池に寒の水少し足してやり★★★
ラケットの球音軽き寒稽古★★★

●小口泰與
水仙の影揺れにけり夕まぐれ★★★

寒雁や単線の貨車過ぎ行ける★★★★
早朝餌を獲りに空を飛ぶ雁の下を、単線の線路を貨車がことこと過ぎて行く。荒涼とした風景のなかにも、命の通う雁、貨物を載せて過ぎゆく貨車に少しの温かさがある。(高橋正子)

寒梅やじんじん響く靴の指★★★

●多田有花
寒霞はるかに望む須磨明石★★★

蝋梅や明石海峡はるばると★★★★
明石海峡がはるばると見えるところに咲いている蝋梅。海と蝋梅の取り合わせで、蝋梅の花の透明感と鮮やかさがよく表現された。(高橋正子)

寒港にポートタワーを探しけり★★★

●桑本栄太郎
交叉せし飛行機雲や霜の朝★★★
水仙の車窓の土手につづきけり★★★
あおぞらの冬田の畝に水光る★★★★

●福田ひろし
亡き人の風を集めて春近し★★★★
恋猫やあたりを乳白色にする★★★
面影を呼び起こしたり猫の恋★★★

1月26日(4名)

●小口泰與
水柱立てて翔ちけり大白鳥★★★★
着水の一花へ夕日大白鳥★★★
白鳥の声高だかと夕まぐれ★★★

●内山富佐子
賽の神書初めの文字空高く★★★

黒焦げの餅の美味しさどんど焼き★★★★
どんどの火で焼く餅は、黒焦げになった部分もあるが、妙に美味しいと私も思う。気持ちのせいだけではなく、実際火の加減によるものだろう。句意が素直に読み取れる。(高橋正子)

目を押さへ火守りする子らどんど焼き★★★

●桑本栄太郎
採り跡の千々の乱れや冬菜畑★★★
着ぶくれて居眠りふける家路かな★★★
信号に集う尾灯や寒夕焼け★★★

●高橋信之
寒梅の白あり紅あり空の青★★★★
梅の谷鳥啼き風の吹き抜ける★★★
梅の谷その半分に陽が当たる★★★

1月25日(5名)

●小口泰與
北風や明らかなりし榛名山★★★★
凍てつくような北風が吹き、塵を吹き飛ばし、榛名山の姿が明らかになった。日々見え方の変わる榛名山の今日の姿だ。(高橋正子)

冬木の芽ふぶく赤城の裾野かな★★★
寒鯉のあぎとう中や夢うつつ★★★

●河野啓一
池の端の石も凍てつく寒の朝★★★
庭隅に春待つ心草揺れて★★★
烏鷺競う碁石音(いしおと)響く春近し★★★★

●桑本栄太郎
冬萌や土手の南面青々と★★★★
土手を歩くと、暖かい南面の傾斜には、草が青々と萌え始めている。枯のなかに緑を見るのは春が近づいていると思えて嬉しいものだ。直さが句意にふさわしい。(高橋正子)

菜の花の早やも一列黄明かりに★★★
冬日さす支柱に低き豆の蔓★★★

●小西 宏
雲垂れて手袋の手のなお痛し★★★
冬薔薇の乾いた庭にひとり立つ★★★★
風寒く群れる鴉に餌を撒く★★★

●高橋秀之
北風に向かって走る女子マラソン★★★
日が昇り窓を開ければ冬の風★★★
冬の日がベランダの布団に降り注ぐ★★★★

●高橋信之
梅林の斜面の白と紅の花★★★
梅林を一望ふところ深き谷★★★
寒梅の大きな一樹に対面す★★★★

●高橋正子
寒梅に水の流れのきらめき落つ★★★★
「寒梅」に「水の流れ」の取り合わせがいい。寒の最中のみずみずしい風景だ。

寒梅に谷間の草の萌えはじむ★★★
寒梅の紅白ひらく谷日和★★★

1月24日(7名)

●迫田和代
朝早く歩いて来る人の白い息★★★★
早朝に向こうから歩いて来る人がいる。その人が命ある人である証拠のように、「白い息」が見える。白い息が鮮やかだ。(高橋正子)

陽の光邪魔になりそう雪だるま★★★
窓の外ちらちら雪の庭の花★★★

●小口泰與
寒鰤や折から合格通知来る★★★★
小女子も駆ける夕日やみかん山★★★
赤城山(あかぎ)晴荒れる浅間山(あさま)や空っ風★★★

●古田敬二
菜花入れる夕餉の鍋に色豊か★★★
校庭の歓声寒林抜けて来る★★★★
寒林のこちら側と向こう側とに違う世界が、寒林を歩く作者の心を通してつながっている妙味。(高橋正子)

