11月11日~20日


11月20日(4名)

●小口泰與
校庭の練習試合初時雨★★★★
冬霧や御巣鷹の尾根閉ざされし★★★
ただ一軒残る置屋に冬の雨★★★

●多田有花
ひと雨の降るたび冬が深くなる★★★
午後の陽の明るし木枯のつのる★★★
鴨来たり静かに川面に浮かびおり★★★★
鴨が遠く飛来してきた。長旅を癒すかのようでもあるが、むしろ何事もなく、静かに川面に浮かんでいる。鴨にある静かな「今の時」。(高橋正子)

●廣田洋一
頬冷た風に逆らひ出勤す★★★
ハイヒール高き音立て冬の朝★★★★
寒風や電飾の波広がりぬ★★★

●桑本栄太郎
しぐれ降り歌碑の色濃きかにかく忌★★★★
せせらぎの底に紅葉や高瀬川★★★
見上げれば日差し眩しくしぐれ降る★★★

11月19日(3名)

●廣田洋一
吾が影を黒々照らす冬の月★★★★
冬の月のすざましさ。冬の月の研ぎ澄まされた光が吾が影を黒々と映し出す。そのとき、自分の存在のありありとしていることに気づく。(高橋正子)

卵黄の引き締まりたる冬の月★★★
宴果つ名残の光冬の月★★★

●小口泰與
媼等の囲炉裏を囲む句会かな★★★★
起重機の小春の空を圧しけり★★★
三山の星も飛びけり虎落笛★★★

●桑本栄太郎
その中の一枝緋色や冬紅葉★★★
山茶花のにつとほほ笑む日差しかな★★★
花街の朝の荷降ろす京の冬★★★★

11月18日(3名)

●廣田洋一
窓を打つ小さな雫冬の雨★★★
木の葉打つ音のかそけき冬の雨★★★

冬の雨色とりどりの花屋かな★★★★
冬の雨がしとしと降って、陰鬱な空模様だが、花屋には色とりどりの花があって、明るい気持ちにさせてくれる。生き生きとしているものに出会うと元気が出るものだ。(高橋正子)

●小口泰與
北颪マラソン走者息荒らし★★★
正座せる僧の読経や隙間風★★★
浅間山雪美しきなり小六月(原句)
「浅間山/雪美しきなり/小六月」のように/を入れたところで切れています。3つに切れるのはよくありません。
浅間山雪美(うつく)しき小六月★★★★(正子添削)

●桑本栄太郎
かえで葉の一枝緋色や冬紅葉★★★
山崎の土塀民家や銀杏黄葉★★★★
モンゴルの風の便りや寒波来る★★★

11月17日(4名)

●小口泰與
初霜を撮るアイホンへ朝日出づ★★★
迫り来る電柱の影冬の月(原句)
電柱の影太々と冬の月★★★★(正子添削)
小春日や今でも母は針仕事★★★

●多田有花
三脚を立てて冬紅葉に向かう★★★
乾杯のあと豚しゃぶ鍋を囲む★★★
快晴に電気ストーブ届きけり★★★★
電気店に注文していた電気ストーブが届いた。それもストーブなど必要もなさそうな快晴の日に、だ。ピカピカの電気ストーブがこの冬活躍してくれそうだ。快活な句だ。(高橋正子)

●廣田洋一
落葉掻く老婆の背中日温し(原句)
落葉掻く老婆の背中日当たれる★★★★(正子添削)

ごみ袋溢れんばかりの落葉かな★★★
道路脇車彩る柿落葉★★★

●桑本栄太郎
絵の描かる特急電車やもみじ号★★★
新大阪駅出れば鉄路の草紅葉★★★★
延々とコンテナ列車や冬の駅★★★

11月16日(5名)

●谷口博望 (満天星)
いつの間に台湾楓の真赤つか★★★
マフラーを外せぬ歳やもう晩年★★★
紅葉散る野球少年眩しくて(原句)
紅葉散る野球の少年眩しくて★★★★(正子添削)
よく晴れた日、少年たちが野球をしているのを見ていると紅葉が散ってくる。少年たちは眩しいほどの光を浴びて元気いっぱいである。(高橋正子)

●小口泰與
パラグライダー短日の湖超え行けり★★★★
寒月や吹き千切れたる店の旗★★★
閉し眼に映る荒波小白鳥★★★

●廣田洋一
逝きし人光りいや増す冬銀河★★★
冬銀河眺めて限り無し空の旅★★★★
夜間飛行の旅で銀河に出会ったことは私はないけれど、限りなく広がる宇宙の星々を思う。(高橋正子)
妻いづこ果てなき旅路冬銀河★★★

●多田有花
渓谷の冬紅葉のなか昼ごはん★★★
冬うららトランク積んだオープンカー★★★★
日当たりにうすうす咲けり冬桜★★★

●桑本栄太郎
黄落や昔在りしにフレディー君★★★
検診を終えて家路や石蕗の花★★★★
いずこより団栗落つや二つ三つ★★★

11月15日(4名)

●廣田洋一
お参りは五日に済ませ七五三祝★★★
青き目の袴着似合ふ七五三★★★★
産土の神のご加護や七五三★★★

●小口泰與
冬紅葉妙義神社へ晴着の子★★★★
一塊の雲に隠るる雪浅間★★★
野良犬の喰い付きそうや冬の月★★★

●多田有花51
<伊予富士登山三句>
青空へ氷の花を咲かす木々★★★★
青空に樹氷が花を咲かせるようにきらめく。青空となる空は昨夜、冷え込んだと思われる。寒さが厳しければ、それだけ美しく生き生きとした氷の花だ。(高橋正子)

冬麗や遮るものの無き展望★★★
頂に耐寒登山の中高生★★★

●桑本栄太郎
真白なる尾花や風の吹くままに★★★★
冬帽を目深(まぶか)に被りたんぼ道★★★
冬ざれのごろんと転ぶ地軸かな★★★

11月14日(4名)

●小口泰與
初雪を被く浅間山(あさま)や鳥の声★★★
初雪の浅間山に響く鳥の声★★★★(正子添削)
「初雪を被く浅間山」と「鳥の声」が切れ過ぎです。

凩や利根の川原のひろごれる★★★
すき焼や声を張りあう犬と猫★★★

●廣田洋一
新聞受け今日の寒さを推し測る★★★
ああ寒い烏もかあと啼く朝★★★
駅出でてどっと押し寄す寒さかな★★★★
駅を出たとたんに思わぬ寒さに出くわす。「押し寄す寒さ」に冬到来を思う。(高橋正子)

●多田有花
<伊予富士登山三句>
燧灘しまなみ海道冬日和★★★
伊予富士の稜線をゆく冬うらら★★★
伊予土佐を見晴らし笹尾根を歩く
季語は?

