■2月月例ネット句会入賞発表■

■2月月例ネット句会入賞発表■
2025年2月10日
【金賞】
47.蜜柑摘み汽笛近づく海を背に/吉田 晃
蜜柑は瀬戸内式気候に恵まれた地域に多く栽培されるが、その蜜柑を摘むときの明るい風景が力強く詠まれている。海岸に沿って電車が汽笛を鳴らし近づいて来るのが、いっそう懐かしさを誘っている。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
24.驚きの余寒や鉄の十字架に/多田有花
余寒というのは、もうこれからは暖かくなると思っているところに、不意にやってくる。そのときわれわれは、その突然さに驚かされるのである。鉄の十字架にまで余寒が至り、この世界は心底冷えているのだ。(髙橋正子)

29.降りながら土に光りて春の雪/藤田洋子
やわらかく、しずかな春の雪が、降りつつ解けてゆく儚さが、凝視の眼で詠まれている。しずかな調べに奥深さが読み取れる。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
11.揚がりたる凧糸を子に渡しけり/廣田洋一
凧上げをする親子の光景であろう。凧はあがるまでが子供には難しい。揚がってから糸をわたされた子の喜びようが目に見える。親子の情愛が温かく詠まれている。(髙橋正子)

13.待春や子犬の駆けるちから増す/弓削和人
春が近づくと、子犬も元気になる。ころころと駆ける四肢に力が増している。「待春」の気持ちがそっくり表されて、楽しくなる句。(髙橋正子)

36.落葉轢く音を体に車椅子/川名ますみ
車椅子に轢かれる落葉の音は、すぐさま車椅子に乗っているものの体に響いてくる。一つ一つ違う落葉の砕ける音、自然の音。自然とのちょっと楽しい一体感。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
24.驚きの余寒や鉄の十字架に/多田有花
このところの厳しい余寒には本当に驚かされます。南国では余り経験しない立春後の寒さです。頑丈な鉄の十字架さえも神様さえも想定外では。「鉄の十字架に」が効いていると思います。 (柳原美知子)

25.寒の水峡の社を鳴らしおり/柳原美知子
谷あいにある小さなお社でしょうか。豊かな水がそこに流れ込みいつもその音が社を包んでいます。社は神を祀っており、水は神自身の姿でもあります。(多田有花)

29.降りながら土に光りて春の雪/藤田洋子
春の雪は積もることなく、地面に触れた瞬間に解けて水となり、太陽の光を反射して光っている、そのような風情のある穏やかな情景が想像されました。 (土橋みよ)

36.落葉轢く音を体に車椅子/川名ますみ
車椅子に乗ることで、いっけん不自由な身に落葉一枚一枚を轢くたびに心身に自然の営みを敏感に感じ取っている景を表している。森羅万象が落葉に凝縮されて自然と一体となることを想像させられた句。車椅子の身だからこそ、健常者では味わえない瞬間だったかもしれない。(弓削和人)

43.大切に小さく咲いて節分草/髙橋句美子
春を告げてくれる節分草の白い可憐な花が咲いているのを見つけられた嬉しさ。余寒の中のその小さな希少な花のけなげさを愛しんでおられる優しさが伝わってきます。 (柳原美知子)

46.しんしんと雪降る闇を白くして/吉田 晃
先日からの寒波は南国の鹿児島や愛媛にも雪を降らせました。その降る雪を室内から眺めておられる情景でしょう。雪に光が当たり闇が白く輝くように見えます。(多田有花)

13.待春や子犬の駆けるちから増す/弓削和人

【髙橋句美子特選/7句】
04.凍雲の晴れて山の端白きかな/桑本栄太郎
雪の後の空模様なのでしょうか。山の端白きに遠目から見る冬の山の様子がうかがえました。 (高橋秀之)

11.揚がりたる凧糸を子に渡しけり/廣田洋一
春先は風も良く吹き、凧揚げには良いものですね?ところが意外に難しく、風に乗るまでがひと苦労です。お孫さんでしょうか?子供さんでしょうか?凧を持って駆け、揚った所で凧糸を子に渡します。(桑本栄太郎)

21.春立ちて青天に白き月浮く/友田 修
立春となり、分厚い雲に覆われていた空も透きとおった青さに明けてゆき、淡く白い月を浮かべている。新たな季節を美しく捉えられ、実感された喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

28.春の雪窓に見つめて形見分け/藤田洋子
春になったのに思い出したように降る雪、形見分けの席に故人の気持ちが舞い戻ってきたように感じます。窓から見える雪景色は白く美しく、懐かしい故人の面影が浮かんでは消えているのではないでしょうか。(友田修)

