8月11日~8月20日

8月20日(4名)

小口泰與
弛き身に紅鶸の声蘇る★★★
魚狙う鳥弛みなき秋の暮★★★
撓たわの鍋割山や虫の声★★★

廣田洋一
椿の実黒く光りて母の髪★★★
秋の雲形決まらず流れけり★★★★
盥に水を張りたる残暑かな★★★

多田有花
<国宝・朝光寺三句>
山門へ長き石段秋初め★★★★
秋浅き国宝本堂正面に★★★
本堂に入るや残暑の薄れゆく★★★

桑本栄太郎
朝よりの知人の訃報秋暑し★★★
新涼の家事手伝いや朝のうち★★★
ひと仕事終えて汗拭く残暑かな★★★
 
8月19日(5名)

小口泰與
秋光や沼のさざ波光ける★★★
朝顔のここぞとはかり咲きにけり★★★★
秋暁や川蝉水面すれすれに★★★

廣田洋一
鴨と鯉混じりて遊ぶ秋の川★★★★
白粉花白きフェンスを染めにけり★★★
乗り物は無くなりたるや盆飾★★★

多田有花
お疲れの秋のひまわり頭垂れ★★★★
「お疲れ」をどう評価するか迷うところですが、実感があって、夏咲きつづけ、頑張った朝顔をいたわりたい気持ちです。(髙橋正子)

日脚はや短くなりぬ秋口に★★★
八月の流れをたどり滝に会う(原句)
いい句なのに、惜しい点があります。「滝」は夏の季語なので、「八月の流れ」がもう少し具体的なほうが、良いと思います。(髙橋正子)

桑本栄太郎
新涼の朝の夢見の故郷かな★★★
京なれやちくりん良しと法師蝉★★★★
ときじくを見据え焦りぬ秋の蝉★★★

弓削和人
星幾つ数えるあいまの秋思かな★★★
★4つにするには、「幾つ」が無駄と思いますが、今妙案がうかびません。
(髙橋正子)
霧の村てんてんまばらに灯りあり(原句)
「・・に」「あり」は、説明的ですので、添削しました。
霧の村てんてんまばらに灯りける(正子添削例)

虫の声隣家の帰り待ちにけり★★★
8月18日(5名)

小口泰與
秋うらら沼の水面のささら波★★★
秋澄むや鳥は木木より実を落とす★★★★
爽やかや沼の梢の鳥の数★★★

弓削和人
星月夜雨風去りて鮮やかに★★★
星月夜ひじ掛け椅子に眠りおり★★★★
山塊をのぼりて高き星月夜★★★

廣田洋一
散る度に空の広がる桐一葉★★★
山間にふはりと落ちし桐一葉★★★
桔梗濃き花束選び供へけり★★★★

桑本栄太郎
<盆帰省より>
山陵の日射し明るく盆の朝★★★★
潮潮を頬に風受け盆の墓★★★
鈍行の停車ホームや葛茂る★★★

多田有花
初秋の夜気が眠りを深くする★★★
赤とんぼ甍のうえを群れて飛ぶ★★★★
寝そべって瞼閉じれば涼新た★★★

8月17日(4名)

廣田洋一
浅瀬にて一度は群れる流灯会★★★
祖父と孫手をつなぎ合ひ流灯会★★★★
賜りし玉蜀黍やひげ有りぬ★★★

小口泰與
蜻蛉や沼の水面真っ平★★★★
椋鳥や大樹にこぼる数数多★★★
秋晴やへら浮子すいと沈みける★★★

多田有花
盆過の雲の並びを見て居りぬ★★★★
磯鵯のさえずり盛ん朝の雨★★★
雨あがることを告げおり秋の蝉★★★

桑本栄太郎
<盆帰省三題>
ハイウェイのライト連なる帰省かな★★★
白波の白兎海岸盆の海★★★
半島の秋の入日を撮りにけり★★★★

8月16日(5名)

小口泰與
秋鳥や餌をとる為水中へ★★★
堰堤をつつと走る黄鶺鴒★★★
秋扇漢たやすく家を捨つ★★★

廣田洋一
桐一葉ひらひら落ちる神の池★★★
空の青ちと広がりて桐一葉★★★
稲妻や遠き夜空を切り裂きぬ★★★★

多田有花
台風をやり過ごしたり朝の蜘蛛★★★
嵐去り秋めくものに空の色★★★
台風一過窓すべて開け放つ★★★★

弓削和人
虫の音に目をつむりたる湯船かな★★★
白秋のわかれたる道選びけり★★★
実南天湖の紺までゆきゆきて★★★

8月15日(4名)

小口泰與
蜻蛉の草の穂先を選びけり★★★★
つぎつぎに魚のはねたる秋の沼★★★
秋暁の鯉水面へとあらはなり ★★★

廣田洋一
終わつたと母の一言終戦日★★★
工事場の建機静まり盆休み★★★
水蜜桃友と二人の昼下り★★★

多田有花
終戦日風雨の中で迎えおり★★★
大荒れの天気となりぬ盂蘭盆会★★★
盆嵐暑さ抑えてくれにけり★★★

弓削和人
帰宅時の残る暑さや宵の路★★★
月あかり消えいるさきの獣道★★★
村落のあかりを点ける野分かな★★★★

8月14日(4名)

小口泰與
生きて世にかなかな鳴けり森の沼★★★
「生きて世にかななか鳴けり」までは、★印4個です。(髙橋正子)

つるみたる蜻蛉沼の岸辺にて★★★
秋蛙四方八方鳴き交わす★★★

多田有花
数学の問題を解く盆休み★★★
台風接近朝焼の雲美しき★★★

朝焼やおのおの散りゆく秋の鳥(原句)
「朝焼」は、晩夏の季語です。「朝焼や」と、切れ字をもって感動をあらわしているので、「秋の鳥」は工夫がいります。工夫といっても「観察」です。

