4月26日

●小口泰與
うぐいすや山を賜わる水鏡★★★
蘇芳咲くしじまの中の羽音かな★★★★
おちこちの畑に人居る百千鳥★★★

●迫田和代
春潮や終生想う馬関の海★★★
山道の花御堂前花少し★★★
遠くから春風吹いて波静か★★★★

●黒谷光子
湖よりの風野漆の低きにも★★★★ 野漆は、漆のように木ではなく草。湿り加減の土地に群生して育つ。花は若葉のような黄緑色で花よりも葉のような印象を受ける。湖の色を分けてもらったような野漆の花が風のそよぐ、湖のほとりの光景。(高橋正子)

野漆の触れてはならぬ黄のいとし★★★
野漆の湖辺の森のここかしこ★★★

●桑本栄太郎
降りつもるものの数多や春惜しむ★★★
竹筒の花壇に五色やチューリップ★★★
春暑し午後の始業のチャイムかな★★★

●河野啓一
四月尽季の過ぎゆくを惜しむかな★★★
葱坊主葉先にそれぞれ宿るとは★★★
蛍烏賊ざっと煮汁に投げ入れて★★★★

4月26日(土)

★囀りに子の片言の鳥を呼び  正子
鳥たちの明るい囀りのもと、何とも愛らしいお子様の姿に、母としての幸せを感じます。心あたたまる和やかな光景に、春の喜びがあふれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

○石楠花(しゃくなげ)

[石楠花/横浜日吉本町・金蔵寺]      [石楠花/横浜箕輪町・大聖院]

★石楠花や朝の大気は高嶺より/渡辺水巴
★空の深ささびし石楠花咲きそめぬ/角川源義
★石南花や水櫛あてて髪しなふ/野沢節子
★ほぐれんとして石南花の大蕾/岡田日郎
★石楠花の頃は過ぎたり咲き残り/清崎敏郎
★石楠花の色濃くなりぬ朝の雨/緒方 輝

 シャクナゲ (石楠花、石南花) は、ツツジ科ツツジ属 (Rhododendron) 無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称である。主に低木だが、高木になるものもある。また、日本ではその多くのものがツツジと称される有鱗片シャクナゲ亜属のものを欧米では Rhododendron と呼んでいるので注意が必要である。ただし、有鱗片シャクナゲのなかでも、ビレア(マレーシアシャクナゲ)の仲間は、カワカミシャクナゲのように、日本でもシャクナゲと呼んでいる。
 Rhododendron としては主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布し、南限は赤道を越えて南半球のニューギニア・オーストラリアに達する。特にヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布する。いずれも派手で大きな花に特徴がある。花の色は白あるいは赤系統が多いが、黄色の場合もある。
 シャクナゲは葉にロードトキシンことグラヤノトキシンなどのケイレン毒を含む有毒植物である。摂取すると吐き気や下痢、呼吸困難を引き起こすことがある。葉に利尿・強壮の効果があるとして茶の代わりに飲む習慣を持つ人が多く存在するが、これはシャクナゲに「石南花」という字が当てられているため、これを漢方薬の「石南(オオカナメモチ)」と同一のもの(この2つに関連性はない)と勘違いしたためであり、シャクナゲにこのような薬効は存在しない。シャクナゲは常緑広葉樹にもかかわらず寒冷地にまで分布している。寒冷地に分布する種類のなかには、葉の裏側を中にした筒状にして越冬するハクサンシャクナゲなどがある。日本にも数多くの種類のシャクナゲが自生しているが、その多くは変種であり、種のレベルでは4種または6種に集約される。このほか、園芸用品種として数多くの外国産のシャクナゲが日本に導入されており、各地で植栽されている。

○生活する花たち「都忘れ・おだまき・卯の花」(東京浅草)