6月20日(2句)
★明日祭り音のかそけき真夜の雨/小口泰與
明日の祭りを気にかけている真夜中、雨が降るかすかな音が聞こえる。祭り前のしっとりと静かな心持がいい。(髙橋正子)
★だんだんと緑濃くなる青嶺かな/弓削和人
日々青嶺を見ていると、緑が濃くなっていくのがわかる。次第に夏らしくなっていく青嶺を眺める日々の楽しさが伝わってくる。(髙橋正子)
6月19日(1句)
★堰水の音に沿いゆく暑さかな/桑本栄太郎
堰の水が落ちる音を聞きながら、その音に沿って歩いている。暑さは真夏並みだが、かたや堰水は涼しい音を立てている。どこまでも沿って歩きたい。(髙橋正子)
6月18日(1句)
★砂利道の水溢れおり走り梅雨/廣田洋一
「走り梅雨」は梅雨入りの前に梅雨に似た曇りや雨のぐずついた天気が続くことをいうが、この句では、「砂利道の水溢れおり」で、それを感じた。人は、記憶のなかにも梅雨の景色をありありと持っている。(髙橋正子)
6月17日(1句)
★つばめ旋回夏陽沈みゆくなかを/多田有花
「つばめ旋回」はよく見る場面だが、これにつづけて「夏陽沈みゆくなかを」の場面は驚かされた。旋回するつばめがしみじみと思われる。(髙橋正子)
6月16日(2句)
★写真機の収む浅間や夏の風/小口泰與
泰與さんの写真の腕はたくさんの賞をとるほどで、すばらしいのだ。会心の浅間山を写真機に収めて涼やかな夏の風を受けている。(髙橋正子)
★かたわらに燕眠らせ夏の月/多田有花
「かたわらに」言葉がやわらかい。「眠る燕」と「夏の月」の童話の絵本に画かれた絵のようで、これもやさしい。(髙橋正子)
6月15日(1句)
★紫を縁に揃えて花菖蒲/多田有花
花菖蒲は紫や白が多いとはいえ、観察すると、淡い紫色や、白に紫のすじがはいったり、この句のように紫が縁にあるものなどいろいろある。縁に紫があるのは珍しく、涼しい印象がしていい。(髙橋正子)
6月14日(2句)
★草原の果なき空や天の川/廣田洋一
この句から草原は、「サバンナ」をイメージする。草原の果てしない空にかかる天の川の砂のような無数の星に、原初の夜空が呼び起こされそうだ。(髙橋正子)
★滴りの岩間の端も滴れる/弓削和人
描写が細かいが、「岩間の端」は、岩の飛び出ているところと読んだ。岩の間から滴っている。その岩の飛び出たところからも滴っている。あまねく滴る岩がクローズアップされ、涼しくて、力強い景色を眼前にすることができる句。(髙橋正子)
6月13日(1句)
★家庭菜園とうきびの花出そろいぬ/多田有花
家庭菜園が一番いきいきとしているのは夏だろう。定番の茄子やトマト、胡瓜を始め、とうきびも植えられる。花が揃って出そろうのもうれしいことだ。「出そろう」喜びが目に見えるようだ。(髙橋正子)
6月12日(1句)
★あじさいの毬をひと枝剪り活ける/桑本栄太郎
「あじさいの毬」と言われれば、大きなふんわりした紫陽花の花を思い起す。ひと枝剪れば花瓶に足りるほどの花。「剪りて活ける」と言う行為もいい。(髙橋正子)
6月11日(1句)
★短夜や開きしままの文庫本/廣田洋一
作者は文庫本を読みながら、いつの間にか眠ったのであろうか。目覚めてみれば、文庫本は開いたまま短い夜は明けていた。このような場面が想像できた。短夜と文庫本の取り合わせが絶妙で、作者の生活を垣間見させてくれる。(髙橋正子)