★囀りの抜け来る空の半円球 正子
よく晴れているのでしょう。その青空を見上げておられる。そこから囀りが絶え間なく聞こえてくる。春本番の明るい日差しと
暖かさ、心浮き立つような感覚を覚えます。 (多田有花)
○今日の俳句
汲まれたる桶それぞれの薄氷/多田 有花
木桶に汲まれた水であろう。どの桶にも桶の木肌を透かして薄く氷が張っている。一つの桶でなく、「それぞれ」の桶があってリズミカルな面白さがある。(高橋正子)
○菫(すみれ)

[菫/横浜日吉本町]
★山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
★馬の頬押のけつむや菫草 杉風
★一鍬や折敷にのせしすみれ草 鬼貫
★骨拾ふ人にしたしき菫かな 蕪村
★奥山や人住あればすみれぐさ 暁台
★すみれ蹈で今去馬の蹄かな 几董
★菫程な小さき人に生れたし/夏目漱石
★うすぐもり都のすみれ咲きにけり/室生犀星
★かたまつて薄き光の菫かな/渡辺水巴
★すみれ踏みしなやかに行く牛の足/秋元不死男
★あたらしき鹿のあしあと花すみれ/石田郷子
★カメラ構えて彼は菫を踏んでいる/池田澄子
★十七歳跨いで行けり野の菫/清水径子
★すみれ咲く小さきゆえの濃むらさき/高橋正子
最近、「すみれ色」のすみれを見なくなった。見なくなって久しい。ところが、3月の10日ごろだったか、5丁目の丘に上り、その帰り、丘が終わるところの側溝のコンクリートの隙間からすみれ色のすみれが咲いているのを見つけた。何気なく目を向けて見つけたのだが、何か勘が働いたように思う。すみれと言えば、濃い色のすみれしか知らなかったころ、家に一番近い畑にすみれがたくさん咲いて、父親が困っていた。畑にすみれが増えるとやっかいだということだ。根絶するのが難しいらしい。これは、オキザリスでも同じことを父親が言っていた。これらの花を畑に増やしてはいかんと。野に咲けば、可憐な花であるのに。
きのう、長男の元が昼過ぎ家に寄った。2月19日生まれた長男にこいのぼりを買うのだ張り切って浅草の人形店に見に行ったついでらしい。いいのがないという。五月飾りはプレゼントされるらしい。紙の鯉のぼりがあればいいのだが、全く今は見なくなった。風が吹けば、ごぼっごぼっと空で紙の音を立てるあの鯉のぼり。雨にあわないよう、雨粒が落ちるとすぐに棹から下ろす。夜は取り込んで畳に広げて畳む。ウロコも、目もデザイン的におもしろかった。畳む時、ウロコの柄を手でなぞり、切りがないなと子供ごころに思ったものだ。
急に来た息子には、春キャベツとアスパラガスがあったので、お肉と野菜少しを買って焼肉にした。新物の茹で筍が店に出ていたので、これは煮て食べさせた。焼肉のあとは、壬生菜のお漬物とたけのこと白いご飯。結構気に入ったようだ。33歳になったという。
スミレ(菫)は、スミレ科スミレ属の植物の総称であるが、狭義には、Viola mandshurica という種の和名であるが、類似種や近縁種も多く、一般にはそれらを区別せずにスミレと総称していることが多い。
種名としてのスミレ(Viola mandshurica)は、道ばたで春に花を咲かせる野草である。深い紫(菫色)の花を咲かせる。地下茎は太くて短く、多数の葉を根出状に出す。葉は根際から出て、少し長めの葉柄があって、少しやじり形っぽい先の丸い葉をつける。花は独特の形で、ラッパのような形の花を横向きかやや斜め下向きにつける。5枚の花びらは大きさが同じでなく、下側の1枚が大きいので、花の形は左右対称になる。ラッパの管に当たるのは大きい花弁の奥が隆起したもので距(きょ)という。花茎は根際から出て、やや立ち上がり、てっぺんで下を向いて花のラッパの管の中程に上側から着く。平地に普通で、山間部の道ばたから都会まで、都会ではコンクリートのひび割れ等からも顔を出す。山菜としても利用されている。葉は天ぷらにしたり、茹でておひたしや和え物になり、花の部分は酢の物や吸い物の椀ダネにする。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーやニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