廣田洋一
新涼の墓を詣でし母子かな★★★★
秋雨に木々の色濃く墓苑かな★★★
義妹にも花を供へる盂蘭盆会★★★

弓削和人
さやさやと秋の枝葉の書見かな(原句)
「枝葉の書見」の「の」の使い方、意味としてどうでしょうか。(髙橋正子)

とんぼうの屍(かばね)束の間あめつちへ★★★

日ぐらしの遠のく声や湖水浴★★★★

8月13日(3名)

小口泰與
うららかや水族館の魚の舞★★★
鳴きながら湖畔を翔る油蝉★★★
蝉を追う野鳥をするり交わしけり★★★

多田有花
はや残暑厳しき朝に犬散歩★★★
午後の驟雨残暑の街を冷やしけり★★★
霊祭時代とともに変わりゆき★★★

廣田洋一
花カンナ線路の火花浴びにけり★★★
盂蘭盆の言問団子スカイツリー★★★
台風前波平らかに向島★★★

8月12日(5名)

廣田洋一
祖母よりのしきたり守る盆支度★★★
下草に水玉光る蛍草★★★
花束に竜胆交へ供へけり★★★

小口泰與
秋立や出荷の菓子の数多なる★★★
秋めくやトラックに積む菓子の量★★★★
初秋や野鳥飛び立つ羽の音★★★

多田有花
われに吹く日ごと残暑の風あらた★★★
墓じまいして墓洗うこともなし★★★
スパイスカレーぴりりと辛し盆秋に★★★

桑本栄太郎
朝空の青くひろごる残暑かな★★★
熱風にローストなるや我が老体★★★
秋暑し夜となれども炎風に★★★

弓削和人
空缶の汀に寄せり秋の暮★★★
のざらしの石碑かたむく秋の暮★★★
「のざらし」、「かたむく」、「秋の暮」のはどの語も似たような気分の言葉です。言うなれば、「つきすぎ」ということで、面白味に欠け、気分がだんだんと下方へ向かいます。似た言葉を多用するのは避けた方がよいです。(髙橋正子)

稲妻の一寸湖を照らしけり★★★

8月11日(5名)

弓削和人
毬栗や大湯遺跡のとき刻む★★★
「とき」は、漢字の方が意味が取りやすいかもしれません。(髙橋正子)

蜻蛉のつきしたがいて去りにけり(原句)
「しがたがいて」と「去り」の時間関係がはっきりするように添削しました。
蜻蛉のつき来ていつか去りにけり(正子添削)

朝顔や訪う人ありて吠ゆる犬★★★

小口泰與
様様な野鳥の声や秋はじめ★★★
蜻蛉の沼の岸辺をつたひけり★★★★
初秋や木立の枝の鳥の声★★★

廣田洋一
新涼や湯煙払ふ露天風呂★★★★
新涼や首筋さらと撫でて行く★★★
山の日や雲の隠せし富士の山★★★

多田有花
遠ざかる台風の余波風に知る★★★
山の日や再び山に登りたく★★★★
法師蝉鳴くや真昼の静けさに★★★

桑本栄太郎
諸事動く時は朝や秋暑し★★★
おのがじし用意あまたの帰省かな★★★★
初秋の入日あかねや西の空★★★

自由な投句箱/8月1日~8月10日

※当季雑詠3句(夏の句、秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子

今日の秀句/8月1日~8月10日

8月10日(1句)

★今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
今朝は秋を思わせてくれる涼しさ。野がひろがり、そのなかを道がひとつ通っている。野のひろがりに通る一本の道が絵画的で、秋を象徴する印象が残る。(髙橋正子)

8月9日(1句)

★蝉そのとき静かになりし長崎忌/多田有花
長崎忌は、8月9日。祈りのときに、あれほど鳴いていた蝉が、一瞬、何かを感じてぴたりと鳴くのをやめた。蝉の鳴かない一瞬の時が、祈りの時を深くしたようだ。(髙橋正子)

8月8日(1句)

★秋立つと出てみる庭や風の無き/廣田洋一
今日は立秋で、涼風の少しもあるだろうと庭に出てみたが、風は無かった。暦の上の秋と、実際にはギャップはありながらも、心には秋がきている。心境がいい。(髙橋正子)

8月7日(1句)

★暑き日の名残りの光山に差す/多田有花
今日も一日が終わったと山を見る。山に差す日は、まだ暑そうだ。「暑き日の名残り」の表現がいい。(髙橋正子)

8月6日(2句)

★揚羽より一歩先行く男の子/小口泰與
揚羽蝶が男の子のすぐ後を付いて行くかのように飛んでいる。そのことを男の子は知らない。絵本の一ページに入れておきたいような景色。(髙橋正子)

★地は燃えて空ゆく雲の秋隣/多田有花
地上は燃えるように暑いが、空を見上げると雲は秋の雲のように流れていく。空にはもう秋が来ている。秋隣を感じる昨日、今日。(髙橋正子)
8月5日(1句)

★浜茄子や近くに見ゆる遊覧船/廣田洋一
浜茄子と遊覧船の取り合わせがいい。浜茄子が咲いて、遊覧船がゆくのが近くに見える。どこだろうか。(髙橋正子)
8月4日(1句)

★松葉牡丹ぱっと開きて朝湯かな/廣田洋一
松葉牡丹は日が照るとぱっと花を開く真夏を彩る花。朝からの強い日差しに汗ばむことも必須。朝湯を浴びた爽快感と松葉牡丹にもらう元気。(髙橋正子)
8月3日(1句)

★想い出の青空ありぬ百日紅/桑本栄太郎
百日というほど長く炎暑に咲き続ける百日紅。百日紅の咲く空は青く特別な思い出の空だった。せつなくも青い空が心に残っている。(髙橋正子)

8月2日(1句)

