3月8日(日)

★辛夷の花枝ごと揺れて揺るる空/高橋正子
辛夷の花の咲く頃は、早春の強い風の吹く日が多くあります。季節の風に枝ごと煽られながらも、逞しくしなやかな辛夷の花を思います。高々と咲く辛夷の花の白さに、早春の澄みきった空が広がります。 (藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○グランサム椿

[グランサム椿/東大・小石川植物園]

  小石川植物園二句
★香港の気風にみちて白椿/高橋正子
★了りつつ蕊の黄ゆたかな白椿/高橋正子

グランサム椿(グランサムツバキ、学名:Camellia granthamiana)はツバキ科ツバキ属の常緑小高木である。原産地は香港の九竜半島である。中国名を「大苞白山茶」という。日本へは昭和時代の中期に渡来した。樹高は3~8メートルくらいである。枝を疎らにつける。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁にはぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は厚くて光沢があり、葉脈の部分がへこむ。開花時期は11~2月である。花の色は白く、花径が10~15センチくらいあり大輪である。茶(チャ)の花と似た感じで、黄色い雄しべは500本以上ある。花柱(雌しべ)の先は5つに裂ける。花びら(花弁)は7~10枚くらいで、咲き進むと花びらの先は反り返る。1955年に香港で見され、名は当時の香港総督アレキサンダー・グランサム (Alexander Grantham) 総督に由来。

○2013年の日記より:
 先月、2月14日の小石川植物園。いろんな万作が咲きみちていた。榛の花も咲いていた。万作の花を見ながら歩くと、榛の木へ至る道すがら、黄色い蕊の大きな白い花が目に入った。深緑の葉が、葉脈の筋が白い花をより魅力的にしている。なんの花だろう。ヨーロッパの花に違いない。近づくと「グランサム椿」と名札がある。決して椿の花の印象ではない。椿のように花が半開きではないのだから。おおらかに堂々と。威風堂々と。2月なのに、もう終わりかけている。そのはずで、花期は11月から2月とのことだから。この日、忽然と目の前に現れたグランサム椿の花に魅了され、一瞬は、「一体私はどこにいるんだろう。」とさえ思った。発見されたのは1955年でまだ新しい。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

◆花祭り(4月)ネット句会案内◆

◆花祭り(4月8日、釈迦誕生の日)ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(花祭り・春)計3句、花祭り・桜の句などを下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年4月7日(火)午前0時~4月8日(水)午後6時
④選句期間:4月8日(水)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:4月8日(水)午後10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、4月8日(水)午後10時~4月9日(木)午前10時

3月7日(土)

 銀閣寺
★馬酔木咲く道を選べば山路めく/高橋正子
前書に銀閣寺とありますので、目の前に池泉回游式庭園が広がっていることが知れます。折しも馬酔木が咲きはじめその路を進めば、山路でも歩かれているような風情を感じられたのではないでしょうか。(小川 和子)

○今日の俳句
「もういいかい」子等の声澄むうららかに/小川 和子 
うららかさに誘われて、子供たちも外の遊びが楽しくなる。かくれんぼをする声がはっきりとよく通る。「声の澄む」にかわいさとうららかさが読み取れる。(高橋正子)

○白藪椿

[白藪椿/東大・小石川植物園]

★白椿昨日の旅の遥かなる/中村汀女
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★白藪椿空の高さに花の白/高橋正子
★藪椿も白藪椿も大樹なり/高橋正子

白藪椿(シロヤブツバキ、学名:Camellia japonica form. leucantha)は、ツバキ科ツバキ属の常緑高木である。分類上は藪椿(ヤブツバキ)の型の1つとされている。本州から九州にかけて分布し、山地に生える。樹高は5~10メートルくらいである。樹皮は灰白色を帯びる。葉は細長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は尖り縁には細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は硬く、表面は濃い緑色で艶がある。開花時期は2~4月くらいである。花の色は白く、花弁は5枚である。平開はせずに半開きのものも多い。

