自由な投句箱/11月11日~11月20日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月20日
★足袋裏を向けおうて炬燵の親子かな   臼田 亞浪(うすだ あろう)🍁
11月19日
★蔦枯れて一身かんじがらみなり     三橋 鷹女(みつはし たかじょ)
11月18日
★大き落葉すこしづつ地を吹かれ進む   川本 臥風(かわもと がふう)🍁
11月17日
★ゆらぎつつ澄みつつ冬の泉湧く     吉田  晃(よしだ あきら)🌸
11月16日
★自転車の籠に立ちたる葱の白      碇   英一(いかり えいいち)🌸
11月15日
★干し柿を移す朝日の来る方へ      古田 けいじ(ふるた けいじ)🌸
11月14日
★妻病みて籠の大根の重かりし      前田 たかし(まえだ たかし)🌸
11月13日
★冬晴れを愛す厠の窓からも       谷野 予志(たにの よし)
11月12日
★月白やふわりと跳べるトウシューズ   石井 秀子(いしい ひでこ)🌸
11月11日
  亞浪先生逝去
★この冬空の下どこにも先生亡し     川本 臥風(かわもと がふう)🍁

今日の秀句/11月11日~11月20日

11月20日(1句)
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花/桑本栄太郎
「日蔭なればや」は、「日蔭であるからこそ」の意味。石蕗の花の黄色は枯れの進む冬景色のなかで特に目を引く黄色であるが、日蔭では特に石蕗の花の風情がいい、と言うのだ。(髙橋正子)
11月19日(1句)

★夜明前寒気放てる星一つ/廣田洋一
冬の夜明け前の美しさの極みが「寒気放てる星一つ」で表現されている。遠い星を見て「寒気放てる」の実感が伝わる。(髙橋正子)
11月18日(1句)

★初冬の松どっしりと龍野城/多田有花
松は一年中色を変えないように思えるが、やはり、季節ごとの趣は違っている。初冬の松、寒さに向けて気構えが感じられる。色も緑を少し失い、古風な感じが、龍野城を趣ある城に仕立てている。(髙橋正子)

11月17日(1句)
活発な冬翡翠や湖眠る/小口泰與(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に/小口泰與(正子添削)
11月16日(4名)

★駅出でて時雨に濡れし上野かな/廣田洋一
時雨が降る時分の上野駅の風情がよく出ている。昭和的な雰囲気がまだ残る上野である。(髙橋正子)

★冬虹の程なく消える山の池/小口泰與
山の池の上の生まれた冬の虹は、「程なく」消えた。虹は儚いというけれど名残りを惜しむように「程なく」消えたのである。ここに作者の心情が読み取れる。(髙橋正子)
11月15日(1句)

★鳰のいて葦のまにまにに顔さらす/小口泰與
鳰は水に潜っては、潜ったところから離れて浮き出る。潜水の名手と言っていい。脚が体の後ろの方についていて、櫂の役目を果たすという。葦の間に間に浮いて顔をさらしているところは画になるのだろう。(髙橋正子)
11月14日(2句)

★冬紅葉映せる川面平らかに/廣田洋一
冬紅葉が色を極めるころ、静寂な時間が訪れる。川面は平らかに、冬紅葉を映して、時を止めているかのようである。(髙橋正子)

★白き実を鴉ついばむ冬初め/桑本栄太郎
「白き実」で思い出すのは、ナンキンハゼの実だが、そうなのか、どうか。「白い実」の白と「鴉」の黒の印象が、「冬初め」の気候に印象に合っている。(髙橋正子)
11月13日(1句)

★オカリナのようには鳴らずひょんの笛/桑本栄太郎
「ひょんの笛」をご存じだろうか。句会仲間に旧家の人がいて、庭の木のひょんの笛をもってきて見せてくれた。
イスノキの葉っぱにある種のアブラムシが卵を産み付け、葉が丸く固く木のように変形し、その中に幼虫が育ち、抜け出たあとに穴があく。これが木の上で風に吹かれると「ひょう」と言う音を出す。

穴に息を入れ吹くと笛のような音がでるので、江戸時代から子供のおもちゃになったようだ。オカリナに似た音だが、オカリナを吹くようにはいかない。音は面白くも淋しくもある。(髙橋正子)
11月12日(1句)

