8月20日(水)

★葛にさえ初花ありて匂うなり  正子
秋の七草の一つでもあるという葛は、他の七草と同様に雑草というほうが近く、崖などにおおせいに茂る逞しい草です。花もさほど華麗というわけではありません。しかし、花の香りはとても匂やかで、思わず、こんな花にもと感動してしまいます。「葛にさえ」という表現と「初花」という言葉の響き合いが印象的です。 (小西 宏)

○今日の俳句
虫篭の軽きを子らのそれぞれに/小西 宏
虫篭をもった子がそれぞれ。篭に虫が入っているのか、いないのか。それはこの句では問題ではない。虫篭の軽さが子供の幼さ、風の軽さを表している。(高橋正子)

○稲の花

[稲の花/横浜市緑区北八朔町]

★いくばくの人の油よ稲の花 一茶
★南無大師石手の寺よ稲の花 子規
★稲の花今出の海の光りけり 子規
★湯槽から四方を見るや稲の花 漱石
★雨に出しが行手の晴れて稲の花 碧梧桐
★軽き荷を酔うてかつぐや稲の花 虚子
★酒折の宮はかしこや稲の花 虚子
★八十路楽し稲の花ひろびろと見る/高橋信之
★稲の花見つつ電車の駅までを/高橋正子
★稲の花雲なく晴れし朝のこと/高橋正子

 イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。

 多くの節をもつ管状の稈を多数分岐させ、節ごとに1枚の細長い肉薄の葉をもつ。稈は、生殖成長期になると徒長して穂を1つつける。他殖性の風媒花であるが、栽培稲では98%程度が自家受粉する。開花時間は午前中から昼ごろまでの2-3時間と短い。花は、頴花(えいか)と呼ばれ、開花前後の外観は緑色をした籾(もみ)そのものである。籾の先端には、しなやかな芒(ぼう)が発達する。芒は元々は種子を拡散するための器官であるが、栽培上不要なため近代品種では退化している。農業上、種子として使われる籾は、生物学上の果実である玄米を穎(=籾殻:もみがら)が包んでいるもの。白米は、玄米から糠(ぬか)層、胚など取り除いた、胚乳の一部である。生態型によるジャポニカ種 (日本型、島嶼型)とインディカ種 (インド型、大陸型)という分類が広く知られている。

 稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。

◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

■8月ネット句会入賞発表■

■8月ネット句会■
■入賞発表/2014年8月20日■

【金賞】
★牧に風立ちて殖えたる赤蜻蛉/佃 康水
牧場の赤蜻蛉を詠み、一味違った赤蜻蛉の句になっている。赤蜻蛉という日本の抒情を詠みながら、「牧」「風立つ」の言葉が牧歌的雰囲気を醸し、それらがよく調和している。(高橋正子)

【銀賞】
★秋晴れて千本鳥居の中を行く/高橋秀之
伏見稲荷の千本鳥居だろうか。朱色の鳥居が千本立ち並ぶ。朱の鳥居は大変シンプルな形で、秋晴れの青空と好対照である。秋晴れにこそ潜りたい千本鳥居である。(高橋正子)

【銅賞2句】
★仏花入れ山のひぐらし鳴き始む/藤田洋子
山の墓地にある墓。墓の花筒に新しい花を入れると、山のひぐらしが鳴き始める。ひぐらしの声は、どこかさびしい。そして、木々の間をさざめかすように鳴くが、遠い誰かを呼んでいるようにも聞こえる。(高橋正子)

★白桃をむく指先の力抜き/柳原美知子
やわらかな白桃を剥くとき、意識しなくても、自然に指先の力を抜いている。その白桃の扱いをみれば、白桃が、いかに美的でやわらかく、完熟して果汁もしたたるばかりかと思う。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★仏花入れ山のひぐらし鳴き始む/藤田洋子
お盆のお墓参りのお花でしょうか。墓前に花を奉げていると折しも山の方から蜩の声が聞こえて来ました。夏に啼く蝉時雨とは違って蜩の啼く声は秋の到来を実感すると同時に一抹の寂しさを覚えます。しっとりとしたお盆の頃の風景が見えて参ります。(佃 康水)

★みんみんのど真ん中で聞く車椅子/迫田和代
今、みんみん蝉が盛んに啼いています。そのど真ん中に車椅子を止めて聞いている。木立の多い自然環境豊かな場所にお住まいの作者、心ゆくまで今の季節をお楽しみになられた事でしょう。(佃 康水)

