6月ネット句会清記


2015年
6月ネット句会清記
15名45句

01.雷鳴や雹の飛び交う厩橋
02.妖怪の仕業の如き雹降れり
03.窓ガラス叩き割りたる雹の数
04.万緑の大山崎や蒸留所
05.枇杷熟れて吾に望郷つのりけり
06.あれそれと主語なき会話梅雨ぐもり
07.医学部の献体の碑や枇杷熟るる
08.赤レンガ木斛の実の熟れ初むる
09.不死鳥のフェニックス揺れ墜栗花雨
10.高原を抜けて夏山登山口

11.亀そろい甲羅を干すや梅雨晴れ間
12.緑なす谷に響きし不如帰
13.なだらかに百合は海へと続きおり
14.まな板にのせて収穫初胡瓜
15.水足せば流れに沿うて目高たち
16.合歓咲きて丘の一隅灯したり
17.高啼きて鴉を威嚇親つばめ
18.背の音へ闇やわらかし初蛍
19.ロープーウェイ眼下は若葉の広がりし
20.雨上がりの空へ向かって夏の蝶

21.冷蔵庫開けて麦茶の一気飲み
22.合歓の花見上げつひとり丘の道
23.湖は夏櫂の雫も風に乗り
24.蜻蛉生る狭庭の隅やビオトープ
25.境内の紫陽花の花生々と
26.糠漬の夏の野菜と白米と
27.田植えすみ水に映った深い空
28.しんじゃがの籠重たくて畦を行く
29.湧き出ずる淡き紅合歓の花
30.合歓見れば優しき心が湧いてくる

31.滔々と清き流れや夏来る
32.道端に瞳涼しき石仏
33.うるわしき大洲盆地や若葉風
34.夕立のあとのいつもの街を歩く
35.休憩に真正面の夕焼けへ
36.欅並木梅雨をきらきら滴らす
37.栃の木の紅花立てて街路樹に
38.芍薬のピンクが白に近い色
39.花蜜柑の匂い池への斜面を流れ
40.梅雨冷の海風強く吹き渡る

41.梅干しのおにぎりうれし急ぎ帰宅
42.ラムネ買い水色ガラスの音がする
43.堀流る水を弾いて夏つばめ
44.ヒメジョオン真白土塁の松影に
45.田植え終う里鎮もりて満月光

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、6月21日(日)午後6時から始め、同日午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、6月22日(月)午前10時
※2) 伝言・お礼等の投稿は、6月22日(月)午前10時~6月23日(火)午前10時です。

6月21日(日)

★てのひらに書を読む梅雨のすずしさに  正子

○今日の俳句
夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
田植のあと早苗は根付き、夏至のころ、根付いた苗は<ぶんけつ>する。梅雨の最中であって、雨は田を「浸す」のである。豊かな水と青々とした田は、日本の原風景であり、たゆまぬ力を感じる。(高橋正子)

○六月ネット句会開催。15名投句で45句。夜10時入賞発表。
投句
★夕立のあとのいつもの街を歩く 正子
★欅並木梅雨をきらきら滴らす 〃
★休憩に真正面の夕焼けへ 〃
★休憩に出でて真向こう夕焼ける 〃

○句美子がお菓子教室で作ったホワイトチョコレートの台にワインゼリーを重ねたケーキを持って来てくれる。ワインゼリーの中に苺、アメリカンチェリー、ブルーべりーが入っている。お菓子教室の冷蔵庫は0度なので、ゼリーがすぐ固まるので、3時間の授業内で、果物をコンポートにし、ゼリーを固め完成させるとのこと。それに、お茶を飲みながらの試食も。聞けば、お菓子教室に通いだして丸四年になるという。一番最初は、ウィークエンドケーキで、シンプルながら、おいしさに驚いたことだった。(2015.6.21)

○青葡萄

[青葡萄/横浜日吉本町]