★故郷の土間に置かれし茎の桶/廣田洋一
「茎の桶」は、茎漬をする桶のことで、茎漬は、大根や蕪の葉や茎に塩を振り重石をのせて数日すると発酵した少し酸味のある漬物のこと。冬の間の食事には欠かせない、楽しみな漬物である。それが故郷の土間に置かれている。故郷の冬の生活を懐かしんだのであろう。(髙橋正子)
11月11日(1句)

★冬の薔薇庭の手入れの鋏音/多田有花
「薔薇」と「鋏音」の取り合わせに快感がある。鋏音からは冷たい鉄の出す小さい音、薔薇からは寒さに耐えながら、美しさを保とうとする姿がイメージできる。(髙橋正子)

11月11日~11月20日

11月20日(4名)

小口泰與
寒波来ぬ上州見事晴渡り★★★★
目陰して浅間の雪を確かめし★★★
我が声の岩を射落とし神渡し★★★

多田有花
初冬の玄関に白筋アマリリス★★★
実南天色を深める街角に★★★
冬浅し醤油饅頭売る老舗★★★

桑本栄太郎
朝の日に綿虫浮かぶ散歩かな★★★
カリカリと種の干乾び末枯るる★★★
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花★★★★ 

弓削和人
窓硝子せんべい汁の湯気の粒★★★★
初雪を獣の足あと知らせけり★★★★
湖の浪打つ巌白き鳥★★★
 
11月19日(4名)
小口泰與
冬翡翠の煩悩此処に在りしかな★★★
曲がごとのうつつに覚めし隙間風★★★
目陰して冬の浅間を確かめし★★★

廣田洋一
夜明前寒気放てる星一つ★★★★
緑濃きセーターを着て外出す★★★
マフラーを二重に巻きて顎埋まる★★★

多田有花
しぐれおる龍野に醤油ソフト食ぶ★★★
時雨あがる醤油蔵の煉瓦煙突★★★★
冬菊に小さき蕾数多あり★★★

桑本栄太郎
木枯や水色空のせまり来る★★★★
鼻ふさぎ横向きにゆく冬一番★★★
終活の頃となりたる落葉散る★★★
11月18日(3名)
小口泰與
仲間らに寒波来ること仄めかす★★★
水中よりすいっと抜ける冬翡翠★★★
ほろほろと枯葉舞い落つ池の朝★★★

多田有花
冬霧を眼下に見るか朝霞城★★★
初冬の松どっしりと龍野城★★★★
発酵ランチ食べに入れば初しぐれ★★★
桑本栄太郎
木枯やしがみつきたるフレディ君★★★
日を透きて火炎と想う冬もみじ★★★
散り積もる葉を吹き飛ばす冬一番★★★
11月17日(4名)
小口泰與
活発な冬翡翠や湖眠る(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に(正子添削)

冬ばらの燃え立つ赤の焔かな★★★
沼廻る冬翡翠の羽音かな★★★

多田有花
冬紅葉見あげ龍野神社へと★★★
冬浅き紅葉始まる聚遠亭★★★
ちらほらと御涼所の冬紅葉★★★

廣田洋一
一茶忌や難民保護の募金箱★★★
綿虫や払いてもまた目の前に★★★
山茶花や大きな墓のひとところ★★★

桑本栄太郎
 <京都四条大橋界隈>
背ナに京車夫の街ゆく冬うらら★★★
せせらぎの落葉散り敷く高瀬川(原句)
せせらぎに落葉散り敷く高瀬川(正子添削)
外つ人のベビーカー押し冬の京
11月16日(4名)
廣田洋一
日当たり良き庭につつじの帰り花★★★
駅出でて時雨に濡れし上野かな★★★★
大綿のひとかたまりに飛び来たる★★★

小口泰與
冬虹の程なく消える山の池★★★★
行くほどにすそ野の長し冬赤城★★★
目の前の長きすそ野や小春空★★★

桑本栄太郎
朝しぐれ峰の彼方の日差しけり★★★
嶺の端を超えて里へとしぐれ雲★★★
冷えまさる曇り空なる村しぐれ★★★

多田有花
冬はじめ銀杏色づく大阪に★★★
くっきりと入日が照らす冬紅葉★★★★
柿の実の枝に残れる十一月★★★
「柿の実の枝に残れる」は季語「十一月」を説明した形になっています。これは季語の使い方として避けるのが良いと思います。(髙橋正子)
11月15日(4名)
多田有花
塩を振り南瓜の種を炒る初冬★★★
診察を終えれば夕暮れ日短か★★★
帰路につく冬の紅葉仰ぎつつ★★★

