2月10日(4名)
●廣田洋一
五輪旗の翻りけり春寒し★★★★
春寒や風吹く街の日の光★★★
春寒や襟立てて行く並木道★★★
●小口泰與
春の日のきらめき増せる湖畔かな★★★
眠たさが深き淵なす蕗の薹★★★
浅間山いまだ白きや麦青む★★★★
●多田有花
餅つきの音が二月の境内に★★★★
よく晴れて島々霞む播磨灘★★★
春雨のなかで子犬の散歩する★★★
●桑本栄太郎
下萌えの滴きらめく今朝の雨★★★★
下萌えに残る雨の滴。今朝降って上がった雨。下萌えの雨露の煌めきが宝石のようだ。(高橋正子)
若枝の真直ぐに伸びる春の雨★★★
春雨や路面明るく日暮れ来る★★★
2月9日(3名)
●小口泰與)
風上の焼野へ並ぶカメラマン★★★
芝焼の火に追われたる小犬かな★★★★
公魚のぴこんと跳ねて動かざる★★★
●桑本栄太郎
春雪を載せて並走北陸線★★★
丸岡の母へと一筆二月雪★★★
海苔掻の潮のたゆとう岩間かな★★★★
岩伝いに海苔を掻く。岩と岩の間に入った潮がたゆたう。潮のたゆたう時間は春のもの。(高橋正子)
●廣田洋一
チョコよりも和菓子が良しとバレンタインの日★★★
兼題は暦の通りバレンタインの日★★★
いつの間に義理チョコ廃止バレンタインデー★★
2月8日(4名)
小口泰與
父方は縄文系や蜆汁★★★
酒の名は夢殿なるや春灯★★★
川魚の割きたる腹へ蕗味噌を★★★★
川魚に蕗味噌。季節の出会いものの新鮮さ、嬉しさ。蕗の薹の生まれたところを思い見る。(高橋正子)
廣田洋一
紅梅や松の緑に囲まれて★★★
一弁の横に開ける冬牡丹★★★
いつもより灯り増やせし雛の店★★★★
雛を売る店。いろんな雛人形を浮かばせて、いつもより灯が多い。華やぐ雛の店に見るものの気持ちが華やぐ。(高橋正子)
多田有花
稜線の古墳に早春の日差★★★し
頂より見下ろす街の春めきぬ★★★★
早春の光あふれる三角点★★★
桑本栄太郎
春疾風駅のホームに電車待つ★★★
遅き日や目覚めてみれば妻の留守★★★★
夕方の昼寝覚めであろう。目覚めてみれは、妻は夕餉の買い物にでもでかけたのだろう。留守だ。このあたりの微妙な心理は、「遅き日」をもって知れる。(高橋正子)
丸岡の母へ一筆二月雪★★★
2月7日(5名)
小口泰與
夕映えの浅間南面雪解かな★★★
カメラマン風に追わるる焼野かな★★★★
薄氷を尾びれに絡め池の鯉★★★
廣田洋一
傘ささぬうちに上がりぬ春の雪★★★
寒けれど湘南はましとテレビ見る★★★
残雪のボール蹴り合う子らの声★★★★
多田有花
厳寒の二月のテニスコートに出る★★★
早春の澄みし空気のなか歩く★★★
二月早や梢の光るころとなる★★★★
二月の声を聞くと春はそこまで来た感じがする。光を敏感に感じるのはしなやかな梢。少しの風に揺れ、光を反射させる。(高橋正子)
桑本栄太郎
料峭や塵を両手に出す朝も★★★
雲の間の日差しまぶしき余寒かな★★★
竜天に登る気勢や雲奔る★★★★
2月6日(3名)
●小口泰與
早春の沼や大鳥声高し★★★★
浅春や赤城は風を育てそめ★★★
パソコンの眼鏡や風のあたたかし★★★
●廣田洋一
若布汁鳴門の香り生かしけり★★★
浜に干す黒き若布の塩光る★★★★
浜に干された若布に塩が光る。塩は海水の塩分であろうし、光るのは春の日差しのせい。浜辺の風も感じられてリアリティのある句となった。(高橋正子)
老いの身に青さ取り込む若布サラダ★★★
●桑本栄太郎
余寒なお白き鞍馬や鴨川に★★★
春風のたちまち襤褸のマルチかな★★★
こきこきと枝せめぎ合い春寒し★★★★
2月5日(4名)
●小口泰與
大利根の波また波の二月かな★★★★
滔々と流れる利根川。二月の川は寒々と波が次々生まれ打ち合っている。大きな寒さに包まれている。(高橋正子)
二ン月や今だふふまぬ葡萄の木★★★
春立つや仕舞忘れし万華鏡★★★
●廣田洋一
春の池姿見せたる鯉二匹★★★
白き鳥浮かべしままの春の水(原句)
白き鳥浮かべてをりぬ春の水★★★★(正子添削)
冬牡丹花弁一つしだれけり★★★
●多田有花
