自由な投句箱/1月21日~31日

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今日の秀句/1月21日~31日

1月31日(2句)
★浮くたびに遠くなりたる鳰一羽/廣田洋一
鳰はかいつぶりとも言われて潜水して思わぬところに浮かび出る。その面白さ。この鳰は見ている作者からだんだん遠ざかっている。またこちらに浮いてくれるといいが。(高橋正子)
★梅探るふたたび来る寺苑かな/桑本栄太郎
探梅に出かけた寺苑。そのときは蕾だけか、咲いていても二、三輪と言うところだったのだろう。気になってまた再び訪ねると、前より咲いている。これからが楽しみな寺苑。(高橋正子)
1月30日(2句)
★風花や光るコップはステンレス/多田有花
風花とステンレスのコップの取り合わせ。新しい中性的な抒情がある。(高橋正子)
★歩ゆくほどに風花舞い来たる/桑本栄太郎
歩いていくほど、風花しきりに舞ってくる。次第につのる寒さに、やがてこちらも雪になりそうな気配に少しの不安と風花のうつくしさとが交錯している句。(高橋正子)
1月29日(1句)
★あけぼのや錫刷く如き雪浅間/小口泰與
冠雪の浅間山のあけぼの。冠雪は錫を刷くような色。この色が身上となった句で、厳しくも品格と湛えた浅間山の姿が詠まれている。(高橋正子)
1月28日(2句)
★寒の月はやも山野を離れおり/多田有花
月に気づいて空を見上げると、寒の月がはやくも山や野を離れて高く昇っている。寒月と山野との距離感によって、景色が厳しくも美しく思える。(高橋正子)
★コロナ禍を逃げて畑に大根引き/古田敬二
いつまでも収束しない新型コロナの感染。ひとときでも逃れたい気持ちだ。太陽の光がふんだんに注ぎ、風が吹いている大根畑。ここで大根を引くときはひととき、コロナ禍を忘れられる気がする。(高橋正子)
1月27日(1句)
★いきいきと下校の子らや日脚伸ぶ/多田有花
学校から帰る子供たちも、日脚が伸びると、たしかにのびのびとして、活発になる。いきいきとしてくる。空の天候に左右されながらも子供たちは順応し元気に過ごしているのだ。(高橋正子)
1月26日(2句)
★早梅や日差し豊かな丘の上/廣田洋一
丘の上の豊かな日差しには、だれも幸福感を覚える。早くも梅が開き、かすかに匂いを漂わせている。どこにでも見られる景色ながら、明るい先が見えるような句。(高橋正子)
★春近き風音耳に心地よし/古田敬二
耳は敏い。敬二さんは長く名古屋大学合唱団でご夫妻で活躍されているから、音には特に敏感ということもある。が、春近い風の音を聞きとめた嬉しさは、
だれにもあることだろう。耳に心地よい風の音は、まぎれもなく春風。寒中ながら春のような日があった。(高橋正子)
1月25日(2句)
★せんだんの実や冬鳥を集めおり/多田有花
せんだんの黄色い葉が落ちてしまうと丸い実が目に付くようになる。その実も冬になるとはじけ崩れかかった様を見せ、それを啄みに冬鳥たちが集まって、かわいらしい光景を見せてくれる。(高橋正子)
★廃校に猪猟師の集まれり/古田敬二
廃校となった校舎に猪狩りの猟師が集まって、猪狩りの準備や手順など話そうということだろう。猟師たちも通った山村の学校は村落の中心であり、なにかにつけて集まるところだった。廃校になった今もこうして集まる。(高橋正子)
1月24日(1句)
★土鍋炊く静かなリズム寒灯下/川名ますみ
寒い夜の灯は、あたりを静かに、そして暖かくしてくれる。灯の下にある土鍋がふつふつと煮え安らいだリズムを刻んでいる。(高橋正子)
1月23日(1句)
★木々の枝のしずく歌いぬ寒の雨/桑本栄太郎
冷たい寒の雨も、静かに耳とそばだてると、木々の枝の滴が透明に輝いて落ちるとき、小さな声で歌っているようにも思える。たのしい発想。(高橋正子)
1月22日(1句)
★父母遠し熱き蕎麦掻懐かしき/古田敬二
蕎麦掻は、それぞれの家庭の味があるようだ。熱いおつゆの蕎麦掻は少しずつ箸でちぎって食べるのだろうか。父母とすごした山里の暮らしが、あつあつの蕎麦掻とともに思い出される。(高橋正子)
1月21日(2句)
★砂煙上げし山風青木の実/小口泰與
砂煙をあげて吹く山風が青木の赤い実を取り巻く。赤く熟れた青木の実はそんな山風にも生き生きと輝いている。(高橋正子)
★探梅や北鎌倉に待ち合わせ/廣田洋一
北鎌倉には円覚寺をはじめ、東慶寺など文学にもゆかりの深い寺がたくさんあり、谷戸と呼ばれる谷に咲く梅の風情はゆかしい。その北鎌倉で待ち合わせて梅を探ろうといもの。(高橋正子)

1月21日~31日

1月31日(4名)
小口泰與
偽物と決まりし絵画北颪★★★
青首の嘴より魚や多々良沼★★★
八十の端を忘れ獣狩★★★
廣田洋一
鯉ゆるり鴨悠々や街の川★★★
川の面の光れる中を鳰番★★★
浮くたびに遠くなりたる鳰一羽★★★★
鳰はかいつぶりとも言われて潜水して思わぬところに浮かび出る。その面白さ。この鳰は見ている作者からだんだん遠ざかっている。またこちらに浮いてくれるといいが。(高橋正子)
桑本栄太郎
うつすらと嶺の明るき冬霞★★★
梅探ることし二度目の寺苑かな(原句)
「ことし二度目」が散文的、説明的と思えます。「ことし」はなくてよいと思います。
梅探るふたたび来る寺苑かな★★★★(正子)
探梅に出かけた寺苑。そのときは蕾だけか、咲いていても二、三輪と言うところだったのだろう。気になってまた再び訪ねると、前より咲いている。これからが楽しみな寺苑。(高橋正子)
背を屈む低き樹影や谷の梅★★★

