5月27日(日)

★浜名湖の水の五月を新幹線  正子

○今日の俳句
晴れて今日裸足の季節始まりぬ/多田有花
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「山紫陽花・あさざ・がまずみ」(東京白金台・自然教育園)

5月24日(木)

★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに  正子
卯の花と言えば昔歌った童謡「夏は来ぬ」を思い出します。真っ白い花は清々しく夏の訪れを感じさせますが、またこの頃には田植えの時期と同時に梅雨の時期でも有ります。「卯の花の盛りや」に対し梅雨よりももっと強い「雷雨呼びそうに」と詠われ、真っ盛りの卯の花がより印象深く思われます。(佃 康水)

○今日の俳句
青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)

○蛍袋

[蛍袋/横浜日吉本町]_[蛍袋/横浜・四季の森公園]

★宵月を蛍袋の花で指す/中村草田男
★子を思へば蛍袋が目を掠む/佐野良太

 蛍袋は、釣鐘型の形がかわいい。ちょうど蛍が飛ぶときに咲くので、蛍を入れるには恰好の入れ物。朝霧の中でうつむいて咲いている姿から、何を考えているのだろうかと思うときもある。関西には白い蛍袋が多くて、関東には紫がかったものが多いと聞く。事実、横浜あたりで見たのは紫がかったものばかり。たまには白いのも見てみたい。山路へ踏み込んだところや、山を切り開いて作られた新興住宅地など、思わぬところに咲いている。学名は「カンパニュラ・・」と呼ばれる。「カンパネルラ」と間違えそうになる。こちらは、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる少年の名前だが。子どもの絵本に「十四匹のあさごはん」というのがあって、その絵本には、夏の朝の森が涼しそうに描かれていた。そういう時、蛍袋は主役の花である。

★蛍袋霧濃きときは詩を生むや/高橋正子

 ホタルブクロ(蛍袋、Campanula punctata Lam.)とは、キキョウ科の多年草。初夏に大きな釣り鐘状の花を咲かせる。開けたやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる草本で、全体に毛が生えている。根出葉は長い柄があり、葉身はハート形。匍匐枝を横に出して増殖する。初夏に花茎を延ばす。高さは、最大80cmくらいにまでなり、数個の釣り鐘型の花を穂状につける。花は柄があって、うつむいて咲く。山間部では人里にも出現する野生植物であるが、美しいので山野草として栽培されることも多い。花色には赤紫のものと白とがあり、関東では赤紫が、関西では白が多い。ヤマホタルブクロ(学名、Campanula punctata Lam. var. hondoensis (Kitam.) Ohwi)は、ホタルブクロの変種で、山地に多く生育する。ほとんど外見は変わらないが、萼片の間が盛り上がっている。一方、ホタルブクロは萼片の間に反り返る付属片がある。園芸植物として親しまれているカンパニュラ(つりがねそう)は、同属植物で、主に地中海沿岸地方原産の植物を改良したものである。

◇生活する花たち「未央柳(びようやなぎ)・釣鐘草・卯の花」(横浜日吉本町)

5月23日(水)

★燕子花を抱え一束の湿り  正子
燕子花は湿地に群生します。そのの花束を抱えて、感じられる花の湿り。燕子花らしさが御句に漂っています。(多田有花)

○今日の俳句
若葉山抜けて琵琶湖の真青なる/多田有花
若葉の山を越えて見えるもは、真っ青に水を湛えた琵琶湖である。初夏の琵琶湖の真青さは、爽快に目に映るだろう。また、若葉の色と湖の青とが美しい色合いである。(高橋正子)

●曇り。昼頃から雨。
フランネルフラワーを植える。天使の花とも言うらしい。
朝曇りフランネルの花白き 正子
昼顔に空はあまりにも高き  正子
夕月の金を目に入れメロン食ぶ  正子
切られたる西瓜が並ぶショーケース 正子   

○釣鐘草

[釣鐘草/横浜日吉本町]

★釣鐘草道をなじみし土着の子/貞弘 衛
★どの花も青い光よ釣鐘草/高橋正子
★畳屋が育てて愛す釣鐘草/高橋正子

○フェアリーのベルを鳴らせよ釣鐘草(ブログ「二〇世紀ひみつ基地」より)
 盛夏から晩夏にかけて、釣鐘形で薄青紫の可憐な花をつける、キキョウ科の多年草・ツリガネニンジン(釣鐘人参)、別名・ツリガネソウ(釣鐘草)。春先の若葉は山菜として、ゴマ和えや天ぷらで食され、細いニンジン状の根も食用にするほか、漢方では咳止め・去痰薬として使われる。ツリガネニンジンをトトキともいい、長野県の俗謡に「山でうまいはオケラにトトキ 里でうまいはウリナスビ 嫁に食わすも惜しゅうござる」とうたわれるほど珍重された山菜だった。オケラはキク科の多年草でこれも若葉を食べる。秋田県内での呼び名(方言)は、トドキ、トットキ、ヤマダイコン、ヌノバなど。
 妖精が宿るかのような愛らしいその花は詩人たちに愛され、宮沢賢治は「ブリューベル」青いベルと呼んだ。

