★山茶花にこぼるる目白の声ばかり 正子
とても嬉しい光景です。目白が山茶花に群がっていて鳴いています。こぼるる声って、新鮮な句です。(祝恵子)
○今日の俳句
大根の白さを今日もまな板に/祝恵子
冬の間の食材として欠かせない大根の白が、目にみずみずしい。また今日の新しい白となって刻まれる。日々の新しさがさわやか。(高橋正子)
★辻に出て通う秋風身にまとう 正子
十字形に交わった道路に出ると四方よりの秋風が爽やかに通り抜けている。その風を総身にまとった一時の心地よさと「もう秋も深まって来たな」との季節の移ろいに寂しさをも感じられる御句です。(佃 康水)
○今日の俳句
満月や瀬戸の潮騒高まりぬ/佃 康水
月に左右される潮の干満。満月が昇ると、おだやかな瀬戸もざわざわと潮騒が高まる。潮騒の高まりに、ますます輝く満月となって、臨場感のある句となった。(高橋正子)
○栗の渋皮煮を作る。横浜に引っ越してからははじめて。「利平栗」が出回りはじめたので、この栗で作った。ややとんがり気味の形。利平栗がどういうものが知らないが大ぶりな栗だ。栗を水に3,4時間浸して皮を剥いたので、意外とたやすく皮が剥けた。手間だというが、それほどの手間ではない。重層で湯でこぼして灰汁を抜き、砂糖でことこと煮るだけで、出来上がりの味は、マロングラッセと似ている。和風マロングラッセと言っていい。水煙(花冠)大会にも持参して、みなさんに食べていただいたこともある。
★みずひきの朱が試験期の図書館に 正子
みずひき草は、俳句を作るようになって、自然に知った花だと思う。上のみずひきの句は、大学生のときの句だが、図書館にさりげなく活けてあった。大学構内のどこかにあるのを司書の方が摘んできたのかもしれない。砥部の家の庭にも植えたのか、自然に生えたのかわからない形で、初秋のころから赤い糸を引くように咲いた。みずひき草が咲くと、やはり活けたくなって、切り取って玄関に活けた。みずひき草は、「澄んだ空気」とよく似合う。だから、空気と似合うように活けて自己満足する。
みずひき草には赤だけでなく、白い「銀みずひき」というのもある。蕾のときは、白さがよくわからないが、先日は、買い物の途中で、あの細いみずひきが満開になっているのを見た。それだけで済ますにはもったいないので、家に帰りカメラを持って出掛けた。小さな泡の粒粒が空気に浮かんでいるように見えたが、これもきれいだ。(自句自解)
○今日の俳句
★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
ミントの葉に如露の水か、水滴が付いて、それを静かな秋の日が輝かせている。そのきれいな水滴の付いたミントの葉を摘むゆっくりとそして爽やかな時間が若々しく詠まれている。(高橋正子)
○北溟社から俳句手帳に載せる句の依頼が昨日あった。10月10日締め切りで、10月下旬発行。なんと手際よい。去年皆さんに配ったら、好評で今年は15冊注文した。去年は自分用は無しだった。
<青という空に垂れたる榛の花 高橋正子>
秋明菊が咲き始めるころになった。イギリス旅行したときも9月の終わりだったが、この花がよく咲いていた。今年は鉢植えの秋明菊が蕾をたくさんつけて花を楽しみにしていたのに、根元から急に枯れてしまった。原因はよくわからない。(2015)
○台風のこと
10月6日、台風18号が浜松に上陸し、横浜のお寺が潰れる被害があった。台風はわが家のあたりをほんの30分ほどで通り抜けた。そのあと、ぴかぴかの天気となった。吹き返しの風も吹かない。