寒梅の蕾にぎやか青空へ★★★

●多田有花
少年の声はつらつと寒の朝★★★
よく晴れて春遠からじと思いけり★★★
寒林の枝の彼方に飛行機飛ぶ★★★★

●祝恵子
下車すれば古都の歩きの寒の街★★★★
朱の塗りの柱に破魔矢藁の亀★★★
水仙の吹かれしままに咲いており★★★

●内山富佐子
雪晴れ間ふんわり浮かぶ白き雲★★★
托鉢の僧の読経や冬夕焼け★★★★
雪消えし街を大股で闊歩す★★★

●桑本栄太郎
音も無く真夜の目覚めや寒の雨★★★★
ぷつくりと飯に黄身乗せ寒卵★★★
煙り立つ峰の間(あわい)や春隣★★★

1月23日(5名)

●小口泰與
冬霧の消ゆる所や隠れ沼★★★★
着ぶくれてかつて女(おみな)の起ち居かな★★★
山裾のちょこっと見える冬赤城★★★

●桑本栄太郎
椿葉の光りかがやき冬日燦★★★
泰然と剪られ並木の枯銀杏★★★★
冬日さす雲と日射しの交々に★★★

●福田ひろし
捨てきれぬ冬シャツのまた洗われし★★★
雪降りて昭和思わす赤き�茲★★★
古きほど着心地の増す冬シャツや★★★★

●川名ますみ
寒晴の雲を讃えつ通院路★★★★
寒晴の青空に浮かぶ雲の美しさは、通院とは言え、久しぶりの外出の身に、「讃える」ほどの美しさだった。そんな雲を見た嬉しさ、心のはずみが伝わってくる。(高橋正子)

冬びより角に黄色の三輪車★★★
冬夕焼廊下の壁のつと染まり★★★

●古田敬二
蕾と言う命の準備寒林に★★★★
ひなたぼこうつらうつらと句が浮かぶ★★★
大寒や尾根に出るとき風強し★★★

1月22日(3名)

●古田敬二
寒の雲なき空の下に立つ★★★

雪吊りの縄一本も緩まずに★★★★
雪催いの日であろうか。雪吊りの縄が一本たりとも緩むことがない。すで見事な職人技だ。見るものの目に凛々しく映る。(高橋正子)

天辺を揃えて剪定寒梅林★★★

●小口泰與
隼や利根の瀬頭波おどる★★★★
冬雲の尾の上(え)の木々を離れけり★★★
おやみなき雨や河原のラガーマン★★★

●桑本栄太郎
風花や天女の吐息かと思う★★★
冬麗のバス降り来たる老人会★★★
大寒と云えど小枝のみどり初む★★★★

●デイリー句会投句箱/1月15日~21日●


※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/1月15日~21日

[1月21日]
★出づる日を拝みて冬耕始めけり/小口泰與
「出づる日」は、輝きも強く、有難さも一層だ。自然と拝む気持ちにさせられる。この太陽あればこそと耕し始める。謹直な日本の農夫の姿だ。(高橋正子)

★蝋梅の水滴こぼるる膨らみに/祝 恵子
蝋梅についた水滴が、こぼれそうに膨らんでいる様子。蝋梅の色を透かせた水滴が大きく膨らんで、手にしたいほど美しい。(高橋正子)

[1月20日]
★笹鳴や今朝の赤城山(アカギ)は靄の中/小口泰與
笹鳴が聞こえ、赤城山は靄の中にある。雄々しい山容の赤城山も靄の包まれやわらかに見える。春の足音が聞こえる。(高橋正子)

★革靴で砂丘に上る冬怒濤/福田ひろし
旅の途中か、砂丘に上る用意もなく思い立ってのことか。砂丘があるから革靴のまま上ると、怒涛が荒々しい音で寄せている。冬の怒涛に向かい、内なる力が湧く思いだろう。(高橋正子)

[1月19日]
★寒のバスひとりの客を吐き出しぬ/多田有花
寒の寒々とした空気のなかに、バスから一人の客が降りた。しかし、それは、降りたのではなく、バスが客一人を吐き出したかのようなのだ。着膨れで膨らんだようなバスとあたりの寒々とした景色が思われる。(高橋正子)

★水色の空の高さに枯柳/桑本栄太郎
水色の空に、刷かれたように立つ枯柳の枝。もううっすらと緑がかっても見えるこの頃だ。真冬の最中ながら、水色の空に春への期待が忍ばれる。(高橋正子)