●桑本栄太郎
せせらぎの底に紅葉や高瀬川★★★
医科大を蔽う落葉松紅葉かな★★★
逝く人の親しきばかり冬銀河★★★★

11月13日(4名)

●小口泰與
アイホンは無くてはならぬ山の雪★★★
薬籠に溜まる輪ゴムやはずみ玉★★★
常温よと出づる熱燗妻の声★★★

●廣田洋一
冬の空鴉が一羽見上げ居り★★★
光る星雲かき分ける冬の空★★★
冬空に光湧き立つ丸の内★★★★
丸の内の沢山の高層ビルに灯されている光は、「湧き立つ」ようだ。冬なればこその壮観な光の光景。(高橋正子)

●桑本栄太郎
木洩れ日の高き社や神の留守★★★★
風すさび落葉螺旋やつむじ風★★★
ひらひらと青空に舞い紅葉散る★★★

●多田有花
<伊予富士登山三句>
稜線に輝く樹氷仰ぎけり★★★
樹氷よりきらめくものが絶えず落ち★★★★
樹氷に風が吹いているのだろう。絶えずきらめくものが落ちてくる。美しい。(高橋正子)

見上げれば樹氷のうえに昼の月★★★

11月12日(3名)

●廣田洋一
中天に三日月残る冬の朝★★★★
目覚ましを二三度止めし冬の朝★★★
冬の朝勤めに行く足音高し★★★

●小口泰與
冷たさにふと目覚めたる寝汗かな★★★
谷川岳暮るるや底冷迫りける★★★★
羽ばたきて揺れる下枝へ寒雀★★★

●桑本栄太郎
大根のお菜多くて冬に入る★★★★
大根は一番消費量の多い野菜だと聞く。大根の美味しさは寒くなってから増して来て、食卓には大根料理がいろいろ並ぶ。冬に入ったことが、出されたお菜で知れる。季節とともにある生活。(高橋正子)

娶らざる吾子に吹けよと神渡し★★★
木洩れ日の高き梢や冬の鵯★★★

11月11日(3名)

●小口泰與
山茶花や猫の居場所へ日差し差す★★★★
限りなき雨や冬野の鳥の声★★★
落葉降る耳をそばだつ小犬かな★★★

●桑本栄太郎
枯れ来たるとは言え吾はいぼむしり★★★
亜浪忌や孤高を旨といたすべし★★★
風吹けば肩に帽子に木の実降る★★★★
一陣の風に木の実が降る。傍にいれば、肩にも、帽子にも降る。ぱらぱらと降る木の実の多さに驚く。「帽子」をいれたことで、作者の姿がはっきりと浮かんできた。(高橋正子)

●廣田洋一
紫陽花の小さく目立つ帰り花★★★
義士の墓異国語聞こゆ小六月★★★★
泉岳寺墓前に座り日向ぼこ★★★

自由な投句箱/11月1日~10日


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今日の秀句/11月1日~10日


11月10日(2句)

★どっしりと一塊の雲冬ざるる/小口泰與
「どっしりと」がいかにも冬の雲らしい。一塊のどっしりした雲に冬ざれの世界をしっかりと見た句だ。(高橋正子)

★柿吊るす三連ほどの明かりかな/桑本栄太郎★★★★
干し柿を作るために柿を剥いて三連ほど吊るした。その三連ほどの剥き柿が明るいのだ。ひともとの幸せ。(高橋正子)

11月9日(句)

★短日や帰宅の空に星一つ/廣田洋一
帰宅する空を見上げると星が一つ。一番星は青い星か。「日が短くなったなあ。」と思う。星があることで詩情が湧く。(高橋正子)

11月8日(3句)

★ぷかぷかと首を背中に浮寝鳥/谷口博望 (満天星)
平和な眠りの浮寝鳥に読みものも暖かい気持ちになる。「ふかぶか」がいい。(高橋正子)

★旅先の車窓濡らせる初時雨/廣田洋一
旅をしている間にも季節は進み初時雨を見ることに。「旅」と「初時雨」の取り合わせにさびさびとした風情が生まれた。(高橋正子)

★本二冊借り出し帰る冬の午後/多田有花
「冬の午後」から夜にでも読むのだろう。「本二冊」のほどほど感がいい。「借り出す」本の気楽さもいい。(高橋正子)

11月7日(1句)

★山々の輝きさやか冬に入る/多田有花
穏やかな立冬。「輝きさやか」で瀬戸内の穏やかな冬に入る景色が思い浮かぶ。淡い景色だ。(高橋正子)

11月6日(2句)

★赤城また一年(ひととせ)経たり雁の列/小口泰與
一年を経たのは赤城山。空を雁の列が渡ってくるのを見ると一年が経ったことが思われる。悠久の一年である。(高橋正子)

★秋晴を話しに今日もICU/川名ますみ
ICUは集中治療室。集中治療が行われているなかにも面会が許されて、話ができる。「秋晴」のことを話し、少しでも明るい気持ちになってほしい。快方をお祈りします。(高橋正子)

11月5日(1句)

★玄関と庭先いっぱい菊咲かせ/多田有花
菊の季節。菊づくりに熱心な人は結構いて、玄関にも、庭にも菊を咲かせている。とりどりの色も、香りも日本の秋の象徴である。(高橋正子)

11月4日(1句)

★露寒の宿より仰ぐ朝の空/廣田洋一
朝の冷え冷えとした露の寒さに、旅にいることが強く思われる。天気はどうかと朝の空を仰ぐ。この分ならいい天気になりそうだ。(高橋正子)

★黄葉と同じ色して蝶の飛ぶ/多田有花
黄葉がひらひら散ったかと思うと、それが蝶だった。たまに経験すること。黄葉と同じ色の蝶はまさしく秋の蝶だ。この句の軽さがいい。(高橋正子)

11月2日(1句)

★爽やかに光たたえて播磨灘/多田有花
海こそ季節の変化を映すものはないと言えそうだ。「爽やかに」「光たたえて」の二つが播磨灘をよく表現している。(高橋正子)

11月1日(1句)

★後の月妻は天麩羅揚げて待つ/桑本栄太郎
後の月は十三夜。名残の月であり、少し欠けた月がしみじみとして美しい。その月を待つのに天麩羅を揚げて待つ。主婦の生活は、名月であろうと、後の月であろうと、日常のひとつであり、日常に月の風情を織り込ませているのは、素晴らしいことだと思う。(高橋正子)

11月1日~10日


11月10日(4名)

●谷口博望 (満天星)
整列の水兵さんや百合鴎(原句)
整列の水兵のごと百合鴎★★★(正子添削)
鵙鳴くや我見よがしに高々と★★★
鳥の影銀杏黄葉の天辺に★★★★

●小口泰與
冬ざれや大曲せる足尾線★★★
どっしりと一塊の雲冬ざるる★★★★
「どっしりと」がいかにも冬の雲らしい。一塊のどっしりした雲に冬ざれの世界をしっかりと見た句だ。(高橋正子)
水鳥や一筋の夕日沼を割る★★★

●廣田洋一
青空に白さ際立つ帰り花★★★★
帰り花一輪咲きしつつじかな★★★
帰り花夕日の空に散り初める★★★

●桑本栄太
鎌広げ固まり居たる枯蟷螂★★★
娶らざる吾子に吹けよと神渡し★★★
柿吊るす三連ほどの明かりかな★★★★
干し柿を作るために柿を剥いて三連ほど吊るした。その三連ほどの剥き柿が明るいのだ。ひともとの幸せ。(高橋正子)

11月9日(4名)

●小口泰與
寒犬の忽とまなこを開きけり★★★★
住み慣れし毛の国の郷空っ風★★★
水切の石の沈むや冬ざるる★★★

●廣田洋一
初時雨白く染まりし富士の山★★★
旅終えて片付け多し日短か★★★
短日や帰宅の空に星一つ★★★★
帰宅する空を見上げると星が一つ。一番星は青い星か。「日が短くなったなあ。」と思う。星があることで詩情が湧く。(高橋正子)

●多田有花
枯蓮の間を風が通り抜け★★★★
風が吹く紅葉かつ散る山の木々★★★
蜘蛛消えて落葉からまる残る巣に★★★

●桑本栄太郎
パーキングエリヤ明るき秋ともし★★★★
秋潮の沖に岩あり賀露漁港★★★
秋日さす白兎海岸白波に★★★

11月8日(5名)

