9月17日(木)

★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり  正子
萩のトンネルにはところどころ隙間があるのでしょう。その隙間からぱらぱらと空が見えている。そこは、正に空があるという感じなのでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)

○俳句界の結社広告11月号分の原稿を送り忘れ、催促されたのですぐメールで送る。毎月「今月の秀句」として4句掲載している。

灯ともせる窓々ありて鉦叩  高橋正子
ふるさとへ戻り林の鵙高音  桑本栄太郎
球根を手早く植えて文化の日 上島祥子
秋始まる終着駅の箱根から  高橋句美子

担当者の三東さんが先月退職されたので、新しく遠藤理恵さんが担当。三東さんは、掲載句に感想を寄せてくれていた。「夏らしい句が並んでいる」とか。「この句を読んで、気持ちが晴れ晴れした」とか。逆に言えば、花冠のような句は、俳壇には少ないと思える。(2015)

○9月17日、白金台の自然教育園へ行く。今日は目黒駅で下車。帰りは、白金台駅より乗車。秋草の小さい花がいろいろさいていた。
松風草、盗人萩、かりがね草、水引草、金水引、山ほととぎす、露草、彼岸花、芒、白花桜蓼、しらやまぎく、山萩、吾亦紅、長穂の白吾亦紅、蔓豆、野原薊、タイ薊、ツルボ、南蛮煙管、藤袴、未草、あさざ、など。今年は、郁子の実はなかった。(2014)

露草の青のいのちの正午まで   正子
露草の青の息づく池ほとり    〃
秋草の千草の花に金水引     正子
桜蓼の埋めし野原に露草も    〃
金水引露草桜蓼野が埋まり    〃
吾亦紅の紅の丸きが草に飛び   正子
吾亦紅千草に映えし紅の色    〃
空へ眼をやれば若き芒の穂    正子
南蛮煙管うすむらさきに水通う  正子
未草水面にひとしき花映り    正子
未草小さき花も傾きぬ      〃
未草九月の花は乳色に      〃
しらやまぎくそのしろがねを日に晒し 正子
うす曇る秋空淡し雁草      正子
雁草引けば揺れたり揺れやすき  〃
彼岸花つぼみの花が添い立てり  正子
彼岸花森のなかにも蘂を張り   〃
山萩の紅濃き枝のふさふさと   正子
山萩に黄蝶が止まりまた離れ   〃
道すがら山ほととぎす咲いており 正子

鉄風鈴つづれる虫に鳴りにけり 正子
鯛づくしの料理のなかの青酢橘 〃
虫の音も鉄風鈴も窓越しに   〃

★芒の根方南蛮煙管のすくと伸ぶ/高橋正子

 ナンバンギセル(南蛮煙管、Aeginetia indica)はハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物。日本を含むアジア東部、アジア南部の温帯から熱帯にかけて生育する。
 イネ科の単子葉植物(イネ、ススキ、サトウキビなど)の根に寄生する。寄主の根から吸収した栄養分に依存して生育するため、寄主の生長は阻害され、死に至ることもある。全長は15-50cm。葉は披卵形、長さ5-10mm、幅3-4mm[3]。花期は7-8月、赤紫色の花を1個つける。花冠は筒型で、唇形になる。花冠裂片の縁は全縁。果は球状で、種子の大きさは0.04mm。染色体数は2n=30。
 同属のオオナンバンギセルに似るが、本種の方が小型である。また、本種の萼の先端は尖るが、オオナンバンギセルの先端は鈍くなるという点も異なる。ヒメナンバンギセル Aeginetia indica L. var. sekimotoana (Makino) Makino
 ススキなどの雑草の生長を阻害するため、ナンバンギセルによる生物的除草効果の可能性が示されている。一方、陸稲にナンバンギセルが寄生することで、イネの収量が減少するという被害が報告されている。

◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

[南蛮煙管/東京白金台・国立自然教育園]

9月16日(水)

★青林檎ときに稲妻差しきたる  正子
酸味の残る青林檎の味、香り、ときおり遠くに細く走る稲光。まだ本当の稔りの秋にはなりきらない不安定な季節の、しかし瑞々しい情感に満ちた心象風景を思います。(小西 宏)

○今日の俳句
とんぼうの列なして行く空かろし/小西 宏
とんぼうが列を作って飛んでゆく楽しい空となった。すいすいと飛んでゆくとんぼうに空まで軽くなった感じだ。(高橋正子)

○毬栗(いがぐり)

[毬栗/横浜市緑区北八朔町]

