12月12日(月)

★蝋梅のはじめの一花空に透け  正子

○今日の俳句
冬鵙に雲一片もなかりけり/井上治代
一片の雲もなく晴れ渡った空に、けたたましいはずの冬鵙の声が、のびやかに聞こえる。(高橋正子)

◆第3回漱石忌ネット句会(12月10日)入賞句◆
【金賞】
★消灯し文庫に栞漱石忌/高橋秀之
生活に心があって、その内面の世界は静かだ。さりげない静かさがいいので、中七の「栞」が素敵な言葉となった。(高橋信之)
【その他の入賞句】
http://blog.goo.ne.jp/siki2013n

○冬紅葉

[楓紅葉/横浜・四季の森公園]       [紅葉/東京白金台・自然教育園]

★冬もみぢ端山の草木禽啼かず 蛇笏
★沈む日を子に拝むませぬ冬紅葉 かな女
★冬紅葉濃しや峡田の行きどまり 秋櫻子
★一すじの道冬紅葉濃かりけり 貞
★冬紅葉堂塔谷に沈み居り 茅舎
★冬紅葉長門の国に船着きぬ 誓子
★冬紅葉美しといひ旅めきぬ 立子

★冬紅葉くれない空へ清潔に/高橋信之
★森静かに冬の紅葉を散らしている/高橋信之
★雨あとのいろはもみじの谷深し/高橋正子

一昨年の日記より:十二月六日、横浜市緑区にある四季の森公園に出かけた。四季の森公園には紅葉谷と呼ばれるところがある。紅葉が素晴らしく美しいのは、秋ではなく、実際は、夜と昼の寒暖の差が激しくなる冬。この日は、雨の後の久しぶりの快晴のよい天気になった。立冬からちょうど一か月になる。紅葉谷へは、中山駅から横浜動物園行きのバスに乗り、長坂というバス停で降り、十分ほど歩いて着く公園の南口から入るコースをとった。いつもは北口から入るのだが、南口からのコースは、紅葉谷を上から下へと下る。北口からなら、下から上へ辿るコースとなる。南口に着くと、楓や欅の紅葉を風がぱらぱらと降らせている。正面の噴水は、水を霧のように丸く吹上げている。

南口から辿り始めるとすぐに、イロハモミジの紅葉に出会う。どれも大木で、上から覆いかぶさるように枝を広げている。枝の下に入りると、空が透けている辺りが最も美しい。黒い枝も捨てがたい。暗い部分も、明るい部分も、紅葉の葉がはっきりとその形に見える。イロハモミジは葉の切れが七で、「いろはにほへと」と数えられるから付いた名という。「いろはにほへと」ならば、次に「ちりぬるを」がくるが、散った紅葉を踏みながら、なるほどと「いろはの歌」を思った。イロハモミジの葉が散らばり、また重なる姿を見ると子どものころから親しんだ、千代紙とか風呂敷の柄がすぐに思い浮かんだ。ひと固まりの紅葉の林を過ぎると、白樫などの多い林となる。林は少し急な下りになり、どこから飛んできたのか朴の大きな落葉がところどころに散らばっている。どこかにあるらしいが、木は見当たらない。椿が固まってあるが日当たりがなく蕾はついていない。その谷を下ってゆくと明るい紅葉の重なりが見えるが、ここが紅葉谷と呼ばれるところ。イロハモミジの紅葉に続き、オオモミジの紅葉が混じってくる。終わり近くにコウチワカエデがある。もう、一週間も立つとこの紅葉は散りつくしてしまうのではと思われた。風がしきりに紅葉を誘って、流れるように紅葉が散っている。路は夜の雨のあととあって、踏めば落葉から水がにじむ。紅葉の木は十メートルを超えているのもある。見上げてばかり写真を撮るので、首が痛くなる。私はカメラが本職ではないのだが、俳句の写真をと思うと、これという写真を撮りたい。数多くと思うが、何事も、集中力と体力の問題と思えて、最後には写真を撮るのがいやになったくらいだ。

