7月11日~20日

7月20日(4名)
小口泰與
土用灸何かと妻は良く太る★★★
何事も几帳面なり心太★★★★
夏芝や淡き緑の五家宝よ★★★
廣田洋一
蝉の声競ふがごとく子らの声★★★
団扇もて飛び来る虫をはたきけり★★★
団扇絵の場所を選びて扇ぎけり★★★
多田有花
からからと鳥除け風車青トマト★★★★
トマト畑に鴉などのトマトを食べに来る鳥を寄せ付けないように、風車がとりつけられている。おおよそプラスティックでできているものなのであろう。風に「からから」と回っている。青トマトと、からからなる軽やかな風車が楽しいそうだ。(高橋正子)
入念に羽づくろいの川鵜かな★★★
風の道示す青田となりにけり★★★★

桑本栄太郎

底紅の青空見上げ積りけり★★★
こつ然蝉しぐれ止む静寂かな★★★
ふるさとの遠き想い出蠅入らず★★★★
7月19日(3名)
小口泰與
岸辺へとなだるる波や月見草★★★★
野牡丹や夕暮の山紫紺なる★★★
子より届きし冷酒なと飲みたまえ★★★
廣田洋一
採れたての茗荷の子にてすまし汁★★★
赤きつや食欲誘う茗荷の子★★★★
新じゃがの粒を揃へて売られをり★★★
桑本栄太郎
底紅の青空見上げ積りけり★★★
絡みつく金網哀しやいと花★★★
かなかなの早やも哀しき茜かな★★★★
蝉の鳴き出す順番からいえば、かなかなは一番遅れて鳴き始める。夏も盛りをすぎたころ盛んに鳴くが、早も鳴き出したかなかながいる。夕焼けにカナカナカナと鳴いてはやも「哀しき」思いをかきたてる。(高橋正子)
7月18日(4名)
小口泰與
ステテコや我が机にて畳みける★★★
夢うつつ虹の輪のなか駆け回る★★★
甲斐犬と走る吾子をり雲の峰★★★★
甲斐犬について調べると、大まかには、甲斐の山岳地方で育てられ、中型犬で、猟に向き、気性が強く、一人の主人につく習性があるということだ。雲の峰の下で、元気いっぱい甲斐犬と走る少年の姿が、すがすがしい。イメージがくっきりと浮かぶ。(高橋正子)
廣田洋一
朝の庭草々揺れて涼しけり(原句)
助動詞「けり」は、活用語の連用形に接続します。「涼し」は、シク活用なので、連用形は「涼しかり」で、「涼しかりけり」となります。
朝の庭草々揺れて涼しかり★★★★(正子添削)
アパートの解体進み涼しかり★★★
風涼し雨の切れ間の並木道★★★
多田有花
梅雨明けを近しと思う今朝の晴れ★★★★
親去れば所在なげなり燕の子★★★
翅欠けし揚羽がゆっくり飛んでいる★★★

桑本栄太郎

溝川の流れ涼しき里を行く★★★★
ぼつてりと葉柳風に連なりて★★★
<ジャズ演奏の追憶より>
白服のジャズの夕べや神戸の夜★★★
7月17日(3名)
廣田洋一
背泳ぎや水中眼鏡外したり★★★★
水中眼鏡をして水の中を楽しんでいたが、飽き疲れたのだろうか、背泳ぎの姿勢をとって、水中眼鏡をはずした。顔に太陽を浴びながら、自在に泳ぐ人の姿。(高橋正子)
 