★落栗やなにかと言へばすぐ谺/芝不器男
栗の木があるところは、山静かな里。落ちた栗も拾われずに転がっている。ちょっとした言葉も響いて谺となる。自分の発した声の谺は、もっとも自分の心がよく受け止めているのではないか。(高橋正子)

★毬栗に袋かぶせてありにけり/高橋将夫
★毬栗や身籠りし山羊つながるる/大串章
★毬栗や祖母に優しく叱られし/大串章
★毬栗を蹴つて日暮れの村となる/小澤克己
★毬栗の落ちてすとんと暗くなる/杉浦典子
★毬栗のやや枯れてゐる掌/田畑幸子
★毬栗を剥くに大事や鎌と足/田中英子

栗の季節になった。栗の季節は意外と早い。まだ残暑が残る中、店頭に栗が現れる。農村や山村では、家に栗の木をもっている家も多い。栗には虫がつきやすいので、昨年まで豊作で栗を送ってきてくれていたのに、今年は突然虫にやられて栗の木が枯れたと報告を受けることもある。送ってきた栗は毬が外してあるのだが、数個は毬栗のまま入っている。それをしばらく飾って楽しんだりするが、毬栗も生き物、次第に色艶が失われてくる。そうなると飾りとしてはおしまい。毬を外して食べることになる。毬栗のまだ青いのが、可愛い。まだ暑い中なのに、毬栗が青々と育っているのを見ると、もうすぐ涼しくなる、もうすぐ栗が食べれるとうれしくなる。愛媛の山村の内子町は蝋の生産で財をなした町で、いまでも古い町並みが残っている。ここは、栗の産地。栗の季節、車を運転してこの辺りを通ると、道にあふれるほど収穫した栗が山積みされている。いったいどの位の栗が収穫されているのか。我が家ではよく栗の渋皮煮を作った。好評であったが、これは土井勝著の「今日の料理」の教えの通りに作っていた。土井勝先生の料理の本にはに随分恩恵を受け、感謝もしている。

★毬栗の青々としてまん丸し/高橋正子

 クリ(日本栗・学名Castanea crenata)とはブナ科クリ属の木の一種。日本と朝鮮半島南部原産。中華人民共和国東部と台湾でも栽培されている。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれる、栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。また、シバグリもごく一部では栽培される。落葉性高木で、高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。葉は長楕円形か長楕円状披針形、やや薄くてぱりぱりしている。表はつやがあり、裏はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。一般に雌花は3個の子房を含み、受精した子房のみが肥大して果実となり、不受精のものはしいなとなる。9月から10月頃に実が成熟すると自然にいがのある殻斗が裂開して中から堅い果実(堅果であり種子ではない)が1 – 3個ずつ現れる。
 果実は単にクリ(栗)、またはクリノミ(栗の実)と呼ばれ、普通は他のブナ科植物の果実であるドングリとは区別される(但し、ブナ科植物の果実の総称はドングリであり、広義にはドングリに含まれるとも言える)。また、毬状の殻斗に包まれていることからこの状態が毬果と呼ばれることもあるが、中にあるクリノミ自体が種子ではなく果実であるため誤りである。毬果とは、松かさのようなマツ綱植物の果実を指す。
 日本のクリは縄文時代人の主食であり、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリから、縄文時代にはすでに本種が栽培されていたことがわかっている。年間平均気温10 – 14℃、最低気温氷点下20℃をくだらない地方であれば、どこでも栽培が可能で、国内においてはほぼ全都道府県でみられ、生産量は、茨城、熊本、愛媛、岐阜、埼玉の順に多い。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

9月15日(火)

★秋海棠の紅の茎また紅の花   正子
見落としてしまいそうですが、秋海棠は茎の色も紅の色をしているのですね。あらためて観察することの大切さを教えていただきました。(祝恵子)

○今日の俳句
箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)

○玉珊瑚(たまさんご)

[玉珊瑚/東京白金台・国立自然教育園]

★玉珊瑚の実がつやつやと森の陽に/高橋信之

 玉珊瑚(たまさんご、英名:Jerusalem cherry)は、ナス科ナス属の常緑小低木で、学名は Solanum pseudo-capsicum。Solanum : ナス属、pseudo-capsicum : トウガラシに似た。Solanum(ソラナム)は、ラテン古名の「solamen(安静)」が語源。この属の植物に 鎮痛作用を持つものがあることから。
 玉珊瑚は、夏に白い小花を咲かせ、花後に成る小さな赤い球形の果実が ホオズキ(鬼灯) または、ミニトマト(Mini Tomato)” に似た果実を鑑賞する。高さは30~50センチほどになる。葉は披針形から長楕円形で、光沢があり互生する。夏に開花し結実することが多いので、別名の「冬珊瑚」は、違和感があるが、主に寒くなると色づきが良くなることや、冬でも成ることからネーミングされた。
 ブラジルが原産。わが国へは明治時代に渡来している。「リュウノタマ(竜の玉)」とも呼ばれる。