下に目をやる。いろんな紅葉が散り重なっている。一つ一つ紅葉を見るが、完璧に美しい葉はない。どこか痛んだりしている。しかし、重なれば、美しいの。雨水の溜まった大きな葉がつくばいのようになって、紅葉を載せている。木橋に一列に紅葉が載っている。こんどは、私の肩辺りを見ると、くぬぎの黄葉がいい色になっている。葉の形も黄いろから茶色を持つ葉の色は森の色。紅葉谷と言えども、ほかの木の黄葉混じるのがいい。谷紅葉は、夜はしんと独りになるのだろう。思えば、少し怖いが、朝が来ればまた、その色を取り戻すだろう。紅葉谷の終わりは、天狗の団扇に似た、コウチワカエデ。黄みどりがかったこの楽しい形を最後に、今日の紅葉狩りを終わりとした。

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・百両(たちばな)・冬紅葉」(東京白金台・国立自然教育園)

12月11日(日)

★錦木の葉と実の少し違う赤/高橋正子

○今日の俳句
ふかふかと落葉に埋もれ下りけり/多田有花
山の路はすっかり落葉に埋もれてしまった。山路を下れば落葉がふかふかとして足を埋めるほどだ。山路もすっかり冬になった。(高橋正子)

○錦木の実

[錦木の実/横浜・四季の森公園]         [錦木の紅葉/横浜日吉本町]

★啄木鳥の来て錦木を倒しけり/正岡子規
★錦木や鳥語いよいよ滑らかに/福永耕二
★袖ふれて錦木紅葉こぼれけり/富安風生
★錦木のほむら磐梯虹消ゆる/角川源義
★われ稀に来て錦木を立去らず/後藤夜半
★錦木の実も葉も赤くなりにけり/芝滋

★錦木の葉と実の少し違う赤/高橋正子

 小鳥に食べられることなく、もうしなびかかった赤い実が、有るなとは思ったが余り気にとめることも無かった。ところが夕日の光が差し込むと、しなびた実が一転光り輝きだした。あわててシャッターを切ったがみるみる陽は落ちて後にはまたしなびた実が残った。光の魔術というものを改めて実感した。
 今年は妙に小鳥たちの姿を見かけないと、鳥好きのある方がブログに書いてみえたが、せっかく実を付けた草木たちも、種の運び屋がいなくては困るだろうね。(小鳥の姿が少ないというのもちょっと気がかりな話だ)
 ニシキギの枝に付いた「翼」はいったい何のためなのか?見た目カミソリのようで(そういえば子どもの頃これをカミソリの木と呼んでいた)、小鳥たちがとまるのを拒んでいるような?実を食べられたくないのか、食べて欲しいのか、いったいどっちなんだろう?(ブログ「野の四季」より)

 ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)

12月10日(土)

★鈍行のことこと芽麦を渡りいる  正子

○今日の俳句
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
時雨るるや牧より仔山羊連れもどし/佃 康水
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

●第3回漱石忌ネット句会の入賞発表をする。授賞式は来年1月15日(日)にリーガロイヤルホテル東京
で行う。金銀銅メダルと副賞に珈琲を渡すことにした。珈琲は、いろいろ考えているうちにふと思いついた。案外いいかも。

○藤黄葉(ふじもみじ)

[藤黄葉(12月1日)/横浜日吉本町]     [藤の花(4月13日)//横浜日吉本町]

 紅葉と黄葉、息のむ競演 佐世保市の藤山神社 [長崎県]
 佐世保市小舟町の藤山神社でフジとモミジの葉が黄や赤に色づき、訪れた参拝者を楽しませている。見頃は今週末ごろまで。
 境内には樹齢約650年の大フジや蛇フジなど5種類約40本のフジと、20年ほど前から植え始めた約30本のモミジがある。前田邦彦宮司(71)は「秋に訪れる参拝者にも喜んでもらおうと思い育てている。紅葉と黄葉の競演を楽しんでほしい」と話している。=2013/12/04付 西日本新聞朝刊=

◇生活する花たち「茶の花・茶の実・欅黄葉」(川崎市宮前区野川・影向寺)

12月9日(金)/漱石忌

 琵琶湖
★栴檀の実の散らばりに湖晴るる  正子
初冬の青空には栴檀の黄色い実が似合う。葉を落とし実と枝が広がる。栴檀の実の黄色、空の青、そして湖の濃い青、それぞれが自分の色を主張しているように見えるがお互いがよく似合っている。栴檀の実を初めて見たのは1999年に開かれた松山での水煙大会に出席した時である。今でも栴檀の実を見るとその時の松山の空を思い出す。(祝 恵子)

