12月23日(日)/天皇誕生日

 鎌倉・報国寺
★竹林の千幹二千幹が冬  正子
千幹、二千幹と言う広大な竹林と同時にその辺りすべてに深閑とした静かな佇まいを想像させます。しかも「…が冬」と言う措辞がインパクトが大変強く、冬の竹林の色、音、影、光りなど次々と想像が膨らみ楽しませて頂きました。 (佃 康水)

○今日の俳句
満潮へ鴨の二陣の広く浮く/佃 康水
満ちて来る潮に向かって、二陣の鴨の群れが広がり浮かんでいる。豊かな潮と浮き広がる鴨の群れが色彩的にもよい風景である。(高橋正子)

○むさしあぶみの実

[むさしあぶみの実/東京白金台・自然教育園]_[むさしあぶみの花/東京白金台・自然教育園]

  武蔵鐙(むさしあぶみ)
★草の実の赤の数多の逞しき/高橋信之

 パーフェクトな赤!こんなの初めてムサシアブミの実@植物多様性センター
 ムサシアブミの実は野川公園でも見られますが、こんなに粒と色のそろったのは初めてです。普通は虫食いがあったり、熟しすぎた粒があったりするんですが、全部が均一に赤く染まってる。あっ、植物多様性センターと言っても分かりませんね。神代植物公園の分園です。無料です。各ゾーンの中は、保護のために先日までは入れなかった。植生も落ち着いて通れるようになったんです。冬の曇り空だし、野の花も終わってる。期待しないでひと回り。でも、こんな収穫があった。あきらめないで歩いてみるもんです。ただし名札は「種類不明」となっていた。果実だけで葉がないので即断はできない。植物公園だから慎重です。サトイモ科テンナンショウ属の別の植物なんでしょうか。マムシグサも同じような赤い実をつけるからね(ブログ「多摩と入間の雑学的な散歩」より)
 武蔵鐙(むさしあぶみ、学名:Arisaema ringens)は、里芋(さといも)科テンナンショウ属。海岸近くの林中などに自生。大きな葉が2枚(さらに小葉は3枚)、その間から、「鐙」(あぶみ。馬具の一つで、鞍の両側に垂らし、乗る人が足をかけるもの。)のように丸まった形の仏焔苞(ぶつえんほう)が出てくる(うす緑色)。耳型。花は、この仏焔苞の中にあり、ふつうは見えない。この「鐙」のうち、武蔵の国で作られたタイプの「鐙」に特によく似ていたため、 この名前になった。ボクシングのグローブ、のようにも見える。

◇生活する花たち「茶の花・柊・満天星紅葉」(横浜日吉本町)

12月22日(土)

★桜冬芽空にもっともたくましき  正子
晩春に可憐な花を咲かせる桜。もう花の準備は整っており、目覚めのときを待っています。厳しい寒さを乗り越える桜の冬芽は冬空の下でたくましく息づいています。(多田有花)

○今日の俳句
猪狩を外れし犬と出会いけり/多田有花
猪狩をしてきた犬と山道で出会った。「外れし」が犬をうまく言いえている。猪を追い、山中を駆け回った犬と、今は静かに山を下る犬との対比が読み取れるのである。(高橋正子)

○浦島草の実

[浦島草の実/東京白金台・自然教育園]_[浦島草の花/小口泰與さん撮影]

★籠り居て木の実草の実拾はばや 芭蕉
★草の実をとばしいつまで空地かな/稲畑汀子
★びつしりと木の実草の実明日は晴れ/畑佳与

★浦島草の実が赤し吾も鳥の目に/高橋信之
★浦島草の実の朱に落葉落葉/高橋正子

 ウラシマソウ(学名 Arisaema urashima)は、サトイモ科テンナンショウ属の宿根性の多年草。日本の本州、四国を中心に、北海道と九州の一部に分布し、関東では4月下旬から5月上旬にかけて開花する。
 地下に偏球形の球茎を形成し、周囲に子球をつけることが多い。葉は通常1枚で、成株では11~17枚の小葉を鳥足状につけるが、実生のような小型個体では3枚~5枚の小葉をつける。小葉は先が鋭く尖る狭卵形か長楕円形で通常暗緑色である。葉の存在する期間は春から秋にかけてである。肉穂花序は葉の下につき大型の仏炎苞に包まれる。仏炎苞は濃紫色、緑紫色、緑色などで変異があり、内面には白条がある。口辺部はやや開出する。舷部は広卵形で先が尖り、開花の進展とともに垂れ下がる。肉穂花序の先端の付属体は釣り糸状に長く伸長し、これが和名の起源(浦島太郎が持っている釣り竿の釣り糸に見立てたか?)とされている。肉穂花序を形成する多数の花には花弁がなく、雄花は雄蘂のみ、雌花は雌蕊のみで形成されている。
 雄花から雌花への花粉の受粉はキノコバエの仲間による虫媒によって行われる。受粉に成功し、結実可能な条件がそろった個体では、秋にかけて果実を成熟させていく。結実した雌花群は多数の果実をトウモロコシ状につけており、当初は緑色であるが秋に成熟すると朱赤色に変わる。各果実中には0~数個の種子が形成される。成熟した果実は鳥により採食されることが知られているが、採食されずにその場で倒伏して散布されることも多い。未成熟の果実は有毒のシュウ酸化合物等を含有するが、成熟すると甘くなる(食用にはならない)。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