39.睡蓮を沈めて青き冬の水/髙橋正子
水中に睡蓮を沈め、際立つ冬水の青さ。冬の水の澄んだ透明感、冷たくも凛とした季節感を静かに伝えてくれます。(藤田洋子)
寒さが増すにつれ、磨かれるように青を深める冬の水。その水の底には、睡蓮鉢があります。翌夏に花を咲かせるでしょう、睡蓮の株を静かに沈めて、尚「青き水」です。(川名ますみ)

47.蜜柑摘み汽笛近づく海を背に/吉田 晃
海に面した日当たりの良いみかん畑が懐かしい風景です。(髙橋句美子)

13.待春や子犬の駆けるちから増す/弓削和人

【入選/20句】
02.木を叩く小啄木鳥の嘴や春の杜 (コゲラ)/小口泰與
杜に聞くコゲラのドラミング。木を叩く嘴のせわしない動き、心地よい音の響きに、明るい春の訪れを感じます。(藤田洋子)

03.上州は山風豊か冴え返る/小口泰與
上州はかかあ天下と空っ風、という言葉を耳にしたことがあります。風の国上州の山から吹く風は身を切るような冷たさでしょう。それを「山風豊か」と表現されたのに詩心を感じます。(多田有花)

05.白きものほつほつ頬に春浅し/桑本栄太郎
春になりもう雪はないと思っていたのに、寒の戻りか雪が舞っている。外に出て見上げると頬に優しくあたる雪はやはり春の雪。氷のように固い雪の粒ではなく、「ほつほつ」と頬を撫でる。季節の変わり目の、季節の移ろいの「逡巡」を感じます。(友田修)

06.補助輪のこきこき行くよ春立ちぬ/桑本栄太郎
幼い子が小さな自転車に乗る練習をしている情景です。喜んで懸命にペダルを漕ぎます。まだ自立して走れませんがそれを支える補助輪の音が可愛らしいです。(多田有花)

07.文字を打つ指が悴む朝の駅/高橋秀之
寒中の早朝の冷え込みが想像される駅のベンチ。まだ人気もない時間帯でしょうか。ご自身の息遣いがかんじられるようです。体調にはお気を付け下さい。 (柳原美知子)

10.春暁や星のまたたき強くなり/廣田洋一
春とはいえまだ冷たい薄明かりの夜明け前、ことさら強い星の瞬きに、冬から春への季節感をあきらかに感じさせてくれます。(藤田洋子)

15.冬銀河鳰の湖へと流れけり/弓削和人
 冬は大気が澄み、凍空の星の光が鋭い。その輝く星が琵琶湖へと輝き流れ流れていく素敵な景ですね。(小口泰與)

19.朝日受け今は明るき枯野かな/友田 修
朝日を浴びて輝く枯野、荒涼と広がる野の侘しさにも、やがて迎える芽吹きの季節の明るさを感じ取れます。(藤田洋子)

23.少年ら余寒のなかを駆けゆけり/多田有花
この時期、体育の授業であったり、部活の基礎練習であったりで駆けている様子をよく見かけます。それは、私たちのころも同じでした。元気な子供たちを見ているとこちらまで昔を思い出して元気をもらえそうです。 (高橋秀之)

26.節分や猫驚かす鬼の面/柳原美知子
節分の鬼。最近はかわいい鬼も多いですが、本来は猫も驚くぐらいの鬼こそが「鬼は外」の節分の鬼なのです。 (高橋秀之)

31.寒風や散髪帰りの耳を打つ/西村友宏
散髪でさっぱりした耳に寒風が当たるとより一層の寒さを感じる。冬の日にあるあるの光景ですが、その気持ちがすごく共感です。(高橋秀之)

34.梅のどの蕾も珠となりし朝/川名ますみ
梅の蕾のふくらみを日々楽しまれ、いよいよ蕾が全て色と光を帯び、珠のようにふくらんだ朝の喜び。待春の思いが梅の蕾に美しく表されています。 (柳原美知子)

35.梅咲いて紅色すこし薄らぎぬ /川名ますみ
ぎゅっと堅かった紅梅のつぼみ。その濃い紅色は、花開くにつれて周囲を明るくし、やがて景色に溶け込んでいく。梅の紅も次第に薄らいでいくようだ。ひかりが一枚一枚の花びらを透かしているのだろうか。ぎゅっとした凝縮から明るい広がりを感じます。(友田修)