●小口泰與
梅万朶あまたのつぼみふふみおり★★★
たらの芽や瀬音山路を離れざる★★★
春光や落人部落の露天風呂★★★
●河野啓一
名も知らぬ鳥歩きおり春の庭★★★
うららかな春の庭。名を知らぬ鳥が歩いている。なんの鳥だろうと思いつつ動きを眺める。不思議な国にいるような楽しみ。(高橋正子)
つちふるや西の国から客人が★★★
彼岸過ぎ野球いよいよ峠道★★★
●桑本栄太郎
村人の畑に背中や青き踏む★★★
山里の甍かがやき春の昼★★★
春耕のエンジン遠く聞こえけり★★★
●多田有花
五重塔東播磨の春の野に★★★
春の野や新幹線は西へ西へ★★★
ほのぼのと明石海峡春霞★★★
●小西 宏
ジョギングに百合の木芽ぐむお堀端★★★
耐えて咲きし梅の別れや花ふぶき★★★
風やさし灯台躑躅(どうだんつつじ)花咲けば★★★★
●祝恵子
白椿橋に二人の托鉢僧★★★
格子模様庭の砂地の春の院★★★
校庭の大縄跳びよ春日和★★★
●小口泰與
たらの芽や瀬尻に向かい毛鉤打つ★★★★
渓流の濁り初めるや山椒の芽★★★
淡雪を帽子に被く山路かな★★★
●河野啓一
草も木もきらきら光る春の朝★★★
青空に薄塗りされし春の雲★★★
春の江に釣り糸垂れてもの思う★★★
●小西 宏
蒼天をゆく旅客機に花辛夷★★★★
蒼天をゆく旅客機はきらりと銀色に輝いている。地上では、白い辛夷の花が柔らかに咲いている。その色彩的な対比、物質的な対比に詩情がある。(高橋正子)
雲の丘に紅朦朧と梅の苑★★★
いつも来て花にぶらんこメジロの目★★★
●上島祥子
幾重にも花を重ねり枝垂れ梅★★★
母の手に抱かれて赤子の梅見かな★★★
春は曙富士の山際赤々と(始発の新幹線より)★★★
●黒谷光子
麦青む風に応えぬ丈ながら★★★
残りしかはた残されしか鴨数羽★★★
戯れる父と子湖岸の芝青む★★★
●桑本栄太郎
鷹鳩と化して乙訓うす曇り★★★
日の潤み風に音なく霞みけり★★★
●下地鉄
霞はれ水平線のくっきりと★★★
遠海に水脈曳く船や彼岸入り★★★
歳寄るも寄る人のなき彼岸かな★★
※これは川柳です。
●多田有花
朝晴れて空桃色に彼岸入り★★★
春の野を東へ向かう電車ゆく★★★
家々の庭先それぞれ梅の咲く★★★
●川名ますみ
芽の色にさみどり掛かり花咲かむ★★★
さくら咲く前夜つぼみにみどり色★★★
木の家の建つ音高く春天へ★★★★
★つばき落ちる音の一会に朝厨 正子
窓辺に椿の咲く朝の厨房で、椿の花がポトリと落ちる微かな音にふと気付く。この音もすばらしい一期一会と、自然との出会いを大切にされている作者です。(河野啓一)
○今日の俳句
明るくて黄水仙生きる喜びに/河野 啓一
黄水仙は、白い水仙に遅れて早春に咲きだす。その鮮やかな黄色い色が元気をくれて、生きる喜びになっている。素晴らしいことだ。(高橋正子)
○白木蓮・白れん
[朝日の白れん/横浜日吉本町(2013年3月17日)]_[夕日の白れん/横浜日吉本町(2013年3月16日)]
★はくれむの翳をかさねて日に対ぬ 亜浪
★はくれむのひたすら白く夜にありぬ 亜浪
★白木蓮に声を呑んだる雀かな 龍之介
★はくれんの散るべく風にさからへる 汀女