●小口泰與
水玉に刹那に映る秋のばら(原句)
水玉に映る刹那の秋のばら★★★★(正子添削)
日当たりに寄り添う猫や暮の秋★★★
冬の雨仏頂面の女香具師★★★

●谷口博望 (満天星)
石蕗日和記憶遺産の島美しき★★★
ぷかぷかと首を背中に浮寝鳥★★★★
平和な眠りの浮寝鳥に読みものも暖かい気持ちになる。「ふかぶか」がいい。(高橋正子)
桃色の花かと思ふ真弓の実★★★

●廣田洋一
旅先の車窓濡らせる初時雨★★★★
旅をしている間にも季節は進み初時雨を見ることに。「旅」と「初時雨」の取り合わせにさびさびとした風情が生まれた。(高橋正子)

雨雲に浮かびし富士や雪白し★★★
駿河湾夕日たゆたふ冬うらら★★★

●桑本栄太郎
<高速中国道走行>
ハイウェイの夜の静寂や秋ともし★★★
<葛西パーキングエリヤにて>
朝靄の晴れゆく先に山紅葉★★★★
<鳥取着>
秋潮の沖に岩影賀露港★★★

●多田有花
目覚めれば初冬の雨が静かに降る★★★
本二冊借り出し帰る冬の午後★★★★
「冬の午後」から夜にでも読むのだろう。「本二冊」のほどほど感がいい。「借り出す」本の気楽さもいい。(高橋正子)
短日や絵を描く窓のすでに暮れ★★★

11月7日(4名)

●小口泰與
蟋蟀や臥して見上ぐる絵天井★★★
補陀落や霧の中より小島見ゆ★★★
生涯を駄菓子と共や天高し★★★★

●多田有花
山々の輝きさやか冬に入る★★★★
穏やかな立冬。「輝きさやか」で瀬戸内の穏やかな冬に入る景色が思い浮かぶ。淡い景色だ。(高橋正子)

落葉踏み山路を行くも幾年ぞ★★★
立冬や柿の小枝に野鳥来る★★★

●廣田洋一
丸の内吟行日和の今朝の冬★★★
立冬の富士を浮かべる白き雲★★★★
駿河湾うっすら光り冬うらら★★★

●谷口博望 (満天星)
古傷の疼き出したる今朝の冬★★★
紅さして首に黒子の百合鴎★★★
野紺菊頼家ゆかりの茶室にて★★★★

11月6日(4名)

●小口泰與
赤城また一年(ひととせ)経たり雁の列★★★★
一年を経たのは赤城山。空を雁の列が渡ってくるのを見ると一年が経ったことが思われる。悠久の一年である。(高橋正子)

暮の秋一日風雨の深みたる★★★
雨の夜をふさわしと見ゆ秋の果★★★

●廣田洋一
上野の秋ゴッホの耳は付きてをり★★★
黄葉散り漣のごと道渡る★★★★
青空に黄葉舞ひ散る赤門かな★★★

●多田有花
快晴の冬隣る山歩きけり★★★★
頂の西行の歌碑に秋陽さす★★★
あたたかき冬の隣や海霞む★★★

●川名ますみ
秋晴を話しに今日もICU★★★★
ICUは集中治療室。集中治療が行われているなかにも面会が許されて、話ができる。「秋晴」のことを話し、少しでも明るい気持ちになってほしい。快方をお祈りします。(高橋正子)

ももいろのセーター選び面会に★★★
木洩れ日もにぎわっており夕紅葉★★★

11月5日(3名)

●小口泰與
湖の波平らなり夕紅葉★★★★
ひるがえる屋根のトタンや冬隣★★★
腑におちぬ事の多きや牧閉ざす★★★

●廣田洋一
香りにも色を付けたり金木犀(原句)
香りにも色あるごとく金木犀★★★(正子添削)

一つだけ実の熟れたる金柑かな★★★
山盛りの金柑買ひて甘煮かな(原句)
甘煮にと金柑山盛り買ひて来し(添削①)
山盛りの金柑甘く煮詰めたる★★★★(添削②)
もとの句は、「買う」ことと、「甘煮」にすることの二つがテーマになっています。俳句ではテーマは一つです。

●多田有花
玄関と庭先いっぱい菊咲かせ★★★★
菊の季節。菊づくりに熱心な人は結構いて、玄関にも、庭にも菊を咲かせている。とりどりの色も、香りも日本の秋の象徴である。(高橋正子)

汁物を吹いて食べおり冬隣★★★
耕運機とすれ違う道秋の昼★★★

11月4日(3名)

●小口泰與
佐久鯉を捌く男や文化の日★★★
ひねもすを庭のコスモス見ておりぬ★★★

ずんずんと庭暮れて行く椋大樹
「椋の木」には季語はありません。「椋」の季語が秋とあるのは、「椋鳥」のことです。
この句には、季節感はあると思いますが、季語を使うのが良いと思います。

●廣田洋一
露寒や大粒光る道祖神★★★
露寒や旅の予定を確かめる★★★
露寒の宿より仰ぐ朝の空★★★★
朝の冷え冷えとした露の寒さに、旅にいることが強く思われる。天気はどうかと朝の空を仰ぐ。この分ならいい天気になりそうだ。(高橋正子)

●多田有花
冬近き雲より漏れる日の光★★★
母つれて暖房器具を買いにけり★★★★
午後よりは風強くなる冬隣★★★

11月3日(3名)

●小口泰與
末枯や湖の変化は風の意図★★★★
木犀やひともし頃の浅間山★★★
独りごつ夢か寝言かうそ寒き★★★

●廣田洋一
文化の日我が家の文化と句をひねる★★★
友人の写真展有り文化の日★★★★
受賞者に古希の多きや文化の日★★★

●多田有花
黄葉と同じ色して蝶の飛ぶ★★★★
黄葉がひらひら散ったかと思うと、それが蝶だった。たまに経験すること。黄葉と同じ色の蝶はまさしく秋の蝶だ。この句の軽さがいい。(高橋正子)

訓練の自衛隊員秋うらら★★★
山歩く人とあいさつ文化の日★★★

11月2日(5名)

●多田有花
爽やかに光たたえて播磨灘★★★★
海こそ季節の変化を映すものはないと言えそうだ。「爽やかに」「光たたえて」の二つが播磨灘をよく表現している。(高橋正子)

紅葉する峠に向かう道の脇★★★
秋深し閉めきる場所の多くなり★★★

●廣田洋一
恐山霊場巡り秋惜む★★★
秋惜しむ津軽海峡波白し★★★★
旅終へて報告メール秋惜む★★★

●小口泰與
撮影に没頭せしや錦秋★★★
水玉の刹那の世界残る菊★★★
密やかに噴煙南へ暮の秋★★★★

●桑本栄太郎
<高速バスの大阪へ>
ビル街の影に熟れたる晩稲かな★★★★
秋日射す赤き電車や操車場★★★
いわし雲ハイウェイバスの梅田着★★★

●谷口博望(満天星)
朝鮮通信使の島浪高し★★★★
朝鮮通信使の島色変へぬ松★★★
朝鮮通信使の島浪と松★★★

11月1日(5名)