42.春浅し卒寿の母の祝膳/上島祥子
平均年齢が81才を越えているとは言え、やはり卒寿はお目出度い。祝膳が効いている。 (廣田洋一)

09.打ち寄せる白波高き冬の海/高橋秀之
14.寒椿落ちゆくならば淡海/弓削和人
17.春待ちて慣れしクラ手にK.545を/土橋みよ
19.朝日受け今は明るき枯野かな/友田 修
27.春雪解け真夜の星座のありありと/柳原美知子
33.きらきらと輪切り蜜柑の映える朝/西村友宏
41.河風やマラソンランナー城下駆け/上島祥子

■選者詠/髙橋正子
37.万作やまだこれからの蕾なり
春とは名ばかりで木々の蕾はまだ硬く寂しい風情が伺えますが、それでも蕾が大きくなっていくのを楽しみに待っている心境が早春をよく表していると思いました。(上島祥子)
  
38.かもめ飛ぶ寒き翳りを羽裏に 
荒海の冷たさを表現するのは難しいと思われるが、「寒き翳り」と表現されており、そして「羽裏」とすることで、荒海を飛ぶかもめの姿がはっきり見えてきた。荒れ狂う風に羽裏を見せてバランスを取りながら体制を立て直し浮かんでいる姿である。(吉田晃)
  
39.睡蓮を沈めて青き冬の水   
水中に睡蓮を沈め、際立つ冬水の青さ。冬の水の澄んだ透明感、冷たくも凛とした季節感を静かに伝えてくれます。(藤田洋子)
寒さが増すにつれ、磨かれるように青を深める冬の水。その水の底には、睡蓮鉢があります。翌夏に花を咲かせるでしょう、睡蓮の株を静かに沈めて、尚「青き水」です。(川名ますみ)

■選者詠/髙橋句美子
44.藪椿郵便受けに落ちる赤
あざやかな花弁の藪椿が郵便受けにぽとりと一つ落ちている。厳しく寒い毎日に暖かさを感じる素敵な光景と思いました。(西村友宏)

45.晴れた日にメジロを探して空仰ぐ
晴天の空を眺めるのが私は好きです。雲一つない空でも、淡い雲があっても。透き通る空に引き込まれます。梅の木にやって来たメジロでしょうか?見つけたと思ったらぱっと飛び立ってしまった。急いでその先を目で追うとそこには広い晴天が広がっています。(友田修)

43.大切に小さく咲いて節分草

互選高点句
●最高点句(6点)
39.睡蓮を沈めて青き冬の水/髙橋正子  
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

■2月月例ネット句会清記■

★今月は全員が投句しています。ご参加ありがとうございます。 (髙橋正子)

■2月月例ネット句会清記■
2025年2月9日
48句(16名)

01.心地よき嘴打つ音や森の春
02.木を叩く小啄木鳥の嘴や春の杜 (コゲラ)
03.上州は山風豊か冴え返る
04.凍雲の晴れて山の端白きかな
05.白きものほつほつ頬に春浅し
06.補助輪のこきこき行くよ春立ちぬ
07.文字を打つ指が悴む朝の駅
08.節分や鬼を横目に出勤す
09.打ち寄せる白波高き冬の海
10.春暁や星のまたたき強くなり

11.揚がりたる凧糸を子に渡しけり
12.春寒や大賑わいの中華街
13.待春や子犬の駆けるちから増す
14.寒椿落ちゆくならば淡海
15.冬銀河鳰の湖へと流れけり
16.春の風レターパックで本届く
17.春待ちて慣れしクラ手にK.545を
18.寒空に来たりし友と多々良沼へ
19.朝日受け今は明るき枯野かな
20.節分会袋に入った豆を取り

21.春立ちて青天に白き月浮く
22.風の音高まる余寒の厳しさに
23.少年ら余寒のなかを駆けゆけり
24.驚きの余寒や鉄の十字架に
25.寒の水峡の社を鳴らしおり
26.節分や猫驚かす鬼の面
27.春雪解け真夜の星座のありありと
28.春の雪窓に見つめて形見分け
29.降りながら土に光りて春の雪
30.城濠の梅のふくらみ見て歩く

31.寒風や散髪帰りの耳を打つ
32.突風やコートすり抜け肌を刺す
33.きらきらと輪切り蜜柑の映える朝
34.梅のどの蕾も珠となりし朝
35.梅咲いて紅色すこし薄らぎぬ
36.落葉轢く音を体に車椅子
37.万作やまだこれからの蕾なり   
38.かもめ飛ぶ寒き翳りを羽裏に     
39.睡蓮を沈めて青き冬の水   
40.近況の挨拶其々コート手に