[1月18日]
 銚子
★沖合いに風車の廻る寒の入り/小川和子
太平洋を背景に立つ風力発電の風車は、近代的な風景を作っている。沖合いを吹く風の寒さもいよいよ寒そうで、寒の入りを印象付ける。新しい印象の寒の入りの句だ。(高橋正子)

★叢に跳び来て笹子ふと声す/小西 宏
叢を通りすがると笹子が跳んで入り込み、チャチャ、チャチャと鶯らしからぬ声をあげる。笹鳴きを聞くと「春遠からじ」と思う。(高橋正子)

★新幹線の車窓一面冬の富士/高橋秀之
新幹線で上京するとき、真っ白い冠雪の富士が窓を占める。雪を頂いた冬の富士は自然の力強さをもって圧倒する。(高橋正子)

[1月17日]
★朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ/多田有花
朝の風が枝を揺らしその間に青空見える。冷たいながらも心身が引き締まる爽快感がある。こんな日には、「日脚伸ぶ」うれしさがある。(高橋正子)

★十日戎太鼓のバチは子がならす/祝恵子
商都大阪ならではの十日戎の賑わいはうれしいものだ。子供もその賑わいに参加して、太鼓のバチをもって、鳴らす。八方縁起がよい。(高橋正子)

[1月16日]
★裸木の林に透ける街灯/小西 宏
裸木の林に透ける街の灯に、枯れの美しさ、また逆に灯の美しさが思われる。(高橋正子)

[1月15日]
★今朝ついに向こうが透け見え冬木立/古田敬二
すっかり木の葉が散ってしまい、向こうが透けて見えるようになった。さっぱりとして潔い冬景色だ。(高橋正子)

★明け方の霰に元気貰いけり/内山富佐子
明け方、霰の音で目を覚ましたのであろう。霰が撥ね、弾ける音の勇ましさに、寒さを思うのではなく、元気を貰った若さ。(高橋正子)

★球を蹴る冷たき風を朗らかに/小西 宏
球を蹴るときは、冷たい風もなんのその。球を蹴るのが楽しければ、冷たい風だって朗らかにしてしまう。楽しい熱気が伝わる。(高橋正子)

1月15-21日

1月21日(6名)

●小口泰與
朝霜や風の治まる利根河原★★★
己が影巨人となりて冬田越ゆ★★★

出づる日を拝みて冬耕始めけり★★★★
冬の「出づる日」は、輝きも強く、有難さも一層だ。自然と拝む気持ちにさせられる。この太陽あればこそと耕し始める。謹直な日本の農夫の姿だ。(高橋正子)

●河野啓一
鈍色の冬空悲し人の業(ごう)★★★
枯木立眺めつつ行く丘の道★★★★
軒裏に柿ひとつ揺れ風の中★★★

●佃 康水
柏手の揃う親子へ春近し★★★
焼牡蠣や香の漂える裏参道★★★
寒風を切って走者の眼の真直ぐ★★★★

●祝恵子
炎へと注連縄飛ばす自らに★★★
小豆粥鍋よりよそう小皿へと★★★

【原句】蝋梅の水滴こぼるる膨らみ
蝋梅の水滴こぼるる膨らみに★★★★(正子添削)
蝋梅についた水滴が、こぼれそうに膨らんでいる様子。蝋梅の色を透かせた水滴が大きく膨らんで、手にしたいほど美しい。(高橋正子)

●古田敬二
大寒の気流を滑る鳥高し★★★
大寒の風にからから鳴る竹林★★★★
冬の陽がまぶしい鍬を高く振る★★★

●桑本栄太郎
山崎の峰に十字架春待たる★★★★
サントリー大山崎の冬の峰★★★
ジョギングの老女追い抜く春隣★★★

1月20日(5名)

●小口泰與
笹鳴や今朝の赤城山(アカギ)は靄の中★★★★
笹鳴が聞こえ、赤城山は靄の中にある。雄々しい山容の赤城山も靄の包まれやわらかに見える。春の足音が聞こえる。(高橋正子)

白鳥や湖面は紅に染まりける★★★
ひんぷんと雪や利根川滔々と★★★

●河野啓一
冬野行く青きも見えて鳥の声★★★
浮き寝鳥川面の波の静かなる★★★
蜜柑撒くすぐに来れる目白かな★★★★

●多田有花
大阪のビル群望む寒の山★★★
大寒や日ごと光は明るさを★★★
大寒の頂に正午の鐘を聞く★★★★

●桑本栄太郎
<大阪高槻平野>
冬耕の畝の間や水の空★★★
柔らかにうねる生駒や春隣★★★★
風雲の嶺に至るや冬日影★★★

●福田ひろし
革靴で砂丘に上る冬怒濤★★★★
旅の途中か、砂丘に上る用意もなく思い立ってのことか。砂丘があるから革靴のまま上ると、怒涛が荒々しい音で寄せている。冬の怒涛に向かい、内なる力が湧く思いだろう。(高橋正子)