多田有花

人参の太さ驚く日曜日★★★
寒の梅眺めておれば寺の鐘★★★★
寒中や進めトレイルランニング★★★
1月30日(4名)
小口泰與
ここのみへ日矢差しにけり冬菫★★★★
寒木瓜や真贋定かピカソの絵★★★
天の階(はし)あるや白鳥翔ちにけり★★★

廣田洋一

鴨来たる護岸整備の街の川(原句)
鴨来たり護岸整備の街の川★★★★(正子添削)
「鴨来たり」に感動があるように添削しました。
日溜りに鴨の並びし街の川★★★
鳰番行ったり来たり街の川★★★
多田有花
風花や光るコップはステンレス★★★★
風花とステンレスのコップの取り合わせ。新しい中性的な抒情がある。(高橋正子)
日が落ちて寒風ようやく治まりぬ★★★
マヨネーズで炒めし大根葉の昼餉★★★
桑本栄太郎
歩ゆくほどに風花舞い来たる★★★★
歩いていくほど、風花しきりに舞ってくる。次第につのる寒さに、やがてこちらも雪になりそうな気配に少しの不安と風花のうつくしさとが交錯している句。(高橋正子)
きょろきょろと辺り見渡し鳰潜く★★★
剪定のクレーン高く伸び来たる★★★
1月29日(4名)
小口泰與
あけぼのや錫刷く如き雪浅間★★★★
冠雪の浅間山のあけぼの。冠雪は錫を刷くような色。この色が身上となった句で、厳しくも品格と湛えた浅間山の姿が詠まれている。(高橋正子)
寒鴉瑠璃戸より差す朝日影★★★
白鳥へひろげし羽へ夕日かな★★★
廣田洋一
冬晴れや川底の石光りける★★★★
老夫婦杖をつきつき冬日和★★★
冬晴れの空青々と富士白し★★★
多田有花
寒風が夜半の町を吹き始め★★★★
窓鳴らし寒波が町にやってくる★★★
北風強く開けたるドアを押し戻す★★★

桑本栄太郎

寒風の突然来たり真夜の闇★★★
すすぎもの干すや眩しく日脚伸ぶ★★★
さざ波の水面きらめく春隣★★★★
1月28日(5名)
小口泰與
霜晴の産土の山弛びなき★★★★
この一年無味乾燥や春隣★★★
蝋梅や瑠璃へ音無き朝日差す★★★
廣田洋一
葉牡丹の渦に巻かれる日の光★★★★
葉牡丹の茎ゆっくりと立ち上がり★★★
葉牡丹や雨水ためて光りをり★★★
桑本栄太郎
水仙の三角公園満たしけり★★★★
枯萩の葉の縮れ居り坂を行く★★★
補助輪のキコキコ鳴りて春近し★★★
多田有花
カリンバの音の清らか冬深し★★★★
寒の月はやも山野を離れおり★★★★
月に気づいて空を見上げると、寒の月がはやくも山や野を離れて高く昇っている。寒月と山野との距離感によって、景色が厳しくも美しく思える。(高橋正子)
冬林檎すっぱり割れば蜜の色★★★

古田敬二

コロナ禍を逃げて畑に大根引き★★★★
いつまでも収束しない新型コロナの感染。ひとときでも逃れたい気持ちだ。太陽の光がふんだんに注ぎ、風が吹いている大根畑。ここで大根を引くときはひととき、コロナ禍を忘れられる気がする。(高橋正子)
春近し樹影の空に色濃くて★★★
一つだけ咲いているなり犬ふぐり★★★

1月27日(4名)
小口泰與
隼や瑠璃震わせる山の風
隼と瑠璃の関係がよくわからないのですが、隼の時として見せる羽の色でしょうか。
夕映えの沼へ目を張る鴨の陣★★★
浅間嶺の雪を迎えてきららかな★★★
廣田洋一
覗き込む庭の一隅冬菫★★★★
日溜りに三色映える冬菫★★★
冬菫散歩の足を止めけり★★★
桑本栄太郎
鉄塔の嶺に連なり日脚伸ぶ★★★★
送電線白く里へと寒緩む★★★
橡の芽のぬめり艶めく冬芽かな★★★
多田有花
ベランダで寒の朝日を浴びにけり★★★
いきいきと下校の子らや日脚伸ぶ★★★★
学校から帰る子供たちも、日脚が伸びると、たしかにのびのびとして、活発になる。いきいきとしてくる。空の天候に左右されながらも子供たちは順応し元気に過ごしているのだ。(高橋正子)
夕映えに虹をかけたり寒しぐれ★★★
1月26日(5名)
小口泰與
山風に寒菊映ゆる田居辺り★★★
煮凝や諏訪湖に舫う舟二葉★★★★
ばさと翔ちはらはらと来し寒雀★★★
廣田洋一
早梅の香りほのかに狭き園★★★
早梅や日差し豊かな丘の上★★★★
丘の上の豊かな日差しには、だれも幸福感を覚える。早くも梅が開き、かすかに匂いを漂わせている。どこにでも見られる景色ながら、明るい先が見えるような句。(高橋正子)
川越えの風に揺れをる冬木の芽★★★
多田有花
日を浴びて横顔りりし寒鴉★★★
赤き傘並んで帰る寒の雨★★★★
ぽつぽつと隣家の庭に寒の梅★★★

