6月29日(金)

★紫陽花を剪るに真青き匂いたち  正子
梅雨の頃、小さい多数の四片の花を、毬状に群がり咲かせ、花弁と見えるものは萼で、花期が長く白、淡緑、碧、紫、淡紅と日を経るに従って花の色が変化する美しい花を剪って花瓶にさした紫陽花の素晴らしい景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
蛍飛ぶ後ろ大きな山の闇/藤田洋子
大きな山を後ろに闇を乱舞する蛍の火。山間の清流を舞う蛍火の見事さを「山の闇」で的確に表現した。(高橋正子) じゃがいもの花や赤城は靄の中/小口泰與
雄々しい赤城の山も靄の中に消え、薄紫のじゃがいもの花が優しく咲く。じゃがいもの花が咲く頃は、雨の後など靄がかかりやすい。季節がよく捉えられている。(高橋正子)

○夏萩

[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]

★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
  東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子

 萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。

 俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
 ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月28日(木)

★透き通るバケツにあふる朝の百合  正子
バケツがすきとおっているのではなく、水がすきとおっていると感じました。
その朝のすきとおった水に溢れんばかりの百合の花は、すっきりとした気分にさせてくれたことでしょう。(高橋秀之)

○今日の俳句
百円を握り園児はアイス買う/高橋秀之
暑い日には、アイスが何よりのたのしみな子どもたち。とくに園児は買い物が自分で出来る喜びも加わるので、アイスを手にした満足感はたかい。嬉しそうな園児の顔が浮かぶ。(高橋正子)

●今日の俳句の園児は、今は長男大学1回生、次男高校生、三男中学生。三人とも今も俳句を作っている。俳歴は、ちょっと作って有名になった俳句甲子園俳人より長い。

今日も風が強い。何の風?

はやぶさ2が小惑星のリュウグウに30億キロを飛行した後接近したという。天文学的数字とはよく言うが、軌道に乗せる計算など、距離が億倍になれば、もし誤差がでれば億倍になるのか、いつも計算は大丈夫かとか、修正はうまくいったのだろうか、とか、、気になってしょうがない。こういうことが気になるから、良い句ができないのか、とか。

夏雲にクレーン立ち伸ぶ午前九時 正子
朝顔の今朝の空が立っている   正子

○青田

[青田/横浜市緑区北八朔]

★青田中信濃の踏切唄ふごとし/大串 章
★青田風チェンジのときも賑やかに/中田尚子
★千枚の青田 渚になだれ入る/佐藤春夫
★選挙カー連呼せず過ぐ青田道/日下徳一
★川面吹き青田吹き風袖にみつ/平塚らいてう
★石斧出て峡の青田の浮上せり/石井野洲子

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月27日(水)

★松葉牡丹のその色明るし子が摘みぬ  正子
膝をかがめ、幼き子が松葉牡丹の一番明るい花色を手折っている。傍でお母さんが優しい眼差しで、見守られています。(祝恵子)

○今日の俳句
植田には水の出入りの音つづく/祝恵子
植田には、いつも水があるが、入る水と、出る水とが静かに動いている。その出入口には静かな水音が絶えない。(高橋正子)

●晴れ。風が強い。マンション建設中のクレーンが倒れはしないかと、とっさに倒れそうな位置を想像。
一鉢だけのカサブランカがもう少しで開きそう。これも一鉢だけのこぼれ種の朝顔に支柱。

朝顔に支柱を風が強く吹き 正子
 
○ハイビスカス(仏桑華)

[ハイビスカス/横浜日吉本町]

★仏桑華被弾残塁かくれなし/藤田湘子
★けふの暑さ思ふ朝戸出の仏桑花/林原耒井
★激しくて一日紅の仏桑花/文挟夫佐恵
★仏桑花咲けば虜囚の日の遠き/多賀谷栄一
★仏桑花爆心に咲き喪の季節/下村ひろし
★口笛は幼くかなし仏桑花/塚原麦生
★海の紺ゆるび来たりし仏桑花/清崎敏郎
★島人の血はかくも濃し仏桑花/青柳志解樹
★仏桑花真紅の声を挙げて基地/山田みづえ
★仏桑花咲く島に来る終戦日/北沢瑞史
★仏桑花供華としあふれ自決の碑/岩鼻十三女
★窓際にハイビスカスの陽射し恋ふ/山元重男
★ハイビスカスばかり働き者ばかり/本田静江