41.河風やマラソンランナー城下駆け
42.春浅し卒寿の母の祝膳
43.大切に小さく咲いて節分草
44.藪椿郵便受けに落ちる赤
45.晴れた日にメジロを探して空仰ぐ
46.しんしんと雪降る闇を白くして
47.蜜柑摘み汽笛近づく海を背に
48.春闇に金星夜漁の舟の灯と


※互選をはじめてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。

■2月月例ネット句会ご案内/2025年■

■2月月例ネット句会ご案内/2025年■
①投句:当季雑詠3句
2月3日(月)午前6時~2月9日(日)午後5時
②投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:2月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:2月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、2月10日(月)正午~
                     2月13日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏

ご挨拶/1月月例ネット句会を終えて(2025年)

ご挨拶
2025年がスタートして早や、月半ばとなりました。1月月例ネット句会にご参加ありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。

1月らしい句が揃って新しい年の始まりに相応しい句会になりました。力強い句、広くのびやかな句、楽しい句、いろいろありました。どれも生活から出た句で、信之先生も喜ばれていると思います。選とコメントも丁寧にしていただいてうれしいことです。
また入賞発表の句にもコメントを書き込んでいただき、ありがとうございました。一人でも多くの方がコメントをお書きくださることで、句会もよりにぎやかに、楽しくなるのではと思います。

インフルエンザが猛威をふるっているようですが、十分に留意して寒さを乗り切りましょう。これで1月月例ネット句会を終わります。
髙橋正子
2025年1月15日

■1月月例ネット句会/入賞発表/2025年

■1月月例ネット句会入賞発表■
2025年1月13日
【金賞】
09.初日さし湖の昏さを破りけり/弓削和人
この句の湖は和人さんの住む近くの田沢湖と思われる。田沢湖は日本のバイカル湖とも言われ日本一の水深がある。豊かな水量は湖底より湧く水と言われている。田沢湖の周囲にはこの季節輝く雪嶺が望める。夜の湖の昏さはいかばかりか。その昏さを破って力強く初日が差してくる。新年の夜明けである。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
29.初漁の海豊漁の夕焼けに/吉田 晃
初漁の海は豊漁に恵まれ鮮やかな夕焼けに染まっている。すべてが豊かに、あざやかに生き生きと力強い。(髙橋正子)

25.石鎚晴れ田のひろびろと凧揚がる/柳原美知子(正子添削)
もとの句の「凧揚げる」を「凧揚がる」と客観写生の句に添削させてもらった。これにより、景色がすっきりと読者の前に提示される。四国の霊峰を望む田はひろびろとして凧が揚がっている。日本の風物詩をここに見ることができる。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
12.雪だるま万歳のまま夜を迎え/上島祥子
雪だるまの手に棒か、枯枝が差されている。ちょうど短い手で万歳をしている格好だ。子どものようで可愛らしい。夜がきても雪だるまは解けないで夜を迎えたのだ。雪だるまへの優しい眼差し、やさしい心に心温まる。(髙橋正子)

35.水仙の香の傍らにシーツ干す/川名ますみ
感覚が捉えた清潔感のあるすがすがしい句。シーツは庭の水仙が咲いている傍に干されたのだろう。マンションなら、プランターや鉢に水仙が咲いて、それに触れそうにシーツが干されているのかもしれない。理屈のない鋭敏な感覚の捉えたの句のよさがある。(髙橋正子)

14.覗き見てみなが捉えし雪の富士/土橋みよ(正子添削)
(原句:覗き見てみなが捉えし雪富士不意に/土橋みよ)
展望台の望遠鏡を見ていて雪の富士山が入り込んだので、みんなで代わる代わる「富士山だ、富士山だ」と喜んだに違いない。遠くの富士山を捉えたことのあまりあるうれしさが伝わってくる。みよさんは俳句を初められたばかりなので、いろいろ読みこみたい気持ちはわかるが、捉えどころがいいので、切り捨てる勇気をもってもらうために添削した。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
07.配達夫来て去りしずか雪の軒/弓削和人
雪深い地方ならではの情景が詠まれています。雪がたっぷりと積もったなかを配達にまわる郵便夫の姿が尊いです。(多田有花)