★八朔や実りを期する田を見舞ふ/廣田洋一
八朔は地方によって多少異なるが、もともと旧暦の八月一日を指し、このころ稲の初穂が出て、収穫の目安を立てる日など、言われている。田の神に実りを頼む気持ちが「見舞ふ」によく出ている。(髙橋正子)

8月1日(1句)
 〇〇さんよりメロンをいただく
★大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
「賜りし」を省く場合は前書きをつけるといいと思います。添削のとき、言い忘れました。(髙橋正子)
喉の渇きを潤すには、これ以上ないほどおいしいメロンジュース。私も実感している。ジューサーにぐいと押し込んで、フレッシュジュースが出来上がる。(髙橋正子)

8月1日~8月10日

8月10日(5名)

小口泰與
露草や広き野原にただ一輪★★★★
青葦の揺れ居り野鳥来ていたり★★★
次つぎに魚のライズや夏の朝★★★

廣田洋一
ぼんぼりの絵と詩を愛でて秋の宵★★★★
身にしむや並木を抜ける朝の風★★★
買わぬ人叩きてみたる西瓜かな★★★

多田有花
車停め出れば虫の音聞こえ初む★★★★
八月の街路を冷やす通り雨★★★
昼の熱おさめ夜風の新涼に★★★

桑本栄太郎
秋来ぬと頬に確かな夜風かな★★★
新涼の頬に風受け眠りけり★★★★
台風の余波の風吹き心地良き★★★

弓削和人
今朝の秋野のひろがりに道ひとつ★★★★
山頂へ向きたる秋の木立ちかな★★★
雲ゆきて秋の湖静かなり★★★
8月9日(4名)

小口泰與
翡翠や水面に映る己が影★★★
河骨や野鳥の声の姦しき★★★
川蝉の声はすれどもそれっきり★★★

廣田洋一
立秋の夜空を仰ぎ風微か★★★
参道のぼんぼり灯る秋の夜★★★
秋の夜や辞書を片手に苦吟せり★★★

桑本栄太郎
新涼の夜気さやさやと窓辺かな★★★
初秋の何故か哀しき雨の朝★★★
夕刻の雨の止み居り蝉しぐれ★★★

多田有花
窓に入る風の軽さよ秋立ちぬ★★★★
立秋の朝風肌に心地よし★★★
蝉そのとき静かになりし長崎忌★★★★

8月8日(5名)

小口泰與
弛みなき川蝉の目や山の沼★★★
見つめいる沼の水面へ翡翠よ★★★
川蝉や雑魚跳ねたる朝の沼★★★

多田有花
秋隣る夜の驟雨の音を聞く★★★
ゆっくりとシャワーを浴びる夏の果★★★
水道に残る暑さよ今朝の秋★★★

廣田洋一
秋立つと出てみる庭や風の無き★★★★
立秋の参道飾るぼんぼりかな★★★
海辺にて西瓜割とや足伸ばす★★★

桑本栄太郎
初秋の一雨欲しき朝かな★★★
秋立つと想えば今朝の雲奔る★★★★
もう病葉と云えぬ黄変かつらの樹★★★

弓削和人
徒競走追いかけてくる涼新た★★★
湖の水をさらう手残暑かな★★★
園庭の秋暑や如雨露傾けり★★★

8月7日(4名)

小口泰與
薔薇の庭たもとおりたり鳥の声★★★
我が庭に花を絶やさず揚羽蝶★★★
山の沼蟇鳴く聲の絶えぬなり★★★

 廣田洋一
無口なる友と二人やソーダ水★★★
口中の縮こまりたるかき氷★★★
採れたてのトマト並べる無人店★★★

多田有花
昇る陽に蜘蛛の巣がきらきら★★★
暑き日の名残りの光山に差す★★★★
夏つばめ朝日に翼ひるがえし★★★

本栄太郎
落蝉の翅柔らかきうすみどり★★★
病院の脇に風船かずらかな★★★★
西山の入日茜やひぐらしと★★★

8月6日(5句)

小口泰與
まんまるの目玉へ雨や青蛙★★★
揚羽より一歩先行く男の子★★★★
翡翠や沼のたもとをたもとおる★★★

廣田洋一
川の鯉大口開けて炎暑かな★★★
半裸のランナーの背中光りをり★★★
テレビの前共に黙祷原爆の日★★★

多田有花
原爆忌いつもと同じ陽が昇る★★★
夕刻につくつくぼうし初めて鳴く★★★
地は燃えて空ゆく雲の秋隣★★★★

桑本栄太郎
秋待つやいよいよ雨か雲集う★★★★
人類の火の歴史とや原爆忌★★★
消息の取れて安堵の晩夏かな★★★

弓削和人
炎帝にたちまち雨の降り立ちぬ★★★
夜店かな二度も三度も見廻りて★★★
緋目高の群れて水輪のかすかなり★★★

8月5日(4名)
小口泰與
翡翠や沼に親子の釣人よ★★★
野鳥来て浮葉の上をすいすいと★★★
川蝉の沼や眼間時鳥★★★

廣田洋一
戸を開くやまとひつきたる溽暑かな★★★
浜茄子や近くに見ゆる遊覧船★★★★
百合の花ほぐれ初めし道の端★★★

多田有花
炎天下川は水かさを減らし★★★
カーテンを開け朝涼を入れる★★★
群れて飛ぶ同胞なるか夏つばめ★★★

桑本栄太郎
塩を噴くシャツの背中や草田男忌★★★
何もかも忘れ去りたき蝉しぐれ★★★
蝉しぐれ開く度激し自動ドア★★★

8月4日(4名)

多田有花
赤肉のマスクメロンの果汁啜る★★★
蜩の不意に大きく夜明けかな★★★
かいわれをトッピングしてちらし寿司★★★

小口泰與
暮るる日の天を焦がすや時鳥★★★
大瑠璃や色残したる沼の暮★★★

一刻を水面眺めし川蝉よ(原句)
「眺めし」は、「眺めた」の意味です。(「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。)過去のことになってしまいます。現在形の方が生き生きします。(髙橋正子)
一刻を水面眺むる川蝉よ(髙橋正子)