●谷口博望(満天星)
潮風や番ふ雉鳩櫨の実に★★★
晩秋の瀬戸の日傾ぎ昼の月★★★
節理這ふ大蟷螂や巨大船★★★

●小口泰與
ひさかたの晴や藁塚倒れおる★★★
あの頃も色変えぬ松二部授業★★★
俳句欄見入る朝や鵙の晴★★★★

●多田有花
千切りの生姜と炊くやがんもどき★★★
澄む秋の空まっすぐに飛行機雲★★★
シーツ干す十一月の青空に★★★★

●廣田洋一
紅葉の葉そっと浮かべる露天風呂★★★
大間の漁師自慢のとろ鮪★★★
紅葉道ぱっと抜け出て恐山★★★★

●桑本栄太郎
山の端の入日茜や後の月★★★
茜なる山影うねり十三夜★★★
後の月妻は天麩羅揚げて待つ★★★★
後の月は十三夜。名残の月であり、少し欠けた月がしみじみとして美しい。その月を待つのに天麩羅を揚げて待つ。主婦の生活は、名月であろうと、後の月であろうと、日常のひとつであり、日常に月の風情を織り込ませているのは、素晴らしいことだと思う。(高橋正子)

自由な投句箱/10月21日~31日


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今日の秀句/10月21日~31日


10月31日(2句)

★川沿いの桜紅葉の下走る/多田有花
川沿いに桜が植えられている。水の流れる川沿いの桜紅葉の下を走ると、いい気分になるのではないだろうか。(高橋正子)

★一輌のワンマンカーや石蕗の花/桑本栄太郎
「一輌のワンマンーカー」と「石蕗」の取り合わせに作者の初冬の思いが込められている。(高橋正子)

10月30日(2句)

★久女句碑黄菊の畑の角曲がり/古田敬二
久女の句碑は小原村(現豊田市)のものであろうか。静かな久女句碑の佇まいが久女の生涯を彷彿させる。(高橋正子)

★木枯しの一番治む入日かな/桑本栄太郎
木枯らし一番が吹いた。木枯らしは入日につれて行かれるように治まり、寒さは募るが、静かな夕べを迎えた。「治む」が効いた。(高橋正子)

10月29日(2句)

★松虫や湖畔に画架を立てており/小口泰與
松虫の鳴く湖畔が素敵だ。その上に、画架を立てて描く画はしっとりと、心楽しいものであろう。(高橋正子)

<母の見舞い帰省>
★穂芒の向き定まりぬ吉井川/桑本栄太郎
母の見舞いに帰省の途中の吉井川。穂芒の靡き具合が一様。それが安心でもあり、落ち着かなさでもある。(高橋正子)

10月28日(2句)

★がまずみを画材カートに山下る/谷口博望(満天星)
画材カートは、野外で絵を描くための画材道具をいれて持ち運べるバッグ付きのカート。山へ絵を描きにゆき、がま
ずみを見つけ、折り取ってカートに乗せた。絵心を誘うがまずみであるから、描く楽しみが増えたことだろう。(高橋正子)

★冬支度そのまま旅の支度なり/廣田洋一
旅の支度。寒くなりそうだと、コートを足し、あれを入れ、これを入れていたら、自ずと、すっかり冬支度となってしまった。旅は季節と共に。(高橋正子)

10月27日(3句)

★秋晴れや遥かな瀬戸は金色に/谷口博望 (満天星)
秋晴れの瀬戸、遠いところは太陽を反射して金色に。この金色は、私の経験から、春や夏ではなく、特に秋のものだ。(高橋正子)

★大沼の雁を迎えてにぎにぎし/小口泰與
雁が渡ってきた大沼が、にぎにぎしく、生き生きとしてきた。雁の鳴き声、羽ばたく水飛沫など、雁の様子がよみてにもよく想像できる。(高橋正子)

★もみぢ葉を浮かべせせらぎさらさらと/河野啓一
もみじを浮かばせたせせらぎが、殊更ではなく、「さらさらと」流れるのが快い。軽く空気のようであるのがいい。(高橋正子)

10月26日(2名)

★黄葉の百合の木の葉のさわさわと/谷口博望(満天星)
嘗て四国松山の大学に勤めていた頃、秋になると二階の研究室の窓近くで百合の木の葉がさわさわと風に鳴った。若い頃はそれなりに研究に励んでいたので、研究室の個室の窓近くにあった百合の木の葉音が懐かしい。(高橋信之)

★秋の蝶頂のわが傍らに/多田有花
山の頂に立つ作者の姿が眼に浮かぶ。山の頂が明らかに眼に浮かぶ。(高橋信之)

10月25日(1句)

★青空に雲奔り居り野分あと/桑本栄太郎
野分が去り、爽快な青空となったが、上空には風が残っている。その証に雲が奔っている。雲の奔る勢いに、野分の強さを知る。(高橋正子)

10月24日(2句)

●霜降や嵐の後の山に入る/多田有花
10月も終ろうというのに台風に見舞われた。嵐が過ぎ去った後の山は降霜の日を迎えた。季節の変化が激しい。(高橋正子)

●秋寒や朝のコーヒー湯気高し/廣田洋一
「湯気高し」に気持ちが入っている。朝寒に香り高い淹れたてのコーヒーは文句なし。冬の間近さ強くが感じられる。(高橋正子)

10月23日(2句)

★稲架ごしに浅間の煙立ちており/小口泰與
浅間の裾を電車で通ったが、立ち上る噴煙を見れば、浅間が生きている感じがした。浅間の噴煙と稲架ははるか昔から、続いている自然と人間の営みだ。(高橋正子)

★嵯峨菊の土間を彩り大覚寺/桑本栄太郎
嵯峨菊は花びらの管が細長く、かろやかで優美で、あつものの菊とは対照的な雰囲気だ。大覚寺には嵯峨流という華道の流派があって、花には縁の深い寺である。(高橋正子)

10月22日(2句)

★雨上がり声賑やかに小鳥来る/廣田洋一
楽しくてうれしい風景だ。身近な風景であればなお、楽しくてうれしい。(高橋信之)

★一反の田にコスモスの咲きにけり/桑本栄太郎
何だか嬉しい風景だ。日常生活の中の嬉しさがいい。上五の「一反」は力強い言葉だ。(高橋信之)

10月21日(1句)

★鴨すでに犇めき合へる河口かな/谷口博望(満天星)
鴨が北国からやってきたころと思い河口へ行くと、すでに犇めき合うほどの鴨がいる。にぎやかな鴨の様子に、うれしさと安らぎを覚えた。(高橋正子)

10月21日~31日


10月31日(4名)

●小口泰與
逆光の風の美しきや花すすき(原句)
逆光に美しきや風の花すすき★★★★(正子添削)
「逆光の風」が不自然です。

畦川を率いる利根川(とね)や秋収★★★
蔓引くや踊り顔なる烏瓜★★★

●多田有花
川沿いの桜紅葉の下走る★★★★
川沿いに桜が植えられている。水の流れる川沿いの桜紅葉の下を走ると、いい気分になるのではないだろうか。(高橋正子)

太陽光パネルに晩秋の光★★★
台風の落とす小枝を拾いけり★★★

●廣田洋一
遂に来た竜飛崎や冬景色(原句)
遂に来し竜飛崎や冬の潮★★★★(正子添削)
この句の場合、「来た」より文語の「来し」方がよいと思います。
「冬景色」が、漠然としているので、もう少し具体的な表現(例えば「冬潮(冬の潮)」)がよいと思います。

北風にすっくと立ちし灯台かな(原句)
北風に灯台すっくと立ちてをり★★★

(最果ての竜飛崎に来たりけり)
(風にすっくと立ちし灯台かな)

無季俳句 (廣田洋一)2017-11-01 16:30:4210月31日の季語の無い俳句を以下の通り訂正します。

●桑本栄太郎
<帰省より帰宅へ故郷の駅>
列車待つ無人駅舎や石蕗の花★★★
秋海霧(あきじり)の晴れて彼方に隠岐の島★★★
一輌のワンマンカーや石蕗の花★★★★
「一輌のワンマンーカー」と「石蕗」の取り合わせに作者の初冬の思いが込められている。(高橋正子)