★高き木の蝉音指差す幼き児/高橋正子
幼い児、もしやお孫さんでしょうか?高い木に啼いている蝉を指さす幼い児。幼い児は音や声に敏感に聞き取り、その嬉しさをまた不思議さを誰かに伝えようとします。それに応えて家族達まで嬉しくなり幸せを共有できる一時です。(佃 康水)
蝉音のする方向を探し当て高い木を指差す幼児の無垢な瞳の輝きとひと夏を懸命に鳴く蝉の命の輝きに感動を覚えます。(柳原美知子)

★秋茄子の香ばしく焼ける新居/高橋句美子
香ばしく焼き上がる秋茄子がいかにも美味しそうで、旬の味覚を味わう喜びが伝わります。季節を楽しみながら、新居での快適なお暮らしの充実感が感じられます。 (藤田洋子)

★観音像を丸くまわりてオニヤンマ/古田敬二
最近よく見かける巨大な観音像。その周りを丸く回るオニヤンマ。秋の爽やかな風情を感じる光景です。(高橋秀之)

★三ヶ月の昇る力に空仰ぐ/迫田和代
「三ヶ月」に「昇る力」を見たのだ。「満月」ではないところに作者の実感があり、作者の独自性がある。「空仰ぐ」に作者のいい姿を見た。空海の「遊心大空」の教えを思った。(高橋信之)

★秋晴れて千本鳥居の中を行く/高橋秀之
伏見稲荷の千本鳥居だろうか。朱色の鳥居が千本立ち並ぶ。朱の鳥居は大変シンプルな形で、秋晴れの青空と好対照である。秋晴れにこそ潜りたい千本鳥居である。(高橋正子)

★牧に風立ちて殖えたる赤蜻蛉/佃 康水
牧場の赤蜻蛉を詠み、一味違った赤蜻蛉の句になっている。赤蜻蛉という日本の抒情を詠みながら、「牧」「風立つ」の言葉が牧歌的雰囲気を醸し、それらがよく調和している。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★ひと雨の過ぎて澄みいる法師蝉/小西 宏
雨は全てのものを浄化してくれるように思います。雨上がりの木々の緑色も美しく輝いてみえます。法師蝉の声も澄み秋のおとずれを感じさせてくれます。 (井上治代)
何となく雨の多い日が続いていますがその雨も止むと辺りの空気はすっかり澄んでいます。夏の蝉の声が聞けなくなった頃、法師蝉のあの独特な啼き声に朝夕は秋の気配を濃く感じます。(佃 康水)

★秋の虹妻と同時に気付きたり/福田ひろし
思いがけなくも秋の虹と出会い、天空の美しさを奥様と共有できる幸せ。素敵なご夫婦の姿に心あたたまり、秋の虹がいっそう美しく優しく感じられます。 (藤田洋子)

★川岸を覆ひ尽くすや虫の声/内山富佐子
川岸の草原からは、虫の声が絶え間なく聞こえ、まさに覆い尽くすような感じがしてきます。秋を実感する一コマです。(高橋秀之)

★白桃をむく指先の力抜き/柳原美知子
やわらかな白桃を剥くとき、意識しなくても、自然に指先の力を抜いている。その白桃の扱いをみれば、白桃が、いかに美的でやわらかく、完熟して果汁もしたたるばかりかと思う。(高橋正子)

★桔梗咲き一輪青く陽にあたる/高橋句美子
桔梗の花の一輪だけに陽が当たっている。青むらさきの桔梗は、陽が当たると青が鮮やかに印象づけられ、桔梗の花はもの言わんとするようだ。(高橋正子)

★揚げ花火最中来る船かえる船/佃 康水
花火が大輪の花を空に咲かせている最中、早々と来た船は帰り、花火の最高潮にやって来る船もある。来る船、帰る船で賑わう海の花火である。(高橋正子)

★秋晴れて千本鳥居の中を行く/高橋秀之
伏見稲荷の千本鳥居だろうか。朱色の鳥居が千本立ち並ぶ。朱の鳥居は大変シンプルな形で、秋晴れの青空と好対照である。秋晴れにこそ潜りたい千本鳥居である。(高橋正子)

★牧に風立ちて殖えたる赤蜻蛉/佃 康水
牧場の赤蜻蛉を詠み、一味違った赤蜻蛉の句になっている。赤蜻蛉という日本の抒情を詠みながら、「牧」「風立つ」の言葉が牧歌的雰囲気を醸し、それらがよく調和している。(高橋正子)

【入選/10句】
★玄関を開くれば入る盆の月/古賀一弘
玄関を開けた途端差し込んでくる月光綺麗な句ですね。(迫田和代)

