■四月花まつりネット句会入賞発表■

■花祭りネット句会/2015年4月8日■
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之
○投句:20名60句

【金賞】
★風音の野を渡りゆく仏生会/ 柳原美知子
仏生会と思う一日、心静かに耳を澄ませば、野を風が吹き渡る音が聞こえる。野を渡る風音に万象の小さな声があるような気がする。(高橋正子)

【銀賞2句】
★花御堂の花に加わる花さくら/高橋正子
花御堂の屋根にはいろいろな花が飾られる。現実のところ、花屋から持ってきた百合やカーネーション、カラーなどが飾られている。その豪華な花々の中に、御堂の屋根の四角に、寺苑に咲く桜の枝が飾られていた。大方が花蕊となった寺苑の桜だが、花御堂の桜は、蕾もある桜が飾られ、心和むものを感じ嬉しくなった(自解:高橋正子)

★真直ぐを池に映して葦伸びる/古田敬二
池の葦が芽ぐみ、桜が散るころになるとどんどん緑の茎が伸びてくる。まっすぐに伸びる葦は池の水に映って、はやも初夏の涼しげな姿を見せている。まっすぐな葦の茎と水とがいい。(高橋正子)

【銅賞3句】
★花御堂傘色々とさし連ね/藤田洋子
雨の花祭りの花御堂は、参詣の人の色とりどりの傘が華やかさを一層引き立てているようです。(高橋秀之)

★軽やかに水音たてて水温む/井上治代
春風が吹き始めた庭の水道から出る水音も軽やかに、バケツを満たす水も温んで心地よい。春の訪れを喜び、生き生きと立ち働かれるお暮しがうかがえます。(柳原美知子)

★襞なして肌ぬれてゆく甘茶仏/小西 宏
甘茶をかけられて濡れていく誕生仏のさまが簡潔に詠まれています。仏の笑みやまわりの飾りつけ、人々の様子まで目に浮かぶようです。 (多田有花)

【高橋信之特選/8句】
★襟白く一年生のランドセル/小西 宏
白い襟もランドセルも子どもの顔もピッカピカ。大きな夢にむかって進んでいってほしいと思います。 (井上治代)

★花の屑付けて自転車帰りくる/ 祝恵子
あれほど爛漫と咲いた今年の桜も散りはじめました。桜吹雪の中を通りぬけた自転車にも、はらはらと花びらが散ったことでしょう。 (小川和子)

★咲き満ちて刻(とき)みちゆきて花の夜/井上治代
咲き誇る桜の美しく艶やかな花の夜。花爛漫の宵闇の柔らかな空気に包まれて、心豊かな刻がゆったりと流れます。 (藤田洋子)
毎年、刻(とき)が来れば咲いてくれ、私たちを喜ばせてくれる桜。待っていた今年も花の夜の満開を楽しみたいものです。(祝恵子)

★花御堂傘の色々さし連ね/藤田洋子
4月8日の灌仏会に誕生時の釈迦の立像を安置し、花を飾ったお堂にお参りに来る沢山の人達の傘の色と桜や菜の花や黄水仙、そして芝桜が咲くお寺の素晴らしい景がリズム良く詠われていると思います。 (小口泰與)
雨の花祭りの花御堂は、参詣の人の色とりどりの傘が華やかさを一層引き立てているようです。 (高橋秀之)

★花屑を落として車椅子を積む/川名ますみ
桜の花は思わぬところにまで花を散らし、その一片をも楽しませてくれます。それを見つけ、大切に地に落とすのも静かな喜びです。(小西 宏)

★供花挿せば日差しの中に初音澄む/柳原美知子
お彼岸のお墓参りだったのかもしれません。静かに花を供えるとき、ふと聞こえてきた鶯の声に、故人を偲ぶ思いをさらに深くしたことでしょう。(小西 宏)

★真直ぐを池に映して葦伸びる/古田敬二
上五の「真直ぐを」がいい。詠み手の思いが真直ぐに伝わってきて快い。 作者の内面の良さがいいのだ。(高橋信之)

★花御堂の花に加わる花さくら/高橋正子
花御堂は寺苑にあって、それほど目立つものではないが、多くが寺苑の真ん中に置かれ、花まつりという釈迦誕生の嬉しいお祝いの象徴となる。それに「花さくら」が加わっているのだ。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★襞なして肌ぬれてゆく甘茶仏/ 小西 宏
甘茶をかけられて濡れていく誕生仏のさまが簡潔に詠まれています。仏の笑みやまわりの飾りつけ、人々の様子まで目に浮かぶようです。 (多田有花)

★初つばめ駅舎を抜けて野の風へ/柳原美知子
日毎に春も進み、初つばめも見かける季節となった。「駅舎を抜けて野の風に」との表現に、鄙びた田舎の光景が想われ、翻りながら飛翔する初つばめのしなやかな姿が眼前に見えるようです。(桑本栄太郎)