★暁の病室白木蓮の舞出でむとす 波郷
★白木蓮に純白という翳りあり/能村登四郎
白木蓮(はくもくれん、学名:Magnolia denudata またはMagnolia heptapeta)は、モクレン科モクレン属。Magnolia(マグノリア)は、18世紀のフランス、モンペリエの植物学教授「Magnol さん」の名前にちなむ。denudataは、 裸の、露出した、という意味。開花時期は、 3/10 ~ 4/10頃。白い清楚な花。花びらの幅が広く、厚みがある。花は上向きに閉じたような形で咲く。全開しない。これが辛夷と違うところ。開花しているときの風景は、白い小鳥がいっぱい木に止まっているように見える。花びらは太陽の光を受けて南側がふくらむため、花先は北側を指す。「つぼみ」の頃は片方にそり返っていることから、「磁石の木」と呼ばれることもある。
◇生活する花たち「片栗の花・福寿草・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)
伊豆
★わさび田の田毎に春水こぼれ落つ 正子
わさび田のそれぞれを満たし、豊かに勢いづく春の水音が快く聞こえてきます。清らかな水を湛えたわさび田が、これからのわさびの生育に向けて明るく輝き、活力にあふれています。(藤田洋子)
○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)
○辛夷(こぶし)

[辛夷/横浜都筑区緑道ふじやとの道]
★風搏つや辛夷もろとも雜木山/石田波郷
★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の記憶ばかりの花辛夷/千代田葛彦
★烈風の辛夷の白を旗じるし/殿村莵絲子
★夕辛夷ドガの少女は絵に戻る/河村信子
★朝のはじめ辛夷の空をみていたり/酒井弘司
★ライオンの柵の中なる花辛夷/小西鷹王
★花こぶし汽笛はムンクの叫びかな/大木あまり
★風に吹かれててんでんばらばら辛夷咲く/高橋信之
★青空の一画を占め辛夷の白/高橋信之
★花辛夷風のあらしに揉まれつつ/高橋正子
★辛夷の花枝ごと揺れて揺るる空/高橋正子
○辛夷の花が咲き始めた。もう、かなり咲いている。近くでは、高田町の丘の畑に立つ大きな辛夷の木が素晴らしい。その丘をバスが走り、バスの窓からその辛夷の木が眺められる。広く、霞に濁る空に、白い辛夷の花が小説の中の世界のように咲いている。
小説や詩を読めば、「辛夷の花」がよく出てくる。しかし、私が生まれた瀬戸内でも、長く住んだ四国でも辛夷の花を見たことはなかった。あるとすれば、松山で最後に住んだ住まいの近くの総合公園にあったぐらいだ。もともとあったのか、植樹されたのかは知らないが。ところが、横浜に引っ越して、白木蓮を見ることは、ごくごく稀になった。辛夷、辛夷と庭にも丘にも、咲いている。私には、堀辰雄のイメージに重なる花だが、夢に見た辛夷の花を、こうも身近に見られるとは。
コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。
白木蓮とこぶしはこの2、3年(2003年~2005年)、デジカメで写真を撮るようになってからその違いに興味を持つようにになリました。はじめは白木蓮とこぶしの区別さえできなかったのですが、観察するようになってから段々にそれぞれの特徴がわかるようになり、そしてその違いを見つけることが面白くなりました。専門家ではないので、植物学的にはおかしなところがあるやもしれませんが、ご容赦ください。またもしアドヴァイス頂けたら嬉しいです。