桑本栄太郎

冬耕の土くれ白く乾びけり★★★★
畝ごとのマルチ煌めき日脚伸ぶ★★★
午後よりの雨の予報や寒ゆるむ★★★
古田敬二
春近き風音耳に心地よし★★★★
耳は敏い。敬二さんは長く名古屋大学合唱団でご夫妻で活躍されているから、音には特に敏感ということもある。が、春近い風の音を聞きとめた嬉しさは、
だれにもあることだろう。耳に心地よい風の音は、まぎれもなく春風。寒中ながら春のような日があった。(高橋正子)
冬耕の頭上に鵯ピーと啼く★★★
一寸(いっすん)は高くなりたる落ち葉道★★★
1月25日(5名)
小口泰與
白鳥の三羽首振り鳴きにけり★★★
さゆる夜の星またたくや風の里★★★
夕映えの端山凍滝見に行かむ★★★★
廣田洋一
残りたる落葉掃きよせ焚火かな★★★
藷匂ひもう一つ足す焚火かな★★★
庭焚火バケツの水を傍に置き★★★★
桑本栄太郎
堰水の白き飛沫や蘆枯るる★★★
過疎と云う一村埋もる雪の峡★★★★
日脚伸ぶ嶺の茜の入日かな★★★
多田有花
寒中の川きらきらと流れおり★★★
春近き芝生に犬を駆けさせる★★★
せんだんの実や冬鳥を集めおり★★★★
せんだんの黄色い葉が落ちてしまうと丸い実が目に付くようになる。その実も冬になるとはじけ崩れかかった様を見せ、それを啄みに冬鳥たちが集まって、かわいらしい光景を見せてくれる。(高橋正子)
古田敬二
作業衣のボタン確かめ冬耕す★★★
獅子舞を見し宮の庭はるかなり★★★
廃校に猪猟師の集まれり★★★★
廃校となった校舎に猪狩りの猟師が集まって、猪狩りの準備や手順など話そうということだろう。猟師たちも通った山村の学校は村落の中心であり、なにかにつけて集まるところだった。廃校になった今もこうして集まる。(高橋正子)
1月24日(5名)
小口泰與
浅間山日を食む如し冬珊瑚★★★
人出無き歓楽街や狐火は★★★
大都会捨てばやとはや虎落笛★★★
廣田洋一
寒の雨乾きし土を黒く染め★★★★
公園の木々の鎮まり雪催★★★
ちんちんとお湯の湧く音雪催★★★
多田有花
めずらしや三日続きの寒の雨★★★
冬シャツに最適なのは山のシャツ★★★★
寒の雨に降られ週末家籠り★★★

桑本栄太郎

青空に音符のように冬木の芽★★★
一村の底ひとなりぬ峡の雪★★★
枯草のそこだけ日差す明かりかな★★★
川名ますみ
土鍋炊く静かなリズム寒灯下★★★★
寒い夜の灯は、あたりを静かに、そして暖かくしてくれる。灯の下にある土鍋がふつふつと煮え安らいだリズムを刻んでいる。(高橋正子)
寒灯土鍋くつくつ音立つる★★★
話しつつ韮雑炊の灰汁すくう★★★
1月23日(4名)
小口泰與 
白鳥と一会のけふや夕日影★★★
群青の空へ翔けたる小白鳥★★★★
白鳥の鴨を抛るや夕日影★★★

廣田洋一
悴む手一息かけて出かけたり★★★
悴む手小銭を出すに手間取りぬ★★★
悴む手大きく開き日を浴びぬ★★★★

多田有花 
川岸の白く見えたり渇水期★★★★
乾きたる枯野に雨の降り始む★★★
春近し眠りは深し雨の朝★★★

桑本栄太郎
寒の水飲むとき眼瞑りけり★★★
木々の枝のしずく歌いぬ寒の雨★★★★
冷たい寒の雨も、静かに耳とそばだてると、木々の枝の滴が透明に輝いて落ちるとき、小さな声で歌っているようにも思える。たのしい発想。(高橋正子)
部屋干しのハンガー並ぶ寒の雨★★★
1月22日(5名)
小口泰與 
頬被りとかぬ同士の会釈かな★★★
破顔して雪山下りし漢かな★★★
朝日受く巨木の狭間寒紅梅★★★★

多田有花 
朽野にピンクの車停まりおり★★★
寒風になびくタオルを干しにけり★★★
大寒の快晴に立つ姫路城★★★★

桑本栄太郎 
雨雲の峰にとどまり寒の雨★★★
水滴の枝にきらめく寒の雨★★★
木々の枝に滴の寒の底ひかな★★★ 

廣田洋一 
柿の木のまっさらになり春隣
探梅や北鎌倉の待ち合わせ(原句)

探梅や北鎌倉に待ち合わせ★★★★(正子添削)
久し振りと挨拶交す春隣★★★

古田敬二 
手に取りて北京楓の紅葉かな★★★
落葉踏む妻の歩幅の小さくて★★★

父母遠し熱き蕎麦掻懐かしき★★★★
蕎麦掻は、それぞれの家庭の味があるようだ。熱いおつゆの蕎麦掻は少しずつ箸でちぎって食べるのだろうか。父母とすごした山里の暮らしが、あつあつの蕎麦掻とともに思い出される。(高橋正子)
1月21日(4名)
小口泰與  
冬ばらの力つきたる花様かな★★★
砂煙上げし山風青木の実★★★★
砂煙をあげて吹く山風が青木の赤い実を取り巻く。赤く熟れた青木の実はそんな山風にも生き生きと輝いている。(高橋正子)
あえかなる水仙へ差す朝日かな★★★
廣田洋一
梅探る散歩の足を延ばしけり★★★
すれ違ふ人に声掛け探梅行★★★
探梅や北鎌倉の待ち合わせ(原句)
探梅や北鎌倉に待ち合わせ★★★★(正子添削)
北鎌倉には円覚寺をはじめ、東慶寺など文学にもゆかりの深い寺がたくさんあり、谷戸と呼ばれる谷に咲く梅の風情はゆかしい。その北鎌倉で待ち合わせて梅を探ろうといもの。(高橋正子)

