■6月ネット句会入賞発表■

■6月ネット句会■
■入賞発表/2014年6月22日■

【金賞】
★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
梅雨のころから、雑草の繁茂に悩まされる。暑い日中を避けて早朝に草取りをすると、草だけでなく、妻も露にぬれてしまっている。なんとはなしの、さりげない情愛がいい。(高橋正子)

【銀賞2句】
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
余り苗として田の隅に置かれたままの苗も、そこに根付いて、緑の葉も生き生きとして育ってくる。この苗は、もしも定植した苗が枯れたりするようなことがあれば、代わりに植えられる。余り苗といっても緑に命がすばらしい。(高橋正子)

★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
ネットで調べると、吉野線(よしのせん)は、奈良県橿原市の橿原神宮前駅から奈良県吉野郡吉野町の吉野駅までを結ぶ近畿日本鉄道(近鉄)の鉄道路線、とある。沿線のどの田にも早苗が直線にきれいに植えられて、すっきりとした眺めが望める。「早苗の直線」と「吉野線」の響きあいがとてもいい。(高橋正子)

【銅賞2句】
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
田植のあと早苗は根付き、夏至のころ、根付いた苗は<ぶんけつ>する。梅雨の最中であって、雨は田を「浸す」のである。豊かな水と青々とした田は、日本の原風景であり、たゆまぬ力を感じる。(高橋正子)

★一瞬に蓮の葉返し青葉風/内山富佐子
蓮の葉が青々としてくるころは、あたりの木々も青葉となる。一瞬に強い風が吹き、蓮の広葉を裏返し、白っぽい緑の色を見せる。様々な緑の対比にが素直で、さわやかだ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★若竹の風光り透く兄の忌に/藤田洋子
梅雨の晴れ間のみずみずしい若竹を吹く風の中、在りし日の颯爽としたお兄様の姿が偲ばれるようです。(柳原美知子)

★水平線乱し寄せ来る卯波かな/古賀一弘
広々と眺望出来る場所に立って海を眺めていらっしゃるのでしょう。遥かな水平線を乱す程の白い波頭を立て卯波が寄せてくる。夏を迎える頃の壮大な海の力強さを感じます。(佃 康水)

★朝顔の初花すっきりと一輪/高橋正子
一輪開く朝顔が何とも初々しく、美しく、清々しい朝の始まりを感じさせてくれます。今年初めて朝顔を目にされた作者の感動が心にすっと届きます。(藤田洋子)

★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★一瞬に蓮の葉返し青葉風/内山富佐子
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子

【高橋正子特選/7句】
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子
5月初旬から6月のつい先日まで植えられた苗も根付き、早くも夏至を迎え青々と育って来ている。夏至の雨がたっぷり田に溢れ苗を浸している様子は、豊穣の秋を約束しているようで心が満たされ、安堵感がある。「田を浸す」との下五の措辞が効いている。(桑本栄太郎)
田植えが済んだかと思うと早やしっかりと根付き青々としてきました。今は水を欠かすことが出来ない時期ですが、夏至の雨が苗を浸してくれて居る情景を農家の人達は安心して見守って居られる事でしょう。 (佃 康水)

★ばら園や丹沢の峰近々と/渋谷洋介
ばら園からは、丹沢山系の峰々が間近に見られる。華やかな色彩のばら園と青々とした丹沢の峰々が好対照で、生命感にあふれている。(高橋正子)

★故郷の水の冷たさ五月過ぐ/内山富佐子
屹度井戸水と思います。遠い昔を懐かしく思い出しました。井戸の水は夏冷たく冬は、温かいのです。その冷たい水で冷やした果物の色の鮮やかさ。今思ってもすっきりです。 (迫田和代)

★紫陽花の垣にあふれる港町/小西 宏
港町に、群れ咲く紫陽花の藍色やライトブルーが明るい彩りを与えてくれます。海辺の澄んだ空気に、より生き生きと美しさを増す紫陽花です。(藤田洋子)

★早朝の草取り妻は露にぬれ/河野啓一
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子

【入選/16句】
★緑蔭の風に語らうカフェテリア/桑本栄太郎
カフェテリア の外にある緑陰でのお茶を、楽しんでおられるようです。風通しもよく、お話も弾んでいるのでしょうね。 (祝恵子)

★子雀も飛び方上手に梅雨晴れ間/河野啓一
夏の青空を嬉々として飛んでいる子雀の様子をよく観察しておられ、子雀に対する温かい愛情が感じられるいい句だと思いました。(井上治代)