晴天に遊泳禁止の札高し★★★
優しげな波に乗りつつ泳ぎけり★★★★
小口泰與
星涼し金平糖の淡き色★★★★
郭公や牧草ロールトラックへ★★★
奥利根の休耕田や閑古鳥★★★
桑本栄太郎
との雲る空の明るき送り梅雨★★★
宵口の月下美人を愛でにけり★★★
茅舎忌の入日の空に日照雨かな★★★★
川端茅舎の忌日は、7月17日。茅舎は、画家川端龍子の異母弟で、写生の目に徹しているが、のち病を得て、「茅舎浄土」と呼ばれるキリスト教や仏教を背景にした句を生むようになった。その句境を思いやっての句。「入日の日照り雨」は、茅舎浄土の景色。(高橋正子)
7月16日(5名)
小口泰與
水羊羹台車に積まれいざ出荷★★★★
朝なさな糠雨似合う四葩かな★★★
伝統の笹蒲鉾や冷やし酒★★★
古田敬二
浜木綿の次々天差す蕾かな★★★★
夕暮れてカサブランカの良く香る★★★
万緑の向こうに霞む高層群★★★★

廣田洋一

水遊び門前に水溢れさせ★★★★
水遊びの子らが無邪気に門前に水を溢れさせて遊んでいる。通りすがりの人も巻き込みかねない元気さが想像できて、楽しい句だ。(高橋正子)
通りがけ水鉄砲の流れ弾★★★
父親を追ひ回す子の水鉄砲★★★
多田有花
日焼けせる腕運転席より出る★★★★
面白い光景。運転席の窓から、運転手の日焼けした腕だけが突き出ている。日焼けした逞しい腕におおよそ運転手が想像できる。(高橋正子)
梅雨晴や傘カラフルに並びおり★★★
夏の朝車線変更して前へ★★★

桑本栄太郎

木洩れ日の影のまだらや木下闇★★★
青空のヘリコプターや梅雨晴間★★★★
園児らの輪になり愛でる梅雨きのこ★★★
7月15日(4名)
小口泰與
D51の坂道駆くや雲の峰★★★★
習慣の踵落しや網戸にて★★★
訳ありの菓子に集まる日の盛り★★★
廣田洋一
凌霄花アーチをなして咲き進む★★★
凌霄花縋る梅木の花やげり★★★
凌霄花砂場に遊ぶ子に落ちぬ★★★★
砂場近くに咲き上っている凌霄花が、花を落とすところは子供たちが遊ぶ砂場。
子どもたちに散華のように降って、のどかな光景。砂場も凌霄花も明るいのがいい。(高橋正子)
多田有花
楠の緑陰続く下をゆく★★★★
楠の緑陰ひたと続くなり(正子添削例)
「緑陰」に対して感じたことが表現されれば、一層いい句になります。「下をゆく」も気になるところです。
継続は力なりとて百日草★★★
雨あがる藪萱草に夕日さす★★★

桑本栄太郎

起きてすぐ窓を開ければ梅雨寒し★★★
梅雨冷えのコーヒー熱き朝餉かな★★★★
下校児の声に目覚むや梅雨晴間★★★
7月14日(4名)
小口泰與
夏の夜の夢に魘さる焼夷弾★★★
戦争のあと静かなる滴かな★★★★
戦争のあとの澄み深むような静寂が、「滴」に象徴されている。その思いを別の言葉に言い換えようすれば、どこか違ってくる。(高橋正子)
混乱の戦後豊原木下闇★★★
(豊原=サハリンの日本統治時代の呼び名)
廣田洋一
パリ祭の屋台賑やか丸の内★★★★
香り良きワイン片手に巴里祭★★★
フォションの紅茶を入れて巴里祭★★★
多田有花
目覚めれば今朝も雨音梅雨長し★★★
病院の中庭に咲き金糸梅★★★
梅雨晴間テイクアウトの幟揺れ★★★

