6月29日(月)

★紫陽花を剪るに真青き匂いたち  正子
梅雨の頃、小さい多数の四片の花を、毬状に群がり咲かせ、花弁と見えるものは萼で、花期が長く白、淡緑、碧、紫、淡紅と日を経るに従って花の色が変化する美しい花を剪って花瓶にさした紫陽花の素晴らしい景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
蛍飛ぶ後ろ大きな山の闇/藤田洋子
大きな山を後ろに闇を乱舞する蛍の火。山間の清流を舞う蛍火の見事さを「山の闇」で的確に表現した。(高橋正子) じゃがいもの花や赤城は靄の中/小口泰與
雄々しい赤城の山も靄の中に消え、薄紫のじゃがいもの花が優しく咲く。じゃがいもの花が咲く頃は、雨の後など靄がかかりやすい。季節がよく捉えられている。(高橋正子)

○夏萩

[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]

★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
  東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子

 萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。

 俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
 ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月28日(日)

★透き通るバケツにあふる朝の百合  正子
バケツがすきとおっているのではなく、水がすきとおっていると感じました。
その朝のすきとおった水に溢れんばかりの百合の花は、すっきりとした気分にさせてくれたことでしょう。(高橋秀之)

○今日の俳句
百円を握り園児はアイス買う/高橋秀之
暑い日には、アイスが何よりのたのしみな子どもたち。とくに園児は買い物が自分で出来る喜びも加わるので、アイスを手にした満足感はたかい。嬉しそうな園児の顔が浮かぶ。(高橋正子)

○青田

[青田/横浜市緑区北八朔]

★青田中信濃の踏切唄ふごとし/大串 章
★青田風チェンジのときも賑やかに/中田尚子
★千枚の青田 渚になだれ入る/佐藤春夫
★選挙カー連呼せず過ぐ青田道/日下徳一
★川面吹き青田吹き風袖にみつ/平塚らいてう
★石斧出て峡の青田の浮上せり/石井野洲子

一昨年の日記より:
 緑区にある田園地帯北八朔町にリュックを背負って、野菜の買い出しに出掛けた。北八朔町は田圃と梨畑が広がる純粋の農村地帯。青田を見るのも楽しみの一つ。電車はグリーンラインの日吉本町から川和町まで乗る。川和町の駅を出て道路沿いに100メートルほど行くと鶴見川に出会うが、鶴見川にかかる橋を渡ると、都筑区から緑区北八朔になる。北八朔は田圃と梨畑がひろがる純粋の農村地帯。田圃はまだ水が筋になって見えるが青田となっていた。田植から1か月ほどになるだろうか。根をしっかり恥初めているようだった。足元に水がごぼごぼ鳴り、梨畑の際までの遠く青田が見渡せる。買い出しの楽しみと、田圃を見る楽しみの両方味わえるのがいい。田圃の中のバス停の角で、野菜を売っているが、そこが目当てとするところ。今日はご主人が売ってくれた。トマトと茄子があればと思ったが、トマトは完熟を売りたいので、もう少し待て、とのことだ。晴れてくれれば、来週は出せるとのこと。路地栽培なのでやむを得ない。買ったのは、9種類。 ごぼう、枝豆、赤ピーマン、赤たまねぎ、たまねぎ、扁平ないんげん、南瓜、胡瓜、すもも。締めて1400円也。リュックは富士山に登ったときのもの。登山の荷物のようにちゃんと腰ベルトでリュックを固定して帰った。李は簡易冷蔵庫に入れて売っていたので、帰ってすぐ食べたが、美味しいものは美味しかった。李を食べたくなったのは、ドイツのマイン河畔でパーティーを開いてもらったおり、庭の李がサラダボールに一杯出され、たまらなく美味しかったことを思い出したからだ。パーティーを開いてくださった俳人で華道家のシュバルムさんは亡くなったが、あの李は実においしかった。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月27日(土)

★松葉牡丹のその色明るし子が摘みぬ  正子
膝をかがめ、幼き子が松葉牡丹の一番明るい花色を手折っている。傍でお母さんが優しい眼差しで、見守られています。(祝恵子)