★沢飛びの石譲り合う花菖蒲/佃 康水
菖蒲園のなかに人が通れるように飛び石が敷いてある。交差する見物客はお互い譲り合って花菖蒲を眺めている。そんな景が目に浮かぶようだ。「石譲り合う」と言う措辞が読者に暖かい気持ちにさせる。 (古賀一弘)

★棚田ごと夕陽に染まる青田かな/佃 康水
傾斜地に耕された棚田も青田となり、今くまなく夕陽に染まっています。穏やかで、調べもよく、どこか懐かしい景が思われます。(小川和子)

★水出しの緑茶の甘さ夏に入る/内山富佐子
水出しの緑茶の色彩、美味しさに清々しい夏の訪れが感じとれます。生活の営みとともにある俳句をあらためて実感いたします。(藤田洋子)

★短夜や今日が昨日になる時報/矢野文彦
今日が昨日になる時報は午前0時、夜も更けた時間ですが、この季節の夜は短く、気が付けば、その時間になっていねことに気が付きます。きっと夜も充実した時間を過ごされているのだろうと想像ができます。(高橋秀之)

★白百合に日差して山の雨上がる/藤田洋子
雨の中に咲く白百合の清楚。そこに日の当たり花の明るさが一段と増したとき、全山に雨が上がる。生命と大自然の織りなす静かで輝かしい妙味。 (小西 宏)

★凌霄花(のうぜん)の満つれば海の色想う/小西 宏
のうぜんと海の色との飛躍が印象に残りました。意味付けは難しいかもしれませんが、詩的な響きが魅力です。 (河野啓一)

★夏の雨止んで空また雲重し/高橋句美子
夏の季節風が高温で湿気を含んだ空気を運んで来るので、我が国では雨量が多く、黒雲は重く感じられる。リズム感が良く梅雨の空を的確にあらわしているとおもいます。 (小口泰與)

★もう会えぬ人をあれこれ明易し/矢野文彦
短い夏の夜が明けそうな時刻。夢の中の続きにように、もう会えなくなってしまった人をあれこれと考えるとますます目が冴えてしまう。(古田敬二)

★汚れなき白い色した花菖蒲/迫田和代
花が開いてまだ間もないのでしょう。汚れなき花菖蒲は、活き活きとして、可憐な花を咲かせていることと思います。 (高橋秀之)
色とりどりの花菖蒲が咲き誇っています。その中でも長く伸びた花茎の天辺に汚れの無い白菖蒲が咲き梅雨の中に一段と優雅に潤っています。(佃 康水)

★田毎はや青田波打つ頃となり/小川和子
田植えの苗も早や田水が見えなくなる程株が張り風に応える程に成長して来ました。暑くなる頃の青田波は涼しさを覚えると同時に穂の出るまでの青々とした美しい田園風景です。(佃 康水)

★竹の群れ水の流れのあり涼し/祝恵子
竹が風にそよぎ、せせらぎの音も涼やかで、暑い夏を忘れさせてくれる情景だと思います。 (井上治代)
お近くの庭園での作品でしょうか。竹林が手入れよく配され、水辺には菖蒲などが咲きみちて絶えず水音がする。竹のすがすがしさ、水の流れがそのままに涼しそうです。(小川和子)

★暑き日の作業の後の水あまし/井上治代
梅雨どきとは言え、晴れた日など盛夏を思わせるほどの暑い日があります。農作業は、自然との大いなる交流とも言えますが、ひと息ついた時の水の美味しさは格別でしょう。「水あまし」に収穫の喜びまで伝わってくるようです。(小川和子)

★夏風に揺れる木漏れ日御堂筋/高橋秀之
川筋から吹いてくる涼しい夏の風に揺れる通りの木漏れ日。都市の明るく軽快な夏の情景がリズムよく詠まれていて惹かれます。(柳原美知子)

★山里の暖簾くぐるや一夜酒/小口泰與

★■選者詠/高橋信之
★花菖蒲咲かせしここは農家の庭
★驚きにまた楽しみにカラーの黄
★るり柳明るし丘の西洋館

■選者詠/高橋正子
★青ぶどう明るく結ぶ西の窓
西の大窓に夏の光を浴びて透ける青葡萄の固くつぶらな実が、洋画を見るようにクローズアップされます。(柳原美知子)