あやしい鉄の隈取りや
数の苔から彩られ
また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と
石絨の神経を懸ける
この山巓の岩組を
雲がきれぎれ叫んで飛べば
露はひかってこぼれ
釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるえる
‥‥後略‥‥
           宮沢賢治『早池峰山嶺』より

風が吹いて草の露がバラバラとこぼれます。つりがねそうが朝の鐘を、
「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と鳴らしています。
                    宮沢賢治『貝の火』より

釣鐘草 野口雨情

小さい蜂が 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
子供が見てても 来てたたく
大人が見てても 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
静かに咲いてる 釣鐘よ

   『青い眼の人形』より

風の子供 竹久夢二

風の子供が 山へ出て
釣鐘草をふきました
釣鐘草は目をさまし
ちんから ころりと 鳴きだすと
薄(すすき)も桔梗も刈萱(かるかや)も
みんな夢からさめました
‥‥後略‥‥
      『日本童謡集』より

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

5月22日(火)

★葉桜に夜も残れる空の紺  正子
見事で、賑わった桜も葉桜となりました、夜はまだ空色が残っている。静かになった夜景です。
(祝恵子)

○今日の俳句
若葉光手つなぎ歩くいとこ達/祝恵子
若葉の輝く季節、小学生ぐらいのいとこ達であろうか、集まって、行楽にでかけるのであろう。「手つなぎ歩く」には、兄弟姉妹だけよりも、広がりのある身内のたのしさが、若葉の季節を得て、かろやかに詠まれた。(高橋正子)

○十薬(ドクダミ)

[十薬/横浜日吉本町]

★どくだみや真昼の闇に白十字/川端茅舎
★十薬や四つの花びらよごれざる/池内友次郎
★叢に十薬花を沈め咲き/星野立子
★十薬の根の長々と瓦礫より/細見綾子
★測量の人十薬に踏み込みぬ/稲畑汀子
★十薬や夜へ突立つ坂がかり/鷲谷七菜子
★花言葉なき十薬は十字切る/上田五千石
★毒だみや十文字白き夕まぐれ/石橋秀野

十薬は、生薬名の十薬(じゅうやく、重薬とも書く)で、ドクダミ(?草、学名:Houttuynia cordata)ともいわれ、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。 住宅周辺や道ばたなどに自生し、特に半日陰地を好む。全草に悪臭がある。開花期は5~7月頃。茎頂に、4枚の白色の総苞(花弁に見える部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させる。本来の花には花弁も、がくもなく、雌しべと雄しべのみからなる。加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある。他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)、また、ベトナム料理ではザウゾプカー(rau gi?p ca)またはザウジエプカー(rau di?p ca)と称し、主要な香草として重視されている。ただし、日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている。中国西南部では「折耳根(ジョーアルゲン ?音: zhe?rg?n )」と称し、四川省や雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。生薬として、開花期の地上部を乾燥させたものは生薬名十薬(じゅうやく、重薬とも書く)とされ、日本薬局方にも収録されている。十薬の煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがある。なお臭気はほとんど無い。 また、湿疹、かぶれなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよい。

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月21日(月)

★アカシヤの花に青空寄りかかる  正子
青空が寄りかかるというのが、アカシアが視点の中心の大きなところを占めていることがよくわかって、初夏の清々しさを醸し出しています。(高橋秀之)

○今日の俳句
木漏れ日の眩しさの中蝶々舞う/高橋秀之
木漏れ日のちらちらする中にまぎれるように飛ぶ蝶々。すずやかな光景だ。(高橋正子)

●晴れ。明治製菓寮のあとの更地が野になり、昼顔の花が咲きだした。ハルジオンはすっかり消え、近所のバラも終わり。

○山ぼうしの花

[山ぼうし/横浜日吉本町]

★鳥寄せや夜眼ほのかなる山法師/水原秋櫻子
★山法師咲けば記憶のある山路/稲畑汀子
★その上の雲より白く山法師/林翔
★遥か見るとき遥かなる山法師/篠崎圭介
 京都
★早起きの眼に満開の山ぼうし/高橋信之