◇生活する花たち「犬蓼・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)


9月14日(月)

★葛の花匂わすほどの風が起き  正子
葛の花は秋の七草の一つで、何処までも蔓が伸びゆくほど繁殖力が旺盛です。葉が大きく茂り、葉裏には紅紫の可愛い花を咲かせており、微かでも風が起こると葉裏の花のほのかな香りが漂いほっとこころ癒されます。(佃 康水)

○今日の俳句
韮の花浸す野川の音澄むへ/佃 康水
韮の花は新涼の季節に先駆けて咲く。摘んだ韮の花は野川に浸すと涼やかな花となる。「清ら」は主情が強いが、「澄む」は写生であっても作者の深い内面が出る。(高橋正子)

○唐辛子

[唐辛子/横浜日吉本町]

★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)

★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨

熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。

唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。

★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃

 唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
 唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
 日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。

◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

◆ご挨拶/9月ネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


ご挨拶
次々に来た台風も過ぎ去って、秋らしい空が見れるようになりました。句会の皆様には、大雨の被害はございませんでしたでしょうか。水害のニュースが一日中流れて気がかりでした。
今月は16名の方が参加くださいました。ご投句から始まり、互選とコメントをありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。先月の句会は、立秋でしたがそれからひと月で、ぐんと秋らしくなりました。これからは、七草の風情や月の美しさ、あふれる秋果を楽しまれることでしょう。毎回思うことですが、ご投句には季節の変化が丁寧に詠まれて、季節のある国にいる幸せを思いました。
句会の管理運営は信之先生に、また、互選の集計は藤田洋子さんにお世話になりました。ありがとうございました。これで9月ネット句会を終わります。

■9月ネット句会入賞発表■


■2015年9月ネット句会■
■入賞発表/2015年9月14日
□入賞/16名21句

【金賞】
★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
水澄む日となった。そんな日は、気持ちも新たに今日を迎える。日々心新たにさせてくれる水澄む秋である。すっきりとした心境の句だ。(高橋正子)

【銀賞2句】
★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝の窓を開ける。開けると鰯雲の空が広がる。高く、広々と広がる鰯雲へと心を開け放ったような気持になる。ひろやかな句だ。(高橋正子)

【銅賞3句】
★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★赤とんぼの群れに真っ直ぐ突入す/高橋秀之
「真っ直ぐ突入す」が男らしいところ。赤とんぼの群れに突入した愉快さいい。(高橋正子)

★台風の過ぎゆく空の色軽し/井上治代
台風が過ぎてゆくとき、次第に雲の色もうすれ、水色の空が見えるようになる。さほど大きい台風ではなかったのだろう。「色軽し」に台風のあとのさわやかさが読み取れる。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★瀬戸の航望む丘陵萩白し/藤田洋子
穏やかな瀬戸内海の船の旅白い萩が美しく咲き乱れている景色が浮かび上がる昔瀬戸内海を見た美しい景が思い出されました。(内山富佐子)

★秋刀魚焼く帰りの遅き子にも焼く/古田敬二
秋刀魚の美味しい季節となりました。七輪で家族の秋刀魚を目をしょぼしょぼさせながら焼いているあたたかい場面が浮かび上がってきました。(内山富佐子)
回遊魚の秋刀魚は脂がのっていて塩焼きにして柚子や大根おろしで食べるのがとても美味しいので、この時期には必ず食卓に上ります。帰りの遅い子供さんにも是非食べさせたいと言う親心と温かいご家族を垣間見る思いです。(佃 康水)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝夕はすっかり秋らしくなりました。動きのある句で好きです。(古田敬二)

★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★葛の花ふっと匂うは高みより/ 高橋正子
「葛の花」を遠くに見ることがあるが、その在りどころが確かなので嬉しい。秋の季節が確実に来たことを知らせてくれるのだ。(高橋信之)

★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
水澄む日となった。そんな日は、気持ちも新たに今日を迎える。日々心新たにさせてくれる水澄む秋である。すっきりとした心境の句だ。(高橋正子)