個人的な印象を言えば、白木蓮の花は上向きで天に向かって咲き、大きく、上品で優雅で孤高的な感じがします。一方こぶしは横向きに花が咲き、見る人の方に顔を向けてくれているようで、親しみやすく思えます。どちらが好きとか美しいとかいうことは言えないのでは・・・。どちらも冬の終わり(或いは早春)に、まず白木蓮そして次にこぶしが白い花を咲かせて、もうすぐそこに春が来ていることを知らせてくれます。でもその白い花のバックとなる空はまだ冬の真っ青な空で、花の白と空の青がとても美しいコントラストとなって忘れがたいものです。白木蓮とこぶしが咲き終わり、しばらくすると桜が咲きます。その咲く順番がまた絶妙です。桜の花のバックの空はもう春の空そのもので霞がかっていて、真冬の青い空とは違い暖かな印象を与えます。([ゆたかの部屋」より)
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

●小口泰與
うぐいすの音色つむぐや偕楽園★★★
露天湯の春光ゆるる大あくび★★
春暖炉竹百幹のうねりかな★★★
●多田有花
春耕の音高らかに野に響く★★★★
春耕は、鍬を振るう耕しもあるが、この句は、耕運機。野に高らかにエンジンの音を響かせ、田を耕してゆく。耕運機にも生き生きとした働きがある。(高橋正子)
心地よき疲れの後の朝寝かな★★★
夕暮れの光に染まり梅林★★★
●河野啓一
土匂う花苗植えてふんわりと★★★
お手前のみどりの香たち春の午後★★★
桜便り東と西より来るらし★★★
●桑本栄太郎
春愁や夢の中まで仕事せる★★★
妻留守のラーメン啜る春の風邪★★★
春一日ラジオ聴きつつ眠りけり★★★
●小川和子
枝先まで小花連ねて雪やなぎ★★★
丘陵へ日は麗かに影を差す★★★
丘陵の四方へ春の香かすかなり★★
●小西 宏
雨吸って黒き球場芝萌える★★★
池の泥掻いて昼餉の雪柳★★★
夕暮れの逆光淡し梅の苑★★★
●川名ますみ
初ざくら写してポケットにしまう★★★★
「しまう」がいい。写し撮った初ざくらをうれしく、また大切に思う気持ちが一読伝わってくる。瀟洒な句だ。(高橋正子)
ケイタイに一輪だけの初ざくら★★★
歩き出す撮ったさくらをポケットに★★★
★花丈の揃い真白なシクラメン 正子
純白のシクラメンが咲きそろいました。鉢の中はみな丈がそろっています。丹精に育てられた花なのでしょう。(祝恵子)
○今日の俳句
初摘みの土筆を持ちて病室へ/祝恵子
入院していれば、季節のもの、戸外のものがうれしい。初摘みの土筆に春が来たことが共に喜べることであろう。(高橋正子)
○山茱萸(さんしゅゆ)

[山茱萸/横浜・四季の森公園]
★山茱萸の黄や街古く人親し/大野林火
★さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず/長谷川素逝
★山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ/水原秋桜子
★山茱萸やまばたくたびに花ふえて/森澄雄
★池の辺に山茱萸の色きらめけり/信幸
★ねんねこの児にさんしゅゆの花を見す/高橋正子
○「庭のさんしゅゆの木に・・」という民謡があるが、山茱萸という言葉を知ったのは、この歌詞によってである。一体どんな木なのか、それに花がつくのか、皆目知らないままでいた。それが、早春肌寒い風のなかに、鮮烈な黄色い花を咲かせるのを知ったのは、庭師さんが我が家の庭隅に山茱萸を植えてくれてから。花展では、大きな枝を惜しげなく切った大作の花を見ることがある。やはり、外の肌寒い空気に置いてみるのが一番いい。子どもが小さいときには、ねんねこでおんぶしていた。早春は、光があふれてはいるが、風が寒い。ねんねこの子は、いろんなものを見たがって、あちこちおんぶして歩いた。さんしゅゆの花の黄色は子どもの目にも、鮮烈だったようだ。ねんねこでおんぶして歩いたのは、造成中の団地とそのあたり。一山を削り、雛段状の造成地を造る。毎日、図鑑に載っているような珍しい車が作業した。鶯が鳴くのを聞きながら、ねんねこの子は、それを飽きることなく、2時間はゆうに見ていた。私は子をおんぶして、2時間突っ立っていたわけなのだが。山茱萸の花が咲く季節になると、そのことを思い出す。