 ハイビスカスはフラダンスを踊る人が髪に飾っている花として知った。未婚の女性と既婚の女性では、花を付ける位置が違うと聞いたことがある。アロハシャツにも描かれなじみとなっている。ハワイの州花となってハワイを代表する花であるが、沖縄にも自生していると聞く。おおらかで、明るく、穏やかな南国のイメージをまとっている。南国の楽園の花とイメージできる一方で、人知れぬかなしみをまとった花である。夏になると、ハイビスカスの鉢を買いたくなる。5,6年前購入したものがまだ健在であるが、肥料が足りないせいか、日差しが足りないせいか、真っ赤だった色が薄くなってきた。夏は、パッと真っ赤に咲かせたいと思う。
 
★街空の青にも開きハイビスカス/高橋正子

 ハイビスカスは、アオイ科フヨウ属の常緑低木で、学名は Hibiscus cv.(属の総称)。英名は Hibiscus。広義では、アオイ目アオイ科フヨウ属(Hibiscus)のことで、また、そこに含まれる植物の総称だが、日本では、そのなかでも熱帯および亜熱帯性のいくつかの種がとくに「ハイビスカス」と呼ばれ、南国のイメージをまとった植物として広く親しまれている。園芸用・観賞用としていくつかの種が「ハイビスカス」として流通する。その代表的なものはブッソウゲ(仏桑華、Hibiscus rosa-sinensis)である。ハワイの州花として知られる熱帯花木で、「ふよう」や「むくげ」も同じ仲間だが、ふつうは「ハワイアンハイビスカス」といわれる交配品種群をさす。和名の「ぶっそうげ(仏桑華)」は、葉が「くわ(桑)」に似ているからかもしれない。長く突き出た雌しべが特徴。「ハイビスカスティー」に用いられる花は、通常、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)と呼ばれる別種のものである。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月26日(火)

font size=”3″>★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子
先日梅酒を漬けたばかりです。ホワイトリカーがないとすれば、梅のシロップ作りでしょうか。いづれにしても漬けて透き通った中身の青梅と氷砂糖のビンを見て、満足ですね。(祝恵子)

○今日の俳句
ピーマンの分厚く光るを収穫す/祝恵子
よくそだったピーマンの質感をよく捉えている。「分厚く」に納得。(高橋正子)

○繍線菊(しもつけ)

[しもつけ/横浜日吉本町]

★しもつけを地に並べけり植木売/松瀬青々
★繍線菊やあの世へ詫びにゆくつもり/古舘曹人
★しもつけの花を小雨にぬれて折る/成瀬政俊
★しもつけに肩ふれらるる家の角/岡田博允
★繍線菊やえんぴつ書きの母の文/山内八千代

しもつけは、近くの公団の植栽にある。白と赤、それに源平と呼ばれる紅白が混じったもの。泡のような小粒の蕾が集まっているのだが、それが弾けて可憐な花となる。花だけでなく、葉も魅力がある。花も葉もおしゃれな感じがする。こでまりや、ゆきやなぎの仲間なので、茎などはよく似ている。部屋に活けてみたい花だ。白がいいか、赤がいいか。どちらも欲しい。この花だけよりも、なにか他のものと合わせれば、もっといい花となる。

★しもつけの紅花備前に活けてみし/高橋正子

シモツケ(学名:Spiraea japonica)は、バラ科シモツケ属の落葉低木。漢名「繍線花」があてられる。別名、キシモツケ(木下野)とも呼ばれる。アジア原産地で、北海道から九州にかけての日本各地、朝鮮および中国の山野に自生する。成木の樹高は1mほどであり、初夏に小花(集合花)が傘状に群がり、淡紅色又は白色の五弁の花を沢山つける。秋には紅葉する。古くから庭木として親しまれてきた。和名は下野国に産したことに由来するという。同じシモツケ属の仲間にはコデマリ、ユキヤナギがある。 シモツケは富士山にも咲いている。寒さに強く、日当たりを好む。シモツケ(バラ科)花言葉は、いつかわかる真実。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月25日(月)


★ハム削ぎ切り新玉葱の白を載せ  正子
うすく切ったハムに、白い新玉葱をこれも薄く切って載せ、ハリハリとかじる。涼しさとその食感が同時に味わえる気が致します。この時季の季節感に充ち溢れた御句と思います。(河野啓一)

