6月25日(月)

★風鈴に木々のみどりの集まりぬ  正子
軒下に吊るした風鈴が風を受けて鳴ると、あたかも木々のみどりの中にいるような心地よい涼しさを感じられたのでしょう。先生ならではの感性と思わせていただきました。 (黒谷光子)

○今日の俳句
朝日射す御堂へ今日は豆御飯/黒谷光子
毎朝の仏飯に、今日は季節の香りいっぱいの豆御飯をお供えした。御堂には、すがすがしい朝日が差して、まことに気持のよいことである。(高橋正子)

 ○睡蓮

[睡蓮/フラワーセンター大船植物園]

★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮の余白の水の曇りかな/宮津昭彦
★睡蓮とわが傘を打つ雨の音/宮津昭彦
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦
★睡蓮の池とも別れ柩行く/村越化石
★睡蓮の池より流れ来し一花/高田正子

 睡蓮といえば、印象派の画家モネーの画だ。高知にはモネーの睡蓮の画を模した睡蓮池があるそうだ。睡蓮は葉が平らに水面に浮かび、花も水に浮かしたように咲く。バレリーナのシュシュのような花である。小さい頃は、田舎では睡蓮を見ることはなかった。蓮はよく見た。画や写真で見る睡蓮の花を実際に見たときは、思ったより小さいと感じた。昨日6月24日に大船植物園では、睡蓮がちょうど見ごろだった。手入れがよいのか、浮葉も花もいきいきとしている。水の管理もよいようだ。黄色、白、薄桃色が主に咲き、中に薄紫のものがあった。別の睡蓮池ではピンクの睡蓮が咲き、よく調べなかったが、これが熱帯睡蓮ではないかと思った。後で調べることに。
睡蓮では昨年9月に訪ねたロンドンのキューガーデンのことを思い出す。キュウーガーデンの温室に入ると、ちょうど睡蓮の見ごろであった。様々な睡蓮を楽しんだ。睡蓮に交じってほんの少し蓮があってこれに「これは睡蓮(ウォーターリリー)ではありません。蓮(ロータス)で、間違えないようにしてください。」と注意書きがあった。
一昨年8月末尾瀬にいったが、ここには、睡蓮ではなく、睡蓮の何分の一かの未草がさいている。ちょうど、未の刻に咲く。これも写真で見る限りでは睡蓮と間違えそうだ。
   四季の森公園
 ★睡蓮を揺らす水音とぎれずに/高橋正子
   大船植物園
 ★睡蓮のひとつの花は茎を引き/高橋正子

スイレン属(スイレンぞく、学名:Nymphaea)は、スイレン科の属の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。園芸ルートで一般的な物は温帯産、アクアリウムルートで一般的なものは熱帯産である。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。熱帯スイレンと呼ばれるものは、原産地はエジプトとされ、熱帯から亜熱帯にかけて約40種が分布し、交配によって多数の園芸種が存在する。よく似たハス(蓮:以前はスイレン科とされた)と混同されるが、現在は別のハス科とされ、全く系統が異なることが明らかになってきた。ハスは水面から高く花柄が伸び、葉に撥水性がある。

◇生活する花たち

「すかし百合①・すかし百合②・ルピナスとすかし百合」
(フラワーセンター大船植物園)

6月24日(日)

★紫陽花を剪りて雨の匂いせり  正子
紫陽花の大の仲良しは降りしきる梅雨の雨です。瑞々しい花を剪れば、雨滴の匂いがするとは大変共感致します。そして紫陽花の匂い立つほどの美しさまで見えて来ます。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
ひまわりの早も大輪夕晴るる/桑本栄太郎
夕方の晴れは、実に気持ちのよいもの。ひまわりも早も大輪の花を咲かせて、快活な姿。それに魅かれる。(高橋正子)

○フラワーセンター大船植物園

[すかし百合/フラワーセンター大船植物園]

