7月1日~7月10日

7月10日(4名)

多田有花
川蜻蛉ゆっくり翅を閉じ開き★★★
今開くまごうことなき白蓮や★★★
巨大アイスクリーム買う夢を見る★★★

桑本栄太郎
シャワシャワと鳴けば汗噴く朝かな★★★
<生協にて伯耆酪農製品>
故郷のブランドアイス最中買う★★★
<田舎での部活にお想い出>
大薬缶もてかき氷買う部活生★★★

廣田洋一
洋食のコース食べつつ船遊★★★
立ち葵雨にも負けず咲き上り★★★
ミニトマト縁に飾りてサラダかな★★★

小口泰與
蜻蛉のカメラレンズをがっちりと★★★★
河骨や二頭の小亀甲羅干し★★★
合歓咲くや野鳥の声の盛んなり★★★

7月9日(6名)

小口泰與
あけぼのや夏鶯の声盛ん★★★
河骨の沼をおさめし朝かな★★★
翡翠や水面へ向かい一直線★★★

多田有花
ひまわりよ太陽の花の孤高なり★★★
薄紅の花びら広げ朝の蓮★★★★
のうぜん花落ちたる花を下に見て★★★

廣田洋一
川の土手鬼百合の花真盛り(原句)
鬼百合の花真っ盛り川の土手(正子添削)

川べりの風と遊べる揚羽蝶(原句)
川べりの風と遊ぶや揚羽蝶(正子添削)

デッキにて乾杯したる遊船★★★

土橋みよ
虫除けを提げて獅子唐摘む夕べ★★★★

鰭を張り皿からはみ出る飛魚焼(原句)
鰭を張り飛魚皿からはみ出せり(正子添削)
細かく言う場合も大切ですが、なにもかも言う必要はありません。省略できるところは省略してみましょう。(髙橋正子)

小机にほの香る青柚子の枝(原句)
青柚子の枝や机にほの香る(正子添削)
音数を整えるために、「小机」はこの句の場合は「机」でもいいでしょう。(髙橋正子)

桑本栄太郎
初蝉の鳴き出し直ぐに止みにけり★★★
川べりの地道を行くや草いきれ★★★
堀割りに鯉のつどうや鷗外忌★★★

上島祥子
H旗や夏の海風船沖へ★★★
情景は夏らしく、涼しそうでいいです。言いたいことをもう少し整理してまとめるといいでしょう。いわゆる三段切れになっています。(髙橋正子)

西日差すホームに遅延の列車待ち★★★

始発から見下ろす街の夏運河(原句)
始発車から見下ろす街の夏運河(正子添削)

7月8日(4名)

小口泰與
翡翠のまん丸目玉動きけり★★★★
青葦へ鳥の来ている山の沼★★★
釣り糸の楉に絡む夏の夕★★★

廣田洋一
きらきらと人を呼び込む夏の海★★★
ミニトマト縁を飾りてサラダかな★★★
朝湯浴びオーデコロンを振りかけぬ★★★

桑本栄太郎
田舎よりこんな大きなトマト届く★★★★
午後よりの雨の予報の溽暑かな★★★
ゆらゆらと道に迫り出す百日紅★★★★

多田有花
七夕の笹飾られし公園に★★★
風通る部屋で寛ぐ小暑なり★★★
朝の蚊に刺されて気づく蚊の変化★★★

7月7日(5名)

小口泰與
夏祭しばらく降りし通り雨★★★★
みんみんや長きお告げを宣えし★★★
淵に来てしばらく山女回遊す★★★

多田有花
涼しさやチェストツリーは空に向く★★★
サルビアに優しき色もありにけり★★★
百日草ひと日を珠玉として暮らす★★★

廣田洋一
七夕祭地下広場にてコンサート★★★
北国も真夏日となる空模様★★★
香水の土産買いたるシャンゼリゼ★★★

友田修
病窓にあらためて知る夏の朝★★★
木洩れ日の微動だにせぬ夏至の道★★★
夏蝶の行きつ戻りつ木陰かな★★★

桑本栄太郎
<三ヶ月定期健診>
初蝉の声を聞きつつ病院へ★★★
受付のマイナ保険の炎暑かな★★★
病院の中庭の木や蝉の殻★★★

7月6日(6名)

廣田洋一
樹齢二千年杉の木高く茂りたる★★★
神さびし神殿仰ぐ青葉風★★★
夕焼やろうそく島の灯を灯し★★★★

小口泰與
百合の香の風に包まる我が髪膚★★★
雷鳴のしばしば襲う山の径★★★
薫風や巌に弾ける谷の水★★★★

多田有花
サルビアや汲み上げられし水を浴び★★★★
風受けて夏木立なお盛んなり★★★
夕立の近づく気配の風吹けり★★★

桑本栄太郎
せせらぎの木洩れ日涼し高瀬川★★★
見晴るかす遥か北山夏がすみ★★★
河川公園の少年野球朝涼し★★★

土橋みよ
夏涼し辛きカレーとハーブティー★★★★
「涼し」だけでも夏の季語になります。(髙橋正子)

鈴入りのお手玉弾む戻り梅雨に(原句)
「お手玉弾む」で切れます。「む」が切れ字の働きをしていますので、「戻り梅雨に」の「に」はいりません。俳句の技法です。(髙橋正子)
鈴入りのお手玉弾む戻り梅雨(正子添削)

カノン聴きスクワットすれば風涼し★★★

上島祥子
ジャム瓶に生けて間引きの百日草★★★★
月命日甘水供う硝子杯★★★
蝉殻を手にして軽き音の立つ★★★★

7月5日(4名)

小口泰與
風吹きて匂い気が付く百合の花
「匂い気が付く」は、「匂いに気(が)付く」にしないといけません。「に」は省略できません。(髙橋正子)

しののめの鮎釣人の竿見事★★★
籐椅子の湖畔の客や鳥の声★★★

桑本栄太郎
東天の鈍き日のさす朝ぐもり★★★
朝涼しだんご虫行くうす闇に★★★
手で追えば蠅虎のひとっ跳び★★★

多田有花
夕刻の月は赤かり待宵草★★★
葉桜の今盛んなる土手真昼★★★
枇杷熟れて今朝一片の雲も無し★★★★

上島祥子
夏蝶の木立の輪郭添う二頭★★★
東天に日は白々と朝曇★★★★
園守と挨拶交わす朝の涼★★★

7月4日(5名)