○今日の俳句
黒潮の豊かに寄せて青岬/河野啓一
「黒潮」と「青岬」の取り合わせが絵画的で印象深い。黒潮寄せる、緑滴る岬。涼しさと強さをもった景色だ。(高橋正子)

●暑い一日だった。暑くなると思って西瓜を買っておいたが、鳥取の砂丘西瓜だったので、特に甘かった。
西瓜は砂地がいい。昔、生家では、西瓜が盗まれないように、夏だけ畑の中に番小屋を建て、学生の兄がそこに寝ていたと思う。

文學の森の月刊総合俳句雑誌「俳句界」の編集長が林誠司さんから河内静魚さんに変わった。昭和25年生まれ、68歳。総合雑誌の編集長は仕事が大変ハードと聞く。俳句界のオーナーが「寒雷」のご出身なので、編集長も自然「寒雷」の方となったのだろう。その河内静魚さんの『夏夕日』という全身真っ赤な句集が届いた。編集長のお披露目なのであろうと思うが、私にも贈られた。句集を拝読したが、句歴はわかるが経歴は不明。何冊も句集を出されると、経歴は省かれるのかもしれない。

駅を出し人ら西日を背に帰る      正子
学生もシャツの人らも背に西日     正子
みな帰る西日に赤く染まりつつ     正子
涼風にカーテン吐く息吸う息を     正子
朝の灯をともせば広き夏座敷      正子

○すかし百合

[すかし百合/フラワーセンター大船植物園]

★自在鉤の鍋に活けありすかし百合/岡田章子
★すかし百合散るまで水平線凝視む/小林輝子

 スカシユリ(透百合、Lilium maculatum Thunb.)は、ユリ科ユリ属に属する植物の一種。海岸の砂礫地や崖などに生える多年草。大きさは20cm – 60cmとなる。本種は古来より栽培・育種の対象となっており、交配の母種として使われることが多い。本種と近縁種をスカシユリ亜属(Lilium pseudolirion Thunb.)として分類することがある。杯状の花を上向きにつけることが特徴。本属には、本種スカシユリの他、近縁種のエゾスカシユリ、ヒメユリを含む。
 鱗茎は白色で卵型。茎は直立し、高さ20cm – 60cm程度。葉は葉柄のない披針形で互生する。花期は太平洋岸の個体群で7月 – 8月、日本海側の個体群で5月 – 6月。茎の頂に、直径10cm程度の、赤褐色の斑点を持つ橙色の花をつける。花被片の付け根付近がやや細く、隙間が見えることから「透かし」百合の和名がある。近縁種のエゾスカシユリと比較し、花柄やつぼみに綿毛がないこと、全体にやや小型であることで判別される。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月24日(日)

★紫陽花を剪りて雨の匂いせり  正子
梅雨時の紫陽花は雨のお友達ですね!!。この紫陽花は雨との措辞により、深くて吸い込まれそうに青いブルーと想いました。剪り採る時の微かに残る雫がはっきりと眼に浮かび、匂い立つような紫陽花の美しさが想われます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
川風を受けて淡きや合歓の花/桑本栄太郎
「風に乗る」は、風に乗って運ばれる、移動するの意味が含まれるので句意がわかりにくい。合歓の淡い花の咲く枝が川風を受け、煽られている様子は、優しさのなかにも合歓の花の強さが見える。(高橋正子)

●朝方まで雨が残る。のち晴れ。
林誠司さんの「俳句アトラス」から、出版第1号となる加藤房子氏の句集『須臾の夢』が送られてきた。
製本が堅牢で、斬新な装丁。他社より安価。信之先生は、来年4月『高橋信之全句集』を俳句アトラスから出版の予定。

まだ青き空の夕焼け子の家へ   正子
梅雨月の下弦は空に滲むなり   正子
夕焼けの茜にモネの絵を重ね   正子

○花柘榴

[花柘榴/横浜日吉本町]