○今日の俳句
植田には水の出入りの音つづく/祝恵子
植田には、いつも水があるが、入る水と、出る水とが静かに動いている。その出入口には静かな水音が絶えない。(高橋正子)

○ハイビスカス(仏桑華)

[ハイビスカス/横浜日吉本町]

★仏桑華被弾残塁かくれなし/藤田湘子
★けふの暑さ思ふ朝戸出の仏桑花/林原耒井
★激しくて一日紅の仏桑花/文挟夫佐恵
★仏桑花咲けば虜囚の日の遠き/多賀谷栄一
★仏桑花爆心に咲き喪の季節/下村ひろし
★口笛は幼くかなし仏桑花/塚原麦生
★海の紺ゆるび来たりし仏桑花/清崎敏郎
★島人の血はかくも濃し仏桑花/青柳志解樹
★仏桑花真紅の声を挙げて基地/山田みづえ
★仏桑花咲く島に来る終戦日/北沢瑞史
★仏桑花供華としあふれ自決の碑/岩鼻十三女
★窓際にハイビスカスの陽射し恋ふ/山元重男
★ハイビスカスばかり働き者ばかり/本田静江

 ハイビスカスはフラダンスを踊る人が髪に飾っている花として知った。未婚の女性と既婚の女性では、花を付ける位置が違うと聞いたことがある。アロハシャツにも描かれなじみとなっている。ハワイの州花となってハワイを代表する花であるが、沖縄にも自生していると聞く。おおらかで、明るく、穏やかな南国のイメージをまとっている。南国の楽園の花とイメージできる一方で、人知れぬかなしみをまとった花である。夏になると、ハイビスカスの鉢を買いたくなる。5,6年前購入したものがまだ健在であるが、肥料が足りないせいか、日差しが足りないせいか、真っ赤だった色が薄くなってきた。夏は、パッと真っ赤に咲かせたいと思う。
 
★街空の青にも開きハイビスカス/高橋正子

 ハイビスカスは、アオイ科フヨウ属の常緑低木で、学名は Hibiscus cv.(属の総称)。英名は Hibiscus。広義では、アオイ目アオイ科フヨウ属(Hibiscus)のことで、また、そこに含まれる植物の総称だが、日本では、そのなかでも熱帯および亜熱帯性のいくつかの種がとくに「ハイビスカス」と呼ばれ、南国のイメージをまとった植物として広く親しまれている。園芸用・観賞用としていくつかの種が「ハイビスカス」として流通する。その代表的なものはブッソウゲ(仏桑華、Hibiscus rosa-sinensis)である。ハワイの州花として知られる熱帯花木で、「ふよう」や「むくげ」も同じ仲間だが、ふつうは「ハワイアンハイビスカス」といわれる交配品種群をさす。和名の「ぶっそうげ(仏桑華)」は、葉が「くわ(桑)」に似ているからかもしれない。長く突き出た雌しべが特徴。「ハイビスカスティー」に用いられる花は、通常、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)と呼ばれる別種のものである。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月26日(金)

★風鈴に木々のみどりの集まりぬ  正子

○今日の俳句
夏の風本のページをすべて繰る/多田有花
開いておいた本に一陣の涼風が吹き、ページをぱらぱらとめくった。数ページでなく、すべてのページを繰る風の遊び心が面白い。涼しい句だ。(高橋正子)

○夏萩

[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]

★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
  東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子

 萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。

 俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
 ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月25日(木)

★ハム削ぎ切り新玉葱の白を載せ  正子
うすく切ったハムに、白い新玉葱をこれも薄く切って載せ、ハリハリとかじる。涼しさとその食感が同時に味わえる気が致します。この時季の季節感に充ち溢れた御句と思います。(河野啓一)

○今日の俳句
黒潮の豊かに寄せて青岬/河野啓一
「黒潮」と「青岬」の取り合わせが絵画的で印象深い。黒潮寄せる、緑滴る岬。涼しさと強さをもった景色だ。(高橋正子)

○すかし百合

[すかし百合/フラワーセンター大船植物園]