大船フラワーセンターに信之先生と出かけた。曇り空で、時折小雨がぱらつき、蒸し暑い園内だった。
ばら園では、小ぶりですが薔薇がまだまだ咲いている。黄色、杏子色、赤、ピンクなど。はまなすは実をつけていた。
はなしょうぶ園では、菖蒲が咲いて、それぞれに風雅な名前ついている。盛りをやや過ぎたか。
芝生広場ですかし百合が咲き誇っている。ほとんどが花開いて、2、3日すると盛りを過ぎるか。群生して植えてあるので、見事。色は白、黄色、ピンク、オレンジが主で、濃い赤、白に赤紫色が入ったもの、小さなオレンジの花のものなど、珍しいものがあった。
はなしょうぶ園沿いでは、紫陽花がさいているが、ここで珍しいのは「うず紫陽花」と呼ばれる種類。額紫陽花もきれいにさいている。
すいれん池で睡蓮が、ちょうど見ごろとなっている。手入れがよいのか、花が生きいきとしている。ピンク、白、黄色がある。熱帯睡蓮と思われる薄紫の睡蓮もさいていた。
展示場前すいれん池傍ではんげしょうが咲いている。カメラマンが多数、写真をとっていた。
その他、ハイビスカス、ヒマラヤヤマボウシ、夾竹桃、布袋あおい、桔梗、ぎぼうし、しもつけが咲いていた。
第一展示場では「花とみどりの写真展」を開催していた。
第二展示場では「ベゴニア展」を開催していた。
 
▽フラワーセンターのレストハウスでは、「植物分類表」を売っていた。3333円でちょっと気になる本だった。

○花柘榴

[花柘榴/横浜日吉本町]

★水色は遠方の色花柘榴/桂信子
★軒下の破れ櫃に散る柘榴かな/高浜虚子
★泥塗つて柘榴の花の取木かな 鬼城
★古宿や青簾のそとの花ざくろ 蛇笏
★格子戸に鈴音ひびき花柘榴 蛇笏
★草の戸の真昼の三昧や花柘榴 茅舎
★朝曇る柘榴の落花掃きにけり 麦南
★柘榴咲く市井にかくれ棲みにけり 淡路女
★花柘榴また黒揚羽放ち居し 汀女
★花柘榴なれば落つとも花一顆 草田男
★世はハタと血を見ずなりぬ花柘榴 草田男
★花柘榴情熱の身を絶えず洗ふ 草田男
★恋ふ難し石榴の花は実の先に 不死男
★花柘榴雨きらきらと地を濡らさず 林火
★とはにあれ柘榴の花もほほゑみも 楸邨

「紅一点」という言葉がある。男性の中にただ一人いる女性の意味だが、これは漢詩から来ている。その紅が柘榴の花である。中国人好のみの色と思う。小さいながら強烈な色だ。花柘榴も秋にはルビーのような実を結ぶ。ガクのようなところはチューリップ型の筒状となって、皮となる気配を見せている。柘榴の花も落ちる。柿の花も落ちる。二つの花を集めて遊んだ。柿の花は蔕を二つ合わせて麦わらを通して水車に、柘榴の花は、チューリップのようなところを集めるだけ。

★花柘榴そこに始まる上家の路地/高橋正子

ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名: Punica granatum)とは、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培されるほか、果実は食用としても利用される。ザクロ科(学名: Punicaceae)は、ザクロ属(学名: Punica)のみからなる[4]。また、ザクロ科の植物は、ザクロとイエメン領ソコトラ島産のソコトラザクロ(Punica protopunica)の2種のみである。葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。

◇生活する花たち「睡蓮・布袋葵・すかし百合」(フラワーセンター大船植物園)

6月23日(土)

★青蔦に夕日あまねき道を帰る  正子
上に向かって生き生きと這い上がっている青蔦に、夕日が残すところなく全てに赤々と照らしています。その光景に帰路出合われ、美しさと溢れる生命力を満喫されたことと思います。(藤田裕子)

○今日の俳句
青梅雨や雨音軽く夜に入る/藤田裕子
青梅雨という言葉が美しい。それと微妙にずれた軽い雨音がして夜に入る。心に浸透するような詩情がある。(高橋正子)

○蛍袋(釣鐘草)