12月21日(金)/冬至


★柚子の香に頬のほのかに温まる  正子
お風呂でぽかぽかと、身の回りに柚子を浮かしては手に取り、香りを楽しんでおられます。(祝恵子)

○今日の俳句
一しきり霰の音を硝子戸に/藤田洋子
急な冷え込みに、霰が一しきり降り、硝子戸を叩く。家居の静かさを驚かす天気の荒れに、冬の緊張がある。「一しきり」が詩情を生んだ。(高橋正子)

○柚子湯
★柚子湯して妻とあそべるおもひかな/石川桂郎
冬至には、かぼちゃを食べて柚子湯(柚子風呂)に入る、とういうのが決まった冬至の過ごし方だが、子どものころは、かぼちゃは夏に収穫したものを冬至用にとっておいたのを煮て食べさせられたので、おいしいはずもなかった。柚子風呂は、子どものころの記憶にないが、冬のあいだは、食べた蜜柑の皮を布の袋に入れてお湯に浮かしていた。これでもよい香りがしていた。結婚してからは、柚子を買ってきて柚子風呂をたてている。子どもたちはぷかぷか浮く柚子をボールのようにして面白がったが、私も浮いている柚子をあっちへやったり、こっちへ寄せたりして楽しんでいる。そうすれば、一句浮かぶか、という算段でもある。

○蒲の穂絮

[蒲の穂絮/東京白金台・自然教育園]   [空を飛ぶ蒲の穂絮/東京白金台・自然教育園]

★天をとび樋の水をゆく蒲の絮/飯田蛇笏
★浄水の放流蒲の絮も翔(か)く/品川鈴子
★蒲の絮飛び立つ風のありにけり/石平周蛙

★蒲の穂絮ひっきりなしに吹かれ飛ぶ/高橋正子

20日、良い天気。白金台の国立自然教育園へ信之先生と出掛けた。この時期は、花はほとんどなく、実物と呼ばれるものが多かった。冬紅葉も四季の森、綱島市民の森とまた違った趣があった。ハリギリ、イヌクワ、こなら、あぶらちゃん、ごんずい、いろはもみじ、おおもみじなどが黄葉していた。実は、浦島草、むさしあぶみのサトイモ科の珍しい実も見つけた。多いのは、万両、千両、藪柑子。からたちばなの実は、ようやく一つついていた。きちじょうそうという藪蘭に似た植物も、薄紫の藪蘭のような小花と南天ほどの赤い実がついていた。きちじょうそうは、葉を触ると、やわらかく、しなやかだ。水生植物園では、蒲の穂絮が蒲の穂を離れ、ひっきりなしに飛んでいた。水に落ちたものは、水に浮いている。蒲や葦のなかに小鳥が良く鳴いていたが、名前がわからない。水生植物園の出口では、サルトリイバラの実も見つけた。また、さね葛も随分大きな赤く熟れた実を付けていた。水生植物園を出て、武蔵野植物園へ回ると、藤袴、おとこえしなどは、名札のみが立って、葉や茎など見分けがつかなかった。ただ、竜胆は、蕾のまま立枯れて、わずかに薄紫が残っていた。この植物園は、こならが多いのかもしれない。どんぐりがおびただしく落ちて、踏まれてか、土にめり込んでいた。結構いろいろな植物を見た年末であった。

 ガマ(蒲、香蒲、学名:Typha latifolia L.)は、ガマ科ガマ属の多年草の抽水植物である。円柱状の穂は蒲の穂と呼ばれる。北半球の温暖な地域やオーストラリアと日本の北海道から九州の広範囲に分布する。池や沼などの水辺に生える。葉は高さ1-2 mで、水中の泥の中に地下茎をのばす。夏に茎を伸ばし、円柱形の穂をつける。穂の下部は赤褐色で太く、雌花の集まりでありソーセージに似た形状である。穂の上半分は細く、雄花が集まり、開花時には黄色い葯が一面に出る。風媒花である。雄花も雌花も花びらなどはなく、ごく単純な構造になっている。雌花は結実後は、綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。
 蒲の穂絮は、ガマの果穂のことで、多数の小さい果実の集まりである。長い白い毛をもった実が風に乗って舞うようになる。この果実は風によって飛散し、水面に落ちると速やかに種子が実から放出されて水底に沈み、そこで発芽する。 また、強い衝撃によって、種が飛び散ることもある。

