今日の秀句/9月1日~10日


9月10日(1句)

★金山寺味噌の粥食う白露かな/桑本栄太郎
瓢逸と言っていいのか、自在な心境と言っていいのか。そんな味わいのある句。今の俳人で、このような句を作れる方はそんなにいないのではないか。(高橋正子)

9月9日(2句)

★母遠し栗のおこわの香る時/古田敬二
母を思い出すのは、なんといっても母の十八番の料理であろう。栗の季節になると、栗おこわを作ってくれた。今栗おこわを目の前にして、栗の香りに母を懐かしんだ。(高橋正子)

★双子山古墳へ日差し小鳥来る/小口泰與
古墳の膨らみに、日が差して、小鳥が渡ってくる。悠久の時が広がる思いだ。(高橋正子)

9月8日(1句)

★白桃の紅に引かれて買ひにけり/廣田洋一
紅がうっすらと刷かれている白桃は、日本画に描きたいような瑞々しさがある。その紅に魅かれて買ったのだ。(高橋正子)
9月7日(1句)

★陸橋の手に取るように銀杏の実/桑本栄太郎
陸橋に上がると、並木の銀杏に手が届く。眼前に銀杏の葉がある。見れば、銀杏の実がある。見上げることしかなかったものを眼前に見ることができた、小さな驚き。銀杏も実をつけるころになった。(高橋正子)

9月6日(1句)

★秋蝉の終に鳴かざるひと日かな/桑本栄太郎
蝉は秋になれば、秋蝉と呼び変えられて、もの淋しさが加わる。気づいてみれば、今日は蝉がなかない。つに鳴かない日であった。季節はいつの間に蝉の声を消して秋が深まっている。(高橋正子)

9月5日(2句)

★全開の窓や山家の濃竜胆/小口泰與
山家の窓は全開で、山の空気が満ちている。そこに竜胆が活けられて、その青い色が澄明な雰囲気を深くしている。(高橋正子)

★自然薯の厨に置かれ妻の旅/桑本栄太郎
自然薯が厨に置かれたまま。妻がいるならとろろ飯などにして食べさせてくれるだろうが、妻は旅。自分ではなんともなるぬ自然薯。妻の留守の淋しさが少し。(高橋正子)

9月4日(1句)

★俯けど花の明るき秋海棠/廣田洋一
秋海棠の花は、花柄が伸びて垂れ下がっている。俯いてはいるが、その花の色は明るく楚々として、初秋の空気にその花が印象的だ。(高橋正子)

9月3日(1句)

★山の端の奥に雲生れ秋暑し/桑本栄太郎
「山の端の奥」は、山が空を触れ合うところの奥、向こう側の意味。雲はそこから生まれ、秋の雲となっているのだが、暑さはまだ続いている。いいところを見ていると思う。(高橋正子)

9月2日(1句)

★小豆島くっきり見えて涼新た/多田有花
有花さんが住んでいるのは姫路。山に登ると小豆島が見えるのだろう。暑さが少し落ち着くと、空気が澄んでくる。今日は小豆島がくっきり見え、「新涼」の空気を感じる。「涼新た」に体のスイッチも入れなおされるようだ。(高橋正子)

9月1日(1句)

★竜胆や降りては晴るる峠道/小口泰與
峠の秋は天気が変わりやすい。降っては晴れ、晴れた思うと、また降る。雨が降れば雨に、晴れれば、晴れた空に、竜胆は色を深める。(高橋正子)

9月1日~10日


9月10日(4名)

小口泰與
コスモスの打ち交じりけり山の鳥★★★
秋茜訴ふることありて飛ぶ★★★
山の木のいよよ紅鵙日和★★★★

廣田洋一
通りがけ一つ捥ぎたる林檎かな★★★
デザートに林檎を剥くや朝ごはん★★★
林檎捥ぐ梯子立てかけ津軽富士★★★★

多田有花
新幹線東京の秋に滑り入る★★★★
アイスショー済んで吹かれし秋夜風★★★
秋葉原まだ閑散と秋の朝★★★

桑本栄太郎
建仁寺の土塀高きや花梨の実★★★
自然薯のありて麦飯炊くことに★★★
金山寺味噌の粥食う白露かな★★★★
瓢逸と言っていいのか、自在な心境と言っていいのか。そんな味わいのある句。今の俳人で、このような句を作れる方はそんなにいないのではないか。(高橋正子)

9月9日(4名)

古田敬二
小柄なる母の十八番の栗おこわ★★★
母遠し栗のおこわの香る時★★★★
母を思い出すのは、なんといっても母の十八番の料理であろう。栗の季節になると、栗おこわを作ってくれた。今栗おこわを目の前にして、栗の香りに母を懐かしんだ。(高橋正子)

蒸しあがる小さき背の母栗おこわ

小口泰與
青空に浮かびし語彙や秋小鳥★★★
双子山古墳へ日差し小鳥来る★★★★
古墳の膨らみに、日が差して、小鳥が渡ってくる。悠久の時が広がる思いだ。(高橋正子)
産土の舂く頃の蕎麦の花★★★

廣田洋一
朝早き草に露なき白露かな★★★
秋草刈る慌てふためく団子虫★★★
ビル谷間新涼の風渦巻きぬ★★★★

桑本栄太郎
倒木のそのままありぬ野分跡★★★
ブルーシート屋根の増え居り台風禍★★★
教会の道のすがらや白木槿★★★★

9月8日(4名)