09.初日さし湖の昏さを破りけり/弓削和人
湖が初日に映える様を「破りけり」と表現することで、明るく力強い元旦の情景が見えに浮かびました。 (西村友宏)

12.雪だるま万歳のまま夜を迎え/上島祥子
両腕に模して挿した枝、雪だるまが万歳をしているように見えました。寒さが厳しいのでしょう。夜を迎えても雪は解けず、万歳をしたままです。冬の楽しさと寒さを伝える、優しい観察に惹かれました。(川名ますみ)

25.石鎚晴れ田のひろびろと凧揚がる/柳原美知子(正子添削)
(原句:石鎚晴れ田のひろびろろ凧揚げる/柳原美知子)
正月の風物詩である凧揚げの背景となる里山の風景がありありと感じられました。 (土橋みよ)
山の高さと田の広がりを感じ雄大な景観です。凧揚げのの嬉しさが伝わってきました。(髙橋句美子)

29.初漁の海豊漁の夕焼けに/吉田 晃
新年最初の漁に出た船が大漁を得て港に戻ってきました。労働の喜びと収穫の喜び、生き生きと活気ある新年の始まりです。(多田有花)

33.月氷るバス待つ椅子もきんきんと/西村友宏
晴れた夜空に、気温が下がり、バス停の椅子までもが冷却されている様子が目に浮かびました。(土橋みよ)

35.水仙の香の傍らにシーツ干す/川名ますみ

【髙橋句美子特選/7句】
02.大利根の夕日ゆかしき冬の径/小口泰與
慣れ親しんだひろびろとした利根川に差す夕日に包まれてゆく冬の径は、寒さの中にもあたたかく懐かしい思いに満たされ心やすらぎます。 (柳原美知子)

07.配達夫来て去りしずか雪の軒/弓削和人
雪深い地方ならではの情景が詠まれています。雪がたっぷりと積もったなかを配達にまわる郵便夫の姿が尊いです。(多田有花)

12.雪だるま万歳のまま夜を迎え/上島祥子
両腕に模して挿した枝、雪だるまが万歳をしているように見えました。寒さが厳しいのでしょう。夜を迎えても雪は解けず、万歳をしたままです。冬の楽しさと寒さを伝える、優しい観察に惹かれました。(川名ますみ)

13.鐘響き葉間にきらめく冬の空/土橋みよ
お寺の鐘の音に思わず見上げた大樹の葉の間に、冬空のきらめく青さを見つけられた感動が伝わってきます。 (柳原美知子)

24.花苗は生きいき寒の明るさに/髙橋正子
寒晴れの明るい店先で、色とりどりの花苗が水を遣られ光をあびて生き生きしているのを見ると「冬来たりなば春遠からじ」の思いを強くします。 (柳原美知子)

25.石鎚晴れ田のひろびろろ凧揚げる/柳原美知子
山の高さと田の広がりを感じ雄大な景観です。凧揚げのの嬉しさが伝わってきました。(髙橋句美子)

34.白菜に刃が入る音のさっぱりと/川名ますみ
丸々とした白菜にザクっとした音を響かせて白菜に包丁を入れる。刃が入る音のさっぱりとに目の前にある白菜の新鮮さを感じます。(高橋秀之)

【入選/9句】
05.からからと枯葉まろびぬ風の径/桑本栄太郎
(か)の三音が素敵な音律になって快いですね。素敵な御句と思います(小口泰與)

11.雪だるま会話始まる母と子に/上島祥子
雪だるまを母子で作り、日ごろの忙しさから解放されて楽しいおしゃべりのひととき。寒い中の温かい貴重な体験ですね。見守る作者の優しさが伝わってきます。 (柳原美知子)
 
18.北風に響くや子らの遊ぶ声/多田有花
寒に入り強い北風の吹く中戸外は益々寒くても、「子供は風の子」と云います。大きな声が響き、元気に遊び回りって居ります。(桑本栄太郎)

21.初鏡パリの土産の紅をさす/廣田洋一
おしゃれですね。パリという地名の持つ詩情が良く生きています。(多田有花)

27.小雪舞うリハビリ始め息合わす/柳原美知子
お天気、盆暮れ関係無くリハビリは続けなければなりません。大変な日常の中に小雪に季節を思う心の豊かさを感じます。(上島祥子)

28.杵つきが懐かし硬き雑煮餅/吉田 晃
スーパーマーケットで売られている食べやすく加工された均一の品質の餅ではなく、なるべく水がたくさん入らないようにして杵つきで搗いた一つ一つ違う餅は今では貴重です。そのような餅が懐かしいです。(土橋みよ)