★自在鉤の鍋に活けありすかし百合/岡田章子
★すかし百合散るまで水平線凝視む/小林輝子

 スカシユリ(透百合、Lilium maculatum Thunb.)は、ユリ科ユリ属に属する植物の一種。海岸の砂礫地や崖などに生える多年草。大きさは20cm – 60cmとなる。本種は古来より栽培・育種の対象となっており、交配の母種として使われることが多い。本種と近縁種をスカシユリ亜属(Lilium pseudolirion Thunb.)として分類することがある。杯状の花を上向きにつけることが特徴。本属には、本種スカシユリの他、近縁種のエゾスカシユリ、ヒメユリを含む。
 鱗茎は白色で卵型。茎は直立し、高さ20cm – 60cm程度。葉は葉柄のない披針形で互生する。花期は太平洋岸の個体群で7月 – 8月、日本海側の個体群で5月 – 6月。茎の頂に、直径10cm程度の、赤褐色の斑点を持つ橙色の花をつける。花被片の付け根付近がやや細く、隙間が見えることから「透かし」百合の和名がある。近縁種のエゾスカシユリと比較し、花柄やつぼみに綿毛がないこと、全体にやや小型であることで判別される。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月24日(水)

★紫陽花を剪りて雨の匂いせり  正子
梅雨時の紫陽花は雨のお友達ですね!!。この紫陽花は雨との措辞により、深くて吸い込まれそうに青いブルーと想いました。剪り採る時の微かに残る雫がはっきりと眼に浮かび、匂い立つような紫陽花の美しさが想われます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
川風を受けて淡きや合歓の花/桑本栄太郎
「風に乗る」は、風に乗って運ばれる、移動するの意味が含まれるので句意がわかりにくい。合歓の淡い花の咲く枝が川風を受け、煽られている様子は、優しさのなかにも合歓の花の強さが見える。(高橋正子)

○花柘榴

[花柘榴/横浜日吉本町]

★水色は遠方の色花柘榴/桂信子
★軒下の破れ櫃に散る柘榴かな/高浜虚子
★泥塗つて柘榴の花の取木かな 鬼城
★古宿や青簾のそとの花ざくろ 蛇笏
★格子戸に鈴音ひびき花柘榴 蛇笏
★草の戸の真昼の三昧や花柘榴 茅舎
★朝曇る柘榴の落花掃きにけり 麦南
★柘榴咲く市井にかくれ棲みにけり 淡路女
★花柘榴また黒揚羽放ち居し 汀女
★花柘榴なれば落つとも花一顆 草田男
★世はハタと血を見ずなりぬ花柘榴 草田男
★花柘榴情熱の身を絶えず洗ふ 草田男
★恋ふ難し石榴の花は実の先に 不死男
★花柘榴雨きらきらと地を濡らさず 林火
★とはにあれ柘榴の花もほほゑみも 楸邨

「紅一点」という言葉がある。男性の中にただ一人いる女性の意味だが、これは漢詩から来ている。その紅が柘榴の花である。中国人好のみの色と思う。小さいながら強烈な色だ。花柘榴も秋にはルビーのような実を結ぶ。ガクのようなところはチューリップ型の筒状となって、皮となる気配を見せている。柘榴の花も落ちる。柿の花も落ちる。二つの花を集めて遊んだ。柿の花は蔕を二つ合わせて麦わらを通して水車に、柘榴の花は、チューリップのようなところを集めるだけ。

★花柘榴そこに始まる上家の路地/高橋正子

ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名: Punica granatum)とは、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培されるほか、果実は食用としても利用される。ザクロ科(学名: Punicaceae)は、ザクロ属(学名: Punica)のみからなる[4]。また、ザクロ科の植物は、ザクロとイエメン領ソコトラ島産のソコトラザクロ(Punica protopunica)の2種のみである。葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

6月23日(火)

★青蔦に夕日あまねき道を帰る  正子
塀や壁面などに這い上がり、青い艶のある葉をよく茂らせて、風に揺れてみずみずしい青蔦。気持ちのよい道に夕日が隅々まで広く行き渡っている。素敵な道を我が家に帰る作者。幸せが沢山待っています。(小口泰與)