★若者のおうと打ち来る盆太鼓/佃 康水
盂蘭盆といえどもまだまだ暑い盛り。踊りを盛り上げる若者の筋肉と汗をも想像させる盆太鼓の掛け声が逞しく轟き響きます。(小西 宏)
颯爽と櫓太鼓を打つ村一番のいい男手拍子に合わせ踊る村一番の美女たち盆踊り最高潮です。(古賀一弘)

★秋蝉に雨後の夕風立ちそめし/藤田洋子
季節の変わり目には雨が良く降り、一雨毎に涼しくなって来ます。秋雨の後、夕刻には涼やかな風が吹き、その中でも秋の蝉は物哀しく鳴いて、初秋の風情を醸し出してます。 (桑本栄太郎)

★うら若き僧の読経や盆の月/内山富佐子
お盆にみえた若いお坊様、お月さまと読経、何だか帰省した時のことが思い出されます。(祝恵子)

★草むらの吾亦紅見つけ触れてゆく/祝恵子
茎を伸ばし穂状の可憐な吾亦紅。草むらに作者が見つけて触れた吾亦紅の嬉しさに、清々しい秋の訪れを実感します。 (藤田洋子)

★茄子の牛父幾たびも振り返り/内山富佐子
仏壇に飾った茄子の馬。読経を終え拝むとき、今は亡き父と別れた時のことがしきりと思われる。(古田敬二)

★きちきちの鎌に追はれて右左/渋谷洋介
雑草刈でしょうか、腰をかがめて進んでゆくとキチキチバッタが音を立てながら飛び立っていきます。残暑のこの季節、そこに涼しさも味わうことができます。(小西 宏)
草いきれの中、草刈鎌の光とキチキチと翅を鳴らしながら慌てて飛び出すキチキチバッタの淡緑色の輝きが目に見えるようです。生き物への温かい視線を感じます。(柳原美知子)

★晴れの日も雨降る日にも夏帽子/井上治代
日除けとなり、風もよく通す、そして色も形も涼しげなお気に入りの夏帽子なのでしょうね。見る人、被る人の心の軽やかさが伝わってきます。(小西 宏)

★秋出水泥をものともせぬ球児/矢野文彦
今年の高校野球は大雨のために開催が遅れました。選手たちの出身地の中には大きな被害を受けたところもあったかもしれません。でも、そんな苦難も乗り越えて頑張っています。(小西 宏)

★嬬恋の空の深しや濃竜胆/小口泰與
嬬恋村(つまごいむら)は群馬県の西端にある。作者の住む前橋の西だ。きゃべつ畑と浅間山があって、詩情のある村だ。(高橋信之)

★盆波や小雨の沖に舟一艘/桑本栄太郎
盆の海を詠んで、作者の想いのある句だ。詩情が読み手に伝わってくる。その詩情がいい。(高橋信之)

★盆参り盛り上がりおり島言葉/祝恵子
「島言葉」は「お国言葉」だ。故郷の心の絆に無理がない。故郷の同じ先祖を持つ絆だ。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★歩くのが好き歩き始めし児の夏よ
歩き始めたばかりの頃は、とにかく歩くのが好きで、とにかく歩きたがります。しかも、夏となれば、なおさらその歩みに元気が感じることができます。(高橋秀之)

★丘の家に盆来て盆の瓜なすび
★留守居して独り聞く冷房の音を

■選者詠/高橋正子
★高き木の蝉音指差す幼き児
幼い児、もしやお孫さんでしょうか?高い木に啼いている蝉を指さす幼い児。幼い児は音や声に敏感に聞き取り、その嬉しさをまた不思議さを誰かに伝えようとします。それに応えて家族達まで嬉しくなり幸せを共有できる一時です。(佃 康水)
蝉音のする方向を探し当て高い木を指差す幼児の無垢な瞳の輝きとひと夏を懸命に鳴く蝉の命の輝きに感動を覚えます。(柳原美知子)

★小ぶりなる桃に残暑の光あり
★黒きみどり銀杏並木は秋暑し

■互選高点句
●最高点(5点)
★牧に風立ちて殖えたる赤蜻蛉/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆8月ネット句会清記◆

■8月ネット句会■
■清記/19名57句

01.盆波や小雨の沖に舟一艘
02.入れ替わり立ち代り来る盆の客
03.色褪せし遺影をかざり終戦日
04.きちきちの鎌に追はれて右左
05.手をつなぎ母の古里桃実る
06.特攻の鹿屋の球児甲子園八月
07.嬬恋の空の深しや濃竜胆
08.風に乗り霧とくとくと森の中
09.釣糸のもつれ解くや鳳仙花
10.黒揚羽いろはにほへと一筆箋