廣田洋一
三色の松葉牡丹や賑やかに★★★
松葉牡丹ぱっと開きて朝湯かな★★★★
麦か芋かと飲み比べたる焼酎かな★★★

桑本栄太郎
夏暁けの嬰児泣きいる団地かな★★★
ゲートチェーン下がり道路へ百日紅★★★
かなかなの入日茜や木々の影★★★

8月3日(5名)

廣田洋一
喜雨なれば歓迎したる晴男★★★
日に三度シャワー浴びたり京の宿★★★
緑陰に何を語るや高校生★★★

多田有花
満月の光ほのかに熱帯夜★★★★
日の出かな湧きたつ如き蝉の声★★★★
「日の出かな」がいいです。
富良野よりマスクメロンの届きけり★★★

小口泰與
手の餌につられ飛び來る四十雀★★★
沼の辺の木木より聞ゆ時鳥★★★
夕立を吸い込む土や野球場★★★

桑本栄太郎
酷暑とて通院せざる得ざらんや★★★
三伏の極みなるべし日射しかな★★★
想い出の青空ありぬ百日紅★★★★

弓削和人
足裏にのこす白砂つゆの明
「のこす」か「のこる」かが問題です。「つゆの明」は、はっきりしているようですが、よくわかりません。(髙橋正子)

海水帽まとわり離れぬ幼かな
「海水帽」と「まとわり離れぬ幼な」の関係がよくわかりません。(髙橋正子)
我を離れぬ海水帽の幼かな(正子添削例)
故郷や花壇の陰の縞とかげ ★★★

8月2日(6名)
※おことわり
昨日書き込んだ文面を誤って消してしましました。添削句のみ書きます。(髙橋正子)(8月4日)

小口泰與
停車音聴き青鷺の遁走す★★★
あめんぼうの水輪二つとまた水輪(原句)
あめんぼうの水輪二つにまた水輪(正子添削)
赤腹や露天の湯舟溢れける★★★★

廣田洋一
八朔や実りを期する田を見舞ふ★★★★
庭の緑甦りけり喜雨来たる★★★
茜雲残れる空に夏の月★★★

多田有花
夏茜飛び交う朝の木々の間を★★★
コバルトの朝空猛暑を約束す(原句)
コバルトの朝空炎暑を約束す(正子添削)
吹き抜ける夏台風の余り風★★★

川名ますみ
ひさびさの友は花柄サンドレス★★★
旧友と分けるきれいな色のゼリー(原句)
旧友と分けるゼリーのきれいな色(正子添削)
雷鳴に茶話の一時だけ止みぬ★★★

桑本栄太郎
未明よりかなかな鳴きて目覚めけり★★★
口開けしままの鴉や三伏に★★★
鈴なりと想ふ枝葉や蝉唸る★★★

弓削和人
虹立つや湖を切り裂く遊覧船★★★
夏帽を飛ばさぬように遊覧船★★★
門灯のみっつがひとつ秋隣★★★

8月1日(5名)

小口泰與
翡翠の嘴から嘴へ魚渡し★★★
柔らかな水面つんつん水馬★★★★
「柔らかな」がいいです。ご自分の感覚がいきています。(髙橋正子)
川蝉のぽちゃと波立水中へ★★★

多田有花
すべきこと朝涼のうちにすませけり★★★
ごろり寝て風心地よき夏座敷★★★
朝凪や陽のはや山野に強く射し★★★

廣田洋一
空蝉や鳴声はこの木にあらず(原句)
リズムが取りにくい感じなので、添削しました。(髙橋正子)
空蝉や声はこの木にあらずして(正子添削)

雷鳴に目を覚ましたる深夜かな★★★
はたた神土用の空を駆けめぐり★★★

桑本栄太郎
朝涼の窓より風に目覚めけり★★★
照り返す木々の枝葉や晩夏光★★★★
かなかなの忽と鳴きだす入日かな★★★

川名ますみ
網戸越し調律の音Aに戻る★★★
むらさきのマスカラを塗る夏の朝★★★
賜りしメロンをぐいとジューサーに(原句)
「賜りし」が少し冗長な印象です。この句を作ったことで、「賜りし」の気持ちを表していいと思います。(髙橋正子)
大切りのメロンをぐいとジューサーに(正子添削例)

自由な投句箱/7月21~7月31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子

今日の秀句/7月21日~7月31日

7月31日(1句)

★大丸へ帰省みやげの買物に/桑本栄太郎

7月30日(1句)

★みんみんや汽車に駆け込む女学生/小口泰與

7月29日(1句)

★湖に浮んで夏の空ばかり/弓削和人
7月28日(1句)

★手をつなぎ片蔭を行く親子かな/廣田洋一
この句を読んですぐに日本画家の小倉遊亀の「径(こみち)」という画を思いだした。この絵は買い物から帰る日傘をさした母と後を付いていく女の子と犬が描かれている。母と子の距離感が言い難い情愛を感じさせている傑作のひとつ。片蔭をゆく手をつないだ親子の風景に涼しさと優しさを感じる。(高橋正子)

7月27日(2句)

★夕菅やテントのランプ次次と/小口泰與
キャンプの夕べのロマンティックなひと時。夕菅、テント、ランプと、句材が揃って少し昔をおもいださせるような懐かしさがある。(髙橋正子)

★夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人

夏座敷に座ると、向こうに「みるみる」雲が湧きあがってくる。上昇気流に立ち上がる雲はまさに夏の勢い。景色が大きくイメージが鮮明なのがいい。(髙橋正子)
7月26日(1句)

★半月の中天にあり夜の秋/多田有花
中天にある半月を見上げ、その涼やかな景色、吹く風の感触に秋を感じた。連日の猛暑のなか、夜はそれでも秋めいているやすらぎがある。(髙橋正子)

7月25日(1句)