○小石川植物園吟行
①2008年4月19日のオフ句会報より
 今回の吟行地は、文京区白山にある「小石川植物園(東京大学大学院理学系研究科附属植物園)」です。6万平米もの広大な土地に、桜の広場、薬草園、広葉樹の森、針葉樹の森、日本庭園などがあり、傾斜地、泉水地などの地形が自然のままに、活かされています。そして、学術的にも由緒ある植物や養生所時代の井戸などの遺構が残されており、日本最古の植物園としての趣も豊かです。
 前日は強い雨で、今朝もやや冷たく強い風が残っていましたが、園内は、葉桜のなかを散り抜ける残花、ちょうど満開の八重桜、タンポポやすみれなどなど、四月らしい華やかな色彩に溢れていました。散策にはたっぷり2時間はかかろうかという広さ。脇道に入ると山を行くような奥深さがあり、都会の真中にいるのを忘れてしまうほどです。思い思いに吟行を楽しんだのち、11時前には正門に集まり、七句投句をしていただきました。今回は、宇都宮の笠間淳子さんと、大阪からは高橋秀之さんがご参加くださいましたので、11名のにぎやかな句会となりました。ご体調のすぐれないところをご主人様とおいで下さった大給圭泉さんは、ご投句と写真撮影までをご参加くださいました。
 句会場は、信之先生が見つけて下さった茗荷谷駅前のイタリア料理店「ラ・クローチェ」で、カジュアルな雰囲気とおいしいお料理が魅力的なお店です。みのるさんのご発声で乾杯のあと、量り売りのワインを楽しみながら大いに盛り上がりました。お食事と会話の合間にそれぞれ選句をし、正子先生の選の発表がありました。その後、すぐ近くの「ジョナサン」に場所を移し、臼井愛代さんにより、それぞれの選が発表され、各句に先生やみなさんからのコメントが寄せられました。3時半ごろ散会。茗荷谷の駅よりそれぞれ家路につきました。
★どの藤も花咲きはじむ時が来る/信之
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ/正子

②2008年5月5日の日記より
 全国こども俳句協会の設立総会が、江東区の芭蕉記念館で9時半より行われ、設立総会小石川植物園を吟行。藤の花は大方終わり。ハンカチの木の花(苞)が、散り始めていた。散るさまは、空からハンカチが振られて落ちてくるよう。一枚ひろってみると、やわらかな白い葉っぱのような苞である。そばにガク空木の白い花が満開。むんむんとした匂いを放つ。ジャーマンアイリスの豊満な花がよく咲いている。日本庭園は黄菖蒲が花時。ニワトコの花は終わり、青いちいさな実がついていた。
 植物園の入園券を売るお店で、山と渓谷社のはっぱの本を買う。お店と言っても品物はほとんどないので、袋にはいった人形焼を申し訳に買って、はっぱの本に添えて、秀之さんにお子さんへのお土産にしてもらった。
 追記:句会でニュートンの林檎の詠んだ句があり、話がそれに及ぶ。何故ニュートンの林檎の木が小石川植物園にあるのかと。答え「それは、植物園が東大のものだからですよ。元の木は枯れて、その子孫がこの植物園にあるわけですよ。買ったんだよ。」ちなみに、ハンカチの木は中国からの贈り物。
★ハンカチの花の降り来る立夏の空
★銀杏大樹青葉の青という力
★盛り上がる新緑空へまでゆかず

③2013年2月14日の日記より
 先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。
★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子

▼小石川植物園
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)

3月6日(金)

★海に向き伊豆の椿の紅きなり   正子
春の暖かな日を浴びてつやつやした葉の間に大輪の艶麗な紅の花を咲かせる椿の素晴らしさと伊豆の踊り子の小説を思い出させていただきました。ありがとうございます。(小口泰與)

○今日の俳句
大屋根の雪解滴や光りあう/小口泰與 
「大屋根」にインパクトがある。雪解滴もあちこちから滴り、賑やかに光りあう。(高橋正子)

○椿

[椿/横浜日吉本町]

★赤門を入れば椿の林かな/正岡子規
★飯食へばまぶたに重き椿かな/夏目漱石
★十本に十色の椿わが狭庭/稲畑汀子
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★虚子の忌の風たをやかな椿山/皆川盤水
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★またひとつ鉦に落ちけり藪椿/言水
★一日を陽を見ぬ谷戸の藪椿 鈴木卓
★藪椿かがやく電車停まるたび/小島みつ代
★城垣の石の番号藪椿/大塚禎子
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子