★赤とんぼの群れに真っ直ぐ突入す/ 高橋秀之
「真っ直ぐ突入す」が男らしいところ。赤とんぼの群れに突入した愉快さいい。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★台風の過ぎゆく空の色軽し/井上治代
台風の来る前の空は、暗くて重苦しい色ですが、過ぎ去ったとき、それた時の色は、軽いのです。それは実感です。良い俳句ですね。 (迫田和代)
台風一過黒々とした雲も無くなり、青空が現れ、空は夕ぐれの淡い素敵な色と太陽の光りに雲も淡い色の中にゆったりと漂っている素敵な景です。 (小口泰與)

★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
美しく澄んだ、秋の水にふれた折の新鮮な心地。曇りのない水、滞ることのない季に、自らの今日も「新たに迎え」る心境になります。(川名ますみ)

★目の前を右に左に赤とんぼ/高橋秀之
涼しい風が吹き始めると、どこからともなく赤とんぼの数がふえて、自由きままな感じで飛びかっています。とんぼが飛び始めると、もうすっかり秋になったという気持ちになります。(井上治代)

★朝の窓鰯雲へと開け放つ/柳原美知子
朝夕はすっかり秋らしくなりました。動きのある句で好きです。(古田敬二)

★変わらない椅子に座って虫しぐれ/迫田和代
「変わらない椅子」の措辞がいいですね。夜の静かな一時、何時もの椅子に座っていると澄み切った虫の音がやがて虫時雨となって聞こえて来る。椅子のみならず作者の普段からの平穏な暮らしぶりが見えて参ります。(佃 康水)

★多摩川の嵩増し蒼し颱風過/川名ますみ
颱風が過ぎると、雨に水嵩の増した多摩川も、蒼い水となって豊かに流れている。颱風一過のあとの安心。(高橋正子)

★ひとしきり萩と吹かれて丘の上/藤田洋子
萩の咲く丘に佇むと、萩が風に吹かれている。ひとしきり萩と同じ風に吹かれてみる。身の内までさわさわと萩の風が吹くようだ。(高橋正子)

★さわやかに風吹く森の中を吹く/高橋信之
「森の中」を一人歩くのが好きだ。遥かな高みに、僅かだが青い空を見て歩く。季節の移り変わりに、自然の確かな営みを見る。その確かさがいい。(自句自解)

【入選/8句】
★藪からし小さき花は可憐なり/井上治代
藪枯らしは蔓が絡んで繁茂すると藪でも枯れると云う害草と言われています。しかし、あの小さな花はとても害草とは思えないほどに可憐です。嫌な草木にも愛おしむ気持ちが持てる所。(佃 康水)

★落柿舎の裏の塚かな柿ひとつ/桑本栄太郎 
如何にも秋の風情ですね。もう様子は変わっているでしょうが、以前、嵯峨野に去来の草庵を訪ねたことを想い出します。(河野啓一)

★筏曳き瀬戸をゆく船いわし雲/佃 康水
瀬戸の船がいわし雲が湧く中を、ゆっくりと筏を引きながら進んでいる。写真の世界にいるようです。 (祝恵子)

★湧きいずる霧のまにまに鳥兜/多田有花
一面に立ち込める山霧の中、鮮やかに目を引く鳥兜に深山の秋を感じます。美しくも毒草の鳥兜なればこそ、ひときわ強い存在感を放ちます。 (藤田洋子)
今の時季、霧深い山に入れば猛毒で知られるトリカブトの花を見る事が出来ます。幻想的なうす紫のその花は霧の中に見え隠れしていて、妖しくも登山者の眼を奪うようです。現場に立つ作者の、高山の霧深い光景が眼の前に鮮やかに想起されます。 (桑本栄太郎)

★水災の隣に伸びぬ鰯雲/川名ますみ
この度の豪雨による水害は、東日本大震災の津波をおもい起させ、自然の猛威を再び思い知らされました。が、自然はまたそのかたわらで、美しい鰯雲や月を見せてもくれます。被害を受けた方々に思いを馳せ、一瞬でも心慰められるようお祈り致します。 (柳原美知子)

★木の実落つ音の静けさ森の道/河野啓一
澄み切った空気が漂う森の中で、木の実の落ちる音が響きます。心が洗われるような情景です。(井上治代)

★瓢箪に並ぶ実の影映りおり/祝恵子
瓢箪に別の瓢箪の実の影が映っているところまで、よく観察されていて、たくさんの実がなっている様子がよくわかります。(井上治代)