◇生活する花たち「実葛の実・池に浮く蒲の穂絮・千両」(東京白金台・国立自然教育園)

12月20日(木)

★木賊生う地より突き立つ濃き緑  正子
木賊という植物の名と実物とは、私の中で一致してはいなかったのですが、濃い緑でまさに地より「突き立つ」さまのこの植物には確かに見覚えがあります。茎はぎざぎざしていて、竹のように節があって、子どもの頃それで遊んだようにも記憶しています。「木賊」だったのですね。 (小川和子)

○今日の俳句
冬椿蕾結べりきっぱりと/小川和子
冬椿の蕾の固さが凛とした空気に「きっぱりと」した姿を特に印象付けている。(高橋正子)

○枇杷の花

[枇杷の花/横浜日吉本町]

★枇杷の花咲くや揚屋の蔵の前 太祇
★枇杷の花鳥もすさめず日くれたり 蕪村
★輪番にさびしき僧やびはの花 召波
★職業の分らぬ家や枇杷の花/正岡子規
★人住んで売屋敷なり枇杷の花/高浜虚子
★枇杷の花しくしく氷雨下りけり/臼楕亞浪
★枇杷咲いて長き留守なる館かな/松本たかし
★誰か来さうな空が曇つている枇杷の花/種田山頭火
★忘れゐし花よ真白き枇杷五瓣/橋本多佳子
★枇杷が咲く金の指輪の指細り/三橋鷹女
★人影のあとの供華清し枇杷の花/中村汀女
★かたまれることは倖せ枇杷の花/神蔵器
★ほころびてあたたかさうな枇杷の花/片山由美子

 ビワ(枇杷、学名: Eriobotrya japonica)は、バラ科の常緑高木およびその果実。冬、枝先に帯黄白色の五弁の小花をつける。目立たない花ではあるが芳香があり、この季節に咲く花としては趣がある。
 中国南西部原産。英語の「loquat」は広東語「蘆橘」(ロウクワッ)に由来する。日本には古代に持ち込まれたと考えられている。またインドなどにも広がり、ビワを用いた様々な療法が生まれた。中国系移民がハワイに持ち込んだ他、日本からイスラエルやブラジルに広まった。トルコ、レバノン、ギリシャ、イタリア南部、スペイン、フランス南部、アフリカ北部などでも栽培される。
 葉は互生し、葉柄は短い。葉の形は20cm前後の長楕円形で厚くて堅く、表面が葉脈ごとに波打つ。縁には波状の鋸歯がある。枝葉は春・夏・秋と年に3度伸長する。花芽は主に春枝の先端に着く。花芽は純正花芽。花期は11~2月、白い地味な花をつける。花弁は5枚。葯には毛が密に生えている。自家受粉が可能で、初夏に卵形をした黄橙色の実をつける。果実は花たくが肥厚した偽果で、全体が薄い産毛に覆われている。

◇生活する花たち「冬椿・山茶花・帰り花(つつじ)」(横浜・綱島)

12月19日(水)

  藤沢
★栴檀の実に藤沢の白き雲  正子
旧東海道五十三次を歩かれた折、藤沢宿にての御句と存じます。葉の落ちた栴檀の木に、黄熟した実が残っています。しかしその実は高木に生り、冬空を仰がなければ、なかなか視界に入りません。栴檀の実が心にとまる折、景色は決まって空と一緒。「藤沢の白き雲」には、少し遠出をなさり、歴史に想いを馳せるまなざしが窺われ、広々とした心地になります。 (川名ますみ)

○今日の俳句
冬晴れて登ることなき山のぞむ/川名ますみ
冬晴れに高い山が望める。その山に自分は決して登ることはできないが、その山の姿のすばらしさに、登ることはかなわないが、せめて心だけでも登ってみたい思いや憧れがある。(高橋正子)

○冬椿

[冬椿/横浜西綱島]