★葉洩日に碧玉透けし葡萄かな/杉田久女 
★濁流に日のあたりけり青葡萄/山口誓子
★川を呼び山風を呼び青葡萄/広瀬直人
★青ぶどう夜明けは山のうしろから/鈴木美千代

 青葡萄とは、まだ熟さない青々とした難い実の葡萄をいう。この場合は成熟しても緑色をしているマスカットなどの品種のものは指さない。生産は山梨県が最も多く、岡山・長野の両県が続く。花は五、六月果実と同じように房になって集まって咲く。この青葡萄から濃紫黒・紅赤・黄緑色と、それぞれの品種によって色づいてゆく。
 ブドウ(葡萄、学名 Vitis spp.)は、ブドウ科 (Vitaceae) のつる性落葉低木である。また、その果実のこと。葉は両側に切れ込みのある15 – 20cmほどの大きさで、穂状の花をつける。野生種は雌雄異株であるが、栽培ブドウは一つの花におしべとめしべがあり、自家受粉する。このため自家結実性があり、他の木がなくとも一本で実をつける。果実は緑または濃紫で、内部は淡緑であり、房状に生る。食用部分は主に熟した果実である。食用となる部分は子房が肥大化した部分であり、いわゆる真果である。外果皮が果皮となり、中果皮と内果皮は果肉となる。果実のタイプとしては漿果に属する。大きさは2 – 8cm程度の物が一般的である。ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下端部分は熟すのが最も遅いため甘味も弱くなる。皮の紫色は主にアントシアニンによるものである。甘味成分としてはブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれている。また、酸味成分として酒石酸とリンゴ酸が、これもほぼ等量含まれる。
 ブドウ属の植物は数十種あり、北米、東アジアに多く、インド、中東、南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウ、エビヅル、サンカクヅル(ギョウジャノミズ)もブドウ属の植物である。現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種 (V. vinifera, common grape vine) と、北アメリカのラブルスカ種 (V. labrusca, 英: fox grape)で ある。米がうるち米(食用)・酒米(酒造用)があるように、ブドウにも食用ブドウと酒造用ブドウがあり、食用はテーブルグレープ(table grapes)、酒造用はワイングレープ(wine grapes)と呼ばれている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月20日(土)

★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子
梅酒をお作りになるのですね。6月の上旬から中旬頃に収穫したばかりの青梅で、熟さない内に漬けるのですね。瓶に敷き詰めた青梅、そしてその中には白い氷砂糖と焼酎。ガラスの瓶に透けた青と白は如何にも涼しげです。そして出来上がるのがとても楽しみです。(佃 康水)

○今日の俳句
黄熟の匂い立たせて梅漬ける/佃 康水
梅干しに漬ける梅は青梅ではなく、黄色く熟れてやわらくなった梅を用いる。青梅が黄熟する間に放つ梅の甘くかぐわしい匂いは、「梅仕事」を楽しくしてくれる。(高橋正子)

○夏茱萸(なつぐみ)

[夏茱萸/横浜日吉本町]_[梅桃(ゆすら)/横浜日吉本町]

★夏茱萸の爛々として墓の上/津沢マサ子
★夏茱萸や妻の居ぬ日はものぐさに/村沢夏風
★夏茱萸や昔は子沢山なりし/青柳志解樹
★夏茱萸を含めば渋き旅愁かな/村岡黎史
★取る人のなき夏茱萸のこぼれ落つ/五十島典子
★小ちさき手に夏ぐみ数個のせて来し/TAKAKO
★降りだしてこの夏茱萸の千の揺れ/茜