○今日の俳句
郭公や水面にぎわす雲と風/小口泰與
郭公の声があたりに響き、とりどりの形や色の雲が映り、風が起こす漣で水面はにぎやか。そんな静かで明るい景色が素晴らしい。(高橋正子)

○虎尾草(とらのお、おかとらのお)

[虎尾草(とらのお)/横浜・四季の森公園]

★虎尾草や日の通りみち子が通る/磯貝碧蹄館
★虎尾草を摘めば誰もが撫でにけり/小島健
★虎尾草に水やり一日外に出でず/小熊一人
★虎尾草や雨の畦行く犬のおり/小口泰與

 虎尾草は蕾の状態で見るのがほとんだ。虎の尻尾のようだというのだから、じゃあと、捕まえてみたくなる。その感じは猫の尻尾を捕まえる要領だ。アレンジされたブーケに虎尾草がところどころに使われている。園芸種だろうが、薄桃の芍薬と白い紫陽花、トルコキキョウの間から虎尾草がつき出てアクセントになっていた。自然では、丘虎の尾が、横浜四季の森公園の山肌に群生している箇所がある。私の肩より少し高い所で、日当たりが良く風を孕んでいた。梅雨に入る前のことだ。

★虎尾草をおかしと思えばおかしかり/高橋正子

オカトラノオ(丘虎の尾、学名:Lysimachia clethroides )は、サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。APG植物分類体系では、オカトラノオ属はヤブコウジ科に移されている。高さは、50cmから100cm。葉は茎に互生し、葉柄があり、長楕円形で全縁。花期は6月から7月で、白色の小さな花を茎の先に総状につけ、下方から開花していく。花穂の先端が虎の尾のように垂れ下がる。日本では北海道、本州、四国、九州に、アジアでは朝鮮半島、中国に分布し、山野の日当たりのよい草原に自生する。普通、群生する。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

◆ご挨拶/6月ネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


6月ネット句会は、特に行事をテーマにした句会ではなく、通常の月例句会でした。梅雨に入り、梅仕事やらっきょうを漬けたり、主婦の方はいろいろお忙しい日々を過ごしておられると思います。菜園を作っておられるかたは、新じゃがいもの収穫などうれしい句材も揃ったご様子。生活を詠むということは、メリハリも必要なことと思われますが、これが意外と難しいことだと思います。今月は、先月より一人多い15名の方が句会に参加されました。投句、選、コメントとありがとうございました。月例句会を楽しみにされているかたがおられ、マンネリになりがちなことを反省しつつ、継続は大事と思いつつ作業をしました。思えば月例ネット句会もずいぶん続いております。句会の管理運営は信之先生に、互選の集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。来月7月の句会を楽しみにお待ちください。これで、6月ネット句会を終わります。

6月22日(月)

★ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり  正子
「ほうたる」とはとても柔らかな響きで、蛍火の儚げな点滅をうまく表していると思います。するとそこに思いがけない一方向への動きが生じ、静かに漂っていた蛍の火が散るように流されて行ったことが窺えます。その一瞬の美しさを瞼に留めようと、結句がどっしりと全体の骨格を支えています。(小西 宏)

○今日の俳句
手のひらに蛍あかるき少女かな/小西 宏
手のひらの蛍にほっと照らされた少女の顔が浮かぶ。少女と蛍をさらりとした抒情でうまく詠んでいる。(高橋正子)

○雪ノ下

[雪ノ下/横浜日吉本町]