★火のけなき家つんとして冬椿/小林一茶
★海の日に少し焦げたる冬椿/高浜虚子
★鶴とほく翔けて返らず冬椿/水原秋桜子
★まだ明日の逢はむ日のこる冬椿/中村汀女

★冬椿蕾ゆるきは肥後らしき/高橋正子
★誰からも見えぬ方向き冬椿/高橋正子
★冬椿鉄条網を隠しあり/高橋正子
★冬椿小さき白には青空を/高橋正子

 冬に咲く早咲きのツバキ。寒椿(かんつばき)。[季]冬。
 椿は、花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。18世紀にイエズス会の助修士で植物学に造詣の深かったゲオルク・ジョセフ・カメルはフィリピンでこの花の種を入手してヨーロッパに紹介した。その後有名なカール・フォン・リンネがこのカメルにちなんで、椿にカメルという名前をつけた。19世紀には園芸植物として流行し、『椿姫』(アレクサンドル・デュマ・フィスの小説、またそれを原作とするジュゼッペ・ヴェルディのオペラ)にも主人公の好きな花として登場する。和名の「つばき」は、厚葉樹(あつばき)、または艶葉樹(つやばき)が訛った物とされている。「椿」の字の音読みは「チン」で、椿山荘などの固有名詞に使われたりする。なお「椿」はツバキとは無関係のセンダン科の植物チャンチン(香椿)の意味で使われることもある。
 ツバキの花は花弁が個々に散るのではなく、多くは花弁が基部でつながっていて萼を残して丸ごと落ちる。それが首が落ちる様子を連想させるために入院している人間などのお見舞いに持っていくことはタブーとされている。この様は古来より落椿とも表現され、俳句においては春の季語である。なお「五色八重散椿」のように、ヤブツバキ系でありながら花弁がばらばらに散る園芸品種もある。

◇生活する花たち「山茶花・柊・桜黄葉」(横浜日吉本町)

12月18日(火)

★青空の光りを弾き辛夷花芽/高橋正子
辛夷花芽は和毛の様なものに覆われて何時も天を指しています。春に咲く準備を整え、青空の光りを弾く力強い辛夷花芽が見えてまいります。辛夷には青空が一番良く似合っています。(佃 康水)

○今日の俳句
出漁や妻に焚き火の温み置き/佃 康水
出漁まで夫婦で焚火をして体を温めていたのだが、体も温もって、妻を残して船音もかるく漁に出て行った。漁師夫婦の情愛が焚火をとおして温かく詠まれている。(高橋正子)

○侘助

[侘助/横浜日吉本町]

★侘助の莟の先きに止まる雪/松本たかし
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子

 横浜日吉に移って来る前は、愛媛に住んでいたが、松山郊外の砥部の自宅は百坪を少し超えていたので、いろいろ好のみの庭木や草花を植えていた。特に椿は三十本以上もあっただろうか。冬の初めに初嵐が咲き、それから赤い侘助が咲いて、名の知らないものから、肥後や乙女なども順次咲いた。裏の谷川に添って藪椿が茂り、年末からほちほち花を咲かせた。不意に来客があるときは、この枝を一本もらうこともあった。それなりの恰好がついたのである。

 ワビスケ(侘助)   中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)

12月17日(月)

★南天に日はうららかに暮れにけり  正子
南天の実は赤く、冬ざれの景の中ではよく目につきます。
難(なん)を転(てん)ずる願いを込めて庭などにもよく植えられます。南天に夕陽が射しその赤色を一層鮮やかにします。穏やかに一日が終わった安堵感を感じます。(古田敬二)

○今日の俳句
初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
初霜に強張った大地に杭を打ち込む。「ざくり」が人間の力強さ、また迫力をよく表わしている。(高橋正子)

○梔子(くちなし)の実(山梔子/くちなし)

[梔子の実/横浜日吉本町]

★山梔子に提灯燃ゆる農奴葬/飯田蛇笏
★竜安寺道くちなしの実となりぬ/村上麓人
★山梔子の実のみ華やぐ坊の垣/貞弘 衛
★くちなしの実のつんつんと風の中/安斉君子
★くちなしの実の日に映えて黙しけり/かるがも

 クチナシ(梔子、巵子、支子、学名:Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。果実が漢方薬の原料(山梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。樹高1-3 mほどの低木。葉は対生で、時に三輪生となり、長楕円形、時にやや倒卵形を帯び、長さ5-12 cm、表面に強いつやがある。筒状の托葉をもつ。花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で先は大きく6弁に分かれ、開花当初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花には強い芳香があり、学名の種名「jasminoides」は「ジャスミンのような」という意味がある。10-11月ごろに赤黄色の果実をつける。果実の先端に萼片のなごりが6本、針状についていることが特徴である。また側面にははっきりした稜が突き出る。
 東アジア(中国、台湾、インドシナ半島等)に広く分布し、日本では本州の静岡県以西、四国、九州、南西諸島の森林に自生する。八潮市、湖西市および橿原市の市の花である。果実が熟しても割れないため、「口無し」という和名の由来となっている説もある。他にはクチナワナシ(クチナワ=ヘビ、ナシ=果実のなる木、つまりヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味)からクチナシに変化したという説もある。(ウィキペディア)