 夏茱萸(なつぐみ、学名:Elaeagnus multiflora form. orbiculata)は、トウグミと同様にElaeagnus multifloraの変種とされ、日本固有種です。基本種は東アジアに分布しているとされています。高さ2m~4mほどになる落葉低木です。樹皮は褐色で、老木では縦に不規則に剥がれおちます。
 春に淡黄褐色の花を葉腋に比較的多くつけます。花はやや下垂し、基部は筒型で先端に4枚のガク片がつきますが、4裂しているように見えます。花径は1cmほどです。葉は、葉先が鋭三角形状の広楕円形で、幅4cm前後、長さ8cm前後で、葉の縁はやや波打ちますが全縁(葉の縁のギザギザはない)です。葉の表面には鱗状毛があり、葉裏には銀色の鱗状毛が密生し、赤褐色の鱗状毛が混じるので、淡褐色に見えます。グミの仲間(グミ属)では普通ですが、葉裏が淡褐色や黄褐色です。果実は、両端が丸い円筒形で長さ1.5cm前後です。初夏に赤く熟して食べられます。北海道南部、福島県から静岡県の太平洋側に分布します。多摩丘陵では、自生のものは稀で、人家周辺に時々植栽されています。
 「グミ」の名は、漢名「茱萸子」からきているようです。「茱萸」を日本語読みしたもののようですが、はっきりとはしていないようです。「夏」は、初夏に果実が熟すことからです。
 万葉集を始め多くの歌集や文芸等にはその名は現れていないようです。平安時代の「倭名類聚抄」に「和名 久美」として現れているとのことです。江戸時代の「本草綱目啓蒙」などにその名が現れています。
 果実は美味しく古くから食用にされています。有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。
 多摩丘陵には、この仲間(グミ属)では、以下のように、落葉樹であるこのナツグミとトウグミ、常緑樹であるナワシログミとツルグミを確認していますが、分布域的には可能性がある落葉のアキグミは未確認です。全て花や果実は似ていて葉裏も淡褐色から黄褐色で似ています。葉には多少の違いがありますが、変異もあるので葉だけでの区別は慣れないと結構困難です。多摩丘陵ではいずれも個体数は少なく、なかなか出会えません。
 このナツグミとトウグミは、とてもよく似ていて区別は大変困難です。植物学的にはナツグミでは葉の表面に鱗状毛があるのに対して、トウグミでは(若い)葉に星状毛があることで同定します。一般には、トウグミではナツグミよりも花や実つきがよいことで区別します。トウグミの果実はナツグミよりもやや大きいのですが見た目での判断は困難です。トウグミは、花や実付きがよく、果実もやや大きいので当初は中国などから持ち込まれた種であると考えられたために「唐グミ」と名づけられています。
他の常緑の2種では、葉がやや厚くてやや硬いことで区別できます。また、ナツグミやトウグミでは花期は春ですが、ナワシログミやツルグミでは花期が秋です。果期は、ナワシログミは初夏ですが、ツルグミでは春です。
 ナワシログミは、常緑で葉はやや厚くて硬く、小枝がトゲ状になっていることが特徴です。また、葉は葉先が鈍三角形状の長楕円形で葉縁が波打つことでも区別できますが、慣れないと困難です。花期も秋です。
 ツルグミは、茎がツル状に長く伸びて他物に寄りかかるようになるのが特徴です。葉は、やや厚くてやや硬く、葉先が長い三角形状です。花期は秋です。
 アキグミでは、花期は春ですが、果実が赤熟するのは秋です。また、果実が小さな球形(径7mm前後)なので容易に区別できます。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月19日(金)

★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子
先日梅酒を漬けたばかりです。ホワイトリカーがないとすれば、梅のシロップ作りでしょうか。いづれにしても漬けて透き通った中身の青梅と氷砂糖のビンを見て、満足ですね。(祝恵子)

○今日の俳句
ピーマンの分厚く光るを収穫す/祝恵子
よくそだったピーマンの質感をよく捉えている。「分厚く」に納得。(高橋正子)

○表参道を歩き、青山通りへ出て骨董通りを歩く。雨が降ったり、止んだり。帰り、新潟県のアンテナショップで笹団子を買う。

○繍線菊(しもつけ)

[しもつけ/横浜日吉本町]

