芍薬忌・献句
Takahashi's death. Yoichi Hirota)
★芍薬忌一重の清楚を愛しけり/多田有花
★芍薬の咲きて笑顔の広がりぬ/廣田洋一
★芍薬の八重の重さよ風の庭/吉田 晃
★芍薬忌水音絶えず野を鳴らす/柳原美知子
★木々包む雨安らけし芍薬忌/藤田洋子
★満州を語る人減り芍薬忌/上島祥子
第2回芍薬忌ネット句会入賞発表
2025年5月25日
19.初めての自転車まっすぐ葉桜へ/柳原美知子
初めて自転車に乗る喜びと、そのまっすぐな気持ちがそのまま、まっすぐに葉桜へ向かわせた。一歩前へ踏み出した子ども成長と、花から葉へ移り変わる季節がうまく重なって捉えられている。(髙橋正子)
22.雨伝う青葉の窓に師の句集/藤田洋子
師への深い敬意と感慨が込められている句。雨が青葉を伝うのが映る窓辺に師の句集があることで、一層俳句への思いが際立って感じられる。(髙橋正子)
25.噴水の大樹越したる水柱/上島祥子
噴水の勢いと大樹の静けさが対比された句。水柱の高さが強調され、視線が上へ向かう開放感がある。生命感溢れる句だ。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
01.城山の眼下はるかに青葉潮/桑本栄太郎
城山から見下ろす景色の広がりに「青葉潮」という美しい季語を配置し、景色を美しくまとめた句。一般的に「青葉潮」は5月頃、南方から日本列島に沿って太平洋岸を北上する暖流(黒潮)を漁師の間で「青葉潮」或いは「青潮」と呼ぶ。 暖流と寒流とが交わる辺りで潮目がはっきりと見られる。 青葉潮が釧路沖まで至るときは豊年、金華山沖あたりで止むときは、東北は冷夏で凶作という。城山はどこであろうか。(髙橋正子)
12.夏つばめすいと滑空朝の空/多田有花
夏の朝、つばめが軽やかに滑空する姿が鮮やかに描かれている。「すいと滑空」という表現が、つばめの俊敏な動きを的確に伝え、爽やかな夏の空気感を感じさせる快い句。(髙橋正子)
16.ブランコを待つ子ら青葉の影にいて/吉田 晃
ブランコを待つ子どもたちが、日差しを避けてか、ブランコの位置でそうなったのか、子どもたちが青葉の影の中にいる季節感がいい。すこやかでやわらかな世界である。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
07.打ち水して朝の手習い子規を読む/土橋みよ
一読して思わず背筋が伸びるような気持ちのよい御句です。朝の打ち水が周囲の空気を清々しいものにしてくれます。古き良き日本人の学びの姿勢とはきっとこういうものであっただろうと思います。 (多田有花)
19.初めての自転車まっすぐ葉桜へ/柳原美知子
子供が自転車に乗れる様になるのは 成長を遂げた証で、嬉しいですね。瑞々しい葉桜に向かう小さな自転車が目に浮かびます。(上島祥子)
22.雨伝う青葉の窓に師の句集/藤田洋子
雨となった信之先生の三回忌。雨に濡れた青葉の緑も美しく、窓辺の師の句集に寄せて、追悼の深い思いが雨だれの静かな音とともに伝わってきます。(柳原美知子)
25.噴水の大樹越したる水柱/上島祥子
噴水の水柱が大樹を越して噴き上がった。いかにも夏らしい豪快な句。 (廣田洋一)
32.天窓に空の青見え夏近し/髙橋句美子
思いがけない光景です。ふと寝転んで見上げられたのでしょうか。それとも都会の駅の天窓かもしれません。天窓から見える四角い小さな空だからこそ夏の近さがいっそう感じられます。 (多田有花)
12.夏つばめすいと滑空朝の空/多田有花
16.ブランコを待つ子ら青葉の影にいて/吉田 晃
【髙橋句美子特選/7句】
19.初めての自転車まっすぐ葉桜へ/柳原美知子
子供が自転車に乗れる様になるのは 成長を遂げた証で、嬉しいですね。瑞々しい葉桜に向かう小さな自転車が目に浮かびます。(上島祥子)
23.忌日来て紫陽花蕾持ち始む/藤田洋子
うちの近所でも紫陽花が咲いています。信之先生はエネルギーに溢れていましたが、先生を紫陽花と共に忍ぶのが美しいと思いました。 (上島祥子)
28.葉桜の濃き影踏みて墓所へまで/髙橋正子
信之先生の三回忌の法要に、墓所へお参りに行かれたようですね?今ではすっかり葉桜となっている墓所への道は、葉の濃い蔭を踏みながらのようです。(桑本栄太郎)
01.城山の眼下はるかに青葉潮/桑本栄太郎
08.露地植えの花咲くミツバ香る朝/土橋みよ
12.夏つばめすいと滑空朝の空/多田有花