◇生活する花たち「アリストロメリア・サンタンカ・ユリオプスデージー」(横浜・綱島)

12月16日(日)

 石鎚山
★雪嶺の座りし空のまだ余る  正子
雪をかぶったすばらい嶺々、それでもまだまだ空は広々とある。快晴で青空を思い浮かべました。(祝恵子)

○今日の俳句
水仙の目線にあれば香りくる/祝恵子
目線の位置から、すっと真っ直ぐ水仙のいい香りが届く。香りがたゆたわず、すっと真っ直ぐ届くところが、水仙の花らしい。(高橋正子)

○横浜・綱島台公園
16日衆議院選挙の投票に信之先生と出掛けた。選挙場は日吉台中学校で、投票を済ませたその足で、綱島台の住宅地を通り、綱島台公園まで行った。初めは、その辺りの花でもあれば撮るつもりだったが、丘に上る道があり、大変に美しい雑木紅葉の森が目に入った。自然に足が向いて上ってゆくと、雑木の黄葉紅葉が美しい。桜と銀杏は冬芽となり、櫟、いろはもみじなどは、燃え立つように黄葉している。快晴の空を透かして、大木の枝が黒く交差し、紅葉、黄葉を引き立てている。帰りは上ってきた道と反対に降り、綱島台を一周した恰好になった。三時間ほど歩いただろう。今日撮った花は、冬椿、山茶花、柊、冬薔薇、サンタンカ、アリストロメリア、シャコバサボテンなど。十二月というのに、はやも椿が咲き始めていた。大変小さい白い椿は、人目には付かないが、葉影にカメラを入れて勘を頼りに撮ったが映っていて安心。

○檀(まゆみ)の実

[檀(まゆみ)の実/横浜日吉本町]

★檀の実こぼさじと折る力ゆるめ/加倉井秋を
★檀の実朝は真近に穂高澄み/望月たかし
★泣きべそのままの笑顔よ檀の実/浜田正把
★また風を呼ぶたわわなる檀の実/山元重男

 マユミ(檀、真弓、檀弓、学名:Euonymus hamiltonianus)とは、ニシキギ科ニシキギ属の木本。別名ヤマニシキギとも呼ばれる。日本と中国の林に自生する。秋に果実と種子、紅葉を楽しむ庭木として親しまれ、盆栽に仕立てられることもある。秋の果実の色は品種により白、薄紅、濃紅と異なるが、どれも熟すと果皮が4つに割れ、鮮烈な赤い種子が4つ現れる。

 2012年10月14日 天気 曇のち小雨
 今日、ネットのお友達のブログに、みごとな真紅の檀の実の写真が載っていた。ご自宅の庭の木だという。彼女は静岡県の西部にお住まいなので、この前の台風の風害がひどくて、庭の木々の葉っぱや檀の実など、かなり落ちてしまう被害に遭ったそうだ。実は、上の檀の実の写真は、台風前の先月20日にいつもの都立公園で撮ったもの。元々まだ丈の低い木だが、今年は猛暑のせいか木の元気がなく、実が少なくて寂しかった。で、昨日はそろそろ実が弾けるころかな、と思い寄ってみたら・・なんと、2本ある木の1本が実を付けたまま丸ごと枯れていた。(ブログ「KUMIの句日記」より)

◇生活する花たち「冬椿・山茶花・冬黄葉」(横浜・綱島)

●添削12月③●

[12月16日~22日]

▼12/22

●佃 康水
強霜や畝に菜の葉を張り付かせ★★★
川満ちて白際やかや花八つ手★★
枯木道広島城の見え隠れ★★★

●下地 鉄
風にゆれ夕日に淋し枯れすすき★★  
君が代に微笑む真央の師走かな★★  
湯煙の流れる其処に石蕗の花★★★★

●桑本 栄太郎
朝空の淡き稜線山眠る★★★
青空をビルの切り取る十二月★★★
雲を刷きスカイブルーや冬の嶺★★★

●多田 有花
ノンアルコールビールで乾杯年忘れ★★
忘年会果て夜の雨の中へ★★★
実南天に雫残して雨あがる★★★

●小西 宏
枯枝の触れ交う空に青深し★★★★
青空に枯枝が交差している景色はきれいだが、この句は、さらに空をよく観察して「青深し」とした。そこに作者の「見よう」とする意思が働いて句に深みがでた。(高橋正子)