桑本栄太郎
トランプのゲーム終はりぬ寒晴るる★★★
病院の帰りは歩む寒の晴れ★★★
稜線の黒々うねり寒夕焼★★★

多田有花
青空と桜冬芽を仰ぎけり★★★★
ジャケットを白衣に替えて仕事かな★★★
薄けれどこの毛布実に暖かし★★★

自由な投句箱/1月11日~20日(2021年)

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主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan100
◆月例ネット句会
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d
◆俳句日記/高橋正子◆
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今日の秀句/1月11日~20日

1月20日(2句)
★大寒の天に伸び行く梢かな/桑本栄太郎
大寒という寒さのなかで、天に伸びる梢が快い。寒さで縮こまりがちな人の背筋も伸びるようだ。(高橋正子)
★大寒や御嶽伊吹鈴鹿峰/古田敬二
大寒の厳しい寒さと対峙するように、御嶽、伊吹、鈴鹿峰の雄峰が聳えている。それらが見える位置に立つという力強さが素晴らしい。(高橋正子)
1月19日(1句)
★さざ波に舫いておりぬ鴨の陣/桑本栄太郎
鴨が陣を張っている。さざ波に揺れて、波まかせに一陣が揺れている。その一体感は、まるで舟が舫うようである。(高橋正子)
1月18日(2句)
★湖へ径真直ぐや雪催/小口泰與
湖へ真っすぐ伸びている径。今にも雪が舞いそうな底冷えの径。径の真っすぐさが、印象に残る。(高橋正子)
★鍬はじめ大根取りて帰りけり/古田敬二
鍬はじめは、大根を取って帰る。寒いときの大根はありがたいながら普段の野菜。普段の暮らしの中に、畑に旬の大根がある豊かさがいい。(高橋正子)
1月17日(1句)
★寒暁や阪神淡路震災忌/多田有花
26年前の1月17日、のちに阪神淡路大震災と呼ばれる大地震が起こった。
そのとき、松山にいた私たちは、高速道路が曲がり、橋からトラックが落ちかかった映像や、刻々増える死者の数に驚いてテレビを見ていた。数日して被害者となっ若い女性の棺が帰った。私にして、そんなことが思い出される「寒暁」だ。(髙橋正子)
1月16日(2句)
★探梅の寺苑に来たり大原野/桑本栄太郎
京都大原野には、桜や梅の名所といわれなくても、花のある寺もが多くあることだろう。探梅で歩くうちに寺苑に来た。梅だけでない、寺苑の良さにも魅了されたことだろう。(高橋正子)
★三日月へ寒中の花火あがりけり/多田有花
寒中の花火。厳しくも澄み切った空気に、打ち上げられた花火が印象強く目に入る。三日月も鋭さを増して寒中の厳しさを見せている。寒中の花火の良さ。(高橋正子)
1月15日(2句)
★あけぼのの赤城榛名の吹雪けり/小口泰與
赤城山、榛名山、どちらを見ても吹雪いている。あけぼの雄大な景色がいい。(高橋正子)
★どんど火の社に高く大原野/桑本栄太郎
どんど焼き、地方では、多く、河原や田んぼなど広い場所で行われるが、この句では、紫式部が氏神と崇めた大原野神社のどんど焼きのようだ。境内が広くどんどの火も社に高く上がったのである。高く上がれば願いが叶うという話もある。「社に高く大原野」で終止したのがいい。(髙橋正子)
1月14日(1句)
★竜の玉探して上る寺の坂/古田敬二
寺の坂は日差して暖かい。坂の縁には龍のひげが植えられているので、坂を上りながら、青く光る実、龍の玉を探しながら上った。子供のころの遊びに、龍の玉を麦藁の先を開いてのせ、息を吹いて躍らせるものがあった。遊び心がたのしい。(高橋正子)
1月13日(1句)
★冬芽立つ桜の枝を愛しめり/廣田洋一
俳人にとって、桜の楽しみは花の開花だけではない。冬芽が立つと喜び、芽が膨らみ、蕾が膨らみ、蕾の先に色を見ては喜ぶ。今は冬芽が立った桜の枝がなんとも愛しいのだ。(高橋正子)
1月12日(2句)
★枯葉坂いつも離れて妻が来る/古田敬二
枯葉の降り積もった坂道を妻と上っている。今日に限らずなのだが、妻はいつも少し離れて来る。妻には妻の見るところがあるのか、歩幅が違ってそうなるのか。付きすぎるわけでも、離れすぎるわけでもない距離。枯葉坂のこの距離感の淡さがいい。(高橋正子)
★明け遅し雪しんしんと降る朝は/多田有花
関西や日本海沿岸に大雪が降った朝なのか。雪はしんしんと降り、そんな朝は、明けるのが遅い。白とうすねず色の雪の朝が日本画のように美しい。(高橋正子)
1月11日(1句)
★夕映えの沼を綾なす小白鳥/小口泰與
夕映えの沼に小白鳥が群れをなして浮かんでいる。小白鳥によって、夕映えの沼に綾が生まれる。その時を逃さず句にした。(高橋正子)