11.嘶きて駒駆け抜くる秋野かな
12.玄関を開くれば入る盆の月
13.墓洗い高祖父の名に触れてみる
14.秋の虹妻と同時に気付きたり
15.秋来る明治の大屋根威厳あり
16.茄子の馬腹を空かせて見し時も
17.ひと雨の過ぎて澄みいる法師蝉
18.細き音して清流の秋花火
19.鈴虫の声がかすかに夜の道
20.秋晴れて千本鳥居の中を行く

21.欄干の上を蜻蛉が浮き上がる
22.晴れの日も雨降る日にも夏帽子
23.台風次々日本列島駆け巡る
24.彩雲のぽっかり浮かび秋立ちぬ
25.水鳥の泳げる池にハスは実に
26.草むらの吾亦紅見つけ触れてゆく
27.盆参り盛り上がりおり島言葉
28.揚げ花火最中来る船かえる船
29.若者のおぅと打ち込む盆太鼓
30.牧に風立ちて殖えたる赤蜻蛉

31.秋蝉に雨後の夕風立ちそめし
32.仏花入れ山のひぐらし鳴き始む
33.盆過ぎて朝風の入る窓を拭く
34.立秋の堀に浮かべる飛行雲
35.稲穂揺れ雲たなびける今朝の空
36.白桃をむく指先の力抜き
37.みんみんのど真ん中で聞く車椅子
38.田舎にはこんな物しかと岩魚焼く
39.三ヶ月の昇る力に空仰ぐ
40.小ぶりなる桃に残暑の光あり

41.黒きみどり銀杏並木は秋暑し
42.高き木の蝉音指差す幼き児
43.丘の家に盆来て盆の瓜なすび
44.歩くのが好き歩き始めし児の夏よ
45.留守居して独り聞く冷房の音を
46.ゆるキャラが輪の外で待つ盆踊り
47.秋出水泥をものともせぬ球児
48.台風もB29も南から(終戦忌)
49.うら若き僧の読経や盆の月
50.茄子の牛父幾たびも振り返り

51.川岸を覆ひ尽くすや虫の声
52.時早しいつしかちちろの庭となる
53.入れる刃に白桃つるりと潔し
54.観音像を丸くまわりてオニヤンマ
55.桔梗咲き一輪青く陽にあたる
56.秋茄子の香ばしく焼ける新居
57.新しい包丁すっと桃を剥く

※選句を開始してください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、8月19日(火)午後6時から始め、同日(8月19日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、8月20日(水)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、8月20日(水)午前10時~8月21日(木)午後6時です。

8月19日(火)

★白桃の無疵を少女に剥き与う  正子
お子さんへ選ばれた無疵の白桃、向きあい、お話をしながら剥いてわたす、幸せな一時です。(祝恵子)

○今日の俳句
足場組む上へと徐々に秋空へ/祝恵子
足場が徐々に組まれ行く様子を見上げて、秋空をよく感じている。丁寧な写生がよい。(高橋正子)

○カンナ

[カンナ/横浜市港北区日吉本町]      [カンナ/横浜市港北区箕輪町]

★老いしとおもふ老いじと思ふ陽のカンナ/三橋鷹女
★鶏たちにカンナは見えぬかも知れぬ/渡辺白泉
★王様はこのごろ不安花カンナ/丸山海道
★押してゆく自転車カンナの海へ出る/西川碧桃
★カンナ咲く遥かな海を照らしつつ/鈴木夏子
★ピアニカを吹く緋のカンナ黄のカンナ/丹沢亜郎

カンナ科はカンナ属のみで構成されます。熱帯アメリカを中心に約50種が分布する毎年花をさかせる多年草で、地下に根茎(球根)をつくります。日本には江戸時代前期にカンナ・インディカ(和名:ダンドク)が渡来し、現在では河原などで半野生化しているものが見られます。カンナはギリシア語で「アシ(葦)」を意味し、その草姿がアシに似ているところに由来します。
草丈が1m-2mになる大型種と40cm-50cm程度におさまる矮性種(わいせいしゅ)に大きく分けられます。冬は地中の根茎の状態で越し、春に芽を出して葉を広げます。葉は長だ円形や先のとがったやや細長いかたちで、色は緑や赤銅色、葉脈に沿って美しい斑の入るものもあり花のない時期も充分楽しめます。
花どきは主に夏-秋、花の形態はやや特異で6本ある雄しべが1本を残してすべて花びらになり※1、雌しべはへら状になります。花色は緋色、ピンク、オレンジ、黄色、白などがあり、葉に斑点や模様のはいるものも多く非常にカラフルです。

生活する花たち「白むくげ・萩・藤袴」(東京・向島百花園)

8月18日(月)