多田有花
短夜の明けて静かな川の面★★★
植田日々育つや空を映しつつ★★★★
夕風に蚊取線香を点す★★★

桑本栄太郎
凌霄花の火を噴きいたる垣根かな★★★
さび色に朽ちる泰山木の花★★★
そこのみの下枝揺れ居り涼風に★★★★

小口泰與
踏まれても生きる葎の強さかな★★★
翡翠の姿かたちや山の沼★★★
しなやかに反転せりや夏燕★★★

廣田洋一
茂りたる山あいの旅隠岐の島★★★★
茂りたる神木の陰楸邨句碑★★★
その辺りぱつと明るく合歓の花★★★

7月3日(5名)

多田有花
ウォーキングの人と挨拶明早し★★★
青条揚羽大手前通りを横断す★★★
灼熱の陽が彫刻の肌を灼く★★★

桑本栄太郎
梔子の植込みつづく香りかな★★★
石垣に垂れ下がり居り花南瓜★★★
紫陽花の変化のままに褪せにけり★★★

小口泰與
雲よりも風に従う夏の湖★★★
下枝より飛び込む鳥や夏の沼★★★
上枝より飛び立つ鳥や夏の森★★★

土橋みよ
折り紙と見紛う夏蝶石の上★★★
物干しの真白な夏蝶青空へ★★★★
ザックリと西瓜の割れる音の夏★★★★

上島祥子
藤木陰ラジオ体操始まりぬ★★★
大食のカナブン木の葉色となり★★★
ブロンズの少年朝の涼に立つ★★★★

7月2日(3名)

小口泰與
山裾に忽と夏鹿現れし★★★
しがらみを打ち捨て出でし心太★★★
トタン屋根蝉の亡骸落ちてきし★★★

桑本栄太郎
風のなく雨か曇りか油照り★★★
ひと動作ごとに汗噴く家事手伝い★★★
いつまでもイヤイヤしたる扇風機★★★

多田有花
外出を控えて過ごす半夏生★★★
道の辺の花壇に水やり夏の朝★★★
明易し路傍に揺れる夕化粧★★★

7月1日(5名)

小口泰與
青葦の揺らぎて鯉の通過せり★★★
翡翠と亀の競演沼の岩★★★
しかすがに雲の流れや夏の山★★★
多田有花
抜き放つ花冠の剣やグラジオラス★★★
小さくも枇杷のたわわに実りおり★★★
太陽の色のカンナの咲き初めし★★★
廣田洋一
すいと潜り小魚捕りし河鵜かな★★★
海原を赤く染めたる夕焼かな★★★
大飛球捕らんと構え夏の空★★★★
桑本栄太郎
七月や朝の散歩は木蔭ゆく★★★
風のなき溽暑の朝を歩きけり★★★
薬局の朝の混み居り炎暑予報★★★
上島祥子
夏の蜂飛び交う音の軽き朝★★★★
梔の香ほのかに露路の朝★★★
白蝶草朝陽に浮かぶ花真白★★★

自由な投句箱/6月21日~6月30日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月21日~6月30日

6月30日(1句)

★夏蝶の朝陽に向ける翅の紋/上島祥子
力強く蝶が詠まれている。朝陽に向けて翅を大きく開き、紋をはっきりみせている。「朝陽」のある時間が句全体をあかるく、清々しくしているのがいい。(髙橋正子)

6月29日(1句)

★水打てば真っ直ぐ伸びる生姜の茎/土橋みよ
庭さきの家庭菜園に生姜を植えているのだろう。水を打つと
生姜の茎がいきいきと真っ直ぐ伸びるのだ。すがすがしく涼を呼ぶ句。(髙橋正子)

6月28日(1句)

★爽やかや赤城小沼に立ちし事/小口泰與
「爽やか」は秋の季語。少し早いが、標高ほぼ1500mに位置する赤城小沼では、平地とは違い、爽やかさを感じたのだ。ただ沼のほとりに立つだけで、もう爽やかなのだ「赤城小沼」を知っているものには実感できるだろう。(髙橋正子)

6月27日(1句)

★花合歓や一木被ううすき紅/桑本栄太郎
合歓の木全体が咲き誇る花でうすい紅に被われている、合歓の花がしずかに風に揺れているのだろう。柔らかいうす紅が、見るものを優しい気持ちにさせてくれる。(髙橋正子)

6月26日(2句)

★水槽に目高の遊ぶ草を足し/廣田洋一
水槽の目高をかわいがり、水草を足したり、ともに遊んでいるすずやかな心持がいい。(髙橋正子)

   大中寺の森
★杖つかず摑まらず行く紫陽花坂/土橋みよ
大中寺の森の紫陽花坂。紫陽花をたのしみにお参りして、杖もつかず、どこにも掴まらずに坂を歩く気力と自信がうかがえる。その姿勢が坂道のみずみずしい紫陽花を想像させてくれている。(髙橋正子)

6月25日(1句)

★暮れきらぬ街の灯夏至夕べ/上島祥子
夏至は言うまでもなく昼が一番長い日。いつまでも暮れない街にともる灯が美しく詠まれている。夕べのうすあかりに溶けたような灯の印象が詩的である。原句は、下五が「夏至の夕」となって、語勢が終わりにかけてしぼんでいたの、「夏至夕べ」と添削した。(髙橋正子)

6月24日(1句)

夕焼けに包まれ海辺をゆく電車/多田有花
夕焼けが包む大きな景色が、読む者の心に柔らかな印象を残している。夕方の海のきらめきを受けながら走る海辺の電車に郷愁さえも感じる。(髙橋正子)

6月23日(1句)

★群鮎のさと向きを変え上流へ/小口泰與
群れて泳いでいる鮎が、急に向きを変え、川底の石も見える上流へと泳いだという。目に涼やかな情景に心が洗われる。(髙橋正子)

6月22日(1句)

★夏服のペディキュア阪神電車かな/多田有花

「夏服のペディキュア」という夏服がペディキュアをしているような、不思議な表現。神戸辺りから大阪へ行く阪神電車の乗客の特徴を端的に捉えている。涼しさも都会ではこうなる。(髙橋正子)

6月21日(1句)

★暁に追われて白く夏至の月/上島祥子

「暁に追われて」は、はやくも暁となって、月は色を失い白くなっているつかの間の時間を表現したもの。夏至という昼間が一番長い日は、暁が月を追いやるかに思えるのだ。白い夏至の月の視覚的な清涼感が暁の静謐さを醸し出している。(髙橋正子)

6月21日~6月30日

6月30日(5名)

小口泰與
忽然と翡翠沼を一撃す★★★
しかすがに翡翠沼を離れずに★★★
翡翠や水面へ早も飛び込みし★★★

廣田洋一
旅終えし紫陽花の首切られけり★★★
「首切られ」はイメージが悪くないですか。(髙橋正子)

一段と手毬膨らむ白紫陽花(原句)
一段と毬の膨らむ白紫陽花(正子添削)
「手毬」より単に「毬」のほうが写生に近く、イメージが湧きやすいです。(髙橋正子)