1月11日~20日

1月20日(4名)
小口泰與
室咲や祝辞短き程良かれ★★★
冬桜奇岩巨石の妙義山★★★★
固まりし雀黒ぐろ枯桜★★★
廣田洋一
大寒や庭の草々揺れてをり★★★
大寒や空青々と澄みにけり★★★
新築の庭の植木や春隣★★★★
桑本栄太郎
山の端の宵のみずいろ寒雷忌★★★
大寒の天に伸び行く梢かな★★★★
大寒という寒さのなかで、天に伸びる梢が快い。寒さで縮こまりがちな人の背筋も伸びるようだ。(高橋正子)
早梅のうすきピンクや丘公園★★★
古田敬二
大寒や朝の光の色濃くて★★★
大寒の朝くっきりと御嶽山★★★
大寒や御嶽伊吹鈴鹿峰★★★★
大寒の厳しい寒さと対峙するように、御嶽、伊吹、鈴鹿峰の雄峰が聳えている。それらが見える位置に立つという力強さが素晴らしい。(高橋正子)
1月19日(4名)
小口泰與
大利根の古き旅籠や寒蜆★★★★
寒梅や沼に綾なす夕日影★★★
蝋梅や朝日いただく榛名富士★★★
廣田洋一
寒の雨細かき粒の吹かれをり★★★
鯉二匹浮かび来たれる寒の雨★★★
荒畑のしっとり濡れし寒の雨★★★★
多田有花
仕事する行く一月を追いかけて★★★
寒卵茹でてふたつに割りにけり★★★
マフラーのまま朝の車を運転す★★★

桑本栄太郎

吹きすさぶ風に狂いぬ飛雪かな★★★
さざ波に舫うようなり鴨の陣(原句)
さざ波に舫いておりぬ鴨の陣★★★★(正子添削)
鴨が陣を張っている。さざ波に揺れて、波まかせに一陣が揺れている。その一体感は、まるで舟が舫うようである。(高橋正子)
群がりて地を啄むみぬ寒すずめ★★★
1月18日(4名)
廣田洋一
公園の木々のびやかに日脚伸ぶ★★★
いつも通り終えたる散歩日脚伸ぶ★★★
平幕の勝ち進みたり日脚伸ぶ★★★★
小口泰與
日当りに犬眠りけり巴焼★★★
天と地の難事次次虎落笛★★★
湖へ径真直ぐや雪催★★★★
湖へ真っすぐ伸びている径。今にも雪が舞いそうな底冷えの径。径の真っすぐさが、印象に残る。(高橋正子)
桑本栄太郎
寒風の地道にありぬ靴の跡★★★
堰水の七段落つや蘆枯るる★★★
寒晴れやテニスコートの音弾む★★★

古田敬二

子供らの歓声公園の枯れケヤキ★★★
約束のふくらみこぶしの冬花芽★★★
鍬はじめ大根取りて帰りけり★★★★
鍬はじめは、大根を取って帰る。寒いときの大根はありがたいながら普段の野菜。普段の暮らしの中に、畑に旬の大根がある豊かさがいい。(高橋正子)
1月17日(4名)
小口泰與
白鳥の鋭声つづりて翔ちにけり★★★
また一人寒鮒釣に来たりけり★★★
白銀の雪の浅間へ朝日かな★★★
廣田洋一
冷酒を水と間違へ初笑★★★
久しぶり出会ひし人と初笑★★★
小吉の御神籤引きて初笑★★★★
桑本栄太郎
ともし火の「がんばろう」とや阪神忌★★★
散策の出鼻をくじく寒の雨★★★
雪雲の垂れ込め重く蓋いけり★★★
多田有花
寒の水で朝のコーヒーを入れる★★★
寒暁や阪神淡路震災忌★★★★
26年前の1月17日、のちに阪神淡路大震災と呼ばれる大地震が起こった。
そのとき、松山にいた私たちは、高速道路が曲がり、橋からトラックが落ちかかった映像や、刻々増える死者の数に驚いてテレビを見ていた。数日して被害者となっ若い女性の棺が帰った。私にして、そんなことが思い出される「寒暁」だ。(髙橋正子)
一月の仕事はポモドーロテクニック★★★
1月16日(5名)
古田敬二
メジロ来る自慢の胸を反らせて来る★★★★
飛騨川の瀬高変らず初山河★★★
綿虫と遊び一日早く閉じ★★★
廣田洋一
畝一つ取り残されて葱太し★★★
小さき庭並び立ちたる葱五本★★★
大根の首をさらせる日向畑★★★★
小口泰與
白鳥の水脈の綾なす夕日影★★★★
争うや脚を狙いて小白鳥★★★
白鳥へひと筋の日矢羽ばたけり★★★
桑本栄太郎
探梅の寺苑に来たる大原野(原句)
探梅の寺苑に来たり大原野★★★★(正子添削)
京都大原野には、桜や梅の名所といわれなくても、花のある寺もが多くあることだろう。探梅で歩くうちに寺苑に来た。梅だけでない、寺苑の良さにも魅了されたことだろう。(高橋正子)
せつかちは吾の家系や梅探る★★★
新月のとがりて在りぬ寒の暮れ★★★
多田有花
窓からの風に春の遠からじ★★★
音もなく降り始めたり寒の雨★★★
三日月へ寒中の花火あがりけり★★★★
寒中の花火。厳しくも澄み切った空気に、打ち上げられた花火が印象強く目に入る。三日月も鋭さを増して寒中の厳しさを見せている。寒中の花火の良さ。(高橋正子)
1月15日(3名)
小口泰與
あけぼのの赤城榛名の吹雪けり★★★★
赤城山、榛名山、どちらを見ても吹雪いている。あけぼの雄大な景色がいい。(高橋正子)
ひと筋の夕日の綺羅やかいつぶり★★★
濃紺の榛名九嶺寒紅梅★★★
廣田洋一
テレビ寄席名人芸に初笑★★★
整然と畝の並びし葱畑★★★★
引き売りの主より買ひし葱一把★★★
桑本栄太郎
連れもつて妻の出掛けや女正月★★★
どんど火の社に高く大原野★★★★
どんど焼き、地方では、多く、河原や田んぼなど広い場所で行われるが、この句では、紫式部が氏神と崇めた大原野神社のどんど焼きのようだ。境内が広くどんどの火も社に高く上がったのである。高く上がれば願いが叶うという話もある。「社に高く大原野」で終止したのがいい。(髙橋正子)
山際の黒きうねりや寒夕焼け★★★
1月14日(4名)
古田敬二
青空へクロガネモチの実の赤し★★★
竜の玉探して上る寺の坂★★★★
寺の坂は日差して暖かい。坂の縁には龍のひげが植えられているので、坂を上りながら、青く光る実、龍の玉を探しながら上った。子供のころの遊びに、龍の玉を麦藁の先を開いてのせ、息を吹いて躍らせるものがあった。遊び心がたのしい。(高橋正子)
コロナ禍や余白の多き新暦★★★

