自由な投句箱/5月21日~5月31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/5月21日~5月31日

5月31日(1句)
★縁側を開けるや蜥蜴走りけり/小口泰與
縁側を開けるや蜥蜴訪えり(原句)

原句は縁側を開けると蜥蜴が入ってきたと言う意味ですが、肝心の「訪えり」が蜥蜴の描写に不足です。添削は人間の住まうところに蜥蜴がいきいきと棲息していることを詠んだ例です。(髙橋正子)
5月30日(1句)

★草笛を吹いて孫らを驚かす/小口泰與
草笛で「ふるさと」の曲を吹きながら歩いている人に里山公園で出会ったことがある。曲といい、場所といい、ふさわしさに驚いた。私の世代さえ驚くのであるから、お孫さんたちの驚きようも想像できる。(髙橋正子)

5月29日(1句)

★麦秋の備前平野の入日かな/桑本栄太郎
山陽線沿いは広い平野が少ないなかで、備前平野は広々としている。麦秋の平野に入日が沈む景色は郷愁を誘う。旅にあれば、なおさら。(髙橋正子)
5月28日(2句)

★紫陽花や雨の色にぞ染まりたる/廣田洋一
紫陽花は雨の季節に咲く花なので、雨に染められ、雨の色になったのだという。その感覚がいい。(髙橋正子)

★高速の橋脚映り田水張る/桑本栄太郎
高速道路は、田んぼであったところを貫いている。水が張られた田に巨大な橋脚だ逆さに映って、自然相手の農と現代都市の橋脚とが併存している景色もまれではない。(髙橋正子)

5月27日(1句)

★神坐す奥宮青嶺を仰ぎけり/多田有花
神聖なこと、いやます奥宮から、青嶺を仰ぐと、青嶺が神々しく思われる。(髙橋正子)

5月26日(1句)

★ありがたや章魚の卵と身を食す/多田有花
章魚の卵からはたくさんの子章魚が生まれるであろうが、その卵と、卵を孕んでいた親章魚の身を両方頂く行為に、食物をいだたく「ありがたさ」を意識させられる。章魚の卵は珍味であろうが、その裏には生物の犠牲もある。

5月25日(2句)

★虞美人草ひねもす風に揺られおり/廣田洋一
「虞美人草」はひなげしのこと。漱石の小説の題名や、中国の秦の劉邦に負けた項羽の愛人の虞美人と言う名前に忍ぶことができる。虞美人草は明るく風通しの良いところを好むので、ひねもす野に吹かれている光景をみることができる。軽やかな花の揺れは心和む風景だ。(髙橋正子)

★田染荘(たしのぶのしょう)棚田に水の入り初めし/多田有花
田染荘は、古代の頃から開発がなされ、平安時代には宇佐神宮の荘園「田染荘」として誕生以来、昔ながらの田園風景が今もなお色濃く残されているということだ。棚田に水が入り、いよいよ田植えとなる。棚田の美しい景観が見られることだろう。(髙橋正子)

5月24日(1句)

★空蝉のこの世にしかとしがみ付き/小口泰與
もとの句は「しがみ付にけり」だったが、「けり」の詠嘆が弱く描写に終わるので、自分の見方、感じ方として「しかと」を入れて添削した。
空蝉はこの世の無常を示す象徴とされることが多く、その空蝉が蝉殻となってもまだ執着して木にしっかりとしがみついているところに着目。これを見て人は何を思うであろうか。(髙橋正子)
5月23日(1句)

★若葉して明礬温泉硫黄の香/多田有花
明礬温泉は別府の温泉で湯の色が青いことで知られているようだ。温泉の硫黄の匂いと、温泉の色と、若葉の色が明礬温泉の景色となって印象付けられる。この句を読むと明礬温泉に入ってみたいと思うだろう。(髙橋正子)
5月22日(1句)

★青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ/川名ますみ
ヴィヴァルディを力強く弾いている少年が思い浮かぶ。青葉に降る雨は、これまでに成長した少年の演奏に陰影を与えている。(髙橋正子)
5月21日(2句)

★赤赤と強き朝日や麦畑/小口泰與
麦畑は最近少なくなっているが、泰與さんの住む群馬は小麦の産地なので、麦畑は近くに広がっているのだろう。赤々と力強い朝日が麦畑に昇り、いきいきとした一日が始まる。力強く、人を励ましてくれる光景がいい。(髙橋正子)