★乳母車うまき夢見て花の下/古田敬二
作者のやさしさがいい。「やさしさ」には説明の必要は要らない。(高橋信之)

★地上にも空にもさくら夕暮れる/祝恵子
満開となった桜は空一杯に覆い、そろそろ散り始めた桜は地上を紅に染めています。空にも地にも花の明かりを残し暮れようとしている一瞬の静寂を感じます。(佃 康水)
足もとに降り敷く桜の花びら。見上げる空には咲き残る花。どちらも美しく、夕暮れになると幽玄な美しさも増します。 (井上治代)

★月蝕や白白白白ゆきやなぎ/矢野文彦
雪柳の咲き乱れる様子を「白白白白」と表現されたことが新鮮な感じがしました。月食との取り合わせも絶妙です。 (井上治代)

★菜の花の群がる川辺快晴に/高橋句美子
雲ひとつない青空に映える川辺の菜の花の黄。清らかに流れるせせらぎの音も聞こえてきそうです。春の喜びを感じさせてくれる晴れ晴れとした句ですね。(柳原美知子)

★風音の野を渡りゆく仏生会/柳原美知子
釈迦誕生の「仏生会」は、4月8日なので、いい季節だ。野を渡りゆく「風音」も快く胸に響く。釈迦誕生を祝ういい季節だ。(高橋信之)

★軽やかに水音たてて水温む/井上治代
春風が吹き始めた庭の水道から出る水音も軽やかに、バケツを満たす水も温んで心地よい。春の訪れを喜び、生き生きと立ち働かれるお暮しがうかがえます。(柳原美知子)

【入選/11句】
★囀りの野山に溢れ明日香村/河野啓一
明日香村と聞くだけで日本の原風景を想起致します。自然豊かな村では当に春爛漫鳥類もさぞ春を謳歌している事でしょう。 (佃 康水)

★花冷えや姫路城なる野面積み/桑本栄太郎
「花冷え」の冷たさと粗い石垣との対応がぴったりの感じで、時代を越えて城の歴史を偲ばせるものがあり、興味深い句と思いました。 (河野啓一)

★山歩き滴を宿す花惜しむ/多田有花
雨上がりの山を歩かれたのでしょう。おそらくまだ、からりとは晴れていない山道に、雨滴をまとった桜の花。重たげな滴とともに、その一片も落ちてしまいそうです。「花惜しむ」心地が募ります。(川名ますみ)

★陽春へ季語つぎつぎと宅配食/矢野文彦
最近は宅配の食事も美味しく、栄養も考慮されたものになっているようです。そんな中で、季節を楽しめる食材が使われ、お料理にも季語にある名前が付けられているのでしょう。春を味わいながら楽しくいただけます。(小西 宏)

★この星の静謐願い花祭り/河野啓一
世界中で起こる災害や人災が日々報じられる昨今、この地球の平和と静謐を願う詠者のしみじみと深い思いが花祭りに寄せて伝わってきます。(柳原美知子)

★山笑い一両列車の汽笛なる/福田ひろし
一両列車が走っているのは、都会ではなくのどかな山間部なのでしょう。その列車の汽笛が山に響く様子は、まさに山笑う雰囲気を醸し出してくれます。 (高橋秀之)

★百段を数え登る子花の山/佃 康水
山をあがるには段が続く、段を登りながら数えたら、百段あり、桜の花が見えた。子どもたちが数人で数えながらの花見だったかもしれませんね。(祝恵子)

★朧夜の街を清かに花明り/小川和子
朧夜の霞んだ街を桜の花が清らかに包んで、幻想的な雰囲気になっています。(祝恵子)
ぼんやりと朧に潤む街通りである。そこに仄々と浮かぶ花明り。見慣れたはずのわが街の、静かで和やかな佇まいである。(小西 宏)

★山門をくぐればばっちり花祭り/迫田和代
山門を潜って見ると美しく飾られた花御堂を中心に予想通り賑やかに花祭りが行われていました。その花祭りに加わり、さぞ心和む一時を過ごされた事でしょう。(佃 康水)

★次々に風にのりたる落花かな/小口泰與
枝を離れ行く「落花」は、風に乗って散る。次々に風に乗って散る。夥しい花びらが次々に風に乗って散る。(高橋信之)

★桜散る中を歩いて学校へ/高橋秀之
お子様の入学式でしょうか。落花を浴びながら、華やいだ気持ちでお子様の入学する学校へと歩を進める。お子様の成長を思う感慨と希望に満ちた学校への道程です。(柳原美知子)