★大阪は天満祭の水都かな/桑本栄太郎
大阪は淀川が巡る水都である。大阪天満宮の祭りは日本三大祭のひとつ。天満祭は、宵宮の鉾流しに始まり、本祭の日の夕刻から船渡御があり、神輿、鳳輦の奉安船とこれを迎えるお迎え人形船、篝船、どんどこ船、囃子船などが堂島川を下って、江之子島に着き、陸路を練って本社に還幸する という。水都なればこその祭り。「水都かな」がいい。(髙橋正子)

7月24日(1句)

★糸蜻蛉水輪残して飛び去りぬ/小口泰與
細くかすかな糸蜻蛉が飛び去ったあとに、水輪が残っている。残っている水輪で糸蜻蛉の存在を知るようなもの。飛び去ったあとの水輪が涼しそうだ。(髙橋正子)

7月23日(1句)

★棟上げの祝詞涼しき木の香り/廣田洋一
夏の棟上げは戸外の神事だけに暑いのだけれど、「涼し」と感じられるほど木の香りが、すがすがしかったのだろう。(髙橋正子)

7月22日(1句)

★毎日のネット句会や日日草/小口泰與
毎日のネット句会は、この「自由な投句箱」のこととして、このよう詠んでいただいてうれしい。小さい花ながら、夏の間、日々休まず花をつける、その名が日日草。その日日草のように、小さい句会ながら、日々花を咲かせるように投句がある。その上に秀句も生まれる。(髙橋正子)

7月21日(句)

★母を見舞う涼しき施設の一室に/多田有花
施設で生活をしている母を暑さを心配しながら訪ねた。部屋は適度の冷房で涼しく快適な様子。母の健やかそうな表情がまず目に映ったのだと思う。(髙橋正子)

7月21日~7月31日

7月31日(4名)

小口泰與
道おしえ忠治の墓はいずこにか★★★
おはぐろやすいと釣竿とまりける(原句)
「釣竿とまり」は「釣竿にとまり」にしないといけないです。(髙橋正子)
おはぐろやすいと釣竿にとまり(正子添削)
飛び來るや雀の鋭声兜虫★★★

多田有花
髪切りて風にかるがる七月尽(原句)
「七月尽」は季語として使いません。月の終わりにどの月でも「〇月尽」というのではなく、季節の終わりに季節を惜しんだりするときに「弥生尽・四月尽」などと使います。
蝉しぐれ下から聞こえ五階の部屋★★★
大の字に寝て涼風に身をまかせ★★★

桑本栄太郎
窓を開けそよりと風の朝涼し★★★
大丸へ帰省みやげの買物に★★★★
空蝉の何かを語るまなこかな★★★

弓削和人
向日葵や敬虔にして立ちつくし★★★
街あらた湖畔に映る揚花火★★★★
夏の雨やみてはふれり日誌書き★★★★

7月30日(4名)

小口泰與
二三羽の雀の鋭声竹落葉★★★
みんみんや汽車に駆け込む女学生★★★★
翡翠の浮葉すいすい歩みをり★★★

廣田洋一
貸したるノート避暑地より送り来し★★★
風鈴の舌を取り替へ音新た★★★★
鉄風鈴澄みたる音色響かせて★★★

多田有花
少女らの連れ立ち片陰を帰る★★★
校庭に人なく炎暑の光のみ★★★

髪洗い海風の吹く部屋に出る
句意としては★4つですが、「出る」が必要か、どうか、です。(髙橋正子)
髪洗い海風心地よき部屋に★★★★(有花改作)

桑本栄太郎
羅もののはだけ朝に谷崎忌★★★
夕刻は吾の時間と油蝉★★★
街燈の明かり惜しむや夜の蝉★★★

7月29日(5名)

小口泰與
白ばらや大志あふるる少年よ★★★
暁紅の沼にぎわしや糸蜻蛉★★★
川蝉の枝移りたる暁の沼★★★

廣田洋一
片蔭に自転車留めて一休み★★★
サバンナの星空仰ぎ避暑旅行★★★★
道端の白き蕾や晩夏光★★★

桑本栄太郎
夏暁の赤子泣き居る団地かな★★★★
三伏のおこりのような日射しかな★★★
木々の枝の向こう青空秋近し★★★

多田有花
白き渦残し蚊取線香の朝★★★
日が昇るすでに盛んの今日の蝉★★★
人影の消え日盛りの公園に★★★

弓削和人
帽のつば熱風のたび研がれおり★★★
湖に浮んで夏の空ばかり★★★★
夏湖に浮かびて雲を抱きけり★★★

7月28日(5名)

小口泰與
ドア開くや忽と青鷺飛びにける★★★
釣糸のもつれの解けて沼の夏★★★
糸蜻蛉つんつん水輪つくりけり★★★★

廣田洋一
片蔭を辿りて入る喫茶店★★★
手をつなぎ片蔭を行く親子かな★★★★
友集ひ談論風発避暑の宿★★★

多田有花
遠雷の聞こえる夏の昼下がり★★★
アイマスクして存分に昼寝かな★★★
陸風にいつしか変わり夜の秋★★★

桑本栄太郎
止め処なき夢とうつつの熱帯夜★★★
鋪道灼け屋根の灼け居り炎暑かな★★★
炎熱と云えど雄々しき木々の青★★★

弓削和人
宵闇にラジオ響けり秋近し★★★★
運ばれる土砂は湖畔を去りゆけり★★★
土砂降りて静けになりぬ夕焼雲(原句)
土砂降りて静かになりぬ夕焼雲(正子添削)

7月27日(5名)