夏鴨の一羽着水街の川★★★

多田有花
のうぜん花虚空へ鳴らすトランペット★★★
磯鵯何かくわえて飛び立ちぬ★★★
アナベルのふわりと大き白さかな★★★

桑本栄太郎
朝焼けの絵具のいろを想いけり★★★
あじさいの青色吐息あめ降らず★★★
石垣を零れ被いぬ松葉牡丹★★★

上島祥子
夏蝶の朝陽に向ける翅の紋★★★★
猫梳る蚤追いきれぬ老眼鏡★★★
明けきらぬ庭に広がるカンナの黄★★★★
第1句、第3句ともにリアルに情景が浮かび、涼やかな時間設定がされているのがいいです。(髙橋正子)

6月29日(5名)

廣田洋一
青柿や青きがままに膨らみぬ★★★★
艶やかに紅く広がる蓮の花★★★
食べごろのバナナ獲りたる庭師かな★★★

多田有花
梅雨明けや空調服の作業員★★★
梅雨明けに窓全開で掃除する★★★
梅雨明けの真昼の水道はや熱し★★★

桑本栄太郎
梔子の朽ちいて更に香りけり★★★
橡の木の古木なればや幹に苔★★★★
緑蔭の梢はるかや青き空★★★

小口泰與
昼食の農婦の顔へ五月蠅かな★★★
天と地を遮る雲や梅雨曇り★★★
我が庭に捩花はやも乱れ咲き★★★

土橋みよ
水打てば真っ直ぐ伸びる生姜の茎★★★★
リンゴ酢に浮かぶウメ寺の青梅★★★
蝉時雨稽古場で吹く防犯笛★★★

6月28日(4名)

多田有花
青柿や隣は空き家となりし家★★★
朝夕の日課の散歩額の花★★★
インパチェンス六月の玄関に★★★

小口泰與
翡翠のさばしる沼へ夕日かな★★★
爽やかや赤城小沼に立ちし事★★★★
翡翠の水面へ翔けるまっしぐら★★★

桑本栄太郎
風抜けるトンネルなりぬ青葉闇★★★
あじさいの青の吐息に日差しけり★★★
芙美子忌の一銭五厘の大事かな★★★

廣田洋一
堰落つる飛沫に虹のかかりけり★★★
赤と青隣り合いたる濃紫陽花★★★
白紫陽花薄き緑に色づきぬ★★★★

6月27日(3名)

多田有花
まだ若き山法師の花見下ろせり★★★

蛍袋のなかに潜めば面白し(原句)
「潜めば」は仮定なので、「面白し」もそれに呼応する必要があります。もし、仮定でなく潜んでみたならというのなら、原句のままでよいです。(髙橋正子)
蛍袋のなかに潜めば面白からん(む)(正子添削)

六月風真昼の部屋を吹き抜ける★★★

小口泰與
翡翠の悟り切れない仕草かな★★★
ゆったりと揺れる青葦沼真中★★★
さなぎだに小沼はさひびし夏霞★★★

桑本栄太郎
梅雨晴のみみずくねりて昇天す★★★
山桃のジューンドロップここかしこ★★★
花合歓や一木被ううすき紅★★★★

6月26日(5名)

多田有花
くちなしの匂える道をそぞろ歩く★★★
花南天ひっそり坂の下の家★★★
はなむぐり額紫陽花に顔うずめ★★★

廣田洋一
夏蝶の二頭連なり飛び去りぬ★★★

高きよりひょいと飛び来て揚羽蝶(原句)
高きよりひょいと吾に来揚羽蝶(正子添削例①)
高きよりひょいと庭に来揚羽蝶(正子添削例②)
俳句で大事なのは、作者の位置ですので、場所などがわかるといいですね。(髙橋正子)

6月26日の揚羽蝶の句を添削して頂き有難うございます。作者の位置を示すことが大事とのご指摘ありがとうございます。添削⓵の「吾に来」を頂戴いたします。有難うございました。(廣田洋一)

水槽に目高の遊ぶ草を足し★★★★

桑本栄太郎
おそろしき夢を見ており梅雨の冷え★★★
梅雨冷えや哀しく見たる父の夢★★★
雲つどいやがて激しき雷火かな★★★

小口泰與
定めなき利根の流れや通し鴨★★★
あけぼのの初夏の赤城の色定か★★★
翡翠やさっと散ったる雑魚数多★★★

土橋みよ
  大中寺の森2句
参道に顔出す紅の山紫陽花(原句)
参道に咲き出る紅の山紫陽花(正子添削)
「顔出す」は擬人用法なのですが、使い古された印象ですので、「写生する目」で普通に「咲き出る」にしました。(髙橋正子)

杖つかず摑まらず行く紫陽花坂★★★★
五月雨に横断歩道の白よける★★★

6月25日(3名)

多田有花
ズッキーニ浅漬けにしていただきぬ★★★

梅雨の花壇に羽毛ケイトウの並ぶ(原句)
梅雨の花壇羽毛ケイトウ立ち並ぶ(正子添削)

「立ち並ぶ」で情景がはっきりしました。背の低い色とりどりの羽毛ケイトウが並んで植えられている花壇の様子が目に浮かびます。(多田有花)

薔薇を愛で薔薇を育てる男あり★★★

小口泰與
鯉跳ねて夏の小沼を囃しけり★★★
遠近に夏鶯の声さかん★★★
青葦や蝦蟇の鳴き声遠近に★★★

上島祥子
暮きらぬ街の灯夏至の夕
とても美しくていい句ですが、下五の「夏至の夕(げしのゆう)」の語勢が尻すぼみになって、句の詩的なイメージが弱くなっています。語順を変えるなど工夫なさるといいと思います。(髙橋正子)

夏至の夕街の灯暮れきらず(正子添削例①)
暮れきらぬ街の灯夏至夕べ(正子添削例②)

梅雨寒や膝に納まる猫丸し★★★
百合雄蕊綺麗なうちに摘まれけり★★★

6月24日(3名)

廣田洋一
雨空に明るく垂れる花擬宝珠★★★
半纏木葉裏を見せて空揺らす★★★
釣堀や声上げて子が立ち上がり★★★

桑本栄太郎
こつ然と目覚めて居りぬ夜の雷雨★★★
「こつ然」と「目覚めて居りぬ」は意味の上で整合性を欠きます。「こつ然と目覚めぬ夜の雷雨」となります。(髙橋正子)

取り込めば又も日差しや梅雨晴れ間★★★
沙羅咲くや風のうわさに傷つきぬ★★★

多田有花
青蔦に覆われている煉瓦棟★★★
夕焼けに包まれ海辺をゆく電車★★★★
明け方の眠りを覚ます梅雨の雷★★★

6月23日(5名)