★十薬の跋扈せる庭匂いたち/廣田洋一
十薬の花は繁殖力が強いので、「跋扈」することもまれではない。洋一さんの庭にも十薬が生い茂り、匂いをあげている。夏と言う季節の生命力を嫌でも感じさせられる。そんな時の俳句がいい。(髙橋正子)

5月21日~5月31日

5月31日(4名)

小口泰與
蟇蛙ドラムを叩く声のせり★★★ 

縁側を開けるや蜥蜴訪えり(原句)
縁側を開けるや蜥蜴走りけり(正子添削)
原句は縁側を開けると蜥蜴が入ってきたと言う意味ですが、肝心の「訪えり」が蜥蜴の描写に不足です。添削は人間の住まうところに蜥蜴がいきいきと棲息していることを詠んだ例です。(髙橋正子)

勾玉と同じ曲がりの守宮かな★★★

多田有花
じゅうじゅうと鮪ステーキ夏きざす★★★
青嵐伊予の島影あらわにす★★★
甘夏ソフト豊後水道の青し★★★

廣田洋一
ざざと降りさっと上がりて夏の雨★★★
雨上がりふわと吹き来る風涼し★★★
苑涼し水浴びしたる雀どち★★★

桑本栄太郎
断水のままの能登とや五月尽★★★
曇りても天の明るき走り梅雨★★★
木々の枝の躍り明るく夏あらし★★★

5月30日(4名)

廣田洋一
額の花外縁の花紅くなり★★★
桜の実色濃くなりて落ちにけり★★★
ビルに沿い一列続く濃紫陽花★★★

多田有花
手作りの苺ケーキに迎えらる★★★
夏かぼすたっぷりもいでいただきぬ★★★
アマリリス咲く菩提寺に参拝す★★★

小口泰與
忽然と風の襲えり夜店かな★★★
大利根の波恐ろしや走り梅雨★★★
草笛を吹いて孫らを驚かす★★★★

桑本栄太郎
あじさいのいよよ蕾のふふみけり★★★
紫陽花や雨を待ち居て水色に★★★★
ぽつぽつと雨の気配や花南天★★★

5月29日(4名)

小口泰與
金雀枝や朝日彩る日の光★★★
山峡の鳥の起き伏し夏帽子★★★
我が庭のばらと起き伏しひと日くれ★★★

廣田洋一
曇天をぱっと明るく花胡瓜★★★★
唐黍の花つんつんと天を指し★★★
枝下すのこぎりの音響きけり★★★

多田有花
デザートをいくつ並べて夏の朝★★★
巨大こけし寝かせ大分駅の夏★★★
ザビエルに宗麟公に青嵐★★★

桑本栄太郎
山影の映る田水や麦の秋★★★
西日受け城郭映ゆる福山城★★★
麦秋の備前平野の入日かな★★★★

5月28日(5名)

小口泰與
翡翠の魚とらふる長き嘴★★★
一輪のほのと咲きたる庭のばら★★★
老鶯のうらうら鳴けり山の池★★★

多田有花
大分に来れば一面麦の秋★★★★
旧友と話は尽きぬ夏の夕★★★
明早し別府湾から陽が昇る★★★

廣田洋一
紫陽花や雨の色にぞ染まりたる★★★★
花南天道にはみ出し揺れており★★★
縁側に木椅子を寄せて簾かな★★★

桑本栄太郎
<新幹線、山口への車窓風景>
高速の橋脚映り田水張る★★★★
吉井川の遥か上流夏かすみ★★★
麦秋の備前平野の黄金なる★★★

弓削和人
隣家よりとりこむ音す走り梅雨★★★
村らくは雨戸で断てり五月闇★★★
河骨をついの棲み家に鯉の鰭★★★

5月27日(4名)
小口泰與
鈴鳴らすような鳥声初夏の森★★★
老鶯の池を挟みて鳴き交わす★★★
夏めくや赤城のすそ野うまし山★★★

廣田洋一
新人を止める壁なし五月場所★★★
夾竹桃燃えたつ如く街の角★★★
バナナとチーズを食べて朝餉かな★★★

多田有花
宇佐神宮青葉若葉に朱の鳥居★★★
花嫁に赤き唐傘夏はじめ★★★
神坐す奥宮青嶺を仰ぎけり★★★★

桑本栄太郎
<新幹線、京都から山口への旅の車窓>
幹線”のぞみ”は西へ風薫る★★★★
緑蔭の駅のホームや新神戸★★★
みどりさす古墳の森や岡山の★★★

5月26日(3名)