★朝顔の初花すっきりと一輪
★夾竹桃の花のうずめる梅雨の家

■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★田の隅に緑生き生き余り苗/柳原美知子
★どの田にも早苗の直線吉野線/古田敬二
★夏至の雨根付きし苗の田を浸す/藤田洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いいたします。

■6月ネット句会清記■

■6月ネット句会■
■清記/20名60句

01.花影の影に花影花菖蒲
02.水平線乱し寄せ来る卯波かな
03.梅雨晴間フランスパンを買ふ銀座
04.山里の暖簾くぐるや一夜酒
05.カーテンの色変えており五月晴
06.湖畔にてちと空酒や閑古鳥
07.よみがえる7つの川と新緑と
08.五月雨や雨に濡れない心旅
09.汚れなき白い色した花菖蒲
10.名の木札水にしっかと花菖蒲

11.池の辺の椅子に寛ろぐ梅雨晴れ間
12.竹の群れ水の流れのあり涼し
13.枇杷の実や芦屋に多し白き家
14.夏潮の運河眼下にモノレール
15.緑蔭の風に語らうカフェテリア
16.菖蒲田の声なき声や沖縄戦
17.七変化波打つ如し彩重ね
18.ばら園や丹沢の峰近々と
19.早朝の草取り妻は露にぬれ
20.子雀も飛び方上手に梅雨晴れ間

21.百合咲いて夕べの灯りほの白く
22.夏風に揺れる木漏れ日御堂筋
23.園内を色とりどりに花菖蒲
24.そよそよと隣の席にも団扇風
25.沢飛びの石譲り合う花菖蒲
26.棚田ごと夕陽に染まる青田かな
27.葉畳の池に尾を打つ糸蜻蛉
28.花菖蒲咲かせしここは農家の庭
29.驚きにまた楽しみにカラーの黄
30.るり柳明るし丘の西洋館

31.朝顔の初花すっきりと一輪
32.青ぶどう明るく結ぶ西の窓
33.夾竹桃の花のうずめる梅雨の家
34.白川を揺らめき渡る夏の蝶
35.長谷寺の若葉の駅を過ぎにけり
36.どの田にも早苗の直線吉野線
37.三輪の菖蒲開きて梅雨に入る
38.潮風を胸いっぱいに梅雨晴間
39.暑き日の作業の後の水あまし
40.水出しの緑茶の甘さ夏に入る

41.一瞬に蓮の葉返し青葉風
42.故郷の水の冷たさ五月過ぐ
43.もう会えぬ人をあれこれ明易し
44.短夜や今日が昨日になる時報
45.紫陽花の庭から縁へ人出入り
46.夏至の雨根付きし苗の田を浸す
47.若竹の風光り透く兄の忌に
48.白百合に日差して山の雨上がる
49.田毎はや青田波打つ頃となり

50.畦道を行く薫風に身をまかせ
51.茶庭なる静寂にひたる額の花
52.ミニトマト雨に鮮やかひとつ熟れ
53.田の隅に緑生き生き余り苗
54.青梅雨の瀬音に包まる里行けば
55.凌霄花(のうぜん)の満つれば海の色想う
56.夜に聞けり梅雨戻り来て濡れる音
57.紫陽花の垣にあふれる港町
58.雨降りの紫陽花の青いきいきと
59.夏の雨止んで空また雲重し
60.起きぬけの額汗ばむ夏至といい

※選句を開始してください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、6月22日(日)午後6時から始め、同日(6月22日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、6月23日(月)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、6月23日(月)午前10時~6月24日(火)午後6時です。

◆6月ネット句会のご案内◆

◆6月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(夏の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年6月15日(日)午後6時~6月22日(日)午後6時
④選句期間:6月22日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:6月23日(月)午前10時
※投句を受け付けています。

■ご挨拶/5月ネット句会■

■5月ネット句会■
ご挨拶(高橋正子/主宰)
 今月の句会は、5月の第2日曜日ですので、母の日と重なりました。ここ数日は、よいお天気が続きで今日も「風薫る」日でした。薔薇も芍薬も、そしてあやめに、かきつばた、ルピナスや矢車草など見事に花を咲かせています。本当に「風薫る」です。水辺には睡蓮も花開き、こんなにも花がたくさん咲く季節がほかにあったかしらと、改めて振り返りました。こんなよき日、入賞の皆さまおめでとうございます。また、ご投句、選とコメントをありがとうございました。最近のニュースを知れば、世の中どうなっているだろうと疑問を持たざるを得ないような出来事が起こっていますが、それに振り回されず、「よい生活がよい俳句を」を実践した句を投句いただいて、大変嬉しく思っています。
 句会の管理運営は信之先生、互選の集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。いつもありがとうございます。すっかり初夏の陽気に句会の合間、近所の花屋さんでなでしこの苗をふた株買って帰り、プランターに植えました。ベランダがすっかり夏らしく明るくなりました。来月の句会を楽しみにお待ちください。これで5月ネット句会を終わります。

