7月31日(5名)
●小口泰與
あけぼののこぼれ凌霄花潦★★★
日を掬い青田の中に居りにける★★★★
電線に二羽の子つばめ寄り添いぬ★★★
●廣田洋一
かなかなと一声鳴きし森の隅★★★
子供らの先頭に立つ阿波踊り★★★★
ぎんやんま蓮の葉先に着地せり★★★
●谷口博望 (満天星)
向日葵や砂浴びしたる雀どち★★★
向日葵や対岸走る電車の音★★★★(正子添削)
対岸から電車の走る音が聞こえる。対岸は街だ。川を挟んだこちらは夏の日を浴びて向日葵が明るく咲いている。こちらの岸と対岸とが、過去と現在をいり交ぜたような世界と思える。(高橋正子)
みんみんや被爆で曲がる九輪塔★★★
●小川和子
海鳴りの聴こゆ砂丘のメロンかな★★★
夏波涛沖より寄せく海岸線★★★
鳥海を望む砂地やカンナ咲く★★★★
●桑本栄太郎
水匂う土の匂いや夕立風★★★★
ひぐらしの鳴いて故郷呼びにけり★★★
君逝きてすでに十年酔芙蓉★★★
7月30日(5名)
●谷口博望 (満天星)
ジュラ紀へのタイムスリップ夏休み★★★
恐竜の化石に触れる夏休み★★★★
美声なる卒寿の人や百合の花★★★
●小口泰與
朝曇りたどり着きたる金曜日★★★
雨後の庭蛙来ており芝刈機★★★★
丑三つの目高早くも争えり★★★
●廣田洋一
遠雷を聞きつつ読書続けたり★★★
雷光や梅雨空裂きて追い払う★★★
おにやんま低く飛びては水面打つ★★★★
とんぼが、飛んでは、水面をちょんちょんと打っている光景を見ることがある。とんぼは種類によって、いろんな産卵の方法や形態をとるらしく、おにやんまのこの行為がなんのためかよく知らないが、水辺の涼しそうな光景だ。(高橋正子)
●河野啓一
土用丑デイのお昼もウナギ入り★★★
ニイニイ蝉合唱に加わる昼下がり★★★
千里丘陵昔は多き月見草★★★★
●桑本栄太郎
夏朝の嬰児(ややこ)泣きおり哀しげに★★★
ひぐらしや古傷今に問はれても★★★
三伏の夜気の嬉しき寝床かな★★★★
7月29日(6名)
●古田敬二
背泳ぎで飛騨の流れに任せきり★★★★
パナマ帽不似合いと思えど街へ行く★★★
ごきっと採るもろこし実りを確かめて★★★
●小口泰與
夏富士や縄文人の家系なる★★★★
茂林寺の狸の臍や日雷★★★
キューピーも臍を押さえしはたた神★★★
●谷口博望(満天星)
いのち継ぐ旅へ飛翔の蝉の殻★★★
恐竜のタイムスリップ夏休み★★★
句づくりのスローライフや秋隣★★★★
●廣田洋一
燕の子横に並びて餌を待つ★★★
鳴声に人も寄りけり燕の子★★★
紫陽花や色落ちてなほ咲きてをり(原句)
紫陽花や色落ちてなほ咲きつづき★★★★(正子添削)
●桑本栄太郎
空蝉の幹の半ばに数多かな★★★
しがみつき幹に虚ろや蝉の殻★★★★
一つ見てあまた見つけし蝉の羽★★★
●河野啓一
月見草日暮れを待ちてほんのりと★★★
谷合いに灯ともし頃や月見草★★★
夜の空仰げば地には月見草★★★★
夜空を見上げ、そして、ふと足元を見ると月見草が咲いている。月や星の色も月見草も澄んだ黄色だ。大きな空間が感じられる涼やかな句だ。(高橋正子)
7月28日(6名)
●谷口博望 (満天星)
椋の実の色染めながらつくつくし★★★
橋に来て帽子を脱げば南風★★★★
夜を徹し歩く姿や蝉の穴★★★
●小口泰與
青メロン常陸と蝦夷の競いけり★★★
真直ぐな道の記憶や雲の峰★★★★
雲の峰に触発され思い起こされた記憶。真夏の白く乾いた真っすぐな道。こういう道の記憶は、私にもあるが、それが、どこだったか。画のなかだったか。(高橋正子)
雷雲のはや襲来やゴルフ場★★★
●廣田洋一
日日草明るく並ぶ出入口★★★★
芯の色違へて目立つ日日草★★★