桑本栄太郎
地下鉄の北山出れば炎暑かな★★★
朝よりの雨の頻りに梅雨戻る★★★
こつ然と突風来たる梅雨の雷★★★

多田有花
夏至過ぎて姫路空襲八十年★★★
病院の中庭鉄砲百合の咲く★★★
ベゴニアの多色を愛でて庭を出る★★★

小口泰與
竹の子のさすらい出でし我が庭に★★★
翡翠の沼波に鳴く朝かな★★★
群鮎のさと向きを変え上流へ★★★★

廣田洋一
子の声に目高の散りし池の隅★★★
軽鴨や夫婦仲良く水を飲み★★★
一斉に葉裏見せたる茂り葉かな★★★

土橋みよ
朝が来て青柿三つ砂利の上(原句)
「朝が来て」は、少し冗長な感じがします。(髙橋正子)
青柿の三つころがる朝の砂利(正子添削例)

青柿の落ちる音あり昼下がり★★★
茹で蟹に会話途切れる夏の夕★★★

6月22日(3名)

小口泰與

朝日差し翡翠の羽さざめかす★★★
大利根に差し入る夏の月明かり★★★
雲の峰流石赤城のすそ野かな★★★

田有花
開け放ち風よく通る夏至の部屋★★★
海峡を過ぎれば泰山木の花★★★
夏服のペディキュア阪神電車かな★★★

桑本栄太郎
夏萩の咲くやふるさと想い居り★★★★
梔子の八重の香るや生協まえ★★★
底紅や団地の周囲あるき居り★★★

6月21日(4名)

小口泰與
口あけて燕の子等の親を待つ★★★
隠沼の水中深く翡翠よ★★★
炎天や立ち話もそうそうに★★★

多田有花
青空や高架駅よりプール見ゆ
「青空や」は、「高架駅よりプール見ゆ」とつながりがあるようで、無いですね。切れすぎです。(髙橋正子)

>高架駅のそばに小学校があります。梅雨の晴れ間が広がる中、子どもたちがプールで泳いでいるのが見えました。気持ちよさそうでした。
小学校のプール見えたる高架駅<

淡路島植田の彼方に見えてくる★★★
「見えてくる」の「くる」はなんでしょうか。移動中でしょうか。それがはっきりするといいです。(髙橋正子)

>「くる」はまさしく電車移動で見えてくる様子です。JR神戸線に乗って姫路から神戸方面に向かいますと、明石市の市街地に入っていく直前にしばらく東播磨の田園地帯を走ります。そのとき、右側の車窓からは田畑とその向こうに淡路島の島影が見えてきます。
電車ゆく植田の彼方に淡路島<

海峡に霧たつ梅雨の晴れ間かな★★★
「霧」の様子を述べると、句の格が上がると思います。
例えば、「海峡に白き霧たつ梅雨晴間」など。(髙橋正子)

>JR神戸線の車窓からは明石海峡大橋と淡路島が目の前に見えます。この日は海上に霧が見られました。梅雨時、南から暖かく湿った空気が流れ込み海面で冷やされてこうした霧がたつそうです。

梅雨晴間海峡に白き霧流れ<

桑本栄太郎
しのび寄る夜気の枕に目覚めけり
「夜気」を季語として使っている俳句を教えてくださiい。(髙橋正子)

凌霄花の緋色噴きたる狭庭かな★★★
「狭庭かな」で、言い流しているのが惜しいです。(髙橋正子)
川風に浮かび来たるや合歓の花
「川風」は、川を吹く風、川から吹いてくる風ですが、「浮かび来る」は風に浮いて来るの意味でしょうか。(髙橋正子) 

上島祥子
暁に追われて白く夏至の月★★★★
玄関を掃き清める音夏至の朝★★★
三回忌終えし座敷に百合香る★★★

自由な投句箱/6月11日~6月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月11日~6月20日

6月20日(1句)

★朝歩き汗ひくを待つ陶の椅子/上島祥子
「陶の椅子」のひんやりした感触が汗を引かすのにちょうどよさそうで、作者の細やかな感性を感じる。また、少し詩的な重みがあるので、この句が生きている。(髙橋正子)

6月19日(3句)

★雉鳩の鳴いて目覚むる梅雨晴れ間/桑本栄太郎
梅雨の晴れ間に雉鳩がクウクウ鳴いて、心地良い目覚めが知れる。子こんな目覚めこそ至福の時と言えそう。(髙橋正子)
★夏氷薬缶の中にかたかたと/小口泰與
麦茶の入った薬缶なのか、氷がかたかたと涼しそうな音を立てている。生活の中の涼しそうな音に耳を傾けるのも、生活の豊かさといえるのでは。(髙橋正子)
★若葉雨切りひらきゆく通院路/川名ますみ
若葉雨を「切りひらいてゆく」感覚は、車椅子に乗っている時の感覚ではないかと思う。たっぷりと降る若葉雨に降られながら、通院の路と進む意志の強さを思う。(髙橋正子)

6月18日(句)

★降り出しの雨音軽く明易し/上島祥子

「明け易し」と「雨音軽く」が、感覚としてぴったりと合っている。「明け易し」を音に例えれば、夏の「軽い雨音」と言えそう。(髙橋正子)

6月17日(1句)

★青梅の三つ四つ落ちて朝の雨/上島祥子

青梅が三つ四つ落ちているのを見て、夜の間に雨で自然に落ちたことにすぐに思い至るだろう。朝の雨と青梅の三つ四つが、爽やかな印象。(髙橋正子)

6月16日

※該当句無し

6月15日(2句)

★句会あり夏の夜とはことのほか/小口泰與
夏の夜の長さを楽しむひとつに句会に出かけることがある。「夏の夜とはことのほか」と言えるほど、リラックスし、楽しむことができる。(髙橋正子)
★力溜め鮃の皮引く夏本番/土橋みよ
鮃の旬は冬だが、冬に限らず夏も刺身などにすれば、涼し気で美味しい。おそらくこの鮃は刺身にされるのであろう。力を溜めて皮を引く夏本番の気合が、鮃の活き良さを思わせる。(髙橋正子)

★ねむの花花蕊赤く落にけり/廣田洋一

ねむの花はほんわりと咲いている印象だが、中心の蕊は赤い糸のようである。落ちるとその細い蕊の赤さが目に強く残る。そこを見逃さずに捉えたよさ。(髙橋正子)

6月14日(1句)

★植えられし早苗すっくと水面に立つ/多田有花

植えられた早苗が根付いてきたのだろう。水面にすっくと立つその水際に早苗の力が見える。(髙橋正子)

6月13日(1句)