 ヤマボウシ(山法師、山帽子、学名 Benthamidia japonica )はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。高さ5~10メートル。幹は灰褐色。葉は対生し、楕円(だえん)形または卵円形で長さ4~12センチ、全縁でやや波打つ。花は6~7月に開き、淡黄色で小さく、多数が球状に集合し、その外側に大形白色の総包片が4枚あり、花弁のように見える。山地に普通に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。街路樹・庭園樹・公園樹としても用いられる。材は器具材として用いられる。近縁にハナミズキ(アメリカヤマボウシ)があるが、こちらの果実は集合果にならず、個々の果実が分離している。
 山法師は、ずっと以前はなじみがなかった。花みずき(アメリカヤマボウシ)が住宅地や並木に植えられるようになって(今や銀座の通りを飾るようになって)、山法師を知ったといってもいい。その名前が愉快ではないか。松山に住んでいたころは、近くの総合公園に山法師があった。階段となった坂道なので、花を間近に真上から見ることができた。そういえば、似たような花に、小石川植物園のハンカチの木がある。そろそろ白い包片をひらつかせているころか。

★山に入り身近な花の山法師/高橋正子

◇生活する花たち「未央柳(びようやなぎ)・釣鐘草・卯の花」(横浜日吉本町)

5月20日(日)

★竹藪にあまりに明るししゃがの花  正子
しゃがの花は少し日蔭となる場所を好み、鄙びてあまり目立つ花ではないものの、群生となれば別ですね。群生するほどの沢山のしゃがの花に出会われ、その時の驚きが想われます。鄙びた花姿の中に、趣きのある素敵な一句です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
竹皮を脱ぐや常なる一幹に/桑本栄太郎
下五の「一幹に」がいい。今年の竹の誕生と成長を言葉の意味でも、また「イッカン」という音の響きでも。(高橋信之)

●晴れ。夕方から冷える。青葉冷えというのか。
愛媛の櫟俳句会から『百』(石田節著)という句集を恵送いただいた。江崎紀和子主宰、櫛部天思氏の句集も前にいただいていたので、今回は礼状を書かねばと好きな句を三句を挙げて手紙を出した。句集を見知らぬ方からずいぶんいただき(どういう経緯で私に届いたのかわからないのだけれど)、すぐに拝読はするものの、失礼とは思いながら、礼状を出さずそのまま。考えが逡巡して、ずいぶん考えて、それきりになっている。

ラジオ深夜便で国木田独歩の「忘れ得ぬ人々」の朗読があった。途中から聞いたが、そのなかに「三津ヶ浜の琵琶法師」の話があった。漱石でも有名な松山の三津浜のことだが、どうして琵琶法師がいたのだろうと、不思議の思った。

同じく深夜便で、今月のおすすめ本の紹介があった。岩波書店刊の和菓子の事典が面白そう。解説者がお面白い話をした。彼が京都の祇園寺にいったとき、彼岸のお寺でお供えするあられ(もち米からつくったのをあられという。うるち米は、せんべい)をこの寺では「おしゃかさんの鼻くそ」というと。これは、私の家の檀家寺でもそう呼んでいた。「はなくそ」ではなく、「はなくぼ」とかが変わったものらしいが、古いものの縁を感じだ。近くの鞆の浦にも祇園寺があって、ぎょんさんと地域の人は呼んでいて、鞍馬の火祭に似た祭りがある。

○朴の花

[朴の花/横浜都筑区ふじやとの道]

★朴散華すなはち知れぬ行方かな/川端茅舎
★朴咲く山家ラヂオ平地の声をして/中村草田男

ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。
大きくなる木で、樹高30m、直径1m以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20cm以上、時に40cmにもなり、葉の大きさではトチノキに並ぶ。葉柄は3-4cmと短い。葉の形は倒卵状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0 -2個の種子が入っている。葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用される。葉が大きいので古くから食器代わりに食物を盛るのに用いられてきた。6世紀の王塚古墳の発掘時には、玄室の杯にホオノキの葉が敷かれていたのが見つかった。材は堅いので下駄の歯(朴歯下駄)などの細工物に使う。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。樹皮は厚朴または和厚朴といい、生薬にする。