○今日の俳句
炬燵には兄妹と居る嬉しさよ/祝恵子
炬燵を囲み、暖かさにくつろいで兄妹といるうれしさ。いつまでも兄の下の妹でいる幸せがある。(高橋正子)

●今朝は快晴。朝日たっぷり。漱石没後100年。忌日がアニバーサリーのようだ。第3回漱石忌ネット句会。漱石没後100年に合わせて、今日のネット句会が読売新聞の記事になるはずだ。

第3回漱石忌ネット句会投句
花鉢に水と朝日を漱石忌  正子
草枕座右にありて漱石忌   正子
漱石忌空にスバルの生れ来たれ 正子

漱石忌眩しい朝日浴び出勤 句美子
漱石忌螺旋階段駆け上る  句美子
漱石忌木々は細かく枝伸ばす 句美子

◆第3回漱石忌ネット句会入賞句◆
【金賞】
★消灯し文庫に栞漱石忌/高橋秀之
生活に心があって、その内面の世界は静かだ。さりげない静かさがいいので、中七の「栞」が素敵な言葉となった。(高橋信之)
【その他の入賞句】
http://blog.goo.ne.jp/siki2013n

○さんしゅゆの実

[さんしゅゆの実(12月6日)/横浜・四季の森公園]_[さんしゅゆの花(3月22日)/横浜・四季の森公園]

★山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ/水原秋桜子
★山茱萸の黄や街古く人親し/大野林火
★さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず/長谷川素逝
★赤といふ禁断の色山茱萸の実/桐一葉
★枝揺らし山茱萸の実の手から手に/芝滋

★山茱萸の小さき実数多青空へ/高橋信之

サンシュユ(山茱萸)は、朝鮮半島原産の小高木で、日本には江戸時代中期に薬用植物として渡来しました。早春に新葉に先立ち樹木一面に鮮かで黄色い小花を咲かせる姿も美しいですが、晩秋に鮮かに紅色に熟する実もまた愛らしくて美しいものです。楕円形をしたサクランボウのような感じがします。実は甘くておいしそうに見えますが、実は渋くて生食には向かないそうです。残念。サンシュユの果実は、滋養・強壮、止血、解熱作用の薬効があるといわれ漢方薬にもなっているそうですよ。サンシュユの春の情景を「春黄金花(ハルコガネバナ)」と呼び、秋の情景を「秋珊瑚(アキサンゴ)」と呼びますが、その別名がよく似合います。心も身体も癒してくれる、私たちにとって大事な植物なんですね。感謝(大阪市立長居植物園ブログより)

◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)

12月8日(木)

★散ればすぐ桜冬芽の鋭がりたり  正子

○今日の俳句
太き枝しならせリンゴは豊作に/古田敬二
豊作のリンゴは、その重さで、太い枝をしならせている。太い枝も赤く熟れたリンゴの重量に耐えて実りを支えている。微笑みのこぼれているようなリンゴの木だ。(高橋正子)

●昨日、角川俳句年鑑2017年版が届いた。いよいよ暮れとなるというより、気分は新年だ。寄稿した記事に漏れはなかった。全国結社・俳誌と、諸家自選五句(628名)に信之先生の五句。全国俳人住所録に信之・正子・句美子。

十二月八日の青空波立つかに  正子

○檀(まゆみ)の実

[檀(まゆみ)の実/横浜日吉本町]

★檀の実こぼさじと折る力ゆるめ/加倉井秋を
★檀の実朝は真近に穂高澄み/望月たかし
★泣きべそのままの笑顔よ檀の実/浜田正把
★また風を呼ぶたわわなる檀の実/山元重男

 マユミ(檀、真弓、檀弓、学名:Euonymus hamiltonianus)とは、ニシキギ科ニシキギ属の木本。別名ヤマニシキギとも呼ばれる。日本と中国の林に自生する。秋に果実と種子、紅葉を楽しむ庭木として親しまれ、盆栽に仕立てられることもある。秋の果実の色は品種により白、薄紅、濃紅と異なるが、どれも熟すと果皮が4つに割れ、鮮烈な赤い種子が4つ現れる。