[蛍袋/横浜日吉本町]

★宵月を蛍袋の花で指す/中村草田男
★子を思へば蛍袋が目を掠む/佐野良太

 蛍袋は、釣鐘型の形がかわいい。ちょうど蛍が飛ぶときに咲くので、蛍を入れるには恰好の入れ物。朝霧の中でうつむいて咲いている姿から、何を考えているのだろうかと思うときもある。関西には白い蛍袋が多くて、関東には紫がかったものが多いと聞く。事実、横浜あたりで見たのは紫がかったものばかり。たまには白いのも見てみたい。山路へ踏み込んだところや、山を切り開いて作られた新興住宅地など、思わぬところに咲いている。学名は「カンパニュラ・・」と呼ばれる。「カンパネルラ」と間違えそうになる。こちらは、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる少年の名前だが。子どもの絵本に「十四匹のあさごはん」というのがあって、その絵本には、夏の朝の森が涼しそうに描かれていた。そういう時、蛍袋は主役の花である。

★蛍袋霧濃きときは詩を生むや/高橋正子

 ホタルブクロ(蛍袋、Campanula punctata Lam.)とは、キキョウ科の多年草。初夏に大きな釣り鐘状の花を咲かせる。開けたやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる草本で、全体に毛が生えている。根出葉は長い柄があり、葉身はハート形。匍匐枝を横に出して増殖する。初夏に花茎を延ばす。高さは、最大80cmくらいにまでなり、数個の釣り鐘型の花を穂状につける。花は柄があって、うつむいて咲く。山間部では人里にも出現する野生植物であるが、美しいので山野草として栽培されることも多い。花色には赤紫のものと白とがあり、関東では赤紫が、関西では白が多い。ヤマホタルブクロ(学名、Campanula punctata Lam. var. hondoensis (Kitam.) Ohwi)は、ホタルブクロの変種で、山地に多く生育する。ほとんど外見は変わらないが、萼片の間が盛り上がっている。一方、ホタルブクロは萼片の間に反り返る付属片がある。園芸植物として親しまれているカンパニュラ(つりがねそう)は、同属植物で、主に地中海沿岸地方原産の植物を改良したものである。

◇生活する花たち「花柘榴・夏椿・南天の花」(横浜日吉本町)

6月22日(金)

★ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり  正子
暗闇の中で飛び回る蛍火。その動きは一陣の涼風を呼ぶ心地がして、この上ない夏の風物詩です。 (河野啓一)

○今日の俳句
射干の咲いて空には雲もなし/河野啓一
射干(ひおうぎ)は、葉が檜扇に似て、橙色に斑のあるこじんまりと品のある六弁花を開く。雲もない夏空に、日本的な射干の花の色が印象的である。(高橋正子)

○虎尾草(とらのお、おかとらのお)

[虎尾草(とらのお)/横浜・四季の森公園]

★虎尾草や日の通りみち子が通る/磯貝碧蹄館
★虎尾草を摘めば誰もが撫でにけり/小島健
★虎尾草に水やり一日外に出でず/小熊一人
★虎尾草や雨の畦行く犬のおり/小口泰與

 虎尾草は蕾の状態で見るのがほとんだ。虎の尻尾のようだというのだから、じゃあと、捕まえてみたくなる。その感じは猫の尻尾を捕まえる要領だ。アレンジされたブーケに虎尾草がところどころに使われている。園芸種だろうが、薄桃の芍薬と白い紫陽花、トルコキキョウの間から虎尾草がつき出てアクセントになっていた。自然では、丘虎の尾が、横浜四季の森公園の山肌に群生している箇所がある。私の肩より少し高い所で、日当たりが良く風を孕んでいた。梅雨に入る前のことだ。

★虎尾草をおかしと思えばおかしかり/高橋正子

オカトラノオ(丘虎の尾、学名:Lysimachia clethroides )は、サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。APG植物分類体系では、オカトラノオ属はヤブコウジ科に移されている。高さは、50cmから100cm。葉は茎に互生し、葉柄があり、長楕円形で全縁。花期は6月から7月で、白色の小さな花を茎の先に総状につけ、下方から開花していく。花穂の先端が虎の尾のように垂れ下がる。日本では北海道、本州、四国、九州に、アジアでは朝鮮半島、中国に分布し、山野の日当たりのよい草原に自生する。普通、群生する。