■5月ネット句会入賞発表■

■5月ネット句会■
■入賞発表/2014年5月11日■

【金賞】
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)

【銀賞】
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)

【銅賞2句】
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
吹かれてゆくしゃぼん玉を見ると、向こうの家の屋根に消えてしまった。屋根瓦は日本らしい風景を形作るもの。その屋根瓦に淡いしゃぼん玉が消える。これは日本的抒情。(高橋正子)

★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
みどりの日は5月4日。風薫る季節で、料理をするにも気持ちがさわやかである。包丁もリズムよく、軽やかに音を立てる。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★母の日の全方向に雲もなし/高橋正子
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)

★噴水の真ん中一本高く噴き/古田敬二
噴水のありのままの描写に、空へ垂直に立ち上がる噴水の勢いを感じます。水辺の清涼感、季節の明るさやみずみずしさが思われます。(藤田洋子)

★弁当をつくる幸せ風薫る/井上治代
お弁当を作るのは、元気にでかることができることの証で幸せなことです。風薫る季節のお弁当作りは、きっと楽しいひとときになったことでしょう。(高橋秀之)

★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘

【高橋正子特選/7句】
★新緑の真っ只中を駆け抜ける/高橋秀之
厳しい冬が去り燃え上がる新緑の嬉しさに胸一杯青い空気を吸い駆け出したい気持ち 私にも判ります。真っ只中と言うのもいいですね。(迫田和代)

★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
目高の水を取り替えて、目高の泳ぐ姿も生き生きとして見える。作者の愉快な気持ちが伝わってきて、初夏にふさわしいすっきりとした情景です、(河野啓一)

★アイリスの似合うしょう洒な夏館/小川和子
この夏館には菖蒲でもあやめでもなく、やはりアイリスが似合うのでしょう。アイリスやバラに囲まれた夏館が目に浮かびます。洒落た感じがする句だと思いました。 (井上治代)
涼やかな夏の装いの有るお家の庭にアイリスが咲いている。色は紫?白?と涼やかでしゃれた夏館の想像が膨らみます。夏の深まりにつれ更に涼やかさを工夫されることでしょう。(佃 康水)

★山藤や木にまきついて風まかせ/井上治代
この時期、車窓から或いは山辺に出掛けると全く同じ景色を見ることが出来ます。雑木山の大きな木々に巻き付いて垂れ下がり風の意のままに揺れています。四季の移ろいの風情を感じ取る事が出来ます。(佃 康水)

★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘

【入選/13句】
★若竹にひかり透せる里の奥/小西 宏
立体感があって、広がりのある句だ。作者独自の視点がいい。(高橋信之)

★青柿よすくすく育て実りまで/河野啓一
作者の思いが直に伝わってくる。快い読後感がうれしい。いい心境の句。(高橋信之)

★窓若葉野鳥図鑑のページ繰る/藤田洋子
窓の若葉がアウトドアの世界に誘ってくれる。野鳥図鑑のページ繰れば、小鳥の囀りが聞こえてくる。楽しい世界だ。(高橋信之)

★麦秋の路線バスゆく田中かな/桑本栄太郎
麦の穂が熟れはじめたのですね。バスの窓から臨む麦畑の景が広々と思いうかびます。「路線バス」が良いです。(小川和子)

★風薫る三三五五に車椅子/矢野文彦
心地よい5月の空の散歩道、笑顔が目にうかぶようです。(渋谷洋介)

★蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す/小口泰與
「蜘蛛の子を散らすように」との言葉通り、生まれたばかりの蜘蛛の子はそれぞれ、彼方此方に向かって一気に走り出します。生まれたばかりの生命が元気よく動き回る、命が輝く今の季節を「遁走す」との措辞により、巧みに詠まれました。(桑本栄太郎)

★母の日の昼餉の支度娘と並び/藤田洋子
母の日に、我が娘と並んで食事の支度が出来るとは娘にとっても自分にとっても幸せを感じる一時です。今日は特別愛情溢れる美味しい母の日の御馳走が出来上がった事でしょう。そしてこうして母の味を受け継がれてゆくのでしょう。作者の和やかなご家庭を垣間見る思いがいたします。(佃 康水)
一緒にお住まいなのか、訪れられたのか、母の日のとても和気あいあいのいい関係の親娘ですね。(祝恵子)