万両を売りし年寄り鼻高く★★★
電線の寒鴉みな西を向く★★★

1月19日(7名)

●河野啓一
耀かな冬の朝日よ受験生★★★★
青き頃想い出すかな歌かるた★★★
恋歌を聞きて久しく歌加留多★★★

●小口泰與
山風の崖を刳るや霜柱★★★
寒暁の白き浅間に朝日かな★★★★
山肌の動かぬ影や落葉焚★★★

●小川和子
凪ぐ沖を照らして昇る冬満月★★★★
灯台の燈の滲み見ゆ五日かな★★★
潮騒の限りなきかな冬の海★★★

●多田有花
寒のバスひとりの客を吐き出しぬ★★★★
寒の寒々とした空気のなかに、バスから一人の客が降りた。しかし、それは、降りたのではなく、バスが客一人を吐き出したかのようなのだ。着膨れで膨らんだようなバスとあたりの寒々とした景色が思われる。(高橋正子)

ユニフォーム溢れて寒の河川敷★★★
深草の里を辿れば蝋梅香る★★★

●桑本栄太郎
カーテンを開けるや白き雪の嶺★★★
風雪やフラッグポールのカラカラと★★★

水色の空の高さに枯柳★★★★
水色の空に、刷かれたように立つ枯柳の枝。もううっすらと緑がかっても見えるこの頃だ。真冬の最中ながら、水色の空に春への期待が忍ばれる。(高橋正子)

●小西 宏
冬枯れに今は動かぬ水車小屋★★★★
霜解けの泥濘(ぬかるみ)道に日の眩し★★★
幼子の食欲盛ん初句会★★★

●下地鉄
大寒の海の彼方の日照りかな★★★★
暖かい沖縄の「大寒」は想像するばかりであるが、生活者にとっては、彼方の海の「日照り」に独特な感じをもつのだろう。大寒の太陽の強さを思う。(高橋正子)

暖房器の重きうねりの青さかな★★★
うす寒の止めたき煙草又一つ★★★

1月18日(8名)

●小口泰與
山風を育む嶺々や霜畳★★★
まっすぐに昇る煙や冬木の芽★★★
手袋の五指じんじんと畷かな★★★★

●小川和子
 銚子
沖合いに風車の廻る寒の入り★★★★
太平洋を背景に立つ風力発電の風車は、近代的な風景を作っている。沖合いを吹く風の寒さもいよいよ寒そうで、寒の入りを印象付ける。新しい印象の寒の入りの句だ。(高橋正子)

年明くる利根の河口の藍深し★★★
煌めきて漁船に集る冬かもめ★★★

●桑本栄太郎
天へ向く桜冬芽の序曲かな★★★
寒風のさざ波寄せる池の縁★★★
宵空の嶺の茜や日脚伸ぶ★★★★

●小西 宏
叢に跳び来て笹子ふと声す★★★★
叢を通りすがると笹子が跳んで入り込み、チャチャ、チャチャと鶯らしからぬ声をあげる。笹鳴きを聞くと「春遠からじ」と思う。(高橋正子)

万作の冬芽膨らむ風の丘★★★
蝋梅の蕩(とろ)けるような空の青★★★

●高橋秀之
新幹線の車窓一面冬の富士★★★★
新幹線で上京するとき、真っ白い冠雪の富士が窓を占める。雪を頂いた冬の富士は自然の力強さをもって圧倒する。(高橋正子)

冬ばれの日差しに明るい東京駅★★★
冬りんご大きな口のひとかじり★★★

●高橋信之
水仙に寺の障子がよく似合う★★★
ろうばいの黄が嬉し今日の空の青★★★
一月の朝の日差しに書を開く★★★★

●高橋正子
若き日に求めし菓子器に桜餅★★★★
(自句自解)朱塗りのシンプルな菓子器を若い頃買ったが、朱色が少し明るすぎると思った。それから40年近く経つだろうか、朱色が落ち着いてきた。それに季節にはまだ早いが桜餅を盛った。

ヒアシンス窓辺に清き香を満たし★★★
冬苺ひとつが熟れて授賞式★★★

1月17日(7名)