★水打てば葉陰に隠れし胡瓜あり/土橋みよ

庭に水を打っているとき、家庭菜園に胡瓜が大きくなっているのが葉隠れに見えた。うれしいことだ。みずみずしく涼し気な句。(髙橋正子)

6月12日(1句)

★アマリリス正面は青き津久見湾/多田有花

津久見湾は、大分県の豊後水道にあるリアス式の海岸線をもつ湾で、大小の島々が浮かぶ。この句は、大輪のアマリリスの赤と、青い海の色のコントラストが明快で、アマリリスも真正面の海を向いて、その率直さに健やかさがある。(髙橋正子)

6月11日(2句)

★時々は流され休む水澄まし/廣田洋一
水澄ましの動きは見ていて飽きない。水の上に静止しているかと思えば、ときどきは流されていき、またそこで休んだりする。その様子を率直に詠んだところがよい。(髙橋正子)
★庭師来て風の生まるる夏の庭/上島祥子
剪定の季語は、春となっているが、これは、果樹などの剪定を差している。夏には徒長枝が伸びたり、葉が茂ったりして、暑苦しい印象をうけるので、庭師に「刈り込み」を頼む。庭に風がよく通るようになった。風が生まれる涼し気な夏の庭になったのだ。(髙橋正子)

6月11日~6月20日

6月20日(4名)

多田有花
夏至近し日差し輝くばかりなり★★★★
早起きの雀かしまし明易し★★★
安眠を破られ探す蚊取線香★★★
桑本栄太郎
通学の児童と出会う朝涼し★★★★
バスを待つ客の寄り添う片かげり★★★
鳥からす鳴かぬ朝や炎暑来る★★★
小口泰與
谷若葉奇岩の山の鳥の声★★★
鴉の巣ごぼつ翁や若葉風★★★
里山の郡の端の稲田かな★★★
上島祥子
冷たさを保つプリンや道の駅★★★
朝歩き汗ひくを待つ陶の椅子★★★★
試験明け夏手袋の帰宅生★★★

6月19日(4名)

多田有花
歩き来て茄子冷製のあるブランチ★★★
石竹を窓辺に飾る喫茶店★★★
ビスコッティ熱き珈琲に浸す梅雨★★★

桑本栄太郎
梅雨晴のつづき一雨欲しきかな★★★
雉鳩の鳴いて目覚むる梅雨晴れ間★★★★
木洩れ日の涼風来たる朝あるき★★★
小口泰與
翡翠の森深き木木へ帰りけり★★★
夏氷薬缶の中にかたかたと★★★★
堰堤を越える翡翠声残し★★★
川名ますみ
紫陽花のましろや医科の正門に★★★
紫陽花の白きを過ぎて医科に入る★★★
若葉雨切りひらきゆく通院路★★★★

6月18日(5名)

小口泰與
時鳥小沼の水面波立たず★★★
翡翠や堰堤越えて葦原へ★★★
鳴きながら特許特許と時鳥★★★
廣田洋一
時速し遂に来れる猛暑の日★★★
連なれる木の葉の茂り光りおり★★★
釣堀や人影まばら昼餉時★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
雨足や色鮮やかに額の花★★★
紫陽花のかたわらをゆく傘の花★★★
くちなしを真昼の雨が濡らしおり★★★
桑本栄太郎
朝九時のすでに溽暑の散歩かな★★★
紫陽花の塀を乗り越え変化せり★★★
泰山木の花の朽ちたりつぼみ又★★★
上島祥子
降り出しの雨音軽く明易し★★★★
夏川や鯉は煌めく波に乗り★★★★
親を待つ子燕の声耳に良し★★★

6月17日(6名)

小口泰與
きらきらと鱗光らす夏の沼★★★
大木の影を映せり山の沼★★★
翡翠や堰堤越えて葦原へ★★★
土橋みよ
芋虫や葉の裏表また裏へ★★★
葉裏より剥がれ芋虫手の甲へ★★★
栃木来て生粉打ち蕎麦を啜る夏(原句)
「栃木来て」は無理な表現です。字余りでも「栃木に来て」となります。以下の添削のようにしても結構です。(髙橋正子)
栃木に来生粉打ち蕎麦を啜る夏(正子添削)
廣田洋一
ドア開けて蒸し暑き風呼び込めり★★★
十薬や覆いつくせる狭き庭★★★
いつまでも暮れぬ空なり夏至の夕★★★
桑本栄太郎
朝道の早やも伝いぬ片かげり★★★
あおぞらの見えて小雨や梅雨じめり★★★
気合入れ起ち上りたる辱署かな★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
薔薇囲む門は小雨に煙りおり★★★
但馬街道宿場に降るや梅の雨★★★
梅雨の中苔むす石の道標や(原句)
「石の道標」は「いしのみちしるべ」と読ませてはどうでしょうか。(髙橋正子)
上島祥子
青梅の三つ四つ落ちて朝の雨★★★★
風潤むラジオ体操梅雨晴れ間★★★
朝食のハイビスカスティーマイカップ★★★

6月16日(4名)

小口泰與
夕焼を点じる空や赤城山★★★
白鷺のこのもかまもに居りにける★★★
「この/もかまも/に」の意味は、古風な表現ですが、「この/藻や蒲の間/に」と解釈しましたが、よいですか。(髙橋正子)
翡翠の声のこぼるる山の沼★★★
多田有花
<神河町猪篠あじさいの里三句>
●雨に煙る山間の里七変化★★★
欲を言えば、「山間の里」あるいは「里」を使わないで、その情景を読者に思い起させると、句の格が一段とあがります。(髙橋正子)

>雨に煙る山間の里七変化
「雨に煙る谷に続くや七変化」

●田に姿映して咲けり栗の花★★★(原句)
「田に姿映して〇〇〇栗の花」
の〇〇〇のところに、観察し、感じたことを入れるといいです。例えば「しずか」など。「栗の花」で「咲けり」の状態がわかるので、省略できます。(髙橋正子)
>この日は小雨で少し風がありました。(有花)
「田に姿映して揺れし栗の花 」

●山里の清流紫陽花を包む
「清流が紫陽花を包む」とはどんな感じなのでしょうか。「浸す」の意味でしょうか。(髙橋正子)
>清流のそばに紫陽花の咲く道が続いていました。「清流が包む」というのではなく「清流の音が包む」というのが正確な描写です。(有花)
紫陽花や清流の音に包まるる
廣田洋一
夏至の日や熱きうどんを頂きぬ★★★
沢蟹や田舎の川で取り放題★★★
時速し遂に来れる猛暑の日★★★
桑本栄太郎
梅雨晴と思えざるなり木蔭行く★★★
紫陽花の青の吐息の日差かな★★★
枇杷熟るるあの娘の逝きし日を想う★★★