10月30日(5名)

●多田有花
秋の暮嵐のあとの空を見る★★★
朝寒や雲多けれど干し物を★★★
秋の夕街なかに浮かぶ城の影★★★★

●小口泰與
秋雲や忠治逃げたる在所跡★★★
秋風や足尾銅山靄の中★★★
大いなる赤城を控え鵙高音★★★★

●廣田洋一
昼餉時鳥の列なす刈田かな★★★
落ち林檎色とりどりに積み上げし★★★
光る湖紅葉の色を取り込めり★★★★

●古田敬二
荒れ激し紅葉の坂を久女墓碑★★★
久女句碑黄菊の畑の角曲がり★★★★
久女の句碑は小原村(現豊田市)のものであろうか。静かな久女句碑の佇まいが久女の生涯を彷彿させる。(高橋正子)
喜寿五人今年もそろいて夜長かな★★★

●桑本栄太郎
木枯しの一番治む入日かな★★★★
木枯らし一番が吹いた。木枯らしは入日につれて行かれるように治まり、寒さは募るが、静かな夕べを迎えた。「治む」が効いた。(高橋正子)

<ハイウェイ吟行>
一村の赤き瓦や柿の村★★★
片側の秋の日差しや峡の峰★★★

10月29日(5名)

●小口泰與
磯鴫や平の湖の木木の影★★★
単線の尾灯幽かやちちろ鳴く★★★
松虫や湖畔に画架を立てており★★★★
松虫の鳴く湖畔が素敵だ。その上に、画架を立てて描く画はしっとりと、心楽しいものであろう。(高橋正子)

●廣田洋一
産土の神は地の中落花生★★★
茹でピーナツ塩味良く頂きぬ★★★★
落花生抜けたる途端尻餅つく★★★

●多田有花
南海を曲がり台風接近中★★★
近づく台風行事中止の朝の放送★★★★
台風は沖をかすめて去りにけり★★★

●古田敬二
<久女旧居>
久女句碑しだれる柿の実をくぐる★★★★
秋雨の傘に静かに久女句碑★★★
雨に濡れ供花の鬼灯久女墓碑★★★

●桑本栄太郎
<母の見舞い帰省、ハイウェイ吟行>
穂芒の向き定まりぬ吉井川★★★★
母の見舞いに帰省の途中の吉井川。穂芒の靡き具合が一様。それが安心でもあり、落ち着かなさでもある。(高橋正子)

美作(みまさか)と言う山並みや秋日和★★★
秋水のはるか眼下や峡の谷★★★

10月28日(4名)

●谷口博望(満天星)
山帰来実に手を出せば痛き棘★★★
生きている八丁蜻蛉この可憐★★★
がまずみを画材カートに山下る★★★★
画材カートは、野外で絵を描くための画材道具をいれて持ち運べるバッグ付きのカート。山へ絵を描きにゆき、がま
ずみを見つけ、折り取ってカートに乗せた。絵心を誘うがまずみであるから、描く楽しみが増えたことだろう。(高橋正子)

●廣田洋一
冬支度そのまま旅の支度なり★★★★
旅の支度。寒くなりそうだと、コートを足し、あれを入れ、これを入れていたら、自ずと、すっかり冬支度となってしまった。旅は季節と共に。(高橋正子)

ランタナの雨に打たれてすさまじき★★★
冷まじや川へ下れる一本道★★★

●小口泰與
庇間よりラジオの声や草紅葉★★★
日おもての色となりたる烏瓜★★★★
昃れば鳥語賑やか刈田かな★★★

●桑本栄太郎
秋雲のぽつかり浮かぶ天王山★★★
園児らの朝の散歩や刈田晴れ★★★★
青空に朝日透き居り銀杏黄葉★★★

10月27日(4名)

●谷口博望 (満天星)
秋晴れや遥かな瀬戸は金色に★★★★
秋晴れの瀬戸、遠いところは太陽を反射して金色に。この金色は、私の経験から、春や夏ではなく、特に秋のものだ。(高橋正子)

黄葉のべにまんさくに小さき花★★★
秋日和山道行けば赤蝮★★★

●廣田洋一
銀杏の葉一枚散りて秋惜しむ★★★
空の青更に深まり暮の秋★★★★
身に入むや特養ホームに入りし友★★★

●小口泰與
大沼の雁を迎えてにぎにぎし★★★★
雁が渡ってきた大沼が、にぎにぎしく、生き生きとしてきた。雁の鳴き声、羽ばたく水飛沫など、雁の様子がよみてにもよく想像できる。(高橋正子)

色鳥や朝日秀づる湖の面★★★
上野毛の秀づる川や鵙の声★★★

●河野啓一
もみぢ葉を浮かべせせらぎさらさらと★★★★
もみじを浮かばせたせせらぎが、殊更ではなく、「さらさらと」流れるのが快い。軽く空気のようであるのがいい。(高橋正子)
孫乗せて飛機消えゆける秋の空★★★
次々と列島撫で行く野分かな★★★

10月26日(4名)

●谷口博望 (満天星)
最終章や桜紅葉は地に還る★★★
子らの打つ平和の鐘や銀杏落つ★★★
黄葉の百合の木の葉のさわさわと★★★★
嘗て四国松山の大学に勤めていた頃、秋になると二階の研究室の窓近くで百合の木の葉がさわさわと風に鳴った。若い頃はそれなりに研究に励んでいたので、研究室の個室の窓近くにあった百合の木の葉音が懐かしい。(高橋信之)

●小口泰與
尾瀬の水称うや尾瀬の今年酒★★★
蟷螂の鎌ぴんと張る葉末かな★★★★
流れ行く水遥かなり雁の棹★★★

●廣田洋一
柿の木や実をつけしまま末枯れる★★★
末枯るる木の葉の空に触れてをり★★★★
末枯れや老後縮まる心地して★★★

●多田有花
秋の蝶頂のわが傍らに★★★★
山の頂に立つ作者の姿が眼に浮かぶ。山の頂が明らかに眼に浮かぶ。(高橋信之)

ほろ酔いで晩秋の街歩きけり★★★
快晴の戻る山々初紅葉★★★

10月25日(5名)

●谷口博望 (満天星)
身に入むや慰霊の亀へひざまずき★★★
末枯の南京櫨の実へ雀★★★★
供養塔招霊木(おがたま)の実は人知れず★★★

●多田有花
折れし枝飛び散る山路台風過★★★
台風の散らす青葉が山路に積もる★★★
長き夜に一瞬で見る長き夢★★★

●小口泰與
日矢差して鶏頭映ゆる田居辺り★★★★
鍋割山(なべわり)は雲を育み草紅葉★★★
はらはらと竹林へ雨そぞろ寒★★★

●廣田洋一
オーバーを洗濯に出し冬支度★★★
白きカーテン洗ひて冬支度★★★
窓際に鉢植え移し冬支度★★★★
日常のささやかな生活をさりげなく切り取って佳句が生まれた。いい句だ。(高橋信之)

●桑本栄太郎
青空に雲奔り居り野分あと★★★★
野分が去り、爽快な青空となったが、上空には風が残っている。その証に雲が奔っている。雲の奔る勢いに、野分の強さを知る。(高橋正子)

青空の朝のこずえや鵙の声★★★
のぼり立つ秋の祭りや泣き相撲★★★

10月24日(5名)