■選者詠/高橋信之
★花まつり花のトンネル抜け寺へ
お釈迦様の生誕を祝う花祭りへと出かけられた道中出会われた満開の桜のトンネル、落花を浴びながら潜り抜ける至福のひととき。極楽浄土を観る思いが致します。(柳原美知子)

★満開の花の喜び誕生仏
★裏山の菫すみれ色の濃し

■選者詠/高橋正子
★花御堂の花に加わる花さくら
開花の状況によって桜の花が加わるのは非常に難しいのですが、今年は当地でも桜を加える事の出来たお寺を見かけました。自解されている様に桜を飾られた花御堂に一層の歓びを感じられた事でしょう。(佃 康水)

★さくら蕊のくれない深し瓦屋根
黒い瓦屋根にまで枝を伸ばす大樹に見事に咲き誇った桜。今はもう桜蕊ばかりになっているけれど、その深い紅の色もいとおしい。桜の花を惜しむ気持ちがよく表れていて、心打たれます。(柳原美知子)

★甘茶仏甘茶にまろく濡れいたる
甘茶仏が「まろく」である。穏やかで、まろくなのである。やさしいのである。。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点)
★初つばめ駅舎を抜けて野の風へ/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

4月8日(水)

★花御堂飾る花にも野のげんげ  正子
お寺では4月8日にお釈迦様のご誕生をお祝するために「花祭り」が行われていますが今は野や畑に咲く色んな花を摘んで花御堂を飾ります。子供の頃には、田んぼ一面に咲いていた蓮華草を主体に飾られていたことを鮮明に覚えています。御句より蓮華草の田んぼを泥んこになって遊んだり首飾りを作った子供の頃を懐かしみ、蓮華草を久しく見ていないなぁと花御堂の今昔を思いました。
(佃 康水)

○今日の俳句
黎明の初音に一日気の弾む/佃 康水
朝のはじめに良いことがあると、その日一日よい気持ちで過ごせる。黎明の鶯の澄んだ声には、「気の弾む」思いである。(高橋正子)

○花祭(はなまつり、別名:灌仏会、釈迦の誕生日)
4月8日の花祭りは、仏教の開祖、釈迦の生誕を祝福する仏教行事。潅仏会(かんぶつえ)仏生会(ぶっしょうえ)といい、「花祭り」は明治以降の名称。浴像会、降誕会などともいわれます。古代から釈迦の生まれたインドで行われてきた行事からのもので、日本ではお盆とともに仏教伝来からの歴史があります。推古天皇代(606)、聖徳太子の提唱で元興寺で行われたのが最初とか。この日、各寺には花で飾った小堂、花御堂(はなみどう)がつくられます。金属製の幼仏像をその中にまつり、甘茶が参拝者によってその誕生仏にかけられます。甘茶を潅(そそ)ぐ行事なので「潅仏会」。 花御堂は釈迦が生まれたところルンピニ園の花園を表しています。甘茶とは砂糖入りのお茶というわけではなく、ユキノシタ科のアマチャやウリ科のアマチャヅルを煎じた飲料です。漢方薬店で売っているらしい。お寺で参拝のあとにいただけるところもあります。麦茶に似た色をしていてちょっと甘くちょっとにがく、とろりとした飲みごこちがします。

★稚き葉の白く開きて潅仏会  正子
★石段のゆるびし上の甘茶寺  〃
★甘茶仏甘茶のいろに輝けり  〃
★花御堂飾る花にも野のげんげ  〃

○紫雲英(げんげ)・蓮華草(れんげそう)・れんげ・げんげん

[げんげ/横浜日吉本町]

★十本の指ありげんげ摘んでいる/三橋鷹女
★紫雲英田の沖の白波一つ見ゆ/川崎展宏
★親牛も子牛もつけしげんげの荷/高野素十
★花束になりたい蓮華草の夢/岡村嵐舟
★げんげ咲くコースジョギング続けねば/山本翠公
★何を言わんとして一面の蓮華草/田頭良子

 ゲンゲ(紫雲英、翹揺 Astragalus sinicus)はマメ科ゲンゲ属に分類される越年草。中国原産。レンゲソウ(蓮華草)、レンゲ、とも呼ぶ。春の季語。かつて水田に緑肥として栽培され、現在でもその周辺に散見される。岐阜県の県花に指定されている。
湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。茎の高さ10-25cm。根本で枝分かれして、暖かい地方では水平方向に匍匐し、60-150センチまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い匍匐茎を伸ばすこともある。葉は一回羽状複葉、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。一枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。花茎は葉腋から出て真っ直ぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。
 ゲンゲの花のミツは、良い「みつ源」になる。蜂蜜の源となる蜜源植物として利用されている。ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。民間薬として利用されることがある(利尿や解熱など)。ゲンゲの花を歌ったわらべ歌もある。「春の小川」などが有名。
ギリシア神話では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が有名。ニンフが変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)