★白萩のこぼれし花を掃く朝な  正子
晩夏から初秋にかけて咲く萩の花は、思いのほか花期が長く、大変趣きのある万葉の古より親しまれている花ですね。早朝の門辺に、白萩のをこぼれ萩を掃く清涼なる光景が想われ、涼やかで素敵です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
鬼やんま少年の日の遠きかな/桑本栄太郎
ついっと目の前に現れた鬼やんま。鬼やんまはいつも魅力的だが、少年の日はさらに心躍らせるものだった。遠い少年の日が思われる。(高橋正子)

○芙蓉

[白芙蓉/横浜日吉本町]           [酔芙蓉/横浜日吉本町]

★枝ぶりの日ごとに替る芙蓉かな 芭蕉
★露なくて色のさめたる芙蓉哉 子規
★露けさの庵を繞りて芙蓉かな 漱石
★芙蓉見て立つうしろ灯るや 碧梧桐
★母とあればわれも娘や紅芙蓉 かな女
★日輪病めり芙蓉の瓣の翳ふかく 亞浪
★さわさわと松風わたる芙蓉かな 風生
★三味線も器用に弾きて芙蓉かな 万太郎
★朝な梳く母の切髪花芙蓉 久女
★街道に芙蓉の家の静かかな 秋櫻子
★日輪のさやかに見ゆる芙蓉かな 淡路女
★狼藉や芙蓉を折るは女の子 虚子
★豊満の美に佛性や紅芙蓉 風生
★菜園のほとり芙蓉を咲かしめぬ 鷹女
★白芙蓉暁けの明星らんらんと 茅舎
★美しき芙蓉の蟲をつまはじき 夜半
★水櫛に髪しなやかや花芙蓉 汀女
★ふるさとを去ぬ日来向ふ芙蓉かな 不器男
★紅芙蓉白芙蓉又紅芙蓉 立子
★亡母訪ねくるよな夕焼白芙蓉 林火
★師の齢いくつ越えしや芙蓉は実に 波郷

 松山の郊外に一時住んでいたときは、玄関に芙蓉があり、花に隠れて水道があった。そこでは、盥で洗濯をしたが、花の傍で水をいっぱい使って洗濯をすると、気分もさわやかだった。

★雲が来て風のそよげる花芙蓉/高橋正子
★深まれる秋の真中の酔芙蓉/〃

 フヨウ(芙蓉、Hibiscus mutabilis)はアオイ科フヨウ属の落葉低木。種小名 mutabilisは「変化しやすい」(英語のmutable)の意。「芙蓉」はハスの美称でもあることから、とくに区別する際には「木芙蓉」(もくふよう)とも呼ばれる。原産地は中国で、台湾、日本の沖縄、九州・四国に自生する。日本では関東地方以南で観賞用に栽培される。幹は高さ1.5~3m。寒地では冬に地上部は枯れ、春に新たな芽を生やす。葉は互生し、表面に白色の短毛を有し掌状に浅く3~7裂する。7~10月始めにかけてピンクや白で直径10~15cm程度の花をつける。朝咲いて夕方にはしぼむ1日花で、長期間にわたって毎日次々と開花する。花は他のフヨウ属と同様な形態で、花弁は5枚で回旋し椀状に広がる。先端で円筒状に散開するおしべは根元では筒状に癒合しており、その中心部からめしべが延び、おしべの先よりもさらに突き出して5裂する。果実はさく果で、毛に覆われて多数の種子をつける。同属のムクゲと同時期に良く似た花をつけるが、直線的な枝を上方に伸ばすムクゲの樹形に対し、本種は多く枝分かれして横にこんもりと広がること、葉がムクゲより大きいこと、めしべの先端が曲がっていること、で容易に区別できる。
 スイフヨウ(酔芙蓉、Hibiscus mutabilis cv. Versicolor) 朝咲き始めた花弁は白いが、時間がたつにつれてピンクに変色する八重咲きの変種であり、色が変わるさまを酔って赤くなることに例えたもの。なお、「水芙蓉」はハスのことである。混同しないように注意のこと。 アメリカフヨウ(草芙蓉(くさふよう)、Hibiscus moscheutos、英: rose mallow) 米国アラバマ州の原産で、7~9月頃に直径20cmにもなる大きな花をつける。草丈は1mくらいになる。葉は裂け目の少ない卵形で花弁は浅い皿状に広がって互いに重なるため円形に見える。この種は多数の種の交配種からなる園芸品種で、いろいろな形態が栽培される。なかには花弁の重なりが少なくフヨウやタチアオイと似た形状の花をつけるものもある。

◇生活する花たち「葛の花・女郎花・萩」(東京・向島百花園)

8月17日(日)