廣田洋一
白桃の紅に引かれて買ひにけり★★★★
紅がうっすらと刷かれている白桃は、日本画に描きたいような瑞々しさがある。その紅に魅かれて買ったのだ。(高橋正子)

桃剥くや切れ切れの皮積み上げて★★★
湯を通しさつと剥きたる白桃かな★★★

小口泰與
水澄むや赤城九峰指呼の間に★★★★
秋雨やおっきり込みの炊き上がり★★★
ひぐらしや日日に伸びたる木木の影★★★

桑本栄太郎
秋冷や想い出遠き夢の里★★★
倒木の数多残りぬ野分跡★★★
南瓜煮る妻の夕餉やコロッケに★★★★

古田敬二
電線に木曽へ別れの帰燕かな(原句)
電線に木曽に別かるる帰燕かな★★★★(正子添削)
木曽源流渡る電線秋燕★★★
新涼や源流近き橋に立つ★★★

9月7日(3名)

小口泰與
愛犬を抱え立ち読み鉦叩★★★
ぺちゃんこになる引力よ熟柿落つ★★★
夕映えの浅間や忽と雁の棹★★★★

廣田洋一
秋草の色とりどりに土手の道★★★★
空き畑に緑の波や秋の草★★★

秋草や風吹き渡る秋の空(原句)
秋草や風吹き渡る青き空★★★(正子添削)

桑本栄太郎
秋冷の哀しき夢に哭き居たる★★★
陸橋の手に取るように銀杏の実★★★★
陸橋に上がると、並木の銀杏に手が届く。眼前に銀杏の葉がある。見れば、銀杏の実がある。見上げることしかなかったものを眼前に見ることができた、小さな驚き。銀杏も実をつけるころになった。(高橋正子)

白粉の花も実となる夕日かな★★★

9月6日(4名)

廣田洋一
夜食用野菜スープを煮込みけり★★★
野菜スープ白飯にかけ夜食かな★★★
プレゼンの資料整へ夜食かな★★★★

小口泰與
忙しげに馬追い鳴くやライン鳴る★★★
啄木鳥や覚満淵へ朝日差す★★★
色鳥やレンズ交換いたしをる(原句)
色鳥やレンズ交換しておりぬ★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
秋蝉の終に鳴かざるひと日かな★★★★
蝉は秋になれば、秋蝉と呼び変えられて、もの淋しさが加わる。気づいてみれば、今日は蝉がなかない。つに鳴かない日であった。季節はいつの間に蝉の声を消して秋が深まっている。(高橋正子)

ぎんなんの風の狼藉すべも無く★★★
<北海道道南地震>
崩れ落つ山の吞みこむ稲田かな★★★

9月5日(4名)

多田有花
絵を描きぬ野分近づく音の中★★★
運動会の練習始まる河川敷★★★★
えのころや野鳥を撮りし男座す★★★

小口泰與
ごうごうと天狗の業か台風禍★★★
朝日受けきらら稲穂の輝けり★★★
全開の窓や山家の濃竜胆★★★★
山家の窓は全開で、山の空気が満ちている。そこに竜胆が活けられて、その青い色が澄明な雰囲気を深くしている。(高橋正子)

廣田洋一
青空に切先立てしオクラの実(原句)
青空に切先立ててオクラの実★★★(正子添削)

雨上がり赤く輝く唐辛子★★★
この句で問題はありませんが、下のようにも表現できると思います。
雨上がり赤が輝く唐辛子★★★★(正子添削例)

土手覆ふ穂先波打つ猫じゃらし(原句)
土手覆ひ穂先波打つ猫じゃらし★★★(正子添削)

桑本栄太郎
むんむんと匂う田道や稲の秋★★★
自然薯の厨に置かれ妻の旅★★★★
自然薯が厨に置かれたまま。妻がいるならとろろ飯などにして食べさせてくれるだろうが、妻は旅。自分ではなんともなるぬ自然薯。妻の留守の淋しさが少し。(高橋正子)

風神の次ぎは豪雨や野分荒れ★★★

9月4日(4名)
作業中!

多田有花
秋燕一羽曇り空を低く飛ぶ★★★
蝉の声細くなりたる九月かな★★★
休暇果つ少年少女小麦色★★★★

廣田洋一
俯けどぱつと開きし秋海棠(原句)
「はっと開きし」のところが気になります。

俯けど花の明るき秋海棠★★★★(正子添削①)
秋海棠の花は、花柄が伸びて垂れ下がっている。俯いてはいるが、その花の色は明るく楚々として、初秋の空気にその花が印象的だ。(高橋正子)

俯けど花あかあかと秋海棠(正子添削②)

楚々としてひととこ照らす秋海棠★★★
雨に濡れ色気増したる秋海棠★★★

小口泰與
いや白く月光浴びぬ榛名富士★★★

夕暮の音色定かやきりぎりす(原句)
夕暮の鳴く音定かやきりぎりす★★★(正子添削)

貴船菊朝の鶏舎の賑わしき★★★★

桑本栄太郎
台風の予報進路や今朝の晴れ★★★
咆哮の風が樹々食む颱風裡★★★
ぱたぱたと灯火明暗颱風裡★★★

9月3日(4名)