★何代の灯篭の苔に雪ノ下/正岡子規
★長き根に秋風を待つ鴨足草/高浜虚子
★夕焼けは映らず白くゆきのした/渡辺水巴
★ゆれそめて雨となりけり鴨足草/今井つる女

ユキノシタ(雪の下、学名:Saxifraga stolonifera)はユキノシタ科ユキノシタ属の植物。本州、四国、九州及び中国に分布し、湿った半日陰地の岩場などに自生する常緑の多年草である。人家の日陰に栽培されることも多い。葉は円形に近く(腎円形)、裏は赤みを帯びる。根本から匍匐枝を出して繁殖する。開花期は5-7月頃で、高さ20-50 cmの花茎を出し、多数の花をつける。花は5弁で、上の3枚が小さく濃紅色の斑点があり基部に濃黄色の斑点があり、下の2枚は白色で細長い。花弁の上3枚は約3-4 mm、下2枚は約15-20 mmである。本種の変種または品種とされるホシザキユキノシタには、こうした特徴は現れず、下2枚の長さは上3枚と同じくらいとなる。開花後、長さ約4 mmほどの卵形の果(さくか)を実らせる。雪が上につもっても、その下に緑の葉があることから「雪の下」と名付けられた。また、白い花を雪(雪虫)に見立て、その下に緑の葉があることからとする説がある。このほか、葉の白い斑を雪に見立てたとする説もある。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

■六月ネット句会入賞発表■


■6月ネット句会■
■入賞/15名45句

■入賞発表/2015年6月21日
【金賞】
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
バスや車、電車などで出かけると、山肌の斜面に白い百合が雪崩れ咲いているのを見かける。私の経験では、松山自動車道を通るときに、こういった光景をよく見た。今では、懐かしい風景として蘇る。百合と海との取り合わせに清潔さがあって、すがすがしい。望郷の思いも重なる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
枇杷の実が熟れると、灯をともしたような色になる。田舎ではどの家にもというほど、枇杷があった。枇杷の実は子どもの楽しみでもあった。その夢見るような優しさは、望郷の思いをつらせる。(高橋正子)

★ロープーウェイ眼下は若葉の広がりし/高橋秀之
ロープウェイで吊られてゆくと、眼下には若葉が広がっている。明るい若葉の上をよぎることなど、ロープウェイでないとできないことだ。眼下に広がる若葉を楽しんでのことだ。(高橋正子)

【銅賞3句】
★合歓咲きて丘の一隅灯したり/ 佃 康水
丘の上に合歓の花が咲いた。淡い薄桃色の合歓の花が咲くと、丘の一隅が灯をともしたように明るくなる。合歓を見る人は、ともし火のような優しさに包まれる。(高橋正子)

★しんじゃがの籠重たくて畦を行く/古田敬二
しんじゃがを収穫した籠を下げて畦を行く。たくさん収穫できた喜び。しかし、下げれば重い籠に苦心して帰る道々。まだ土の乾かないようなしんじゃがは、作った人でないと味わえない。さぞやおいしいことだろう。(高橋正子)

★うるわしき大洲盆地や若葉風/井上治代
大洲盆地は、その中心を肱川が流れ、霧が発生することでも有名だ。夏にはこの川で鵜飼があり、川ほとりには大洲城がある。盆地を埋める豊かな若葉。その若葉を風が吹くと、「うるわしき哉、大洲盆地」となる。故郷賛歌。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★まな板にのせて収穫初胡瓜/祝 恵子
自家製の胡瓜が実り、初めて収穫され、今、まな板に載っています。何のご馳走が出来るのでしょうか。収穫の喜びと主婦らしい眼差しを感じます。 (佃 康水)

★ロープーウェイ眼下は若葉の広がりし/高橋秀之
若葉とロープウエイに的を絞って大景を俯瞰された詠みに惹かれました。 (河野啓一)

★蜻蛉生る狭庭の隅やビオトープ/河野啓一
庭の隅にある小さなビオトープから蜻蛉が生まれます。小さくても身近なところに生命の神秘があります。(高橋秀之)

★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
★しんじゃがの籠重たくて畦を行く/古田敬二
★うるわしき大洲盆地や若葉風/井上治代
★夕立のあとのいつもの街を歩く/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★湖は夏櫂の雫も風に乗り/河野啓一
湖の水の上を渡って匂うような爽やかな風が吹き、ボートに乗っている若い二人の櫂も気の合った漕ぎ方でスイスイと進み、櫂から飛び散る水滴も風に乗ってとっても気持良さそうです。 (小口泰與)

★道端に瞳涼しき石仏/井上治代
瞳のすずやかな石仏に会われ、足を止められ、話しかけられたりしておられるのかなと推察いたしました。 (祝 恵子)