★葛の花匂わすほどの風が起き  正子
秋の七草の一つの葛の花。その旺盛に伸び広がる蔓性の葉が、吹き起こる風に、いっせいに煽られる清々しい光景が浮かびます。風に裏返る白い葉裏も、辺りに漂う紅紫色の花の甘い香りも、嬉しい秋の訪れを感じさせてくれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
真珠筏浸し秋の海澄めり/藤田洋子
浸し」が秋海の澄んだ水をよく感じさせてくれる。秋海の澄んだ水に浸され殻を育てている真珠は、美しく輝く珠となることであろう。(高橋正子)

○青柿

[青柿/横浜日吉本町]

★青柿やこの道に師と呼ばしめず/石田波郷
★柿青し鏡いらずの髭を剃る/石川桂郎
★お前も力つきたかと並ぶ青柿/加藤昭夫

台風がくる9月、青柿が台風の風雨で落ちることがある。窓から柿の木が台風になぶられて青柿がぶつかりあっているのを見る。柿の木は田舎にはどの家にもあるほどで、「柿の木のある家」などという童話も記憶している。小学生のころ運動会は、10月の初めに行われた。ちょうど青蜜柑が出回るころで、柿もはやく熟れないかなあと待ち遠しかった。柿の花は、四角で座布団のようだといつも思うが、生り初めは、本当に花の通りに四角。育ってくると、富有柿などは丸みを帯びてくる。そのまま四角な柿もある。青柿を見れば、朱色に熟れる日が楽しみになる。
柿は日本だけのものと思っていたが、ドイツに旅行した時7月の終わりだったが、フランクフルトのマーケットで見た。林檎と同様に、オーストラリアから輸入されたものらしかった。カキとよばれるのか、パーシモンと呼ばれるのか、その時は確かめなかったが、世界の市場でも見られるようだ。ちなみに、柿の木は折れるから、登るなと木登りは厳禁であった。

★ガラス窓拭けば青柿丸見えに/高橋正子
★台風過ぎし庭に青き葉青き柿/〃

 カキノキ(柿の木)は、カキノキ科(Ebenaceae)カキノキ属(Diospyros)の落葉樹カキノキ(D. kaki)である。東アジアの固有種で、特に長江流域に自生している。熟した果実は食用とされ、幹は家具材として用いられる。葉は茶の代わりとして加工され飲まれることがある。果実はタンニンを多く含み、柿渋は防腐剤として用いられ。現在では世界中の温暖な地域(渋柿は寒冷地)で果樹として栽培されている。雌雄同株であり、雌花は点々と離れて1か所に1つ黄白色のものが咲き、柱頭が4つに分かれた雌しべがあり、周辺には痕跡的な雄しべがある。雄花はたくさん集まって付き、雌花よりも小さい。日本では5月の終わり頃から6月にかけてに白黄色の地味な花をつける。果実は柿(かき)と呼ばれ、秋に橙色に熟す。枝は人の手が加えられないまま放って置かれると、自重で折れてしまうこともあり、折れやすい木として認知されている。
 日本から1789年にヨーロッパへ、1870年に北アメリカへ伝わったことから学名にも kaki の名が使われている。英語で柿を表す「Persimmon」の語源はアメリカ合衆国東部の先住民であるアルゴンキン語族の言葉で「干し果物」を意味する名詞「ペッサミン」であり、先住民がアメリカガキ(Diospyros virginiana L.)の実を干して保存食としていた事実に基づく。近年、欧米ではイスラエル産の柿(渋抜きした「Triumph」種)が「シャロンフルーツ(Sharon Fruit)」という名称で流通するようになったため、柿は「Persimmon」よりも「Sharon Fruit」という名で知られている。

◇生活する花たち「落花生の花・ササゲの花・稲の花」(横浜市緑区北八朔町)

8月16日(土)

★いつよりか燕無き空青澄める  正子
ツバメは群れを成したり隊形を整えたりして渡ることをしないようですから、春が来て何羽もが街を飛び交っているのを見つけたり、また秋には、いつの間にか一羽もいなくなってしまっていることにふと気が付くというようなことがよくあります。
「燕無き空青澄める」という表現には、しみじみと秋到来を思う深い詩情が込められており、「いつよりか」にはまた、小さな喪失への感慨が届けられて来ます。(小西 宏)

○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

○木槿(むくげ)

[木槿/横浜日吉本町]            [木槿/東京・新宿御苑]