多田有花
みんみんとつくつくぼうし重唱す★★★
八月尽河川敷の芝刈る香★★★
虫の音に取り囲まれし夜となる★★★

廣田洋一
黒葡萄歯ごたへの良き一粒かな★★★
葡萄食ぶ一粒ごとに子と語る★★★★
ワイン用葡萄連なる畑かな★★★

小口泰與
秋風や寺といえども末寺にて★★★
三山は秀を競わずや稲の秋★★★★
もろこしの刈られ眼間浅間山★★★

桑本栄太郎
草木みな透けて色づく残暑かな★★★★
山の端の奥に雲生れ秋暑し★★★★
「山の端の奥」は、山が空を触れ合うところの奥、向こう側の意味。雲はそこから生まれ、秋の雲となっているのだが、暑さはまだ続いている。いいところを見ていると思う。(高橋正子)

身に入むや遠くの友の逝去聞く★★★

9月2日(3名)

廣田洋一
白き皿ゴマを散らせる衣被★★★
その丸味舌に転がし衣被★★★
衣被つるりと剥きし曇り空★★★

小口泰與
虫の音や赤城の冷気届きける★★★
稲の香や赤城の空sの青あおと★★★★
稲の秀や五百の雀の何処より★★★

多田有花
小豆島くっきり見えて涼新た★★★★
有花さんが住んでいるのは姫路。山に登ると小豆島が見えるのだろう。暑さが少し落ち着くと、空気が澄んでくる。今日は小豆島がくっきり見え、「新涼」の空気を感じる。「涼新た」に体のスイッチも入れなおされるようだ。(高橋正子)

秋雷を避けて急ぎし山路かな★★★
九月来る朝の雷鳴とともに★★★く

9月1日(3名)

小口泰與
竜胆や降りては晴るる峠道★★★★
峠の秋は天気が変わりやすい。降っては晴れ、晴れた思うと、また降る。雨が降れば雨に、晴れれば、晴れた空に、竜胆は色を深める。(高橋正子)

老いてこそ恃むは妻よ合歓紅葉★★★
うららかや赤城は裾野長からむ★★★

廣田洋一
会席の前菜となる茸かな★★★
椎茸や衣の薄き天ぷらに★★★
しんみりと集ふ会席九月かな(原句)
じみじみと集ふ会席九月かな★★★(正子添削)

桑本栄太郎
川べりの風の茂みや葛の花(原句)
川べりの茂みに風や葛の花★★★(正子添削)

ドアを開け荷物受け取る九月かな★★★
目覚むればすでに入日や秋の冷え★★★

自由な投句箱/8月21日~31日


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今日の秀句/8月21日~31日


8月31日(1句)

★雷雨去りたちまち風ある虫の闇/桑本栄太郎
雷雨の間は、ひっそりとしていた虫も雷雨が去ると、真暗闇に風が吹き、虫が盛んに鳴き出す。自然の現象に敏感な秋の虫である。(高橋正子)

8月30日(1句)

★身の内の何かほぐれり新涼に/多田有花
暑さが続くと、暑さに身構える、暑さに耐えるような気持が働くが、新涼となると、体の中のなにか、ほぐれる、体が和らぐような気持になる。新涼の爽やかさ。(高橋正子)

8月29日(1句)

★水槽を洗い終わりて涼新た/小口泰與
金魚や目高を飼っていれば、水槽の水を替えたり、洗ったり、手がいるが、洗って、新しい水をいれると、さっぱりと気持ちよい。目にも涼しい。「涼新た」である。(高橋正子)

8月28日(1句)

★稜線の木々月光に影を成す/多田有花
月光が静かに作り出す稜線の木々のシルエット。影絵のような美しさ。(高橋正子)

8月27日(1句)

★乙訓の丘に風生れ夕あきつ/桑本栄太郎
乙訓は「弟国」の意味がある奈良時代ごろからの歴史ある山城の国の要所。「山崎の戦(天王山の戦)」もあった。そういった丘に夕べ佇むと風がよく吹き、蜻蛉が行き来する。歴史に思いが及びもするだろう。(高橋正子)

8月26日(1句)

★朝顔や咲きのぼりたる庇かな/廣田洋一
朝顔がついに庇まで咲きのぼり、そこには朝日がよく当たり、明るく涼しげに見える。が、少しさびしさも。庇までのぼった朝顔は、そのまま季節の移り変わりの姿でもある。(高橋正子)

8月25日(1句)

★池の面を明日には帰燕となる一群/古田敬二
九月が近づくと燕は南方へ帰るために集まる。集まってすぐ飛び立つわけではないらしく、池の面や川面
を飛んでいる。明日は帰るのだろう。この一群が帰ると日本の空は淋しくなる。

余談だが、最近では、「帰燕」の季題を出されて、燕の生態に沿って正しく詠んだ句は、例えば、十句中四句くらいで、少ないそうだ。(高橋正子)

8月24日(2句)

★台風の雲色色や山は蒼/小口泰與
台風が来る前であろう。風の影響を受けてかいろいろな雲があり、動きも様々。山は泰然として蒼い。山の蒼さが雲の様々を引き立て、大きな自然を感じさせてくれる。(高橋正子)