小口泰與
夕菅やテントのランプ次次と★★★★
綿菅や木道の空との曇★★★
夏菊や豪雨突然襲ひける★★★

多田有花
入道雲午後の北東の空に★★★
川鵜あり羽繕いに余念無し★★★
夏の朝流れし英雄ポロネーズ★★★

廣田洋一
池の端青蘆原の拡がりぬ★★★
メロン一つ二人で分ける日曜日★★★
日盛りや出かける予定遅らせて★★★

桑本栄太郎
三伏の極みなるべし日射しかな★★★
風死すや忽としじまの午後三時★★★
早風呂を取れば雷鳴来たりけり★★★★

弓削和人
夏座敷みるみる雲の湧きにけり★★★★
万緑に歩き始めの子猫かな★★★
ゆるゆると洗濯干せり柿若葉★★★

7月26日(4名)

小口泰與
あけぼのの青水無月の浅間山★★★★
たまゆらの顔見世の如翡翠よ★★★
夕顔や日はあわいに落ちにける★★★

廣田洋一
夏蝶や小さき翅の忙しなく★★★
水中花水を入れ替へ甦り★★★★
鳴る前に目覚ましを見る明易し★★★

多田有花
熊蝉の声湧きたちぬ朝かな★★★
半月の中天にあり夜の秋★★★★
中天にある半月を見上げ、その涼やかな景色、吹く風の感触に秋を感じた。連日の猛暑のなか、夜はそれでも秋めいているやすらぎがある。(髙橋正子)
夏の風心地よく受け拭掃除★★★

桑本栄太郎
甘露忌の白き木槿や鳥小屋に★★★★
落蝉の仰のけなりぬ震いたつ★★★
我が背ナのいやいやしたり扇風機★★★

7月25日(5名)

小口泰與
翡翠や右往左往の沼の魚★★★
仏法僧柾目正しき床柱★★★
たまさかのマンゴー食べし旱星★★★

弓削和人
蝉の殻異動を告げる受話器かな★★★
青空へ去りてや寄るる糸蜻蛉★★★
旅すなり水辺を去りぬ白き鷺★★★

廣田洋一
昼寝の人スマホの人や昼休み★★★
おしゃべりな友の黙りて冷奴★★★
冷奴独り夕餉の冷酒酌む★★★★

多田有花
グラジオラス支えを受けて真っ直ぐに★★★
緑陰に大型バイク停められて★★★★
コーヒー豆ゆっくり挽いて朝曇★★★

桑本栄太郎
大阪は天満祭の水都かな★★★★
じりじり入日を惜しみ油蝉★★★
西山の入日あかねや宵涼し★★★

7月24日(4名)

小口泰與
蜻蛉水輪残して飛び去りぬ★★★★
翡翠や沼より流る水の音★★★
牛蛙ドラムの響き高らかに★★★

廣田洋一
朝涼の公園巡り深呼吸★★★
油蝉とろとろと鳴く朝かな★★★
茄子一つ田楽にせる昼餉かな★★★

多田有花
ヨーグルト涼し梅ジャムを添えて★★★
書類整理涼しきうちに済ませけり★★★
驟雨やめばすぐに始まり蝉の声★★★

桑本栄太郎
河童忌の酒は黄桜酒造かな★★★
空蝉やもの言いたげに空見つめ★★★
人の子の我もコロナに秋を待つ★★★
 
7月23日(5名)

廣田洋一
ラジオ体操の掛声涼し朝の庭★★★
棟上げの祝詞涼しき木の香り★★★★
団扇風屋形船の景見せて★★★★

小口泰與
合歓咲くや野鳥の恋は一刹那★★★★
睡蓮の葉つぱを歩む野鳥かな★★★
牛蛙ぐわんと鳴きてそれつきり★★★

多田有花
夏の朝ラジオ体操123★★★
熱中症の注意放送夏の朝★★★
草刈機うなりをあげる大暑かな★★★

弓削和人
中年や鏡に汗のあばら骨★★★
水筒の踊る車両や部活女子★★★
夏の駅つけし額の炭酸水★★★

桑本栄太郎
あおぞらの窓の彼方や大暑の日★★★
落蝉の仰のけなりぬ入日かな★★★
西山の入日あかねや蝉の穴★★★

7月22日(4名)

廣田洋一
墓原の明るくなりぬ百日紅★★★
湘南の海きらめきて土用凪★★★★
少しの間手枕したる昼寝かな★★★

小口泰與
張出し枝に翡翠とまりけり★★★
毎日のネット句会や日日草★★★★
夏藤や榛名山を見あぐ二子山★★★

多田有花
梅雨明けや一番星の光りおり★★★★
すもも食ぶ夕餉のあとの楽しみに★★★
目覚めればいつしか蝉の声盛ん★★★

桑本栄太郎
今朝もまた目覚めに敗ける蝉しぐれ★★★
何となく秋の気配や朝涼し★★★
あおぞらの窓の彼方や雲の峰★★★★

7月21日(4名)

小口泰與
凌霄の咲きのぼりたる時計台★★★
翡翠の忽と高声や沼の径★★★
然の夕立や道は川とかし★★★

多田有花
母を見舞う涼しき施設の一室に★★★★
ランドセル楽し明日から夏休み★★★
風通しよき部屋の良し土用入★★★

桑本栄太郎
何となく夢の哀しき朝涼し★★★
螽斯早も鳴き初む夜涼し★★★★
<田舎の追憶より>
童顔の川面に寄せる夜振りかな★★★

弓削和人
喧騒をはなれる池や蓮浮き葉★★★
菜園の紺に鋏や茄子日和★★★
夏帽の黄映たるや園の路★★★

自由な投句箱/7月11~7月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子

今日の秀句/7月11日~7月20日

7月20日
※該当句無し

7月19日(1句)

★農道に日のいっぱいや花萱草/小口泰與
農道に夏の日が眩しいほどいっぱいに差し、橙色の萱草の花が日差しと競うかのように咲き誇っている。萱草の咲く農道が画家の描く画のように明るく力強い。(髙橋正子)


7月18日(1句)

★大の字の昼寝や風の通る部屋/桑本栄太郎
昭和の家族の風景を思い起こすような景色。思い切り身体を伸ばし、大の字になって寝ているのは、少年か。屈託なく、なんと頼もしい。(髙橋正子)