36.裸木となり存分にひかり浴ぶ/川名ますみ
覆うものがなくなり寒風に晒されている裸木である が暖かな冬日にも恵まれ、春を待っている。厳しい風と優しい光を受け、冬の厳しさを力強く耐えているのだろう。 (吉田 晃)

10.初雪に遊ぶ童はシャツ一枚/上島祥子
16.日が昇る初雪の山の後ろより/多田有花

■選者詠/髙橋正子
22.寒晴に円すばらしき観覧車
観覧車は家族や友人との思い出の中にあり、巨大建造物で有りながら見れば優しい気持ちになります。それが中句の「円すばらしき」の表現なっているのかと感じました。 (上島祥子)

24.花苗は生きいき寒の明るさに
寒晴れの明るい店先で、色とりどりの花苗が水を遣られ光をあびて生き生きしているのを見ると「冬来たりなば春遠からじ」の思いを強くします。 (柳原美知子)


23.裸木のあびる光は空のもの

■選者詠/髙橋句美子
37.元日の晴れ渡る朝今始まり
さわやかな元日の始まりの中にキリリと身の引き締まる思いが込められていて、すがすがしく感じられました。(土橋みよ)

38.晴れの日に初富士眩しくレストラン/高橋句美子
お正月レストランでお食事をされたのでしょう。その窓から富士山が鮮やかに見えました。(多田有花)

39.青々と七草粥に塩の香り
新鮮な七草を入れて炊いた粥に塩までが香り立つ。七草粥に塩の香を詠んだのが効いている。 (廣田洋一)


互選高点句
●最高点句(6点)
09.初日さし湖の昏さを破りけり/弓削和人
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

■1月月例ネット句会清記/2025年■

■1月月例ネット句会清記■
2025年1月12日
39句(13名)

01.安らかな冬の朝日を浴びにける
02.大利根の夕日ゆかしき冬の径
03.豊かなる利根の流れや山は雪
04.お降の止みて路面の光りけり
05.からからと枯葉まろびぬ風の道
06.宝恵籠のなだれ込み居り大丸へ
07.配達夫来て去りしずか雪の軒
08.山眠る湖底のウグイもこんこんと
09.初日さし湖の昏さを破りけり
10.初雪に遊ぶ童はシャツ一枚

11.雪だるま会話始まる母と子に
12.雪だるま万歳のまま夜を迎え
13.鐘響き葉間にきらめく冬の空
14.覗き見てみなが捉えし雪富士不意に
15.風波に対流潜める冬渡良瀬
16.日が昇る初雪の山の後ろより
17.日脚伸ぶ入日は稜線登り初め
18.北風に響くや子らの遊ぶ声
19.自信作一つも無しに初句会
20.双六や京は遠しと思う旅

21.初鏡パリの土産の紅をさす
22.寒晴に円すばらしき観覧車
23.裸木のあびる光は空のもの
24.花苗は生きいき寒の明るさに
25.石鎚晴れ田のひろびろと凧揚げる
26.さくら色の冬帽贈らる誕生日
27.小雪舞うリハビリ始め息合わす
28.杵つきが懐かし硬き雑煮餅
29.初漁の海豊漁の夕焼けに
30.バラ寿司の甘き酢の香に松が過ぎ

31.買初めは白青ピンクのシャツ三枚
32.学友と芯から和む正月鍋
33.月氷るバス待つ椅子もきんきんと
34.白菜に刃が入る音のさっぱりと
35.水仙の香の傍らにシーツ干す
36.裸木となり存分にひかり浴ぶ
37.元日の晴れ渡る朝今始まり
38.晴れの日に初富士眩しくレストラン
39.青々と七草粥に塩の香り

40.ネクタイの結び目作る成人式

41.新年や子らが集まり靴溢れ
42.盛りだくさん母のお節に舌鼓

※互選をはじめてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。

■1月月例ネット句会ご案内/2025年■

■1月月例ネット句会ご案内/2025年■
①投句:当季雑詠3句
1月6日(月)午前6時~1月12日(日)午後5時
②投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:1月12日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:1月13日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、1月13日(月)正午~
                     1月16日(木)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏

ご挨拶/12月月例ネット句会を終えて

12月月例ネット句会にご参加、ありがとうございました。今年も1年間月例ネット句会を続けることができました。多くの方が休まずにご参加くださるので、心強く思います。ご支援、ご協力をありがとうございます。

