11月15日(金)

★たて笛の音色幼し冬初め   正子
たて笛を吹いているのは、きっと小学生、それも低学年の子どもなのでしょう。冬の初めに聴こえる幼さの感じる音色はここまでの子どもの成長も感じられる音色だと思います。 (高橋秀之)

○今日の俳句
大根を手に余らせてすりおろす/高橋秀之
大きな水気たっぷりの大根がすぐさま思い浮かぶ。手に余るほどの大根を摩り下ろすのは、ちょっと大変だが、それも大根らしいところ。(高橋正子)

○桜落葉

[桜落葉/横浜日吉本町]

★踏みてゆく桜ばかりの落葉かな/野村喜舟
★桜落葉嵩なしてゐる兵舎跡/皆川盤水
★納骨へ桜落葉の坂くだる/宮津昭彦
★いつの間に桜紅葉の落葉して/稲畑汀子

★すれ違う彼も桜の落葉踏む/高橋信之
★桜落葉が靴をうずめるほどの道/高橋正子
★桜紅葉水平線のけむりたる/高橋正子

 新宿御苑の桜落葉:今日も朝から雨模様。とはいえ、雨が雪に変わりそうなほどの寒さも今日はいく分か和らぎました。昨日から続く雨に、しっとりと舞い落ちたサクラの葉。イギリス風景式庭園では、地面に色とりどりの落ち葉のじゅうたんが敷き詰められました。おなじみの場所でも、落ち葉が積もると、ずいぶん雰囲気が変わるものですね。武蔵野の雑木林を思わせる母と子の森は、さまざまな種類の紅葉が楽しめる自然観察フィールド。野山の木々の色づきのような、素朴な味わいが魅力です。
 じつは、ここ母と子の森も、落ち葉のじゅうたんを楽しめるスポットのひとつ。地面にきれいな色模様を描いているのはサクラの落ち葉。しっとりと水分を含み、踏みしめると足に柔らかな感触が伝わります。木の枝についていた時はピンと張りつめていた葉も、落葉するとくるくると丸まり、何とも可愛らしい印象に。春に芽吹き、夏の太陽をめいっぱい浴びた葉が、いま役割を終えて、最後の彩りをのせて散り落ちていく。季節とともに巡る、自然の息づかいを身近に感じ、落ち葉の一枚一枚もいとおしく思えてきます。コンクリートの多い都会では落ち葉を掃除してしまうことがほとんどですが、新宿御苑では、園路など安全への配慮が必要な場所と、葉を残す場所を分けて管理を行っているため、自然のままに降り積もる落ち葉も楽しめます。(新宿御苑のホームページより)

◇生活する花たち「薬師草・山茶花・桂黄葉」(横浜四季の森公園)

11月15日

●小口泰與
冬霧の覆わる丘の灯しかな★★★★
詩情のある句。冬霧に覆われた丘に静かに点る灯が、なお柔らかな灯となっている。冬霧の季語が効いている。(高橋正子)

トンネルを出づや目交冬紅葉★★★
素朴なる冬の黄葉や奈良井宿★★★

●河野啓一
柿の葉の実を養えば色褪せず★★★
坂道を下れば浜辺冬の浪★★★
枯れ蓮の残りし池や散歩道★★★

●小西 宏
梯子より上は鴉に柿を干す★★★

子のひとり落葉の中の滑り台★★★★
落葉の積る公園だろうか。ひとりの子どもが滑り台をしている。幾度も幾度も滑っているのだろう。滑り台を楽しむというより、好きで集中している子に面白さ、頼もしさを見る。(高橋正子)

静空の枝に音触れ木の葉ふる★★★

●桑本栄太郎
活き活きと雨の畑の冬菜かな★★★
ワイパーの時折振れて時雨れけり★★★
蔦紅葉バスの家路の坂道に★★★

●多田有花
近隣の銀杏色づき冬の雨★★★
雨あがりすぐに日差しや冬紅葉★★★
昼の陽に蝶の飛び来て冬菜畑★★★