春立つというは名のみの風の音★★★★
余寒とも言えぬ今年の寒さかな★★★
耳たぶが残る寒さをとらえおり★★★
●桑本栄太郎
梅古木一輪ひらく矜持かな★★★
ポン菓子のように膨らみ梅開く★★★
街並みのビルの煌めき風光る★★★★
2月4日(3名)
●小口泰與
老梅や赤城山まで遠き背戸★★★★
背戸の愛しい老木の梅が咲いた。そこからは赤城山を仰ぎ見ることが出来るが、そこまでは遥かである。住み慣れた我が家うるわし、だ。(高橋正子)
歳時記も桃色になり春兆す★★★
大神の出づる朝やおお春よ★★★
●廣田洋一
白梅や開き初めにし一二輪★★★
紅梅や蕾ぽつぽつ膨らみぬ★★★★
紅梅の匂ひ立ちけり天神社★★★
●桑本栄太郎
下萌や舗道のひびに匂い立つ★★★★
燦々と風の丘上の梅見かな★★★
生駒嶺の早やも霞にうねりけり★★★
2月3日(5名)
●小口泰與
禿頭の鬼は外とや照れくさし★★★
裏木戸も柊挿して居たりけり★★★★
晩酌の肴となりし年の豆★★★
●多田有花
風邪気味に買い求め飲む鼻炎薬★★★
風邪の日や簡単に済ます鍋料理★★★
ベビーカーから足がぴょんぴょん冬尽きぬ★★★★
冬が終わる。なにかしら嬉しく、ベビーカーに乗っている赤ん坊の足がぴょんぴょん動く。小さな子がいち早く冬の終わりを感じたであろう。(高橋正子)
●廣田洋一
節分や心の鬼を探したり★★★
手に取りて意外に多き年の豆★★★★
豆撒きやようやく一つ掴みたる★★★
●桑本栄太郎
結界の炎囲みて追儺の会★★★★
追儺の会はそれぞれの神社や寺で違っているようだが、結界の炎が難を追い払い清めてくれる。炎の力を信じるときであろう。(高橋正子)
山伏の太鼓合図に追儺かな★★★
宵口の群青空や冬送る★★★
●川名ますみ
冬ざれや天を向く枝地向く枝★★★
車中には雪降る音の響きあり★★★
からからと車窓に雪の鳴っており(原句)
からからと車窓に雪の鳴って降り★★★★(正子添削)
2月2日(3名)
●小口泰與
探梅や風の隔つる鳥の声★★★★
霜柱踏まれ諂いぎゅうと鳴く★★★
絡み合い乱る焚火の飯場かな★★★
●廣田洋一
静けさに外を覗けば雪ふはり★★★★
雪の日の受験生足踏み固め★★★
空清め地の汚れ消す雪の花★★★
●桑本栄太郎
霜の夜の烏に目覚む未明かな★★★
あおぞらを見上げ眩しき枯柳★★★★
枯柳があおぞらの光に眩しく耀いている。そよ風が吹けばなおさらだろう。立春が間近なころは、随分光が強くなる。それが「眩しき枯柳」となったのだ。(高橋正子)
メロディーの報らす濯ぎや春隣★★★
2月1日(3名)
●小口泰與
白鳥や入日かがやく浅間山★★★★
二羽三羽暁の赤城へ寒鴉かな★★★
次次と上枝下枝の寒雀★★★
●廣田洋一
皆既食赤く染まれる冬の月★★★
すり減りし台布巾替え冬終わる★★★
修理終え春を待ちける時計台★★★★
みんなに見える時計台の時計。修理を終えて、装いもあらたに、これからも時を刻んでくれる時計。「春を待つ」人々の気持ちと重なって、時計台も「春を待つ」。こんなのはいいなあ、と思う。(高橋正子)
●桑本栄太郎
ささめ雪降りて団地の狭庭かな★★★
堰水の七段こぼれ春近し★★★★
路面濡れ光る夕べや春隣★★★
コメント
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
2月5日の「春の水」の投句を雅子先生に添削して頂き有難うございます。お陰様にてリズムが断然よくなりました。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
信之先生、正子先生、いつもご懇切なお導きを、ありがとうございます。
「からからと」の句に賜りました添削ご指導、読み返しながら膝を打ちました。「雪」と「雪降る」は、こんなにも違うのですね。積もった雪ではなく、降っている雪の音や動きを表すには、「降る」が欠かせなかったと、気付きました。そして「鳴って降り」という表現がとてもきれいで、その状景がはっきりと浮かび、嬉しくなりました。感謝いたします。