★水色は遠方の色花柘榴/桂信子
★軒下の破れ櫃に散る柘榴かな/高浜虚子
★泥塗つて柘榴の花の取木かな 鬼城
★古宿や青簾のそとの花ざくろ 蛇笏
★格子戸に鈴音ひびき花柘榴 蛇笏
★草の戸の真昼の三昧や花柘榴 茅舎
★朝曇る柘榴の落花掃きにけり 麦南
★柘榴咲く市井にかくれ棲みにけり 淡路女
★花柘榴また黒揚羽放ち居し 汀女
★花柘榴なれば落つとも花一顆 草田男
★世はハタと血を見ずなりぬ花柘榴 草田男
★花柘榴情熱の身を絶えず洗ふ 草田男
★恋ふ難し石榴の花は実の先に 不死男
★花柘榴雨きらきらと地を濡らさず 林火
★とはにあれ柘榴の花もほほゑみも 楸邨

「紅一点」という言葉がある。男性の中にただ一人いる女性の意味だが、これは漢詩から来ている。その紅が柘榴の花である。中国人好のみの色と思う。小さいながら強烈な色だ。花柘榴も秋にはルビーのような実を結ぶ。ガクのようなところはチューリップ型の筒状となって、皮となる気配を見せている。柘榴の花も落ちる。柿の花も落ちる。二つの花を集めて遊んだ。柿の花は蔕を二つ合わせて麦わらを通して水車に、柘榴の花は、チューリップのようなところを集めるだけ。

★花柘榴そこに始まる上家の路地/高橋正子

ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名: Punica granatum)とは、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培されるほか、果実は食用としても利用される。ザクロ科(学名: Punicaceae)は、ザクロ属(学名: Punica)のみからなる[4]。また、ザクロ科の植物は、ザクロとイエメン領ソコトラ島産のソコトラザクロ(Punica protopunica)の2種のみである。葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月23日(土)

★青蔦に夕日あまねき道を帰る  正子
塀や壁面などに這い上がり、青い艶のある葉をよく茂らせて、風に揺れてみずみずしい青蔦。気持ちのよい道に夕日が隅々まで広く行き渡っている。素敵な道を我が家に帰る作者。幸せが沢山待っています。(小口泰與)

○今日の俳句
郭公や水面にぎわす雲と風/小口泰與
郭公の声があたりに響き、とりどりの形や色の雲が映り、風が起こす漣で水面はにぎやか。そんな静かで明るい景色が素晴らしい。(高橋正子)

●朝日ウィークリーや、童話館の資料など整理。ウィークリーを一週間ずつクリップで止める。一年間で表紙の写真が良かったのはどれかと眺める。ドイツのメルケル首相と、アガサクリスティの二人がダントツいい。
童話館の本を元希に贈りはじめて2年半になる。60冊を越えたかな。
信之先生風邪をひく。咳。

○虎尾草(とらのお、おかとらのお)

[虎尾草(とらのお)/横浜・四季の森公園]

★虎尾草や日の通りみち子が通る/磯貝碧蹄館
★虎尾草を摘めば誰もが撫でにけり/小島健
★虎尾草に水やり一日外に出でず/小熊一人
★虎尾草や雨の畦行く犬のおり/小口泰與

 虎尾草は蕾の状態で見るのがほとんだ。虎の尻尾のようだというのだから、じゃあと、捕まえてみたくなる。その感じは猫の尻尾を捕まえる要領だ。アレンジされたブーケに虎尾草がところどころに使われている。園芸種だろうが、薄桃の芍薬と白い紫陽花、トルコキキョウの間から虎尾草がつき出てアクセントになっていた。自然では、丘虎の尾が、横浜四季の森公園の山肌に群生している箇所がある。私の肩より少し高い所で、日当たりが良く風を孕んでいた。梅雨に入る前のことだ。

★虎尾草をおかしと思えばおかしかり/高橋正子

オカトラノオ(丘虎の尾、学名:Lysimachia clethroides )は、サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。APG植物分類体系では、オカトラノオ属はヤブコウジ科に移されている。高さは、50cmから100cm。葉は茎に互生し、葉柄があり、長楕円形で全縁。花期は6月から7月で、白色の小さな花を茎の先に総状につけ、下方から開花していく。花穂の先端が虎の尾のように垂れ下がる。日本では北海道、本州、四国、九州に、アジアでは朝鮮半島、中国に分布し、山野の日当たりのよい草原に自生する。普通、群生する。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月22日(金)

★ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり  正子
「ほうたる」とはとても柔らかな響きで、蛍火の儚げな点滅をうまく表していると思います。するとそこに思いがけない一方向への動きが生じ、静かに漂っていた蛍の火が散るように流されて行ったことが窺えます。その一瞬の美しさを瞼に留めようと、結句がどっしりと全体の骨格を支えています。(小西 宏)