7月17日(1句)

★雲の峰遊覧船を運びけり/弓削和人
雲の峰が遊覧船を「運びけり」と、「雲の峰」を人とみなして、面白いとらえ方。雲の峰を背景に遊覧船が小さくなって航行する景色が思い浮かぶ。(髙橋正子)

7月16日(1句)

★ジェット機のいま飛び立ちぬ夏空へ/多田有花
滑走路からジェット機が飛び立つところ。飛び立ってゆくところは「夏の空」。夏空をどのようにイメージするかで句の印象が変わる。ジェット機が飛び立つ、夢と希望のあるスカッとしたショットだ。(髙橋正子)

7月15日(2句)

<忍野八海>
★泉あり空と立木を映しつつ/多田有花
忍野八海は富士山の裾野の、富士山の伏流水が湧き出た泉。泉に空と立木が映っている水景。「映しつつ」は、進行形で、泉が湧き続けている趣を伝えている。(髙橋正子)

★黒南風や孫ら来たりて恐竜展/桑本栄太郎
孫たちは老いの生活に少年の世界を持ち込んでくる。蒸し暑い盛り、風は吹くものの暑さなど気にせず恐竜展に一緒に出かける。俳句の句材が新しく、句が生き生き新鮮になる。(髙橋正子)

7月14日(1句)

★万緑と雲の間に河口湖/多田有花
富士山からの眺めか。富士五湖の一つの河口湖が、山々の万緑と雲の間から見える。小さな河口湖は富士吉田の登山口のあるところ。そこから登ってきたとの思いもあるか。(髙橋正子)
追記:有花さんから5合目からの眺めとコメントが入る。たしかに、「万緑」があるので、山頂からの眺めとは言えないだろうに。(髙橋正子)

7月13日(2句)

★風鈴の戯むる風や星の夜/小口泰與
星がたくさん出ている夜、風もよく吹いて、風鈴が風と戯れているように鳴る。風鈴と星とに癒される、いい夜だ。(髙橋正子)

★祇園会の準備すすみぬ四条かな/桑本栄太郎
祇園会については、京都にお住いの作者に説明してもらうのが一番だが、鑑賞の立場から感想を。七月の京都は祇園祭一色に染まる。中でも祇園四条は賑やかなところ。四条を通れば、祇園会の準備が着々と進んでいる様子をわくわくした思いで見ることができる。それを気取らずに詠んだ。(髙橋正子)

7月12日(1句)

★夏の雲次々消えて富士稜線/多田有花
水煙時代に「富士山頂俳句リーディングをしたが、このときは、私も有花さんに先導されて富士山に登った。そのときの印象が蘇った。富士山にはどこかに雲がかかっている。雲が消えて稜線があきらか見えると、富士山に登るうれしさが湧いてくる。(髙橋正子)
追記:俳句四季8月号の花冠創刊40周年記念の記事に、富士山頂で有花さん、岩本康子さん、私正子の3人が映った写真が載ります。編集者が選んでくれました。(髙橋正子)

7月11日(1句)

★土佐の夏アイスクリンに溺れけり/廣田洋一
土佐の夏は「南国土佐」と歌われただけに、暑い。昔なつかしい「アイスクリン」を溺れるほど食べた。「溺れる」とおかしいほど大げさなのが、この暑さと旅の開放感の中で愉快。(髙橋正子)

7月11日~7月20日

7月20日(5名)

小口泰與
駒草や尾根渉る風清清し★★★
サルビアや飛び込み台の小学生★★★
睡蓮の葉にすいと來し野鳥かな★★★

廣田洋一
琥珀色とろりと古き梅酒酌む★★★
朝日燦々風は変わらず土用入★★★
土用入熱きコーヒー啜りけり★★★

多田有花
干し物をくるくる回し夏の風★★★
夏の日や大学病院へ向かう★★★
トンネルを出れば白雨に出会いけり★★★

桑本栄太郎
涼風の入りて目覚むる窓辺かな★★★
身をすくめ何かを探す朝涼し★★★
じゅわじゅわと朝の序曲や蝉の声★★★

弓削和人
万緑に一路一門版画展★★★
夏帽を浮かべる夏の風一陣★★★
ハンカチの水含みたり丘の空★★★

7月19日(3名)

小口泰與
山径に鳥声かすか独活の花★★★
えぞにうの名も無き沼に咲きにけり★★★
農道に日のいっぱいや花萱草★★★★

桑本栄太郎
目覚むれば早もうねりや蝉しぐれ★★★
落蝉の白き腹見せ仰のけに★★★
忽然と風のざわめき宵涼し★★★

弓削和人
炎天に広重ありぬ戸塚宿★★★
水撒きの店や朝より客を入れ★★★
炎天下ただただ直く人の列★★★

7月18日(4名)
小口泰與
合歓咲くや浮子ぴくぴくと山の沼★★★
山の沼日傘差したるカメラマン★★★
翡翠や沼耐えがたく暗くなり★★★

多田有花
離着陸する機見守り夏の日に★★★
吹き抜ける風よ梅雨明けもまぢか★★★
山門をくぐりて蓮に迎えられ★★★★

廣田洋一
仙人掌の花艶やかに棘白し★★★
十三時目覚ましかけて昼寝かな★★★
昼寝覚時の経つのは早きかな★★★

桑本栄太郎
祇園祭孫ら来る好し帰る良し★★★
大の字の昼寝や風の通る部屋★★★★
炎暑来る音の消え居り午後三時★★★

7月17日(5名)

