★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて 正子
陽の光りを浴びて、冬を越す辛夷の芽のいのちが生き生きと輝いています。やがて春にほころぶ辛夷を思い、未来への希望を明るく抱かせてくれる御句です。(藤田洋子)
○今日の俳句
一路澄み石鎚見ゆる寒の晴/藤田洋子
行く手の一路の道が澄んで、その先に雪を冠った石鎚山が見える。寒晴れがくれたすっきりと、晴れやかな景色。(高橋正子)
○冬桜

[冬桜/横浜日吉本町]
★冬櫻飛ぶ鳥の影当りけり 宮津昭彦
★冬桜日当りて花増えてきし/大串章
★一葉の晩年日記冬桜/深見けん二
★冬桜咲いては空を曇らしむ/有働亨
★咲きつづくほかなき白さ冬桜/山田弘子
★冬ざくら朝日しづかに射しわたる/阿部ひろし
★陵や静もる朝の冬桜/青木政江
★冬桜日差せば母と在るごとし/松田雄姿
★汲みたての水ほのめくや冬桜/三橋迪子
★この深き空の青さよ冬桜/西山美枝子
★冬桜咲きいて空の美しき/高橋信之
★冬桜風受けやすき丘に咲く/高橋信之
★冬桜見ている眼を風が過ぐ/高橋正子
★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子
冬桜は、元日桜、寒緋桜などの別名がある。桜にはめずらしく緋色をしているが、一般には、冬にさく桜を冬桜と呼んでいる。
冬桜として印象が深いのが、鎌倉報国寺にあるもので、緋色ではなく、桜色をしたもの。外国人が、枝にほちほちと咲いた小さな桜をいとおしそうに、目を近づけて見ていた。そのあと、私も近づいて眺めたが、消え入りそうに、でも確かに咲いている。あまり多く花をつけないのが見どころであろう。背景に青い空があると、いかにも、儚く美しい。
冬桜は、バラ科サクラ属の落葉高木で、学名は Prunus x parvifolia cv.Parvifolia。「オオシマザクラ(P. speciosa)」と「マメザクラ(P. incisa)」との種間交雑種と考えられている。江戸時代の後期から栽培され、「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれている。冬桜と同様に、秋から冬にかけて咲く桜に「十月桜」がある。冬桜と同じバラ科サクラ属。秋や冬に、「季節はずれに桜が咲いてるな」というときは、この十月桜であることが多い。十月桜も含めて、秋から冬にかけて咲く桜のことを総称して「冬桜」と呼ぶこともある。
◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・百両(からたち)・千両」(東京白金台・国立自然教育園)

★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子
寒空に冬桜が咲いている。見上げれば、ほつほつと咲く花はどれも雲と同化しているようにみえ、心は温まります。 (祝恵子)
○今日の俳句
ラディッシュの水を通せばなお美し/祝恵子
ラディッシュの紅色はそれ自体で美しいが、水に放てば、さらに紅色がみずみずしく美しくなる。小さなことだが、これも生活の楽しさ。(高橋正子)
○辛夷の花芽

[辛夷の花芽/横浜日吉本町(2013年1月12日)][辛夷の花蕾/横浜日吉本町(2012年3月25日)]
★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の白の際立ち花辛夷/鷹羽狩行
★朝空のすでにおほぞら花辛夷/林誠司
★墓のみとなりしふるさと辛夷咲く/山田暢子
★夕空にさざなみたちぬ花こぶし/貞吉直子
★こぶし咲く坂登りゆくバスの数/辻のぶ子
★花辛夷やまびこゆきてかへるかな/坂田和嘉子
★花辛夷朝の光りにふるへ咲く/勝又寿ゞ子
★人を待つ辛夷の光見上げつつ/高橋正子
コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園2月14日)
辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。(ブログ「山野草、植物めぐり」より)
コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)は、モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。
◇生活する花たち「蝋梅・冬桜・さんしゅゆの実」(横横浜・四季の森公園)

font size=”3″> 早稲田大学
★学生喫茶ジャズと会話と暖房と 正子
最近の様子はよく知らないが、寒いこの季節暖房のよく聞いた喫茶店に学生たちが大勢やってきておしゃべりに興じている。店内に流れるジャズのりずむが若者たちの熱気を投影しているようだ。平易な詠みでこの季節の風物がたくみに表現されている。共感を呼ぶ御句と思います。 (河野啓一)
○今日の俳句
寒晴れの朝日に鵯のやって来て/河野啓一
「朝日に鵯がやって来る」というのがいい。力強く鳴く鵯の声と朝日の明るさが生気に満ちている。(高橋正子)
○寒林