★稲の香や乙訓郷に風生るる/桑本栄太郎
風があれば、稲の香がよく香る。稲穂もさざめく。乙訓の里の実りの秋がよく詠まれている。(高橋正子)

8月23日(2句)

★清らかな野川や鳥と鰯雲/小口泰與
鰯雲が空に広がり、鳥が囀る。野川は清らかに流れる。ふるさとは麗しきかな。(高橋正子)

★早風呂を済ませ二人の零余子飯/古田敬二
子どもたちも独立し、夫婦二人の暮らし。早風呂を済ませ、零余子飯の夕飯をいただく。清潔で、つましい、心豊かな暮らし。
アメリカの小説(題名は失念)に、老婦人が庭からレタスを採ってきて、きれいに洗い、丁寧にちぎって食事をする場面があったのを思い出した。アメリカは初めピューリタンが移住したから、そんな暮らしがあったのだろうと思ってみたりもした。(高橋正子)

8月22日(2句)

★山下りて熟れし早稲田の中帰る/多田有花
山を下りると山とは違う景色は田んぼがあること。早稲田の中を帰るとき、平地の実り、平地の生活の温みを感じる。(高橋正子)

★露草や耳立てて聞く風の音/廣田洋一
露草の青が空気を澄ませる。涼しい風が来そうだ。耳を立てて風の音を聞く。繊細な感覚。(高橋正子)

8月21日(1句)

★頂の昼食に来る秋の蝶/多田有花
頂には、蝶や蜻蛉などが意外といるようだ。秋山の頂の爽やかな昼ご飯に蝶が訪ねてくる。下界の喧騒を離れて、たのしい頂のひとときである。(高橋正子)

8月21日~31日


8月31日(3名)

小口泰與
あさがおや焼き饅頭の味噌の出来★★★
上州の小泉稲荷秋桜★★★
今朝赤城くっきり見ゆや秋茜★★★★

廣田洋一
竿持ちて鮭の群待つ浦日和★★★★
鮭切身塩味薄く焼きにけり★★★
鮭上る思ひ詰めたる背波立て★★★

桑本栄太郎
土の香に目覚む朝や秋驟雨★★★
哀しみの数多過ぎ居り八月尽★★★

雷雨去りたちまち風の虫の闇(原句)
雷雨去りたちまち風ある虫の闇★★★★(正子添削例)
「闇」に掛かるのが「風の」「虫の」と「の」が多用されて、調べはきれいなのですが、句がくっきりしなく、観念的になっています。そのところを工夫が必要と思います。
雷雨の間は、ひっそりとしていた虫も雷雨が去ると、真暗闇に風が吹き、虫が盛んに鳴き出す。自然の現象に敏感な秋の虫である。(高橋正子)

8月30日(4名)

小口泰與
紺碧の暁の赤城や秋あかね★★★
露草や老いの手助け猫車★★★★
蒼天に雲ひと刷けや花芙蓉★★★

多田有花
身の内の何かほぐれし新涼に(原句)
「ほぐれし」の「し」は「き」の連体形なので、「新涼に」かかります。それで、この句意の場合は、「し」は不自然な感じがします。
身の内の何かほぐれり新涼に★★★★(正子添削)
暑さが続くと、暑さに身構える、暑さに耐えるような気持が働くが、新涼となると、体の中のなにか、ほぐれる、体が和らぐような気持になる。新涼の爽やかさ。(高橋正子)

前山に日ごと増しつつ秋の色★★★
秋の夜の火星見上げて床に就く★★★

廣田洋一
秋空に浮かぶ車両のリニアかな★★★
やや薄く色づく稲田曇り空★★★★
道端の垂れし稲穂に触れてみる★★★

桑本栄太郎
長き夜や真夜の団地に救急車★★★
干上がりてさざれや秋の旱川★★★
赤とんぼ連れて田道の入日かな★★★★

8月29日(3名)

小口泰與
水槽を洗い終わりて涼新た★★★★
金魚や目高を飼っていれば、水槽の水を替えたり、洗ったり、手がいるが、洗って、新しい水をいれると、さっぱりと気持ちよい。目にも涼しい。「涼新た」である。(高橋正子)

もれも無く鳩の翔るや秋の朝★★★
榛名富士映る水面や赤とんぼ★★★

廣田洋一
黒葡萄一皮剥けば赤き汁★★★
一人一房巨峰のおやつ奢りけり★★★
また新種試食してみる白葡萄★★★

桑本栄太郎
うそ寒や肩を竦めて目覚め居り★★★
夜半忌の底紅積もる垣根かな★★★
ベランダの鉢に聞き居りきりぎりす★★★

8月28日(4名)

小口泰與
秋澄むや赤城離るる暁の雲★★★
山間の利根の支流や秋の雲★★★★
台風やいまだ河川の整わず★★★

廣田洋一
ピカピカと帰宅促す稲光★★★
絶え間なく駅舎の上の稲光★★★★
稲光追ひかけ来たる豪雨かな★★★

桑本栄太郎
きちきちの飛び出し誘う田道かな★★★★
溝そばの花や小川の楽を聞き★★★
音のみの鳴りて終いや秋の雷★★★

多田有花
秋の雷音激しくて雨少し★★★
町並みからオレンジ色の月が出て★★★
稜線の木々月光に影を成す★★★★
月光が静かに作り出す稜線の木々のシルエット。影絵のような美しさ。(高橋正子)

8月27日(4名)

多田有花
秋の蛇蛇行の形に固まりぬ★★★
蝉の声消えて静かな秋の朝★★★

蜘蛛の巣の枝に光りし残暑かな(原句)
蜘蛛の巣の枝に光れる残暑かな★★★(正子添削)
「光りし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で「光った」の意味。「光れる」は、「光っている」の意味。(高橋正子)

小口泰與
靴紐を結び直せり秋の山★★★★
蜩や山今だ日を寄せ付けず
「今だ」は、「未だ」のこと?