★杉の実や銃弾の数果ても無し/小口泰與
「杉の実」を鉄砲のたま(銃弾)としたのが「杉の実鉄砲」で、鉄砲作りは、男の子に人気があった。杉の実鉄砲の他に紙鉄砲、竹鉄砲と、いろいろな鉄砲を作った。「ポンッ」と威勢のいい音が心地よく、いろんな的を目がけて楽しんだものだ。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★さわやかに風吹く森の中を吹く
都会の喧騒を離れた森の中、吹き抜ける風の清々しさに、暑熱去る季節のいっそう澄んだ秋意を感じます。自然の健やかさ、透明な秋の大気に満たされる作者の姿に、さわやかな季節の喜びがあふれます。(藤田洋子)
「森の中」を一人歩くのが好きだ。遥かな高みに、僅かだが青い空を見て歩く。季節の移り変わりに、自然の確かな営みを見る。その確かさがいい。(自句自解)

★新涼の風に吹かれて喜びぬ
空は青く澄み、吹く風は涼しく、爽やかな季節になりました。「風に吹かれて喜びぬ」という表現が素直で、全身で秋を満喫している様子がよく伝わりました。(井上治代)

★穂絮飛ぶ池の向こうを風が吹き
池の周りに繁茂する草々の穂絮が風に乗り秋光に煌めきながら飛んでゆく様子、水澄む池の面のかすかな小波の音まで聞こえてきそうな爽やかな秋の情景に心洗われるようです。(柳原美知子)

■選者詠/高橋正子
★月光の曲にこおろぎ鳴き速む
こおろぎの鳴き声が、月光の幻想的な曲に合わせて速くなると感じるほどに、幻想的な雰囲気の秋の夜なのでしょう。(高橋秀之)

★葛の花ふっと匂うは高みより
葛の葉の密生する中に薄紫、薄紅色に直立の形に可愛い花を咲かせますが、葛の生茂った山か丘を散策して居られたのでしょうか?高みよりふっと匂いがしてきました。そこはかとない香りに秋を感じ取られた事でしょう。(佃 康水)

★無花果に思い出したる瀬戸の空
作者が生まれ、育ったのは、「福山」で、瀬戸内海の鞆の浦の直ぐ近くの町である。そして、学生時代以来、子育ての時期は、四国の松山で過ごした。「瀬戸の空」には、作者の人生の思いがある。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点/同点2句)
★水澄みて今日を新たに迎えけり/内山富佐子
★筏曳き瀬戸をゆく船いわし雲/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

9月13日(日)

  尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音  正子
山小屋の湯に浸り、旅の疲れを癒す、心身ともに安らぐひととき。その快さの中で聞く笹の葉擦れの音に、いっそう澄んだ秋の夜が感じられ、尾瀬の秋に身を置く作者の喜びが伝わってまいります。(藤田洋子)

○今日の俳句
窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田洋子
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)

○数珠玉

[数珠玉/横浜・四季の森公園]

★数珠玉や歩いて行けば日暮あり/森澄雄
★数珠玉や家のまはりに水消えて/岸田稚魚
★じゅず玉は今も星色農馬絶ゆ/北原志満子
★数珠玉や流れの速き濁り川/天野美登里
★数珠玉の数珠の数個をポケットに/山内四郎

数珠玉を見るようになったのは、愛媛に住むようになってからである。この、どこにでもある数珠玉を高校時代までは見たことがなかった。知らないかったと言えばそれまでだが、数珠玉があれば、子どもたちはそれを集めて糸を通して遊ぶはずだが、そんな遊びはしたことがなかった。秋の初め野川と呼ばれるような川縁にある。初めは緑で指で潰せば潰れそうな未熟な実も、熟れると、つやつやと固くなって黒っぽい灰色の独特の色になる。大人でも、数珠玉があれば、用もないのに採りたくなる。