[寒林/横浜・四季の森公園] [寒禽/横浜・四季の森公園]
★冬木立いかめしや山のたたずまひ 才磨
★斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村
★郊外に酒屋の蔵や冬木だち 召波
★冬木だち月骨髄に入る夜かな 几董
★冬木立烏くひきるかづらかな 闌更
★寒林の日すぢ争ふ羽虫かな/杉田久女
★学園の寒林の中牧師棲む/松本たかし
★牛乳の噴きこぼれをり冬木立/長谷川櫂
★野の入日燃えて寒林の道をはる/水原秋桜子
★寒禽となり了んぬる鵙一羽/竹下しづの女
★寒禽の叫び古墳の揺るるほど/大串章
★寒禽の声の飛び交ふ雨の中/片山由美子
★寒禽の声はお隣かも知れぬ/稲畑汀子
★影と来て影一点となる寒禽/豊田都峰
★寒禽の嘴をひらきて声のなき/長谷川櫂
★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子
★寒禽の止まりし枝の丸見えに/高橋正子
寒林とは、冬枯れの、寒々とした林。(デジタル大辞泉の解説)
「寒いですね」というと「寒中だから」という。そう云われれば、冬であり、寒中だから寒さも厳しくて当り前なのでしょう。これで気温が35℃もあったりしたら「どうなってっの」と気候変動を心配しなければなりません、寒くていいのでしょうね。寒林、冬木立が寒に入った状態だそうですが、あえて説明するならば「葉を落とし尽くしてしまった落葉樹の冬の林の蕭条(しょうじょう)したさま」ということになるようです。木だって寒いでしょうから(?)、寒くないように家の中に入れてあげました。すこしでも温かくなるようにというささやかな気持ちなのですが「小さな親切大きなお世話」なのかもしれませんね。やはり、冬木立、冬木群(ふゆこむれ)は自然のままがいいようです。(ブログ「as time goes by」より)
◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

★寒空の青に鳥らの飛ぶ自由 正子
寒空の広々とした澄んだ大空は鳥たちが自由に飛ぶに十分な雄大さです。(高橋秀之)
○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」。(高橋正子)
○桜冬芽

[桜冬芽/横浜市緑区北八朔(2013年1月9日)]_[桜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]
★蔵したる桜冬芽の守る句碑/稲畑汀子
★雨雫桜冬芽に小宇宙/堀佐夜子
★城跡へ桜冬芽の未だ固し 惟之
★尖りしは桜冬芽の力なり/高橋正子
★青空に桜冬芽の赤味帯ぶ/高橋正子
◇生活する花たち「寒桜・房咲き水仙・鈴懸の実」(神奈川・大船植物園)