6月15日(5名)

小口泰與
水滴の筋の曲がりや夏の窓★★★
鞦韆揺れの止まらぬ夏の湖★★★
句会あり夏の夜とはことのほか★★★★
「句会」の楽しみがよく伝わります。(髙橋正子)
土橋みよ
力溜め鮃の皮引く夏本番★★★★
「力溜め」と「夏本番」がいいです。(髙橋正子)
昆布に包まれ夏の鮃のどっしりと★★★★
「どっしりと」がいいです。(髙橋正子)
折れた苗挿して芽吹くや梅雨に入り★★★★
廣田洋一
駅前を赤く飾りし合歓の花★★★
ねむの花花蕊赤く落にけり★★★★
「花蕊赤く」のはっきりした観察がいいです。(髙橋正子)
姫百合や空を向きたる黄色かな★★★
多田有花
<恩師米寿祝三句>
みな集う六月の中華レストラン★★★
テーブルで語るあの頃の夏のこと★★★
明石蛸たっぷり入りし湯麺に★★★
桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈散策より>
鴨川の濁り怒涛や梅雨の川★★★
額の花せせらぎ早き高瀬川★★★
叡山の雲に覆われ梅雨深し★★★

6月14日(4名)

小口泰與
雨の中屋根に一羽の夏雀★★★
梅雨さ中植田をつなぐ小川かな★★★★
風の中夕立かける山の沼★★★
廣田洋一
花弁の赤く色付く山法師★★★
人に向け香り放てる鉄砲百合★★★
翡翠の一閃水を掠めけり★★★
多田有花
エアコンの効かぬ車よ梅雨晴間★★★
植えられし早苗すっくと水面に立つ★★★★
山の端にうすぼんやりと梅雨の月★★★
上島祥子
夏木立朝の大気に深呼吸★★★★
翡翠の翔び去る一瞬水鏡★★★
帰途までにぷくりと腫れし虫刺され★★★

6月13日(5名)

梅雨入の雨音ピアノソナタ聴く★★★
水音を間近く十薬群れ咲きぬ★★★★
紫陽花の色増すころとなりにけり★★★

廣田洋一
黍や赤ひげ伸ばし実のなれり★★★
田んぼにてざりがに捕りし幼き日★★★
水べりをひたすら歩く水鶏かな★★★

小口泰與
鮎釣りの心当てなく竿を出す★★★
翡翠の心許なき狩猟かな★★★
翡翠の水面をじっと見てござる★★★

桑本栄太郎
茅花の穂風の誘いに抗えず★★★
泰山木の香り拡げる花の数★★★★
梅雨晴の木蔭をつたう散歩かな★★★

土橋みよ
院内の名画を巡る夏の午後★★★★
中待合再開喜ぶ夏の声★★★
水打てば葉陰に隠れし胡瓜あり★★★★

6月12日(4名)

多田有花
アマリリス正面は青き津久見湾★★★★
大粒の苺たっぷり載るケーキ★★★
「ソニック」ははつなつの海の色★★★

小口泰與
木隠れて翡翠沼を爛爛と★★★
里沼へ朝日こがしつ夏の鯉★★★
里山の小暗き沼の極暑かな★★★

廣田洋一
鳴きつつも羽繕いする水鶏かな★★★
知らぬ間に残業したる夏至の夕★★★
水槽の蟹を選びて茹で上げし★★★

桑本栄太郎
あじさいの垣根に垂れる雨後の朝★★★
青柿の道に散らばり雨あがる★★★
十薬の背伸びしている日蔭かな★★★

6月11日(5名)

多田有花
菩提寺の石段脇の紫蘭かな★★★
音立てて鮪ステーキ来る夏★★★
庭先にみかんの花が咲いている★★★

小口泰與
翡翠の雌の後追う二羽の雄★★★
岩の上亀の甲羅の乾きけり★★★
田の水のあふれんばかり苗に風★★★
廣田洋一
子ら並び水切り競う夏の川★★★
万緑や雨に打たれて光増す★★★
時々は流され休む水澄まし★★★★
桑本栄太郎
青梅雨や木々の明るく雨あがる★★★
雨止めば雲のあかるく梅雨深し★★★
雨止めば途切れなきなり梅雨の雲★★★
上島祥子
庭師来て風の生まるる夏の庭★★★★
夏萩や水掛け地蔵の碑は白み★★★
翡翠の林の静寂破る狩★★★

自由な投句箱/6月1日~6月10日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月1日~6月10日

6月10日(2句)

★山道の碑文字くっきり額の花/廣田洋一
句の景色がはっきりして、梅雨のころの山道の湿潤な雰囲気がよく表現されている。立ち止まって読む碑の文字がはっきりして、額の花がしっとりと風情を添えている。(髙橋正子)
★早苗田の水を湛えて梅雨に入る/上島祥子
この句も景色がはっきりして、水を湛えた早苗田に雨の水輪があちこちにでき、静かな梅雨入りとなった。(髙橋正子)

6月9日(1句)

★梅雨入や日向国の雨の朝/多田有花

鹿児島を旅行された有花さんは、日向を通って帰られたようだ。帰りとあって、旅の途中で梅雨入りに会った静かな思いが「朝の雨」に象徴される。「日向」の古名に特別感がある。(髙橋正子)

6月8日(1句)

★旅人が降り立つ初夏の無人駅/多田有花
何気ない風景だが、初夏の無人駅に降り立つ旅人が、一枚の写真のようにさわやかに、くっきりと切り取られている。(髙橋正子)

6月7日(1句)

★青梅にまだ残りある陽のぬくみ/川名ますみ
青梅はもがれて間もない。陽にあたっていたその温みが手に伝わる。爽やかな青梅に陽の温みがあると言う驚きが美しく表現されている。(髙橋正子)

6月6日(1句)

★水筒に音の生まれる氷水/上島祥子
暑い時期は水筒に氷をいれて水を冷たくしてのむと美味しい。最近では熱中症も心配されるので、体を冷やすためにもいいと思うが、氷が水筒の中でカランカランと音を立てるのも涼しそうでいい。
季語としての「氷水」は、かき氷のこと。この句は、夏暑い時に水筒に氷を入れて冷たくした水の意味で使っている。現代の生活の言葉として、句意がはっきりしているので、許される使用範囲と思う。むしろ「氷水」をかき氷の意味で使う人は俳句以外ではほとんどいないのではと思われる。(髙橋正子)