小口泰與
銀鱗を光らす沼や冬木立★★★
空風に慣れるも仕事嫁ぎ人★★★
鳰のいて葦のまにまにに顔さらす★★★★

桑本栄太郎
三階の眼前はかつら黄葉かな★★★
くもりても更に明るき銀杏黄葉★★★
北山のくもり来たるや一ト時雨★★★

廣田洋一
新堂の赤銅光る十一月★★★
その奥に楸邨の墓帰り花★★★
寒禽の鳴き移りたる法の庭★★★
11月14日(4名)

廣田洋一
冬紅葉映せる川面平らかに★★★★
産土の社に一樹冬紅葉★★★
松の色変わらず冴えて十一月★★★

小口泰與
大鷹や葦に逃げ込む鳥一羽★★★
初冬の水面賑わす水輪かな★★★
山の沼冬翡翠の水輪かな★★★

多田有花
もぎたての蜜柑に残る陽の温み★★★
滑り台何度も滑り冬ぬくし★★★
白菜を刻み味噌汁に入れる★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばむ冬初め★★★★
冬蝶の躊躇い舞いぬ日向かな★★★
ゑのころの枯れて群れ居り街の墓地★★★
11月13日(4名)
小口泰與
寒暁の沼や水音絶え間なし★★★
沁み渡る沼へ朝日や冬の鯉★★★
風も無き沼へ枯葉の限りなし★★★

多田有花
おはようの看板初冬の小学校★★★
路地を曲がれば冬の小菊かな★★★
大公孫樹色づき染めし冬はじめ★★★
廣田洋一
そこはかと甘き香りや冬薔薇★★★
冬薔薇一つちょこんと丸まりて★★★
丹沢の稜線すらり山眠る★★★★

桑本栄太郎
落葉して緋色極むる唐かえで★★★
日に向い塀より出ずる石蕗の花★★★
オカリナのようには鳴らずひょんの笛★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
山の幸干して秋風ほしいまま★★★
鳥声や上つ枝の熟柿風の中★★★
魚跳ねし秋翡翠の沼ほとり★★★

多田有花
小六月土手に咲きおり姫女苑★★★
百葉箱冬の紅葉をしたがえて★★★
校庭にコスモス揺れて冬浅し★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばみ冬晴るる★★★
あおぞらに雲見当たらぬ小春かな★★★★
冬蜂と云えど日差しの目の前に★★★

廣田洋一
点々と燃えたつ如く冬紅葉★★★
故郷の土間に置かれし茎の桶★★★★
十一月友はコロナに罹患せり★★★

11月11日(4名)
小口泰與
早朝の秋翡翠の狩猟かな
渓流の波のほぐれし秋日和
紅葉の妙義に登り浅間観る

多田有花
小春日の鳶ゆっくりと旋回す★★★
冬浅き真昼の土手を歩きけり★★★
冬の薔薇庭の手入れの鋏音★★★★

桑本栄太郎
あおぞらに柚子の色づく狭庭かな★★★
カサコソと枯葉競いぬ坂の風★★★
亜浪忌のかつら黄葉の散り敷きぬ★★★

廣田洋一
街中をライトアップや十一月★★★
まだまだ色付き足らぬ冬紅葉★★★
法輪の煌めく塔や冬紅葉★★★

自由な投句箱/11月1日~11月10日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月10日
★やわらかき毛糸の嵩をおし包む    中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月9日
★枯芙蓉形くずさず枯れつくす     馬場 江都(ばば えつ)🌸
11月8日
★初冬やシャベルの先の擦り切れて   山口 誓子(やまぐち せいし)
11月7日
★冬来れば母の手織りの紺深し     細見 綾子(ほそみ あやこ)
11月6日
★風ひそひそ柿の葉落としゆく月夜   野村 朱燐洞(のむら しゅりんどう)
11月5日
★白菊を活ける長さにすぱと切る    おおにし ひろし🌸 
11月4日
★銀杏黄葉市電は丸くカーブする    髙橋 正子(たかはし 正子)🌸 
11月3日
★柿食ぶやあからさまなる灯のもとに  中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月2日
★鴨渡る鍵も小さき旅鞄        中村 草田男(なかむら くさたお)
11月1日
★一本の線で描く秋冷の町       川本 良子(かわもと よしこ)🌸