★数珠玉よ川にも空が映るなり/高橋正子
★数珠玉を採ってしばらく手のうちに/〃

 ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)は、水辺に生育する大型のイネ科植物である。インドなどの熱帯アジア原産で、日本へは古い時代に入ったものと思われる。一年草で、背丈は1m程になる。根元で枝分かれした多数の茎が束になり、茎の先の方まで葉をつける。葉は幅が広い線形で、トウモロコシなどに似ている。花は茎の先の方の葉の付け根にそれぞれ多数つく。葉鞘から顔を出した花茎の先端に丸い雌花がつき、その先から雄花の束がのびる。雌花は熟すると、表面が非常に固くなり、黒くなって表面につやがある。熟した実は、根元から外れてそのまま落ちる。なお、ハトムギ(C. lacryma-jobi var. ma-yuen)は本種の栽培種である。全体がやや大柄であること、花序が垂れ下がること、実がそれほど固くならないことが相違点である。
 脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つので、数珠を作るのに使われたことがある。中心に花軸が通る穴が空いているので、糸を通すのも簡単である。実際に仏事に用いる数珠として使われることはまずないが、子供のおもちゃのように扱われることは多い。古来より「じゅずだま」のほか「つしだま」とも呼ばれ、花環同様にネックレスや腕輪など簡易の装飾品として庶民の女の子の遊びの一環で作られてきた。秋から冬にかけて、水辺での自然観察や、子供の野外活動では、特に女の子に喜ばれる。
 イネ科植物の花は、花序が短縮して重なり合った鱗片の間に花が収まる小穂という形になる。その構造はイネ科に含まれる属によって様々であり、同じような鱗片の列に同型の花が入るような単純なものから、花数が減少したり、花が退化して鱗片だけが残ったり、まれに雄花と雌花が分化したりと多様なものがあるが、ジュズダマの花序は、中でも特に変わったもののひとつである。まず、穂の先端に雄花、基部に雌花があるが、このように雄花と雌花に分化するのは、イネ科では例が少ない。細かいところを見ると、さらに興味深い特徴がある。実は、先に“実”と標記したものは、正しくは果実ではない。黒くてつやのある楕円形のものの表面は、実は苞葉の鞘が変化したものである。つまり、花序の基部についた雌花(雌小穂)をその基部にある苞葉の鞘が包むようになり、さらにそれが硬化したものである。この苞葉鞘の先端には穴が開いており、雌花から伸び出したひも状の柱頭がそこから顔を出す。雌花は受粉して果実になると、苞葉鞘の内で成熟し、苞葉鞘ごと脱落する。一般にイネ科の果実は鱗片に包まれて脱落するが、ジュズダマの場合、鱗片に包まれた果実が、さらに苞葉鞘に包まれて脱落するわけである。実際にはこの苞葉鞘の中には1個の雌小穂のほかに、2つの棒状のものが含まれ、苞葉鞘の口からはそれら2つが頭を覗かせている。これらは退化して花をつけなくなった小穂である。したがって、包葉鞘の中には、花をつける小穂(登実小穂)1つと、その両側にある不実の小穂2つが包まれていることになる。これら雌小穂と不実の小穂の間から伸びた花軸の先には、偏平な小判型の雄小穂が数個つく。1つの雄小穂にはそれぞれに2つの花を含む。開花時には鱗片のすき間が開いて、黄色い葯が垂れ下がる。

◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

9月ネット句会清記


9月ネット句会清記
16名48句

01.台風の過ぎゆく空の色軽し
02.あこがれる寂光浄土秋桜
03.藪からし小さき花は可憐なり
04.杉の実や戦場数多絶えも無し
05.杉の実や銃弾の数果ても無し
06.竜胆やいろはにほへと九十九折
07去来忌の水嵩ますや渡月橋
08.いしぶみの百人百句や秋の嵯峨
09.落柿舎の裏の塚かな柿ひとつ
10.木の実落つ音の静けさ森の道

11.銀漢に祈るや遠き人の世を
12.秋出水かく激しとは知らざりき
13.筏曳き瀬戸をゆく船いわし雲
14.無花果のネット潜りて捥ぎくれる
15.冬瓜や草を褥に横たわり
16.水澄みて今日を新たに迎えけり
17.秋の昼蕎麦屋の白き暖簾かな
18.目の合ひし秋刀魚夕餉の膳にあり
19.土手道の水音のするほうずきや
20.変わらない椅子に座って虫しぐれ

21.散らばった雲間から出る月仰ぐ
22.瓢箪に並ぶ実の影映りおり
23.友といて京路を歩く白露かな
24.枯山水静かに雨を迎える秋
<剣山登山>
25.湧きいずる霧のまにまに鳥兜
26.洪水の映像を見る天高し
27.秋蝉の声の消えたる森を歩く
28.赤とんぼの群れに真っ直ぐ突入す
29.目の前を右に左に赤とんぼ
30.背伸びする窓から差し込む秋日差し

31.朝顔の閉じゆく刻を母と見る
32.多摩川の嵩増し蒼し颱風過
33.水災の隣に伸びぬ鰯雲
34.瀬戸の航望む丘陵萩白し
35.野の風に枝を重ねて萩撓む
36.ひとしきり萩と吹かれて丘の上
37.無花果に思い出したる瀬戸の空
38.葛の花ふっと匂うは高みより
39.月光の曲にこおろぎ鳴き速む
40.新涼の風に吹かれて喜びぬ

41.さわやかに風吹く森の中を吹く
42.穂絮飛ぶ池の向こうを風が吹き
43.初秋の朝の光の庭に濃し
44.秋刀魚焼く帰りの遅き子にも焼く
45.露天風呂背中と通る風は秋
46.朝の窓鰯雲へと開け放つ
47.鈴虫の声澄みわたる市の奥
48.稲穂垂れ水路一筋黄に光る

