★ひるがおのこの世に透ける日のひかり 正子
この句を読んだとき、この世とあの世の狭間に立たされたような感覚を覚えました。透明感のある美しい俳句で、ひるがおのうすピンク色のはかなげな花の様子を思い浮かべました。(井上治代)
○今日の俳句
水無月の水音立てて髪洗う/井上治代
「髪洗う」は、夏の季語であるが、現代の生活では「髪洗う」は夏の季語としては弱い。水無月は新暦の七月にあたるが、窓を開け放し、涼しげに水音を立てて髪を洗う。涼
しげで、さっぱりとした句だ。(高橋正子)
○写真の藤の花は、新芽から出て、ことし二度目に咲いた藤の花です。(7月12日撮影)
2010.07.11(日)
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◇生活する花たち「藤の花」(横浜日吉・金蔵寺)

後記
★新涼の季節、九月号をお届けします。今月
号も先月号に引き続き、「電子書籍を読む」
について多くの方から感想を寄せていただき
ました。信之先生が電子書籍化された句集へ
のお礼も含め、あたらな気持ちで句集に向き
合われたことなど、ご自分のこととしての感
想に現実味があります。出版各社もようやく
重い腰を上げた感じがします。電子書籍の売
れ行きの伸びと相俟って紙の書籍も売り上げ
を伸ばして、胸をなでおろした様子です。平
成十三年には平成八年の二十倍の電子書籍が
売られると調査会社が報告しています。電子
書籍の時代がくることは間違いないでしょう。
ただ、心配がないわけではありません。出版
不況に陥り、よい本が出版されなくなり、本
当に読みたい本が市場から消えたことも現実
です。電子書籍においても、売れ筋の本ばか
りが出版され、本当に読みたい本が電子書籍
化されないこともありうることでしょう。ま
ず、よい内容の本を早く魅力ある本として電
子書籍化し、読者を逃さないようにしておく
べきでしょう。俳句に関するものもしかり。
そういう意味で、花冠の電子書籍は意義が深
いと思います。電子書籍がもっとの研究され
て、利点が生かされ楽しいものになればよい
と思っています。
★信之先生の俳句鑑賞を毎月違った方に書い
ていただいています。俳句は、一人ではなか
なか的確に読めないもの。鑑賞の参考にして
いただければと思います。「作者の気持ちに
なって」読むのが花冠の伝統的俳句鑑賞の方
法です。私見を優位に置いたものではありま
せんので、きっとお役に立つと思います。
★久しぶりに吟行記の掲載です。加代子さん
のご報告で、五月の秀之さん歓迎吟行句会の
模様です。お楽しみください。夏の吟行で思
い出すのは、鵜飼もあるけれど、気軽な吟行
です。四国札所の奇岩で有名な岩屋寺の吟行
で立ち寄った食堂。お昼に汗して帰ったご主
人が脇のテーブルで食事。われわれの食べた
ものは忘れたが、ご主人の昼食のおいしそう
なこと。大きなひややっこに鰹節を盛って、
もう一皿は、胡瓜を切ったものに醤油をかけ
て。それと白いご飯。吟行にゆけば、こうい
う涼しげな、人間的な体験ができる。涼しく
なったら、吟行句会を予定しています。
★「子どもの俳句」を真っ先に読みますとい
うメールを某俳句雑誌の若い女性編集者から
いただきました。大変うれしいことです。
「子どもの俳句」もよろしくご支援ください。
暑いときですので、お体大切にお過ごしくだ
さい。 (正子)
★蕗の灰汁つきたる指のきしみがち 正子
蕗の灰汁は指先や爪の中まで黒く染み付いて、匂いも中々取れません。気になってその指先を何度も擦ったり、他のお料理をする中で何となくきしむ様な感覚を覚えます。お忙しい中で台所での生活感溢れる御句と思います。(佃 康水)
○今日の俳句
大青田山裾までの拡がりに/佃 康水
山裾まで広がる「大青田」に、目も心も涼しくさわやかになる。(高橋正子)
○俳句
李熟れて落ちし無残を見て通る
蓮の花散しばかりが舟のごと
雨粒をぱらぱら受けし蓮の花
○参議院議員選挙。
◇生活する花たち「ハンゲショウ」(横浜日吉本町)