小口泰與
翡翠の羽の手入れや木の枝に★★★
老鶯や木木を揺さぶる山の風★★★
倒木の枝へ野鳥や初夏の丘★★★

多田有花
夏料理韃靼そば茶に始まりぬ★★★
ありがたや章魚の卵と身を食す★★★
夏料理蕎麦のコースは蕎麦で締め★★★

廣田洋一
中興塔の如来を仰ぎ風薫る★★★
釈迦像の燦然として薄暑かな★★★
虚子句碑や夏日の燦と法の庭★★★

5月25日(3名)

小口泰與
榛名湖の器の中のつばくらめ★★★
樹のうつろ中よりいづる蜥蜴かな★★★
産土の風に育む青田かな(原句)
「風に育む」は主語が何になるのでしょうか。本来なら「風に育まる」となるところではないでしょうか。(髙橋正子)

産土の風の育む青田かな(正子添削①)
産土の風に育てる青田かな(正子添削②)

廣田洋一
草引くや小さき花を残したり★★★
虞美人草ひねもす風に揺られおり★★★★
雛罌粟や人を見送る線路際★★★

多田有花
田染荘(たしのぶのしょう)棚田に水の入り初めし★★★★
薫風に吹かれ蕎麦屋の門に立つ★★★
涼しさやふたり切り盛りする蕎麦屋★★★★

5月24日(3名)

廣田洋一
蚕豆や一畝青く染めており★★★
蚕豆のどんぶり一つ分け合いし★★★
豆飯の緑くっきり夕間暮★★★

多田有花
海地獄熱帯睡蓮咲かせおり★★★
はつなつの日差したたえて海地獄★★★
夏浅し龍巻地獄閉じ込めて★★★

小口泰與
翡翠やこの現し世を飲み込みし★★★
翡翠の現の嘴の長きかな★★★
空蝉のこの世にしがみ付にけり(原句)
空蝉のこの世にしかとしがみ付き(正子添削)

5月23日(3名)

小口泰與
打ち返す畑あり麦の青青と★★★
うちつけに鮎見えている岩の間に★★★
川蝉の渦巻く沼へまっしぐら★★★

多田有花
初夏の湯に明石の人と語り合う★★★
若葉して明礬温泉硫黄の香★★★★
地獄蒸しプリンを食す若葉風★★★

桑本栄太郎
木蔭道たどり歩めり夏日かな★★★
茅花の穂絮となりたる流し吹く★★★

夏場所や小兵押し出す俵際(原句)
夏場所や小兵の押し出す俵際(正子添削)
助詞の省略はよくあることですが、俳句のように短いために、意味が紛らわしくなるときは、助詞の省略は避けた方がいいと思います。(髙橋正子)

5月22日(5名)

小口泰與
夏鷹や風を従え鳥狙う★★★
根係の浮子の乱舞や夏の雲★★★
青蘆や風に育む番鳥★★★

多田有花
鮎並や金の器に入りて来る★★★
はつ夏の鯛載る海の色の皿★★★
夏野菜添えし豊後牛ロースト★★★

廣田洋一
湘南と熱海がしこ名五月場所★★★
精彩を放つ幕尻五月場所★★★
太陽の育てし黄金麦の秋★★★★

川名ますみ
母の友梅花空木を提げ来たる★★★
青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ★★★★
緑さす友の生徒のコンクール★★★

桑本栄太郎
川縁りの地道を行けば風薫る★★★
風に触れじゃらじゃら鳴りぬ小判草★★★
赤白の箱根卯木や青き空★★★

5月21日(4名)

小口泰與
赤赤と強き朝日や麦畑★★★★
岩のぼる強き一歩の亀の子よ★★★
川蝉や風のうかがう山の湖★★★

廣田洋一
夏めくや木の葉を透かす日の光★★★
十薬の跋扈せる庭匂いたち★★★★
どくだみの十字点々狭庭かな★★★

多田有花
そら豆を入れし豆腐のうすみどり★★★
順才とすだちのジュレが前菜に★★★
ぶり鮪ひらめのお造り夏料理★★★

桑本栄太郎
山法師の花の気勢や木の上に★★★
葉の影の躍り狂うよ青あらし★★★
夕日受け葉の透き通る若葉かな★★★

自由な投句箱/5月11日~5月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
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今日の秀句/5月11日~5月20日

5月20日(1句)
★緑さすやたら編みなる竹の壁/多田有花
「やたら編み」という編み方で作られた壁は風流なものだが、複雑に光を返し、自然の緑の木々のなかで静かな雰囲気を醸し出している。(髙橋正子)