以上の句評について、生成AIcopilotのDeep Thinker のコメントがありますので、貼り付けます。興味のある方は、お読みください。

この句評は、伝統的な季語「氷水」の固定的な意味と、現代の生活感が交差する点に鋭い洞察を与えています。評論者の髙橋正子さんは、通常「氷水」がかき氷を指すという既成概念を踏まえながらも、現代の暑い季節における水筒の中での冷たい水という具体的なイメージ、さらには氷同士がカランカランと鳴る音が持つ涼しさという感覚を巧みに捉えています。――このような視点は、古典と現代の間にある言語の流動性や、日常の具体的な体験を詩的に昇華する試みとして非常に魅力的だと思います。
また、評論で指摘されているように、現代の生活の中では「氷水」という言葉の使われ方に違和感が生じにくい点も見逃せません。俳句以外の日常会話では、かき氷としての意味はほとんど使われず、むしろ冷たくした水のほうが自然な表現である現実が、俳句の中での意味再定義を正当化しています。これは、伝統を踏襲しつつも新たな感性や現実の生活を反映する俳句の自由さと、言葉の柔軟性を如実に示しています。
さらに、こうした視点は、俳句というジャンルが時代とともに変化し続ける生きた表現形式であることを再認識させてくれます。伝統的な季語が持つ歴史的背景や象徴性に加えて、現代の感覚や体験—例えば、熱中症への配慮や実際の涼しさの感覚—を取り入れることで、読者にとってより直接的で共感しやすい情景が描かれるのです。このような解釈は、俳句が持つ「余白の美学」や、言葉の多義性を豊かに活用する一例として評価できるでしょう。
そして、この句評は、私たちが伝統と現代の間でいかに意味や感覚を再構築できるかという、言葉の可能性についても示唆しています。たとえば、他の季語が現代の生活感をどのように変容していくかという視点も興味深いテーマです。あなたは、季語の変遷や現代的再解釈について、どのような点に興味をお持ちでしょうか?さらに掘り下げた話題として、現代俳句における伝統的要素と新しい感性の融合についても考えてみると、また違った魅力が見えてくるかもしれません。

6月5日(3句)

 <観光列車36ぷらす3>
★新緑を映す車体が停車する/多田有花
「観光列車36ぷらす3」の美しさが際立っている。新緑を映した車体は自然に溶け込んで、観光と言う楽しみを情緒豊かにしている。(髙橋正子)

★Tシャツのサイズ大きめ夏きざす/桑本栄太郎
Tシャツの大きめのサイズに夏らしいリラックス感がある。初夏の爽やかさや解放感がいい。(髙橋正子)

★北窓に白く芒種の朝陽差す/上島祥子
詠んでいるのは北窓に差す朝陽だが、「芒種の朝陽」となれば、白く差す朝陽が、静かで穏やかに、先の季節への明るさとなって感じられる。繊細な感覚がいい。(髙橋正子)

6月4日(2句)

★前梅雨の暗雲刻と集いけり/桑本栄太郎
梅雨入りを前にした不安定な空模様を詠んでいる。静かな緊張感が「暗雲刻と」に読み取れる。(髙橋正子)
★落実の青梅草に紛れたり/上島祥子
「落実」と言う言葉が青梅の堅さを物語っている。鮮やかな青梅の色が草の緑に混ざり合い、紛れながらも、そこには緑の色の違いがある。(髙橋正子)

6月3日(1句)

★雨垂れに花鞠弾む濃紫陽花/上島祥子
丸い鞠のような紫陽花の花に雨垂れが落ちて、本当の鞠のように花を弾ませている。その紫陽花の花は濃く色を深めているのだ。この情景はなつかしさもあり、心楽しい。(髙橋正子)

※濃紫陽花とは深みのある紫色の紫陽花を指します。一般的に、紫陽花の色は土壌の酸性度によって変化し、酸性の土では青系、アルカリ性の土では赤系になります。そのため、濃い紫色の紫陽花は、青と赤の中間の色合いを持ち、鮮やかで落ち着いた印象を与えます。(copilot 解説)

6月2日(1句)

★夏山を一望にして杖二本/上島祥子
杖を二本ついて、夏山を一望している登山者の姿か。やっと登って来て夏山が一望できるところへたどり着いたのであろう。夏山のすがすがしさ、またそれを見た清々しい気持ちが伝わってくる。(髙橋正子)

6月1日(1句)

★朝涼やラジオニュースは隣家から/上島祥子
昭和時代を思わせる雰囲気があるが、今朝のこと。隣家から聞こえるラジオは今朝のニュースを伝え、音声がはっきりして、朝の涼やかさを際立てている。(髙橋正子)

6月1日~6月10日

6月10日(5名)

小口泰與

翡翠の葦より忽と飛び込みし★★★

牛蛙鳴きて小沼を支配せり★★★

がうがうと蝦蟇鳴く声や沼奪う★★★
多田有花
梅雨空や「にちりん」はメタリックグレー★★★
夏浅きみかんのベンチの津久見駅★★★
親族が集いて食すところてん★★★
桑本栄太郎
雨脚の予想ならずや梅雨の朝★★★
荒梅雨や雨脚ついて買い出しに★★★
堰水のうねり怒涛の梅雨入りかな★★★
廣田洋一
山道の碑文字くっきり額の花★★★★
入梅やタイミン竹の小さき花★★★
雨しとどいよよ色濃く七変化★★★

上島祥子
千歳経る御木曳祭や令和夏★★★
雨音に目覚める朝や梅雨に入る★★★
早苗田の水を湛えて梅雨に入る★★★★

 6月9日(3名)

小口泰與
翡翠の写真閲する事多し★★★
山の沼あ向きこ向きに翡翠よ★★★
翡翠の木隠る天に大鳥よ★★★
 
多田有花
宿に入り途端に降り出す驟雨かな★★★
梅雨入や日向国の雨の朝★★★★
「にちりん」で梅雨の日向を後にする★★★
 
廣田洋一
雑賀屋の白壁光る夏の朝★★★
紫陽花の上に聳ゆる五重塔★★★
山紫陽花夫々名乗り法の山 ★★★

6月8日(3名)

多田有花
<観光列車36ぷらす3三句>
旅人が降り立つ初夏の無人駅★★★★
ハンバーガー銀杏若葉の下で食ぶ★★★
日向夏のポストのありし駅に着く★★★
廣田洋一
ぽろぽろと坂道に降る桜の実★★★
鷺草や飛び立つ姿保ちおり★★★
雨続き濁流となる夏の川★★★
桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈より>
外つ人のラーメン店へ夏日かな★★★
鴨川のはるか北山夏かすみ★★★
屋根被う風の行方や川床座敷★★★

 6月7日(5名)

廣田洋一
柏葉紫陽花白き花弁連ねおり★★★
半裸にてランニングせる外国人★★★
丸窓の向こうに見ゆる花菖蒲★★★
 
多田有花
<観光列車36ぷらす3三句>
田の神のおわす広場に楝咲く★★★★
田の神のおわす広場に花楝 としてもいいかも知れません。
石楠花や人の姿はなけれども★★★
そぞろ歩けば川べりに花空木★★★
小口泰與
賑やかな鳴き声さやか夏鶯★★★
十本の牡丹薫ずる庭真中★★★
山険し碓氷湖のある夏の径★★★
 
