4月7日(月)

★花通草みどり透きたる葉のなかに  正子
私は道草の実は見たことがありますが、道草の花は見たことがありません。フェイスブックページ「俳句雑誌花冠」の写真を見ると可愛い花ですね。「みどり透きたる葉の中に」あるからこそいっそう花道草の可憐な姿が引き立って見えるのだと思います。 (井上治代)

○今日の俳句
楓の芽今開かんとして紅し/井上治代
楓の芽のかわいらしさと紅い色の美しさを端的に、みずみずしく詠んだ。「紅し」の言い切りが快い。(高橋正子)

○烏野豌豆(カラスノエンドウ)

[カラスノエンドウ/横浜日吉本町] 

★畦道に豆の花咲く別れかな/星野 椿
★子供よくきてからすのゑんどうある草地/川島彷徨子
★子等帰るからすのゑんどう吹きながら/照れまん
★野球ボール飛び込むからすのえんどうに/高橋正子

 からすのえんどうは、小さいながらも、きっちり豆の花の形をしている。どう見ても豆の花のミニチュア版である。見るたびいつも、こう思う。

 ヤハズエンドウ(矢筈豌豆、Vicia sativa subsp. nigra[1])は、マメ科ソラマメ属の越年草。ヤハズエンドウが植物学的局面では標準的に用いられる和名だが、カラスノエンドウ(烏野豌豆)という名が一般には定着している(「野豌豆」は中国での名称)。
 本州から四国・九州・沖縄の路傍や堤防などのいたるところにごく普通に生育している。秋に発芽し、春になると高さ60 – 150cmに達する。茎には巻きひげがあり、近くのものに絡みつくこともあるが大体は直立する。茎は全体に毛があり四角柱状。花期は3 – 6月でエンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。
 原産地はオリエントから地中海にかけての地方であり、この地方での古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用された証拠が考古学的資料によって得られているが、その後栽培植物としての利用はほぼ断絶して今日では雑草とみなされている。そのため、若芽や若い豆果を食用にすることができるし、熟した豆も炒って食用にできる。また、未熟な果実の両端を切り落し、草笛にすることができる。一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。
 史記で伯夷・叔齋が山で餓死する前に食べていた「薇」(び)は、野豌豆の類ともいい、またワラビやゼンマイのことともいう。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

■ご挨拶/4月ネット句会■


■4月ネット句会■
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今年の花も散り始めました。昨日6日は冷え込んで、急用で出かけた電車もしっかり暖房されておりました。今朝も冷え込みは残っておりますが、横浜は暖かい日となりそうです。今月はちょうど桜の季節の句会となり、桜がさまざまに詠まれておりました。ご病気が快癒されたり、旅行を楽しまれたかたもいらっしゃるようです。桜が散り始めれば、もう花楓の季節。金賞には小西宏さんの「花楓」の句が選ばれ、新しい季節の新鮮さを思いました。入賞の皆さま、おめでとうございます。投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。互選開始にあたり、清記の発表が遅れましたことをお詫びいたします。句会の管理運営は信之先生にお願いいたしました。お世話にありがとうございました。まもなく新緑の美しい季節となることでしょう。来月の句会を楽しみにお待ちください。これで4月ネット句会を終わります。

◆4月ネット句会入賞発表◆

■4月ネット句会■
■入賞発表/2014年4月7日■

【金賞】
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
楓の花は、新緑の季節に先駆けて、暗紅色の花を開きかけた葉の先につける。遠目には、小さな丸い暗紅色の点に見え、かわいらしい。子どもたちは、子どもたちで、ようやく暖かくなったと思うと、はやも水を喜び、浅い池に入って、ザリガニや小さい魚など追いかけて遊ぶ。花楓も子どもたちの遊びも、季節を先駆けた新鮮さがある。(高橋正子)

【銀賞2句】
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花
この句は、桜の花びらを透かして仰ぐ特別な「青き空」がテーマである。桜あっての青空、青空あっての桜なのだ。(高橋正子)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
母の忌日が近付いた。燕がもう来るころだ。燕が来れば亡き母が記憶にありありと浮かんでくる。(高橋正子)