5月19日(1句)

★外つ人の服の気ままや若葉寒む/桑本栄太郎
若葉のころは肌寒さを覚える日がある。外国の人たちは季節を意識するよりも、もっと緩やかに自由に服装を選んでいる。観光地の京都の初夏の風景が眩しい。(髙橋正子)
5月18日(1句)

★玻璃の皿烏賊刺盛りて昼餉かな/廣田洋一
ガラスの皿に白く透き通るような烏賊の刺身は目にも涼やか。旬の食材を季節にふさわしい皿に盛り付け、見た目もおいしさ同時に味わおうというもの。(髙橋正子)
5月17日(1句)

★遠峰の雲を奔らせ青嵐/桑本栄太郎
爽快ですがすがしい印象の景色。遠くの峰を見ると雲がよく奔っている。空の雲は青葉を吹く強い風が奔らせているのだ。(髙橋正子)
5月16日(1句)

★マーガレット遠くに見ゆる青き海/廣田洋一
遠くに青い海が見え、白く可憐なマーガレットが咲いている景色は、清潔感があって、初夏のさわやかさが読みとれる。(髙橋正子)
5月15日

※該当句無し
5月14日(1句)

★青空や無風無音に夏来る/弓削和人
ただ青空だけが広がる、風も音もない時。空からの日差しの明るさを見れば確かに夏が来ている。(髙橋正子)
5月13日(1句)

★サイダーや雲の湧き立つ浅間山/小口泰與
浅間山には実際「雲が湧く」現象がみられる。2500以上ある浅間山の2000mあたりの山の斜面に温かい空気があたり上昇し、冷えて雲になる現象がある。さわやかな味のサイダーの透明感と雲を湧かせる浅間山が読み手に爽快感をもたらせてくれる。(髙橋正子)
5月12日(1句)

★母の日やわが胸に白きカーネーション/多田有花
母の日の白いカーネーションは、亡くなった母に捧げる花。白いカーネーションを贈ることについて最近はあまり関心がもたれないようだが、母を亡くした人は多いはず。胸に挿しひとり母を忍ぶ日となった有花さんだ。(髙橋正子)
5月11日(1句)

★ふるさとの海懐かしき卯波かな/桑本栄太郎
この俳句は、「ふるさとの海/懐かしき卯波かな」のように切れている。ふるさとの海を思い起こせば、穏やかな卯波が懐かしいというのだ。ふるさとを忍ぶ、心穏やかななかにもせつない心情が伝わってくる。(髙橋正子)

5月11日~5月20日

5月20日(4名)

小口泰與
浮草を挟みし嘴に魚かな★★★
赤赤と鋼の朝日初夏の沼★★★★
老鶯や沼の水輪の数多にて★★★

廣田洋一
ちょろちょろと蛇の寄り来る草の道★★★
目高捕ると手網持ちたる女の子★★★
鯉幟取り払われて夏めきぬ★★★

多田有花
青空と新緑のほか何も無し★★★
緑さすやたら編みなる竹の壁★★★★
旅人を迎える庭の緑かな★★★

桑本栄太郎
<阪急京都線西京極駅>
緑蔭の駅のホームに西京極★★★
<河原町四条大橋界隈>
団子食ぶきもの姿や京の夏★★★
緑蔭の風吹きぬける高瀬川★★★
5月19日(4名)

小口泰與
来ぬ鳥を待ちてうまいや初夏の沼★★★
川蝉や風無き沼の水輪にて★★★
忽然と静寂を破る初夏の沼★★★

多田有花
夏はじめ黒を基調の珈琲屋★★★
五月の由布院盆地を見晴らしゆく★★★
紺碧の空と新緑豊後富士★★★

桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
外つ人の服の気ままや若葉寒む★★★★
みどりさす街中行くや雨の京★★★
せせらぎの木下闇なる高瀬川★★★

廣田洋一
糸取器盥の繭を踊らせて★★★
公園の枝払う音ひとしきり★★★
今朝もまた筍飯の残りかな★★★
5月18日(4名)