松山や福山で暮らしたときの台風は、横浜の台風とは全く違う。横浜に来るのは台風というより、暴風雨だ。横浜の台風は、予兆というものをほとんど感じさせない。もっぱら天気予報で台風の来襲を知っている現状だ。台風は、もっと季節感がある。台風が来る予兆というのがある。肌身で台風の近付くのを感じるのだ。蒸し暑く、風の吹き方も少しずつ変わってきて、雲も暗く大量に空を覆う。海の色もどす黒く、波がぴちゃぴちゃと異様な音を立てる。今、沖縄あたりにいる台風は、今夜来るか、夜明けかなど、来る時間を想定し、雨戸を閉め、鉢植えなども大きなものは、風の当たらない陰へ移す。停電に備えて、懐中電灯や蝋燭を準備する。窓を開けるとカーテンが大きく風で膨らむのを見ると、窓をぴったりと閉め、来るべき台風を神妙に迎えるのだ。そして、台風が過ぎたあとの吹き返しの風が収まるのを待つ。吹き返しの風の涼しいが、やはりまだまだ台風なのだ。台風の後は、庭の落ち葉掃いたり、壊れたところはないか見回りをする。雨がはね上げた泥を流したりもする。これでさわやかな秋空が広がれば、「台風一過」となる。
台風来つつある夜の卓の丸い梨 正子
★食べてゐる牛の口より蓼の花/高野素十
★一枚の洗ひ障子や蓼の中/瀧春一
★寺門出てそこが畦道蓼の花/稲畑汀子
桜蓼(さくらたで、学名:Polygonum conspicuum)は、タデ科タデ属の多年草。
北海道~九州の水辺に生える。根茎は地中で長くのび、枝を分けてふえる。茎は直立し、高さは50~100cmになる。葉は披針形で長さ7~13cm、短い葉柄がある。両端はとがり、両面に短い毛がある。鞘状の托葉は短い筒形で、ふちに長く堅い毛がある。秋に、うすピンク色のきれいな小花が咲く。花序は1~3本に分枝し、花穂は細長く、やや密に花をつけ、上部は垂れ下がる。花被は深く5裂し、長さ5~6mmで淡紅色を帯びる。花は直径約8mm。花には長花柱花と短花柱花との2型がある。雄しべは通常8個、雌しべは1個で柱頭は3岐する。果実はそう果で、長さ3~3.5mmの3稜形、黒色で光沢がない。 花期は8~10月。
よく似た「白花桜蓼(しろばなさくらたで)」もある。花色が白く、花被が長さ3~4mmと小さい。蓼の花には、犬蓼・桜蓼・御蓼・岩蓼・穂蓼がある。
★いっせいに月を待つべく曼珠沙華 正子
○今日の俳句
早朝の山懐の霧深し/井上治代
大洲盆地らしい私の好きな風景だ。早朝でなくても、松山から峠を越えるあたりから、道は流れるような霧に包まれることもあった。(高橋正子)
★藪豆の花と実を見る快活に/高橋信之
★秋の茂りやぶまめの花絡みつき/高橋正子
ヤブマメは、マメ科ヤブマメ属のツル性一年生草本で、学名は、Amphicarpaea edgeworthii var japonica。北海道から九州、朝鮮から中国に見られ、林縁や草原などに生育する。夏から秋にかけて花を咲かせ、実をつけるが、地中にも閉鎖花を付ける。茎の一部から地中に枝が伸び、土の中で果実を稔らせる。この果実の中には種子は1つしかなく、地上部に形成される種子よりも大きい。地上部の種子は有性生殖であるので多様な性質を持っており、新たな場所へと散布されることを期待している。地下に形成した種子は、単為生殖であるので自らと同じ遺伝子を持っており、まずは来年への存続を確保するという戦略である。このような戦略は、来年もヤブマメが生育可能な立地条件であることがかなりの確度で予想される場合に成り立つ。ヤブマメの生育地は、そのような、来年も一年性のツル植物が生育可能な立地である。 茎は細く,下向きの細い毛がある。葉は3小葉に分かれた複葉で,基部に托葉がある。頂小葉は広卵形または卵形で,長さ3~6cm。2型花をつける。開花する花は8~10月に葉腋(ようえき)から出る短い総状花序に2~8個がつき,紫色の蝶形花で,長さ15~20mm。閉鎖花は花弁がなく,葉腋に1個だけつく。果実は多くは閉鎖花から熟し,地上と地中とにできる。
北海道では山菜として食され、栽培化も試みられた比較的身近な植物になっている。特にアイヌの人たち好まれ、味は”甘栗”のようで炊き込みご飯や煮物にした『アイヌ民族博物館だより』。栄養成分分析によるとカリウムが多く含まれ、ついでリン、マグネシウムほかとなっている『伝承有用植物』。アイヌの人たちがいつ頃から食用にしていたのか分からないが、万葉集(4252)では別れがたい防人の想いをノイバラに絡みつくマメの姿に重ねて歌っており、このマメはヤブマメとされ、昔からその存在は知られていたようだ。
★秋の潮満ち来る波の触れあいて 正子
穏やかな秋の日に、潮波の触れ合う音が聞こえてくるようです。(祝恵子)