★学び舎を越えて背山へ黒揚羽/佃 康水
学び舎とは、作者の母校でしょうか、それも幼い頃通った小学校。校舎の背後には見慣れた妹背の山が肩を並べ、故郷の思い出と一体になっています。黒揚羽は故郷を訪ねた今見る姿なのでしょうか、あるいは思い出の中の風景か? 黒揚羽の飛翔が印象鮮明です。(小西 宏)

★豆の花支柱の丈のまだ足らず/桑本栄太郎
支柱の丈より伸びようとする豌豆は今花盛り、収穫が楽しみですね。豆ごはんや卵とじなどまで想像がふくらみます。(黒谷光子)

★著莪の花愚直に生きし八十年/渋谷洋介
正直で勤勉に生きてきた八十年。その人生こそが宝だと思います。目立たないけれど存在感のある著莪の花との取り合わせがステキだと思いました。(井上治代)

★ルピナスや紫紺の妙義彫り深し/小口泰與
妙義彫りがどんなものか実際には知らないのですが、咲きはじめた新鮮なルピナスの花は細かく刻んだ彫刻のように見えなくもありませんね。雰囲気が出ていると思います。(河野啓一)

★急かさるる堰に崩れし花筏/渋谷洋介
水面に浮かぶ花びらが繋がり、堰へと流れてゆく花筏の美しさ。花の季節の終わりに、もうしばらくその美しさをとどめてほしい願い、花筏へのいとおしみがしみじみと伝わります。 (藤田洋子)

★いっときの声高らかに揚雲雀/黒谷光子
透きとおった美しい声で鳴く雲雀。鳴きながら空高く舞い上がった後の静寂も心地よく感じられる句だと思います。 (井上治代)

■選者詠/高橋信之
★昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
朝日は日の出とともに昇りはじめ、時間とともに昇ります。若葉に透けて若葉をくぐって朝日が昇るすがすがしい朝がそこにあります。(高橋秀之)

★朴の花咲きゆっくりとした時間
大きな白い方の花が咲いて初夏のひと時がゆっくりと過ぎて行きます。何かと世相騒がしい昨今、得難い貴重な時間と言えましょうか。こころ休まる詠みに惹かれます。 (河野啓一)
今まで、朴の花は飛騨路そして深山に咲いているものしか知りませんでした。また薫りや実物の全景も見た事がなく、只々仰ぐばかりです。大きな葉の上に高く咲く朴の花は散ることは無いと聞きますので、「ゆっくりとした時間」の措辞はゆっくりと仰いでいる作者、そして木の上にのみ過ごす朴の花だからこそ相通じる措辞の様に思います。(佃 康水)

★若葉道青空少し見え隠れる

■選者詠/高橋正子
★母の日の全方向に雲もなし
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)

★そよぐほかならず池畔の矢車草
可愛らしい矢車草が池の畔にひっそりと咲いている。時たまのそよ風に少し揺れるだけで、いかにも平穏で好もしい風情です。 (河野啓一)

★睡蓮の流れ来るも茎があり

■互選高点句
●最高点(9点)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いいたします。

■5月ネット句会清記■

■5月ネット句会■
■清記/18名54句

01.緑濃き森となりたり今日立夏
02.噴水の真ん中一本高く噴き
03.葉桜の木漏れ日揺れるブロンズ像
04.麦秋の路線バスゆく田中かな
05.豆の花支柱の丈のまだ足らず
06.ひるがえる白き葉裏や青あらし
07.風薫る三三五五に車椅子
08.直立の茎に風好しえびね蘭
09.陽を待てば風も叶いぬ鯉幟
10.アイスティー湖畔に集うサイドカー

11.ルピナスや紫紺の妙義彫り深し
12.蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す
13.母の日の全方向に雲もなし
14.そよぐほかならず池畔の矢車草
15.睡蓮の流れ来るも茎があり
16.昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
17.若葉道青空少し見え隠れる
18.朴の花咲きゆっくりとした時間
19.水替えてメダカの影の新しき
20.ふかしいも夏の朝餉の具となりぬ