●多田有花
霜降や嵐の後の山に入る★★★★
10月も終ろうというのに台風に見舞われた。嵐が過ぎ去った後の山は降霜の日を迎えた。季節の変化が激しい。(高橋正子)
倒木を踏み越えてゆく野分あと★★★
霜降の小さき日差し島に降る★★★

●小口泰與
いかめしき音や野分の風の音★★★★
佐久ははや刈田となりし山に雲★★★
峠はや塗りつぶされし夕紅葉★★★

●廣田洋一
秋寒や朝のコーヒー湯気高し★★★★
「湯気高し」に気持ちが入っている。朝寒に香り高い淹れたてのコーヒーは文句なし。冬の間近さ強くが感じられる。(高橋正子)

やや寒しコートを加へ旅用意★★★
うそ寒き朝の公園太極拳★★★

●谷口博望(満天星)
非日常へ句帳片手に牛膝★★★★
電線へ欅黄葉のささやきて★★★
蓑虫や片意地通す風来坊★★★

●桑本栄太郎
懸崖の菊の枝垂れや京町家★★★★
境内の高き梢や花梨の実★★★
雨にぬれ色葉の落つやプラタナス★★★

10月23日(5名)

●谷口博望(満天星)
転げたる木通拾えば嘴の疵★★★★
朴の実のあかあかとしてダビデ立つ★★★
手を拡げ銀杏の雌木の実を落とす★★★

●多田有花
歩く人途絶え野分の近づく町★★★★
暴風雨強まる中で柿をむく★★★
灰色の雲を一掃野分去る★★★

●小口泰與
稲架ごしに浅間の煙立ちており★★★★
浅間の裾を電車で通ったが、立ち上る噴煙を見れば、浅間が生きている感じがした。浅間の噴煙と稲架ははるか昔から、続いている自然と人間の営みだ。(高橋正子)

木道のはずれに見ゆる薄かな★★★
渋柿の甚しとも思わざる★★★

●廣田洋一
産土に新米供ふ神事かな★★★★
新米の粒の光りて炊き上がる★★★
今年米特A表示確かめり★★★

●桑本栄太郎
嵯峨菊の土間を彩り大覚寺★★★★
嵯峨菊は花びらの管が細長く、かろやかで優美で、あつものの菊とは対照的な雰囲気だ。大覚寺には嵯峨流という華道の流派があって、花には縁の深い寺である。(高橋正子)

参照:嵯峨菊 https://www.daikakuji.or.jp/blog/bojutsu-news/7869/

秋雨や稜線ゆるぶ生駒山★★★
二つ三つ銀杏落つや雨の朝★★★

10月22日(6名)

●谷口博望(満天星)
海見えて木斛の実の赤く熟れ★★★★
鴨来たる産土遠きオホーツク★★★
水鳥の鳴けば侘しや日の暮れる★★★

●多田有花
台風の先触れの雨降り続く★★★★
野分前すでに濁りし川の水★★★
首都圏に向かう台風予報円★★★

●小口泰與
波はみな岩を削りし渡り鳥★★★★
白樺の中の紅葉に溺れむと★★★
風きって群雀下る刈田かな★★★

●廣田洋一
雨上がり声賑やかに小鳥来る★★★★
楽しくてうれしい風景だ。身近な風景であればなお、楽しくてうれしい。(高橋信之)

一年ぶり友より電話小鳥来る★★★
小鳥来る定期券売場並びをり★★★

●桑本栄太郎
錦木の紅の実はじく庭木かな★★★
一反の田にコスモスの咲きにけり★★★★
何だか嬉しい風景だ。日常生活の中の嬉しさがいい。上五の「一反」は力強い言葉だ。(高橋信之)

山すその村の明かりや庭の柿★★★

●古田敬二
渡り来し蝶一頭に会う森独り★★★
杜鵑草夜来の風か散りにけり★★★
秋冷やふるさと飛騨の川の夢★★★★

10月21日(5名)

●谷口博望(満天星)
鴨すでに犇めき合へる河口かな★★★★
鴨が北国からやってきたころと思い河口へ行くと、すでに犇めき合うほどの鴨がいた。にぎやかな鴨の様子に、うれしさと安らぎを覚えた。(高橋正子)

一走り鴨鳴く声に癒されて★★★
渡り鳥来ればうれしき景色かな★★★

●小口泰與
水玉の中の花園小宇宙
置く露の中の花園小宇宙★★★(正子添削)
もとの句は季語がありません。

鳥声のはたと止みけり木の実落つ(原句)
鳥声のはたと止みたり木の実落つ★★★★(正子添削)
「けり」の詠嘆の意味が強すぎて、「木の実落つ」と句が切れ過ぎています。(高橋正子)

我が影の忽と消えけりそぞろ寒★★★

●桑本栄太郎
田面より群れて輪の翔ぶ稲すずめ★★★
秋雨やコンテナ基地の無聊とも★★★
秋雨に濡れて人なき遊具かな★★★★

●廣田洋一
故郷の大和芋買ひとろろ汁★★★★
出先にてさっと掻き込むとろろ飯★★★
一人分卸せしとろろ昼餉とす★★★

●多田有花
首元に布団引き上げそぞろ寒★★★
晴天を待ち焦がれたり鵙猛る★★★
つかの間の青空秋雨降りだしぬ★★★

自由な投句箱/10月11日~20日


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今日の秀句/10月11日~20日


10月20日(3句)

★新そばの細き仕上り古暖簾/小口泰與
今日の昼、信州の新蕎麦を封を切って食べたが、驚いたことに蕎麦はこれまでになく「細き仕上がり」なのだ。老鋪の新そばは、切れがあって、格別であろう。(高橋正子)

★葉生姜や買ひ置きたりて酒の友/廣田洋一
葉生姜のみずみずしさと、とくとくと汲まれる酒。いい風趣がある。「葉生姜や手に取るからに酒の事/白雄」の句もある(高橋正子)(高橋正子)

★殊更に雨に明るし泡立草/桑本栄太郎
泡立草の黄色は目立つ色なのだが、雨が降ると辺りの草色の中でひときわ黄色が目立つ。「雨に明るし」は言い得た。(高橋正子)

10月19日(2句)

★塀越しに香り流れる松手入/廣田洋一
松手入の句に「松手入せし家あらむ闇にほふ/中村草田男」がある。嘗て四国松山の郊外に住んでいた頃は、百坪を少し超える敷地に住んでいたので、門脇には、松を植えていた。そこで二人の子供達を育てた。季節の「松手入」が」懐かしい。(高橋信之)

★秋曇まっすぐ城と向かい合う/多田有花
城は姫路城なのかと思う。晴れの日なら城は陽の光を反射して輝いている。見るというより眩くて眺める。曇っていると、城の陰影までも見届けられる。だから、「まっすぐ城と向かい合う」となる。面白い気づきだ。(高橋正子)

10月18日(2句)

★金木犀散りては墓を明るくす/廣田洋一
親の墓、先祖の墓が明るい。死者を弔う子や孫らの優しい心情が嬉しい。(高橋信之)

★新米の粒が光りし夕餉かな/多田有花
昔の話になったが、終戦前後の都会生活を思い出した。大阪生まれで、中国大陸(旧満州大連)育ちの私にとっての終戦前後の生活は、厳しかった。米を食べることはできなかった。それでも、旧制中学2年の私は、同学年の250人あまりの生徒の指揮を執って行進をした。その中には東大に進学した者も何人か居た。妻の又従弟もその中の一人である。(高橋信之)

10月17日(1句)