★花むくげはだか童のかざし哉 芭蕉
★道のべの木槿は馬にくはれけり 芭蕉
★修理寮の雨にくれゆく木槿哉 蕪村
★花木槿里留主がちに見ゆる哉 一茶
★馬ひとり木槿にそふて曲りけり 子規
★縄簾裏をのぞけば木槿かな 漱石
★墓多き小寺の垣や花木槿 碧梧桐
★いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子
★お遍路木槿の花をほめる杖つく 放哉
★みちのくの木槿の花の白かりし 青邨
★路草にむかひて萎む木槿かな 耕衣
★日の出待つや木槿いつせいに吹かる中 林火
★避暑町の少しさびれぬ花木槿 たかし
★道すがらうかぶ木槿や徒労ばかり 波郷
★白木槿ごみを出すにも蝶むすび/片山由美子
★ふっくらと巻きて落花の木槿かな/野村洋子

 木槿は、朝咲いて夕方にはしぼむ。お茶席の花としてよく活けられもする。先日千駄木の骨董屋の女主人が亜浪先生の句について信之先生に聞いて来られた折に、骨董の竹籠に槿と縞萱を活けた写真を送ってこられ、だれかをお茶にお招きしたい気分だと書き添えてあった。お茶の花ともなるが、どこにでも咲いている。
 
 ★白槿十年たちまち過ぎていし/高橋正子
 
 この句は、砥部の田舎で学生が来たり、ドイツ語の先生が来たり、子どもの友達がわっさわっさと来たり、句会の人たちが出入りしたり、掃除、洗濯、庭の手入れなどなど、雑多なことに明け暮れて、ある朝、白い槿を見て、十年なんてすぐ終わってしまうと思ったとき出来た句だ。
 今朝、自分の以前作ったこの白槿の句を読んで、今はもうこういう句を作る気持ちではないと知った。あれから十年が何回過ぎたことか。
 
 ★底紅の紅が澄みたる白槿/高橋正子

 ムクゲ(木槿、別名:ハチス、Hibiscus syriacus; 英語: rose of Sharon)はアオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽されるほか、夏の茶花としても欠かせない花である。インドや中国が原産で、中近東にも自生している。日本へは奈良時代に中国から渡来し、和歌山県や山口県に野生のムクゲがあったとされる。 夏から秋にかけて白、紫、赤などの美しい花をつける。薬用のほか、鑑賞用に多くの品種がある。俳句では秋の季語である。根が横に広がらないため、比較的狭い場所に植えることができる。 刈り込みにもよく耐え、新しい枝が次々と分岐する。そのため、庭の垣根に利用されることもある。 自然樹形は箒を逆さにしたようになる(下記の樹形の例参照)。 栽培されているものはよく剪定されてしまうため、高さは3-4mくらいのものが多く、灌木であると誤解されるが、放置すると10m以上の樹高になり、桜の木よりすこし小さいくらいの大きさになる。花期は7-10月。花の大きさは10-18cmほど。花芽はその年の春から秋にかけて伸長した枝に次々と形成される。 白居易(白楽天)の詩の誤訳から一日花との誤解があるが、朝花が開き、夕方にはしぼんで、また翌朝開き、一重のもので2-3日。八重の長く咲くもので2週間くらい、一輪の花を楽しめる。中国名の木槿(もくきん)を音読みし、木槿(むくげ)、木槿花(もくきんか)と呼ばれるようになった。また、「類聚名義抄」には「木波知須(キハチス)」と記載されており、木波知須(キハチス)や、単に波知須(ハチス)とも呼ばれる。白の一重花に中心が赤い底紅種は、千利休の孫である千宗旦(せんそうたん)が好んだことから、「宗丹木槿(ソウタンムクゲ)」とも呼ばれる。中国語では木槿/木槿(ムーチン)、朝鮮語では무궁화(無窮花; ムグンファ)という。英語の慣用名称のrose of Sharonはヘブライ語で書かれた旧約聖書の雅歌にある「シャロンのばら」に相当する英語から取られている。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月15日(金)/月遅れ盆(旧盆)・終戦の日

★追分の芒はみんな金色に/高橋正子
追分は街道の分かれ道で、右へ行けば江戸、左へ行けば京というような碑をよく見かける。そんな碑を囲むように茂る芒。金色というからには芒も開花している。その穂芒の向こうへ今日の陽が落ちる、そんなとき芒の穂はすべてが金色になる。(古田敬二)

○今日の俳句
信濃路へ入るコスモスを揺らしつつ/古田敬二
信濃は今の長野県のことであるから、けいじさんの住んでいる名古屋から信濃へ車で向かっているとき、コスモスも咲いて、ここからは「信濃路」だと思うと、目的地への期待が膨らむ。レベルの高い句。(高橋正子)

○露草

[露草/横浜日吉本町]             [露草/東京白金台・自然教育園]

★露草や飯噴くまでの門歩き 久女
ご飯が噴くまで家の庭を少し歩く。見れば露草がみずみずしく咲き、早朝の涼しい時間が心地よい。(高橋正子)