 2012年10月14日 天気 曇のち小雨
 今日、ネットのお友達のブログに、みごとな真紅の檀の実の写真が載っていた。ご自宅の庭の木だという。彼女は静岡県の西部にお住まいなので、この前の台風の風害がひどくて、庭の木々の葉っぱや檀の実など、かなり落ちてしまう被害に遭ったそうだ。実は、上の檀の実の写真は、台風前の先月20日にいつもの都立公園で撮ったもの。元々まだ丈の低い木だが、今年は猛暑のせいか木の元気がなく、実が少なくて寂しかった。で、昨日はそろそろ実が弾けるころかな、と思い寄ってみたら・・なんと、2本ある木の1本が実を付けたまま丸ごと枯れていた。(ブログ「KUMIの句日記」より)

◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)

12月7日(水)

★青空の光りを弾き辛夷花芽  正子
冬枯れの中、早くも花芽をつけている辛夷。よく晴れた青空の下、日の光りを弾くほどのしっかりとした花芽です。(小川和子)

○今日の俳句
農道を真直ぐ辿る冬はじめ/小川和子
農道は、田や畑の中を抜ける農業用の道路。まっすぐな農道の脇は、刈田であったり、冬菜が育っていたり、冬のはじめの景色が楽しめる。それがいい。(高橋正子)

●午前中、大倉山の港北年金事務所へ行く。大倉山駅から1キロ半ほどを歩く。

夕冷えの風となりたり蜜柑来る  正子

○昨年は、以下の通り。
花冠1月号(第362号)発送。
12月7日日曜日、午前中に花冠1月号をメール便で発送いたしました。お楽しみください。昨年は季刊(56ページ、48ページ)でしたが、本年より月刊となります。ページ数は20ページ。表紙の色は、編集長の高橋句美子が選ぶことになりました。

○蝋梅(ろうばい)

[蝋梅/横浜・四季の森公園]

★風往き来しては蝋梅のつやを消す/長谷川双魚
★蝋梅の咲くゆゑ淡海(アワミ)いくたびも/森 澄雄
★蝋梅や樅(モミ)をはなるる風の音/古館曹人
★文机に蝋梅一朶誕生日/品川鈴子
★蝋梅や磨きたりない床柱/堂本ヒロ子

★蝋梅咲いて森の正午の空の青/高橋信之
★蝋梅のはじめの一花空に透け/高橋正子

 ロウバイ(蝋梅、?梅、臘梅、唐梅、Chimonanthus praecox)は、ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木。1月から2月にかけて黄色い花を付ける落葉広葉低木である。
 十二月六日、四季の森公園に出かけた。この季節は冬紅葉や山茶花や木の実が目につく。そのほかの花には、なかなか出会えない。ところが、四季の森公園の季節の見どころ情報では、紅葉のほかに、蝋梅が咲いたとある。蝋梅は愛媛に住んでいたとき、砥部の庭のアプローチの日当たりが一番いいところに植えていた。正月にやっと蕾が黄色い色を見せ始め、霜が降りる朝に、透き通った花びらを開くのがいつもだった。十二月に蝋梅が開いたという情報に、多少戸惑った。少し早いのではと思いつつも出かけた。紅葉谷の紅葉を楽しいだあと、作ってきたおにぎりの弁当を食べた。蝋梅は「春の草原」の傍にあるという。ああ、三椏の花が咲く小川のほとりかと、すぐに見当がついた。そこに蝋梅があったことには、気づいていなかった。弁当を広げたところから、小川の小さな橋を渡ってすぐのところにある。黄葉してかさかさした葉がまたたくさん付いていたので、すぐ蝋梅と分かった。蕾がたくさん付いている。花を探すけれど、この木も、次の木も、その次の木も蕾だけ。最後の木にようやく見つけたのは、開こうとしている蕾。その直ぐにもっとひらいた蕾、その近くに、見上げた青空にくっきり開いた花。花と言えるのは、この三花。澄み透った森の青空の中に開いた蝋梅であった。

◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)

12月6日(火)

★臥風忌の今日にわが句の刷り上がる  正子

○今日の俳句
冬紅葉向こうに大きな空がある/高橋秀之
冬紅葉の向こうに見えるものが「大きな空」である。「大きな」がこの句の内容の良さで、読み手にもその空を実感させてくれる。(高橋正子)

