4月29日(1句)
★高枝の先はわがもの囀れり/多田有花(正子添削)
高枝の先をわがものとし囀る鳥。空に高らかも響く鳥の声が実際聞こえるようだ。「高枝の先」の一点に焦点が置かれているのがこの句に広がりと奥行を持たせている。(髙橋正子)
4月28日(2句)
★帰る日の近き鶫の野に立ちぬ/多田有花
「帰る日の近き」は常套的ではあるが、別れを告げて帰って行く鳥を一抹の寂しさをもって見つめている。それが野に立つ鶉に人間のような感情を持たせている。(髙橋正子)
★雨の日も空にあがりて鳴く雲雀/小口泰與
雲雀の習性とは言え、雨の日も雲雀は空にあがって鳴いている。雨の日が、暗くならず、高い空の薄い光に明るくさえ感じられる。(髙橋正子)
4月27日(3句)
★春たけて山の最もいきいきと/多田有花
早春の芽吹きの季節から、やがて春がたける季節への移り変わりで、この季節の山が「最もいきいき」と感じられるというのだ。(髙橋正子)
★鳥声を抜けて鴬高らかに/小口泰與(正子添削)
いろいろの鳥声のなかには、鴬の声もあるが、それらの鳥声のなかでも鴬の声は特別に高らかに聞こえてくるというのである。鶯の長閑な声はさすがに美声である。(髙橋正子)
★夏の市蟹の泡氷にこぼれけり/土橋みよ
夏の市場で、蟹が入れられている入れ物から泡水がこぼれている。生きた蟹や、こぼれる水、光る泡が夏らしく、涼し気に思える生き生きとした光景がしっかりと詠まれている。(髙橋正子)
4月26日(3句)
★松風に誘われて鳴くまつくぐり/小口泰與
まつくぐりはキクイタダキと呼ばれる小さい鳥で春現れる。松の若葉の間と潜るように動き、ほとんど気配のような鳥。その鳥が「松風に誘われて」鳴くのであるから、その繊細さが知れよう。春の繊細な場面が詠まれている。(髙橋正子)
★遠足の声の登れる高尾山/廣田洋一
高尾山は東京都の山で、広く親しまれている。作者はすでに高いところまで登っている。すると、下の方から遠足の子どもたちが話ながら登ってくる。それは姿ではなく、声として登ってくるのがわかるというもの。下五の「高尾山」が作者らしさとなっている。(髙橋正子)
★靴音を高く響かせ夏の友/土橋みよ(正子添削)
友と待ち合わせていたのだろう。友は靴音を高く響かせて、明るくやってきた。「夏の友」に少しぎこちなさがあるが、それはまた率直であること。さっぱりとして句になっているのがいい。(髙橋正子)
4月25日(1句)
★夕暮れや窓に映りし飛ぶ燕/小口泰與
一日の終わり、静かな心でいる。夕暮れの窓に飛ぶ燕が映る。直接燕を見るのではなく、窓に映った飛ぶ燕を見るのは、普遍化されたものを見ること。その面白さのある句。(髙橋正子)
4月24日(2句)
★利根川の荒波消える帰雁かな/小口泰與
利根川の荒波は、雪解けの水が流れ込む季節が終わると消える。その時期は4月半ばから5月上旬であろう。それに合わせるように雁が帰って行く。帰る雁を見送る心境が「荒波消える」に託されている。(髙橋正子)
★命日を待てず躑躅は咲き満ちて/上島祥子
命日が近づいているが、その日躑躅が満開であればうれしい。この気持ちが「命日を待てず」に表されている。その年の気候により、花は満開の時期を少しずらす。その移ろいの姿を読むことこそが、俳句の真髄であろう。(髙橋正子)
4月23日(1句)
★いっときの空の蒼さや燕舞う/小口泰與
天気の変わりやすいころ。いっとき晴れた空を見つけて燕は飛び出し、自由に空を舞った。「いっときの空の蒼さ」と「燕の舞う自由」の交差が美しいです。(髙橋正子)
4月22日(2句)
★花筏はや流れ来る瀬の中を/多田有花
桜が満開となったと思えば、はや花筏となり連なって瀬の中を流れる。花は移ろいながらも、違う姿の美しさを見せてその微妙な変化に普遍性がある。(髙橋正子)
★櫻散り在所静かになりにけり/小口泰與
華やかに咲いていた櫻に、在所は華やかだった。櫻が散れば、在所も花の散るに従って、静かなたたずまいになった。大きな自然に抱かれた在所が揺るがぬものとして感じられる。(髙橋正子)
4月21日(1句)
<朝来市生野町・旧浅田邸>
★枝垂桜瀬音に近く咲きにけり/多田有花
桜と水の出合に清冽で美しい。さらに繊細にえば、枝垂桜のしなやかさと、その桜が、瀬音という細やかな音が近づいている情景に心を洗われる思いがする。(髙橋正子)
コメント
正子先生
「枝垂桜瀬音に近く咲きにけり」を
4月21日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
旧浅田邸は昭和初期に建てられたもので、
浅田家は江戸時代から生野で代々地役人を務めました。
邸宅は木造二階建て、スクラッチタイル外壁の洋館が付属しており、
庭に立派なシダレザクラが咲いています。
そのすぐ後ろは市川の上流部です。
高橋正子先生
4月22日の投句「櫻散り在所静かになりにけり」と4月23日の投句「いっときの空の蒼さや燕舞う」の句を秀句にお取り上げいただき、正子先生には素晴らしい句評をいただき有難う御座います。今後共もよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
正子先生
「花筏はや流れ来る瀬の中を」を
4月23日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
このあたりは市川の上流部で、
川幅も狭く水の流れは青く澄んでいます。
散り始めた花びらが流れの中で一塊になっていました。