向日葵や首折れしたる道の端★★★
●河野啓一
木立ちあり星降るごとき蝉しぐれ★★★★
緑陰を撥ねのけ咲ける向日葵よ★★★
街中に人家を分けて青田かな★★★
●桑本栄太郎
目覚め居て想い出たどる短夜かな★★★
誰が指揮をとつているやら蝉しぐれ★★★
自転車を降りて踏切炎天に★★★★
●川名ますみ
葉の色を羽に載せつつ蝉鳴けり★★★
梅の葉の色して蝉は梅の木に★★★★
青空を震わせつくる蝉の音★★★
7月27日(6名)
●小口泰與
電線はすべて曲線糸とんぼ★★★★
まず犬の白妙産まる牧の夏★★★
風薫る僧都の読経朗朗と★★★
●古田敬二
陽を浴びて葉陰のルビーミニトマト★★★
曝書かなガリ版刷りのセピア色★★★★
曝書をすることも少なくなったが、懐かしい風景だ。曝書しながら、ついつい読み入ってしまうこともしばしば。わら半紙に印刷されたガリ版刷りのものは、すっかりセピア色に変色している。その時代がありありと蘇られたことであろう。(高橋正子)
紙魚走るセピア色したわが青春★★★
●谷口博望(満天星)
榎木の実色づき初めて雲の峰★★★★
鴉飛ぶ陸軍墓地の蝉時雨★★★
雀どち砂浴びしたる夏の夕★★★
●廣田洋一
空蝉や木の葉の裏に雨宿り★★★
空蝉や雨の雫を滴らせ★★★★
向日葵や家の前にて頭下げ★★★
●桑本栄太郎
蝉穴の暗き樹下なり地獄とも★★★
夏草に高く積み上ぐ廃車かな★★★★
竹林の蔦の茂りや昼の闇★★★
●多田有花
熊蝉の声に包まれ目覚めけり★★★
地下鉄も今宵増便天神祭★★★★
浴衣着て祭りに向かう親子連れ★★★
7月26日(5名)
●河野啓一
コンチキチン都大路を鉾が行く★★★
舟渡御の岸離れ行く賑いに★★★★
大阪の天神祭の舟渡御の神事の句。「神霊をのせたに、御鳳輦奉安船がお囃子をする船や供奉船などが従い、天神橋のたもとから出航して造幣局や中之島のある大川を遡り、反転して下る。」ということだ。祭りの賑わいのなか、「岸離れ行く」のがいい。(高橋正子)
住吉祭境内埋めし夜店かな★★★
●小口泰與
八十路なお矍鑠たるや片抜手★★★
一呼吸於いて話すや合歓の花★★★
山積みのキャベツ湖を隠しけり★★★★
●廣田洋一
風鈴の風カーテンも揺らしけり★★★★
風鈴の音大きく聞こゆ一人部屋★★★
夕焼けや吾が行く手黄に染めてをり★★★
●谷口博望(満天星)
涼風の書斎の窓へ辿りけり★★★★
覆面の香水匂ふ女かな★★★
みんみんや沖縄の海民の海★★★
●桑本栄太郎
緑陰に地べた座りや高校生★★★
幼子の昼寝木陰やベビーカー★★★★
鳴き止みて雨降るを知る蝉の声★★★
●7月25日(5名)
●小口泰與
凌霄花の強き日の中草野球★★★★
逸ノ城蝦蟇の如くに歩みける★★★
雲の峰樹の亭亭の在り所★★★
●廣田洋一
背泳ぎの手ひらりひらり出で来たる★★★
顔上げてゆっくり進む平泳ぎ★★★
深々と一礼したるプールかな★★★★
●谷口博望(満天星)
被爆樹へみんな来てゐて遠花火★★★★
同年の禎子の像や蝉の声★★★
ポケモンと鳩を間違ふ夏の果★★★
●河野啓一
むくげ咲く何の花かと尋ねられ★★★★
花むくげどこか儚き風情して★★★
むくげ咲く薄桃色の美花なりき★★★
●桑本栄太郎
武庫川の風の涼しき川辺かな★★★
芦屋なる白き木槿やエントランス★★★
夏潮の運河にゆらぐ入日かな★★★★
夏潮が入り込む運河に入日が揺らぐ。運河は人工の切り拓いた河。工業的でありながら、ノスタルジックな風情が漂う。入日が余計そうさせる。(高橋正子)
7月24日(6名)
●谷口博望(満天星)
みんみんや針で折りたる千羽鶴★★★
被爆樹の陰に屯の夏のむく★★★
遠花火黒田歓喜の二百勝★★★★