★しもつけを地に並べけり植木売/松瀬青々
★繍線菊やあの世へ詫びにゆくつもり/古舘曹人
★しもつけの花を小雨にぬれて折る/成瀬政俊
★しもつけに肩ふれらるる家の角/岡田博允
★繍線菊やえんぴつ書きの母の文/山内八千代

しもつけは、近くの公団の植栽にある。白と赤、それに源平と呼ばれる紅白が混じったもの。泡のような小粒の蕾が集まっているのだが、それが弾けて可憐な花となる。花だけでなく、葉も魅力がある。花も葉もおしゃれな感じがする。こでまりや、ゆきやなぎの仲間なので、茎などはよく似ている。部屋に活けてみたい花だ。白がいいか、赤がいいか。どちらも欲しい。この花だけよりも、なにか他のものと合わせれば、もっといい花となる。

★しもつけの紅花備前に活けてみし/高橋正子

シモツケ(学名:Spiraea japonica)は、バラ科シモツケ属の落葉低木。漢名「繍線花」があてられる。別名、キシモツケ(木下野)とも呼ばれる。アジア原産地で、北海道から九州にかけての日本各地、朝鮮および中国の山野に自生する。成木の樹高は1mほどであり、初夏に小花(集合花)が傘状に群がり、淡紅色又は白色の五弁の花を沢山つける。秋には紅葉する。古くから庭木として親しまれてきた。和名は下野国に産したことに由来するという。同じシモツケ属の仲間にはコデマリ、ユキヤナギがある。 シモツケは富士山にも咲いている。寒さに強く、日当たりを好む。シモツケ(バラ科)花言葉は、いつかわかる真実。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月18日(木)

★沙羅の花みずみずしくて落ちている  正子
白く可憐な姿のままに落ちている沙羅の花。辺りは清浄な空気が漂っているようです。落ちてなおみずみずしさを留める花びらに、儚くも美しい沙羅の花の命を思います。(藤田洋子)

○今日の俳句
蛍飛ぶ後ろ大きな山の闇/藤田洋子
大きな山を後ろに闇を乱舞する蛍の火。山間の清流を舞う蛍火の見事さを「山の闇」で的確に表現した。(高橋正子)

○矢車草

[矢車草/横浜日吉本町]

★矢車草空へ伸びざま吾子逝けり/柴崎左田男
★矢車草の矢車楽し少年に/高橋信之
★矢車草青はもっともドイツの色/高橋正子

矢車草(学名:Rodgersia podophylla)は、ユキノシタ科ヤグルマソウ属の多年草。根出葉は5枚の小葉からなる掌状複葉で、葉柄は50cmに達する。小葉は倒卵形で先端が3-5浅裂する。花茎の高さは1mほどになり、短い葉柄をもった茎葉が数個互生する。花期は6-7月で、先端に円錐状の花序をつける。花弁はなく、花弁にみえる萼裂片は長さ2-4mmで、ふつう5-7個あり、色は紫、赤、白、桃など多様である。雄蕊は長さ3-4mmで8-15個あり、直立する。花柱は長さ1.5-2.5mmになり、2個あり、花時に直立する。果実は狭卵形の果で、長さ5mmになる。和名の由来は、小葉の構成が、端午の節句の鯉のぼりにそえる「矢車」に似ることによる。
矢車草は、私には、ずっと昔からのなじみに花である。近頃は、流行なのかチョコレート色の矢車草もあるが、一番矢車草らし色は青だと思う。この青色は日本の青とちがって、ドイツかスイスの花の青だといつごろからか思うようになった。シュタイフ・ブルーと呼ばれる色がある。帝国の青という意味だが、つまりドイツの色という意味。ドイツの国会の座席は、設計段階では、グレーとしていたが、ドイツ国民によって「シュタイフ・ブルー」になったと聞く。ドイツ国民がこれこそドイツの色としている色であろう。