南面の辛夷冬芽の陽の温み★★★
過ぎしこと孫らのことよ冬至の夜★★★★

●迫田 和代
隔たった刈田の道のまっすぐさ★★★
冬の島何処まで空だか海かしら★★
一本の鉄路の通る枯野かな★★★★

●小口 泰與
三つ島の影も長きや冬落暉★★★
森深し水面にぎわふ冬桜★★★
寒暁や湖を割り行く鳥の列★★★

●川名ますみ
柚子風呂に葉を嗅いでみてほの甘き★★★
柚子の葉の甘さも冬至風呂の香に★★★
挿し木より白き根光る冬の土★★★

▼12/21

●藤田裕子
車窓にはつぎつぎ冬木武骨なる★★★
朝震わせ霰地面を跳ね返す★★★
雨上がり桜冬芽の赤微か★★★

●桑本 栄太郎
<神戸六甲アイランドへ>
冬潮へ乗り出し空へモノレール★★★
冬潮のゆらぎ眩しき朝日かな★★★
曳航の波の軌跡や冬の潮★★★

●小西 宏
山茶花の華やぎ広し山の陰★★★
水楢の落ち葉敷き積む社宅跡★★★
母を見舞う
リハビリの冬至の窓に歩を数う★★★

●多田 有花
頂に立ちて冬至の町を見る★★★★
「頂に立ちて」が効いた。「冬至」という日の作者の感慨が伝わってくる。一年で最も短い一日だ。(高橋信之)

跪き室咲きの花に近く寄る★★★
シクラメン並び冬至の生花店★★★

●河野 啓一
冬至湯のまるき柚の香に身を沈め★★★
冬至る森の樹冠の耀いて★★★
浮き寝鳥冬至の水に遊びおり★★

●小口 泰與
釣り筏冬満月を賜わりぬ★★★
見下ろすや伊勢湾光り小六月★★★
昇り来る朝日ひと筋牡蠣筏★★★

▼12/20

●桑本 栄太郎
嶺の端をほのと染め居り霜の朝★★★
極月の朝日眩しく日差しけり★★★
嶺と峰連ねる鉄塔山眠る★★★★

●小西 宏
白い雲ゆるりと浮かべ葱畑★★★★
師走の田園風景がいい。「ゆるりと」がいいのだ。「葱畑」に「白い雲」を見て、師走の心がゆたかだ。(高橋信之)

大根の葉のこんもりと根を隠す★★★
冬の陽に赤き葉残す花水木★★★

●河野 啓一
枯れ切って銀杏並木のさばさばと★★★
枯木立透かし見たれば鴨の池★★★
久しぶり子から便りの都鳥★★★

●多田 有花
枯枝の上に出ており昼の月★★★
池の水少なきに鴨散りばめて★★★
ぽつぽつと人来て冬の植物園★★★

●小口 泰與
茶の花や長き裾野の芙蓉峰★★★
伊勢湾の忽と艶めく冬の虹★★★
三つ島を浮かす光りや冬の月★★★

▼12/19

●小西 宏
やわらかな雲より広ぎ枯葉ふる★★★★
枯山に明かり残して暮れ行ける★★★
ビル遠く紅々と照り冬暮れる★★★

●桑本 栄太郎
書き込みめくりめくりて暦果つ★★
おにぎりとカラオケ妻の忘年会★★★
風呂タイル磨く戸外は虎落笛★★★

●小川 和子
治水橋
何処までも青空冴ゆる橋向こう★★★★
人は「橋」に特別な思いを寄せることが多い。橋の向こうは、知らない町へと続く。橋向こうの冴えた青空にその続きを思うこともある。(高橋正子)

選ることも楽し聖夜の贈物★★★
冬茜秩父の山脈際立たす★★★

●河野 啓一
冬耕の畦や水菜のみずみずし★★★
冬紅葉散りきって赤い輪に囲まれる★★★
芝青し枯れ葉を上に散り敷いて★★★

●多田 有花
稜線の空透けて来し冬半ば★★★★
稜線のちょうどその所の空は山際という。そう言わないで、稜線の空と言ったところに新しみがある。寒気が強まる冬半ばには、空が透けてくる。「透けて来し」に観察の深さが見える。(高橋正子)

石灯籠包むいっぱいの落葉★★★
時雨雲淡路四国を包みおり★★★

●佃 康水
 市内愛友市場2句
生簀より掴みし河豚の眼澄み★★★ 
四斗樽の重石かたむく冬菜漬け★★★★
冬枯れや川に沿いたる薬草園★★

●迫田 和代
冬の空切るよう伸びる飛行雲(原句)
冬空を切るように飛行雲伸びる★★★★(信之添削)