★雨上がりの空へ向かって夏の蝶/高橋秀之
雨の多い季節,蝶は翅を濡らし重たそうにしています。雨が上がれば翅を乾かすかの様に空に向かって飛ぶ活き活きとした夏の蝶の姿が見えて参ります。(佃 康水)

★糠漬の夏の野菜と白米と/迫田和代
むしむしとした夏、些か食欲も衰え勝ちです。そんな時、胡瓜、茄子などの夏野菜の糠漬と白いご飯が有れば食が進みます。糠漬と白米のみに焦点を当て、後は何も言わなくても日本人ならではの食事、これからの猛暑も乗り切れそうですね。(佃 康水)

★ラムネ買い水色ガラスの音がする/高橋句美子
ラムネを買われた作者、実際に音を鳴らされたのか或いはまた、ラムネの水色のビンの形、ラムネの栓、ガラス玉の音、抜く時のしゅっ!とした音、など等懐かしい思い出のイメージが浮かんで来られたのでしょうか。遠い夏の日の涼しい音が甦って参りました。(佃 康水)
ラムネは子どもの頃に飲んだ記憶があります。飲んだ後でビンを揺らして、ビー玉の音を楽しんでいました。「水色ガラスの音がする」という表現が涼しげで「夏が来た」という感じがします。 (井上治代)

★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
★合歓咲きて丘の一隅灯したり/ 佃 康水

【入選/5句】
★雷鳴や雹の飛び交う厩橋/小口泰與 
ここ数年、温暖化のせいでしょうか?全国至る所で異常気象の発生です。先日の関東地方を襲ったダウンバースト現象のようですが、雷鳴と共に雹が降り、大変な被害でした。厩橋との地名も効いていて異常気象の緊張感を巧みに詠まれました。 (桑本栄太郎)

★田植え終う里鎮もりて満月光/柳原美知子
田植えの終わった広々とした水田。その静持ったみなもを満月の光りが静かに照らす。平和な農村風景である。 (古田敬二)

★亀そろい甲羅を干すや梅雨晴れ間/多田有花
雨の後の青さが増した空の下で、亀が並んで甲羅を干している様子がユーモラスな感じがして、楽しい句だと思いました。(井上治代)

★万緑の大山崎や蒸留所/桑本栄太郎
JR京都線に乗って大阪から京都に向かう途中にサントリーの蒸留所が見えます。都会からわずかの距離なのに、緑が濃くほっとする景色が広がっています。あああのあたりだなと思う御句です。(多田有花)

★不死鳥のフェニックス揺れ墜栗花雨/谷口博望
植物のフェニックスの名がエジプト神話の不死鳥のフェニックスと同じなので、「不死鳥のフェニックス」と言った。蘇鉄似た、それよりも大きな葉を広げ、風を受けて大きくそよぐ。墜栗花雨は、「ついりあめ」と読む。フェニックスが揺れているのは墜栗花雨のせい。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★芍薬のピンクが白に近い色
美しい芍薬の花白に近いピンク色にぱっと咲いて周りを華やかにする。淡いピンクを白に近い色と言われたのもいいですね。 (迫田和代)

★栃の木の紅花立てて街路樹に
栃の木は高木で大きな葉を付け,花は円錐状に空へ向かって立ち上がっています。
植物公園で初めて見た時、正子先生の句にも有りました様に本当に豊かな気持ちになりました。その栃の花が日常的に街路樹に見られるのは嬉しいです。(佃 康水)

★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ

■選者詠/高橋正子
★欅並木梅雨をきらきら滴らす
梅雨の欅並木を軽快に歩む詠者。雨滴がきらきらと輝く様子を眺めるのも梅雨ならではの楽しみです。生き生きとした梅雨の季節の生活が感じられます。 (柳原美知子)

★夕立のあとのいつもの街を歩く
「いつもの街」がよく効いていると感じます。
日々暮らす自分の生活する街、夕立はその街に新鮮な風を運びます。雨上がりのさっぱりとした景色の中を歩く心地よさが伝わってきます。(多田有花)

★休憩に真正面の夕焼けへ

■互選高点句
●最高点(6点)
★道端に瞳涼しき石仏/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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