◇生活する花たち「紫陽花・立葵・百日草」(横浜・四季の森公園)

6月17日(水)

★水こぼす水車の音の菖蒲田へ  正子

○今日の俳句
直立に濃く咲き登り立葵/多田有花
立葵の花は、ピンク、白、赤色など様々ある。この句の立葵は、濃い色のもの。可憐な花の姿をしながら、「直立に」「濃く」咲いて、生命力のある花だ。(高橋正子)

○梔子(くちなし)

[梔子/横浜日吉本町]

★口なしの花さくかたや日にうとき/与謝野蕪村
★薄月夜花くちなしの匂いけり/正岡子規
★口なしの淋しう咲けり水のうへ/松岡青蘿
★山梔子(くちなし)や築地の崩れ咲きかくし/堀麦水
★くちなしの香に夕闇を濃く沈め/武藤あい子
★くちなしの咲き乱れる家にいて/巽三千世

 どこからか梔子の花の匂いがする。どこだろうかと、あたりを探すと、ああここかとすぐ見つかるのだが、その木が意外と小さかったり、大きかったり、花が八重だったり、一重だったりする。沈丁花とはまた違う、金木犀とも違う、よく匂う花である。一枝部屋に挿すと、梅雨じめりの中で疲れるほどよく匂う。
 梔子には八重と一重があるが、子どものころ生家の庭にあったのは一重であった。風車のような白いの花は、日にちが経つと黄色みを帯びてくる。花が終わると、いつか実を付けている。私はこういった花の傍でいつも遊んだ。どの花も実になるのかと思うほど沢山つく。八重の花は、高貴な人の純白のドレスの布のようだと思う。小さい薔薇のコサージュように咲く。

★梔子の匂いてくれば振り返る/高橋正子

 クチナシ(梔子、巵子、支子、学名:Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。果実が漢方薬の原料(山梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。樹高1-3 mほどの低木。葉は対生で、時に三輪生となり、長楕円形、時にやや倒卵形を帯び、長さ5-12 cm、表面に強いつやがある。筒状の托葉をもつ。花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で先は大きく6弁に分かれ、開花当初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花には強い芳香があり、学名の種名「jasminoides」は「ジャスミンのような」という意味がある。10-11月ごろに赤黄色の果実をつける。果実の先端に萼片のなごりが6本、針状についていることが特徴である。また側面にははっきりした稜が突き出る。東アジア(中国、台湾、インドシナ半島等)に広く分布し、日本では本州の静岡県以西、四国、九州、南西諸島の森林に自生する。八潮市、湖西市および橿原市の市の花である。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月16日(火)

★薔薇垣と薔薇のアーチに人の住む  正子
初夏の明るい日差しの中に薔薇垣があり薔薇のアーチがある。その輝かしさと芳しさに心ときめき圧倒される。そしてしばしの後にようやく気付くのだ。この家にも住む人のあることを。不思議だろうか、当たり前だろうか? (小西 宏)

○今日の俳句
山桑やまだ濡れている朝の道/小西 宏
「山桑」は、季語では山帽子のこと。梅雨にはいってもまだ咲いている山帽子があるが、まだ雨に濡れている朝の道に白い山桑の花を見つけると、湿りのある中にもすがすがしさを思う。(高橋正子)

○玫瑰(はまなす)

[玫瑰/横浜・港の見える丘公園]

★玫瑰の丘を後にし旅つづく/高浜虚子
★玫瑰や今も沖には未来あり/中村草田男
★搾乳婦来て玫瑰にひざまづく/堀口星眠
★はまなすや裏口に立つ見知らぬ子/中村苑子
★はまなすや人の泳がぬ北の海/橘 昌則
★はまなすや破船に露西亜文字のこり/原 柯城
★はまなすや親潮と知る海の色/及川 貞

