尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音 正子
そよそよと心地よい秋風の中山小屋の湯にゆったりと浸り笹の音が微かに聞こえてくる気持の良い景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
鶏頭へ堅き日矢射し空深し/小口泰與
「鶏頭」に対して「堅き日矢」の表現は、秀逸。鶏頭の咲くころの日のあり具合が実感できる。(高橋正子)
★さわやかに行きし燕の戻り来る 正子
高く澄んだ空を、ついと燕の影がよぎります。南へ行くのかと見ていると、また戻る影。おそらく仲間が集まるのを待ち、少しずつ群れをなしてから、旅立つのでしょう。その影を見届けることの出来る、秋の空気の優しさ、清々しさを想います。 (川名ますみ)
○今日の俳句
受付に竜胆おかれ医師の古稀/川名ますみ
掛かりつけの医師が古希と伺ったのであろう。受付にさわやかに竜胆がさしてあることが、古希を迎えた医師に相応しい。医師の人となりを想像させ、また、医師の髪に混じる白を穏やかに印象付けている。(高橋正子)
○萩
潜り入る萩のトンネル咲き初めし 正子
咲き満ちて眼にちらちらと萩の紅 正子
九月八日、向島百花園に信之先生と行った。百花園の九月の花といえば、まずは萩の花だろう。もちろん、女郎花、藤袴、芒、なでしこ、桔梗、葛棚に葛が咲いているが、園内の至るところに咲く萩が見もの。萩は丸葉萩だろうか。この日に訪ねたときは、咲き始めたばかりのようで、たまに見ごろの萩があった。十日からの萩祭りには、もう少し紅色が増えるだろう。萩のトンネルは、竹を組んで作られて、十メートルばかりある。「花を潜る」はちょっとうれしいことだが、この季節のよい趣向だ。萩が咲くころは、まだ「秋暑し」の気候。萩など見終わって、百花園特製の「生姜シロップ」のかき氷をいただいたが、オツなもの。淡い琥珀色のシロップが白い氷にかかっている。
★赤とんぼいくらでもくる高さなり 正子
澄んだ空気の中を次々に赤とんぼが飛んでくる。多分作者の目の高さ付近かと思われますが、いくらでもやってくる。秋の広さと豊かさを象徴するような晴々とした御句かと思いました。 (河野啓一)
○今日の俳句
海見ゆる牧に草食む秋の馬/河野啓一
海の見える牧場。ゆったりとして草を食む馬との取り合わせに、新鮮味がある。(高橋正子)
○東京スカイツリー
藤袴スカイツリーのいや真直ぐ 正子
一昨日、向島百花園に花の写真を撮りに出掛けたので、スカイツリーを近くで見た。百花園の園内からの写真も撮った。東向島駅から浅草駅までを東武伊勢崎線に乗ったので、すぐ近くを電車が走りすぎた。その晩のラジオでは講談師の神田紅さんがスカイツリーのことを話していた。近くにお住まいがあって、夜の灯りの点いていないスカイツリーは、窓を開けてすぐ近くに見ると恐ろしいとのことであった。
★つまみ菜を洗えば濁る水の色 正子
つまみ菜を植えられたのでしょうか、あるいはお買いになったつまみ菜にも、泥が残っていたのでしょうか。新鮮なつまみ菜を手早く水に洗うと水はほんのりと泥によごれて濁り、根はいよいよ白さを増す。そんな、何気ない日常にも感動を覚え、私たちにその感動を鮮明に伝えてくださる。(小西 宏)
○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)
○向島百花園
昨日、墨田区の向島百花園へ花の写真を撮りに出掛ける。午前9時、信之先生と自宅を出て、帰宅は、午後3時であった。東急東横線の日吉駅から日比谷線に乗って終点の南千住、北千住で乗り換え、東武伊勢崎線を乗り継いで東向島駅で降りる。徒歩10分ほどで向島百花園に着いた。園内は、萩、女郎花、藤袴、葛など秋の七草の盛りであったが、樹が茂って、写真撮影には、光が不足していた。 園内には、庭造りに力を合わせた文人墨客たちの足跡もたくさんあり、芭蕉の句碑を含め、合計29の句碑が随所に立っていた。
江戸の町人文化が花開いた文化・文政期に造られた百花園は、花の咲く草花鑑賞を中心とした「民営の花園」であった。当時の一流文化人達の手で造られ、庶民的で、文人趣味豊かな庭として、小石川後楽園や六義園などの大名庭園とは異なった美しさをもっていた。民営としての百花園の歴史は昭和13年まで続いたが、東京市に寄付された。昭和53年10月に文化財保護法により国の名勝及び史跡の指定を受けた。