◇生活する花たち「紫陽花・紫陽花と水車・菖蒲」(東京都文京区椿山荘)

●リンク集●



○インターネット俳句センター
グーグルで「俳句」と検索すれば、それぞれのパソコンの設定によって違いがありますが、「インターネット俳句センター」がウィキペディアの次、第2位の位置に来ています。おかげさまです。
http://kakan.info/

○花冠歳時記
http://blog.goo.ne.jp/kakan02b1

○俳句ギャラリー
http://blog.goo.ne.jp/kakan02a

○気がるに句会投句入賞発表
http://blog.goo.ne.jp/kakan02c/

○フェイスブック句会入賞発表
http://blog.goo.ne.jp/kakan106/

○花冠年間最優秀賞
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien105/

▼伝言などがありましたら、下の<コメント欄>にお書き込みください。

6月21日(木)/夏至

★てのひらに書を読む梅雨のすずしさに  正子
梅雨のころは雨で気温が下がり、意外ににすごし易い日もあります。そんな一日、ゆっくりと本を開いてその世界に浸られました。すがすがしい風が吹いてくるような気持ちになる御句です。 (多田有花)

○今日の俳句
紫陽花をたっぷり咲かせ角の家/多田有花
梅雨に入り紫陽花がかがやく季節となった。「たっぷり」は、紫陽花の花がたっぷりであるほかに、たっぷりな雨を想像させる。向こうも、こちらも遮るものがない「角の家」なので、雪崩れるように咲く紫陽花がみずみずしい。(高橋正子)

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「半夏生・紫陽花・釣鐘草」(横浜日吉本町)

6月20日(水)

★時計草ほんの少しの青があり  正子
時計草は時計の形に似た花で、普通の花びらの内側に糸状の花びらが放射選状に広がった姿がとても印象的な花です。種類にもよると思いますが一つの花に先は青、中は白、基部は紫といった色の取り合わせも又美しいです。「ほんの少しの青」にこそ時計草の清々しさを強く感じ取られたことでしょう。 (佃 康水)

○今日の俳句
清らかや飛騨路に出合う朴の花/佃 康水
朴の花は、大ぶりな白い花でよい香りがする。山深い飛騨路に出合えば、「清らかさ」が印象的。(高橋正子)

○繍線菊(しもつけ)

[しもつけ/横浜日吉本町]
   
★しもつけを地に並べけり植木売/松瀬青々
★繍線菊やあの世へ詫びにゆくつもり/古舘曹人
★しもつけの花を小雨にぬれて折る/成瀬政俊
★しもつけに肩ふれらるる家の角/岡田博允
★繍線菊やえんぴつ書きの母の文/山内八千代

しもつけは、近くの公団の植栽にある。白と赤、それに源平と呼ばれる紅白が混じったもの。泡のような小粒の蕾が集まっているのだが、それが弾けて可憐な花となる。花だけでなく、葉も魅力がある。花も葉もおしゃれな感じがする。こでまりや、ゆきやなぎの仲間なので、茎などはよく似ている。部屋に活けてみたい花だ。白がいいか、赤がいいか。どちらも欲しい。この花だけよりも、なにか他のものと合わせれば、もっといい花となる。

★しもつけの紅花備前に活けてみし/高橋正子

シモツケ(学名:Spiraea japonica)は、バラ科シモツケ属の落葉低木。漢名「繍線花」があてられる。別名、キシモツケ(木下野)とも呼ばれる。アジア原産地で、北海道から九州にかけての日本各地、朝鮮および中国の山野に自生する。成木の樹高は1mほどであり、初夏に小花(集合花)が傘状に群がり、淡紅色又は白色の五弁の花を沢山つける。秋には紅葉する。古くから庭木として親しまれてきた。和名は下野国に産したことに由来するという。同じシモツケ属の仲間にはコデマリ、ユキヤナギがある。 シモツケは富士山にも咲いている。寒さに強く、日当たりを好む。シモツケ(バラ科)花言葉は、いつかわかる真実。