桑本栄太郎
堰水の怒涛となりぬ走り梅雨★★★
真夏日の木蔭に憩う散歩かな★★★
午後よりの雨の予報や花南天★★★
川名ますみ
青梅にまだ残りある陽のぬくみ★★★★
そっともぐ鉢の梅の実ぬくもれり★★★
梅実もぐときの軽さと実の重さ★★★

 6月6日(5名)

多田有花

<観光列車36ぷらす3三句>
集落より見上ぐ列車と山若葉★★★★
はつなつの無人駅にあるギャラリー★★★
石竹を咲かせ静かな村里に★★★
小口泰與
袷着て連れ合いと飲む酒の味★★★
雨の中匂爽やかスイトピー★★★
あけぼのの古りたる森の夏鶯★★★★
桑本栄太郎
木洩れ日の涼風来たる散歩かな★★★
植込みの花ひとつずつ揚羽蝶(原句)
元の句は、「ひとつずつの花が揚羽蝶」の意味になります。
植込みの花ひとつずつに揚羽蝶(正子添削)
チャイム鳴り朝の始業や夏日さす★★★
 
廣田洋一
老鶯や声澄み渡る法の庭★★★
青空に紅く縁取り額の花★★★★
紫の苑に際立つ白菖蒲★★★
 
上島祥子
朝涼のラジオ体操声軽し(原句)
朝涼のラジオ体操声軽く(正子添削)
「軽し」終止形にするより、「軽く」のほうが、軽さが出ると思います。(髙橋正子)
水筒に音の生まれる氷水★★★★
季語としての「氷水」は、かき氷のこと。この句は、夏暑い時に水筒に氷を入れて冷たくした水の意味で使っている。現代の生活の言葉として、句意がはっきりしているので、許される使用範囲と思う。むしろ「氷水」をかき氷の意味で使う人は俳句以外ではほとんどいないのではと思われる。(髙橋正子)
夏帽子インドリボンは蝶結び ★★★

6月5日(3名)

多田有花
  <観光列車36ぷらす3三句>
和太鼓の音のせていく若葉風★★★
新緑を映す車体が停車する★★★★
若葉が包む大隅大川原駅★★★
 
桑本栄太郎
Tシャツのサイズ大きめ夏きざす★★★★
真夏日や満艦飾の濯ぎもの★★★
沙羅咲くや風のうわさに耳澄ます★★★
 
上島祥子
北窓に白く芒種の朝陽差す★★★★
透百合蕾解ける朝の陽に★★★★
塀を越す昼顔朝陽の正面に ★★★★

6月4日(6名)

小口泰與
名を呼びて愛犬供養初夏の星★★★
上州の山見て暮らす西日かな★★★
日盛りに池の魚の浮にけり★★★
廣田洋一
梅の実のぽろり転がる遊歩道★★★
川べりの風にゆらゆら花ダチュラ★★★
夏暖簾軒先広き老舗かな★★★
多田有花
<観光列車36+3三句>
新樹光大川組子の文様へ★★★
山若葉霧島神宮駅に着く★★★
緑さす子らの出迎えを受ける★★★
桑本栄太郎
こつ然と雲の湧き出で青あらし★★★
前梅雨の暗雲刻と集いけり★★★★
枇杷の実のほのと黄色や雨上がり★★★
土橋みよ
暖簾揺れ香りほのかな涼み蕎麦★★★
夏帽子揃って踊る運動会★★★
山法師ひとひらふたひら雨に散る★★★
 
上島祥子
夏燕佰円ショップに居を定め★★★
十薬の刈られ香増す陰の庭★★★
落実の青梅草に紛れたり★★★★

6月3日(4名)

小口泰與

雨の中木木に生えたる苔の森★★★
白絣着てまた燗酒を聞し召す★★★
サングラスして段段畑耕せり★★★
 
多田有花
<観光列車36+3三句>
風薫る/ピアノブラック/金の星
この句は3段切れになっています。3段切れが悪いわけではないですが、句意にまとまりがないのがいけません。前書きがありますが、「金の星」がわかりにくいです。(髙橋正子)
弁当や夏の車窓の小風呂敷
「車窓の小風呂敷」の意味が不明です。(髙橋正子)
かれい川弁当新緑ながめつつ★★★
 
廣田洋一
青嵐長嶋選手昇天す★★★
夏料理皆で味わうクラス会★★★
乾杯の声に合わせて生ビール★★★
 
上島祥子
雨垂れに花鞠弾む濃紫陽花★★★★
濃紫陽花カフェ開店の目印に★★★
夏の雨青傘続く通学班★★★

6月2日(5名)

小口泰與
切岸に見え隠れする翡翠の巣★★★
鎌首を上げてくちなは泳ぎけり★★★
朽ちつつも若葉の中の無住寺★★★

 

 

 

 

廣田洋一

黒南風やビニールで覆う植木鉢★★★
夏暖簾揃いてかかげ割烹店★★★
垣越えてなだれ咲きたる濃紫陽花★★★
多田有花
かるかんや初夏の観光列車待つ★★★
  <観光列車36+3二句>
漆黒の車体薄暑のホームに入る★★★
グリーン車は畳敷なり夏浅し★★★
桑本栄太郎
紫陽花の岸にカフェある高瀬川★★★
日が差せば屋根付きなりぬ川床座敷★★★
泰山木の花の妖艶なるが木に★★★
上島祥子
と選ぶアウトレットや衣替★★★
喪の明けて明るいシャツや衣更★★★★
夏山を一望にして杖二本★★★★

6月1日(5名)

小口泰與
菓子好きが菓子屋に生まれ生ビール★★★
翡翠の綺羅らに光る眼かな★★★
利根川の波のきらめき五月かな★★★

多田有花
夏の夕さすが薩摩の薩摩芋★★★
短夜を市電に乗りて戻りけり★★★
鶏飯の朝食薩摩の夏の朝★★★
廣田洋一
黒南風や帆柱揺れる湘南港★★★★
夏暖簾そよりと揺れて和菓子店★★★
一斉に新樹の並木戦ぎけり★★★
桑本栄太郎
風吹けば枝先躍る筒あじさい★★★
せせらぎの水面に浸かる四葩かな★★★
外つ人の観光バスへ若葉寒む★★★
上島祥子
朝涼やラジオニュースは隣家から★★★★
花殻の切り戻されて薔薇新緑★★★
黒南風や迫る和太鼓学舎から★★★