【銅賞3句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
「嬉しさよ」が、率直過ぎる感も否めないが、この句には、言葉を超えて、咲き満てる花に出会った一期一会の真実なる嬉しさがある。(高橋正子)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
山茱萸の花は雨が降ると小さい花が無数に地面に落ちる。雨粒が一つ一つの花を打って散らした。それが「雨の数ほど」となる。春の雨の冷たさも、降り方も山茱萸の花によってよりよく知れる。(高橋正子)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
一線の飛行機雲が解けてゆく。解ける雲のやわらかさと、花菜畑の色合いがよくマッチして、抒情的な春らしい風景となっている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
満開の桜の花が、青空を埋め尽くすように咲いている光景は幻想的で美しかったことでしょう。そのような桜の花に出会った作者の感動が素直に伝わってきました。(井上治代)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
燕の来る頃に逝かれたお母様。毎年の燕の到来は、母の身代わりであるかのようで、力強い飛翔で元気づけてくれます。光に満ち溢れた季節の始まりとともに生前の母への想いを新たにします。 (柳原美知子)

★チューリップ剪り集めれば虹の色/高橋正子
色とりどりのチューリップ。咲いた花を剪ってひとところに集めれば、虹のように七色の花が集まり、にぎやかに感じられます。 (高橋秀之)

★横浜の小径まがれば花辛夷/川名ますみ
小径を曲がると、辛夷の花が目に飛び込んできました。思いもかけず出合った花は、青空に白く輝いて作者を歓迎してくれました。横浜という地名も洒落た感じがして花辛夷に合っていると思いました。(井上治代)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
飛行機雲が静かにゆっくりと解けて行く様子を見つめている作者を想像することができました。遠景には花菜畑が広がり、安らかで大きな光景です。(井上治代)

★子ら登るジャングルジムへ花の雲/小川和子
咲き連なっている桜、そのそばで遊具に夢中になっている元気な子供達。大人も子供も春を謳歌している楽しい風景です。 (佃 康水)

★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏

【高橋正子特選/7句】
★高き木の高きにすもも花盛り/高橋信之
桃の花より少し遅れて咲くすももの花は二つ三つずつ素敵に咲きます。高きのりフレインがとっても素敵です。 (小口泰與)

★河原に飛ぶ影滑る初燕/古田敬二
野山に出かけたくなる春ですが河原にもさまざまな春を見つける事が出来ます。その河原へ立っているとふと一閃滑って行く影が有りました。初燕です。「影滑る」に初燕の勢いを感じます。 (佃 康水)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
★青空を飛んで桜の散りゆけり/小西 宏
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
★ごうごうと山の桜に吹く風よ/多田有花
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花

【入選/14句】
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎
平易な言葉で春爛漫の景が描かれている好きな句です。 (河野啓一)

★甦る兄の軍装紫木蓮/渋谷洋介
お兄様が出征なさったのは紫木蓮が咲く頃だったのでしょう。そして、もしかしたらそのまま戻られなかったのかもしれません。すでに遠い記憶、けれど紫木蓮の色を見ると、その日のことが鮮明によみがえります。(多田有花)

★花筏割りて浮き来る堀の鯉/柳原美知子
一瞬にして堀の水面にびっしり浮かぶ花筏を想いました。堀の水の中から鯉も下から青空が見えなくなり、驚いたことでしょう。移りゆく晩春の光景を趣豊かに詠われました。(桑本栄太郎)
暖かくなると堀の鯉の動きも活発になってきます。花筏を割って浮いてくる鯉に春本番を感じます。 (高橋秀之)

★植木鉢に春の花苗とり合わせ/河野啓一
春になると植木市や苗木市など盛んに行われたり、また家庭で育てた花苗を寄せ植えされているのを良く見かけます。自分で彩りよく花苗を植えながらまた咲いてくるのを見るにつけ春を実感し心癒されます。(佃 康水)

★花満ちる峰を通りぬ時雨雲/多田有花
登山の途中でしょうか、山は桜満開、時雨雲が雨を連れて通り過ぎて行った。空を見上げている詠者です。(祝恵子)