◇生活する花たち「立葵・花菖蒲・岡虎の尾」(横浜・四季の森公園)

6月19日(火)

★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子
今年もころころとした青梅が出回る頃となりました。梅酒を漬ける季節です。透きとおった瓶にきれいに洗って、水分を拭きとった青梅と氷砂糖を交互に入れ、焼酎を注げば、あとは時々瓶を揺りうごかし、出来上がりを待つばかり。梅の青さと氷砂糖の白が、透明な瓶によくうつり涼しげです。 (小川和子)

○今日の俳句
青葉冷え鉱泉の湯気湧きのぼる/小川和子
青葉の中に勢いのある鉱泉の湯気が立ち上って、自然の力の大きさを感じる。「青葉冷え」なので、身体にそれが伝わる。(高橋正子)

○柏葉紫陽花

[柏葉あじさい/横浜日吉本町・金蔵寺]

★紫陽花や藪を小庭の別座敷/松尾芭蕉
★紫陽花の末一色となりにけり/小林一茶
★紫陽花の花に日を経る湯治かな/高浜虚子
★紫陽花や水辺の夕餉早きかな/水原秋櫻子
★紫陽花や白よりいでし浅みどり/渡辺水巴
★紫陽花の醸せる暗さよりの雨/桂信子
★大輪の紫陽花に葉の大きさよ/稲畑汀子
★里山の結界なせる濃紫陽花/宮津昭彦
★あじさゐや生き残るもの喪に服し/鈴木真砂女 ★誓子旧居紺あぢさゐに迎へられ/品川鈴子
★紫陽花の花あるうちを刈られけり/島谷征良
★あぢさゐに触れて鋏のくもりけり/高田正子

 紫陽花は梅雨の花として、ずいぶんなじまれている。七変化とも呼ばれて、薄緑の蕾の時から色が変わりつつ、咲き終わるまで、一か月もかかるのではと思うほどである。子どもの頃は紫陽花と言えば、毬のような紫陽花しか見たことはなかった。紫陽花の葉に蝸牛が載っていることもよくあった。絵本やイラストなどにも、紫陽花に蝸牛を添えてある。砥部の家の庭に毬のような紫陽花と、臥風先生のお宅から来た額紫陽花を植えていた。花を切るときは、独特の青臭い匂いがして、たくましい花だと思うが、水揚げが難しい。切り口にミョウバンをこすりつけることもある。
 柏葉紫陽花を初めて目にしたのは、松山市の衣山の自宅近くにある総合公園であった。初めは、なんという花だろうと思っていたぐらいだ。毬のような紫陽花なら和風の雰囲気だが、柏葉紫陽花は、オフホワイトの色が洋風なイメージである。紫陽花は日本原産の額紫陽花をもとに改良されたようだが、ごく最近は、いろいろな園芸種の紫陽花を見かける。私には、一目では紫陽花の細かい名称はわからない。日吉本町には、柏葉紫陽花が多くの住宅に植えられている。洒落た風で、都市住宅に似合うのだろう。飽きるほど見る。柏葉紫陽花は、北米原産と聞くと、なるほどと頷ける。相似形の白い花が2、3段重なって、バッグや服の飾りのようだ。