●昨日に続き、今日も暖かい。
漱石忌ネット句会への投句が昨日までに8名。

冬星をヘリコプターの二機が行く    正子
冬三日月くっきり雲を抜け出て     正子

○辛夷の花芽

[辛夷の花芽(11月)/横浜日吉本町]    [辛夷の蕾(3月)/横浜日吉本町]

★かたくなに白を守りて辛夷咲く/能村登四郎
★黄昏の色濃き空に辛夷浮く/笠原美雪
★辛夷の芽ふくらみ見する夕日どき/宮津昭彦
★辛夷の芽をちこち水の韻きけり/石本百合子
★光背のうしろの辛夷冬芽立つ/山本耀子

★花芽数多付けて辛夷の大きな木/高橋信之

 コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園 2月14日)/ブログ「山野草、植物めぐり」より
 辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。小野興二郎という歌人の若いころの歌に次の作品がある。2首をセットで読めばさらに味わい深い。
  梢(うれ)たかく辛夷の花芽ひかり放ちまだ見ぬ乳房われは恋ふるも
  妻となる日を待つ汝(なれ)かぬるみゆく水を言ふとき髪のひかりぬ

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。果実は集合果であり、にぎりこぶし状のデコボコがある。この果実の形状がコブシの名前の由来である。高さは18m、幹の直径は概ね60cmに達する。3月から5月にかけて、枝先に直径6-10cmの花を咲かせる。花は純白で、基部は桃色を帯びる。花弁は6枚。花芽は、6月頃に付き、11月半ばに膨らみ始める。枝は太いが折れやすい。枝を折ると、 芳香が湧出する。九州、本州、北海道および済州島に分布。「コブシ」がそのまま英名・学名になっている。 日本では「辛夷」という漢字を当てて「コブシ」と読むが、中国ではこの言葉は木蓮を指す。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)

12月5日(月)

★噴水の霧を噴きたり十二月  正子
勢いよく吹き上る噴水の飛沫は、外気の冷たさによって忽ちに霧に包まれ、あたかも霧が吹き上げられているように見えるのでしょう。夏の噴水とは一味違った、柔らかな味わいのある十二月の風景です。(小西 宏)

○今日の俳句
小春日や昨夜(ゆうべ)の雨に光る道/小西 宏
昨夜の雨とは打って変わって今日は小春日和のよい天気。雨に濡れた道も太陽にきらきら光り、小春日和の証拠のよう。(高橋正子)

●今週は今日だけが暖かいそうだ。週半ばからは冷え込む予報。
昨日、来年の干支の酉の張り子の鈴を横浜そごうの鳩居堂で買った。「紙音」と言う銘。振れば、鈴の音とも、紙の音とも。
元希のクリスマスプレゼントに、SIKUの駐車場のタワーを買う。ミニカー4台とおまけの1台で5台がついて、見れば、パトカーはPOLIZEIとか、ドイツ語で書いている。

○藤黄葉(ふじもみじ)

[藤黄葉(12月1日)/横浜日吉本町]     [藤の花(4月13日)//横浜日吉本町]

▼紅葉と黄葉、息のむ競演 佐世保市の藤山神社 [長崎県]
 佐世保市小舟町の藤山神社でフジとモミジの葉が黄や赤に色づき、訪れた参拝者を楽しませている。見頃は今週末ごろまで。
 境内には樹齢約650年の大フジや蛇フジなど5種類約40本のフジと、20年ほど前から植え始めた約30本のモミジがある。前田邦彦宮司(71)は「秋に訪れる参拝者にも喜んでもらおうと思い育てている。紅葉と黄葉の競演を楽しんでほしい」と話している。=2013/12/04付 西日本新聞朝刊=

▼亀戸天神「藤の黄葉」
亀戸天神で藤の黄葉が始まっています。今年は例年に比べて遅いかなぁと思ったのですが、一昨年は12月4日に撮影していました。黄葉が終わると、歳末・年始の準備が始まります。(やっぱり亀戸が好き!:http://ootake-shoji.tea-nifty.com/)

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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12月4日(日)

★冬鵙の囃すは水照る向こう岸  正子
秋から冬にかけて鵙は雌雄別々に縄張りを張り、その宣言として、高い梢などで鋭い声で鳴き騒ぎ、小春日の穏やかな川の流れに、川面は光り、対岸の森では鵙が賑やかに鳴き競っている素敵な初冬の景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
火の山の噴煙起つや大根干す/小口泰與
大根を干すころは、風も寒くなり、温かさが恋しくなる。火の山の噴煙も目に温かさを運ぶ。そういう意味で取り合わせが成功している。(高橋正子)