今日の秀句/11月1日~11月10日

11月10日(1句)

★初時雨傘打つ音の程もなく/廣田洋一
時雨はさっと降って上がったり、夕立のように強く降ったり、雨脚が移動するのが見えたり、趣のある雨。初時雨は傘を打つ程の音も立てなかった、というのだ。初時雨らしく、顔見世と思うような降り方だった。(髙橋正子)
11月9日(1句)

★落葉踏む音に帰宅を知りにける/小口泰與
落葉が降り積もった玄関までの路。出かけていたのは妻だろうか。落葉を踏む音がすると、「あ、帰ってきた」と帰宅を知る。足音で誰とわかるのだろう。冬の初めの家族のあたたかさが知れる。(髙橋正子)
11月8日(1句)

★底抜けに晴るるあおぞら冬日さす/桑本栄太郎
快晴の冬空を読んだ句。あまりにもよく晴れた空を「底抜けに晴るる」と言った。手放しの喜びようだ。冬の日はこんな晴がうれしい。(髙橋正子)
11月7日
該当句無し
11月6日(1句)

★陽に風に芒吹かれるばかりなる/多田有花
秋も深まる野に、陽にも風にもが芒が吹かれている。自然の静かさと明るさが感じられる句。自然そのままの芒がいい。(髙橋正子)
11月5日(2句)

★整然とひつじは風に吹かれおり/多田有花
ひつじは漢字で穭と書く。稲の刈り株から芽生えた新芽のこと。稲の株あとから芽生えた「ひつじ」は整然としている。丈低くも、整然と晩秋の風にそよぐ「ひつじ」に心を寄せた句。(髙橋正子)
 
★冷まじや湯気白々と露天の湯/廣田洋一
「冷まじ」は「すさまじ」と読み、この句では、この季語がよく効いている。晩秋、気温が急に下がると、露天風呂に湯気が白々とあがっているが、肌が知るのは「冷まじ」の感覚。(髙橋正子)
11月4日(2句)
★再びは生まれこぬ世や秋惜しむ/小口泰與
現実は、この世には再び生まれてこない。そう思うと、この秋が惜しまれる、というのだ。秋のわびしさ、もの悲しさは古来和歌に詠まれ、それが受け継がれて日本人のだれもが感じる感情となっている。そういう秋は命が惜しまれるのだ。(髙橋正子)

★豪雨止み一安心の秋夕焼/廣田洋一

最近の雨の降り方は、台風や嵐というものでなくても、豪雨となって災害を方々で起こしている。豪雨が止んで夕焼けが見られると、安心を覚え、美しい夕焼けを眺めるのである。「一安心」には実感がこもっている。(髙橋正子)
11月3日(1句)

★嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに/桑本栄太郎
激しく荒れた嵐のあとに、あおぞらが、冷ややかに静かに広がっている。清涼で深い心持になる句。(髙橋正子)
11月2日(1句)

★郵便の間に挟まり赤い羽根/上島祥子
さりげなく郵便物の間に挟まっている赤い羽根に、心にほっと灯が灯るような感じがする。詠みかたが、素直でいい。
赤い羽根共同募金は、10月1日から翌年の3月31日が募金期間で、戦後地域の社会福祉のために始まった。だれもが幸せに暮らせることを願う募金。(髙橋正子)
11月1日(2句)

★水音を間近く聞けり貴船菊/多田有花
貴船菊は、秋明菊とも呼ばれる。赤紫色の細い菊のような花びらをもつのが、もともとの貴船菊である。最近は花びらが少ない白い花が多くなっている。楚々とした姿に、水音が添うのもゆかしい。(髙橋正子)