5月には信之先生の忌日の芍薬忌句会にも皆様のご参加をいただきました。その時の句は仏前に清書て供えています。皆様から芍薬忌の句を頂き、家族も喜んでおります。

また、恒例になりました年末に「みんなで選ぶ今年の最優秀句」も、急なお願いながら、大勢の方に選んでいただき、選出することができました。昨年とは違う顔ぶれでした。最優秀句の句美子さん、次点の晃さんおめでとうございます。

それに今月は土橋みよさんがご参加くださいました。みよ様のコメントの書き込みによりますと、『手袋の色』(髙橋句美子著)からこの月例ネット句会にたどり着かれたとのこと。ありがとうございます。感情豊かな句を投句され、あたたかい思いになりました。第2日曜日が月例ネット句会になっております。ぜひ、次回のご参加もお待ちしています。

今年も月例ネット句会の賞品をささやかながら、お送りしたいと思っています。年末にはお届けできるかと思います。

それでは良い年末をお過ごしください。来年も月例ネット句会をよろしくお願いいたします。これで12月月例ネット句会を終わります。
2024年12月12日
髙橋正子

■12月月例ネット句会/入賞発表■

■12月月例ネット句会/入賞発表■
2024年12月9日
【金賞】
32.雲晴れて石鎚全き雪嶺に/柳原美知子
「全き雪嶺」に目を瞠る作者の様子が。たちまち思い浮かぶ。朝夕、さまざまな姿を見せる石鎚山は、ことに雪嶺は圧巻だ。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
22.時雨るるを鳥渡りゆく佐田岬/吉田 晃
愛媛県の西に長く伸びる佐多岬。時雨に降られながら、鳥がしずかに渡ってゆく。さびさびとした鳥の渡りが大きく詠まれている。(髙橋正子)

26.冬の鵙いまは静かに止まりおり/多田有花
秋には、鋭い声で鳴いていた鵙も、冬となっては、静かに枝に止まっている。視線の鋭さもいくぶん和らぎ、瞑想めいている。秋、冬と姿を変える鵙だ。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
05.水鳥の飛沫あげつつ又来たり/桑本栄太郎
水鳥が飛沫をあげて着水したと思うと、次の水鳥が又やって来て飛沫をあげる。水鳥も、それを見ている作者も喜々としている。(髙橋正子)

09.空風や天のすみずみ晴渡る/小口泰與
上州の空っ風は、天のすみずみまで塵をはらい、すっきりと晴れ渡らせた。広大な、塵一つない晴れ渡る天への賛歌。(髙橋正子)

12.星空が輝く冬の夜明け前/高橋秀之
星空が最も輝くのは、空気が冷え込んだ夜明け前。多くの人がまだ眠りについているその時こそ、星空はみごとに輝くのだ。それを見届けた作者。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/8句】
05.水鳥の飛沫あげつつ又来たり/桑本栄太郎
次々と着水する鳥の様子が良く見える。又来たりが効いている。(廣田洋一)

12.星空が輝く冬の夜明け前/高橋秀之
冷え切った夜空に星空が最高に輝き、綺麗な空は夜明け前ですね。冬の未明の頃を歩く、作者が想われます。 (桑本栄太郎)

20.干し柿や旅路の果てに故郷(くに)想う/土橋みよ
干し柿が冬日に照り、風に乾いて軒先に揺らいでいる光景は郷愁を誘いますね。旅路の果てに想う故郷の景色がいつまでも変わらぬものであるよう祈りたいですね。 (柳原美知子)

24.蜜柑一つ持てば炬燵の暖かき/吉田 晃
炬燵での冬の団らんにつきものの蜜柑。丸くてひんやりとした蜜柑一個の感触が、賑やかで暖かい家族の団らんを思い出させてもくれます。 (柳原美知子)

26.冬の鵙いまは静かに止まりおり/多田有花
冬の寒さのなか、今はしんとした様子が感じられます。 (髙橋句美子)


29.ストーブの炎に和む夜の読書/西村友宏
 炎だから、ガスストーブか灯油のストーブだろう。炎が小さく揺らめくと手元の影が揺れ、それが疲れと緊張をほぐしてくれる。温かい家庭が感じられる。(吉田 晃)

32.雲晴れて石鎚全き雪嶺に/柳原美知子
冷えた朝、雲が晴れてると見上げる石鎚山が冠雪していました。朝日に輝く雪の峰に冬本番を実感されたことでしょう。(多田有花)