 ツバキ(椿)は、ツバキ科ツバキ属の植物、学名Camellia japonicaであり、日本原産の常緑樹。野生種の標準和名はヤブツバキ。国内外でヤブツバキや近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカを椿と呼ぶことはあまりない。照葉樹林の代表的な樹木。花期は冬から春にかけてにまたがり、早咲きのものは冬さなかに咲く。「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。海柘榴とも表記する。花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。
 日本のツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、ワビスケ。
ヤブツバキ(原種)は、南西諸島から青森県夏泊半島まで分布している。これはツバキ属の自生地の北限である。西日本にはほぼ全域に分布しているが、東日本では温暖な地域に自生している。
 ユキツバキ(雪椿)は、花糸が黄色 ユキツバキの学名はCamellia rusticana (シノニム:Camellia japonica var. decumbens/Camellia japonica subsp. rusticana)。上記のヤブツバキとは別種、またはヤブツバキの豪雪地帯適応型変種、あるいは亜種という見解があり、ヤブツバキに比べ、枝がしなやか、花弁が水平に開く、等の特徴がある。花の変異が多く八重咲きの品種改良に大きく貢献した。別名サルイワツバキ。ヤブツバキとの交雑系統を「ユキバタツバキ」と呼ぶ。
 ワビスケ(侘助)は、中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。

◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

3月5日(木)

★枯れしもの沈め春水透き通る   正子
日毎に春の日差しが強くなり、水の耀きが増して来ました。穏やかな池の底かと想われますが、透き通る底には枯れ葉も見え、はっきりと季節替りを実感する光景です。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
まんさくの青き深空に解きけり/桑本栄太郎  
「解き」がまんさくの花をよく詠んでいる。リボンのように細い花びらが深空にほどけ咲くのが印象的だ。(高橋正子)

◆雛祭り句会を終えて◆

ご挨拶(多田有花)
3月に入って、春らしさが一層身辺に漂うようになりました。3日の雛祭りの日は、姫路は午後から雨になりました。みなさまの地域のお天気はいかがでしたでしょうか? 姫路では、1日が雨、2日が晴れ、3日が雨とめまぐるしく空模様が変わりました。これも春らしさのひとつです。雛祭り句会には14名の方の参加がありました。全国各地さまざまな雛祭り、3月の様子をよまれた御句が揃いました。私がいつも散歩に行く山の梅林では、早咲きの紅梅がほぼ満開です。ここの梅林はこじんまりとしていますが、早咲きから遅咲きまでいろいろな梅がそろっており、桜が咲くころまで梅の花を楽しめます。山頂から見る播磨灘が春霞の向こうに姿を隠す日も多くなっています。鶯も鳴き始めました。
みなさま、投句、選、コメントをありがとうございました。正子先生、信之先生、句会の管理運営をありがとうございました。藤田洋子さまには、いつも互選の集計をいただきありがとうございます。

■ひな祭りネット句会入賞発表/2015年3月4日■

【金賞】
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
青畳は、藺草の匂いが芬々としてすがすがしい。そして畳替えをした新鮮さがある。その座敷に雛が飾られ雛飾りが力強く印象づけられる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
「伸びゆけり」が、春の耕しをよく伝えている。耕して畝を作る。黒々とした畝がどんどんと出来上がり、畝自体が「伸びる」ようで、力強く、農作業の楽しさがある。(高橋正子)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
囀りが空から降ってくるうららかさ。空を仰げば空の色は柔らかな水色。このうららかさは、やはり、瀬戸内の穏やかな春をよく詠っていると思う。(高橋正子)

【銅賞3句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられの色は、ひし餅の色も含めて、時には黄色も加わる。あの色この色がとり混ざり、小さな色の転がりが美しい。(高橋正子)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
雛の部屋に軸が一本掛けられ、墨痕が匂うようにすがすがしい。あでやかな雛の色と対比され、黒々とした墨痕の力強さが雛の間を引き締めている。(高橋正子)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザと焼きたてパンの取り合わせが、軽やかでお洒落だ、ミモザが咲く道を焼きたてパンを買って自転車で帰る生活の楽しさ。(高橋正子)

▼その他の入賞作品は、下記アドレスをクリックしてご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○ノースポール

[ノースポール/横浜日吉本町]