※選句を開始してください。

◆9月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年9月7日(月)午前5時~9月13日(日)午後6時
④選句期間:9月13日(日)午後6時~9月13日(日)午後9時
⑤入賞発表:9月14日(月)正午

9月12日(土)

  尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音  正子
山小屋でお湯につかっておられると、戸外で笹が擦れ合う音が聞こえてきました。山小屋の秋の夜の静かさ、清澄な空気が伝わってきます。 (多田有花)

○今日の俳句
傷に刃を当て傷物の梨をむく/多田有花
傷物の梨を剥こうとすれば、まず傷をとってからが普通の行為だが、「傷に刃を当て」と言われると神経がピリッとする。リアルな句だ。(高橋正子)

○瓢箪

[瓢箪/東京・向島百花園]          [瓢箪/横浜市緑区北八朔町]

★ありやうにすはりて青き瓢かな 涼菟
★花や葉に恥しいほど長瓢 千代女
★人の世に尻を居へたるふくべ哉 蕪村
★ひとりはえてひとつなりたる瓢かな 几董
★老たりな瓢と我影法師 一茶
★取付て松にも一つふくべかな 子規
★風ふけば糸瓜をなぐるふくべ哉 漱石
★吐せども酒まだ濁る瓢かな 碧梧桐
★露の蟻瓢の肩をのぼりけり 青畝
★あをあをとかたちきびしき瓢かな 蛇笏
★台風に傾くままや瓢垣 久女

私には弟がいて、男の子が喜ぶようなものとして、父が瓢箪と糸瓜を植えたことがあった。小型の瓢箪が沢山出来た。瓢箪の実から種を出さなければいけない。この種は水に瓢箪を付けて腐らせて出すのだと聞いたことがある。父がどのようにして種を抜いたか知らないが、いつの間にか、軽くなった瓢箪が家に転がっていた。おもちゃにした記憶はないが、なにかしら好ましい形で、我が家の瓢箪という感じだった。瓢箪は中にお酒を入れると艶よくなるそうである。瓢箪の好きなどこそこのご隠居さんは、お酒を含ませた布で毎日熱心に磨いているそうだと祖母が話していたこともある。最近は瓢箪集めという趣味も無くなってなっているのかもしれない、と思うと同時に、子供のころとは世の中が随分変わって来たのだと思う。昨年向島百花園に行ったときは、棚にうすみどり色のいい形の瓢箪が生っていた。

★瓢箪のさみどり色や向島/高橋正子

ヒョウタン(瓢箪、瓢簞、学名:Lagenaria siceraria var. gourda)は、ウリ科の植物。葫蘆(ころ)とも呼ぶ。なお、植物のヒョウタンの実を加工して作られる容器も「ひょうたん」と呼ばれる。最古の栽培植物のひとつで、原産地のアフリカから食用や加工材料として全世界に広まったと考えられている。乾燥した種子は耐久性が強く、海水にさらされた場合なども高い発芽率を示す。日本では、『日本書紀』(仁徳天皇11年=323年)の記述の中で瓢(ひさご)としてはじめて公式文書に登場する。茨田堤を築く際、水神へ人身御供として捧げられそうになった男が、ヒョウタンを使った頓智で難を逃れたという。狭義には上下が丸く真ん中がくびれた形の品種を呼ぶが、球状から楕円形、棒状や下端の膨らんだ形など品種によってさまざまな実の形がある。かつては、実を乾かして水筒や酒の貯蔵に利用されていた(微細な穴があるために水蒸気が漏れ出し、気化熱が奪われるため中身が気温より低く保たれる)。利便性の高さからか、縁起物とされ羽柴秀吉の千成瓢箪に代表されるように多くの武将の旗印や馬印などの意匠として用いられた。瓢箪は、三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災などといわれ、掛け軸や器、染め物などにも多く見られる。ちなみに大阪府の府章は、千成瓢箪をイメージしている。
ヒョウタンは水筒、酒器、調味料入れなどの容器に加工されることが多い。乾燥したヒョウタンは、表面に柿渋やベンガラ、ニスを塗って仕上げる。水筒や食器など、飲食関係の容器に用いる場合は、酒や番茶を内部に満たして臭みを抜く。軽くて丈夫なヒョウタンは、世界各国でさまざまな用途に用いられてきた。朝鮮半島ではヒョウタンをふたつ割りにして作った柄杓(ひしゃく)や食器を「パガチ」と呼び、庶民の間で広く用いられてきた。また、アメリカインディアンはタバコのパイプに、南米のアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルではマテ茶の茶器、またインドネシア・イリアンジャヤやパプアニューギニアなどでは先住民によってペニスケースとして使われている。ヒョウタンには大小さまざまな品種があり、長さが5センチくらいの極小千成から、2メートルを越える大長、また胴回りが1メートルを超えるジャンボひょうたんなどがある。ヒョウタンと同種のユウガオは、苦みがなく実が食用になり、干瓢の原料となる。農産物としても重要であり、近年は中国からの加工品輸入も増加している。主として生または乾物を煮て食べる。また、強壮な草勢からスイカやカボチャの台木としても利用される。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