22.時雨るるを鳥渡りゆく佐田岬/吉田 晃

【髙橋句美子特選/7句】
11.冬の陽が海を染めあげ群青に/高橋秀之
日の光が海全体を照らして鮮やかな光景が一面に広がっている。「染めあげ」と言う表現で、よりスケールの大きい情景が浮かびました。 (西村友宏)

26.冬の鵙いまは静かに止まりおり/多田有花
冬の寒さのなか、今はしんとした様子が感じられます。 (髙橋句美子)

32.雲晴れて石鎚全き雪嶺に/柳原美知子
冷えた朝、雲が晴れてると見上げる石鎚山が冠雪していました。朝日に輝く雪の峰に冬本番を実感されたことでしょう。(多田有花)

09.空風や天のすみずみ晴渡る/小口泰與
16.天竜の川あおあおと冬はじめ/髙橋正子
20.干し柿や旅路の果てに故郷(くに)想う/土橋みよ
22.時雨るるを鳥渡りゆく佐田岬/吉田 晃

【入選/10句】
01.いにしえの戦は枯野の城址かな/弓削和人
つわものどもが夢の跡はそこが枯野となっても続きます。遠い昔その城をめぐって戦った侍たちがいた、そこに思いを馳せておられます。(多田有花)

25.枇杷の花咲き初む川沿いの道に/多田有花
枇杷の花が白く開き始め、ほんのりと甘い香りが川沿いに漂う散歩道。新たな季節の始まりが実感されます。 (柳原美知子)

28.毛糸帽深く被りてカフェ巡り/西村友宏
私自身もこの季節毛糸の冬帽子を深くかぶるのですが、これが本当に暖かい。冬のカフェ巡りのひとときを温かい気持ちで暖かく過ごす幸せのひとときです。(髙橋秀之)

30.読みかけの図書を返却十二月/西村友宏
借りた本をいつかいつか読もうとしていると、いつのまにか年末になった。あわただしい年の暮れの景観が目に浮かぶ。(弓削和人)

33.冬麗の新たな一歩吾子新郎/柳原美知子
御子息がご結婚されたのですね。吾子との言葉にこれまで育てられてきた万感の思いを感じます。(多田有花)

04.綿虫や想い出遠くなりいたる/桑本栄太郎
07.見事なる赤城のすそ野熊眠る/小口泰與
14.時々は見知らぬ鳥や冬の川/廣田洋一
23.冬銀河見上げ夜業の門を出で/吉田 晃
31.コック像へ冬薔薇の束名店閉ず/柳原美知子

■選者詠/髙橋正子 
17.京を過ぐ車窓に時雨ふりかかり
ふりかかる時雨に古都ならではの五重塔や冬紅葉がうっすらと浮かび過ぎる車窓。しとりとした旅情を感じます。(柳原美知子)

16.天竜の川あおあおと冬はじめ
先日お墓参りに帰られた旅の車窓から見えた景色でしょう。天竜川は大河です。ゆったりと初冬の風景の中央を流れていきます。(多田有花)

18.冬港止水のごとく潮が照り

■選者詠/髙橋句美子
34.新しきブーツの音は街中に
新しいブーツの足音を聴きながら歩く街は、また新鮮に思えることでしょう。クリスマスの季節の街を颯爽と歩かれる姿が目に浮かびます。 (柳原美知子)

35.冬帽子編まれた糸のやわらかさ
36.冬夕焼け真っ白な壁に夫婦の影

●互選最高点句(4点/同点3句)
05.水鳥の飛沫あげつつ又来たり/桑本栄太郎
09.空風や天のすみずみ晴渡る/小口泰與
16.天竜の川あおあおと冬はじめ

集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

2024年月例ネット句会最優秀句決定

●2024年も12月8日の月例ネット句会をもって1年を締めくくることができました。この1年のご参加、ご協力をありがとうございました。

また、このたびは、花冠の編集の都合で急なお願いをいたしました。それにもかかわらず、選句に10名の方にご参加いただき、今年の最優秀句と次点句を選ぶことができました。ご協力ありがとうございます。集計の結果を発表いたします。

去年2023年とは全く違う顔ぶれになりました。最優秀句の句美子さん、次点句の晃さん、おめでとうございます。ご精進の賜物と思います。ますますのご活躍をお祈りします。 (花冠代表 髙橋正子)  
    
2024年
【最優秀句】
①冬銀河ピアノの音色の軽くなる/髙橋句美子 (6点)

【次点句】
⑥夏雲に海は青さを極めけり/吉田  晃    (4点)

集計:髙橋正子
2024年12月10日