水槽の魚の動きや涼新た★★★

廣田洋一
生垣につかまり鳴くや秋の蝉★★★

蜩の声波打つ夕べかな(原句)
蜩の声の波打つ夕べかな★★★(正子添削)

平成の最後の秋や蝉の声★★★★

桑本栄太郎
干上がりて石のさざれや秋暑し★★★

乙訓は風の丘なり夕あきつ(原句)
乙訓の丘に風生れ夕あきつ★★★★(正子添削)
「風の丘」が甘いです。つまり、観念とか、言葉自体に傾いています。そうなると、句に現実感、リアリティが薄れます。
乙訓は「弟国」の意味がある奈良時代ごろからの歴史ある山城の国の要所。「山崎の戦(天王山の戦)」もあった。そういった丘に夕べ佇むと風がよく吹き、蜻蛉が行き来する。歴史に思いが及びもするだろう。(高橋正子)

送電塔の背ナに雲生れ秋の嶺★★★

8月26日(4名)

小口泰與
ラジオより流る和楽よ麗人草★★★
日を浴びてカーテンの色秋薊★★★
秋ばらの下刈り済ませ入日かな★★★

多田有花
盆の月下に火星を従えて★★★
朝霧の晴れてあらわる山の影★★★
つくつくぼうし今にぎやかに森の道★★★★

廣田洋一
朝顔のカーテン揺れて老夫婦★★★
朝顔や宿題用の写真撮り★★★

朝顔や咲きのぼりたる庇かな★★★★
朝顔がついに庇まで咲きのぼり、そこには朝日がよく当たり、明るく涼しげに見える。が、少しさびしさも。庇までのぼった朝顔は、そのまま季節の移り変わりの姿でもある。(高橋正子)

桑本栄太郎鉄塔の背ナは山の端秋の雲★★★
高槻のブルーシートや秋暑し★★★
酔芙蓉薫香いまだ色に出ず★★★

8月25日(5名)

古田敬二
池の面を明日には帰燕となる一群★★★★
九月が近づくと燕は南方へ帰るために集まる。集まってすぐ飛び立つわけではないらしく、池の面や川面
を飛んでいる。明日は帰るのだろう。この一群が帰ると日本の空は淋しくなる。

余談だが、最近では、「帰燕」の季題を出されて、燕の生態に沿って正しく詠んだ句は例えば、十句中四句くらいで、少ないそうだ。(高橋正子)

<印象派絵画展>
初秋の壁面大きくルノアール★★★
髪長くひとみは涼しルノアール★★★

多田有花
台風一過二羽の雀が電線に★★★★
台風の余りの風が山に吹く★★★
枯木ひとつ倒して台風の去りぬ★★★

小口泰與
漢薬を煎ず土瓶の残暑かな★★★
鶺鴒や彩雲利根川(とね)に留まれり★★★
赤城嶺へ雲ひと刷けや渡り鳥★★★★

廣田洋一
桃の香にひかれ売場に立ち寄りぬ★★★★
手に乗せし桃の香りを吸ひこめり★★★
水蜜桃最後に種をしゃぶりけり★★★

桑本栄太郎
青空の雲の途切れや野分過ぐ★★★
ゆさゆさと揺れて香りぬ稲穂かな★★★★
稲穂垂る街の田圃にモノレール★★★

8月24日(5名)

多田有花
嵐近づく秋蝉のなお盛ん★★★★
嵐来るなかを去り行く秋の蝶★★★
台風の目は三百キロの沖にあり★★★

小口泰與
台風の雲色色や山は蒼★★★★
台風が来る前であろう。風の影響を受けてかいろいろな雲があり、動きも様々。山は泰然として蒼い。山の蒼さが雲の様々を引き立て、大きな自然を感じさせてくれる。(高橋正子)

同胞の各各老いて天高し★★★
カンナ咲く村の真中の鍛冶屋かな★★★

廣田洋一
秋天へぐいぐい伸びる雑草魂★★★
秋天に白き航路や飛行雲★★★

秋天の流れる如き富士の峯(原句)
文語なら「流るる如き」となります。「峰」は尾根の突き出た部分を指します。

秋天に流るる如し富士稜線★★★★(添削)

桑本栄太郎
稲の香や乙訓郷に風生るる★★★★
風があれば、稲の香がよく香る。稲穂もさざめく。乙訓の里の実りの秋がよく詠まれている。(高橋正子)

柿畑の柿の実いよよ天を向く★★★
青き実の小枝襤褸や野分跡★★★

古田敬二
新涼や飛騨の川面の風の道★★★
カナカナが彼方にかすか夕暮れる★★★
初紅葉病院前のポプラから★★★★

8月23日(5名)