小口泰與

浅間越え赤城越え来る鴨の陣★★★
風花や木へかたまりし群雀★★★★
餌まくや真鴨大鷭翔けにける★★★
廣田洋一
夢に見し蛇のご利益竜の玉★★★
一茎に三輪開き水仙花★★★
浮氷日を返しつつ動きをり★★★★
桑本栄太郎
老犬と老婆連れ行く寒ゆるむ★★★
さざ波の寄するばかりや冬の池★★★
曲がり根の浮かび地割れや冬ざるる★★★
1月13日(4名)
廣田洋一
水仙や並びて門を向きてをり★★★
先っぽの少し色付く冬芽かな★★★
冬芽立つ桜の枝を愛しめり★★★★
俳人にとって、桜の楽しみは花の開花だけではない。冬芽が立つと喜び、芽が膨らみ、蕾が膨らみ、蕾の先に色を見ては喜ぶ。今は冬芽が立った桜の枝がなんとも愛しいのだ。(高橋正子)
小口泰與
見張りせる上枝の二羽の寒雀★★★
山風の秀づ上州麦芽ぐむ★★★
笹鳴や下校の子らの家遠し(原句)
笹鳴や下校の子らに家遠し★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
クレーン車に乗りて作業や寒晴るる★★★
きらきらと光る梢や枯銀杏★★★
冬耕の畝の乾びて日差しけり★★★
多田有花
大霜やフロントガラスにぬるま湯を★★★
夕映えの白鷺城や日脚伸ぶ★★★
日脚伸ぶ幼子ジャンプを繰り返す★★★
1月12日(5名)
小口泰與
風つのる牡丹冬芽へ朝日かな(原句)
風つのり牡丹冬芽へ朝日かな★★★★(正子添削)
リズム打つ霰や森の丸太小屋★★★★
燃えさかる紅蓮の炎どんどかな★★★
廣田洋一
草の影光あふるる竜の玉★★★★
草の葉のしずく溜め込み竜の玉★★★
散歩道流れる川や竜の玉★★★
古田敬二
水痩せて見下ろす冬の飛騨の川★★★
落ち葉降る寺迄緩き坂上る★★★
枯葉坂いつも離れて妻が来る★★★★
枯葉の降り積もった坂道を妻と上っている。今日に限らずなのだが、妻はいつも少し離れて来る。妻には妻の見るところがあるのか、歩幅が違ってそうなるのか。付きすぎるわけでも、離れすぎるわけでもない距離。枯葉坂のこの距離感の淡さがいい。(高橋正子)
桑本栄太郎
登校の一列つづく雪の朝★★★★
朝からの雪がみぞれに枝の先★★★
雪雲の峡にとどまる日暮れかな★★★
多田有花
明け遅し雪しんしんと降る朝は★★★★
関西や日本海沿岸に大雪が降った朝なのか。雪はしんしんと降り、そんな朝は、明けるのが遅い。白とうすねず色の雪の朝が日本画のように美しい。(高橋正子)
瀬戸内の雪は優しきままに溶け★★★
ゆったりと流れるピアノ日脚伸ぶ★★★
1月11日(4名)
小口泰與
夕映えの沼を綾なす小白鳥★★★★
夕映えの沼に小白鳥が群れをなして浮かんでいる。小白鳥によって、夕映えの沼に綾が生まれる。その時を逃さず句にした。(高橋正子)
風垣やチワワ二匹の大鼾★★★
冬雲雀赤城のすそ野眼間に★★★
廣田洋一
乳母車赤児の声に初笑★★★
茜空狭まり行きぬ寒夕焼★★★
寒夕焼浅瀬の波をきらめかせ★★★
スカイプの孫とつなぎ居る鏡割★★★
山の端のうすき茜や寒夕焼け★★★
赤き実を食べ過ぎたのね雪うさぎ★★★

自由な投句箱/1月1日~10日(2021年)

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今日の秀句/1月1日~10日(2021年)