★都市なれば柏葉紫陽花咲かせたり/高橋正子

 紫陽花(アジサイ、学名: Hydrangea、アジサイ科アジサイ属の植物の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。開花時期は、 6月から7月15日頃。ちょうど梅雨時期と重なる。日本原産。色がついているのは「萼(がく)」で、花はその中の小さな点のような部分。しかしやはり萼が目立つ。紫、ピンク、青、白などいろいろあり。花の色は土が酸性かアルカリ性かによっても。また、花の色は、土によるのではなく遺伝的に決まっている、という説もある。
 最も一般的に植えられている球状のアジサイはセイヨウアジサイ(ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別)であり、日本原産のガクアジサイ (Hydrangea macrophylla) を改良した品種である。エングラーの分類体系では「ユキノシタ科アジサイ属」になっているが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させている。
 アジサイの原種は、ガクアジサイ(Hydrangea macrophylla forma normalis)。栽培種は、アジサイ f. macrophylla、セイヨウアジサイ f. hortensia、ヤマアジサイ(サワアジサイ) H. macrophylla subsp. serrata (Thumb.) Makino、エゾアジサイ subsp. yezoensis (Koidzumi) Kitamura。飾り花をもたないカシワバアジサイ(Hydrangea quercifolia)は、北米原産。
 樹高は1–2メートル。葉は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。6月から7月に紫(赤紫から青紫)の花を咲かせる。一般に花といわれている部分は装飾花で、おしべとめしべが退化しており(中性花)、花びらに見えるものは萼(がく)である。ガクアジサイでは密集した両性花の周囲にいくつかの装飾花がみられるが、セイヨウアジサイではほとんどが装飾花となっている。
 紫陽花は、開花から日を経るに従って、花の色は変化する。最初は含まれる葉緑素のため薄い黄緑色で、徐々に分解されていくとともにアントシアニンや補助色素が生合成され、赤や青に色づいていく。さらに日が経つと有機酸が蓄積されてゆくため、青色の花も赤味を帯びるようになる。これは花の老化によるものであり、土壌の変化とは関係なく起こる。

◇生活する花たち「花菖蒲」(横浜・四季の森公園)

6月18日(月)

★ハム削ぎ切り新玉葱の白を載せ  正子
ハムの色と新玉ねぎの白色が食欲を満たしてくれそうで美味しそうです。 (祝恵子)

○今日の俳句
トマトの芽つんでは青き香を散らす/祝恵子
「散らす」がこの句を生きいきとさせ、実際に、「青き香」が読み手まで届くようだ。トマトの青き香に夏らしい清々しさがある。(高橋正子)

○玫瑰(はまなす)

[玫瑰/横浜・港の見える丘公園]

★玫瑰の丘を後にし旅つづく/高浜虚子
★玫瑰や今も沖には未来あり/中村草田男
★搾乳婦来て玫瑰にひざまづく/堀口星眠
★はまなすや裏口に立つ見知らぬ子/中村苑子
★はまなすや人の泳がぬ北の海/橘 昌則
★はまなすや破船に露西亜文字のこり/原 柯城
★はまなすや親潮と知る海の色/及川 貞

はまなすと言えば、草田男の「玫瑰や今も沖には未来あり」がすぐに思い出される。はまなすは夏の花である。この句が詠まれた場所は、どこであろうか。調べたことはないが、足元に咲く薔薇色のはまなすの花に佇って沖を見ると、世の中が変わってきても、やはり、「未来」があると信じられる。沖の水平線とその空のあたりに未来があると思える。
 その後「知床旅情」にも歌われた。森繁久弥や加藤登記子の歌声が耳に聞こえるが、遠く海を見ながら、遠くを思いつつ歌っている雰囲気だ。横浜の「港のみえる丘公園」内の薔薇園を外れたところに、玫瑰が咲いていた。園芸種であろうが、そこからも港の海が見える。自生の玫瑰を一度見てみたいと思っている。

