5月13日
●小口泰與
頭から喰らいつきたる香魚かな★★★
あかあかと浅間を刷きし夕焼けよ★★★★
身ごもりし目高や居間のひとところ★★★
●古田敬二
うすみどりアカシア揺れて不器男の句★★★
薔薇の門咲きかけという美しさ★★★
緑陰という優しきものに潜りゆく★★★
●黒谷光子
城跡の麓の村も夏かすむ★★★
その上の城下を覆う夏霞★★★
夏霞棚引く裾野古戦場★★★★
●多田有花
城下町見下ろし若葉の風の中★★★★
雨に濡れ道の辺のジャーマンアイリス★★★
雨あがる森に響きし夏鶯★★★
●桑本栄太郎
咲くものは咲いて実となる風五月★★★★
五月のさわやかな風に吹かれる葉の蔭には、実がなっているのに気付く。桜の実もそうであるし、
梅や李、柿なども実となっている。うなずかされる。風五月が句に詩情を与えた。(高橋正子)
鴨川に川床の迫り出し整える★★★
大ぶりの葉の一畝や葱坊主★★★
●佃 康水
山水を集め寺裏菖蒲咲く★★★★
背後に山を控えている寺は結構多い。山から湧き流れる水を池などに集めて菖蒲を咲かせている。
山水と菖蒲の取り合わせが清冽な趣だ。(高橋正子)
河骨や大き葉裏を抜きん出で★★★
甘茶寺小花の鉢を賜りぬ★★★
●小西 宏
杜深く生きいる轟き青嵐★★★★
雨止んで梅の実一つ地に青し★★★
やわき黄のバラは零れるように咲き★★★
5月12日
●小口泰與
とめどなく小石湧きあぐ清水かな★★★★
清水が湧きあがる、涼しくきよらかな情景がよい。砂ではなく、小石が湧きあがることで、清水の湧く勢いが見える。(高橋正子)
夕映えを映す水田の緋鯉かな★★★
襲い来ししろがねの滝竜の如★★★
●桑本栄太郎
眼のまえの青き空揺れ窓若葉★★★★
堰堤の流れまぶしく夏は来ぬ★★★
青蘆の風をいざいなそよぎけり★★★
●黒谷光子
豌豆を採る間ときどき山を見て★★★★
たくさんの豌豆を採っているのだろう。手元ばかりを見て収穫するのではなく、ときどき新緑の山を眺めて見たりする。豌豆を収穫する時期は本当によい季節だ。(高橋正子)
手を洗う川のほとりの草茂る★★★
甘藷苗植えし夜更けの雨の音★★★
●小西 宏
バグパイプ木下に鳴らし牛蛙★★★
欅若葉うれしく枝を重くする★★★
泣く児背にアヤメ一列保育園★★★★
●古田敬二
高きよりキリンの見ている花吹雪★★★
抜け殻を背負いて速し天道虫★★★
風の道白くざわめく若葉山★★★★
5月11日
●小口泰與
ジーパンのしるき色なり夏野行く★★★
下闇や石碑に記す大津波★★★★
飛蚊症飛ぶや水別く岩つばめ★★★
●多田有花
石楠花の中抜け高野山を降りる★★★★
低地では石楠花の花は終わっているが、高野山では今、石楠花が盛りのようだ。高野山に参詣して、気持ちもすっきりとしたところで、山気漂う中、石楠花の道を下りた。(高橋正子)
はつ夏の海や小船を散りばめて★★★
薫風の高野山町石道★★★
●桑本栄太郎
生垣の坂道下る新茶かな★★★★
折り返すバスの田中や風薫る★★★
”かあさん”とつぶやきみたり母の日に★★★
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