★神在りの月の出雲や海荒るる/桑本栄太郎
出雲の神在りの月は、十月になる。「そのころの出雲は、海が荒れるのですよ。」という句意。「神在りの月」の「月」は「月の出雲」のようになり、修辞的な面白さがある。さりげないようだが、実感がこもっている。(髙橋正子)

11月1日~11月10日

11月10日(4名)
小口泰與
寒鯉の水塊と共に跳ね★★★
上空を常に意識や秋翡翠★★★
山裾の住む方遠き秋灯し★★★

多田有花
凩へ漕ぐやブランコ思いきり★★★
落葉を終えし桜の空仰ぐ★★★
風無く晴れて冬耕に良き日和★★★

桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
堰水のはるか鞍馬や小春空★★★
小春日や四条大橋人の波★★★
大橋の人の行き交う街小春★★★

廣田洋一
初時雨傘打つ音の程もなく★★★★
生垣に彩り添えて冬紅葉★★★
池渡る風に揺れたる枯れ尾花★★★
11月9日(4名)

小口泰與
秋雨や読書に迷う事もなし★★★
落葉踏む音に帰宅を知りにける★★★★
振る舞いの熱燗ぐいとコップ酒★★★

廣田洋一
教室の入口飾る冬紅葉★★★
枯色も少し混じりて冬紅葉★★★
古き友便りをくれる十一月★★★

桑本栄太郎
小春日の前かご占める小犬かな★★★
前足をさらす嬰児や小六月★★★
「前足」は嬰児の「手」のことですか。(髙橋正子)
色鳥の尾羽ひこひこ来たりけり★★★

弓削和人
信号を待ちつ足踏み今朝の冬★★★
ヒーターの埃をはらう今朝の空★★★
布団より少し顔出す夜明けかな ★★★
 
11月8日(4名)
小口泰與
見事なる立ち振る舞いや秋時雨★★★
木犀や路地裏より風の径★★★
秋目高尾を振る如く霊ふるう★★★

多田有花
秋惜しみつつ渓流の音の中★★★
閉鎖さるキャンプ場に秋暮れる★★★
ひとつひとつ片付けてゆき冬来る★★★

桑本栄太郎
点描のような紅葉やアメリカ楓★★★
火と燃ゆるどうだん躑躅の紅葉かな★★★
底抜けに晴るるあおぞら冬日さす ★★★★

廣田洋一
池の面を華やかに染め散紅葉★★★
立冬や冠雪したる富士の山★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
1月7日(4名)
小口泰與
行く秋や風の強弱あらわなる★★★
潜る度賢者になりし秋の鴨★★★
天からの賜わる雨や秋の畑★★★

廣田洋一
立冬の陽射し浴びたり庭の草★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
紅葉散り渦をなしたる木立かな★★★

多田有花
来る冬を真正面に見て不動★★★
細き滝岩を下れる暮秋かな★★★
滑滝が岩を濡らして行く秋ぞ★★★

桑本栄太郎
雲奔り風の冷たき今朝の冬★★★
朝日さす照葉もみぢの在所かな★★★
コスモスの花の仕舞いや赤き茎 ★★★

11月6日(5名)

廣田洋一
土手道を下る階段紅葉且つ散る★★★
暮れ残る空に点灯秋深し★★★
立冬やしみじみ唄うアベマリア★★★

小口泰與
天からの賜わる雨や秋の畑★★★
山の辺の沼の落葉の限りなし★★★
水槽の草の揺れ居り秋目高★★★

多田有花
渓流のそば近くあり柿紅葉★★★
鮮やかに廃墟のタイル秋深し★★★
陽に風に芒吹かれるばかりなる★★★★

桑本栄太郎
こつ然と風の冷たき今朝の空★★★
合歓の実の風に乾ぶる高さかな★★★
蘆刈られ鳥の足あと二つ三つ★★★

弓削和人
拾う葉の一枚撰りて秋闌ける(原句)
拾う葉を一枚撰りて秋闌ける(正子添削)

身に入るや襟を正して裏通り(原句)
「身に入む(みにしむ)」は、季語なので、「身に入る」は無理な使い方です「身に沁む」とも書きます。秋も闌けるころから冷たさをしみじみ感じるようになり、秋が深まれば、一層その感じは強くなってくる。そういう感じをいうときに使います。(髙橋正子)
(髙橋正子)
身に入(し)むや襟を正して裏通り(正子添削)
菊人形瞳は宙(そら)へ隣り世へ★★★
11月5日(4名)