 はまなすと言えば、草田男の「玫瑰や今も沖には未来あり」がすぐに思い出される。はまなすは夏の花である。この句が詠まれた場所は、どこであろうか。調べたことはないが、足元に咲く薔薇色のはまなすの花に佇って沖を見ると、世の中が変わってきても、やはり、「未来」があると信じられる。沖の水平線とその空のあたりに未来があると思える。
 その後「知床旅情」にも歌われた。森繁久弥や加藤登記子の歌声が耳に聞こえるが、遠く海を見ながら、遠くを思いつつ歌っている雰囲気だ。横浜の「港のみえる丘公園」内の薔薇園を外れたところに、玫瑰が咲いていた。園芸種であろうが、そこからも港の海が見える。自生の玫瑰を一度見てみたいと思っている。

★はまなすに躓く先に海がある/高橋正子

 ハマナス(浜茄子、浜梨、玫瑰、学名:Rosa rugosa)は、バラ科バラ属の落葉低木。夏に赤い花(まれに白花)を咲かせる。根は染料などに、花はお茶などに、果実はローズヒップとして食用になる。皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印でもある。晩夏の季語。東アジアの温帯から冷帯にかけて分布する。日本では北海道に多く、南は茨城県、島根県まで分布する。主に海岸の砂地に自生する。1-1.5mに成長する低木。5-8月に開花し、8-10月に結実する。現在では浜に自生する野生のものは少なくなり、園芸用に品種改良されたものが育てられている。果実は、親指ほどの大きさで赤く、弱い甘みと酸味がある。芳香は乏しい。ビタミンCが豊富に含まれることから、健康茶などの健康食品として市販される。のど飴など菓子に配合されることも多いが、どういう理由によるものかその場合、緑色の色付けがされることが多い。中国茶には、花のつぼみを乾燥させてお茶として飲む玫瑰茶もある。「ハマナス」の名は、浜(海岸の砂地)に生え、果実がナシに似た形をしていることから「ハマナシ」という名が付けられ、それが訛ったものである。ナス(茄子)に由来するものではない。アイヌ語では果実をマウ(maw)、木の部分をマウニ(mawni)と呼ぶ。バラの一種であり、多くの品種が存在する。北米では観賞用に栽培される他、ニューイングランド地方沿岸に帰化している。イザヨイと呼ばれる園芸品種は八重化(雄蕊、雌蕊ともに花弁化)したものである。ノイバラとの自然交雑種にコハマナスがある。このほかシロバナハマナス、ヤエハマナス、シロバナヤエハマナスなどの品種がある。バラの品種改良に使用された原種の一つで、ハマナスを交配の親に使用した品種群を「ルゴザ系」と謂う。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月15日(月)

★朝影のみどりの深き夏ポプラ  正子
鬱蒼と葉を茂らせたポプラの木。清々しい朝日を浴びて緑に一段と深みが感じられます。堂々とした大樹の佇まいが見えてきます。(河野啓一)

○今日の俳句
天と地を結ぶ棚田の早苗かな/河野啓一
早苗を植えた棚田が地から天まで続く。天と地が薄緑の早苗で結ばれた。この発想が大きい。(高橋正子)

○捩花(ねじばな)・文字摺草

[捩花/日吉本町]

★ねじ花をゆかしと思へ峡燕/角川源義
★見えて来る距離見えぬ距離文字摺草/稲畑汀子
★文字摺草ありし辺りへ杖運ぶ/村越化石
★捩花に今年よき年数咲きて/宮津昭彦
★捩花のそよぎ送電塔真下/笹家栄子
★不器用な青春なりし捩り花/岩岡中正
★白く咲くコップの中の捩り花/新妻奎子
★捩花の影は一筋素直なる 藤岡紫水
★捩り花きちんと捩れ自決の地/山田正子