21.地に触れる藤花日に日に伸びてゆく
22.急かさるる堰に崩れし花筏
23.著莪の花愚直に生きし八十年
24.空を飛ぶ嬰の微睡春一日
25.しゃん玉向こうの家の屋根に消え
26.水と土遠い故郷の苗代を
27.瀬戸の夜浪間に揺れる春の月
28.さわやかに風吹きぬけて鯉幟
29.青柿よすくすく育て実りまで
30.海開き水冷たくて児らはしゃぐ

31.洗いたてのカーテンそよと五月光
32.窓若葉野鳥図鑑のページ繰る
33.母の日の昼餉の支度娘と並び
34.新緑の真っ只中を駆け抜ける
35.散水の飛沫にうっすら虹かかる
36.葉を揺らし木々を吹き抜く初夏の風
37.学び舎を越えて背山へ黒揚羽
38.青空の高きへ掲ぐ朴の花
39.遠足子ジャングルジムを取り合えり
40.世界遺産ことに五月の富士の山

41.弟の仇(あだ)に兄出る子供の日
42.包丁の音軽ろやかにみどりの日
43.実桜を葉陰に風の行き来する
44.アイリスの似合うしょう洒な夏館
45.さざなみの立ちて早苗田一面に
46.青空の点となりゆく揚雲雀
47.いっときの声高らかに揚雲雀
48.山峡の村の賑わう祭かな
49.野に遊び白詰草の花飾り
50.若竹にひかり透せる里の奥

51.泥水に耀き立てり葦の青
52.山藤や木にまきついて風まかせ
53.弁当をつくる幸せ風薫る
54.思い出は香りとともに豆の飯

※互選を開始してください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、5月11日(日)午後6時から始め、同日(5月11日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、5月12日(月)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、5月12日(月)午前10時~5月13日(火)午後6時です。

◆5月ネット句会案内◆

◆5月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(春か、夏)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年5月11日(日)午前0時~午後6時
④選句期間:5月11日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:5月12日(月)午前10時

■ご挨拶/4月ネット句会■


■4月ネット句会■
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今年の花も散り始めました。昨日6日は冷え込んで、急用で出かけた電車もしっかり暖房されておりました。今朝も冷え込みは残っておりますが、横浜は暖かい日となりそうです。今月はちょうど桜の季節の句会となり、桜がさまざまに詠まれておりました。ご病気が快癒されたり、旅行を楽しまれたかたもいらっしゃるようです。桜が散り始めれば、もう花楓の季節。金賞には小西宏さんの「花楓」の句が選ばれ、新しい季節の新鮮さを思いました。入賞の皆さま、おめでとうございます。投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。互選開始にあたり、清記の発表が遅れましたことをお詫びいたします。句会の管理運営は信之先生にお願いいたしました。お世話にありがとうございました。まもなく新緑の美しい季節となることでしょう。来月の句会を楽しみにお待ちください。これで4月ネット句会を終わります。

◆4月ネット句会入賞発表◆

■4月ネット句会■
■入賞発表/2014年4月7日■

【金賞】
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
楓の花は、新緑の季節に先駆けて、暗紅色の花を開きかけた葉の先につける。遠目には、小さな丸い暗紅色の点に見え、かわいらしい。子どもたちは、子どもたちで、ようやく暖かくなったと思うと、はやも水を喜び、浅い池に入って、ザリガニや小さい魚など追いかけて遊ぶ。花楓も子どもたちの遊びも、季節を先駆けた新鮮さがある。(高橋正子)

【銀賞2句】
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花
この句は、桜の花びらを透かして仰ぐ特別な「青き空」がテーマである。桜あっての青空、青空あっての桜なのだ。(高橋正子)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
母の忌日が近付いた。燕がもう来るころだ。燕が来れば亡き母が記憶にありありと浮かんでくる。(高橋正子)

【銅賞3句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
「嬉しさよ」が、率直過ぎる感も否めないが、この句には、言葉を超えて、咲き満てる花に出会った一期一会の真実なる嬉しさがある。(高橋正子)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
山茱萸の花は雨が降ると小さい花が無数に地面に落ちる。雨粒が一つ一つの花を打って散らした。それが「雨の数ほど」となる。春の雨の冷たさも、降り方も山茱萸の花によってよりよく知れる。(高橋正子)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
一線の飛行機雲が解けてゆく。解ける雲のやわらかさと、花菜畑の色合いがよくマッチして、抒情的な春らしい風景となっている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
満開の桜の花が、青空を埋め尽くすように咲いている光景は幻想的で美しかったことでしょう。そのような桜の花に出会った作者の感動が素直に伝わってきました。(井上治代)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
燕の来る頃に逝かれたお母様。毎年の燕の到来は、母の身代わりであるかのようで、力強い飛翔で元気づけてくれます。光に満ち溢れた季節の始まりとともに生前の母への想いを新たにします。 (柳原美知子)