朴の花を見たのは、一昨年が初めて。横浜市営地下鉄北山田駅を出ると、「ふじやとの道」という緑道がある。行きあたりに池のある徳生公園があり、その公園の小高い丘にある。5月16日には、白い朴の花が咲いていた。花は真っすぐを向いて咲くので、しかも高木なので、梯子をかけてでもないと真上からの花は見えない。ところが運よく、朴の木よりも高く丘に道が付いている。その道を上り、朴の花を見ることができた。花の良い香りもする。これほどまでに匂うとは思わなかった。朴葉寿司、朴葉焼きなど山国の郷土料理であろう。朴のまな板は、台所にあったし、朴の高下駄は、兄なども新制高校だったが、戦後まもないときだったので通学に履いていた。
下駄で思い出すのだが、下駄の生産では日本一とう松永という町が、生家からバス三十分ほど行ったところにあった。塩田は廃止されたが、塩田と下駄で有名で、小さな松永湾には下駄に使う松の木を沢山浮かばせてあった。今でもそうだろう。お盆が来ると田舎の子どもたちは下駄を新調してもらった。下駄の歯がすり減ってなくなるまで履いた。大人になっても、サンダルではなく下駄を愛用したときもあった。日本の夏は、素足に履けば心地よいのは下駄である。

★朴の花栃の花見てゆたけしや/高橋正子
★朴の花わが身清めて芳しき/高橋正子
★花の香をたより登れば朴の花/高橋正子(2015.5.17)

◇生活する花たち「釣鐘草・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

5月19日(土)

★新緑の翳るときあり水があり  正子
日にきらめく新緑も曇り空の下では翳る時もあり、雨のあとなどでは水を含んでいる時もあるが、却ってそれが煌めきを助長して見える、と解釈しました。表面的な理解かもしれませんが、軽やかで印象に残る御句です。(河野啓一)

○今日の俳句
伊予水軍夏潮分けしその昔/河野啓一
夏潮の流れるさまを見れば、その昔、この夏潮を分けて伊予水軍が活躍したことが偲ばれる。とうとうとした夏潮の流れである。(高橋正子)

●テレビは普段全く見ないが、広島のうまいものを見ていたら、夜9時過ぎから、ハリー王子のウィンザー城での結婚式の中継に変わった。イギリス旅行をしたとき、ウィンザー城見学か、キューガーデンを見学するかの選択があった。ウィンザー城はガイド付き。キューガーデンは自由。結局キューガーデンを選んだが、ウィンザー城はロンドンから、35キロメートルぐらいのところにある。バスの窓からよく見えた。女王がおられるときは王室旗が掲げらる。遠目に見たウィンザー城のラウンドタワーの壁の色が印象に残っている。中継で礼拝堂の内部が見れたが、白と黒のチェッカー模様は、イギリス的だと思えた。参列者の夫人の帽子やドレス。アスコット競馬でもそうだが、結構楽しめる。

結婚式での聖書のことばの誓い。はじめハリー王子、次、メーガン妃。イギリス英語とアメリカ英語の違いが明らかだった。これも興味深い。イギリス英語とアメリカ英語の違いは?と聞かれたら、これを聞いてくださいという示すのが速いのではないかとも思った。

○蜜柑の花

[蜜柑の花/横浜日吉本町]

★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ/高橋信之
★人の住む町に蜜柑の花香る/高橋正子(2015.5.15)

蜜柑の花の匂う季節となった。蜜柑の匂いは、やはり蜜柑どころが圧巻。蜜柑生産量日本一を愛媛が誇っているかどうか知らないが、愛媛に住んだころは、蜜柑畑の蜜柑の花の匂いに一日中包まれて暮らした。買い物に通る道も、子どもたちの通学路も蜜柑の花の匂いが漂う。家に居ても窓を開けていれば、蜜柑の花の匂いが流れてくる。夜、眠るころになるとさらに高く匂う。その匂いを惜しんで窓を閉めた。
「みかんの花咲く丘」の歌詞は、私にはまるで瀬戸内海の風景として見えるが、実際は静岡県ということだ。

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月18日(金)

★豆飯の飯の白さに風抜ける  正子
豆ごはんの緑が鮮やかに仕上って、ごはんの白さがより際立ち美味しそうに炊き上がりました。ご飯の白さに一瞬初夏の風が抜ける様な爽やかさを感じ取られ「風抜ける」と表現されたのでしょう。少し塩味の聞いた初夏ならではの豆ごはんが食卓に上っています。(佃 康水)

○今日の俳句
船窓に見え来る全山島若葉/佃 康水
船窓から島の全山が見え始め、さらに近付くと島を覆い尽くす若葉の鮮やかさに、息をのむような感動を覚える。(高橋正子)

○木苺

[木苺/横浜日吉本町]