○今日の俳句
手のひらに蛍あかるき少女かな/小西 宏
手のひらの蛍にほっと照らされた少女の顔が浮かぶ。少女と蛍をさらりとした抒情でうまく詠んでいる。(高橋正子)

○雪ノ下

[雪ノ下/横浜日吉本町]

★何代の灯篭の苔に雪ノ下/正岡子規
★長き根に秋風を待つ鴨足草/高浜虚子
★夕焼けは映らず白くゆきのした/渡辺水巴
★ゆれそめて雨となりけり鴨足草/今井つる女

ユキノシタ(雪の下、学名:Saxifraga stolonifera)はユキノシタ科ユキノシタ属の植物。本州、四国、九州及び中国に分布し、湿った半日陰地の岩場などに自生する常緑の多年草である。人家の日陰に栽培されることも多い。葉は円形に近く(腎円形)、裏は赤みを帯びる。根本から匍匐枝を出して繁殖する。開花期は5-7月頃で、高さ20-50 cmの花茎を出し、多数の花をつける。花は5弁で、上の3枚が小さく濃紅色の斑点があり基部に濃黄色の斑点があり、下の2枚は白色で細長い。花弁の上3枚は約3-4 mm、下2枚は約15-20 mmである。本種の変種または品種とされるホシザキユキノシタには、こうした特徴は現れず、下2枚の長さは上3枚と同じくらいとなる。開花後、長さ約4 mmほどの卵形の果(さくか)を実らせる。雪が上につもっても、その下に緑の葉があることから「雪の下」と名付けられた。また、白い花を雪(雪虫)に見立て、その下に緑の葉があることからとする説がある。このほか、葉の白い斑を雪に見立てたとする説もある。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月21日(木)

★てのひらに書を読む梅雨のすずしさに  正子

○今日の俳句
夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
田植のあと早苗は根付き、夏至のころ、根付いた苗は<ぶんけつ>する。梅雨の最中であって、雨は田を「浸す」のである。豊かな水と青々とした田は、日本の原風景であり、たゆまぬ力を感じる。(高橋正子)

●眼科へ。左目がかゆい。アレルギー性のかゆみとドライアイ。目薬3種。塗り薬1種もらう。ついに私にもアレルギー症状が現れる。

Scratchをダウンロードして、手始めに猫を鳴かせたり、動かしたりする。孫相手の遊びにいいかもしれない。
scratch ではなく、メモ帳で、1から10000までの数を足す演算を打ち込み、htmlの拡張子をつけると、うまく答えが出た。次にgoogle mapの現在のパソコンの位置情報のスクリプトを打ち込んだが、地図が現れなかった。間違いなく打ち込んだが、何かに拒否されたのかもしれない。

過去
●18日の鶴見川源流の行ったが非常に疲れた。19日には、信之先生の俳句界8月号の原稿、20日には永田満徳さんの国際俳句機関紙掲載の英語俳句5句、ドイツ語俳句5句、ドイツ語での自己紹介の原稿の整理を手伝う。原稿を送って一息ついていると、電話。表示外局番に、はてなと思えば、アメリカのマーキスからの国際電話。いきなり、「ノブユキは俳句マスターか」と聞く。「そうだ」と話すと、「ノブユキはいるか」と。「います。でも、年のせいで、電話の声はよく聞き取れません。」と話して、メールを送信するように依頼。
●NHK第ラジオの「おはなしでてこい」を録音するために、ラジカセを買った。「おはなしでてこい」は、月~水の朝9時30分から15分間。元や句美子もテープが切れるほど聞いた。あれから30年ばかり。カセットテープに録音して、孫の元希にプレゼントするつもりだ。いまもカセットテープを売っているのにいささか驚いたが。
●番組表を調べていたら、NHKFMラジオがネットで聞けることが分かって、早速聞きながらパソコンの仕事。わが家はNHKFMは入らない。早く気づけばよかった。

○青葡萄

[青葡萄/横浜日吉本町]

★葉洩日に碧玉透けし葡萄かな/杉田久女 
★濁流に日のあたりけり青葡萄/山口誓子
★川を呼び山風を呼び青葡萄/広瀬直人
★青ぶどう夜明けは山のうしろから/鈴木美千代