●小口泰與
雲の峰矍鑠たるぞ声の主★★★
白日の畷の蚯蚓遠き畦★★★
二重虹二艘のヨット消えにけり★★★★
●河野啓一
遠蛙淀の川原の葦の間に★★★★
雨蛙啼き声途絶え王子池★★★
蛙とびサッカー少年猛練習★★★
●廣田洋一
露草の青く広がる道の端★★★★
みそ萩や川縁青く染めてをり★★★
一人用小玉西瓜の具合良し★★★
●多田有花
新しき装具で蝉時雨の中を★★★
正午かな初蜩の響く森★★★★
蜩は、朝夕に特に甲高い声で鳴くが、曇りの日や気温が低い日、森のような薄くらがりの中では、昼間にも鳴く。森の正午に蜩を聞いた。暑い盛りなのに、蜩が鳴き始め、正午の森の涼しさがうかがえる。(高橋正子)
盛夏なり風のもっとも心地よき★★★
●桑本栄太郎
祇園会の人の数多や後祭り★★★★
外つ人の地べた座りや夏祭り★★★
母親と幼児ペアなりサングラス★★★
7月23日(4名)
●谷口博望 (満天星)
大暑の日オバマの鶴は人だかり★★★
みんみんや禎子の像は同い年★★★
慰霊碑を横切り去りぬ黒揚羽★★★★
●廣田洋一
大鯰蒲焼にする丑の日かな★★★
プランターの葉陰に浮かぶ苺一つ★★★
梅雨明けてランタナ紅く変わりけり★★★★
●桑本栄太郎
黒瓦屋根に燃え咲く百日紅★★★
白壁の築地塀かな青田風★★★★
リュック背負い駅のホームや夏休み★★★
●河野啓一
長くなき命に啼くや蝉しぐれ★★★
蝉時雨自転車のベルも包み込み★★★
夕蝉の合唱すでに音沈む★★★★
「夕蝉は、そろそろ鳴き止もうと音を沈めている。夕蝉のさみしさが日の暮を速めているようだ。心深む句。(高橋正子)
7月22日(5名)
●小口泰與
夏祭り一枚板の長き卓★★★★
鴫焼や母の遺せし鯨尺★★★
目の前に眼は爛爛の蟬の殻★★★
●谷口博望(満天星)
西瓜割孫見ておれば子のしぐさ★★★
珍しく群れて遊べる四十雀★★★★
晩鐘や暮れ泥む日に赤蜻蛉★★★
●桑本栄太郎
早朝の喇叭部活や大暑来る★★★★
からからと風に乾ぶる蝉の殻★★★
崩れたる屋根に網咲く烏瓜★★★
●廣田洋一
ハモニカの全然合わぬ蝉の声★★★★
ハーモニカを誰かが吹いているのだろう。ご自分かもしれないが、蝉の声と合いそうで合わないハーモニカの音。それが、ちょっと寂しくておかしい。ユニークな視点の句。(高橋正子)
雨降りて長袖を出す大暑かな★★★
昼食は天そばに決め大暑なり★★★
●河野啓一
さざ波の川面早くも赤蜻蛉★★★★
川遊びザリガニがいて児ら暑し★★★
冷麺を啜りしばしの涼とせむ★★★
7月21日(6名)
●谷口博望(満天星)
満月に背中割れたる蝉の羽化★★★
暁や生まれし蝉はみどり色★★★★
殻割つて歓喜謳歌の蝉時雨★★★
●廣田洋一
窓際に大きく開く水中花★★★★
過ぎし日々出稼ぎてふ渡り鳥★★★
幼き日家族大移動鳥渡る★★★
●小口泰與
昼顔の駄駄に咲きけり草野球★★★★
甘藍の嬬恋村に入りにけり★★★
頭ごと鮎を頬張る爺と婆★★★
●佃 康水
瀬戸海を月の誘う管弦祭★★★
児が父を急かす夜店の灯りかな★★★
勝ち試合続くカープや夏盛ん★★★★
私の古い記憶では、カープと言えは弱い球団の代名詞のようだったが、広島市民だ育てたカープが今年は快進撃。勝ち試合が続いて、広島市民だけでなく、都会の若い女性までもがカープに声援を送っている。勝ち試合に暑さも吹っ飛ぶ。「夏盛ん」が快い。((高橋正子)
●河野啓一
富士登山せりと息より報せあり★★★
土用丑今年のウナギ浜名湖産★★★
川開き音は遠くで聞くとせむ★★★★
●桑本栄太郎
街なれば舗道に水を糸とんぼ★★★★
黒蟻の走り雨雲集い来る★★★
炎天にボール蹴る子や運動場★★★