1月8日(1句)
★青空や風ごうごうと寒波急/多田有花
寒波が急に訪れ、今回は北陸や秋田は大雪となった。雪が来なくても、青空に風がごうごうと鳴る。急に来襲した寒波のすざましさ。(高橋正子)
1月7日(1句)
★山風を含む松取る夕べかな/小口泰與
門松や松飾を取る夕べ。7日に取るところもあれば、14日に取るところもある。松は、そこにあるままに、山風に吹かれているが、それを下す。松過ぎの一抹のさびしさが伝わる。(高橋正子)
1月6日(1句)
★干上がりし畔川の底笹子鳴く/小口泰與
畔川も干上がって、冬ざれの景色を目の当たりにするようになった。そんな冬ざれのなかにもチャッチャッと、笹子の鳴く声が聞こえる。鴬がそばにいるのは、嬉しい。(高橋正子)
1月5日(3句)
★大利根の流れ清かや福寿草/小口泰與
大利根川の流れに沿うところの自生する福寿草か。寒さに耐え、かたまって、日に向くように花を開く様子は、見る人をあたたかい思いにさせてくれる。(高橋正子)
★凧揚がり糸巻きを子に渡しけり/廣田洋一
凧をめったに上げない最近の子供たち。なかなかうまく風を捕まえられないので凧が揚がらない。代わって凧揚げに。凧があがったところで、凧の糸巻きを子に返してやる。子ども時代に帰ったような愉快なひとときと、人柄のやさしさ。(高橋正子)
★小寒の街を小径を自転車で/多田有花
いよいよ寒くなった街。自転車で、街を走る。小径をちょこちょこと走る。いろんな景色、いろんな人、いろんなものを見て、変わって楽しいもの。(高橋正子)
1月4日(1句)
★トラックの変哲も無き初荷かな/小口泰與
昨今の初荷は、特に飾り立てることもないが、新年初めて送り出し、また、受け入れる荷は、初荷に違いない。変哲もない初荷に、心のうちでは、しっかりと今年の幸先よいことを願っている。(高橋正子)
1月3日(1句)
★一斉に草木の息吹く初明り
初明かりが差すと、一斉に息吹く草木に、年の改まったことを思う。草木に息吹を感じたのは、新年のはつらつとした作者の精神そのもの。すがすがしい句。(高橋正子)
1月2日(1句)
★福寿草今年は子らの帰省せぬ/小口泰與
今年は新型コロナウィルスの感染拡大で、年末年始を静かに過ごすよう、政府や知事から要請されている。帰省を控えた人たちも多い。子や孫たちが正月に帰省しないのは、さびしいが、時が時だけに止むを得ない。そんな中この句の「福寿草」は、しずかな豊かさを象徴しているようで、心に沁みてくる。(高橋正子)
1月1日(2句)
★初御空富士の真白さ際立てり/廣田洋一
作者の住まうところからは、冠雪の富士が望める。初空に真っ白な富士の嶺を眺め、年の新しさにめでたくも、粛然とした気持ちになられたことだろう。(高橋正子)
★「紅白」を終えて峰より除夜の鐘/桑本栄太郎
NHKの「紅白歌合戦」は、大晦日の恒例番組となって久しい。「紅白」と省略して呼ばれたりしている。その「紅白」が終わると峰から除夜の鐘が聞こえて来る。京都嵯峨にお住いの作者ならではの、峰よりの除夜の鐘の響きに古都のゆかしさが忍ばれる。(高橋正子)

1月1日~10日(2021年)

1月9日(4名)
小口泰與
山風に声かすれたる達磨市★★★星
米撒くや我の先へと寒雀★★★
悪声を投げかく朝の寒鴉★★★
廣田洋一
書初の墨痕淋漓万葉歌★★★★
書初や希望を込めて収束と★★★
寒鯉の口を開けども波立たず★★★
桑本栄太郎
暁闇の早起き妻のなずな粥★★★
夕暮れの群青空や寒波来る★★★
ふるさとの夜は長きや雪の雷★★★★