★秋晴の風にふくらむラッパ袖/川名ますみ
ラッパ袖は、今年の流行らしくよく見かける。袖口がラッパのように開いてやわらかく波打って女性らしいデザインだ。秋晴れの日、袖が風にふくらんで爽やかだ。流行りの服であることも、楽しさを呼んでいる。(高橋正子)

10月16日(3句)

★鳥取から今年最後の梨売りに/多田有花
明快な一句だ。リズムがいい。上五、中七、下五それぞれのイメージが平明で、作者の思いが直に伝わってくる。嬉しい句だ。(高橋信之)

★体育は稲刈りですよ六年生/廣田洋一
小学生の子どもにもわかる句だが、大人が読んでも秀句だ。(高橋信之)

★稲架並び子等の遊びやかくれんぼ/桑本栄太郎
懐かしい風景だ。昔は、誰もが体験したことであろうと思う。(高橋信之)

10月15日(2句)

★一斉に団栗落つる音したり/小口泰與
団栗が何事が起ったかのように、一斉にぱらぱらと落ちる音に出会うことがある。風のせいかもしれないが、驚くことである。(高橋正子)

★雨降れど香り確たり金木犀/桑本栄太郎
金木犀の香りは、遠くからでも匂ってくる。確かに金木犀が匂ってくる。正に「確たり」であって、いい言葉だ。(高橋信之)

10月14日(2句)

★稲掛けて夕映えの浅間望みけり/小口泰與
稲掛けを終えて一息いれたところに浅間山の美しい夕映えが眼に映った。夕映え景色に今日一日が和むひと時。(高橋正子)

★石橋のかかる流れに杜鵑草/多田有花
石橋、流れ、杜鵑草が互いに響きあって、静かな秋の透明感が出ている。(高橋正子)

10月13日(3句)

★日の方へ黄色濃くなる楝の実/谷口博望(満天星)
楝(おうち)は栴檀の古い言葉。秋に実が熟れて丸く薄い黄色の実を花火のようにつける。晴れた青空のなかで、日に輝いている様子は特に美しい。「日の方へ」でこの句が生きた。(高橋正子)

★新しきガラス戸越しに秋陽さす/多田有花
ガラスはいつも同じように思えるが、新しいガラス戸がはまり、住まいがリフレッシュされた。秋の陽差しをよく通してうれしい限りだ。冬に向かってガラス戸越の陽差しが楽しめる。(高橋正子)

★朝顔の咲き継ぐ青の盛りかな/桑本栄太郎
西洋朝顔などは秋になってよく咲く。沢山の青い花を咲かせて朝顔自体も咲くことを楽しんでいるようだ。「青の盛り」に詩心がある。(高橋正子)

10月12日(2句)

★散歩圏伸ばして刈田五六枚/小口泰與
散歩をする範囲をいつもより伸ばした。刈田が五六枚ある。田んぼのある所に出たのだ。よい気候となったこと、体調がよいこと、秋が深まり、景色が改まったこと。すこやかな句だ。(高橋正子)

★爽籟や樟の大樹の医科大に/桑本栄太郎
樟の大樹と医科大の取り合わせがいい。大樹の樟を吹いてくる爽籟に、身が清まる思いがする。(高橋正子)

10月11日(1句)

★新米や今年も生れし特A米/廣田洋一
特Aとランクづけされた新米ができた。「今年も生れし」とあるので、「よくぞ、おいしい米を作ってくれた」と農家への感謝も。(高橋正子)

10月11日~20日

10月20日(3名)

小口泰與
新そばの細き仕上り古暖簾★★★★
今日の昼、信州の新蕎麦を封を切って食べたが、驚いたことに蕎麦はこれまでになく「細き仕上がり」なのだ。老鋪の新そばは、切れがあって、格別であろう。(高橋正子)

木道の果たて小沼の鴫の声★★★
日矢差すや雨後の黄菊の水玉へ★★★

廣田洋一
取り置きし豆腐を前に生姜摺る★★★
葉生姜やいつも買ひ置き酒の友(原句)
葉生姜や買ひ置きたりて酒の友★★★★
「いつも買ひ置き」では、季節感が薄れます。俳句は「今」を読みます。「ただ、今」が勝負です。
葉生姜のみずみずしさと、とくとくと汲まれる酒。いい風趣がある。「葉生姜や手に取るからに酒の事/白雄」の句もある(高橋正子)

豚肉の味を引き締め生姜焼★★★

桑本栄太郎
雨降るや坂道蔽う萩は実に★★★
天辺の雨に色づく庭の柿★★★
殊更に雨に明るし泡立草★★★★
泡立草の黄色は目立つ色なのだが、雨が降ると辺りの草色の中でひときわ黄色が目立つ。「雨に明るし」は言い得た。(高橋正子)

10月19日(4名)

●廣田洋一
塀越しに香り流れる松手入★★★★
松手入の句に「松手入せし家あらむ闇にほふ/中村草田男」がある。嘗て四国松山の郊外に住んでいた頃は、百坪を少し超える敷地に住んでいたので、門脇には、松を植えていた。そこで二人の子供達を育てた。季節の「松手入」が」懐かしい。(高橋信之)

枝ぶりをためつ眇めつ松手入★★★
思い切り切って落とせり松手入★★★

●小口泰與
秋晴や感謝で終る商談会★★★
葉末にて蟷螂の斧たてており★★★★
端近の我を呼びけり金木犀★★★

●多田有花
秋曇まっすぐ城と向かい合う★★★★
城は姫路城なのかと思う。晴れの日なら城は陽の光を反射して輝いている。見るというより眩くて眺める。曇っていると、城の陰影までも見届けられる。だから、「まっすぐ城と向かい合う」となる。面白い気づきだ。(高橋正子)

熟れし田に秋の長雨容赦なく★★★
背高泡立草長雨に濡れて★★★

●桑本栄太郎
水匂う雨の匂いや秋湿り★★★
秋雨やこの道ゆかば故郷へ★★★
バスを待つ間も匂い来る金木犀★★★★

10月18日(4名)

●小口泰與
朝刊のバイクの音や金木犀★★★
爽やかや小沼の端というところ★★★★
つとつうと鴫の嘴より雫かな★★★

●廣田洋一
雨吸ひて香り失せたる金木犀★★★
金木犀散りては墓を明るくす★★★★
親の墓、先祖の墓が明るい。死者を弔う子や孫らの優しい心情が嬉しい。(高橋信之)

金木犀香りゆかしきクラス会★★★

●多田有花
雨やめば鵙の高鳴き響きけり★★★
新米の粒が光りし夕餉かな★★★★
昔の話になったが、終戦前後の都会生活を思い出した。大阪生まれで、中国大陸(旧満州大連)育ちの私にとっての
終戦前後の生活は、厳しかった。米を食べることはできなかった。それでも、旧制中学2年の私は、同学年の250人あまりの生徒の指揮を執って行進をした。その中には東大に進学した者も何人か居た。妻の又従弟もその中の一人である。(高橋信之)

秋雨の止み間すかさずテニスする★★★

●桑本栄太郎
天辺の紅葉し初めり雨の木々★★★★
何処からか木犀の香や建仁寺★★★
辻に出で何方へ行かん刈田道★★★

10月17日(5名)