小口泰與
毬栗の落ちたる先の子犬かな★★★
強風に降りず降らずみ葡萄棚★★★
三尺の秋水与う文化の日★★★
※三尺の秋水:冴えわたった剣のこと。三尺は剣の標準の長さ。(髙橋正子)

多田有花
整然とひつじは風に吹かれおり★★★★
 ひつじ:漢字では穭と書く。稲を刈り取ったあとの株から芽生える新芽のこと。また、その田んぼを「穭田」という。(髙橋正子)

楓紅葉へ陽の傾きの早し★★★
冬隣る渓流に沿い歩きけり★★★

廣田洋一
朝な夕な掃き清めたり桜紅葉★★★
冷まじや湯気白々と露天の湯★★★★
  ※冷まじ(すさまじ、晩秋の季語)
窓の外光撒きつつ紅葉散る★★★

桑本栄太郎
はけ雲の空の青さや天高し★★★
乙訓は丘なる里ぞ柿すだれ★★★
せせらぎの里の辻なる石蕗の花★★★
11月4日(4名)
小口泰與
再びは生まれこぬ世や秋惜しむ★★★★
文机や秋の夜長の辞典にて★★★
堰堤を超ゆるが如し秋の雨★★★

廣田洋一
雨上がり清らに澄みし秋の空★★★
豪雨止み一安心の秋夕焼★★★★
澄みしそら木の葉舞い散る冬隣★★★

桑本栄太郎
朝冷えや午後より日差す乙訓郡★★★
代議士の選挙報告秋うらら★★★
午後よりの風の田道や冬隣り★★★

多田有花
公園に親子ふた組秋うらら★★★
青空を背負いて鳴けり尉鶲★★★
廃屋の庭に残りぬ萩の花★★★
11月3日(4名)
小口泰與
瓢箪と寝転ぶ子らや猫もじやれ★★★
絶壁の立塞がるや芋嵐★★★
稲雀逃げ去るやうに飛び立ちし★★★

桑本栄太郎
正倉院展人の賑わう文化の日★★★
嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに★★★★
どの風もなべて里へと暮の秋★★★

廣田洋一
文化の日純金入りの茶を喫す★★★
文化の日俳句手帳を新たにす★★★
身に入むや喪中挨拶受け取りぬ★★★

多田有花
橋脚を洗う濁流秋出水★★★
文化の日弾くやバッハのインヴェンション★★★
秋深し宇宙の動画を見ていたり★★★
11月2日(4名)
小口泰與
飛び出でし大砲岩より懸巣かな★★★★
点点と団栗落ちし沼の淵★★★
茸狩や腑に落ちぬ日の数多ある★★★

多田有花
澄む秋の手すりに集う雀たち★★★★
瞑想に浮かぶあれこれ夜長かな★★★
秋雨と思えぬほどの土砂降りに★★★

桑本栄太郎
冷まじや雨に明るき銀杏の樹★★★
雨風の最後のあがき野分荒れ★★★
断捨離の雨籠りとや白秋忌★★★

上島祥子
郵便の間に挟まり赤い羽根★★★★
送迎の車頼まれ白秋忌★★★
黄葉す若木の雌は雄に続き ★★★
11月1日(5名)
多田有花
珍しきEV十月の終わる★★★
水音を間近く聞けり貴船菊★★★★
親鸞像足下に咲きぬ槍鶏頭★★★

小口泰與
秋深し出荷の菓子の数数多★★★
夕暮れの沼を狭めし雁の群★★★
八方へ雑魚ひろごる秋の沼★★★

桑本栄太郎
神在りの月の出雲や海荒るる★★★★
色鳥と云うは小鳥の葉蔭かな★★★
半分はわれの手伝い栗ごはん★★★

廣田洋一
盥舟夫を引き寄せ天高し★★★★
紅葉散る枯れ池の底赤く染め★★★
錦木や向こうに見ゆる朱鷺番★★★

弓削和人
鶏頭のずしと雄々しく揺れ戻り★★★
行秋やジャズを求めて喫茶店★★★★
宵寒の土産のチョコの甘きかな ★★★