 捩花(ネジバナ)は、ラン科ネジバナ属の小型の多年草。別名がモジズリソウ(綟摺草)。湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。花色は通常桃色で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるようにつけるが、その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「ねじり草(そう)」とも呼ばれる事もある。学名のSpiranthes(スピランセス)は、ギリシャ語の 「speira(螺旋(らせん))+ anthos(花)」に由来する。花茎から伸びる子房は緑色で、茎に沿って上に伸び、その先端につく花は真横に向かって咲く。花茎の高さは10-40 cm。 花は小さく、5弁がピンク、唇弁が白。花のつく位置が茎の周りに螺旋状であるため、花茎の周りにピンクの花が螺旋階段のように並ぶことになる。この螺旋は右巻きと左巻きの両方が見られる。白花や緑色の個体もしばしば見られる。コハナバチのような小形のハナバチなどが花粉塊を運んで他花受粉が起こると考えられるが、長期にわたって花粉塊が運び去られないと、これが崩壊して柱頭に降りかかり、自家受粉を成立させることが知られている。開花時期は4-9月。葉は柔らかく厚みがあり、根出状に数枚つける。冬期は楕円形だが生育期間中は細長く伸びる。根は極めて太短く、細めのサツマイモのような形で数本しかない。ごく稀に真っ白い花をつける個体(シロネジバナ)が見られ、園芸愛好家に特に好まれる。日本全土[7]、ヨーロッパ東部からシベリアにかけて、温帯・熱帯アジア全域、オセアニアなどに広く分布する。ラン科ではめずらしく、芝生や土手、都市公園等の人間の生活圏に近い所で普通に見ることができる。この為、ともすれば花の綺麗な雑草として扱われ、芝刈り機で刈り取られてしまう。他方、その花の可愛らしさから、昔から愛でられ、愛好家主催の展示即売会等で、山野草として販売される事もある。昭和の終わり頃、当時の野生ランブームの中で管状の葉や斑入りなどの変異個体を収集するのが流行したが、後述のように単独栽培や株分けによるクローン増殖が困難なこともあって、ごく一部を除いて保存されていない。

 もじずり草は、「湿っていて日当たりの良い、背の低い草地によく生育する」ということであるから、こういう土地は、生活圏の思わぬところにある。田圃が埋め立てられて住宅地とされる場合が多いが、そういった団地などのクローバーや芝生のなかにもじずり草がよく咲いている。愛媛の砥部に住んでいたときは、家の裏手の遊歩道に、ぽつぽつと咲いていた。日吉本町では、近くのUR機構の公団の広場に一面に咲いている。この一面に咲く花を踏まないよう写真を撮りながら歩いていると、団地の老婦人が、何があるのかと声をかけてくることがある。「もじずり草ですよ。ねじばなですよ。」というが、「何のことだか。」と言う表情を返してくる。多くの住人は気付いて居ないのかもしれないが、それこそ一面に咲いているのである。もちろん、かわいらしい。盆栽風に鉢植えにして身近に置けば、可愛いだろう。

★もじずりの抜き出し草もみな低し/高橋正子
★もじずりの螺旋しっかり空へ巻く/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・立葵・百日草」(横浜・四季の森公園)

6月14日(日)

★朴の花栃の花見てゆたけしや  正子
朴の花を見、そして栃の花を見て、見た目の景色だけでなく気持ちもゆったりして、広々としているのだと感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
植田水夕暮れの陽は真ん丸く/高橋秀之
植田に映る「夕暮れの陽」が、「真ん丸く」、おだやかで、まだ明るい夕暮れの情感をよく詠んでいる。「夕暮れの陽」、「真ん丸く」は、言葉より心が優先されていてよい。(高橋正子)

○百合

[鉄砲百合/横浜日吉本町]

★山百合を捧げて泳ぎ来る子あり/富安風生
★夜を徹す百合の香にあり書き継げり/岡本眸
★一月の百合を捧げて祈りけり/稲畑汀子
★いよよ咲く百合よ歓喜の蘂放ち/林翔
★百合といふ百合が鉄砲百合の島/宮津昭彦