多田有花
水底に卯月の光錦鯉★★★
通りより入れば薄暑の木が囲む★★★
黄菖蒲を水面に映し金鱗湖★★★

弓削和人
あざやかな浮葉のほかは流れつつ★★★★
喧騒の六角ぴんと鉄線花★★★
湖の果画舫は響き更衣★★★

廣田洋一
夏めくや「冷やし中華」の幟揺れ★★★
天蚕の糸吐きこもる繭白し★★★
玻璃の皿烏賊刺盛りて昼餉かな★★★★

桑本栄太郎
緑蔭の梢の空は青きかな★★★
葉の影の揺れる小径や木下闇★★★
すいすいと筋の白さや青すすき★★★
5月17日(4名)

小口泰與
目に映る利根の河原の初夏の色★★★
初夏の沼亀のいできて動かざる★★★
ほんわかと眠気を誘う初夏の森★★★

多田有花
ゆふいんの森や五月の森をゆく★★★
とり天を食ぶ湯布院の浅き夏★★★
由布岳に雲一つなき五月空★★★★

廣田洋一
園児らのかけ回る声夏めけり★★★
枝下す音の絶えざる法の庭★★★
紫蘭揺れ水音絶えぬ法の池★★★

桑本栄太郎
ひらひらと白き葉裏や風薫る★★★
遠峰の雲奔りゆく青あらし(原句)
この句を生き生きさせる(動きがでる)ように、添削しました。(髙橋正子)
遠峰の雲を奔らせ青嵐(正子添削)
夕暮れの買物道や忍冬花★★★
5月16日(4名)

小口泰與
狙いたる魚を川蝉矢のごとし★★★
夏帽子朝日をはじく池の面★★★
敷石を渡る鴉へ西日かな★★★
  
桑本栄太郎
木々の枝の躍り止まずよ青あらし★★★
吸い込みて胸の中までみどりさす★★★
今朝見ればうすき紅さす月見草★★★

廣田洋一
マーガレット遠くに見ゆる青き海★★★★
夏めくや髪を切りたる女の子★★★
夏めくやショートパンツの外国人★★★

弓削和人
葛餅や匙のさきまで葛浸る★★★
猫の眼の細く細くと五月晴★★★
五月鯉山は尾ひれに隠れおり★★★
5月15日(3名)
小口泰與
田畑へい行くも仕事炎天下★★★
翡翠のいつもの枝や天は青★★★
若楓楽し事の多かりし★★★

桑本栄太郎
つやつやと穂が揺れ茅花流し吹く★★★
べんがらの板塀道や柿の花★★★
山影の映る植田や大原野★★★

弓削和人
風薫る結婚式のリハーサル★★★
短夜や目覚めて寝入る夢おぼろ★★★
明け易し市乳温めず睡りおり★★★
5月14日(4名)

小口泰與
釣り上げし数多の鮎を訝しむ★★★
今更のすそ野の長き夏赤城★★★
鳥飛ぶや森はいよよ初夏の色★★★

桑本栄太郎
青梅の葉蔭に隠れありにけり★★★
風薫る木蔭の道やひと休み★★★
立ち止まり暫し嗅ぎ居り忍冬花★★★

廣田洋一
締鯖の夜も青々と冷酒酌む★★★
捩れ花素直であれと閻魔王★★★
マーガレット恋占いの好きな人★★★

弓削和人
青空や無風無音に夏来る★★★★
里若葉風を待たせる配達夫★★★
玉砂利を洗い清めし薄暑来★★★
5月13日(4名)

小口泰與
初夏の森数多野鳥の名を知らず★★★
サイダーや雲の湧き立つ浅間山★★★★
夕焼の利根源流の湯元かな★★★

廣田洋一
鯖寿司の鯖てらてらと夕餉かな★★★★
捩花の規則正しき捩れかな★★★
さつき咲く今年は白く咲きにけり★★★

多田有花
青空にオープンカーの聖五月★★★
夏野菜入れたっぷりのカレーかな★★★
新緑に濃さを加えて雨あがる★★★

桑本栄太郎
雨に濡れ箱根卯木の濃く淡く★★★
山法師雨に気勢の白さかな★★★
ぽたぽたと軒の滴や走り梅雨★★★
5月12日(4名)

小口泰與
あけぼのの数多の鳥や夏の沼★★★
源流の流れ涼しき山の木木★★★
妙義峰の巌奇岩や雲の峰★★★
景色はとても魅力的ですが、具体的な表現があると、さらに共感できる句になると思います。(髙橋正子)