○寒木瓜(かんぼけ)・冬木瓜(ふゆぼけ)

[寒木瓜/横浜日吉本町]           [寒木瓜の実と花/横浜日吉本町]

○今日の俳句
芒日を透かしておりぬ寺静か/祝 恵子
日当たりのよい寺はだれも居ぬようだ。芒が日を透かし、これ以上ないような静けさと、穏やかな明るさが思われる。(高橋正子)

●夕方、句美子がお菓子教室でスコーンを作ったからと持ってくる。くるみ、アールグレイ、プレーンの小ぶりの3種類。生地に入れるバターは、ミキサーで砕いたそうだ。子どものころ、たまに作っていたスコーンの味を忘れているは。ぶり大根などを持たせる。

ぶり大根湯気の匂いに月が出る      正子
柚子なます柚子の黄色を切り刻み     正子

★近江路や茶店茶店の木瓜の花/正岡子規
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★木瓜の花こぼれし如く低う咲く/大谷句仏
★寒木瓜の蕊のぞきたる花一つ/阿部ひろし
★寒木瓜の刺の鋭き女坂/増田栄子
★寒木瓜を見つけし後の足軽し/819maker(ブログ俳句の風景)

★丘晴れていて寒木瓜の赤の濃し/高橋信之
★今青空に冬木瓜の実の確とあり/高橋信之

 木瓜と書いて「もっこう」と読む場合もあるが、普通「ぼけ」と読む。この音を聞いてほとんどの人は「あほ、ぼけ」の「ぼけ」を想像するだろう。それがこの花のおもしろいところで、木瓜は春の花であるが、花の少ない冬、暖かい陽だまりなどに咲き始める。棘があって、花は梅のように枝について咲く。葉は花の後から出るのであるが、この朴訥な枝と少ない花を生かして春の先駆けを思わせて生花にも使われる。雪が降ったりすると、雪を冠った花がうれしそうに見える。実は花梨のように大きな黄色い実がつくのも、「ぼけな」感じだ。

 寒木瓜は、木瓜と同じ品種だが、ふつうは3月から4月に咲くのに対して、11月から12月ごろに咲き出すものをいう。
 ボケ(木瓜)は、バラ科の落葉低木。学名Chaenomeles speciosa(シノニムC. lagenaria)実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。帰化植物(平安時代)。学名のspeciosa は 美しい、華やか 、Chaenomelesは 「chaino(開ける)+ melon(リンゴ)」が語源。花言葉は「先駆者」「指導者」「妖精の輝き」「平凡」。原産地:中国大陸。日本に自生するボケはクサボケといわれる同属の植物。
 樹高:1~2m。枝:若枝は褐色の毛があり、古くなると灰黒色。幹:樹皮は縦に浅く裂け、小枝は刺となっている。葉:長楕円形・楕円形。長さ 5~9cmで鋭頭でまれに鈍頭。基部はくさび形で細鋭鋸歯縁。花:3~4月に葉よりも先に開く。短枝の脇に数個つき径2.5~3.5cm。色は基本的に淡紅、緋紅。白と紅の斑、白などがある。
 好陽性で土壌を選ばず、移植は容易だが大気汚染・潮害にはさほど強くない。日本では本州から四国、九州にかけて植栽、または自生。温暖地でよく育ち北海道南部では種類が限定される。
 庭園樹としてよく利用され、添景樹として花を観賞する目的で植栽される。盆栽にも用いられる。実を果実酒などにすることもある。
 同属の植物にクサボケ(草木瓜、Chaenomeles japonica 英名Japanese quince)がある。50cmほど。実や枝も小振り。本州や四国の日当たりの良い斜面などに分布。シドミ、ジナシとも呼ばれる。花は朱赤色だが、白い花のものを白花草ボケと呼ぶ場合もある。果実はボケやカリン同様に良い香りを放ち、果実酒の材料として人気がある。減少傾向にある。
 [木瓜と草木瓜のちがい] 木瓜は:背が高い。枝のトゲはあまり目立たない。実は草木瓜の実よりも大きくて、色は黄色。縦に「彫り」が入っている。草木瓜は:背は木瓜より低い。枝にトゲがいっぱいある。実はボケよりは小さく、色は黄色。縦に「彫り」は入っておらず、表面はつるつる。