○今日の俳句
寄りし娘に持たす枝豆ゆでたてを/祝恵子
ゆでたてのほっくりした枝豆に母のさりげない愛情が読み取れる。立ち寄る娘のさりげなさも、自然体で美しい。(高橋正子)
○現の証拠(げんのしょうこ)
[げんのしょうこ/横浜・四季の森公園] [げんのしょうこ/東京・向島百花園]
★うちかヾみげんのしょうこの花を見る/高浜虚子
★山の日がげんのしょうこの花に倦む/長谷川素逝
★手にしたるげんのしょうこを萎れしめ/加藤楸邨
★草掻き分けてげんのしょうこの花がある/高橋信之
★十月のげんのしょうこは可愛ゆしと/高橋正子
げんのしょうこは、ドクダミ、センブリなどの日本の3大民間薬として用いられる。戦後の四国に居たときのことだが、げんのしょうこを近くの空地などで採取、乾燥し、煎じて飲んだ。下痢の症状に効果があって、これも60年以上も昔の懐かしい思い出なのだが、その美しい花を見た記憶がない。げんのしょうこを「可愛ゆし」と見た率直な実感がいい。(高橋信之)
げんのしょうこは、季語では夏。昨日10月5日、四季の森公園へ信之先生と行った。野外に出かけるときの服装は、家を出るとき少し薄着をして、涼しいくらい、寒いくらいで出かけるのが私の常。それに調整のきく服や手袋、マフラー、スカーフなどを持つ。それに山行きの服装を好んでいる。それ向きに繊維も新素材を使っているせいか、何年たっても痛みも少なく重宝している。
四季の森には、いろいろ珍しいものも、そうでないものも咲いていた。げんのしょうこを林縁の落葉が積む中で見つけた。草丈10センチほどで、花も8ミリほど。小さかった。もう終わりなのだ。関東には白花が多いときくが、昨日も白花であった。民間薬として下痢止めに飲まれているそうだが、私は飲んだことはない。紅色にしろ、白色にしろ、可愛い花だ。
昨日の四季の森公園は秋の花がいろいろと。吾亦紅、山とりかぶと、ノダケ、ヤブマメ、イヌショウマ、釣船草、黄釣船草、溝そば、水引草、ヒヨドリ草、彼岸花、白彼岸花、野菊(おもにはヨメナ)、葦の花、薄コスモス、キツネノマゴ(なぜマゴなのでしょう?)、アメリカセンダングサ、サンシュの実、それに林縁の縁の日陰にはきのこ類など。
マユタテアカネという緋色のしっぽの赤とんぼ、馬追いが、ロープに止まって、カメラを近づけても飛び立たない。キリギリスがよく鳴き、つくつく法師が遠くから聞こえた。野鳥、これがなにかわかないが森に2,3種鳴くのが聞こえた。幸い昨日は、四季の森のスタッフのかたにし草の名前をいろいろ聞くことができた。山とりかぶとはこの山にたくさんあるとのこと。紫式部は見つけることができなかった。カワセミの飛翔も見た。
★かわせみ飛ぶ青の速さというべくに/高橋正子
ゲンノショウコ(現の証拠 Geranium thunbergii)は、フウロソウ科の多年草。日本では北海道の草地や本州~九州の山野、また朝鮮半島、中国大陸などに自生する。生薬のひとつであり、植物名は「(胃腸に)実際に効く証拠」を意味する。玄草(げんそう)ともいう。茎は約30-40cmに伸び、葉は掌状に分かれる。紅紫色または白紫色の花は夏に開花し、花弁は5枚(紅紫花種は西日本に、白紫花種は東日本に多く見られる)。秋に種子を飛散させた後で果柄を立てた様が神輿のように見える事から、ミコシグサとも呼ばれる。近い仲間にアメリカフウロ、老鶴草などがある。
ゲンノショウコはドクダミ、センブリなどと共に、日本の民間薬の代表格である。江戸時代から民間薬として用いられるようになり、『本草綱目啓蒙』(1803年)にも取り上げられた。現代の日本薬局方にも「ゲンノショウコ」として見える。但し、伝統的な漢方方剤(漢方薬)では用いない。有効成分はタンニン。根・茎・葉・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬とし、また茶としても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な整腸生薬であることからイシャイラズ(医者いらず)、タチマチグサ(たちまち草)などの異名も持つ。