桑本栄太郎

嵐止み峰の茜や蝉の声★★★
風止みてひと日終わりぬ梅雨の冷え★★★
風落つや夕日に映ゆる木槿咲く(原句)
 ※一句に動詞が多すぎてイメージが散漫になっています。
風落つや夕日に映ゆる花槿★★★★(正子添削)
7月13日(3名)
小口泰與
夕立や通せん坊のグレートデン★★★
赤腹や鬼押し出しへ溶岩の道★★★
いたどりや鎖樋より水荒ぶ★★★★
廣田洋一
松葉牡丹ぱっちり一つ咲きにけり★★★★
松葉牡丹は生命力旺盛ながら、くっりきとした色の可憐な花が咲く。咲きはじめ、目を覚ましたようにぱっちりと咲いた松葉牡丹に、見詰められたかのように驚いた作者。
(高橋正子)
日射し濃き庭を濃く染め松葉牡丹★★★
サウナ出てかぶりつきたるアイスクリーム★★★
桑本栄太郎
長梅雨や会話無くなる老二人★★★
物言えば憂き世の事は黴だらけ★★★
深梅雨の黙のままなる夕餉かな★★★
7月12日(4名)
小口泰與
鷺草や紙飛行機の宙に飛ぶ★★★
山翡翠やテンカラ釣りの糸の先★★★★
風鈴や母の遺せし鯨尺★★★
廣田洋一
すいと舞ひ屋根をすれすれ夏燕★★★
貯水池の日を照り返す夏燕★★★★
夏掛けを掛け直したる夜明けかな★★★
多田有花
救急車二台連なり梅雨の街★★★
バナナ食ぶそぼ降る雨を眺めつつ★★★
アスファルトを裸足で駆ける少年ら★★★★
今頃裸足の少年を見ることも少ない。アスファルトを裸足で駆ける少年に、アフリカの少年が重なって思えた。少年であることのさびしさ、しなやかさが感じられた。(高橋正子)

桑本栄太郎

初蝉のしぐれとならず消え失せり★★★
梅雨冷えや明日の予報も雨模様★★★
烏賊刺しとげその煮付けの夕餉かな★★★★
烏賊釣りのいさり火に故郷を思う作者が前提にある。今日の夕餉は、烏賊の甲の刺身に、げそは煮付けにの烏賊まるごとの夕餉。夕餉の食卓に広がる故郷へのしみじみとした思いが読める。(高橋正子)
7月11日(3名)
小口泰與
一瞬の命ふるわす油蝉★★★
山間の落人部落揚羽蝶★★★
高原や車より振る夏帽子★★★★
高原を走る車から降られる夏帽子。青春小説のひとこまのような場面が夏の高原にはあるのだ。(高橋正子)
廣田洋一
水羊羹冷たき皿に切り分けぬ★★★
災いを乗り越えたるや水羊羹★★★
昼日中静まる家の水羊羹★★★★
桑本栄太郎
雨の止み窓を開ければ風涼し★★★
雨止みて一時明るき梅雨晴間★★★
初蝉の何処に行くや今朝の雨★★★★

コメント

  1. 多田有花
    2020年7月18日 16:53

    お礼
    正子先生
    「楠の緑陰続く下をゆく」を「楠の緑陰ひたと続くなり」に添削いただきありがとうございます。
    姫路城の東側の道路沿いに楠並木が続くところがあります。
    その緑陰の感覚を句にしようと思いました。
    「下をゆく」は安易な感じだと思いながら、他の言葉が出てきませんでした。
    添削いただき、楠並木の大きさ、爽快さを感じられるようになりました。

  2. 高橋正子
    2020年7月21日 14:19

    有花さんへ
    安易だとわかりつつも言葉がでてこないことは、私もよくあります。句会などでしたら、誰かがちょっとヒントとなるようなことを言ってくれたりもしますが、ネットの場合は、ちょっとタイムラグが出ていますので、難しいですね。

    もう、ちょっとかなと思うときは、また同じような場面に出会うときがあるので、その時言葉がひらめいたり、出て来るかもしれません。いいと思った感情は大切にするのがいいと思います。

  3. 廣田洋一
    2020年7月21日 16:29

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    7月18日の「朝の庭草々揺れて涼しけり」を「涼しかり」と添削して頂き有難う御座います。文法を良く理解していませんでした。
    今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。