 青葡萄とは、まだ熟さない青々とした難い実の葡萄をいう。この場合は成熟しても緑色をしているマスカットなどの品種のものは指さない。生産は山梨県が最も多く、岡山・長野の両県が続く。花は五、六月果実と同じように房になって集まって咲く。この青葡萄から濃紫黒・紅赤・黄緑色と、それぞれの品種によって色づいてゆく。
 ブドウ(葡萄、学名 Vitis spp.)は、ブドウ科 (Vitaceae) のつる性落葉低木である。また、その果実のこと。葉は両側に切れ込みのある15 – 20cmほどの大きさで、穂状の花をつける。野生種は雌雄異株であるが、栽培ブドウは一つの花におしべとめしべがあり、自家受粉する。このため自家結実性があり、他の木がなくとも一本で実をつける。果実は緑または濃紫で、内部は淡緑であり、房状に生る。食用部分は主に熟した果実である。食用となる部分は子房が肥大化した部分であり、いわゆる真果である。外果皮が果皮となり、中果皮と内果皮は果肉となる。果実のタイプとしては漿果に属する。大きさは2 – 8cm程度の物が一般的である。ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下端部分は熟すのが最も遅いため甘味も弱くなる。皮の紫色は主にアントシアニンによるものである。甘味成分としてはブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれている。また、酸味成分として酒石酸とリンゴ酸が、これもほぼ等量含まれる。
 ブドウ属の植物は数十種あり、北米、東アジアに多く、インド、中東、南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウ、エビヅル、サンカクヅル(ギョウジャノミズ)もブドウ属の植物である。現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種 (V. vinifera, common grape vine) と、北アメリカのラブルスカ種 (V. labrusca, 英: fox grape)で ある。米がうるち米(食用)・酒米(酒造用)があるように、ブドウにも食用ブドウと酒造用ブドウがあり、食用はテーブルグレープ(table grapes)、酒造用はワイングレープ(wine grapes)と呼ばれている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月20日(水)


English Haiku by Nobuyuki Takahashi  

A moment, a firework born in the sky:
a moment,it dying.

A cricket chirping:
the faint sound echoes through my whole body.

The bare skin of a dummy cools down hard
in the air-cooled store.

My University dark;
looking up to the castle-hill in the moonlight

A large urn is placed down,
filling with the winter air.

Das Deutsche Haiku von Nobuyuki Takahashi 

Vietnam-Kriegsbrand: ein japanisches
Schloss wird nass in der Regenzeit.

Naechtlicher Weg zu Fruehlingsbeginn;
von woher der Duft des Wassers?

Ein Schneemann steht da susammen mit den
Kindern von derselben Koerpergroesse.

Auf demselben Erdboden, auf dem die
Grillen zirpen,meine beiden Fuesse.

Zusammen mit dem Fruehlingswind biege
ich bei einer Baeckerei um die Ecke.

Takahashi Nobuyuki, geb.1931 in Osaka,
verbrachte seine fruehe Jugend in Dairen,dem
heutigen Lueta(China). Studium der Germanistik
in Matsuyama und Hiroshima, Abschluss durch
Magister-Grad 1963. 1964 Dozent fuer Deutsch
an der Ehime-Universitaet in Matsuyama, 1968
Assistenz-professor. 1973 Professor ebanda.
1994 in den Ruhestand, Professor emeritus.

Die erste Ausgabe des Haiku Magazin KAKAN(1983).
Es ist zertifiziert registriert in Marquis Who’s Who
in the World 2017/2018.

★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子
梅酒をお作りになるのですね。6月の上旬から中旬頃に収穫したばかりの青梅で、熟さない内に漬けるのですね。瓶に敷き詰めた青梅、そしてその中には白い氷砂糖と焼酎。ガラスの瓶に透けた青と白は如何にも涼しげです。そして出来上がるのがとても楽しみです。(佃 康水)

○今日の俳句
黄熟の匂い立たせて梅漬ける/佃 康水
梅干しに漬ける梅は青梅ではなく、黄色く熟れてやわらくなった梅を用いる。青梅が黄熟する間に放つ梅の甘くかぐわしい匂いは、「梅仕事」を楽しくしてくれる。(高橋正子)

●湿度が居間が77パーセント。寝室は79パーセント。雨が降ると、10パーセントは湿度が上がる。
昨日のサッカー、コロンビアに2-1で勝った。英字新聞にもサッカー用語が解説され、W杯モード。