★ノースポールの真白き花に四月来ぬ/高橋正子

 ノースポール(North Pole、学名:Leucsnthrmum paludosum Syn. Chrysanthemum paludosum)は、キク科 フランスギク属の半耐寒性多年草である。しかし、高温多湿に極端に弱いため、国内では一年草として扱われている。「ノースポール」はサカタのタネの商品名であるが、種苗登録などはされていないため、一般名として定着している。旧学名またはシノニムの「クリサンセマム・パルドーサム」と表記されることもある。12月から翌6月にかけ、白い花を咲かせる。名の由来は、花付がよく株全体を真っ白に覆うように見えるところが北極を連想させることによる。
 原産地はアフリカのアルジェリア周辺ないしはヨーロッパ。地中海沿岸に広く分布している。日本へは1960年代に入って輸入された。 草丈は15cm-25cmほど。まだ寒い12月ごろから初夏までの長期間、マーガレットによく似た白い花を付け、矮性でよく分枝し、芯の管状花は黄色。今日では冬のガーデニングにはなくてはならない存在にまでなった。
比較的強健で、こぼれ種でもよく増え、雑草混じりの場所などでもよく育つ。しかし、市販品のタネから育てるときは、タネの数が少ないので、浅鉢にまき、覆土しないか、タネが隠れる程度に覆土して、鉢底から吸水させる方がよい。蒔き時は東京付近で9月中旬から10月上旬、日のよく当たる場所を好み、乾き気味に管理する。過湿は根腐れの原因となる。日本では6月頃までよく咲くが、暑くなると急速に枯れてしまう。
 パンジーやヴィオラなどとともに、春先から初夏までの庭を彩る主役をつとめる。とくに、性質のよく似た植物で黄花のクリサンセマム・ムルチコーレと一緒に植えると、コントラストが美しい。(Wikipedia より)

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)

◆ご挨拶/雛祭りネット句会(句会主宰:高橋正子)◆

雛祭りネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆様、おめでとうございます。寒い寒いといいながら、暖かい日もあって、寒い日に後戻りしながらも、着実に春となっていくこの頃です。今年は、旧暦のひな祭りは、新暦の4月21日になっていますから、うららかさから言えば、ずいぶん先取りしたひな祭りです。今回の金賞の句は、安芸の小京都竹原のひな祭りを詠まれたものでしょう。この地には大阪の高橋秀之さんも同じく足を運ばれた句がありました。西から東から、同時に竹原のひな祭りを見られたようです。それぞれの皆様のひな祭り、早春の句を楽しませていただきました。今月も集計を洋子さんに、管理運営は信之先生に、有花さんには、句会のご感想を書いていただきました。これで、ひな祭りネット句会を終わります。来月は、「花まつりネット句会」となりす。楽しみにお待ちください。(句会主宰:高橋正子)

■ひな祭りネット句会を終えて/多田有花■

◆雛祭り句会を終えて◆

ご挨拶(多田有花)
3月に入って、春らしさが一層身辺に漂うようになりました。3日の雛祭りの日は、姫路は午後から雨になりました。みなさまの地域のお天気はいかがでしたでしょうか? 姫路では、1日が雨、2日が晴れ、3日が雨とめまぐるしく空模様が変わりました。これも春らしさのひとつです。雛祭り句会には14名の方の参加がありました。全国各地さまざまな雛祭り、3月の様子をよまれた御句が揃いました。私がいつも散歩に行く山の梅林では、早咲きの紅梅がほぼ満開です。ここの梅林はこじんまりとしていますが、早咲きから遅咲きまでいろいろな梅がそろっており、桜が咲くころまで梅の花を楽しめます。山頂から見る播磨灘が春霞の向こうに姿を隠す日も多くなっています。鶯も鳴き始めました。
みなさま、投句、選、コメントをありがとうございました。正子先生、信之先生、句会の管理運営をありがとうございました。藤田洋子さまには、いつも互選の集計をいただきありがとうございます。

3月4日(水)

★花菜の束一つが開き売られたり   正子
花菜が束にして売られていて,かわいい花先が見えている。待ちに待った春のお店での出会いです。(祝恵子)

○今日の俳句
春の日をせりだす床に坐して受け/祝 恵子  
「春の日をせり出す」は、ようやく暖かくなった春の日差しをうまく表現している。「せり出す」は、言えそうでなかなか言えない。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○2013年3月4日:
きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を刈った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

3月3日(火)

★手渡されながら花桃散りいたり   正子

○今日の俳句
一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

○桃の花

[桃の花/横浜日吉本町]

★故郷に桃咲く家や知らぬ人/正岡子規
★百姓の娘うつくし桃の花/正岡子規
★桃咲くや古き都の子守唄/正岡子規
★雛の影桃の影壁に重なりぬ/正岡子規

★両の手に桃とさくらや草の餅/松尾芭蕉
★葛飾や桃の籬も水田べり/水原秋桜子
★風吹かず桃と蒸されて桃は八重/細見綾子
★桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
★金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚

 モモ(桃、学名は Amygdalus persica L.で[1][2]、Prunus persica (L.) Batsch はシノニムとなっている[3]。)はバラ科モモ属の落葉小高木。また、その果実のこと。春には五弁または多重弁の花を咲かせ、夏には水分が多く甘い球形の果実を実らせる。中国原産。食用・観賞用として世界各地で栽培されている。
 3月下旬から4月上旬頃に薄桃色の花をつける。「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。淡い紅色であるものが多いが、白色から濃紅色まで様々な色のものがある。五弁または多重弁で、多くの雄しべを持つ。花柄は非常に短く、枝に直接着生しているように見える。観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。庭木として、あるいは華道で切り花として用いられる。
 葉は花よりやや遅れて茂る。幅5cm、長さ15cm程度の細長い形で互生し、縁は粗い鋸歯状。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。
 7月 – 8月に実る。「桃の実」は秋の季語。球形で縦に割れているのが特徴的。果実は赤みがかった白色の薄い皮に包まれている。果肉は水分を多く含んで柔らかい。水分や糖分、カリウムなどを多く含んでいる。栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

■雛祭りネット句会入賞発表■

■ひな祭りネット句会■
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

■入賞発表/2015年3月4日■

【金賞】
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
青畳は、藺草の匂いが芬々としてすがすがしい。そして畳替えをした新鮮さがある。その座敷に雛が飾られ雛飾りが力強く印象づけられる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
「伸びゆけり」が、春の耕しをよく伝えている。耕して畝を作る。黒々とした畝がどんどんと出来上がり、畝自体が「伸びる」ようで、力強く、農作業の楽しさがある。(高橋正子)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
囀りが空から降ってくるうららかさ。空を仰げば空の色は柔らかな水色。このうららかさは、やはり、瀬戸内の穏やかな春をよく詠っていると思う。(高橋正子)

【銅賞3句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられの色は、ひし餅の色も含めて、時には黄色も加わる。あの色この色がとり混ざり、小さな色の転がりが美しい。(高橋正子)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
雛の部屋に軸が一本掛けられ、墨痕が匂うようにすがすがしい。あでやかな雛の色と対比され、黒々とした墨痕の力強さが雛の間を引き締めている。(高橋正子)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザと焼きたてパンの取り合わせが、軽やかでお洒落だ、ミモザが咲く道を焼きたてパンを買って自転車で帰る生活の楽しさ。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザだっていい香りでしょう。それに焼きたてのパン 生活力のある生き生きした句ですね。 (迫田和代)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
作物や野菜の種を撒く前や苗を植え付ける前に畑の土を耕し柔らかく解します。天地返しの土は黒々と伸び、いよいよ種まきですね。「伸びゆけり」の措辞が作物の豊作をも予想させます。(佃 康水)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
春めいた野山や公園などにはとりどりの鳥の囀りを聞く事ができます。
何の鳥だろうと空を仰ぎ囀りを聞いている作者も鳥達も瑞々しい蒼天の春を謳歌している様です。(佃 康水)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
お雛様を飾ったお部屋に一幅のお軸が掛けられています。清々しい軸の墨痕が雛の間の一層の品格と佇まいを想起させ素敵です。(佃 康水)

★菜花つむ袋に一杯透くほどに/古田敬二
やっと寒さも和らぎ野に出て菜花をつむひととき、あたたかな心楽しい季節の喜びが伝わります。袋に一杯の菜花の黄色が、いっそう明るい春を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★大空は小さな梅の向こう側/高橋秀之
小さな梅の花の向こう側には、広い大きな空が広がる。梅の清潔で、慎ましい花の姿が印象づけられる。(高橋正子)

★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられは作者にとって格別の感慨をお持ちの事でしょう。お婆様が毎年作って送って下さっていたことをお聞きした事があります。淡い彩りの雛あられに遠い昔を懐かしみ明るく詠まれた御句です。 (佃 康水)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
黄色いミモザの花が美しく咲く春の朝にパンを焼く。香ばしい香りが漂う。おすそ分けにと自転車に乗る。春の生き生きとした暮らしが浮かんでくる。 (内山富佐子)

★紅梅やふるさと発ちし頃なりき/桑本栄太郎
紅梅が咲く頃、故郷を後にして、都会へ出られたのでしょう。紅梅が咲くのを見ると、そのころを思い出す。過ぎてしまえばみな美しくなつかしいものになります。(多田有花)