★チューリップ剪り集めれば虹の色/高橋正子
色とりどりのチューリップ。咲いた花を剪ってひとところに集めれば、虹のように七色の花が集まり、にぎやかに感じられます。 (高橋秀之)

★横浜の小径まがれば花辛夷/川名ますみ
小径を曲がると、辛夷の花が目に飛び込んできました。思いもかけず出合った花は、青空に白く輝いて作者を歓迎してくれました。横浜という地名も洒落た感じがして花辛夷に合っていると思いました。(井上治代)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
飛行機雲が静かにゆっくりと解けて行く様子を見つめている作者を想像することができました。遠景には花菜畑が広がり、安らかで大きな光景です。(井上治代)

★子ら登るジャングルジムへ花の雲/小川和子
咲き連なっている桜、そのそばで遊具に夢中になっている元気な子供達。大人も子供も春を謳歌している楽しい風景です。 (佃 康水)

★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏

【高橋正子特選/7句】
★高き木の高きにすもも花盛り/高橋信之
桃の花より少し遅れて咲くすももの花は二つ三つずつ素敵に咲きます。高きのりフレインがとっても素敵です。 (小口泰與)

★河原に飛ぶ影滑る初燕/古田敬二
野山に出かけたくなる春ですが河原にもさまざまな春を見つける事が出来ます。その河原へ立っているとふと一閃滑って行く影が有りました。初燕です。「影滑る」に初燕の勢いを感じます。 (佃 康水)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
★青空を飛んで桜の散りゆけり/小西 宏
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
★ごうごうと山の桜に吹く風よ/多田有花
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花

【入選/14句】
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎
平易な言葉で春爛漫の景が描かれている好きな句です。 (河野啓一)

★甦る兄の軍装紫木蓮/渋谷洋介
お兄様が出征なさったのは紫木蓮が咲く頃だったのでしょう。そして、もしかしたらそのまま戻られなかったのかもしれません。すでに遠い記憶、けれど紫木蓮の色を見ると、その日のことが鮮明によみがえります。(多田有花)

★花筏割りて浮き来る堀の鯉/柳原美知子
一瞬にして堀の水面にびっしり浮かぶ花筏を想いました。堀の水の中から鯉も下から青空が見えなくなり、驚いたことでしょう。移りゆく晩春の光景を趣豊かに詠われました。(桑本栄太郎)
暖かくなると堀の鯉の動きも活発になってきます。花筏を割って浮いてくる鯉に春本番を感じます。 (高橋秀之)

★植木鉢に春の花苗とり合わせ/河野啓一
春になると植木市や苗木市など盛んに行われたり、また家庭で育てた花苗を寄せ植えされているのを良く見かけます。自分で彩りよく花苗を植えながらまた咲いてくるのを見るにつけ春を実感し心癒されます。(佃 康水)

★花満ちる峰を通りぬ時雨雲/多田有花
登山の途中でしょうか、山は桜満開、時雨雲が雨を連れて通り過ぎて行った。空を見上げている詠者です。(祝恵子)

★淡き色いくつも滲む芽吹き山/古田敬二
かつて山間の道を通った頃、春を迎える度に、同様の景色を望みました。この季節、花であったり芽立ちであったり、山の合間にぽつぽつと「淡き色」が覗きます。それは輪郭を画せず、まさに「滲む」ようでした。記憶にあった景が確かな言葉で表される、その清々しさに感謝しながら、また、懐かしむ時を頂きました。(川名ますみ)

★桜満ち堀に枝垂るる風のまま/柳原美知子
お城を取り巻く堀。その堀に植えられた枝垂れ桜だろうか。まだ満開へは2,3日あるが、ゆっくり揺れてその時を待っている。(古田敬二)

★花満ちて瑞枝の揺るる糸桜/小川和子
満開の糸桜に圧倒されつつ、しなやかな緑の枝の揺れに目を魅かれる。その細やかな観察に、花満てる大きな風景が浮かび上がります。(小西 宏)

★奔放にあそべやあそべ春の鳥/井上治代
春になり暖かくなって鳥たちの動きも活発になってきます。奔放に遊ぶだけでなくあそべやあそべという言葉の重なりがその喜びを表しているようです。 (高橋秀之)