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・万両・白文字(しろもじ)」(東京白金台・国立自然教育園)

12月3日(土)

  新幹線
★トンネルを抜けて手帖に差す冬日  正子
俳句手帳を片手に、新幹線の車窓の光景を吟行でしょうか?小生も旅の時には必ず同じように車窓吟行を行います。特にトンネルの多いい山陽新幹線では、急に暗くなったり、トンネルを出て眩しい程の冬日を浴びたりと忙しく、冬の日差しがこれ程明るかったのかと驚くことがあります。その辺りの情景がとても良く窺がえ、素敵です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
ビル街に新海苔の香老舗から/迫田和代
新海苔は十月ごろから採れるが、店にあらわられるのは十一月、十二月から。街はクリスマスやお歳暮商戦で賑わう。そのビル街の老舗から海苔のいい香りがしてくる。老舗の品がそのまま新海苔の品のある香りとなっている。(高橋正子)

●漱石忌ネット句会の賞品のトロフィーを決める。月曜日に注文予定。
漱石忌ネット句会金賞等、花冠賞の授賞式の会場をリーガロイヤルホテル東京に予約。1月15日(日)

今日は快晴。いい天気だ。

柊の花の香肺を銀にまで    正子
柊の花の香りよ色なら銀    正子
乏しきは幸よ柊花香る     正子
しあわせの色かがやかせ冬苺  正子

○柊(ひいらぎ)

[柊/横浜日吉本町] 

★屋根ふいて柊の花に住みにけり 鬼城
★柊の花と思へど夕まぐれ 風生
★柊の花にかぶせて茶巾干す みどり女
★柊の花一本の香かな 素十
★柊の花多ければ喜びぬ 草田男
★心ひまあれば柊花こぼす 虚子
★柊の花や掃かれし土の匂ひ 林火
★柊の花のともしき深みどり たかし
★柊の指さされたる香かな 波郷
★柊の香やあをあをと夜の冨士 悌二郎

★柊の花に触れずに眺めいし/高橋信之
★ひいらぎの花の清らと香の清ら/高橋正子

 ヒイラギ(柊・疼木・柊木、学名:Osmanthus heterophyllus)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。和名の由来は、葉の縁の刺に触るとヒリヒリ痛む(古語:疼(ひひら)く・疼(ひいら)ぐ)ことから。季語としては、「柊の花」 は冬。東アジア原産で、日本では本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球の山地に分布しているほか、外国では台湾でも見られる。樹高は4-8m。葉は対生し楕円形から卵状長楕円形、革質で光沢あり、縁には先が鋭い刺となった鋭鋸歯がある。また、老樹になると葉の刺は次第に少なくなり、葉は丸くなってしまう。花期は11-12月。葉腋に白色の小花を密生させる。雌雄異株で雄株の花は2本の雄蕊が発達し、雌株の花は花柱が長く発達して結実する。花は同じモクセイ属のキンモクセイに似た芳香がある。花冠は4深裂して、径5mmになる。果実は長さ12-15mmになる核果で、翌年6-7月に暗紫色に熟す。果実は鳥に食べられて種子が散布される。
 低木で常緑広葉樹であるため、盆栽などとしても作られている。幹は堅く、なおかつしなやかであることから、衝撃などに対し強靱な耐久性を持っている。この為、玄翁(げんのう)と呼ばれる重さ3kgにも達する大金槌の柄にも使用されている。特に熟練した石工はヒイラギの幹を多く保有し、自宅の庭先に植えている者もいる。他にも、細工物、器具、印材などに利用される。葉に棘があるため、防犯目的で生け垣に利用することも多い。古くから邪鬼の侵入を防ぐと信じられ、庭木に使われてきた。家の庭には表鬼門(北東)にヒイラギ、裏鬼門(南西)に南天の木を植えると良いとされている(鬼門除け)。また、節分の夜、ヒイラギの枝と大豆の枝に鰯(いわし)の頭を門戸に飾ると悪鬼を払うという(柊鰯)。

◇生活する花たち「林檎の帰り花・ゲンノショウコ・桂黄葉」(横横浜・四季の森公園)