●小口泰與
渡り鳥妙義山(みょうぎ)の美しき奇岩かな★★★
湧窟の水澄みにけり橅の森★★★★
木木の中被さって来ぬ鵯の声★★★

●廣田洋一
白蛇神てふ真白き蛇や穴惑ひ★★★
ちょろちょろと舌を出しつつ穴惑★★★
蛇穴に乾ききったる遊水池★★★★

●多田有花
馬の耳蛙の面が欲しき秋★★★
今週は雨つづきなり冬用意★★★★
秋霖や家に籠もりてよしなしごと★★★

●桑本栄太郎
みどりなる中に紅葉やアメリカ楓★★★
船頭の竿の捌きやもみじ川★★★★
竿差して保津川下る紅葉かな★★★

●川名ますみ
秋晴の風にふくらむラッパ袖★★★★
ラッパ袖は、今年の流行らしくよく見かける。袖口がラッパのように開いてやわらかく波打って女性らしいデザインだ。秋晴れの日、袖が風にふくらんで爽やかだ。流行りの服であることも、楽しさを呼んでいる。(高橋正子)

早朝に酔芙蓉提げ人来る★★★
来客の遠き庭より酔芙蓉★★★

10月16日(4名)

●小口泰與
紅葉の便りへ羽搏つ我が髪膚★★★
逆光の薄を刷きし川の風★★★★
落鮎の鍍金剥げたる魚籠の中★★★

●多田有花
鳥取から今年最後の梨売りに★★★★
明快な一句だ。リズムがいい。上五、中七、下五それぞれのイメージが平明で、作者の思いが直に伝わってくる。嬉しい句だ。(高橋信之)

男ならヤッサかきたし秋祭★★★
秋霖のゴミ出し場に二羽の鴉★★★

●廣田洋一
体育は稲刈りですよ六年生★★★★
小学生の子どもにもわかる句だが、大人が読んでも秀句だ。(高橋信之)

陛下の稲刈りされる匂ひかな★★★
稲刈機刈り残したる四隅かな★★★

●桑本栄太郎
雨降れば雨に明るき泡立草★★★
いみじくも鬼の貌なり芙蓉の実★★★
稲架並び子等の遊びやかくれんぼ★★★★
懐かしい風景だ。昔は、誰もが体験したことであろうと思う。(高橋信之)

10月15日(4名)

●多田有花
晩秋の森に熊注意の看板★★★
俳句には長すぎる名よ背高泡立草★★★
秋の雨静かに降りて静かにやむ★★★

●廣田洋一
咲き残る花に末期の秋の雨★★★
音もなく色もなく降る秋の雨★★★
街灯の照らす細糸秋の雨★★★★

●小口泰與
一斉に団栗落つる音したり★★★★
団栗が何事が起ったかのように、一斉にぱらぱらと落ちる音に出会うことがある。風のせいかもしれないが、驚くことである。(高橋正子)

石仏の定かに見ゆる刈田かな★★★
末枯や魚下りし魚野川★★★

●桑本栄太郎
秋愁や咽に小骨の病院へ★★★
雨降れど香り確たり金木犀★★★★
金木犀の香りは、遠くからでも匂ってくる。確かに金木犀が匂ってくる。正に「確たり」であって、いい言葉だ。(高橋信之)

鳴くものの終いとなりて秋深む★★★

10月14日(4名)

●小口泰與
稲掛けて夕映えの浅間望みけり★★★★
稲掛けを終えて一息いれたところに浅間山の美しい夕映えが眼に映った。夕映え景色に今日一日が和むひと時。(高橋正子)

登校の列の伸ぶとこ金木犀★★★
紅葉追い写真に執し放下せず★★★

●廣田洋一
大鯉や池を横切る秋の昼★★★★
逆さ富士静まり返る秋の水★★★
墓の名を探して歩く秋の昼★★★

●多田有花
放置することに決まりし秋の雨★★★
秋雨の病院へ続く車の列★★★
石橋のかかる流れに杜鵑草★★★★
石橋、流れ、杜鵑草が互いに響きあって、静かな秋の透明感が出ている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
赤き羽根胸に選挙や演説人★★★
山里の昼の鎮まり添水鳴る★★★★
いみじくも貌の鬼なり芙蓉の実★★★

10月13日(4名)

●谷口博望(満天星)
木に登る冬瓜いつか豚となり★★★
目を奪ふブラシの赤や狂花★★★
日の方へ黄色濃くなる楝の実★★★★
楝(おうち)は栴檀の古い言葉。秋に実が熟れて丸く薄い黄色の実を花火のようにつける。晴れた青空のなかで、日に輝いている様子は特に美しい。「日の方へ」でこの句が生きた。(高橋正子)

●小口泰與
きざはしの何処か幽かきりぎりす★★★
風に乗る木犀の香の身のほとり★★★★
下り鮎見ゆるほどなり鳶の笛★★★

●多田有花
快晴や隣家の柿の日ごと熟れ★★★
新しきガラス戸越しに秋陽さす★★★★
ガラスはいつも同じように思えるが、新しいガラス戸がはまり、住まいがリフレッシュされた。秋の陽差しをよく通してうれしい限りだ。冬に向かってガラス戸越の陽差しが楽しめる。(高橋正子)
秋霖となる週末の天気予報★★★

●廣田洋一
多国籍の屋台連なるお会式かな★★★
尾びれ振り水面揺るがす秋の鯉★★★★
万灯は鯛提灯や勝浦講★★★

●桑本栄太郎
朝顔の咲き継ぐ青の盛りかな★★★★
西洋朝顔などは秋になってよく咲く。沢山の青い花を咲かせて朝顔自体も咲くことを楽しんでいるようだ。「青の盛り」に詩心がある。(高橋正子)

金木犀光り茂みの香りけり★★★
秋雲の影の走るや天王山★★★

10月12日(4名)

●多田有花
どんぐりを拾いつ山を登りけり★★★★
楽しい句だ。山を登り、どんぐりを拾い、読み手も楽しくなる。詠み手が楽しくて、読み手も楽しくなる。いい句だ。(高橋信之)

頂に蜻蛉たっぷり群れて飛ぶ★★★
澄む秋の久美浜湾と日本海★★★

●小口泰與
合点のゆかぬ話や桐一葉★★★
散歩圏伸ばして刈田五六枚★★★★
散歩をする範囲をいつもより伸ばした。刈田が五六枚ある。田んぼのある所に出たのだ。よい気候となったこと、体調がよいこと、秋が深まり、景色が改まったこと。健やかな句だ。(高橋正子)
弓を引く作法や美しき雁の列★★★

●廣田洋一
松茸のエセンス加へ飯を炊く★★★
茸飯天地を返し椀に盛る★★★
茸飯炊けるを待ちて子ら座る★★★★
「子ら座る」家族の姿が眼に浮かんでくる。読み手の眼にありありと浮かんできて、嬉しくなってくる。(高橋信之)

●桑本栄太郎
信号を待つて眩しき秋日かな★★★
おもかげのすでに遠のく芙蓉の実★★★
爽籟や樟の大樹の医科大に★★★★
樟の大樹と医科大の取り合わせがいい。大樹の樟を吹いてくる爽籟に、身が清まる思いがする。(高橋正子)

10月11日(3名)

●小口泰與
大沼へなだれ咲きたる薄かな★★★★
巨大なる吾の影を立つ稲雀★★★
蟋蟀のうすうす聞こゆ眠りかな★★★

●桑本栄太郎
 <秋の四条大橋>
大橋や今朝の鞍馬は秋霞★★★
水底の魚影きらめき秋高し★★★
鴨川の土手に語らう秋うらら★★★★
「秋うらら」の嬉しい時間だ。読み手もまた嬉しくなる時間だ。(高橋信之)

●廣田洋一
新米や今年も生れし特A米★★★★
特Aとランクづけされた新米ができた。「今年も生れし」とあるので、「よくぞ、おいしい米を作ってくれた」と農家への感謝も。(高橋正子)

今年米山菜漬けの封を切る★★★
今年また新米炊きし老いの夕★★★