9月11日(金)

★さわやかに行きし燕の戻り来る  正子
もうそろそろ帰燕の時季のようですね?澄み切った空気をすいすい自由に飛翔し、行きつ戻りつの風景はその場所を惜しむかのようです。あるいは子育てのその場所を反復飛翔する事により、地形と場所を記憶しているのでしょうか?来年も元気に戻って来て欲しいものです。(桑本栄太郎 )

○今日の俳句
石段を下りて清流芋水車/桑本栄太郎
石段をおりれば清流がある風景が爽やかでよい。芋水車は、芋を洗うために小川に仕掛けられた小さい水車。昔ながらの清流が想像できる。(高橋正子)

○黄花コスモス

[黄花コスモス/横浜日吉本町]

街角を曲がれば黄花コスモスに/山元重男
★茎細きキバナコスモス気は強し/稲森如風
★揺れ動く黄花コスモス風に色 芳吟

黄花コスモスを、初めは河原で見かけていた。当時住んでいた愛媛の松山平野を流れる重信川の河川敷。重信川は一級河川で河原もそこそこ広い。最近では、ちょっとした空き地や畑の隅でも見かける。好きかと問われれば、だれもそんな質問をした人はいないが、好きではないと答えるだろう。一般的なコスモスに似ているが、違うところがあまり好きではない理由かもしれない。花の形は可愛いのに、オレンジや黄色の花の色が強すぎて透明感に欠ける。葉が丈夫そうな切れ込み方で、緑色が暑苦しい。しかし、これは、近くから見ての話。河原が殺風景であれば、キバナコスモスも絵になる。広い空が見えて、風が渡り、雲が流れるところに置いて楽しみたい花だ。明るい野原が似合う花だ。

★銀輪を止めありキバナコスモスに/高橋正子

やキバナコスモス(黄花コスモス、学名:Cosmos sulphureus)は、キク科コスモス属の多年草または一年草。コスモスの名を冠するが、オオハルシャギクとは同属別種にあたり互いを交配する事は出来ない。現在では日本で広く園芸品種のひとつとして栽培されているが、一部は逸出して野生化している。原産地はメキシコで、標高1600m以下の地域に自生する。18世紀末にスペイン・マドリードの植物園に送られ、ヨーロッパに渡来した。日本には大正時代の初めに輸入された記録が残っている。高さは約30〜100cm。概ね60cm程度に成長するが、鉢植えやプランター向けの20cm程度に留まる矮性種も出回っている。オオハルシャギクと比べて葉が幅広く、切れ込みが深い。また夏場の暑さに強いため、オオハルシャギクよりも早い時期に花を咲かせる傾向にある。またオオハルシャギクよりも繁殖力が旺盛である為、こぼれ種で栽培していると数年後にはオオハルシャギクを席巻してしまう。花期は比較的長く、6月から11月にかけて直径3〜5cm程度の黄色、またはオレンジの花を咲かせる。改良種として濃い赤色の品種も作られている。花は一重咲きと八重咲きがあるが、園芸品種として市場に出回っているもののほとんどは八重咲き。病害虫による大きな被害を受けることは少なく、初夏から夏にかけて新芽の付近にアブラムシがつく程度である。痩せた土壌でも適度の水を与えていれば問題無く成長するため、頑強で育て易い植物といえる。ただし日陰での栽培には向かず、充分な日照が無い環境では葉などの形が崩れる場合があるため注意が必要。成長に伴って良く分岐する特性があり、咲き終えた花がらの摘み取りや、夏場に一旦切り戻しを行うなどの手入れを施すと長い期間花を楽しむ事が出来る。前述の通りオオハルシャギクとは交配出来ないが、チョコレートコスモスとは交配可能。このキバナコスモスとチョコレートコスモスの交配種は「ストロベリーチョコレート」と呼ばれる。

○オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 – 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。
○キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。
○チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。

◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)