小口泰與
清らかな野川や鳥と鰯雲★★★★
鰯雲が空に広がり、鳥が囀る。野川は清らかに流れる。ふるさとは麗しきかな。(高橋正子)

カーテンの色変えにけり秋の蝉★★★
常連の客の占めたり月見豆★★★

多田有花
野分来る山肌駆ける雲の影★★★★
南海の嵐から来る秋暑かな★★★
青空に台風近づく風の音★★★

廣田洋一
人気取りお化け南瓜を持ち込みぬ★★★
出刃の背を何度も叩き南瓜割る★★★
南瓜煮る種を集める子等の居て★★★★

古田敬二
早風呂を済ませ二人の零余子飯★★★★
子どもたちも独立し、夫婦二人の暮らし。早風呂を済ませ、零余子飯の夕飯をいただく。清潔で、つましい、心豊かな暮らし。
アメリカの小説(題名は失念)に、老婦人が庭からレタスを採ってきて、きれいに洗い、丁寧にちぎって食事をする場面があったのを思い出した。アメリカは初めピューリタンが移住したから、そんな暮らしがあったのだろうと思ってみたりもした。(高橋正子)

二人して食む幸せの零余子飯★★★
大きめの零余子は零れるものと知る★★★

桑本栄太郎
突然の突風来たり野分来る★★★
雲奔り風の軋むや野分来る★★★
日もすがらテレビ報すや野分荒れ★★★★

8月22日(4名)

小口泰與
初秋や雲駆け上がる赤城山★★★★
石階へ湯の香漂う木槿かな★★★
湖へ差すつれなき朝日秋の風★★★

多田有花
山下りて熟れし早稲田の中帰る★★★★
山を下りると山とは違う景色は田んぼがあること。早稲田の中を帰るとき、平地の実り、平地の生活の温みを感じる。(高橋正子)

秋茄子の規格外れをいただきぬ★★★
むかし人通いし峠秋の風★★★

廣田洋一
露草や耳立てて聞く風の音★★★★
露草の青が空気を澄ませる。涼しい風が来そうだ。耳を立てて風の音を聞く。繊細な感覚。(高橋正子)

露草や朝の雫を光らせて★★★
露草の雨に打たれて怯まざる★★★

桑本栄太郎
赤とんぼ辻に集いて浮かび居り★★★★
小諸なる馬子唄峰に藤村忌★★★
干上がりし中州となりぬ秋旱★★★

8月21日(4名)

小口泰與
花芙蓉次つぎ山は雲を生み★★★★
雨後の朝日は邪険にも秋の風★★★
花芙蓉利根の白波日日変わり★★★

多田有花
稜線の傾斜を登る風は秋★★★
頂の昼食に来る秋の蝶★★★★
頂には、蝶や蜻蛉などが意外といるようだ。秋山の頂の爽やかな昼ご飯に蝶が訪ねてくる。下界の喧騒を離れて、たのしい頂のひとときである。(高橋正子)

秋の陽の香りあふれる頂に★★★

桑本栄太郎
発電のプロペラ高く秋暑し★★★
葉の空きし桜並木やうす紅葉★★★★
林火忌の蝉の声止む日照雨かな★★★

廣田洋一
アジア大会記録に迫る台風かな★★★

台風や目玉連ねて近づきぬ(原句)
台風の目や連なって近づけり★★★(正子添削)

台風来電車動くを祈りけり★★★★

自由な投句箱/8月11日~20日


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今日の秀句/8月11日~20日


8月20日(1句)

★秋蝉や目覚めて遠き少年期/桑本栄太郎
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

8月19日(2句)

★奥利根の水まろまろと蕎麦の花/小口泰與
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)

★富士暮れて港に花火始まれる/川名ますみ
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

8月18日(2句)

★朝靄の晴れて確たり稲穂垂る/桑本栄太郎
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

★参道に萩の花咲く妻の墓/廣田洋一
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

8月17日(1句)

★秋海棠赤城九峰朱に染まり/小口泰與
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

8月16日(2句)

★花葛や一直線の湖の径/小口泰與
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

★送り火やしんがりを行く長男よ/廣田洋一
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

8月15日(1句)

★爽やかな朝の厨の音聞こゆ/小口泰與
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

8月14日(1句)

★盆か路傍に白き百合供え/多田有花
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

8月13日(2句)

★湖へ差す朝日強きよ秋の風/小口泰與
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

★盆の沖御魂迎えしごと晴れる/多田有花
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

8月12日(1句)

★風に乗る霧の迅しや山下る/小口泰與
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

8月11日(2句)

★赤とんぼ夕陽あたれば金色に/多田有花
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

★山すその音に目覚むや威し銃/桑本栄太郎
桑本栄太郎山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

8月11日~20日


8月20日(4名)

多田有花
豪雨跡越えて登りし秋の山★★★
影選び秋暑の道を歩きけり★★★
一歩ずつ新涼確かめつつ歩く★★★

小口泰與
里山や釣鐘人参そよと揺れ★★★
萩咲くや石段街のお土産屋★★★
鳳仙花夕日蹴りたる水面かな★★★

桑本栄太郎
秋蝉や目覚めて遠き少年期★★★★
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

産土の辻に幟や宮相撲★★★
合歓は実に手足伸びたる大姪よ★★★

廣田洋一
秋夕焼雲の一筋棚引けり★★★
秋夕焼ほつと一息山の暮★★★
秋夕焼烏飛び交ふ里の暮★★★

8月19日(5名)