多田有花

厳寒の朝厳かに明けてくる★★★★
風荒れて光明るし寒四郎★★★
寝る前の布団へ白金懐炉かな★★★
1月8日(3名)
小口泰與
白鳥の水脈の文様夕日影★★★★
ひと筋の没日の沼や小白鳥★★★
町医者の待合室の隙間風★★★
廣田洋一
輪飾りを次々取りて廻りけり★★★
動かざる寒鯉に日の差しにけり★★★
寒鯉に御神酒含ませ厄払い★★★
多田有花
青空や風ごうごうと寒波急★★★★
寒波が急に訪れ、今回は北陸や秋田は大雪となった。雪が来なくても、青空に風がごうごうと鳴る。急に来襲した寒波のすざましさ。(高橋正子)
雲なき夜明けベランダの蛇口凍て★★★
着膨れてやじろべえを真似てみる★★★
1月7日(3名)
小口泰與
達磨市赤城は風を放ちけり★★★
風も無き赤城榛名や薺打★★★
山風を含む松取る夕べかな★★★★
門松や松飾を取る夕べ。7日に取るところもあれば、14日に取るところもある。松は、そこにあるままに、山風に吹かれているが、それを下す。松過ぎの一抹のさびしさが伝わる。(高橋正子)
廣田洋一
宝船風運ぶ帆も装へり★★★★
たまたまに齧れる俳句嫁が君★★★
戯れに神棚に乗る嫁が君★★★
多田有花
昼は背に夜は布団に懐炉あり★★★
ほこほこと日差しの中に山眠る★★★★
顔の横冷たき耳がついている★★★
1月6日(3名)
小口泰與
冬鷺の田へ目を向け動かざる★★★
干上がりし畔川の底笹子鳴く★★★★
畔川も干上がって、冬ざれの景色を目の当たりにするようになった。そんな冬ざれのなかにもチャッチャッと、笹子の鳴く声が聞こえる。鴬がそばにいるのは、嬉しい。(高橋正子)
赤城晴風に包まる寒雀★★★
廣田洋一
水仙の揃ひて日差し浴びてをり★★★★
4日の投句の「水仙の揃ひて日を浴びてをり」の方が、字足らずですが、いいです。この句の字足らずは、課題としておいてください。
寒鯉の二匹寄り添ひ動かざる★★★
寒鯉の身を潜めたる岩の影★★★
多田有花
手袋外すタッチパネルに触れるため★★★
松の内午後から風の少し出る★★★★
寒晴れや川波きらきらと光る★★★
1月5日(3名)
小口泰與
夕影の沼へひと筋初写真★★★
大利根の流れ清かや福寿草★★★★
大利根川の流れに沿うところの自生する福寿草か。寒さに耐え、かたまって、日に向くように花を開く様子は、見る人をあたたかい思いにさせてくれる。(高橋正子)
裏白や妻とそろいの服装に★★★
廣田洋一
乾杯を省きし仕事始めかな★★★
凧揚げる風柔らかく子らの声★★★
凧揚がり糸巻きを子に渡しけり★★★★
凧をめったに上げない最近の子供たち。なかなかうまく風を捕まえられないので凧が揚がらない。代わって凧揚げに。凧があがったところで、凧の糸巻きを子に返してやる。子ども時代に帰ったような愉快なひとときと、人柄のやさしさ。(高橋正子)
多田有花
小寒や兵庫はかまぼこ発祥地★★★
小寒の街を小径自転車で(原句)
小寒の街を小径を自転車で★★★★
いよいよ寒くなった街。自転車で、街を走る。小径をちょこちょこと走る。いろんな景色、いろんな人、いろんなものを見て、変わって楽しいもの。(高橋正子)
通院も一年を超ゆ寒の入★★★
1月4日(3名)
小口泰與
乗初や山の社の静寂なる★★★
トラックの変哲も無き初荷かな★★★★
昨今の初荷は、特に飾り立てることもないが、新年初めて送り出し、また、受け入れる荷は、初荷に違いない。変哲もない初荷に、心のうちでは、しっかりと今年の幸先よいことを願っている。(高橋正子)
晴着着てお酌の妻のかいがいし★★★
廣田洋一
文机また散らばりぬ三が日★★★★
水仙の揃ひて日を浴びてをり★★★★
中七の字足らずが気になります。いい句だけに惜しいです。
水仙の蕾ふくらみ丈比べ★★★
多田有花
よく冷えて穏やかに過ぎ三が日(原句)
冷え込んで穏やかに過ぎ三が日★★★★(正子添削①)
三が日よく冷え穏やかに過ぎぬ(正子添削②)
「よく晴れて」の場合なら、すぐ天候のこととわかるのですが、「よく冷えて」で、天候以外のことがまず、浮かんできます。
日常へ人みな戻る四日かな★★★
新しき塵を吸い取り初掃除★★★
1月3日(3名)
小口泰與
輪飾りの揺れし床の間小犬かな★★★
静かなる夫婦と犬や鏡餅★★★
行きかわすプールの中の年賀かな★★★★
廣田洋一
一斉に草木の息吹く初明り★★★★
初明かりが差すと、一斉に息吹く草木に、年の改まったことを思う。草木に息吹を感じたのは、新年のはつらつとした作者の精神そのもの。すがすがしい句。(高橋正子)
福寿草盃のごと黄金色★★★
いつもより人出少なき初詣★★★
多田有花
帰省子と卓を囲める二日かな★★★
洗濯機回す三日の清々し★★★
初暦スマホアプリをクリックす★★★★
1月2日(3名)
小口泰與
福寿草今年は子らの帰省せぬ★★★★
今年は新型コロナウィルスの感染拡大で、年末年始を静かに過ごすよう、政府や知事から要請されている。帰省を控えた人たちも多い。子や孫たちが正月に帰省しないのは、さびしいが、時が時だけに止むを得ない。そんな中この句の「福寿草」は、しずかな豊かさを象徴しているようで、心に沁みてくる。(高橋正子)
日を受けし雪の浅間の淑気かな★★★★
日本酒も餡子も好きやお正月★★★
廣田洋一
月皓皓初日の前の一時を★★★★
数へ年八十路となりぬ初明り★★★
図らずも手を合わせたり初明り★★★★
多田有花
新年の挨拶すべてSNS★★★
穏やかに二日の光さしにけり★★★
パソコンで写真見ている二日かな★★★
※桑本栄太郎さんは、パソコンの不調で投句できないとのことです。Faxでのご投句をお勧めしています。(高橋正子)
1月1日(4名)
小口泰與
初浅間坂東太郎滔滔と★★★
赤赤と白き浅間へ朝日かな(原句)
赤々と雪の浅間へ朝日かな★★★★(正子添削)
青空へ長きすそ野や初景色★★★

廣田洋一

雑煮椀先ずは遺影に供へけり★★★
ひたすらに青く光れる初御空★★★
初御空富士の白さの際立てり(原句)
初御空富士の真白さ際立てり★★★★(正子添削)
作者の住まうところからは、冠雪の富士が望める。初空に真っ白な富士の嶺を眺め、年の新しさにめでたくも、粛然とした気持ちになられたことだろう。(高橋正子)
多田有花
元日の未明の空に月残り★★★
沈みゆく月に差したり初日影★★★
明けの空鳴きかわしつつ初鴉★★★★

桑本栄太郎

紅白の終えて峰より除夜の鐘(原句)
「紅白」を終えて峰より除夜の鐘★★★★(正子添削)
NHKの「紅白歌合戦」は、大晦日の恒例番組となって久しい。「紅白」と省略して呼ばれたりしている。その「紅白」が終わると峰から除夜の鐘が聞こえて来る。京都嵯峨にお住いの作者ならではの、峰よりの除夜の鐘の響きに古都のゆかしさが忍ばれる。(高橋正子)
一天の曇りのなきや年明くる★★★
あたらしき物を身につけ年迎ふ★★★