★正月の山の落葉のかく深し 正子
正月の山は既に木の葉もすっかり落葉してしまっていることでしょう。山路の落ち葉の嵩を見て「かく深し」と感嘆の声が聞こえてきそうです。里の暮らしとは少し離れた寒の季節の静寂な山中を思い起こします。(佃 康水)
○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。(高橋正子)
○梅冬芽
[梅冬芽/横浜日吉本町(2013年1月6日)]_[梅の花蕾/大船植物園(2014年1月12日)]
★細幹の冬芽の滲み出す如し/行方克己
★冬芽粒々水より空の流れゐつ/野澤節子
★人眠る頃も一気の冬芽かな/阿部みどり女
★雪割れて朴の冬芽に日をこぼす/川端茅舎
★高空の風の冬芽となりにけり/川合憲子
★雲刷かれ梅の冬芽の枝真すぐ/高橋正子
★剪定の木口あたらし梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2012年12月11日(多田有花)
寒波は和らいだようです。ここ数日で落葉が進みました。冬至まであと十日、まだ日は短くなっていきますが、日没が最も早いのはここ二三日ほどのことです。落葉樹が裸になってしまうと、あとは「春を待つ」という感覚になります。
増位山の梅林のまわりの木々も落葉しました。梅も11月の間はまだ葉を残していましたが、今日見ると、すっかり葉を落としつくしていました。早生から晩生までいろいろな種類の梅があります。葉を落とすのもやはり早生が先です。葉を落とした梅の間を歩いていると、もう花芽が準備を整えて整然と枝に並んでいました。
★散り終えし枝にはしかと梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2009年1月9日(多田有花)
今日も穏かで風も無く日中は暖かな一日でした。早朝はそれなりに寒いのかもしれませんが、出勤しないので、その寒さも昔のことになりました。ペットボトルに入れたぬるま湯をフロントガラスにかけて、霜を溶かしたのもなつかしい思い出です。
増位山の梅林の梅が膨らんでいます。紅梅と白梅、それぞれに花の色がはっきりわかり、もう間もなく綻ぶというところまてきています。春の接近を告げてくれる花ですね。楽しみです。(多田有花)
★紅白を見せて膨らむ梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2007年1月9日(gogogobar)
ちょっと遅い仕事始めの日。岐阜まで朝、往復しました。朝6時前はまだ夜。月と星が輝いていました。一宮あたりで日の出。名神から東海北陸自動車道に分かれると目の前には恵那山、ちょっと左手に御岳、乗鞍。白く大きな姿が遠望できる。岐阜の茜部では暖かい朝。恵那の雪景色とは全く別世界でした。私の家のまわりでは、杉も檜木も白砂糖をまぶしたお菓子のようにおいしそう。梅の木は冬芽を大事に春の準備をしているようだ。
◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

★水仙を活けしところに香が動く 正子
水仙の活けられてある静かな座敷。人のよぎる度に、あるいはちょっとした風の気配に、甘い香りが揺れ動き届いてくる。水仙のもつ高雅で安らかな香気。 (小西 宏)
○今日の俳句
枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)
○寒椿
[乙女椿(寒中に咲く椿)/横浜日吉本町] [寒椿(山茶花との交雑種)/ネットより]
★竪にする古きまくらや寒椿 野坡
★折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
★瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
★寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
★寒椿咲きたることの終りけり 風生
★寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
★寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
★寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
★ことごとに人待つ心寒椿 汀女
★くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
★何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
★寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
★園丁の昼煙草寒椿かな/村山古郷
★寒椿落ちたるほかに塵もなし/篠田悌二郎
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子
寒椿は、広辞苑によれば、(1)寒中に咲く椿と(2)ツバキ科の常緑中低木とに分けられている。(1)寒中に咲く椿は、乙女椿(おとめつばき)・大神楽(だいかぐら)・侘助(わびすけ)などであり、(2)ツバキ科の常緑中低木は、椿と山茶花の交雑種とされるツバキ目ツバキ科ツバキ属のひとつの「寒椿」である。ツバキ目ツバキ科ツバキ属の「寒椿」は、「山茶花」との区別が難しく、低木で枝と葉に毛がある。花は紅色の八重咲きで、やや小さく、11月~1月頃開花する。
◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

★正月の山の落葉のかく深し 正子
自然の移ろいは確かです。すっかり葉を落とした正月の山に足を踏み入れ、その落葉の嵩の深さにおどろかれたのでしょう。同時に新しい年への息吹も感じられたのではないでしょうか。(小川和子)
○今日の俳句
古里は雪に雪積む日々らしも/小川和子
和子さんの故郷は北国と聞いている。雪が積んだ上にさらに雪が降り積もる。そのことを知って、故郷で過ごした懐かしく思い起した。「らしも」にその気持ちがでている。(高橋正子)
○寒桜
[寒桜/神奈川・大原植物園]
★寒桜ほのかな紅があたたかし 正子
寒桜は、薔薇(ばら)科。学名Prunus × kanzakura、Prunus : サクラ属 kanzakura : カンザクラ Prunus(プラナス)は、ラテン古名の
「plum(すもも)」が語源。
・咲き始めるのは桜のなかでは早い方。1月頃から咲くものもある。大島桜と寒緋桜(かんひざくら)との雑種。ピンク色の花びらがいっぱい。
寒桜の仲間には「大寒桜(おおかんざくら)」や、伊豆半島に咲く、「修善寺桜(しゅぜんじざくら)」「河津桜(かわづざくら)」などがある。
◇生活する花たち「冬椿・冬の梨園・冬田」(横浜市緑区北八朔)