★淡き色いくつも滲む芽吹き山/古田敬二
かつて山間の道を通った頃、春を迎える度に、同様の景色を望みました。この季節、花であったり芽立ちであったり、山の合間にぽつぽつと「淡き色」が覗きます。それは輪郭を画せず、まさに「滲む」ようでした。記憶にあった景が確かな言葉で表される、その清々しさに感謝しながら、また、懐かしむ時を頂きました。(川名ますみ)

★桜満ち堀に枝垂るる風のまま/柳原美知子
お城を取り巻く堀。その堀に植えられた枝垂れ桜だろうか。まだ満開へは2,3日あるが、ゆっくり揺れてその時を待っている。(古田敬二)

★花満ちて瑞枝の揺るる糸桜/小川和子
満開の糸桜に圧倒されつつ、しなやかな緑の枝の揺れに目を魅かれる。その細やかな観察に、花満てる大きな風景が浮かび上がります。(小西 宏)

★奔放にあそべやあそべ春の鳥/井上治代
春になり暖かくなって鳥たちの動きも活発になってきます。奔放に遊ぶだけでなくあそべやあそべという言葉の重なりがその喜びを表しているようです。 (高橋秀之)

★目の前は桜遠くは瀬戸内海/高橋秀之
目の前には満開の桜。目を移し遠くを眺めるときらきらと輝く青い海。島国日本の春の典型的な景色を素直に詠まれていると思いました。(井上治代)

★森の辺を埋めて耀く桜花/河野啓一
桜の色は遠くから見てもそれとわかります。森は針葉樹か、広葉樹か、それによって雰囲気が変わりますが、いずれにしても桜色がそれを包んで柔らかです。(多田有花)

★供花添えて鶯音聞く心地よさ/祝恵子
お墓参りでしょうか。墓苑のまわりに鶯がいて囀っています。花筒を清めてお花を入れ、手を合わせられたらそれにあわせるように「ホーホケキョ」と澄んだ声が。心が洗われますね。(多田有花)

★人溢れとんび高舞う花の山/佃 康水
お花見の名所はこの週末いずこも大変な人出だったことでしょう。花の下で飲み、歌い、踊り、それをとんびが高みの見物です。(多田有花)

★水脈を曳きゆたりゆたりと春の航/下地鉄
春の航を遠くから見ていらっしゃるのでしょうか。「ゆたり ゆたり」と重なっている所から広く青い海、ゆったりとした海の情景が見えて参ります。「春の海ひねもすのたりのたりかな」の蕪村の句を思い出しました。 (佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★高き木の高きにすもも花盛り
★道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
★花好きの多き街よ山茱萸咲く

■選者詠/高橋正子
★車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
★雨に花は花びら少しずつこぼす
★チューリップ剪り集めれば虹の色

■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

4月7日

●小口泰與
青柳の揺れの隠せる流れかな★★★
山風の素直になりぬ雪柳★★★
牡丹の芽和紙の如くにほぐれけり★★★

●河野啓一
木犀の芽吹き夕日にうす茜★★★★
車椅子そろりそろりと花の下★★★
チューリップ若き彩り開きゆく★★★

●桑本栄太郎
雲を出で雲に入る飛機春の朝★★★★
鳥ならば、雲を出て雲に入ることはないような気がする。飛行機は雲を出てまた雲に入り、そこに物質的、機械的なまっすぐな方向を感じさせる。それも春の朝の高い空での出来事だ。(高橋正子)

グランドの光り長閑や初黄蝶★★★
径ふさぐ白き小枝や雪やなぎ★★★

●黒谷光子
遠かすむ比良を借景式部歌碑★★★

山つつじ左右に京への峠道★★★★
「京にのぼる」という言葉を昔話でよく聞いた。「京への峠道」には、いろんな物語がありそうだ。その峠道も山つつじが明るく咲く季節を迎えた。(高橋正子)

さざ波のままに一群れ春の鴨★★★

●佃 康水
水草生う御手洗川へ日の躍る★★★ 
古民家の釣瓶井跡に壺すみれ★★★★
宮島や花の雲間に海光る★★★★ 

●高橋秀之
夜更かしも終わる春休み最終日★★★
食事会最後の締めは桜餅★★★
傘なくも走って帰る春時雨★★★

●小西 宏
雨やんで濡れたる桜しめやかに★★★
よく晴れて芽吹きの枝に雀たち★★★
はらはらと花散り時の流れゆく★★★★