氷菓食ぶ
高橋正子
朴の花見むと花より高く来し
街路樹に栃の花房氷菓食ぶ
蛍火の高きは水のいろを帯ぶ
ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり
紫陽花の毬るいるいと寺の門
蓮つぼみ青きとがりのまだ無疵
蓮つぼみ抽き出し二本がくれないに
葛の葉の垂れしは涼し揺れており
日々散れる日々草の花を掃く
白粉の花のうしろから暮れる
金蔵寺7句
風吹けば白はまぼろしハンゲショウ
半夏生群れたるここはまぼろしか
青き実に西日差し入る白雲木
蓮つぼみ青きとがりのまだ無疵
蓮つぼみ抽き出し二本がくれないに
紫陽花の毬るいるいと寺の門
葛の葉の垂れしがきれい梅雨の山
日々ペットボトルの水を飲むにつけ
富士湧水ペットボトルに冷えており
ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり
ほうたるの五つ六つの渓深し
ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり
ほうたるの消えしは橋をくぐるとき
大風に額紫陽花の裏がえり
枇杷の実に雨は一日止みもせず 正子
額あじさい雨を受けては海の色 正子
わらびもち電話かかればそのままに 正子
青紫蘇の丈の低きの二枚摘む
津和野回想
鷺舞の二羽に行き逢う旅の途に
瑠璃鶲・野鶲・駒鳥みな知らず
鯵を焼く藻塩さらさら振りかける
朴の花上より見むと上に来し
街路樹に栃の花咲き氷菓食ぶ
鎌倉街道
★竹林に夏の真青な水打たれ 正子
昼尚うす暗い竹林は、濃いみどりの笹の葉に覆われ如何にも涼しそうですね。その上、ホースによる散水でしょうか?水が打たれますと、笹の葉に水滴が煌き、この上ない涼しさが溢れ爽やかな風さえ生みそうです。涼感溢れる素敵な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
大阪は水の都よ橋西日/桑本栄太郎
大阪の八百八橋は言い慣らされて、多く橋がある。実際は二百ほどらしい。西日の差す橋を渡りながら川面を眺めると、水の都を実感する。「西日」が効いている。(高橋正子)
○俳句
白粉の花のうしろから暮れる 正子
○シーフードとイタリア野菜風のスパゲッティを作る。ズッキーニがあれば、申し分ないが、茄子とピーマンと缶詰トマト。さっぱりしてます。みなさまも、どうぞ。これに西瓜を合わせて夕食完了。西瓜は初物でした。
◇生活する花たち「白粉花」(横浜日吉本町)

愛媛・久万中学校
★教室の窓に夏嶺の高々と 正子
前書きに久万中学校とあり、懐かしく、清々しい景が目にうかびました。開けはなった教室の窓には青々とした夏山の嶺が広がり、未来ある中学生の前途をおおしく見守っているかのようです。(小川和子)
○今日の俳句
花鋏鳴らし涼しき庭飽かず/小川和子
「庭飽かず」に、作者の楽しさが読み取れて、それが読者を楽しませてくれる。たくさん咲いた花の中にいて、花鋏を軽く鳴らしながら涼しい庭を巡っている。花に囲まれたうれしさが涼やかに詠まれた。(高橋正子)
◇生活する花たち「百合」(横浜日吉本町)

★子が去りしことも静かや夏の歯朶 正子
帰っておられた子達が去られた後の静かではありますが淋しい家の中、庭の隅の若葉を茂らせる歯朶に離れ住まわれるお子達のことを思われます。 (黒谷光子)
○今日の俳句
青蔦の登りきったる杉高し/黒谷光子
青蔦が杉の木に絡まって、非常に高くまで登っている。見上げれば、「登りきったる」と断定できる。把握がすっきりとしている。(高橋正子)
◇生活する花たち「ランタナ」(横浜日吉本町)

★学生食堂ひとりの顔に夏日あり 正子
学生食堂で大勢の学生が食事に余念がない。と、一人の顔は日焼けして、沖縄にでも行っていたのだろうか、もうすっかり夏の気配をただよわせている。若者の日常を想像させるスナップショットのような御句かと思いました。 (河野啓一)
○今日の俳句
北摂の山を遠くに夏野行く/河野啓一
北摂の青い山々を遠く眺めながら、夏の野を行く。広やかにすずしい心を共に感じる。(高橋正子)
◇生活する花たち「アリストロメリア」(横浜日吉本町)

★明け易き時をラジオのミサ合唱 正子
夏の早朝の清澄な空気の中で、ラジオから流れてくるミサの合唱を聴いている。静かな時が流れ、ゆったりとしている作者の気持ちが伝わります。今日もまた清々しい一日が始まることでしょう。(井上治代)
○今日の俳句
青空を透かして網戸まっさらに/井上治代
網戸から青空が透けて、その網戸もまっさら。風もよく通り、目に涼しい。さわやかで、清潔感のある句。(高橋正子)
◇生活する花たち「カシワバアジサイ」(横浜日吉本町)