小口泰與
鯉跳ねて奮い立ちたる夏の沼★★★
河骨や浮子動かざる山の沼★★★
亀の子を釣り上げたるや女の子★★★

廣田洋一
仙人掌の一球一花捧げをり★★★
海の日や豪雨の被害広がりぬ★★★
鮪づくしの鮨に合ひたる吟醸酒★★★

多田有花
<羽田空港三句>
夏の海の彼方に霞むスカイツリー★★★
キャラクターつけし飛行機梅雨晴に★★★
白南風を受けて飛び立ち航空機★★★

桑本栄太郎
<祇園祭山鉾巡行>
祇園会のくじ改めの背筋かな★★★
刀一閃結界ひらく稚児の顔★★★
巡行の祇園囃やコンチキチン★★★

弓削和人
ふやけたる手紙に筆や梅雨に入る★★★
アラームを入れ忘れたる熱帯夜★★★
雲の峰遊覧船を運びけり★★★★

7月16日(5名)

廣田洋一
棚一杯花仙人掌の花屋かな★★★
初蝉や人影の無き公園に★★★
パリ祭やシャンソン歌手の老ひたるを★★★

多田有花
<羽田空港三句>
梅雨晴の影濃く落とし航空機★★★
七月の翼が並ぶ滑走路★★★
ジェット機のいま飛び立ちぬ夏空へ★★★★

小口泰與
糸蜻蛉草の穂先に漂いし★★★
糸蜻蛉鯉は大きな口を開け★★★
水面の水輪三つや糸蜻蛉★★★

桑本栄太郎
<河原町四条通り界隈>
南座の大屋根灼ける青き空★★★
せせらぎ緑蔭なりぬ高瀬川(原句)
せせらぎは緑蔭なりぬ高瀬川(正子添削)
宵山の四条通りやコンチキチン★★★

弓削和人
鬼百合の橙雨に打たれけり★★★
蚊の声や寝起きを急ぐ朝まだき★★★
ある雨のそうびの二三残りけり★★★

7月15日(5名)

廣田洋一
裏窓の明るくなりて西日かな★★★★
大西日沈む地の果てアルジェリア★★★
仙人掌の花赤々と窓辺かな★★★

小口泰與
花合歓や沼を賑わす鳥の声★★★★
鳴きかわす沼の左右の牛蛙★★★
河骨やゆったり泳ぐ鯉の口★★★

多田有花
<忍野八海三句>
泉あり空と立木を映しつつ★★★★
いずこまで続く泉の底を見る★★★
泉囲みあまたの言葉飛び交いぬ★★★★

桑本栄太郎
黒南風や孫ら来たりて恐竜展★★★★
二棹の濯ぎもの干す梅雨晴間★★★
入日さす祇園祭の宵山へ★★★★

弓削和人
豪雨もて秋田を呑むる夏場かな★★★
梅干しのひとつ多めや炎天下★★★★
氷片の一片はじく夏料理★★★
※秋田の大雨、お住いのところは大丈夫でしょうか。(髙橋正子)
 
7月14日(5名)

小口泰與
香煙の犬を襲いし夏の暁(原句)
「襲いし」のあとに切れを入れると、イメージがしっかりしてきます。(髙橋正子)
香煙の犬を襲いぬ夏の暁(正子添削)

百舌鳥高音味噌汁の蓋高鳴りし★★★
翡翠や声を掛け合うカメラマン★★★

廣田洋一
沈みゆく西日を見つつ露天風呂★★★
ロマン香る歌の流れて巴里祭★★★
今日も見る着物の婦人名古屋場所★★★

多田有花
五合目より夏空戴く富士山頂★★★
梅雨晴間小御嶽神社に詣でけり★★★
万緑と雲の間に河口湖★★★★

桑本栄太郎
高校の朝の正門白木槿★★★
交差点の赤き尾灯や梅雨ぐもり★★★
植込みの刈込中や草いきれ★★★

弓削和人
暗雲の低く垂れたり花はちす★★★
短夜や潮鳴りやまぬ松の湖★★★
荒梅雨の庇に鳴きぬ子猫かな★★★

7月13日(5名)

小口泰與
外に出づや咲きほこりたる薔薇百本★★★
風鈴の戯むる風や星の夜★★★★
平らかな沼へ翡翠一直線★★★

廣田洋一
西日受け赤くきらめくビルの窓★★★
仙人掌の花を飾りて美容院★★★
公園に取残されし夏帽子★★★

多田有花
夏富士の五合目焼きたてめろんぱん★★★
富士五湖へ流れゆくかな夏の雲★★★★
夏料理富士の高嶺を望みつつ★★★

桑本栄太郎
薙刀の鉾立て進む大丸前★★★
祇園会の準備すすみぬ四条かな★★★★
今日もまた夕立来たる午後の五時★★★

弓削和人
垂れ下がる蛇の目玉や草の叢★★★
向き合うは展望台に夏嶺かな★★★
湖凪ぎて真帆のひとつや避暑便り★★★★

7月12日(4名)

小口泰與
忽然と谷蟇なくや時停止★★★
餌台の餌のたのもし夏雀★★★
翡翠や沼の魚を賜われり★★★

弓削和人
白蝶の降り昇りたる小雨かな★★★
夕立雲風のぬるみに立ち止まり★★★
青梅雨や野路のぬかるみ軽く避け★★★

桑本栄太郎
目覚むれば忽ち蝉の時雨かな★★★
リハビリを終えて家路の溽暑かな★★★
夕立去り忽ち風の夕涼し★★★

多田有花
<山梨県立富士山世界遺産センター三句>
和紙製の巨大な富士や梅雨晴間★★★
夏の富士バックに記念撮影す★★★
夏の雲次々消えて富士稜線★★★★

7月11日(3名)

 小口泰與
翡翠のぐいと飲み込む魚かな★★★
青鷺やドアの開きに翔けにける★★★
絵簾をくぐり女将の現れし★★★

廣田洋一
一斉に日傘開きて吟行会★★★
この頃は男もさせり黒日傘★★★
土佐の夏アイスクリンに溺れけり★★★★

桑本栄太郎
初蝉のわしやわしやと自己主張★★★
一陣の夕立ち風や午後の四時★★★
西山の入日あかねや蝉の声★★★