多田有花
冷奴今日より昼餉の一品に★★★
巣から顔のぞかせている夏つばめ★★★
母の日やわが胸に白きカーネーション★★★★

桑本栄太郎
鴨川に早やも用意や川床座敷★★★
銀輪の鴨川べりや風薫る★★★
せせらぎの木下闇なり高瀬川★★★

廣田洋一
締鯖に似合う冷酒を酌みにけり★★★
「冷酒」の具体的な表現(グラスや杯の様子など見たまま、感じたまま)があるとさらに良い句になると思います。(髙橋正子)
雅子妃の薔薇交番を飾りをり★★★
草取女横に袋を積上げて★★★
5月11日(4名)
廣田洋一
公園に白きテントや子らの声★★★
雨上がり赤み増したる桜の実★★★
捩れ花とて行く先は青き空★★★★

小口泰與
寝ねがての竿の手入れや鮎の宿★★★★
渓谷の岩打つ流れつばくらめ★★★
夏帽をかぶりし人もあらざりし★★★

多田有花
天清和フォルテピアノの軽やかに★★★
信号待ち薔薇美しき交差点★★★
夏空の雲なきをゆく航空機★★★

桑本栄太郎
木々の枝の躍り歓喜や風薫る★★★
母の日の母は無けれど母慕う★★★
ふるさとの海懐かしき卯波かな★★★★

自由な投句箱/5月1日~5月10日

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/5月1日~5月10日

5月10日(1句)

★茄子紺を残し鮮やか茄子料理/多田有花
茄子の紺色は「茄子紺」と呼ばれ、美しい。その色を残して料理されれば、それは茄子本来の味が残って滋味深い味わいとなる。(髙橋正子)
★金雀枝や無住の庭の夕明かり/廣田洋一
金雀枝の花の黄色は印象に残るはっきりした黄色。さびしい無住の庭には、却ってその強い黄色がちょうどよく、夕明かりとなって、庭に情趣を生んでいる。(髙橋正子)
5月9日(1句)

★昨日より軽めに羽織る夏始め/弓削和人
夏に向かうとき、日ごと気温が上がっていくことが多く、昨日よりも軽めに羽織って心地良い。あっさりとした詠みぶりが、夏の始めの明るく軽やかな気持ちに符合している。(髙橋正子)

5月8日(1句)

★初夏の朝は絵本をめくるごと/小口泰與
初夏の朝の目覚めるような新しさ、爽やかさを感じるままに「絵本をめくるごと」率直に表現したのがいい。(髙橋正子)
5月7日(1句)

★サーファーの乗れぬ高さや卯波立つ/廣田洋一
大きくうねる波を喜ぶサーファーではあるが、その波が大きすぎれば、乗り切れない。低気圧の影響などで卯波といえど、手に負えない波となって、サーファーを戸惑わせる。卯波が美しい言葉だけに、戸惑いが分かる。(髙橋正子)

5月6日(1句)

★こどもの日子らの自転車軽快に/多田有花
こどもの日はとくに、子どもたちが元気であるように思う。自転車もすいすしと軽快に、楽しそうに漕いでいる。(髙橋正子)
5月5日(1句)

★両手もて赤児水飲む立夏かな/桑本栄太郎
立夏の今日は気温があがり、暑くなった。戸外で遊ぶ子供たちはかき氷をおいしそうに食べる光景も見られた。赤子も喉が渇いているのだろう。水の入った容器を両手で抱え、ごくごくと水を飲んでいる。「両手もて」は赤子らしくてたくましい。(髙橋正子)
5月4日(1句)

★すず鳴らし八十八夜の家路かな/弓削和人
持ち物に鈴をつけているのだろう。八十八夜の家路に鈴のきれいな音が鳴り響いて、夏がちかづく開放感と心楽しさがうかがえる句。(最近は熊の用心のためにすずをつけていることもあって、開放感とはいかないかもしれないが、それは、また別の鑑賞となる。)(髙橋正子)

5月3日(1句)

★つつじ咲く街路を下校の少年ら/多田有花
燃えるように咲くつつじの街の道を少年たちが帰っていく。健やかな少年たちと燃えるつつじの取り合わせが眩しい光景となっているのがいい。(髙橋正子)

5月2日(1句)

★雨のまま八十八夜は冷えており/多田有花
今年の八十八夜は、雨がふって、それに実際、気温も低かった。「八十八夜は冷えており」に抒情の深さを感じる。(髙橋正子)

5月1日(1句)

★一天を押し広げたる帰雁かな/小口泰與
帰る雁は、列をなして、広がって北へ飛んでいく。大群をなして帰る雁に一抹のさびしさを思いながら、一天を押し広げるかのような帰雁の力強さに自然界に生きものの姿を見る。(髙橋正子)