○夏茱萸(なつぐみ)

[夏茱萸/横浜日吉本町]_[梅桃(ゆすら)/横浜日吉本町]

★夏茱萸の爛々として墓の上/津沢マサ子
★夏茱萸や妻の居ぬ日はものぐさに/村沢夏風
★夏茱萸や昔は子沢山なりし/青柳志解樹
★夏茱萸を含めば渋き旅愁かな/村岡黎史
★取る人のなき夏茱萸のこぼれ落つ/五十島典子
★小ちさき手に夏ぐみ数個のせて来し/TAKAKO
★降りだしてこの夏茱萸の千の揺れ/茜

 夏茱萸(なつぐみ、学名:Elaeagnus multiflora form. orbiculata)は、トウグミと同様にElaeagnus multifloraの変種とされ、日本固有種です。基本種は東アジアに分布しているとされています。高さ2m~4mほどになる落葉低木です。樹皮は褐色で、老木では縦に不規則に剥がれおちます。
 春に淡黄褐色の花を葉腋に比較的多くつけます。花はやや下垂し、基部は筒型で先端に4枚のガク片がつきますが、4裂しているように見えます。花径は1cmほどです。葉は、葉先が鋭三角形状の広楕円形で、幅4cm前後、長さ8cm前後で、葉の縁はやや波打ちますが全縁(葉の縁のギザギザはない)です。葉の表面には鱗状毛があり、葉裏には銀色の鱗状毛が密生し、赤褐色の鱗状毛が混じるので、淡褐色に見えます。グミの仲間(グミ属)では普通ですが、葉裏が淡褐色や黄褐色です。果実は、両端が丸い円筒形で長さ1.5cm前後です。初夏に赤く熟して食べられます。北海道南部、福島県から静岡県の太平洋側に分布します。多摩丘陵では、自生のものは稀で、人家周辺に時々植栽されています。
 「グミ」の名は、漢名「茱萸子」からきているようです。「茱萸」を日本語読みしたもののようですが、はっきりとはしていないようです。「夏」は、初夏に果実が熟すことからです。
 万葉集を始め多くの歌集や文芸等にはその名は現れていないようです。平安時代の「倭名類聚抄」に「和名 久美」として現れているとのことです。江戸時代の「本草綱目啓蒙」などにその名が現れています。
 果実は美味しく古くから食用にされています。有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。
 多摩丘陵には、この仲間(グミ属)では、以下のように、落葉樹であるこのナツグミとトウグミ、常緑樹であるナワシログミとツルグミを確認していますが、分布域的には可能性がある落葉のアキグミは未確認です。全て花や果実は似ていて葉裏も淡褐色から黄褐色で似ています。葉には多少の違いがありますが、変異もあるので葉だけでの区別は慣れないと結構困難です。多摩丘陵ではいずれも個体数は少なく、なかなか出会えません。
 このナツグミとトウグミは、とてもよく似ていて区別は大変困難です。植物学的にはナツグミでは葉の表面に鱗状毛があるのに対して、トウグミでは(若い)葉に星状毛があることで同定します。一般には、トウグミではナツグミよりも花や実つきがよいことで区別します。トウグミの果実はナツグミよりもやや大きいのですが見た目での判断は困難です。トウグミは、花や実付きがよく、果実もやや大きいので当初は中国などから持ち込まれた種であると考えられたために「唐グミ」と名づけられています。
他の常緑の2種では、葉がやや厚くてやや硬いことで区別できます。また、ナツグミやトウグミでは花期は春ですが、ナワシログミやツルグミでは花期が秋です。果期は、ナワシログミは初夏ですが、ツルグミでは春です。
 ナワシログミは、常緑で葉はやや厚くて硬く、小枝がトゲ状になっていることが特徴です。また、葉は葉先が鈍三角形状の長楕円形で葉縁が波打つことでも区別できますが、慣れないと困難です。花期も秋です。
 ツルグミは、茎がツル状に長く伸びて他物に寄りかかるようになるのが特徴です。葉は、やや厚くてやや硬く、葉先が長い三角形状です。花期は秋です。
 アキグミでは、花期は春ですが、果実が赤熟するのは秋です。また、果実が小さな球形(径7mm前後)なので容易に区別できます。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)