南天の赤き実を付けすくと立つ★★★
冬薔薇の海風弾く強さ見る★★★

●小口 泰與
湖の波尖りて鴨の羽ばたきぬ★★★★
湖の波が尖るほど寒々として風がある。鴨が時折羽ばたいて羽音をさせる。広げた羽の色も、羽音も命の温みを感じさせながらも寒々としている。(高橋正子)

伸びやかな富士の裾野の枯野かな★★★
浜名湖も豪雨に打たれ枯葉かな★★★

▼12/18

●河野 啓一
冬空に伸びゆくバラ芽の茜色★★★★
「茜色」の色彩感がいい。明日への嬉しい「芽」の「茜色」だ。(高橋信之)

烏鷺囲む小春の窓辺鳥の声★★★
実南天剪りて花瓶の彩りに★★★

●川名ますみ
冬の日の強き斜めが窓に入る★★★★
冬の日が低くから斜めに窓に入ってくる。意外にも冬の日差しは強い。その実感をすっきりとよくまとめている。(高橋正子)

追われずに落葉へ潜る十円玉★★★
稜線の南北へのび冬夕焼★★★

●小西 宏
枯芝に土黒光りノックの音★★★★
枯芝のよく踏まれるところの芝か、傷んで土が見えている。枯芝と土の黒さが対比され底にノックの音が響くのがよい。(高橋正子)

雪積むかと思えば窓に霧の街★★★
色濡らす落葉の霧の石畳★★★

●桑本 栄太郎
子に分けて選ぶクリスマス抽選会★★★
捨てるもの先ずは決め居り年用意★★★
数へ日や役目の多き吾が休暇★★★

●多田 有花
葉牡丹を積みし車の後をゆく★★★★
いい句だ。その説明はいらないであろう。(高橋信之)

ベゴニアの温室出れば冬の雨★★★
北東の山越え時雨里へ来る★★★

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●佃 康水
 歳末の広島・愛友市場(信之追加)
ふんだんに井戸水流し河豚捌く★★★★
「河豚捌く」の句は、珍しく、したがって、難しい句なので、読者にもっと親切であって欲しい。。「河豚捌く」ことの丁寧な前書が欲しいのである(高橋信之)

女子校の白山茶花や咲きこぼれ★★★ 
瑞枝さす梅の冬芽や未だ固し★★★ 

●小口 泰與
群馬・上毛三山(信之追加)
朝霜や三山の襞くっきりと★★★★
web<全国三山巡り>によると、全国の三山は、現在97例あるという。作者の在住地が解らなければ、この句の<三山>は、97例のどれだか解らない。作者が前橋在住であれば、この句の<三山>は、おそらく上毛三山であろうと思う。赤城山、榛名山、妙義山である。句の添削は困難。(高橋信之)

冬ばらの開くこと無き風の中★★★
明らかに映すや雪の逆さ富士★★★

▼12/17

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●桑本 栄太郎
やわらかに今朝の雨降る冬木かな★★★
残る葉の色極めけり朝しぐれ★★★
梢散り下枝の極む冬もみじ★★★

●多田 有花
冬三日月すでに隠れし帰り道(原句)
冬三日月すでに落ちいし帰りの刻★★★★(正子添削)
キャンドルに灯り点して待降節★★
「よいお年を」言いつつ別れ日短か★★★

●小口 泰與
冬薔薇の咲くほかはなし風の中★★★
くっきりと赤城の襞や空っ風★★★
寒菊や日差す縁側ゆったりと★★★

▼12/16

●小西 宏
枯芝に影踏み走る日曜日★★★★
枯芝に映った自分の影を踏んで走る日曜日。体を動かし走る快い小春日和の日曜日への賛歌。(高橋正子)

枯葦の狭間に光る鴨の波★★★
木枯らしに鴉の飛翔緩急す★★★

●川名ますみ
紅葉散る空に一片雲来たる★★★★
紅葉と青空の一片の雲の取り合わせがすっきりとして快い。「雲来る」がこの句を生かしている。(高橋正子)

裸木ののびやかに指す空青き★★★
動物園の柵に一枚冬紅葉★★★

●桑本 栄太郎
静寂と云えど冴え居る朝かな★★★
足もとを翔びて冬木へ群すずめ★★★
葉を落とし早も冬芽や青空に★★★

●多田 有花
雲晴れて明石海峡年の暮★★★
年の瀬や海の最も輝きぬ★★
冬空へ大きくクレーンの動きけり★★★★

●黒谷 光子
暮れ早し明るきうちに京を発ち★★
街の灯を映す車窓や日短し★★★
帰り来て仰げば細き冬の月★★★

●河野啓一
★冬野広し杖を頼りに地平見る(原句)
★冬野広し杖が頼りに地平見る★★★★(信之添削)
★枯れ葎八十路の旅はまだ一歩★★★
★電飾の点滅青き生誕祭★★