5月1日~5月10日

5月10日(5名)

小口泰與
沼の藻のぎいと曲がりて緑雨かな★★★
それぞれの声の主張や夏の森★★★
青空に映ゆアカシアの花匂う★★★

多田有花
遠山は日差しておりぬ青葉冷★★★
茄子紺を残し鮮やか茄子料理★★★★
踊子草踊りゆくかな土手の道★★★

弓削和人
薫風や陽光なれど汗の引く★★★
渚過ぎペダルの軽し風薫る★★★
夏に入るサイクリングの憩いかな★★★

桑本栄太郎
薫風の木漏れ日伝うバス通り★★★
新緑の嶺より里へ送電線★★★
薔薇咲いて団地の窓を被いけり★★★

廣田洋一
金雀枝や無住の庭の夕明かり★★★★
始まりはビール一杯宴かな★★★
さやさやと風の吹き抜け紫蘭咲く★★★
5月9日(5名)

小口泰與
夏めくや水面のはじく日の光★★★
すててこに成りて昼寝や大広間★★★
上州は麦秋誇り山誇り★★★

桑本栄太郎
美はしき山膚なりぬ五月山★★★
こでまりの花の仕舞いや錆色に★★★
木々の枝の風に躍りぬ新樹冷ゆ★★★

多田有花
夕刻は晴れてきたるよ青葉冷★★★
膝掛で机に向かう青葉冷★★★
はつ夏や思い立ったら片付ける★★★

廣田洋一
生垣の咲き溢れたるさつきかな★★★
白々と朝日を浴びて月見草★★★★
金雀枝や咲き枝垂れたる自動車道★★★

弓削和人
昨日より軽めに羽織る夏始め★★★★
童らの自転車残して五月鯉★★★
傘ささずいっときのこと若葉雨 ★★★
5月8日(4名)

小口泰與
沼の朝湖面にぎわす燕かな★★★
初夏の朝は絵本をめくるごと★★★★
ぼうたんの花の崩れし雨の中★★★

廣田洋一
黄の蝶や姿を変えし金雀枝か★★★
自転車で通学の子や桜の実★★★

思いきり弱気を払い風薫る(原句)
思いきり弱気払えば風薫る(正子添削)

多田有花
明早し街眠れるに白む空★★★★
しゃが群れて咲く大杉の根元かな★★★
目の前をくるり旋回夏燕★★★

桑本栄太郎
消息の取れぬ旧友新樹冷ゆ★★★
さざ波の途絶えなきなる代田かな(原句)
「途絶えなきなる」の表現が、もってまわって感じられますので、直しました。(髙橋正子)
さざ波の絶えず生まるる代田かな (正子添削)

若葉寒む一木枝の撓りけり★★★
5月7日(5名)

小口泰與
満緑や沼を震わす蟇蛙★★★
あけぼのの鳥語数多や初夏の森★★★
うとうとと静寂の森や閑古鳥★★★

多田有花
はつなつの雨音激し夜を眠る★★★★
年毎の新緑開山堂包み★★★
新しき趣味得てこの夏の楽し★★★

廣田洋一
門前の金雀枝明かり客迎え★★★

サーファーも乗れぬ高さや卯波立つ(原句)
サーファーの乗れぬ高さや卯波立つ(正子添削)

雨に濡れ新緑いよよ瑞々し★★★

桑本栄太郎
ジャスミンの紅のつぼみや小雨降る★★★
こつ然と蛙鳴き初む雨予報★★★
どの枝も揺るるみどりや夏は来ぬ★★★★

弓削和人
濡れそぼつ葉脈青し夏来る★★★
漕ぎいでしスワンボートや初夏の湖★★★
明日に向け水天一碧夏来る★★★
5月6日(4名)

小口泰與
こきこきこきと枝伐るや四十雀★★★
透き通る野鳥の声や花は葉に★★★★
水田の畦を越えゆく雨蛙★★★

廣田洋一
筍の白き肌見せ売られけり★★★★
江の島のどっしり座り卯波立つ★★★
金雀枝の黄金輝く日の光★★★

多田有花
こどもの日子らの自転車軽快に★★★★
青空へ飛び出てゆくよ夏つばめ★★★★
五月来る弾き初むバッハのインヴェンション★★★

桑本栄太郎
携帯の雨の予報や忍冬花★★★
傘雨忌の天に咲きたる楡の花★★★
木斛の花の夕べや雨となる★★★
5月5日(5名)