多田有花
森歩く新たに涼し風の音★★★
秋晴れや六甲淡路くっきりと★★★★
秋風にはるか四国の山の影★★★

小口泰與
浅間なお秋月の出にいとまあり★★★
奥利根の水まろまろと蕎麦の花★★★★
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)
訴うるチワワの眼赤のまま★★★

廣田洋一
初秋刀魚思ひの外の小ぶりなり★★★
居酒屋の煙に混じる秋刀魚の香★★★★
秋刀魚焼く厨に満つる香りかな★★★

川名ますみ
秋風を訪問ナースに教わりぬ★★★
ヘルパーもナースも秋の空気よと★★★
富士暮れて港に花火始まれる★★★★
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

桑本栄太郎
惜しみなく鳴き尽くすかに法師蝉★★★★
仰のけの落蝉白き腹を見せ★★★
合いの手の入りて惜しめり秋の蝉★★★

8月18日(4名)

小口泰與
花芙蓉野川の波の変りおり★★★
枝豆や隣家の灯りともりける★★★★
高原や缶ドロップの音さやか★★★

廣田洋一
道の端ぽつぽつこぼる萩の花★★★
参道に萩の花咲く妻の墓★★★★
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

雨に耐え枝垂れ咲きたり萩の花★★★

桑本栄太郎
朝靄の晴れて確たり稲穂垂る★★★★
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

白鷺の番と見ゆる田中かな★★★
名乗り出でしきりに惜しむ秋の蝉★★★

古田敬二
補聴器が少しざわつく秋の風★★★
角曲がる新涼届く伊吹より(原句)
角曲がり新涼届く伊吹より★★★★(正子添削)

亡き兄へ今年は一人で経を読む★★★

8月17日(5名)

小口泰與
秋海棠赤城九峰朱に染まり★★★★
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

はみ跡や利根の落鮎いずかたへ★★★
背高泡立草田畑次つぎ治めけり★★★

多田有花
乗りあわせ驟雨の中を墓参り★★★★
西瓜囲み一年ぶりの話かな★★★
秋涼や朝の日差しの透明に★★★

桑本栄太郎
枝が鳴り窓が鳴り居り初嵐★★★★
ハイウェイの彼方に霧の峰の立つ★★★
プロペラの発電塔や秋の浜★★★

廣田洋一
門出でて清々しきゃ秋の風★★★
帰り道秋風連れてぶらぶらと★★★
シャッター街色なき風の吹き抜けし★★★

古田敬二
夕風に触れて離れて猫じゃらし★★★
かなかなの彼方にかすか夕暮れる★★★
新涼や飛騨の川面に風の道★★★

8月16日(4名)

小口泰與
おとぎり草濁りそめたる湯檜曽川★★★
きちこうや雨後の浅間の雲寄せぬ★★★
花葛や一直線の湖の径★★★★
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

廣田洋一
振り向かず手を上げて去る茄子の馬★★★
送り火消しテレビに写る五山の火★★★
送り火やしんがりを行く長男よ★★★★
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

桑本栄太郎
おもい<鳥取へ盆帰省>
初秋の白兎海岸白き波★★★★
谷間に赤瓦屋根見ゆ盆帰省★★★
盆波や墓参の丘に入日見る★★★

川名ますみ
隣国の海苔の香散らす秋夕べ★★★
たのしさは秋の夕餉に載る土産★★★★
揚花火ビルの隙間の三角に★★★

8月15日(3名)

多田有花
夕映えが残暑の雲を照らしたり★★★
宵の風盆三日月に心地よく★★★
秋口の川に小舟が魚釣る★★★

小口泰與
爽やかな朝の厨の音聞こゆ★★★★
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

いずかたへ行くや落鮎定めなき★★★
今朝の利根いとど濁りて帰燕かな★★★

廣田洋一
亡き父のラーゲの記録終戦の日★★★
終戦日新聞閉じて黙祷す★★★★
見送りし兵士の笑顔終戦忌★★★

8月14日(3名)

小口泰與
瑕瑾無き葡萄や鴉声高き★★★
裂帛の空手の気合稲の殿★★★
巨大なる白雲立ちて野分晴★★★★

多田有花
新盆か路傍に白き百合供え★★★★
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

板金屋バーベキューする盆休み★★★
まだ雲の吹き上がりたる残暑かな★★★

廣田洋一
隣近所ワイン持ち寄り鰯焼く★★★
美しや鰯の群の流線形★★★
焼きたての鰯を配る夕餉かな★★★★

8月13日(3名)

小口泰與
湖へ差す朝日強きよ秋の風★★★★
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

三山の容讃えて秋うらら★★★
わらべ等の指差す彼方秋の虹★★★

多田有花
盆の沖御魂迎えしごと晴れる★★★★
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

虫の音の聞こえ初めにし夜となる★★★
校庭に人無く静か盆休み★★★

廣田洋一
足下に轟音届く秋の雷★★★
用水路水の溢れて秋の雷★★★★
秋の雷向こうのビルに落ちたるか★★★

8月12日(3名)