★はまなすに躓く先に海がある/高橋正子

 ハマナス(浜茄子、浜梨、玫瑰、学名:Rosa rugosa)は、バラ科バラ属の落葉低木。夏に赤い花(まれに白花)を咲かせる。根は染料などに、花はお茶などに、果実はローズヒップとして食用になる。皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印でもある。晩夏の季語。東アジアの温帯から冷帯にかけて分布する。日本では北海道に多く、南は茨城県、島根県まで分布する。主に海岸の砂地に自生する。1-1.5mに成長する低木。5-8月に開花し、8-10月に結実する。現在では浜に自生する野生のものは少なくなり、園芸用に品種改良されたものが育てられている。果実は、親指ほどの大きさで赤く、弱い甘みと酸味がある。芳香は乏しい。ビタミンCが豊富に含まれることから、健康茶などの健康食品として市販される。のど飴など菓子に配合されることも多いが、どういう理由によるものかその場合、緑色の色付けがされることが多い。中国茶には、花のつぼみを乾燥させてお茶として飲む玫瑰茶もある。「ハマナス」の名は、浜(海岸の砂地)に生え、果実がナシに似た形をしていることから「ハマナシ」という名が付けられ、それが訛ったものである。ナス(茄子)に由来するものではない。アイヌ語では果実をマウ(maw)、木の部分をマウニ(mawni)と呼ぶ。バラの一種であり、多くの品種が存在する。北米では観賞用に栽培される他、ニューイングランド地方沿岸に帰化している。イザヨイと呼ばれる園芸品種は八重化(雄蕊、雌蕊ともに花弁化)したものである。ノイバラとの自然交雑種にコハマナスがある。このほかシロバナハマナス、ヤエハマナス、シロバナヤエハマナスなどの品種がある。バラの品種改良に使用された原種の一つで、ハマナスを交配の親に使用した品種群を「ルゴザ系」と謂う。

◇生活する花たち「百合・紫陽花・青ぶどう」(横浜日吉本町)

6月17日(日)

★沙羅の花みずみずしくて落ちている  正子
花びらを散らさず落ちる、白く清らかな美しさの沙羅の花。仏陀ゆかりの花ゆえ、落ちたばかりの、みずみずしい五弁の花の生命を思い、心洗われる思いがいたします。 (藤田洋子)

○今日の俳句
植田はや漣寄せて夕映ゆる/藤田洋子
この植田は、「はや」というから、苗が植えられて間もない植田である。それなのに、漣が寄せて、夕映えて、辺りによい景色を広げている。「漣」「夕映え」に早苗に寄せるやさしい気持ちが読みとれる。(高橋正子)

○梔子(くちなし)

[梔子一重/横浜日吉本町]

★口なしの花さくかたや日にうとき/与謝野蕪村
★薄月夜花くちなしの匂いけり/正岡子規
★口なしの淋しう咲けり水のうへ/松岡青蘿
★山梔子(くちなし)や築地の崩れ咲きかくし/堀麦水
★くちなしの香に夕闇を濃く沈め/武藤あい子
★くちなしの咲き乱れる家にいて/巽三千世

 どこからか梔子の花の匂いがする。どこだろうかと、あたりを探すと、ああここかとすぐ見つかるのだが、その木が意外と小さかったり、大きかったり、花が八重だったり、一重だったりする。沈丁花とはまた違う、金木犀とも違う、よく匂う花である。一枝部屋に挿すと、梅雨じめりの中で疲れるほどよく匂う。
 梔子には八重と一重があるが、子どものころ生家の庭にあったのは一重であった。風車のような白いの花は、日にちが経つと黄色みを帯びてくる。花が終わると、いつか実を付けている。私はこういった花の傍でいつも遊んだ。どの花も実になるのかと思うほど沢山つく。八重の花は、高貴な人の純白のドレスの布のようだと思う。小さい薔薇のコサージュように咲く。

★梔子の匂いてくれば振り返る/高橋正子

 クチナシ(梔子、巵子、支子、学名:Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。果実が漢方薬の原料(山梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。樹高1-3 mほどの低木。葉は対生で、時に三輪生となり、長楕円形、時にやや倒卵形を帯び、長さ5-12 cm、表面に強いつやがある。筒状の托葉をもつ。花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で先は大きく6弁に分かれ、開花当初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花には強い芳香があり、学名の種名「jasminoides」は「ジャスミンのような」という意味がある。10-11月ごろに赤黄色の果実をつける。果実の先端に萼片のなごりが6本、針状についていることが特徴である。また側面にははっきりした稜が突き出る。東アジア(中国、台湾、インドシナ半島等)に広く分布し、日本では本州の静岡県以西、四国、九州、南西諸島の森林に自生する。八潮市、湖西市および橿原市の市の花である。

生活する花たち「夏椿①・夏椿②・赤芽柏」(横浜日吉本町)