★月草の花に離れてうてなかな 虚子
★露草の花みづみづし野分晴 泊雲
★つゆけくも露草の花の 山頭火
★一叢の露草映すや小矢部川 普羅
★千万の露草の眼の礼をうく 風生
★ことごとくつゆくさ咲きてきつねあめ 蛇笏
★露草に祭の玩具落しけり かな女
★朝の日の母を訪はばや蛍草 耕衣
★露草や室の海路を一望に 汀女
★蝶とりし網を伏せおく蛍草 立子

春はおおいぬのふぐり、秋は露草。どちらも小さい青い花だ。野辺に咲くと、春が来たと思い、秋が来たと思う。そして、野辺にごとごとく咲く。露草の青い花が露を宿していると、涼しさそのものに思える。摘み取って花瓶に活けてもほんの朝のうち。俳句の話などで、朝の来客のみを喜ばせた。昼過ぎ、あの青い花はどこへ行ったか。凋んだといっても凋んだ花を見たことがない。耳学問によると、あおの青い花は、昼には苞の中に溶けてしまうのだと。ありそうなことである。

 ツユクサ(露草、Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。日本全土、アジア全域、アメリカ東北部など世界中に広く分布する、畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。高さは15~50cmで直立することはなく、茎は地面を這う。6~9月にかけて1.5~2cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。雌しべが1本、雄しべが6本で成り立っている。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名のDayflowerも「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。また「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。ツユクサは古くはつきくさと呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、万葉集などの和歌集では「月草」の表記が多い。この他、その特徴的な花の形から、蛍草(ほたるぐさ)や帽子花(ぼうしばな)、花の鮮やかな青色から青花(あおばな)などの別名がある。 また鴨跖草(おうせきそう)という生薬名でも呼ばれる。花の青い色素はアントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。ただしツユクサの花は小さいため、この用途には栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられた。オオボウシバナは観賞用としても栽培されることがある。花の季節に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いる。
 万葉集には月草(ツユクサの別名)を詠ったものが9種存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。また俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

8月14日(木)

★おみなえし一朶の白き雲を連れ  正子
おみなえしの黄色い花と雲の白さが目に浮かぶようです。(多田有花)

○今日の俳句
緑陰に昼の草刈機が休む/多田有花
朝涼しいうちに使われた草刈機は、昼の暑い時間は、緑陰で休む。草刈機も人のようだ。(高橋正子)

○溝萩(みそはぎ)・禊萩(みそはぎ)

[溝萩/東京・向島百花園]          [溝萩/横浜・四季の森公園]

★みそ萩や水につければ風の吹/小林一茶
★溝萩の咲けば偲べる人のあり/稲畑汀子
★溝萩咲く父母の仲人たりし家/松崎鉄之介
★みぞ萩や旅からもどりすぐ旅に/山田六甲
★千屈菜に澄みし水あり休耕田/小浦遊月
★溝萩や束ねて丈の定まりぬ/上月智子

 溝萩は、水辺や湿地に育ち、淡紅紫色の小さい花が穂のように咲く。私が生まれた備後南部では、これを「盆花(ぼにばな)と呼んでいた。盆のことを「ぼに」と呼んで「ぼにがくるけん、草を刈らにゃあ。」というように使っていた。瀬戸内海沿岸は、夏、雨が少ないので、讃岐のため池ほどではなくても、多くの田に野井戸があった。稲田の水が池から放流される灌漑用水では足りないときは、この野井戸が役に立っている。この野井戸のほとりや、田んぼの隅に溝萩が、それこそお盆用に植えられていた。お盆が近づくと、溝萩の束を持って、道を戻ってくる人を良く見かけた。その淡紅紫色の花穂が故郷のお盆の色である。

★みそ萩を束ね抱えし人に遇う/高橋正子

 ミソハギ(禊萩、学名:Lythrum anceps)はミソハギ科の多年草。湿地や田の畔などに生え、また栽培される。日本および朝鮮半島に分布。茎の断面は四角い。葉は長さ数センチで細長く、対生で交互に直角の方向に出る。お盆のころ紅紫色6弁の小さい花を先端部の葉腋に多数つける。盆花としてよく使われ、ボンバナ、ショウリョウバナ(精霊花)などの名もある。ミソハギの和名の由来はハギに似て禊(みそぎ)に使ったことから禊萩、または溝に生えることから溝萩によるといわれる。

◆8月ネット句会のご案内◆

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②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年8月14日(木)午前5時~8月19日(火)午後6時
④選句期間:8月19日(火)午後6時~8月20日(水)午前10時
⑤入賞発表:8月20日(水)正午
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