山茱萸(サンシュユ、学名:Cornus officinalis Sieb. et Zucc.)は、ミズキ目ミズキ科の落葉小高木。ハルコガネバナ、アキサンゴ、ヤマグミとも呼ばれる。季語は春。中国及び朝鮮半島の原産地に分布する。江戸時代享保年間に朝鮮経由で漢種の種子が日本に持ち込まれ、薬用植物として栽培されるようになった。日本では観賞用として庭木などにも利用されている。日当たりの良い肥沃地などに生育する。高さ3-15 mになる落葉小高木。樹皮は薄茶色で、葉は互生し長さ4-10 cmほどの楕円形で両面に毛がある。3月から5月にかけ、若葉に先立って花弁が4枚ある鮮黄色の小花を木一面に集めてつける。花弁は4個で反り返り、雄しべは4個。夏には葉がイラガやカナブンの食害を受ける。晩秋に付ける紅色楕円形の実は渋くて生食には向かない。内部にある種子を取り除き乾燥させた果肉(正確には偽果)は生薬に利用され、山茱萸(やまぐみ)という生薬として日本薬局方に収録されており、強精薬、止血、解熱作用がある。果肉は長さ1.4 cm程の楕円形。牛車腎気丸、八味地黄丸等の漢方方剤にも使われる。山茱萸の音読みが、和名の由来である。早春、葉がつく前に木一面に黄色の花をつけることから、「ハルコガネバナ」とも呼ばれる。秋のグミのような赤い実を珊瑚に例えて、「アキサンゴ」とも呼ばれる。
○句美子の句集『手袋の色』の表紙の見本ができた。句美子の俳句のイメージをよく捉えたデザインのアイディアに感心した。大いに気に入って家族3人で喜んだ。
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

●小口泰與
風塵や冷気ともない凍返る★★★
電線も阿修羅の如し凍返る★★★
公園のぶらんこ消えし煙霧かな★★★
●下地鉄
梔子の闇に香りく白さかな★★★
うららかや宙に影曳きフリッスパー
※フリッスパー?フリッパーのことか?
リハビリの笑顔に和む予感かな★★★
●小川和子
剪定の切り口淡きいのち充つ★★★
枯れし葉をまとい紫陽花芽吹きけり★★★
地の塩と響きくるかな受難節★★
●黒谷光子
涅槃会の供物の霰分かち合う★★★
法要のあと涅槃図の仔細見る★★★
涅槃会を戻りて畑の人となり★★★
●藤田裕子
木々の葉の春陽きらめく野道行く★★★★
木々の葉にきらめく春陽を見ながら、野道を行けば、楽しさも倍加される。うららかな春の日のびやかな気分を分けてもらった。(高橋正子)
幾重にも春山うっすら横たわる★★★
塀の上雀小走り庭うらら★★★
●小西 宏
木蓮の白透きとおる朝の気に★★★
山行けば緑の帳(とばり)花木五倍子(きぶし)★★★
空青く枝かがやいて初桜★★★
●多田有花
彼岸前続く寒さに驚きぬ★★★
ひとりずつベンチに座り梅を見る★★★
梅が香を一眼レフに写し撮る★★
●桑本栄太郎
U・F・Oのようにさみどり土佐みずき★★★
しつとりと枝の赤みや木の芽吹く★★★
恐ろしき風の音聞く春の塵★★★
★真っすぐな日の差すところ蕗のとう 正子
日差しを殆ど遮られない,真っ直ぐな日当たりの良い野に瑞々しくまた、青々とした顔を出していたのでしょうか。蕗のとうは確かに日当たりの良い場所を好みますが、その日差しの当っている蕗のとうを見られ、いよいよ春めいて来た野を実感された喜びが感じられます。 (佃 康水)