●小口泰與
単線の貨物の尾灯冬の雨★★★
山風の空を掃きけり霜たたみ★★★
一本の太き藁しべ寒鴉★★★★

●迫田和代
寒の水流れた後の旨さかな★★★
遠い日の凍傷の手忘られぬ★★★
静かなる雪降る夜の淋しさや★★★★

●桑本栄太郎
ひとつずつ空慕い居る冬芽かな★★★
剪定の枝の拳や寒の暮れ★★★
山茶花の垣根や樹下の緋の色に★★★★

●小西 宏
しばし霰走らせ黒きアスファルト★★★
雲低き冬ざれの里人なき街★★★
風の行く木の葉隠れの寒椿★★★★

●古田敬二
寒椿蕾の奥まで陽を受けて★★★
蝋梅やピント会う時香りけり★★★★
満ちて来る運河の潮に都鳥★★★

●多田有花
朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ★★★★
朝の風が枝を揺らしその間に青空見える。冷たいながらも心身が引き締まる爽快感がある。こんな日には、「日脚伸ぶ」うれしさがある。(高橋正子)

走るタイヤの音で時雨に気付く★★★
松過の雑木林に差し入る陽★★★

●祝恵子
十日戎太鼓のバチは子がならす★★★★
商都大阪ならではの十日戎の賑わいはうれしいものだ。子供もその賑わいに参加して、太鼓のバチをもって、鳴らす。八方縁起がよい。(高橋正子)

鳴き声を求めて枯葉の森に入る★★★
女の子男の子居て回す独楽★★★

1月16日(5名)

●小口泰與
さもなくば赤城颪を浴びに来よ★★★
冬の星水の流転を眼間に★★★
枯芒夕日賜わり凛々しかり★★★★

●河野啓一
木漏れ日に僅かばかりの暖をとり★★★
【原句】宿に入る窓に一鉢福寿草
宿に入れば窓に一鉢福寿草★★★★(正子添削)
垣根沿いひっそり咲ける石蕗の花★★★

●桑本栄太郎
【原句】水鳥の着水長き飛沫(しぶき)かな
水鳥の着水長き飛沫あげ★★★★(正子添削)
寒風のさざ波寄せる池の縁★★★
一画の風に残され蘆枯るる★★★

●小西 宏
短日の丘の広場にナイスシュート★★★
午後五時の冬深くあり枝の影★★★

裸木の林に透ける街灯★★★★
裸木の林に透ける街の灯に、枯れの美しさ、また逆に灯の美しさが思われる。(高橋正子)

●古田敬二
小春日や水琴窟の三拍子★★★
【原句】蝋梅の香りにピント会いにけり
蝋梅の香りのなかにピント会う★★★★(正子添削)
小春日や池に映るもの柔らかし★★★

1月15日(7名)

●古田敬二
今朝ついに向こうが透け見え冬木立★★★★
すっかり木の葉が散ってしまい、向こうが透けて見えるようになった。さっぱりとして潔い冬景色だ。(高橋正子)

はらからのそれぞれ小恙初電話★★★
お互いの息災喜ぶ初電話★★★

●小口泰與
荒れ狂う赤城や我は日向ぼこ★★★
黒雲の狼藉なるや冬の虹★★★
埒もなき風や湖鳰の笛★★★★

●内山富佐子
 スキー発祥の地金谷山でのレルヒ少佐の顕彰会
袴着け一本杖の滑りかな★★★
九十の母健やかに小正月★★★

明け方の霰に元気貰いけり★★★★
明け方、霰の音で目を覚ましたのであろう。霰が撥ね、弾ける音の勇ましさに、寒さを思うのではなく、元気を貰った若さ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
冬雲の切れ間に淡き日射しかな★★★
くだら野や畦に煙りの昇り居り★★★★
嵐去り宵のあおぞら日脚伸ぶ★★★

●多田有花
ショー終わり寒中の回転寿司を食ぶ★★★
ぬくぬくと寒の風雨を聞き目覚む★★★★
三角も丸も四角もおでん種★★★

●河野啓一
冬野にも古都の歴史や石畳★★★
切り株にひこばえ見えて霜の朝★★★
初場所の熱気テレビの画面にも★★★★

●小西 宏
球を蹴る冷たき風を朗らかに★★★★
球を蹴るときは、冷たい風もなんのその。球を蹴るのが楽しければ、冷たい風だって朗らかにしてしまう。楽しい熱気が伝わる。(高橋正子)

窓ガラス打つ雨粒の昼の冷え★★★
裸木の影丘に立つ夕を背に★★★