小口泰與
おちこちや鳥と蛙の声合わせ★★★
囀りや木の葉舞い落つ丘の径★★★
晩春の森は賑やか鳥盛ん★★★

廣田洋一
電話にてごきげんようとこどもの日★★★
子供の日お面かぶりの稚児来迎★★★
二十五の菩薩来迎風薫る★★★

多田有花
静けさや快晴連れて今朝の夏★★★
風強しこいのぼり高く泳ぐべし★★★
並木みな立夏の風に揺れており★★★

桑本栄太郎
亡き父母の面影偲ぶ子供の日★★★
両手もて赤児水飲む立夏かな★★★★
堰水の遥か眩しく奥比叡★★★

弓削和人
鶯のあちやこちやの朝の軒★★★
うぐいすの谷渡りいる石清水★★★
うぐいすの初音の敲く村戸かな★★★
 
5月4日(5名)
廣田洋一
アザレアやもっこり咲きし白き花★★★
アザレアの垣根鮮やか日の光★★★
木下の木椅子に座りみどりの日★★★★

小口泰與
なだらかな長きすそ野や長閑なる★★★
引鴨や妙義の巌荒荒し★★★
春の雨丘の木木の若若し★★★

多田有花
春日遅々広場に響く子らの声★★★
AIと対話している暮の春★★★
泥咥え腰赤燕飛び交いぬ★★★

桑本栄太郎
緑さす京西山の濃く淡く★★★
新緑の美味しそうなる在所かな★★★
来てみればなんじゃもんじゃの花盛り★★★

弓削和人
すず鳴らし八十八夜の家路かな★★★★
逃げ水のさきの逃げ水白き道★★★★
惜春やウグイの銀に影慕い★★★
「影慕い」が気になります。(髙橋正子)
5月3日(4名)
小口泰與
いとけなき菊戴の声すみて★★★
糸遊を追いかけ行くや吾子もまた★★★
妻帰るや否やきぎすを見たと言う★★★

廣田洋一
憲法記念日改めて読む第9条★★★
道の端一つ残れる八重桜★★★
窓を打つ木の葉の音や夏隣り★★★

多田有花
つつじ咲く街路を下校の少年ら★★★★
遅日かな横断歩道の点滅に★★★
憲法記念日二十五条を確かめる★★★

桑本栄太郎
踏みしだく道の木蔭や春落葉★★★
枝の影揺れるを踏みて木蔭行く★★★
花槐憂いの白の垂れにけり★★★
5月2日(5名)

小口泰與
満緑の渓に出湯と巡り合い★★★
万緑(ばんりょく)は草田男が初めて使って季語となりましたが、「満緑」は季語として十分とは言えません。(髙橋正子)

いとけなき小鮎は渓に留まりし★★★
利根川のいとど濁りて帰る雁★★★

廣田洋一
筍の頭剥かれて売られけり★★★
筍の一山積まれ無人店★★★
春の山弱音こらえて登りけり★★★

多田有花
雨のまま八十八夜は冷えており★★★★
夏隣る朝の光の明るさよ★★★
うららかや老人クラブへ講演に★★★

弓削和人
恐山嗄れたる風の風車★★★
鳥帰る宇曽利湖ひそと青みたり★★★
真白なる南部片富士若みどり★★★★
「若みどり」は、松の新芽のことですが、句にリアリティをもたせるために「松の芯」、「緑立つ」などの季語も考えてみてはいかがでしょうか。(髙橋正子)

桑本栄太郎
ぱたぱたと風の甍や鯉のぼり(原句)
「や」は切字で、そこでいったん意味が切れます。「ぱたぱた」は甍を修飾しますので、「甍」が「ぱたぱた」しているのでしょうか。(髙橋正子)

艶ややかに美味しそうなり柿若葉★★★
じゃが芋の畝に花咲く大原野★★★
5月1日(4名)

小口泰與
桜しべ山道紅に染めにけり★★★
早咲きの春の牡丹の微笑みし★★★
一天を押し広げたる帰雁かな★★★★

廣田洋一
風を待ち横になりたる鯉幟★★★
公園の隅々青く草若葉★★★
雨後の樹の青々揺れて夏隣★★★★

多田有花
目覚めれば暁の光雉の声★★★
丁寧に大きく書けり深き春★★★
かきかたの練習八十八夜かな★★★

桑本栄太郎
メーデーの雨の代々木の彼の日かな★★★
雨に濡れ茂みにひそと著莪の花★★★
美味しそうな木々の緑や五月来る★★★