★ぼんぼりに桃花耀く雛飾り/河野啓一
ほのかなぼんぼりの光に照らされたお雛様。桃の花もやさしく、現代の雛祭りというよりも、旧暦で祝われていたころのイメージが浮かんできます。(多田有花)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ/高橋信之

【入選/8句】
★雛めぐりする町安芸の小京都/高橋秀之
安芸の小京都といえば、竹原。江戸時代に製塩業で栄えた古い町並みの中で所蔵される雛人形が展示されているのですね。それを巡って歩くのも趣のある雛祭りでしょう。 (多田有花)

★杉玉の揺るる街並み雛めぐる/佃康水
杉玉は別名酒林とも言われ、造り酒屋の軒先に飾り宣伝のひとつともしていました。杉玉のある街並みとは
それだけ古く鄙びた街並みでもあり、その町は旧家も多く、桃の節句には雛人形をお披露目もするのでしょう。そこをめぐり歩くとは趣きを覚えます。 (桑本栄太郎)
歴史を感じ風情漂う街並みに、雛飾りを愛でるひととき。しっとりと落ち着いた佇まいの中、しみじみと日本のよさが感じられます。 (藤田洋子)

★難しきことはともあれ桜餅/内山富佐子
人生生きていれば何かと難しいことに出会う。まあ、命をとられるほどのことはないと思うし、美味しい桜餅があることだ。今日はいい日だったと思うことにしよう。 (古田敬二)

★蓬摘む故郷恋しくなる夕べ/古田敬二
蓬を摘めば、香りと手に触れる感触に子供の頃の思い出が蘇ります。お母様の手作りの蓬餅の味、故郷の豊かな自然、かけがえのない故郷がいつまでも平和であってほしいものです。 (柳原美知子)   

★春寒の厨に立ちて卵とく/内山富佐子
まだまだ寒さの残る日の台所。料理のためにたまごをとくことにも気持ちが引き締まります。(高橋秀之)

★日の目見る十年越しの雛かな/小口泰與
十年という歳月を経て飾られたお雛様。変わらぬお雛様の優しい微笑に、自ずと心和み明るい気持ちになられたことでしょう。(藤田洋子)

★春夕焼け京阪電車の車窓より/多田有花
京阪電車は京都と大阪を結ぶ電車なので、京の雅やかさや商都大阪の生き生きと活動的な人たちが乗合っている。春夕焼けもそんな雰囲気で眺められるのだろう。(高橋正子)

★初恋の面輪もならぶ紙びいな/矢野文彦
紙の雛にそれぞれの顔が描かれている。一つ一つを眺めていて、遠い昔の初恋の乙女の面輪がふと浮かび、懐かしくも遠い昔が忍ばれた。品のある句。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ
雛祭りが来て、嫁いで行かれた娘さんの幼児時を想い出しておられる親心に共感を覚えます。色んな思い出が次々浮かんでくることでしょう。(河野啓一 )

★ひな祭りの朝暗がりの窓外よ
ひな祭りの日の未明。まだ明けやらぬ窓外の暗がりが、ひな祭りと思えばこそ、うるおって、春めいて感じられる。未明のひな祭りを詠んだ句も珍しい。(高橋正子)

★もの書くに窓外春の暗がりよ
ものを書く人は、昼間のしんとした時間だけでなく、夜や未明に起きて書く人が多い。ものを書きながら手を休め窓の外を見ると、暗がりながら、潤い春めいている。曙の日が差すのはもう少しあと。微妙な時間帯の暗がりを楽しむ。(高橋正子)

■選者詠/高橋正子
★身ほとりに紙雛かざり雛祭り
十段飾りや五段飾りも素晴らしいが、身のまわりをご自分で作った紙雛で飾って人生を楽しんでいる作者の素晴らしい生き方に感銘を覚えます。(小口泰與)

★青という空に垂れたる榛の花
早春の雑木林でいち早くみかける榛の木の花、下垂した紐状の花穂が独特の存在感です。高々と木立の枝先に垂れる榛の花が、まさに「青」と呼べる美しい空に映えて、辺りの清々しく澄んだ空気、明るい春の気配を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★山桜帰り遅れし鶫おり
「山桜」の開花時期は、その種類によって、まちまちだが、この句の「山桜」は、開花時期の比較的早いものであろう。開花時期の早い「山桜」と帰りの遅い鶫との取り合わせで、にぎやかな風景を捉えた。早春の面白い風景で、「春が来た」という嬉しさと楽しさのある句だ。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点)
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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