★目の前は桜遠くは瀬戸内海/高橋秀之
目の前には満開の桜。目を移し遠くを眺めるときらきらと輝く青い海。島国日本の春の典型的な景色を素直に詠まれていると思いました。(井上治代)

★森の辺を埋めて耀く桜花/河野啓一
桜の色は遠くから見てもそれとわかります。森は針葉樹か、広葉樹か、それによって雰囲気が変わりますが、いずれにしても桜色がそれを包んで柔らかです。(多田有花)

★供花添えて鶯音聞く心地よさ/祝恵子
お墓参りでしょうか。墓苑のまわりに鶯がいて囀っています。花筒を清めてお花を入れ、手を合わせられたらそれにあわせるように「ホーホケキョ」と澄んだ声が。心が洗われますね。(多田有花)

★人溢れとんび高舞う花の山/佃 康水
お花見の名所はこの週末いずこも大変な人出だったことでしょう。花の下で飲み、歌い、踊り、それをとんびが高みの見物です。(多田有花)

★水脈を曳きゆたりゆたりと春の航/下地鉄
春の航を遠くから見ていらっしゃるのでしょうか。「ゆたり ゆたり」と重なっている所から広く青い海、ゆったりとした海の情景が見えて参ります。「春の海ひねもすのたりのたりかな」の蕪村の句を思い出しました。 (佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★高き木の高きにすもも花盛り
★道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
★花好きの多き街よ山茱萸咲く

■選者詠/高橋正子
★車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
★雨に花は花びら少しずつこぼす
★チューリップ剪り集めれば虹の色

■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■4月ネット句会清記■

■4月ネット句会■
■清記/19名57句

01.大根の花に夕日や海の風
02.選抜の野球果ており春惜しむ
03.青ざめて花の嵐に散りにけり
04.横浜の小径まがれば花辛夷
05.花の塵はなれし枝の影を載す
06.菜の花の向こうの富士を見降せり
07.砕けたる石を除けば蜥蜴出る
08.一握の砂読み終えて春かなし
09.奔放にあそべやあそべ春の鳥
10.咲きのぼる花色さやか塩ガ森

11.桜満ち堀に枝垂るる風のまま
12.花筏割りて浮き来る堀の鯉
13.斑なる浅間や佐久の花明かり
14.千本の桜わなわな雨の中
15.山茱萸の雨の数ほど散りにけり
16.花影や防犯カメラ校門に
17.風まとい頷き返す雪柳
18.甦る兄の軍装紫木蓮
19.森の辺を埋めて耀く桜花
20.はや芽吹き空に散るかな柿若葉

21.植木鉢に春の花苗とり合わせ
22.青空を飛んで桜の散りゆけり
23.コゲラ来て紅鮮やかに桃の花
24.子ら池に足入れ遊び花楓
25.本堂に甘茶零るる花祭り
26.淡き色いくつも滲む芽吹き山
27.河原に飛ぶ影滑る初燕
28.春の泥喜び跳ねる子の足裏
29.風光る女の揺らす耳飾
30.解け行く飛行機雲や花菜畑

31.供花添えて鶯音聞く心地よさ
32.ミモザ咲く寺門の紋に触れそうに
33.猫先へさきへと寺へ桜咲く
34.人溢れとんび高舞う花の山
35.枝移り鳥影忙し飛花落花
36.踏まぬよう見極む丘に初蕨
37.水脈を曳きゆたりゆたりと春の航
38.せっかくの嘘も言えずに萬愚節
39.捉えても逃げる記憶の春の月
40.ごうごうと山の桜に吹く風よ

41.花びらを透かして青き空仰ぐ
42.花満ちる峰を通りぬ時雨雲
43.咲き満てる花に出会いし嬉しさよ
44.咲く花も散る花も今ありてこそ
45.花冷えや三里をやいてあすを待つ
46.見上げれば桜と青空だけがある
47.花びらの途切れることなし大桜
48.目の前は桜遠くは瀬戸内海
49.花満ちて瑞枝の揺るる糸桜
50.子ら登るジャングルジムへ花の雲

51.燕もう来る頃母の忌近づきぬ
52.車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
53.雨に花は花びら少しずつこぼす
54.チューリップ剪り集めれば虹の色
55.高き木の高きにすもも花盛り
56.道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
57.花好きの多き街よ山茱萸咲く

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、4月6日(日)午後10時から始め、4月7日(月)午前9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。