○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)
○オキザリス(カタバミ科カタバミ属)

[オキザリス/横浜日吉本町(2013年3月10日)]_[かたばみ/横浜日吉本町(2011年5月13日)]
★オキザリス雨の茶房に人在らず/中谷朔風
★オキザリス野生育ちの強きこと/豊岡重翁
★石垣の裾に朝日のオキザリス/高橋正子
★雨降りのオキザリスなりみな蕾/高橋正子
★掘り起こされ芋きらめかすオギザリス/高橋正子
オキザリス(学名:Oxalis corymbosa(紫カタバミ)、Oxalis articulata(芋カタバミ))は、カタバミ科カタバミ属。世界中に800種類以上が分布する植物です。日本にもクローバーとよく間違われるカタバミ〔O.corniculata〕をはじめ、5種ほどが自生しています。花を咲かせて枯れてしまう一年草と、毎年花を咲かせる多年草があります。 球根を作るものや、低木になる種も知られています。世界中の色々な地域に分布しているだけに、地域によって様々な形態や性質をとり、開花期、草姿、花色、大きさなどは様々です。オキザリスだけで一年を途切れさせずに季節ごとに花を楽しむことができそうな気がします。花は筒状で、先端が数枚の花びらに分かれています。花は温度や光に敏感で、つぼみは日が射しているときは開きますが、天気の悪い日や夜は閉じています。また、日が当たっても温度の低いときは開きません。オキザリスの名前はギリシア語で「酸性」を意味するオクシス(oxys)に由来し、葉や茎にシュウ酸を含み酸っぱいところにちなみます。カタバミの葉っぱで10円玉をこすると黒ずみがとれてぴかぴかになるのは、このシュウ酸のせいです。園芸では地中に球根を作る種が主に栽培されており、球根植物として扱われることが多いです。特に南アフリカ原産種が多いです。栽培上は「春植え」と「夏・秋植え」に分けることもあります。
よく見かけるのは「紫カタバミ」と「芋カタバミ」だが、両者区別しにくい。両者ともピンク色の花びらで、紫カタバミは、花びらの中央がうすいピンク、芋カタバミは、花びらの中央が濃いピンク。花言葉は「喜び、母親の優しさ」。似ている花は、現の証拠、酢漿草(かたばみ)。似ている葉は、白詰草(クローバー)。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

●河野啓一
咲き初めて馬酔木は白き風となり★★★★
ぐんぐんと芽生え伸ばして春の雨★★★
介護士の笑顔や今朝の春セーター★★★
●小口泰與
花辛夷小雨に昏るる小諸かな★★★
榛名湖へあわあわ降りし春時雨★★★
雛菊や溢るる歓声水族館★★★
●佃 康水
春愁や重機の壊す木の駅舎★★★
小さき手で野の花手向く雛の舟★★★
つくし採り野に生う如く玄関へ★★★★
つくしが出たうれしさに、玄関にも、野にあるように土筆を飾る。季節のものは、生活を楽しくさせてくれる。(高橋正子)
●多田有花
<大相撲三月場所観戦二句>
春荒れや館内熱気の四つ相撲★★★
浪花場所桟敷に並ぶ春衣★★★
春北風にきらきら光る竹林★★★
●桑本栄太郎
反れ玉を追いかけ求め青き踏む★★★
梅が香や木々に遅速のありて尚★★★
つぶつぶの咲き初むつぶや雪やなぎ★★★
●小西 宏
菜の花の低く咲いてる保育園★★★
囀りの光と風に青いぶらんこ★★★★
囀りが降り注ぐぶらんこが、「青いぶらんこ」であって、洒落ていて、メルヘンのようだ。(高橋正子)
濃き空に蕾刺したる紫木蓮★★★