16.ブランコを待つ子ら青葉の影にいて/吉田 晃
【入選/10句】
06.大輪の芍薬空を奪いけり/小口泰與
空に向かってすっと伸びるとりどりの大輪の芍薬の美しさ。芳香に包まれて、身も心も癒されるひとときが想像されます。 (柳原美知子)
09.雨上がり鰈干す網母の影/土橋みよ
雨上がりの散歩道。目にした干し網の鰈に母の面影が浮かび、在りし日の姿が蘇ります。波静かな春の海が見えるようで、郷愁を感じます。 (柳原美知子)
10.目に見えぬ縁こそ深し時鳥/多田有花
「ほととぎす」に子規を思います。子規のもとに集まった弟子や友人たちは子規亡き後も子規を想い、互いの縁を深め続けます。「花冠」の座に集う皆様とも同様に、目に見えぬネットでの俳句を通して集い、信之先生を偲び、縁を深め続けられることは、かけがえのない有難いことだと思います。 (柳原美知子)
11.熊蜂の羽の旋風を肌に知る/多田有花
蜂が顔をかすめるときの音は耳にすることがありますが、この句がとらえた大型の蜂の羽の旋風による肌で感じた圧力には一瞬の緊張感が走るようです。リムスキー・コルサコフの熊蜂の飛行のスピード感と緊張感を思い出しました。(土橋みよ)
14.裏庭や十薬の花満開に/廣田洋一
十薬は暗緑色の葉に白い花が上品な姿であるのに対しその生命力は高くその有り様を眩しく感じます。 (上島祥子)
17.夜明け前玄関の灯に無言の守宮/吉田 晃
ヤモリは昔から家を守る縁起の良い動物として知られています。夜明け前の薄暗がりに、玄関の前の電灯に照らされた守宮が無言でいると表現されたところに存在感を感じました。(土橋みよ)
20.田から田へ水入り泡立つ空の青/柳原美知子
空が青く晴れた日に、水を勢いよく田んぼに入れた時、田から田へと水が溢れる情景が広い空へと自然に繋がっていく爽やかな初夏を思いました。(土橋みよ)
24.柿若葉どの葉も雨の光る朝/藤田洋子
夜半に降った雨が柿若葉に残っています。そこに朝日があたりきらきらと光っています。この季節ならではの瑞々しい光景を鮮やかに詠まれています。 (多田有花)
18.鯖寿司の酸味嬉しき夏灯し/吉田 晃
21.卯の花の真白咲き初む谷の香よ/柳原美知子
■選者詠/髙橋正子
29.忍冬の花の香りに三回忌
忍冬、和名スイカズラの、甘い芳香の漂うなか迎えられた三回忌。忍冬の花の静かな趣き、その香りの優しさに、忌日となる一と日の思いが伝わり、しみじみと偲ばれます。(藤田洋子)
はや三回忌なのかと感じます。スイカズラは甘い香りがあり、昔は砂糖代わりに用いられました。ふとした瞬間に漂う香りはそのときの記憶を鮮烈に蘇らせてくれるものです。 (多田有花)
30.桜の実熟れるころなり夫の忌は
葉桜になる頃、桜は小さな実を結ぶ。この実は間もなく土に落ちて来年の発芽を待つのである。。その時期が先生の忌日である。我が家の桜も小さな赤い実を結んでいて、生前の先生の笑顔を思い浮かべる。(吉田 晃)
信之先生の忌は、都会地では市販されている桜桃の実をさくらんぼと言っている。一重桜の実で、桜桃よりずっと小さく、紅くなり、さらに紫黒色ととなる。とっても美味しい実です。このさくらんぼを見るといろいろの思い出が蘇ってきます。(小口泰與)
28.葉桜の濃き影踏みて墓所へまで
信之先生の三回忌の法要に、墓所へお参りに行かれたようですね?今ではすっかり葉桜となっている墓所への道は、葉の濃い蔭を踏みながらのようです。(桑本栄太郎)
■選者詠/髙橋句美子
31.すきとおる新茶を淹れる益子焼
益子焼は現代的な要素を取り入れながら素朴で温かみがあるのが特徴です。その器の中に淹れた新茶は甘くまろやかで新鮮で、しかも縁起が良いとされています。その清々しい感覚や情景の日本的な美しさが「すきとおる」という語に集約されているように感じました。以前読んだ「手袋の色」の読後感を思い浮かべました。(土橋みよ)
32.天窓に空の青見え夏近し
思いがけない光景です。ふと寝転んで見上げられたのでしょうか。それとも都会の駅の天窓かもしれません。天窓から見える四角い小さな空だからこそ夏の近さがいっそう感じられます。 (多田有花)
33.風薫る民家の庭に写真撮る
互選高点句
●最高点句(5点/同点2句)
12.夏つばめすいと滑空朝の空/多田有花
16.ブランコを待つ子ら青葉の影にいて/吉田 晃
集計:髙橋正子
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