 百合は、ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(学名:Lilium)の多年草の総称である。属名の Lilium はラテン語でユリの意。アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種以上を数える。 山岳地帯を含む森林や草原に自生することが多いが、数種は湿地に自生する。L. arboricolaは唯一の着生植物である。 一般的に、石灰質でない弱酸性の土壌を好む。代表的な種に、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。鱗茎(球根)を有する。茎を高く伸ばし、夏に漏斗状の花を咲かせる。欧米ではユリの品種改良の歴史は新しく、19世紀に日本や中国からヤマユリやカノコユリなどの原種が紹介されてからである。日本では、江戸時代初期からスカシユリが栽培されてきた。現在ではさまざまな色や形の品種が作り出され、世界中で愛されている。
 子どものころは、百合と言えば梅雨の走りのころから咲く白い鉄砲百合と夏休みに咲く赤い鬼百合の二つであった。今はカサブランカのような豪華な百合やさまざまな色のすかし百合の仲間がたくさんあるようである。昭和30年代だったと思う。父が前の畑に百合の花を売るために植えた。そのころは売る花は菊に限って農家が栽培していたようだが、父は鉄砲百合に挑戦して、うまく咲かせた。蕾のときに切り取られるが、白がかった緑色の蕾と鋏で切り取る音が目に耳に残っている。咲いてしまった花は学校に持っていった。鉄砲百合の花は生活の花となっていた。
 もう7,8年前になるだろうか。瀬戸内海が遠くみえる松山のマンションのベランダでカサブランカを育てた。その芽は、筍ほどで、百合の芽とは思えなかった。たしかにカサブランカの花であった。
 夏休みのころ咲く赤い百合は、すぐ前の伯父の家にあって、垂らした簾に似合っていた。冷房もない時代、それも涼しい景色だった。旅をすれば、切通しのがけなどに白い百合が咲いている。白百合は、清純さの代表ともなって、祈りの花としても欠かせない。 
  富士登山のとき・河口湖
★白百合のまばらに咲いて富士裾野/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月13日(土)

★額あじさい雪崩れてついに水に触る   正子

○今日の俳句
緑陰の途切れるところ頂に/多田有花
山の登り始めは木々が茂りあう道から始まる。体も緑に染まりそうなくらいの緑陰となって、延々と道は続くのだが、その緑陰がとぎれるところに出た。そこが頂上だったわけで、頂上を目指すというのではなく、登り至れば頂上だった、というのがさっぱりしている。(高橋正子)

○かたばみ

[かたばみ/横浜日吉本町]_[芋かたばみ/横浜日吉本町]

カタバミ(酢漿草、片喰、学名: Oxalis corniculata)は、カタバミ科カタバミ属の多年草。花言葉は「輝く心」である。葉は、ハート型の3枚がとがった先端を寄せあわせた形。三出複葉だが、頂小葉と側小葉の区別はつきづらい。地下に球根を持ち、さらにその下に大根の様な根を下ろす。葉は球根の先端から束に出る。この他、匍匐茎をよく伸ばし、地表に広がる。このため、繁殖が早く、しかも根が深いので駆除に困る雑草である。春から秋にかけ黄色の花を咲かせる。花びらは5弁。果実は円柱状で先がとがり、真っ直ぐに上を向いてつく。成熟時には動物などが触れると、自ら赤い種子を勢いよく弾き出す。最大1m程度までの周囲に飛ばすことができることも繁殖に有利となっている。葉や茎は、シュウ酸水素ナトリウムなどの水溶性シュウ酸塩を含んでいるため、咬むと酸っぱい。シュウ酸は英語で oxalic acid というが、カタバミ属 (Oxalis) の葉から単離されたことに由来する。また、葉にはクエン酸、酒石酸も含まれる。カタバミ属の植物をヒツジが食べると腎臓障害を起こすとの報告がある。ヤマトシジミの幼虫が食草とする。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)