●小口泰與
★小春日の羽根いっぱいの孔雀かな(原句)
★小春日の日を羽根いっぱいに孔雀立つ★★★★(正子添削)

★寒薄夕映え集め光りけり★★★
★年古りて無益(むやく)となりし枯忍★★★

●藤田洋子
★極月の手帳に余白まだありぬ★★★★
極月も今日は半ば。手帳はまだ書き込む余白を残している。手帳の余白は大晦日までの残る日数。それを余白という白で表わした清潔感が好ましい。(高橋正子)

★柚子浮かせ湯船に満ちてくる香り★★★
★店々のポインセチアに街暮るる★★★

●添削12月②●


[12月9日~15日]

▼12/15

●小西 宏
老いじみて厚き布団に明けを待つ★★
落ち葉積む里山深き小鳥影★★★
年忘れの友と別れて車の灯★★

●小川 和子
蓮掘られ肌色ひかる荷の届く★★★
掘りたての蓮根は、泥を水で流せば、蓮根の肌色が光る。いかにも新鮮な荷だ。(高橋正子)

鳴門手掘りという蓮根を天ぷらに★★★(信之添削)
蓮根掘る農園の写真添えられて★★★

●川名 麻澄
裸木と檻の向こうに雲なき空★★★★
檻も裸木も言ってみれば黒い線。無機的ながらもニュアンスの違う黒い線の間の青空が面白く、裸木も一種檻柵のように思える。(高橋正子)

青空に銀杏黄葉とフラミンゴ★★★
動物園の檻に絡まる落葉あり★★★

●多田 有花
木版画の淡き色合い冬の暮★★★★
もの暗い冬の暮に、木版画の淡い色彩が浮きたって、押し詰まった暗さに温かみと明るさを与えて和むものがある。(高橋正子)

冬の雨降る音を聞く夜明け前★★★
まだ少し新車に慣れず日短か★★★

●佃 康水
伐採の竹林冬の日矢とどく★★★
落葉掻く庭へ零るる群れ雀★★★
万両や奥まる庭へ真っ赤かな★★★

●迫田和代
楽しみね何時もの道に冬日射し★★★
来春の艶を残して桜散る★★
杵突きの音も懐かし年の暮れ★★★

●小口泰與
夕映えをたまわる雪の浅間かな★★★
大根引く赤城の裾野吹きさらし★★★
背を押され枯葉と駆けし風下へ★★★

▼12/14

●藤田裕子
湯気立てて私の時間愉しめり★★★★
「愉しめり」がいい。「私の時間」がいい。主婦の日常を詠んだ、作者のささやかだが、充実した生活が伝わってくる。この句を読めば、読者も「愉しめり」の境地になる。(高橋信之)

イルミネーション冬の夜空に夢描き★★★
冬の朝厳しさ迫る遠き山★★

●小西 宏
風寒く晴れいて空に広き道★★★★(正子添削)
下五の「広き道」の解釈が難しいが、良寛が子どもの凧に書いた「天上大風」を思い、天上の「広き道」と解した。地上の「広き道」との解釈も可能だが、凧が揚がり、飛行機が飛ぶ大空の「広き道」である。(高橋信之)

冬晴れに丹沢霞む西明かり★★★ 
冬の夜に割って歯に触るチョコレート★★

●佃 康水
焚火して段取り話す浜漁師★★★★ 
冬の漁師浜は、寒さこの上なく、流木などを集めて焚火をする。漁の段取りの話も焚火を囲めば、いろいろ出てくることだろう。(高橋正子)

陽を湛え紅さす梅の冬芽かな★★★ 
風尖る家路へマフラー深く巻く★★

●小口泰與
あけぼのの雨を弾きし青木の実★★★★
青木の実はやや楕円形で、つやつやと真っ赤に熟れる。あけぼのの冷たい雨を弾けば、艶も赤さも増して一層輝く。(高橋正子)

群雀群れて降りたる冬田かな★★★ 
寒菊の此処のみ日矢の射しにけり★★★

▼12/11

●迫田和代
初雪や原爆ドームの空に舞う★★★★
初雪はどこに降っても感動のあるものだが、とりわけ原爆ドームの空に舞うときは、さまざまなことが脳裏に浮かぶ。焼けたドームに透ける空に詩情がある。(高橋正子)

道端に咲ける野菊をただそれだけを★★★
一本の続く雪道に赤い傘★★★