小口泰與
いまだなお湖の朝日や秋の風★★★
風に乗る霧の迅しや山下る★★★★
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

三山の容それぞれ秋うらら★★★

多田有花
盆近し車溢るる高速路★★★
遠方のナンバー増えし盆の入★★★
盆花をカートにレジに並びおり★★★★

廣田洋一
故郷の日々甦る走馬灯★★★★
年月の一瞬にすぎ走馬灯★★★
灯を点し仏と話す走馬灯★★★

8月11日(4名)

小口泰與
秋めくや魚の斑ぐいと反転す★★★
初秋や旧家の庭の草の丈★★★
あけぼのの野川の流れ秋めけり★★★★

多田有花
赤とんぼ夕陽あたれば金色に★★★★
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

新涼や希少なチケット手に入れる★★★
秋口の部屋に野鳥が迷い込む★★★

廣田洋一
花カンナそれぞれ色を自己主張★★★
老ひてなほ高き目標花カンナ★★★★
しつこしと思ふこと有りカンナの緋★★★

桑本栄太郎
山すその音に目覚むや威し銃★★★★
故郷へ帰省の句であろう。山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

滞在のくすり数えり盆用意★★★
京なれや竹林よしと法師蝉★★★

自由な投句箱/8月1日~10日


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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/8月1日~10日


8月10日(2句)

★影連れて森に消えゆく秋の蝶/多田有花
蝶が森の中へと消える。日向の影をもったまま消える秋の蝶。何かの精のようだ。(高橋正子)

★畦道へ忽と涌き出づ蜻蛉かな/小口泰與
畦道を歩いていると、辺りに忽然と蜻蛉が湧いたように現れることがある。ほんとうに、「忽」となのである。蜻蛉の世界に入ったのだ。(高橋正子)

8月9日(2句)

★いち早く秋の来ている白樺湖/小口泰與
白樺湖にはいち早く秋が来た。白樺湖の名が生きた句だ。(高橋正子)

★新涼の風吹き来たり日もすがら/桑本栄太郎
新涼の風の爽やかさ。纏える風の涼しさが。日もすがらなので、この嬉しさはこの上ない。(高橋正子

8月8日(2句)

★おにやんま頂の空をつーいつい/多田有花
このおにやんまのように振る舞いたいものだ。広々とした頂を、素知らぬ顔で、つーいつい。(高橋正子)

★溝川の水の流れや葛の花/桑本栄太郎
葛の花は八月にははや咲いている。溝川の流れの音に葛の花が垂れる秋のはじめ。秋を印象付ける葛の花を見たうれしさ。(高橋正子)

8月7日(1句)

★新刊を積みし机や秋立てり/廣田洋一
新刊書というのは、印刷の匂いも新しく、読書の心を逸らせるものだ。涼しくなったら読もうと楽しみに机上に積んである。いよいよ今日は立秋だ。(高橋正子)

8月6日(2句)

★広島忌黙祷済ませ農に出る/古田敬二
忘れてはならない地球への広島への原爆投下の日。黙祷をささげ、畑仕事にでる。平和を強く願う作者だ。(高橋正子)

★香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
稲の花の香りがいい。稲の花はちらちらと小さく「うすき白さ」の花なのだ。上手な句だ。(高橋正子)

8月5日(2句)

★ハモニカや月のベンチを一人占め/廣田洋一
月夜のベンチ。座ってハモニカを吹く人がいる。自分の吹くハモニカの音色に浸ってベンチを一人占めなのだ。ハモニカと月にきれいで静かな世界がある。(高橋正子)

★友集い旅かばん解く夏座敷/古田敬二
友たちのとの旅は、特別に楽しいものであろう。広々とした夏座敷に、旅の鞄をほどく寛いだ気持ちがいいのだ。(高橋正子)

8月4日(1句)

★向日葵や茎伸び伸びと山隠す/小口泰與
向日葵がよく伸び育って、山を隠すほどになった。向日葵の種類はいろいろだが、ロシア向日葵などは、大きな花で存在感のある花だ。花ではなく、「茎伸び伸びと」と詠んで、茎に着目したのが面白い。読み手の体も伸び伸びするような気持ちになる。(高橋正子)

8月3日(1句)

★友よりの新豆腐まず供へけり/廣田洋一
新豆腐と聞くだけで、すずやかな気持ちになる。新豆腐の季節が巡って来て、友よりいただく。この清らかなものを供えて、感謝である。(高橋正子)

8月2日(1句)

★八月と思う朝や窓の風/桑本栄太郎
人の心理は不思議なもので、そう思うと、そのように感じられる。八月という月は、日本人にはいろいろと思い起こさせる月である。今は八月であると思うと、窓から入る風も幾分秋めいて感じられる。(高橋正子)

8月1日(句)

★朝の庭赤極まりしトマトもぐ/古田敬二
「赤極まりし」とまでに熟れたトマト。瑞々しくて、はち切れそうだ。自家菜園の楽しみを率直に無駄なく詠んだのがいい。(高橋正子)

★向日葵やちらちら見える白きシャツ/廣田洋一
向日葵が林のようにたっている向こうに白いシャツがちらちら見える。畑仕事をしている人か。単に通り過ぎる白シャツの人か。向日葵と白シャツは生き生きと健康的な取り合わせだ。(高橋正子)