★木苺に滝なす瀬あり峡の奥/水原秋桜子
★裾重く聖尼ばかりの木苺摘み/草間時彦

 木苺(キイチゴ・学名:Rubus palmatus・バラ科キイチゴ属)は、原産地が西アジア、アフリカ、欧州、アメリカで、ラズベリーやブラックベリー、デューベリー等、木になるイチゴ(苺)の総称。 春に、苺の花に似た5弁の白花を咲かせる半落葉低木で、葉はヤツデのような掌に似た形(深裂)をしている。初夏に橙色の小さな粒々が多数集まり、食用となる球状の果実を付ける。果実は、果汁が多く、爽やかな酸味と仄かな甘味がある。木苺の葉は、秋に綺麗に紅葉するので、別名をモミジイチゴ(紅葉苺)とも呼ばれる。
 5月白い花が咲き、青い実を結ぶ。野生でよく見るのは、オレンジがかった黄色に熟れるものだ。山道を車で通るときにもところどころに見つかる。里山を歩いても道沿いに見つかる。たくさん摘んだことはなく、一粒二粒熟れているのを採って食べた程度だ。わが家の近くでは、日吉本町の鯛ケ崎公園と、駒林神社の下手あたりで見つけている。なんでもそうだが、熟れる時期をはずすと、せっかく木苺摘みにでかけても蔕だけになっていることがあって、すごく残念な思いをする。

★木苺を摘みにそこまでブラウス着て/高橋正子
★木苺の実が消えたりしころの山/高橋正子(2015.5.10)

◇生活する花たち「クサイチゴ・イキシャ・山あじさい」(横浜日吉本町)

5月16日(水)

 横浜動物園
★真鶴に夏来し水辺用意され   正子
動物園と前書きにありますので、冬鳥である真鶴に暑さに気を使い、新しい水辺を用意された園の優しさが、また詠者の優しさも伺えます。(祝恵子)

○今日の俳句
水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)

○山吹草

[山吹草/東京白金台・自然教育園/左:2012年5月10日・右:2013年4月10日撮影]

★昏れかぬる箱根うら道山吹草/金子波龍
★林間へ野生の犬や山吹草/大介

 山吹草(やまぶきそう、学名:Chelidonium japonicum)は、罌粟(芥子:けし)科の多年草。半日陰になる林縁や疎林内に生育する。「ヤマブキ」の名はあるが、バラ科のヤマブキとは全く別種である。草丈30~40cmほどので、茎を立てて上部の葉腋に1~2個の花をつける。花は春に咲き、径4~5cmほどの比較的大きな鮮黄色の4弁花をつける。花弁は卵型。葉は、長さ10~15cmほどの羽状複葉で、小葉は5~7個。小葉は大きさに変異が大きく、長さ2~5cm、幅2cm前後の広卵型で、葉先は三角形状である。葉の縁には浅い欠刻と鋸歯(ギザギザ)があう。
本州以西から中国大陸に分布している。多摩丘陵では、一部に保護植栽されている場所を除き、1980年頃以降では自生は確認できておらず、地域絶滅が危惧される。
 花の様子や鮮黄色の花色が、バラ科のヤマブキに似ているという命名です。ただし、ヤマブキは5弁花であるのに対してヤマブキソウは4弁花です。
 ケシ科の植物はほとんどそうだが、全草にアルカロイド系の有毒成分を含み、誤って食べると嘔吐や麻痺などを惹き起す。仲間(同属)のクサノオウは薬用に利用されるが、ヤマブキソウは利用されない。この仲間(クサノオウ属)を代表するクサノオウ(瘡の王)では、花は似ているが、葉はヤマブキソウのような羽状複葉ではなく、羽状の切れ込みがある単葉で裂片の先は円形状である。 別名「草山吹(くさやまぶき)」。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月14日(月)

★竹皮を脱ぐ孟宗の節短し  正子

○今日の俳句
釣竿を持つ少年の夏近し/多田有花
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)

●晴れ。文學の森の創立15周年記念の祝賀会が京王プラザホテルであって、出席の予定だったが、やむを得ず、欠席。いい天気で盛会のことだったでしょう。

外出の途中、武蔵小杉駅で下車。駅ビル傍の東急ビル5Fに川崎市立図書館があるのに気づいた。入口だけざっと見学。絵本コーナーには大人用の絵本があった。韓国語、中国語、英語など。三井ビルのモンベルに寄ろうとしたのだが、入り口を間違えてしまった。ま、怪我の功名。我が家の近くの図書館は、慶大図書館しかないので、困っていたのだが、ここならこれそう。

○卯の花

[卯の花/横浜日吉本町]

★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子

卯の花は、空木(ウツギ)といい、バラ目アジサイ科ウツギ属の落葉低木で、樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。

★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

◇生活する花たち「芍薬の花蕾・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)